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特許7160620共重合体、共重合体の製造方法、ゴム組成物及びタイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】共重合体、共重合体の製造方法、ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/00 20060101AFI20221018BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20221018BHJP
   C08F 4/54 20060101ALI20221018BHJP
   C08F 4/606 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C08F210/00
B60C1/00 Z
C08F4/54
C08F4/606
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018192717
(22)【出願日】2018-10-11
(65)【公開番号】P2019151817
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2021-07-02
(31)【優先権主張番号】P 2018038957
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】高野 重永
(72)【発明者】
【氏名】タルディフ オリビエ
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/064859(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/190073(WO,A1)
【文献】特表2016-528359(JP,A)
【文献】国際公開第2017/064857(WO,A1)
【文献】特開2012-014457(JP,A)
【文献】日本工業規格 JIS K 7121-1987
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 210/00
B60C 1/00
C08F 4/54
C08F 4/606
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非共役オレフィン単位と、共役ジエン単位と、芳香族ビニル単位と、を少なくとも含有する共重合体であって、
前記非共役オレフィン単位の含有量が、40mol%以上であり、
示差走査熱量計(DSC)で測定した100~150℃における前記非共役オレフィン単位に由来する結晶化度が、4.0%以下であり、
示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が、30~110℃であり、
ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)とポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)が、1.00~3.00であることを特徴とする、共重合体。
【請求項2】
前記非共役オレフィン単位が、非環状の非共役オレフィン単位である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
前記非環状の非共役オレフィン単位が、エチレン単位のみからなる、請求項2に記載の共重合体。
【請求項4】
前記共役ジエン単位が、1,3-ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項5】
前記共役ジエン単位が、1,3-ブタジエン単位のみからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項6】
前記芳香族ビニル単位が、スチレン単位を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項7】
前記非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%で、前記共役ジエン単位の含有量が1~50mol%で、且つ前記芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%である、請求項1~6のいずれか一項に記載の共重合体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の共重合体を含むことを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体、共重合体の製造方法、ゴム組成物及びタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴム製品(タイヤ、コンベヤベルト、防振ゴム、免震ゴム等)には、高い耐久性(耐破壊特性、耐摩耗性、及び耐亀裂成長性等)及び耐候性が求められており、かかる要求を満たすために様々なゴム成分やゴム組成物が開発されてきている。
例えば、下記特許文献1には、共役ジエン部分のシス-1,4-結合含量が70.5%より大きく、非共役オレフィンの含有量が10mol%以上である共役ジエン化合物と非共役オレフィンとの共重合体が開示されており、また、この共重合体が、耐亀裂成長性及び耐候性の良好なゴム組成物を製造するのに用いられることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/014455号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、共重合体中の非共役オレフィン部分の連鎖長については開示されていない。共重合体中の非共役オレフィン部分の連鎖長は、低歪領域での発熱性や、作業性に影響を及ぼすものであり、重要な因子である。
【0005】
そこで、本発明は、耐摩耗性、耐亀裂成長性に優れることに加え、低歪領域での発熱性が低減されており、作業性が良好な共重合体を提供することを課題とする。
また、本発明は、耐摩耗性、耐亀裂成長性に優れることに加え、低歪領域での発熱性が低減されており、作業性が良好な共重合体を得ることができる、共重合体の製造方法を提供することを更なる課題とする。
また、本発明は、耐摩耗性、耐亀裂成長性が高く、タイヤの転がり抵抗を低減することが可能なゴム組成物、更には、耐摩耗性、耐亀裂成長性が高く、転がり抵抗が小さいタイヤを提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0007】
本発明の共重合体は、非共役オレフィン単位と、共役ジエン単位と、を少なくとも含有する共重合体であって、
前記非共役オレフィン単位の含有量が、40mol%以上であり、
示差走査熱量計(DSC)で測定した100~150℃における前記非共役オレフィン単位に由来する結晶化度が、4.0%以下であることを特徴とする。
かかる本発明の共重合体は、耐摩耗性、耐亀裂成長性に優れることに加え、低歪領域での発熱性が低減されており、作業性が良好である。
【0008】
本発明の共重合体は、更に、芳香族ビニル単位を含有することが好ましい。この場合、非共役オレフィン単位の連鎖長を短くし易くなる。
【0009】
本発明の共重合体の好適例においては、前記非共役オレフィン単位が、非環状の非共役オレフィン単位である。この場合、共重合体の耐候性が向上する。
【0010】
ここで、前記非環状の非共役オレフィン単位が、エチレン単位のみからなることが好ましい。この場合、非環状の非共役オレフィン単位の由来となる非環状の非共役オレフィン化合物の入手が容易で、共重合体の製造コストを低減できる。
【0011】
本発明の共重合体の他の好適例においては、前記共役ジエン単位が、1,3-ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位を含む。この場合、共役ジエン単位の由来となる共役ジエン化合物の入手が容易で、共重合体の製造コストを低減できる。
【0012】
本発明の共重合体の他の好適例においては、前記共役ジエン単位が、1,3-ブタジエン単位のみからなる。この場合、共役ジエン単位の由来となる共役ジエン化合物の入手が更に容易で、共重合体の製造コストを更に低減できる。
【0013】
本発明の共重合体の他の好適例においては、前記芳香族ビニル単位が、スチレン単位を含む。この場合、芳香族ビニル単位の由来となる芳香族ビニル化合物の入手が容易で、共重合体の製造コストを低減できる。
【0014】
本発明の共重合体の他の好適例においては、前記非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%で、前記共役ジエン単位の含有量が1~50mol%で、且つ前記芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%である。この場合、共重合体の耐摩耗性及び耐亀裂成長性が更に向上し、また、耐候性も向上する。
【0015】
また、本発明の第1の共重合体の製造方法は、非共役オレフィン単位と、共役ジエン単位と、を少なくとも含有する共重合体の製造方法であって、
希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物を含む希土類元素含有化合物(A)と、
下記一般式(I):
YR ・・・ (I)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R及びRは、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子で、Rは炭素数1~10の炭化水素基であり、但し、R、R及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a、b及びcは1である]で表される有機金属化合物(B)、イオン性化合物(C)及びハロゲン化合物(D)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、
非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物(E)と、を含む触媒組成物を熟成させる、熟成工程と、
前記熟成された触媒組成物の存在下で、少なくとも、非共役オレフィン化合物と、共役ジエン化合物と、を共重合させる、共重合工程と、を含むことを特徴とする。
かかる本発明の第1の共重合体の製造方法によれば、耐摩耗性、耐亀裂成長性に優れることに加え、低歪領域での発熱性が低減されており、作業性が良好な共重合体を得ることができる。
【0016】
また、本発明の第2の共重合体の製造方法は、非共役オレフィン単位と、共役ジエン単位と、を少なくとも含有する共重合体の製造方法であって、
触媒組成物の存在下で、少なくとも、非共役オレフィン化合物と、共役ジエン化合物と、を共重合させる、共重合工程を含み、
前記触媒組成物が、
希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物を含む希土類元素含有化合物(A)と、
下記一般式(I):
YR ・・・ (I)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R及びRは、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子で、Rは炭素数1~10の炭化水素基であり、但し、R、R及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a、b及びcは1である]で表される有機金属化合物(B)、イオン性化合物(C)及びハロゲン化合物(D)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、
前記共重合工程で共重合させる非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物とは種類が異なる非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物から選択される少なくとも一種の化合物(E’)と、を含むことを特徴とする。
かかる本発明の第2の共重合体の製造方法によっても、耐摩耗性、耐亀裂成長性に優れることに加え、低歪領域での発熱性が低減されており、作業性が良好な共重合体を得ることができる。
【0017】
本発明の共重合体の製造方法の好適例においては、前記共重合体が、更に、芳香族ビニル単位を含有し、
前記共重合工程において、前記非共役オレフィン化合物と、前記共役ジエン化合物と、芳香族ビニル化合物と、を共重合させる。この場合、非共役オレフィン単位の連鎖長を短くし易くなる。
【0018】
本発明の共重合体の製造方法の他の好適例においては、前記共重合体は、前記非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%で、前記共役ジエン単位の含有量が1~50mol%で、且つ前記芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%である。この場合、生成する共重合体の耐摩耗性及び耐亀裂成長性が更に向上し、また、耐候性も向上する。
【0019】
本発明の共重合体の製造方法においては、前記触媒組成物が、更に、アルミノキサン(F)を含んでもよい。この場合、目的とする共重合体を容易に得ることができる。
【0020】
本発明の共重合体の製造方法の他の好適例においては、前記化合物(E)又は前記化合物(E’)が、炭素数3以上の非共役オレフィン化合物である。この場合、生成する共重合体の、DSCで測定した100~150℃における非共役オレフィン単位に由来する結晶化度を小さくできる。
【0021】
本発明の共重合体の製造方法の他の好適例においては、前記化合物(E)又は前記化合物(E’)が、環状の非共役オレフィン化合物である。この場合も、生成する共重合体の、DSCで測定した100~150℃における非共役オレフィン単位に由来する結晶化度を小さくできる。
【0022】
本発明の共重合体の製造方法の他の好適例においては、前記化合物(E)又は前記化合物(E’)が、ノルボルネン、1,3-ブタジエン及びジシクロペンタジエンから選択される少なくとも1種である。この場合も、生成する共重合体の、DSCで測定した100~150℃における非共役オレフィン単位に由来する結晶化度を小さくできる。
【0023】
また、本発明のゴム組成物は、上記の共重合体を含むことを特徴とする。かかる本発明のゴム組成物は、耐摩耗性、耐亀裂成長性が高く、タイヤに使用することで、タイヤの転がり抵抗を低減することができる。
【0024】
また、本発明のタイヤは、上記のゴム組成物を用いたことを特徴とする。かかる本発明のタイヤは、耐摩耗性、耐亀裂成長性が高く、転がり抵抗が小さい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、耐摩耗性、耐亀裂成長性に優れることに加え、低歪領域での発熱性が低減されており、作業性が良好な共重合体を提供することができる。
また、本発明によれば、耐摩耗性、耐亀裂成長性に優れることに加え、低歪領域での発熱性が低減されており、作業性が良好な共重合体を得ることができる、共重合体の製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、耐摩耗性、耐亀裂成長性が高く、タイヤの転がり抵抗を低減することが可能なゴム組成物、更には、耐摩耗性、耐亀裂成長性が高く、転がり抵抗が小さいタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】共重合体aのDSCチャートである。
図2】共重合体AのDSCチャートである。
図3】共重合体BのDSCチャートである。
図4】共重合体CのDSCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の共重合体、共重合体の製造方法、ゴム組成物及びタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0028】
<共重合体>
本発明の共重合体は、非共役オレフィン単位と、共役ジエン単位と、を少なくとも含有する共重合体であって、
前記非共役オレフィン単位の含有量が、40mol%以上であり、
示差走査熱量計(DSC)で測定した100~150℃における前記非共役オレフィン単位に由来する結晶化度が、4.0%以下であることを特徴とする。
【0029】
本発明の共重合体は、非共役オレフィン単位を含み、大きく歪んだ際に、該非共役オレフィン単位に由来する結晶成分が崩壊することで、エネルギーを散逸することができる。そして、本発明の共重合体は、該非共役オレフィン単位の含有量が40mol%以上であるため、高歪領域でのエネルギーの散逸能が高く、また、高歪領域でのエネルギーの散逸能が高いため、大きく歪むことで引き起こされる摩耗や、亀裂の成長を、エネルギーを散逸することで、抑制できる。
一方、DSC測定における100~150℃の吸熱ピークは、連鎖長の長い非共役オレフィン単位に由来するが、本発明の共重合体は、DSCで測定した100~150℃における非共役オレフィン単位に由来する結晶化度が4.0%以下であるため、非共役オレフィン単位の連鎖長が短い成分が多い。ここで、非共役オレフィン単位の連鎖長が長いことは、共重合体中の結晶成分(硬い部分)が多いことを意味し、小さな歪がかかった際にも、ヒステリシスロスを生じ易くなる。また、共重合体中の結晶成分は、共重合体の硬い部分であるため、該共重合体をゴム組成物に配合すると、ゴム組成物の混練時等における作業性が悪化する。これに対して、本発明の共重合体は、非共役オレフィン単位の連鎖長が短い成分が多く、小さな歪がかかった際のヒステリシスロスが小さいため、低歪領域での発熱性が低減されており、また、ゴム組成物に配合しても、ゴム組成物の混練時等における作業性を良好にすることができる。
従って、本発明の共重合体は、耐摩耗性、耐亀裂成長性に優れ、また、低歪領域での発熱性が低減されており、作業性が良好である。
【0030】
本発明の共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定した100~150℃における非共役オレフィン単位に由来する結晶化度が、4.0%以下であり、2.5%以下であることが好ましく、1.0%以下であることが更に好ましい。なお、該結晶化度の下限については、特に限定は無く、0%であってもよい。DSCで測定した100~150℃における非共役オレフィン単位に由来する結晶化度が小さい程、非共役オレフィン単位の連鎖長が短くなり、低歪領域での発熱性を更に低減でき、また、ゴム組成物に配合した際の、混練時等における作業性を向上させることができる。
ここで、該結晶化度は、実施例に記載の方法で測定した値である。
【0031】
本発明の共重合体は、非共役オレフィン単位と、共役ジエン単位と、を少なくとも含有し、非共役オレフィン単位と共役ジエン単位のみからなってもよいし、更に他の単量体単位を含有してもよい。
【0032】
前記非共役オレフィン単位は、単量体としての非共役オレフィン化合物に由来する構成単位である。ここで、非共役オレフィン化合物とは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素-炭素二重結合を1個以上有する化合物を指す。該非共役オレフィン化合物は、特に限定しないが、炭素数が2~10であることが好ましい。かかる非共役オレフィン化合物として、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン、ピバリン酸ビニル、1-フェニルチオエテン、N-ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられる。前記非共役オレフィン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。そして、共重合体の単量体としての非共役オレフィン化合物は、得られる共重合体を用いたゴム組成物及びタイヤ等の耐候性を向上させる観点から、非環状の非共役オレフィン化合物であることが好ましく、また、当該非環状の非共役オレフィン化合物としては、α-オレフィンが好ましく、エチレンが特に好ましい。α-オレフィンのような非環状の非共役オレフィン化合物、特にエチレンは、オレフィンのα位に二重結合を有するため、後述する共役ジエン化合物と効率的に重合することができる上、得られる共重合体を用いたゴム組成物及びタイヤ等の耐候性をより向上させることができる。
本発明の共重合体においては、前記非共役オレフィン単位が、非環状の非共役オレフィン単位であることが好ましい。非共役オレフィン単位が非環状の非共役オレフィン単位である場合、得られる共重合体を用いたゴム組成物及びタイヤ等の耐候性を向上させることができる。
また、本発明の共重合体においては、前記非共役オレフィン単位が、エチレン単位のみからなることが特に好ましい。非共役オレフィン単位がエチレン単位のみからなる場合、非共役オレフィン単位の由来となる非共役オレフィン化合物(即ち、エチレン)の入手が容易であり、共重合体の製造コストを低減できる。
なお、本発明の共重合体は、前記非共役オレフィン単位の含有量が、40mol%以上であり、45mol%以上であることが好ましく、55mol%以上であることが更に好ましく、60mol%以上であることが特に好ましく、また、97mol%以下であることが好ましく、95mol%以下であることが更に好ましく、90mol%以下であることがより一層好ましい。非共役オレフィン単位の含有量が、共重合体全体の40mol%以上であると、共重合体の高歪領域でのエネルギーの散逸能が高く、また、結果として共役ジエン単位又は後述する芳香族ビニル単位の含有量が減少して、耐候性が向上したり、高温での耐破壊性(特には、破断強度(Tb))が向上する。また、非共役オレフィン単位の含有量が97mol%以下であると、結果として共役ジエン単位又は芳香族ビニル単位の含有量が増加し、高温での耐破壊性(特には、破断伸び(Eb))が向上する。また、非共役オレフィン単位の含有量は、共重合体全体の40~97mol%の範囲が好ましく、45~95mol%の範囲が更に好ましく、55~90mol%の範囲がより一層好ましい。
【0033】
前記共役ジエン単位は、単量体としての共役ジエン化合物に由来する構成単位である。該共役ジエン化合物は、特に限定しないが、炭素数が4~8であることが好ましい。かかる共役ジエン化合物として、具体的には、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられる。これらの中でも、入手が容易である点で、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンが特に好ましい。なお、前記共役ジエン化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
本発明の共重合体においては、前記共役ジエン単位として、1,3-ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位を含むことが好ましい。共役ジエン単位として、1,3-ブタジエン単位及び/又はイソプレン単位を含む場合、共役ジエン単位の由来となる共役ジエン化合物(即ち、1,3-ブタジエン、イソプレン)の入手が容易であり、共重合体の製造コストを低減できる。
また、本発明の共重合体においては、前記共役ジエン単位が、1,3-ブタジエン単位のみからなることが特に好ましい。共役ジエン単位が、1,3-ブタジエン単位のみからなる場合、共役ジエン単位の由来となる共役ジエン化合物(即ち、1,3-ブタジエン)の入手が特に容易であり、共重合体の製造コストを更に低減できる。
なお、本発明の共重合体においては、前記共役ジエン単位の含有量は、1mol%以上であることが好ましく、3mol%以上であることがより好ましく、また、50mol%以下であることが好ましく、40mol%以下であることがより好ましく、30mol%以下であることが更に好ましく、25mol%以下であることがより更に好ましく、15mol%以下であることがより一層好ましい。共役ジエン単位の含有量が、共重合体全体の1mol%以上であると、共重合体の加硫を容易とすることができ、また、伸びに優れるゴム組成物及びゴム製品が得られるので好ましく、また、50mol%以下であると、耐候性に優れる。また、共役ジエン単位の含有量は、共重合体全体の1~50mol%の範囲が好ましく、3~40mol%の範囲が更に好ましい。
【0034】
本発明の共重合体は、非共役オレフィン単位及び共役ジエン単位に加えて、更に、芳香族ビニル単位を含有することが好ましい。共重合体が芳香族ビニル単位を含有する場合、非共役オレフィン単位の連鎖長を短くし易くなる。
前記芳香族ビニル単位は、単量体としての芳香族ビニル化合物に由来する構成単位である。該芳香族ビニル化合物とは、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物を指す。該芳香族ビニル化合物は、特に限定しないが、炭素数が8~10であることが好ましい。かかる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等が挙げられる。これらの中でも、入手が容易である点で、スチレンが好ましい。なお、前記芳香族ビニル化合物は、一種単独であってもよいし、二種以上の組み合わせであってもよい。
本発明の共重合体においては、前記芳香族ビニル単位として、スチレン単位を含むことが好ましい。共重合体がスチレン単位を含む場合、芳香族ビニル単位の由来となる芳香族ビニル化合物(即ち、スチレン)の入手が容易で、共重合体の製造コストを低減できる。
なお、本発明の共重合体は、前記芳香族ビニル単位の含有量が、0mol%であってもよいが、2mol%以上であることが好ましく、3mol%以上であることが更に好ましく、また、35mol%以下であることが好ましく、30mol%以下であることが更に好ましく、25mol%以下であることがより一層好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が2mol%以上であると、高温における耐破壊性が向上する。また、芳香族ビニル単位の含有量が35mol%以下であると、非共役オレフィン単位及び共役ジエン単位による効果が顕著になる。また、芳香族ビニル単位の含有量は、共重合体全体の2~35mol%の範囲が好ましく、3~30mol%の範囲がより好ましく、3~25mol%の範囲がより一層好ましい。
【0035】
本発明の共重合体は、前記非共役オレフィン単位の含有量が40~97mol%で、前記共役ジエン単位の含有量が1~50mol%で、且つ前記芳香族ビニル単位の含有量が2~35mol%であることが好ましい。この場合、共重合体を配合したゴム組成物の耐摩耗性及び耐亀裂成長性が更に向上し、また、耐候性も向上する。
【0036】
本発明の共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が10,000~10,000,000であることが好ましく、100,000~9,000,000であることがより好ましく、150,000~8,000,000であることが更に好ましい。前記共重合体のMwが10,000以上であることにより、ゴム組成物の機械的強度を十分に確保することができ、また、Mwが10,000,000以下であることにより、高い作業性を保持することができる。
【0037】
本発明の共重合体は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が10,000~10,000,000であることが好ましく、50,000~9,000,000であることがより好ましく、100,000~8,000,000であることが更に好ましい。前記共重合体のMnが10,000以上であることにより、ゴム組成物の機械的強度を十分に確保することができ、また、Mnが10,000,000以下であることにより、高い作業性を保持することができる。
【0038】
本発明の共重合体は、分子量分布[Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)]が1.00~4.00であることが好ましく、1.50~3.50であることがより好ましく、1.80~3.00であることが更に好ましい。前記共重合体の分子量分布が4.00以下であれば、共重合体の物性に十分な均質性をもたらすことができる。
【0039】
なお、上述した重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求める。
【0040】
本発明の共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が30~130℃であることが好ましく、30~110℃であることが更に好ましい。共重合体の融点が30℃以上であれば、共重合体の結晶性が高くなり、耐摩耗性、耐亀裂成長性が更に向上し、また、130℃以下であれば、作業性が向上する。
ここで、該融点は、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して測定した値である。
【0041】
本発明の共重合体は、0~120℃における示差走査熱量計(DSC)で測定した吸熱ピークエネルギーが10~150J/gであることが好ましく、30~120J/gであることが更に好ましい。共重合体の吸熱ピークエネルギーが10J/g以上であれば、共重合体の結晶性が高くなり、耐摩耗性、耐亀裂成長性が更に向上し、また、150J/g以下であれば、作業性が向上する。
ここで、該吸熱ピークエネルギーは、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、10℃/分の昇温速度で-150℃から150℃まで昇温し、その時(1st run)の0~120℃における吸熱ピークエネルギーを測定した値である。
【0042】
本発明の共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)が0℃以下であることが好ましく、-100~-10℃であることが更に好ましい。共重合体のガラス転移温度が0℃以下であれば、作業性が向上する。
ここで、該ガラス転移温度は、示差走査熱量計を用い、JIS K 7121-1987に準拠して測定した値である。
【0043】
本発明の共重合体は、主鎖が非環状構造のみからなることが好ましい。これにより、耐亀裂成長性をより向上させることができる。なお、共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環~五員環については、10~24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。
【0044】
<共重合体の製造方法>
上述した本発明の共重合体は、例えば、希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物を含む希土類元素含有化合物(A)と、
下記一般式(I):
YR ・・・ (I)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R及びRは、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子で、Rは炭素数1~10の炭化水素基であり、但し、R、R及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a、b及びcは1である]で表される有機金属化合物(B)、イオン性化合物(C)及びハロゲン化合物(D)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、
非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物(E)と、を含む触媒組成物を熟成させる、熟成工程と、
前記熟成された触媒組成物の存在下で、少なくとも、非共役オレフィン化合物と、共役ジエン化合物と、を共重合させる、共重合工程と、を含む方法(本発明の第1の共重合体の製造方法)で得ることができる。
触媒組成物中に、前記化合物(E)を加え、更に熟成させることで、化合物(E)が触媒組成物中に十分に取り込まれるため、化合物(E)の共重合体中への取り込みを抑制しつつ、生成する共重合体のDSC測定における100~150℃の吸熱ピークを小さくでき、DSCで測定した100~150℃における非共役オレフィン単位に由来する結晶化度を小さくできる。
従って、かかる本発明の第1の共重合体の製造方法によれば、耐摩耗性、耐亀裂成長性に優れることに加え、低歪領域での発熱性が低減されており、作業性が良好な共重合体を得ることができる。
【0045】
また、上述した本発明の共重合体は、例えば、触媒組成物の存在下で、少なくとも、非共役オレフィン化合物と、共役ジエン化合物と、を共重合させる、共重合工程を含み、
前記触媒組成物が、
希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物を含む希土類元素含有化合物(A)と、
下記一般式(I):
YR ・・・ (I)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R及びRは、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子で、Rは炭素数1~10の炭化水素基であり、但し、R、R及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a、b及びcは1である]で表される有機金属化合物(B)、イオン性化合物(C)及びハロゲン化合物(D)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、
前記共重合工程で共重合させる非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物とは種類が異なる非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物から選択される少なくとも一種の化合物(E’)と、を含む、方法(本発明の第2の共重合体の製造方法)で得ることもできる。
触媒組成物中に、前記化合物(E’)を加えることで、生成する共重合体のDSC測定における100~150℃の吸熱ピークを小さくでき、DSCで測定した100~150℃における前記非共役オレフィン単位に由来する結晶化度を小さくできる。なお、共重合工程で共重合させる非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物とは種類が異なる非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物から選択される化合物(E’)は、単量体として使用する非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物よりも重合反応し難いため、前記化合物(E’)は、生成する共重合体中へは取り込まれ難い。そのため、触媒組成物を熟成させなくても、生成する共重合体のDSC測定における100~150℃の吸熱ピークを小さくできる。
従って、かかる本発明の第2の共重合体の製造方法によっても、耐摩耗性、耐亀裂成長性に優れることに加え、低歪領域での発熱性が低減されており、作業性が良好な共重合体を得ることができる。
【0046】
また、前記共重合体が、更に、芳香族ビニル単位を含有する場合、前記触媒組成物の存在下で、前記非共役オレフィン化合物と、前記共役ジエン化合物と、芳香族ビニル化合物と、を共重合させることで、芳香族ビニル単位を含有する共重合体を製造できる。単量体として、芳香族ビニル化合物を使用することで、非共役オレフィン単位の連鎖長を短くし易くなる。
【0047】
前記共重合体の製造方法において、単量体として使用する非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物については、<共重合体>の項で述べた通りである。また、前記共重合体の製造方法に使用することができる芳香族ビニル化合物についても、<共重合体>の項で述べた通りである。
【0048】
前記触媒組成物に用いる希土類元素含有化合物(A)は、希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物を含む。該希土類元素含有化合物(A)としては、希土類元素-炭素結合を有する、希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物(以下、「(A-1)成分」ともいう。)、希土類元素-炭素結合を有しない、希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物(以下、「(A-2)成分」ともいう。)が挙げられる。
【0049】
前記(A-1)成分としては、例えば、下記一般式(II):
【化1】
[式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cpは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R~Rは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示す]で表されるメタロセン錯体、及び下記一般式(III):
【化2】
[式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cpは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、X’は、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオラート基、アミノ基、シリル基又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示す]で表されるメタロセン錯体、並びに下記一般式(IV):
【化3】
[式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオラート基、アミノ基、シリル基又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示し、[B]は、非配位性アニオンを示す]で表されるハーフメタロセンカチオン錯体が挙げられる。
【0050】
上記一般式(II)及び(III)で表されるメタロセン錯体において、式中のCpは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCpは、C7-x又はC11-xで示され得る。ここで、Xは、0~7又は0~11の整数である。また、Rは、それぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は、上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。置換インデニルとして、具体的には、2-フェニルインデニル、2-メチルインデニル等が挙げられる。なお、一般式(II)及び(III)における二つのCpは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0051】
上記一般式(IV)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体において、式中のCpR’は、無置換もしくは置換のシクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルであり、これらの中でも、無置換もしくは置換のインデニルであることが好ましい。
【0052】
一般式(IV)において、上記シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’は、C5-xで示される。ここで、Xは、0~5の整数である。また、Rは、それぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は、上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。シクロペンタジエニル環を基本骨格とするCpR’として、具体的には、以下のものが例示される。
【化4】
[式中、Rは水素原子、メチル基又はエチル基を示す。]
【0053】
一般式(IV)において、上記インデニル環を基本骨格とするCpR’は、一般式(II)及び(III)のCpと同様に定義され、好ましい例も同様である。
【0054】
一般式(IV)において、上記フルオレニル環を基本骨格とするCpR’は、C139-x又はC1317-xで示され得る。ここで、Xは、0~9又は0~17の整数である。また、Rは、それぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は、上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
【0055】
一般式(II)、(III)及び(IV)における中心金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57~71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。中心金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0056】
一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[-N(SiR]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(一般式(II)におけるR~R)は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は水素原子である。また、R~Rのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。R~Rのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になり、また、ケイ素まわりの嵩高さが低くなるため、非共役オレフィン化合物や芳香族ビニル化合物が導入され易くなる。同様の観点から、R~Rのうち少なくとも一つが水素原子であり、R~Rのうち少なくとも一つが水素原子であることが更に好ましい。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0057】
一般式(III)で表されるメタロセン錯体は、シリル配位子[-SiX’]を含む。シリル配位子[-SiX’]に含まれるX’は、下記で説明される一般式(IV)のXと同様に定義される基であり、好ましい基も同様である。
【0058】
一般式(IV)において、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオラート基、アミノ基、シリル基及び炭素数1~20の一価の炭化水素基からなる群より選択される基である。ここで、Xが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子のいずれでもよいが、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0059】
一般式(IV)において、Xが表すアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェノキシ基等のアリールオキシ基等が挙げられ、これらの中でも、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基が好ましい。
【0060】
一般式(IV)において、Xが表すチオラート基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn-ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec-ブトキシ基、チオtert-ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルチオフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基等が挙げられ、これらの中でも、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基が好ましい。
【0061】
一般式(IV)において、Xが表すアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の脂肪族アミノ基;フェニルアミノ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルアミノ基、2,6-ジイソプロピルフェニルアミノ基、2,6-ジネオペンチルフェニルアミノ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェニルアミノ基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェニルアミノ基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェニルアミノ基、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニルアミノ基等のアリールアミノ基;ビストリメチルシリルアミノ基等のビストリアルキルシリルアミノ基等が挙げられ、これらの中でも、ビストリメチルシリルアミノ基が好ましい。
【0062】
一般式(IV)において、Xが表すシリル基としては、トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等が挙げられ、これらの中でも、トリス(トリメチルシリル)シリル基が好ましい。
【0063】
また、一般式(IV)において、Xが表す炭素数1~20の一価の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分枝鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等の他;トリメチルシリルメチル基、ビストリメチルシリルメチル基等のケイ素原子を含有する炭化水素基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基、トリメチルシリルメチル基等が好ましい。
【0064】
一般式(IV)において、Xとしては、ビストリメチルシリルアミノ基又は炭素数1~20の一価の炭化水素基が好ましい。
【0065】
一般式(IV)において、[B]で示される非配位性アニオンとしては、例えば、4価のホウ素アニオンが挙げられる。該4価のホウ素アニオンとして、具体的には、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
【0066】
上記一般式(II)及び(III)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(IV)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、更に0~3個、好ましくは0~1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
また、上記一般式(II)及び(III)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(IV)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0068】
上記一般式(II)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びビス(トリアルキルシリル)アミンの塩(例えば、カリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は任意であるが、数時間~数十時間程度である。反応溶媒は特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(II)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
【化5】
[式中、X’’はハライドを示す。]
【0069】
上記一般式(III)で表されるメタロセン錯体は、例えば、溶媒中でランタノイドトリスハライド、スカンジウムトリスハライド又はイットリウムトリスハライドを、インデニルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)及びシリルの塩(例えばカリウム塩やリチウム塩)と反応させることで得ることができる。なお、反応温度は、室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は、任意であるが、数時間~数十時間程度である。反応溶媒は、特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えばトルエンを用いればよい。以下に、一般式(III)で表されるメタロセン錯体を得るための反応例を示す。
【化6】
[式中、X’’はハライドを示す。]
【0070】
上記一般式(IV)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体は、例えば、次の反応により得ることができる。
【化7】
【0071】
ここで、一般式(V)で表される化合物において、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、CpR’は、それぞれ独立して無置換もしくは置換シクロペンタジエニル、インデニル又はフルオレニルを示し、Xは、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオラート基、アミノ基、シリル基又は炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示す。また、一般式[A][B]で表されるイオン性化合物において、[A]は、カチオンを示し、[B]は、非配位性アニオンを示す。
【0072】
[A]で表されるカチオンとしては、例えば、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等が挙げられる。カルボニウムカチオンとしては、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンとしては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
【0073】
上記反応に用いる一般式[A][B]で表されるイオン性化合物としては、上記の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物であって、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が好ましい。また、一般式[A][B]で表されるイオン性化合物は、メタロセン錯体に対して0.1~10倍mol加えることが好ましく、約1倍mol加えることが更に好ましい。なお、一般式(IV)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を重合反応に用いる場合、一般式(IV)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体をそのまま重合反応系中に提供してもよいし、上記反応に用いる一般式(V)で表される化合物と一般式[A][B]で表されるイオン性化合物を別個に重合反応系中に提供し、反応系中で一般式(IV)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させてもよい。また、一般式(II)又は(III)で表されるメタロセン錯体と一般式[A][B]で表されるイオン性化合物とを組み合わせて使用することにより、反応系中で一般式(IV)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体を形成させることもできる。
【0074】
上記一般式(II)及び(III)で表されるメタロセン錯体、並びに上記一般式(IV)で表されるハーフメタロセンカチオン錯体の構造は、X線構造解析により決定することが好ましい。
【0075】
更に、他の(A-1)成分としては、下記一般式(VI):
MXQY・・・(VI)
[式中、Rは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、該RはMに配位しており、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Xは、それぞれ独立して炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位しており、Qは、周期律表第13族元素を示し、Yは、それぞれ独立して炭素数1~20の一価の炭化水素基又は水素原子を示し、該YはQに配位しており、a及びbは、2である]で表されるメタロセン系複合触媒が挙げられる。
【0076】
上記メタロセン系複合触媒の好適例においては、下記一般式(VII):
【化8】
[式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cpは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~20の炭化水素基を示し、該R及びRは、M及びAlにμ配位しており、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~20の炭化水素基又は水素原子を示す]で表されるメタロセン系複合触媒が挙げられる。
上記メタロセン系複合触媒を用いることで、共重合体を効率良く製造することができる。また、上記メタロセン系複合触媒、例えば予めアルミニウム触媒と複合させてなる触媒を用いることで、共重合体合成時に使用されるアルキルアルミニウムの量を低減したり、無くしたりすることが可能となる。なお、上記メタロセン系複合触媒を用いない従来の触媒系を用いると、共重合体合成時に大量のアルキルアルミニウムを用いる必要がある。例えば、上記メタロセン系複合触媒を用いない従来の触媒系では、金属触媒に対して10モル当量以上のアルキルアルミニウムを用いる必要があるところ、上記メタロセン系複合触媒であれば、5モル当量程度のアルキルアルミニウムを加えることで、優れた触媒作用が発揮される。
【0077】
上記メタロセン系複合触媒において、上記一般式(VI)中の金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57~71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0078】
上記一般式(VI)において、Rは、それぞれ独立して無置換インデニル又は置換インデニルであり、該Rは上記金属Mに配位している。なお、置換インデニルの具体例としては、例えば、1,2,3-トリメチルインデニル基、ヘプタメチルインデニル基、1,2,4,5,6,7-ヘキサメチルインデニル基等が挙げられる。
【0079】
上記一般式(VI)において、Qは、周期律表第13族元素を示し、具体的には、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等が挙げられる。
【0080】
上記一般式(VI)において、Xは、それぞれ独立して炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、該XはM及びQにμ配位している。ここで、炭素数1~20の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。なお、μ配位とは、架橋構造をとる配位様式のことである。
【0081】
上記一般式(VI)において、Yは、それぞれ独立して炭素数1~20の一価の炭化水素基又は水素原子を示し、該Yは、Qに配位している。ここで、炭素数1~20の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0082】
上記一般式(VII)において、金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムである。ランタノイド元素には、原子番号57~71の15元素が含まれ、これらのいずれでもよい。金属Mとしては、サマリウムSm、ネオジムNd、プラセオジムPr、ガドリニウムGd、セリウムCe、ホルミウムHo、スカンジウムSc及びイットリウムYが好適に挙げられる。
【0083】
上記一般式(VII)において、Cpは、無置換インデニル又は置換インデニルである。インデニル環を基本骨格とするCpは、C7-X又はC11-Xで示され得る。ここで、Xは、0~7又は0~11の整数である。また、Rは、それぞれ独立してヒドロカルビル基又はメタロイド基であることが好ましい。ヒドロカルビル基の炭素数は、1~20であることが好ましく、1~10であることが更に好ましく、1~8であることが一層好ましい。該ヒドロカルビル基として、具体的には、メチル基、エチル基、フェニル基、ベンジル基等が好適に挙げられる。一方、メタロイド基のメタロイドの例としては、ゲルミルGe、スタニルSn、シリルSiが挙げられ、また、メタロイド基は、ヒドロカルビル基を有することが好ましく、メタロイド基が有するヒドロカルビル基は、上記のヒドロカルビル基と同様である。該メタロイド基として、具体的には、トリメチルシリル基等が挙げられる。
置換インデニルとして、具体的には、2-フェニルインデニル、2-メチルインデニル等が挙げられる。なお、式(VII)における二つのCpは、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよい。
【0084】
上記一般式(VII)において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~20の一価の炭化水素基を示し、該R及びRは、M及びAlにμ配位している。ここで、炭素数1~20の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。なお、μ配位とは、架橋構造をとる配位様式のことである。
【0085】
上記一般式(VII)において、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~20の一価の炭化水素基又は水素原子である。ここで、炭素数1~20の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0086】
なお、上記メタロセン系複合触媒は、例えば、溶媒中で、下記一般式(VIII):
【化9】
[式中、Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、Cpは、それぞれ独立して無置換もしくは置換インデニルを示し、R~Rは、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は水素原子を示し、Lは、中性ルイス塩基を示し、wは、0~3の整数を示す]で表されるメタロセン錯体を、AlRで表される有機アルミニウム化合物と反応させることで得られる。なお、反応温度は、室温程度にすればよいので、温和な条件で製造することができる。また、反応時間は、任意であるが、数時間~数十時間程度である。反応溶媒は、特に限定されないが、原料及び生成物を溶解する溶媒であることが好ましく、例えば、トルエンやヘキサンを用いればよい。なお、上記メタロセン系複合触媒の構造は、H-NMRやX線構造解析により決定することが好ましい。
【0087】
上記一般式(VIII)で表されるメタロセン錯体において、Cpは、無置換インデニル又は置換インデニルであり、上記一般式(VII)中のCpと同義である。また、上記式(VIII)において、金属Mは、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムであり、上記式(VII)中の金属Mと同義である。
【0088】
上記一般式(VIII)で表されるメタロセン錯体は、シリルアミド配位子[-N(SiR]を含む。シリルアミド配位子に含まれるR基(R~R基)は、それぞれ独立して炭素数1~3のアルキル基又は水素原子である。また、R~Rのうち少なくとも一つが水素原子であることが好ましい。R~Rのうち少なくとも一つを水素原子にすることで、触媒の合成が容易になる。更に、アルキル基としては、メチル基が好ましい。
【0089】
上記一般式(VIII)で表されるメタロセン錯体は、更に0~3個、好ましくは0~1個の中性ルイス塩基Lを含む。ここで、中性ルイス塩基Lとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記錯体が複数の中性ルイス塩基Lを含む場合、中性ルイス塩基Lは、同一であっても異なっていてもよい。
【0090】
また、上記一般式(VIII)で表されるメタロセン錯体は、単量体として存在していてもよく、二量体又はそれ以上の多量体として存在していてもよい。
【0091】
一方、上記メタロセン系複合触媒の生成に用いる有機アルミニウム化合物は、AlRで表され、ここで、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1~20の一価の炭化水素基又は水素原子で、Rは炭素数1~20の一価の炭化水素基であり、但し、Rは上記R又はRと同一でも異なっていてもよい。炭素数1~20の一価の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられる。
【0092】
上記有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ-n-プロピルアルミニウム、水素化ジ-n-ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n-プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。また、これら有機アルミニウム化合物は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。なお、上記メタロセン系複合触媒の生成に用いる有機アルミニウム化合物の量は、メタロセン錯体に対して1~50倍molであることが好ましく、約10倍molであることが更に好ましい。
【0093】
前記(A-2)成分は、希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物であり、且つ、希土類元素と炭素との結合を有しない。該希土類元素化合物及び反応物が希土類元素-炭素結合を有しない場合、化合物が安定であり、取り扱い易い。ここで、希土類元素化合物とは、希土類元素(M)、即ち、周期律表中の原子番号57~71の元素から構成されるランタノイド元素、又はスカンジウム若しくはイットリウムを含有する化合物である。
なお、ランタノイド元素の具体例としては、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムを挙げることができる。なお、上記(A-2)成分は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
また、上記希土類元素化合物は、2価若しくは3価の希土類金属の塩又は錯体化合物であることが好ましく、水素原子、ハロゲン原子及び有機化合物残基から選択される1種又は2種以上の配位子を含有する希土類元素化合物であることが更に好ましい。更に、上記希土類元素化合物又は該希土類元素化合物とルイス塩基との反応物は、下記一般式(IX)又は(X):
1111 ・L11 ・・・ (IX)
1111 ・L11 ・・・ (X)
[それぞれの式中、M11は、ランタノイド元素、スカンジウム又はイットリウムを示し、X11は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオラート基、アミノ基、シリル基、アルデヒド残基、ケトン残基、カルボン酸残基、チオカルボン酸残基又はリン化合物残基を示し、L11は、ルイス塩基を示し、wは、0~3を示す]で表されることが好ましい。
【0095】
上記希土類元素化合物の希土類元素に結合する基(配位子)としては、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基(アルコールの水酸基の水素を除いた基であり、金属アルコキシドを形成する)、チオラート基(チオール化合物のチオール基の水素を除いた基であり、金属チオラートを形成する)、アミノ基(アンモニア、第一級アミン、又は第二級アミンの窒素原子に結合する水素原子を1つ除いた基であり、金属アミドを形成する)、シリル基、アルデヒド残基、ケトン残基、カルボン酸残基、チオカルボン酸残基、リン化合物残基が挙げられる。
該基(配位子)として、具体的には、水素原子;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の脂肪族アルコキシ基;フェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェノキシ基;チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオn-ブトキシ基、チオイソブトキシ基、チオsec-ブトキシ基、チオtert-ブトキシ基等の脂肪族チオラート基;チオフェノキシ基、2,6-ジ-tert-ブチルチオフェノキシ基、2,6-ジイソプロピルチオフェノキシ基、2,6-ジネオペンチルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルチオフェノキシ基、2-tert-ブチル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2-イソプロピル-6-チオネオペンチルフェノキシ基、2,4,6-トリイソプロピルチオフェノキシ基等のアリールチオラート基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の脂肪族アミノ基;フェニルアミノ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルアミノ基、2,6-ジイソプロピルフェニルアミノ基、2,6-ジネオペンチルフェニルアミノ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェニルアミノ基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェニルアミノ基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェニルアミノ基、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニルアミノ基等のアリールアミノ基;ビストリメチルシリルアミノ基等のビストリアルキルシリルアミノ基;トリメチルシリル基、トリス(トリメチルシリル)シリル基、ビス(トリメチルシリル)メチルシリル基、トリメチルシリル(ジメチル)シリル基、トリイソプロピルシリル(ビストリメチルシリル)シリル基等のシリル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子等が挙げられる。
該基(配位子)として、更には、サリチルアルデヒド、2-ヒドロキシ-1-ナフトアルデヒド、2-ヒドロキシ-3-ナフトアルデヒド等のアルデヒドの残基;2’-ヒドロキシアセトフェノン、2’-ヒドロキシブチロフェノン、2’-ヒドロキシプロピオフェノン等のヒドロキシフェノンの残基;アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニルアセトン、イソブチルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン等のジケトンの残基;イソ吉草酸、カプリル酸、オクタン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、シクロペンタンカルボン酸、ナフテン酸、エチルヘキサン酸、ピバル酸、バーサチック酸[シェル化学(株)製の商品名、C10モノカルボン酸の異性体の混合物から構成される合成酸]、フェニル酢酸、安息香酸、2-ナフトエ酸、マレイン酸、コハク酸等のカルボン酸の残基;ヘキサンチオ酸、2,2-ジメチルブタンチオ酸、デカンチオ酸、チオ安息香酸等のチオカルボン酸の残基;リン酸ジブチル、リン酸ジペンチル、リン酸ジヘキシル、リン酸ジヘプチル、リン酸ジオクチル、リン酸ビス(2-エチルヘキシル)、リン酸ビス(1-メチルヘプチル)、リン酸ジラウリル、リン酸ジオレイル、リン酸ジフェニル、リン酸ビス(p-ノニルフェニル)、リン酸ビス(ポリエチレングリコール-p-ノニルフェニル)、リン酸(ブチル)(2-エチルヘキシル)、リン酸(1-メチルヘプチル)(2-エチルヘキシル)、リン酸(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)等のリン酸エステルの残基;2-エチルヘキシルホスホン酸モノブチル、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、フェニルホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、2-エチルヘキシルホスホン酸モノ-p-ノニルフェニル、ホスホン酸モノ-2-エチルヘキシル、ホスホン酸モノ-1-メチルヘプチル、ホスホン酸モノ-p-ノニルフェニル等のホスホン酸エステルの残基;ジブチルホスフィン酸、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸、ビス(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸、ジラウリルホスフィン酸、ジオレイルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、ビス(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸、ブチル(2-エチルヘキシル)ホスフィン酸、(2-エチルヘキシル)(1-メチルヘプチル)ホスフィン酸、(2-エチルヘキシル)(p-ノニルフェニル)ホスフィン酸、ブチルホスフィン酸、2-エチルヘキシルホスフィン酸、1-メチルヘプチルホスフィン酸、オレイルホスフィン酸、ラウリルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、p-ノニルフェニルホスフィン酸等のホスフィン酸の残基等を挙げることもできる。
なお、これらの基(配位子)は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
上記希土類元素化合物と反応するルイス塩基としては、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルアニリン、トリメチルホスフィン、塩化リチウム、中性のオレフィン類、中性のジオレフィン類等が挙げられる。ここで、上記希土類元素化合物が複数のルイス塩基と反応する場合(一般式(IX)及び(X)においては、wが2又は3である場合)、ルイス塩基L11は、同一であっても異なっていてもよい。
【0097】
好適には、上記希土類元素化合物は、下記一般式(XI):
M-(AQ)(AQ)(AQ) ・・・ (XI)
[式中、Mは、スカンジウム、イットリウム又はランタノイド元素であり;AQ、AQ及びAQは、同一であっても異なっていてもよい官能基であり;Aは、窒素、酸素又は硫黄であり;但し、少なくとも1つのM-A結合を有する]で表される化合物が好ましい。ここで、ランタノイド元素とは、具体的には、ランタニウム、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミニウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウムである。該化合物は、反応系における触媒活性を向上させることができ、反応時間を短くし、反応温度を高くすることが可能な成分である。
【0098】
一般式(XI)中のMとしては、特に、触媒活性及び反応制御性を高める観点から、ガドリニウムが好ましい。
【0099】
一般式(XI)中のAが窒素である場合、AQ、AQ及びAQ(即ち、NQ、NQ及びNQ)で表される官能基としては、アミノ基等が挙げられる。そして、この場合、3つのM-N結合を有する。
【0100】
アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基等の脂肪族アミノ基;フェニルアミノ基、2,6-ジ-tert-ブチルフェニルアミノ基、2,6-ジイソプロピルフェニルアミノ基、2,6-ジネオペンチルフェニルアミノ基、2-tert-ブチル-6-イソプロピルフェニルアミノ基、2-tert-ブチル-6-ネオペンチルフェニルアミノ基、2-イソプロピル-6-ネオペンチルフェニルアミノ基、2,4,6-トリ-tert-ブチルフェニルアミノ基等のアリールアミノ基;ビストリメチルシリルアミノ基等のビストリアルキルシリルアミノ基等が挙げられ、特に、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素に対する溶解性の観点から、ビストリメチルシリルアミノ基が好ましい。上記アミノ基は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
上記構成によれば、(A-2)成分を3つのM-N結合を有する化合物とすることができ、各結合が化学的に等価となり、化合物の構造が安定となるため、取り扱いが容易となる。
また、上記構成とすれば、反応系における触媒活性を更に向上させることができる。そのため、反応時間を更に短くし、反応温度を更に高くすることができる。
【0102】
一般式(XI)中のAが酸素である場合、一般式(XI)(即ち、M-(OQ)(OQ)(OQ))で表される希土類元素含有化合物としては、特に制限されないが、例えば、下記一般式(XII):
(RO)M ・・・ (XII)
で表される希土類アルコラートや、下記一般式(XIII):
(R-COM・・・ (XIII)
で表される希土類カルボキシレート等が挙げられる。
ここで、上記一般式(XII)及び(XIII)中、Rは、同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~10のアルキル基である。
【0103】
一般式(XI)中のAが硫黄である場合、一般式(XI)(即ち、M-(SQ)(SQ)(SQ))で表される希土類元素含有化合物としては、特に制限されないが、例えば、下記一般式(XIV):
(RS)M ・・・ (XIV)
で表される希土類アルキルチオラートや、下記一般式(XV):
(R-CSM ・・・ (XV)
で表される化合物、等が挙げられる。
ここで、上記一般式(XIV)及び(XV)中、Rは、同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~10のアルキル基である。
【0104】
前記触媒組成物に用いることができる有機金属化合物(B)は、下記一般式(I):
YR ・・・ (I)
[式中、Yは、周期律表第1族、第2族、第12族及び第13族から選択される金属であり、R及びRは、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子で、Rは炭素数1~10の炭化水素基であり、但し、R、R及びRはそれぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、また、Yが周期律表第1族から選択される金属である場合には、aは1で且つb及びcは0であり、Yが周期律表第2族及び第12族から選択される金属である場合には、a及びbは1で且つcは0であり、Yが周期律表第13族から選択される金属である場合には、a、b及びcは1である]で表される。
【0105】
上記一般式(I)において、R、R及びRが示す炭素数1~10の炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の芳香族炭化水素基;ベンジル基等のアラルキル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基、エチル基、イソブチル基等が好ましい。
【0106】
前記有機金属化合物(B)としては、下記一般式(XVI):
AlR ・・・ (XVI)
[式中、R及びRは、炭素数1~10の炭化水素基又は水素原子で、Rは炭素数1~10の炭化水素基であり、但し、R、R及びRはそれぞれ互いに同一又は異なっていてもよい]で表される有機アルミニウム化合物が好ましい。該有機アルミニウム化合物は、上記一般式(I)において、YがAlで、a、b及びcが1である化合物に相当する。
【0107】
上記一般式(XVI)の有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム;水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジ-n-プロピルアルミニウム、水素化ジ-n-ブチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジヘキシルアルミニウム、水素化ジイソヘキシルアルミニウム、水素化ジオクチルアルミニウム、水素化ジイソオクチルアルミニウム;エチルアルミニウムジハイドライド、n-プロピルアルミニウムジハイドライド、イソブチルアルミニウムジハイドライド等が挙げられ、これらの中でも、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、水素化ジエチルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウムが好ましい。
【0108】
前記有機金属化合物(B)は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。
また、前記有機金属化合物(B)の含有量は、上述の希土類元素含有化合物(A)に対して1~50倍molであることが好ましく、約10倍molであることが更に好ましい。
【0109】
前記触媒組成物に用いることができるイオン性化合物(C)は、非配位性アニオンとカチオンとからなる。該イオン性化合物(C)としては、上述の希土類元素含有化合物(A)と反応してカチオン性遷移金属化合物を生成できるイオン性化合物等を挙げることができる。
ここで、非配位性アニオンとしては、4価のホウ素アニオン、例えば、テトラフェニルボレート、テトラキス(モノフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(トリフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(テトラフルオロメチルフェニル)ボレート、テトラ(トリル)ボレート、テトラ(キシリル)ボレート、(トリフェニル、ペンタフルオロフェニル)ボレート、[トリス(ペンタフルオロフェニル)、フェニル]ボレート、トリデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート等が挙げられ、これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが好ましい。
一方、カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アミンカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプタトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオン等を挙げることができる。カルボニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルカルボニウムカチオン(「トリチルカチオン」ともいう)、トリ(置換フェニル)カルボニウムカチオン等の三置換カルボニウムカチオン等が挙げられ、トリ(置換フェニル)カルボニルカチオンとして、より具体的には、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオン等が挙げられる。アミンカチオンとしては、アンモニウムカチオン等が挙げられ、アンモニウムカチオンの具体例としては、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン(例えば、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオン)等のトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオン等のN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジイソプロピルアンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオン等のジアルキルアンモニウムカチオン等が挙げられる。ホスホニウムカチオンの具体例としては、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオン等のトリアリールホスホニウムカチオン等が挙げられる。これらカチオンの中でも、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオン又はカルボニウムカチオンが好ましく、N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンが特に好ましい。
従って、イオン性化合物(C)としては、上述の非配位性アニオン及びカチオンからそれぞれ選択し組み合わせた化合物が好ましく、具体的には、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(「トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート」ともいう)等が好ましい。
前記イオン性化合物(C)は、1種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。また、前記触媒組成物におけるイオン性化合物(C)の含有量は、上述の希土類元素含有化合物(A)に対して0.1~10倍molであることが好ましく、約1倍molであることが更に好ましい。
【0110】
前記触媒組成物に用いることができるハロゲン化合物(D)としては、ルイス酸であるハロゲン含有化合物(以下、「(D-1)成分」ともいう。)、金属ハロゲン化物とルイス塩基との錯化合物(以下、「(D-2)成分」ともいう。)、活性ハロゲンを含む有機化合物(以下、「(D-3)成分」ともいう。)等が挙げられる。該ハロゲン化合物(D)は、例えば、上述の希土類元素含有化合物(A)と反応して、カチオン性遷移金属化合物やハロゲン化遷移金属化合物や遷移金属中心が電荷不足の化合物を生成することができる。
【0111】
上記(D-1)成分としては、例えば、周期律表中の第3族、第4族、第5族、第6族、第8族、第13族、第14族又は第15族の元素を含むハロゲン化合物を用いることもできる。好ましくは、アルミニウムハロゲン化物又は有機金属ハロゲン化物が挙げられる。また、ハロゲン元素としては、塩素又は臭素が好ましい。
上記ルイス酸であるハロゲン含有化合物として、具体的には、メチルアルミニウムジブロマイド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジクロライド、ブチルアルミニウムジブロマイド、ブチルアルミニウムジクロライド、ジメチルアルミニウムブロマイド、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジブチルアルミニウムブロマイド、ジブチルアルミニウムクロライド、メチルアルミニウムセスキブロマイド、メチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジブチルスズジクロライド、アルミニウムトリブロマイド、トリ(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、トリ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三塩化リン、五塩化リン、四塩化スズ、四塩化チタン、六塩化タングステン等が挙げられ、これらの中でも、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、エチルアルミニウムセスキブロマイド、エチルアルミニウムジブロマイドが特に好ましい。
上記(D-1)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0112】
上記(D-2)成分を構成する金属ハロゲン化物としては、塩化ベリリウム、臭化ベリリウム、ヨウ化ベリリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、塩化カドミウム、臭化カドミウム、ヨウ化カドミウム、塩化水銀、臭化水銀、ヨウ化水銀、塩化マンガン、臭化マンガン、ヨウ化マンガン、塩化レニウム、臭化レニウム、ヨウ化レニウム、塩化銅、ヨウ化銅、塩化銀、臭化銀、ヨウ化銀、塩化金、ヨウ化金、臭化金等が挙げられ、これらの中でも、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が好ましく、塩化マグネシウム、塩化マンガン、塩化亜鉛、塩化銅が特に好ましい。
また、上記(D-2)成分を構成するルイス塩基としては、リン化合物、カルボニル化合物、窒素化合物、エーテル化合物、アルコール等が好ましい。具体的には、リン酸トリブチル、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸トリクレジル、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジエチルホスフィノエタン、ジフェニルホスフィノエタン、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、プロピオニトリルアセトン、バレリルアセトン、エチルアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸フェニル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジフェニル、酢酸、オクタン酸、2-エチル-ヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、安息香酸、ナフテン酸、バーサチック酸、トリエチルアミン、N,N-ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、2-エチル-ヘキシルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール、1-デカノール、ラウリルアルコール等が挙げられ、これらの中でも、リン酸トリ-2-エチルヘキシル、リン酸トリクレジル、アセチルアセトン、2-エチルヘキサン酸、バーサチック酸、2-エチルヘキシルアルコール、1-デカノール、ラウリルアルコールが好ましい。
上記ルイス塩基は、上記金属ハロゲン化物1mol当り、0.01~30mol、好ましくは0.5~10molの割合で反応させる。このルイス塩基との反応物を使用すると、ポリマー中に残存する金属を低減することができる。
上記(D-2)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
上記(D-3)成分としては、ベンジルクロライド等が挙げられる。
【0114】
前記ハロゲン化合物(D)は、一種単独で使用することも、2種以上を混合して用いることもできる。
前記触媒組成物におけるハロゲン化合物(D)の含有量は、希土類元素含有化合物(A)に対して0~5倍molであることが好ましく、1~5倍molであることが更に好ましい。
【0115】
本発明の第1の共重合体の製造方法において、触媒組成物に用いる化合物(E)は、非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物からなる群から選択される。本発明の第1の共重合体の製造方法においては、触媒組成物に前記化合物(E)を用いることで、生成する共重合体のDSC測定における100~150℃の吸熱ピークを小さくでき、DSCで測定した100~150℃における非共役オレフィン単位に由来する結晶化度を小さくできる。
また、本発明の第2の共重合体の製造方法において、触媒組成物に用いる化合物(E’)は、前記共重合工程で共重合させる、単量体としての非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物とは種類が異なる非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物から選択される。本発明の第2の共重合体の製造方法において、触媒組成物に前記化合物(E’)を用いることで、生成する共重合体のDSC測定における100~150℃の吸熱ピークを小さくでき、DSCで測定した100~150℃における非共役オレフィン単位に由来する結晶化度を小さくできる。
【0116】
前記触媒組成物に用いることができる非共役オレフィン化合物とは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素-炭素二重結合を1個以上有する化合物を指す。該非共役オレフィン化合物としては、非環状の非共役オレフィン化合物、環状の非共役オレフィン化合物が挙げられる。
前記非環状の非共役オレフィン化合物としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン等が挙げられる。
また、前記環状の非共役オレフィン化合物としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、メチルシクロペンテン、メチルシクロヘキセン、メチルシクロヘプテン、メチルシクロオクテン、エチルシクロペンテン、エチルシクロヘキセン、エチルシクロヘプテン、エチルシクロオクテン、ジメチルシクロペンテン、ジメチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘプテン、ジメチルシクロオクテン等のシクロアルケン、ノルボルネン(2-ノルボルネンとも呼ぶ)、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-n-ブチル-2-ノルボルネン、5-n-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-n-デシル-2-ノルボルネン、5-シクロヘキシル-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン、5-フェニル-2-ノルボルネン、5-ベンジル-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、エチルジシクロペンタジエン等の架橋構造を有する化合物が挙げられる。
これらの中でも、触媒組成物に用いる非共役オレフィン化合物としては、ノルボルネン及びジシクロペンタジエンが好ましい。ノルボルネン及びジシクロペンタジエンは、共重合体に取り込まれ難く、生成する共重合体のDSC測定における100~150℃の吸熱ピークを更に小さくでき、DSCで測定した100~150℃における非共役オレフィン単位に由来する結晶化度を更に小さくできる。
【0117】
前記触媒組成物に用いることができる共役ジエン化合物としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン等が挙げられる。これらの中でも、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンが特に好ましい。化合物(E)として、1,3-ブタジエンを使用する場合、熟成により、1,3-ブタジエンが触媒組成物に十分に取り込まれ、共重合工程において、共重合体に取り込まれずに、生成する共重合体のDSC測定における100~150℃の吸熱ピークを更に小さくでき、DSCで測定した100~150℃における非共役オレフィン単位に由来する結晶化度を更に小さくできる。
【0118】
前記化合物(E)又は前記化合物(E’)としては、環状の非共役オレフィン化合物が好ましい。環状の非共役オレフィン化合物は、共重合体に特に取り込まれ難く、生成する共重合体のDSC測定における100~150℃の吸熱ピークを更に小さくでき、DSCで測定した100~150℃における前記非共役オレフィン単位に由来する結晶化度を更に小さくできる。
【0119】
また、前記化合物(E)又は前記化合物(E’)としては、炭素数3以上の非共役オレフィン化合物も好ましい。炭素数3以上の非共役オレフィン化合物も、共重合体に取り込まれ難く、生成する共重合体のDSC測定における100~150℃の吸熱ピークを更に小さくでき、DSCで測定した100~150℃における前記非共役オレフィン単位に由来する結晶化度を更に小さくできる。
【0120】
前記触媒組成物における前記化合物(E)又は前記化合物(E’)の含有量は、前記化合物(E)又は前記化合物(E’)が非共役オレフィン化合物の場合は、前記希土類元素含有化合物(A)に対して10倍mol以上であることが好ましく、50~10000倍molの範囲が更に好ましく、また、前記化合物(E)又は前記化合物(E’)が共役ジエン化合物の場合は、前記希土類元素含有化合物(A)に対して1倍mol以上であることが好ましく、3~1000倍molの範囲が更に好ましい。前記化合物(E)又は前記化合物(E’)の含有量が上記の場合、化合物(E)又は化合物(E’)の効果が十分に発揮されて、生成する共重合体のDSC測定における100~150℃の吸熱ピークを更に小さくでき、DSCで測定した100~150℃における前記非共役オレフィン単位に由来する結晶化度を更に小さくできる。
【0121】
前記触媒組成物は、更に、アルミノキサン(F)を含んでもよい。該アルミノキサン(F)は、有機アルミニウム化合物と縮合剤とを接触させることによって得られる化合物である。該アルミノキサン(F)を用いることによって、重合反応系における触媒活性を更に向上させることができるので、目的とする共重合体を容易に得ることができる。また、反応時間を更に短くし、反応温度を更に高くすることもできる。
【0122】
ここで、前記有機アルミニウム化合物としては、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、及びその混合物等が挙げられ、特に、トリメチルアルミニウム、トリメチルアルミニウムとトリブチルアルミニウムとの混合物が好ましい。
一方、前記縮合剤としては、例えば、水等が挙げられる。
【0123】
前記アルミノキサン(F)としては、例えば、下記式(XVII):
-(Al(R)O)- ・・・ (XVII)
[式中、Rは、炭素数1~10の炭化水素基であり、ここで、炭化水素基の一部はハロゲン及び/又はアルコキシ基で置換されてもよく;Rは、繰り返し単位間で同一であっても異なっていてもよく;nは5以上である]で表されるアルミノキサンを挙げることができる。
上記アルミノキサンの分子構造は、直鎖状であっても環状であってもよい。
上記式(XVII)中のnは、10以上であることが好ましい。
また、上記式(XVII)中のRに関して、炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソブチル基等が挙げられ、特に、メチル基が好ましい。該炭化水素基は、1種でもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。式(XVII)中のRに関して、炭化水素基としては、メチル基とイソブチル基との組み合わせが好ましい。
上記アルミノキサンは、脂肪族炭化水素に高い溶解性を有することが好ましく、芳香族炭化水素に低い溶解性を有することが好ましい。例えば、ヘキサン溶液として市販されているアルミノキサンが好ましい。
ここで、脂肪族炭化水素としては、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0124】
前記アルミノキサン(F)は、特に、下記式(XVIII):
-(Al(CH(i-CO)- ・・・ (XVIII)
[式中、x+yは1であり;mは5以上である]で表される修飾アルミノキサン(以下、「TMAO」ともいう。)としてもよい。TMAOとしては、例えば、東ソー・ファインケミカル社製の製品名「TMAO-341」が挙げられる。
【0125】
また、前記アルミノキサン(F)は、特に、下記式(XIX):
-(Al(CH0.7(i-C0.3O)- ・・・ (XIX)
[式中、kは5以上である]で表される修飾アルミノキサン(以下、「MMAO」ともいう。)としてもよい。MMAOとしては、例えば、東ソー・ファインケミカル社製の製品名「MMAO-3A」が挙げられる。
【0126】
更に、前記アルミノキサン(F)は、特に、下記式(XX):
-[(CH)AlO]- ・・・ (XX)
[式中、iは5以上である]で表される修飾アルミノキサン(以下、「PMAO」ともいう。)としてもよい。PMAOとしては、例えば、東ソー・ファインケミカル社製の製品名「PMAO-211」が挙げられる。
【0127】
前記アルミノキサン(F)は、触媒活性を向上させる効果を高める観点から、上記MMAO、TMAO、PMAOのうち、MMAO又はTMAOであることが好ましく、特に、触媒活性を向上させる効果を更に高める観点から、TMAOであることが更に好ましい。
【0128】
本発明の、第1の共重合体の製造方法は、上述の、希土類元素含有化合物(A)と、有機金属化合物(B)、イオン性化合物(C)及びハロゲン化合物(D)からなる群から選択される少なくとも一種の化合物と、非共役オレフィン化合物及び共役ジエン化合物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物(E)と、を含む触媒組成物を熟成させる工程(以下、「熟成工程」と呼ぶことがある。)を含む。ここで、熟成の方法は、特に限定されず、希土類元素含有化合物(A)と、有機金属化合物(B)、イオン性化合物(C)及びハロゲン化合物(D)から選択される化合物と、化合物(E)と、を含む触媒組成物を静置するだけでもよいし、撹拌してもよい。また、熟成工程は、加熱してもよく、例えば、熟成工程の温度は、0~100℃の範囲が好ましく、10~80℃の範囲がより好ましい。また、熟成工程の時間は、特に制限されるものではないが、例えば、1秒~1000時間とすることができ、好ましくは10秒~500時間、より好ましくは5分~300時間である。
【0129】
本発明の、第1及び第2の共重合体の製造方法は、上述の触媒組成物の存在下で、単量体としての、非共役オレフィン化合物と、共役ジエン化合物と、を共重合させる工程(以下、「共重合工程」と呼ぶことがある。)を含む。また、共重合体が芳香族ビニル単位を含有する場合は、上述の触媒組成物の存在下で、単量体としての、非共役オレフィン化合物と、共役ジエン化合物と、芳香族ビニル化合物と、を共重合させる。また、本発明の、第1及び第2の共重合体の製造方法は、該共重合工程の他に、更に、必要に応じ、カップリング工程、洗浄工程、その他の工程を適宜含んでもよい。
【0130】
前記共重合工程には、溶液重合法、懸濁重合法、液相塊状重合法、乳化重合法、気相重合法、固相重合法等の任意の方法を用いることができる。また、反応に溶媒を用いる場合、かかる溶媒としては、共重合反応において不活性なものであればよく、例えば、トルエン、ヘキサン(例えば、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン)等が挙げられる。
【0131】
前記共重合工程は、一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。一段階の共重合工程とは、重合させる単量体を一斉に反応させて共重合させる工程である。多段階の共重合工程とは、一種類又は二種類以上の単量体の一部又は全部を最初に反応させて重合体又は共重合体を形成し(第1重合段階)、次いで、残る種類の単量体や前記一種類又は二種類以上の単量体の残部を添加して共重合させる一以上の段階(第2重合段階~最終重合段階)を行って共重合させる工程である。
【0132】
上記触媒組成物の存在下では、反応器への各単量体の投入順序、各単量体の投入量、その他の反応条件を制御することによって、製造される共重合体中における共役ジエン単位全体における結合含量(シス-1,4結合含量、トランス-1,4結合含量、3,4ビニル結合含量及び1,2ビニル結合含量)や各単量体由来の単位の含有量(すなわち、各単量体の共重合比)を制御することができる。
【0133】
本発明の、第2の共重合体の製造方法においては、単量体としての前記共役ジエン化合物を反応器に最初に投入するタイミングで、前記化合物(E’)を該反応器に投入することが好ましい。単量体としての前記共役ジエン化合物を反応器に最初に投入するタイミングで、前記化合物(E’)を反応器に投入することで、化合物(E’)の作用が十分に発揮されて、非共役オレフィン単位の連鎖長を十分に短くすることができる。なお、単量体としての非共役オレフィン化合物の反応器への投入は、単量体としての共役ジエン化合物を反応器に最初に投入する前でも、単量体としての共役ジエン化合物を反応器に最初に投入した後でも、単量体としての共役ジエン化合物を反応器に最初に投入するタイミングと同時でもよい。また、芳香族ビニル化合物を使用する場合、芳香族ビニル化合物の反応器への投入は、単量体としての共役ジエン化合物を反応器に最初に投入する前でも、単量体としての共役ジエン化合物を反応器に最初に投入した後でも、単量体としての共役ジエン化合物を反応器に最初に投入するタイミングと同時でもよい。
【0134】
前記共重合工程は、不活性ガス、好ましくは窒素ガスやアルゴンガスの雰囲気下において行われることが好ましい。共重合工程の温度は、特に限定しないが、例えば、-100~200℃の範囲が好ましく、室温程度とすることもできる。なお、反応温度を上げると、共重合体の共役ジエン単位のシス-1,4選択性が低下することがある。共重合工程の圧力は、非環状の非共役オレフィン化合物を十分に反応系中に取り込むため、0.1~10.0MPaの範囲とすることが好ましい。また、共重合工程の反応時間は、特に限定しないが、例えば、1秒~10日の範囲であり、得られる共重合体について所望するミクロ構造、各単量体の種類、投入量及び添加順序、触媒の種類、反応温度等の条件によって適宜選択することができる。共重合工程において、メタノール、エタノール、イソプロパノール等の停止剤を用いて、反応を停止させてもよい。
【0135】
前記カップリング工程は、前記共重合工程において得られた共重合体の高分子鎖の少なくとも一部(例えば、末端)を変性する反応(カップリング反応)を行う工程である。カップリング反応は、共重合反応の転化率が100%に達した際に行うことが好ましい。
前記カップリング反応に用いるカップリング剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズ等のスズ含有化合物;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;グリシジルプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ビス(マレイン酸-1-オクタデシル)ジオクチルスズが、反応効率と低ゲル生成の点で、好ましい。
【0136】
前記洗浄工程は、前記共重合工程において得られた共重合体を洗浄する工程である。なお、洗浄に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等が挙げられるが、触媒組成物としてルイス酸由来の触媒を使用する際は、特にこれらの溶媒に対して酸(例えば、塩酸、硫酸、硝酸)を加えて使用することができる。添加する酸の量は溶媒に対して15mol%以下が好ましい。これ以上では酸が共重合体中に残存してしまうことで混練及び加硫時の反応に悪影響を及ぼす可能性がある。該洗浄工程により、共重合体中の触媒残渣量を好適に低下させることができる。
【0137】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述の共重合体を含むことを特徴とする。かかる本発明のゴム組成物は、耐摩耗性、耐亀裂成長性が高く、また、タイヤに使用することで、タイヤの転がり抵抗を低減することができる。
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、上述の共重合体を含み、更に必要に応じて、その他のゴム成分、充填剤、架橋剤、その他の成分を含むことができる。
【0138】
本発明のゴム組成物において、前記ゴム成分中の、前記共重合体の含有率は、10~100質量%の範囲が好ましく、20~100質量%の範囲が更に好ましく、30~100質量%の範囲がより一層好ましい。ゴム成分中の、前記共重合体の含有率が10質量%以上であれば、共重合体による作用が十分に発揮され、ゴム組成物の耐摩耗性、耐亀裂性が更に向上し、また、タイヤに使用することで、タイヤの転がり抵抗を更に低減することができる。
【0139】
なお、その他のゴム成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレン-プロピレン-非共役ジエンゴム(EPDM)、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0140】
前記ゴム組成物が充填剤を含む場合、ゴム組成物の補強性を向上させることができる。該充填剤としては、特に制限はなく、カーボンブラック、シリカ、水酸化アルミニウム、クレー、アルミナ、タルク、マイカ、カオリン、ガラスバルーン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸カリウム、硫酸バリウム等が挙げられるが、これらの中でも、カーボンブラックを用いることが好ましい。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記充填剤の配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、10~100質量部が好ましく、20~80質量部がより好ましく、30~60質量部が特に好ましい。前記充填剤の配合量が10質量部以上であることにより、充填剤を配合したことによる補強性向上の効果が得られ、また、100質量部以下であることにより、良好な作業性を保持することができる。
【0141】
前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム-ニトロソアミン系架橋剤等が挙げられる。なお、タイヤ用ゴム組成物としては、これらの中でも硫黄系架橋剤(加硫剤)がより好ましい。
前記架橋剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ゴム成分100質量部に対し、0.1~20質量部が好ましい。
【0142】
前記加硫剤を用いる場合には、更に加硫促進剤を併用することもできる。前記加硫促進剤としては、グアニジン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、チウラム系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の化合物が挙げられる。
【0143】
また、本発明のゴム組成物には、必要に応じて、軟化剤、加硫助剤、着色剤、難燃剤、滑剤、発泡剤、可塑剤、加工助剤、酸化防止剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線防止剤、帯電防止剤、着色防止剤、その他の配合剤など公知のものをその使用目的に応じて使用することができる。
【0144】
本発明のゴム組成物は、後述するタイヤ用途以外にも、防振ゴム、免震ゴム、コンベヤベルト等のベルト、ゴムクローラ、各種ホース等に用いることができる。
【0145】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述のゴム組成物を用いたことを特徴とする。かかる本発明のタイヤは、耐摩耗性、耐亀裂成長性が高く、転がり抵抗が小さい。
タイヤにおける本発明のゴム組成物の適用部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トレッド、ベーストレッド、サイドウォール、サイド補強ゴム及びビードフィラー等が挙げられる。
【0146】
前記タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。例えば、タイヤ成形用ドラム上に未加硫ゴム組成物及び/又はコードからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常タイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムを抜き去ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望のタイヤ(例えば、空気入りタイヤ)を製造することができる。
【実施例
【0147】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0148】
(比較例1)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン75gと、1,3-ブタジエン2gを含むトルエン溶液8gと、トルエン654gと、を加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、((1-ベンジルジメチルシリル-3-メチル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{(1-BnMeSi-3-Me)CGd[N(SiHMe}0.075mmol、ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[MeNHPhB(C]0.083mmol、及びジイソブチルアルミニウムハイドライド0.35mmolを仕込み、トルエン30gを加えて、触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器に加え、60℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaで、前記耐圧ステンレス反応器に投入し、75℃で計4時間共重合を行った。1,3-ブタジエンは、24分おきに1,3-ブタジエン2gを含むトルエン溶液8gを投入し、全部で1,3-ブタジエン20gを含むトルエン溶液80gを加えた。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体aを得た。
【0149】
(実施例1)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン145gと、2-ノルボルネン50gと、1,3-ブタジエン34gを含むトルエン溶液140gと、トルエン380gと、を加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、モノ(1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{1,3-(t-BuMeSi)Gd[N(SiHMe}0.150mmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[PhCB(C]0.150mmol、及びトリイソブチルアルミニウム1.5mmolを仕込み、トルエン95mLを加えて、触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器に加え、75℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaで、前記耐圧ステンレス反応器に投入し、75℃で計4時間共重合を行った。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Aを得た。
【0150】
(実施例2)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン127gと、2-ノルボルネン75gと、1,3-ブタジエン34gを含むトルエン溶液140gと、トルエン372gを加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、モノ(1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{1,3-(t-BuMeSi)Gd[N(SiHMe}0.150mmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[PhCB(C]0.150mmol、及びトリイソブチルアルミニウム1.5mmolを仕込み、トルエン95mLを加えて、触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器に加え、75℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaで、前記耐圧ステンレス反応器に投入し、75℃で計4時間共重合を行った。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Bを得た。
【0151】
(実施例3)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン145gと、1,3-ブタジエン34gを含むトルエン溶液140gと、トルエン430gを加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、モノ(1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{1,3-(t-BuMeSi)Gd[N(SiHMe}0.150mmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[PhCB(C]0.150mmol、及びトリイソブチルアルミニウム1.5mmolを仕込み、トルエン95mLを加え、更に、1,3-ブタジエン0.08g(Gdに対して10当量)を加え、室温(23℃)で30分間熟成させて、触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器に加え、75℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaで、前記耐圧ステンレス反応器に投入し、75℃で計4時間共重合を行った。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Cを得た。
【0152】
(実施例4)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン118gと、トルエン473gと、を加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、モノ(1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体{1,3-(t-BuMeSi)Gd[N(SiHMe}0.090mmol、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[MeHNPhB(C]0.090mmol、及びトリイソブチルアルミニウム0.27mmolを仕込み、トルエン57mLを加え、室温(23℃)で16時間熟成させて、触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器に加え、75℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaで、前記耐圧ステンレス反応器に投入し、75℃で計4時間共重合を行った。1,3-ブタジエンは、連続的に0.3~0.4mL/分の速度で、1,3-ブタジエン26gを含むトルエン溶液102gとして、加えた。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Dを得た。
【0153】
(実施例5)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器に、スチレン30gと、トルエン500gと、を加えた。
一方、窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、モノ(1,3-ビス(tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ネオジム錯体{1,3-(t-BuMeSi)Nd[N(SiHMe}0.090mmol、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[MeHNPhB(C]0.090mmol、及びトリイソブチルアルミニウム0.45mmolを仕込み、トルエン38mLを加え、室温(23℃)で16時間熟成させて、触媒溶液とした。
得られた触媒溶液を、前記耐圧ステンレス反応器に加え、75℃に加温した。
次いで、エチレンを圧力1.5MPaで、前記耐圧ステンレス反応器に投入し、75℃で計4時間共重合を行った。1,3-ブタジエンは、連続的に0.6~0.8mL/分の速度で、1,3-ブタジエン55gを含むトルエン溶液220gとして、加えた。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLを、前記耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。
次いで、大量のメタノールを用いて共重合体を分離し、50℃で真空乾燥し、共重合体Eを得た。
【0154】
(共重合体の分析)
得られた共重合体について、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、エチレン単位、ブタジエン単位、スチレン単位の含有率(mol%)、結晶化度、融点、吸熱ピークエネルギー、ガラス転移温度を、下記の方法で測定した。
【0155】
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製HLC-8321GPC/HT、カラム:昭和電工社製HT-806M×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、共重合体のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は140℃である。
【0156】
<エチレン単位、ブタジエン単位、スチレン単位の含有率>
共重合体中のエチレン単位、ブタジエン単位、スチレン単位の含有率(mol%)を、H-NMRスペクトル(100℃、d-テトラクロロエタン標準:6ppm)における、各ピークの積分比より求めた。
より具体的には、共重合体中のスチレン単位由来の芳香族水素(5H:7.4-6.4ppm)と、1,4-結合のブタジエン単位由来のオレフィン水素(2H:5.3-5.5ppm)と、それぞれの脂肪族水素(スチレン(3H)+ブタジエン(4H)+エチレン(1H):1.4-2.4ppm)の積分比より求めた。結果を表1に示す。
【0157】
<結晶化度>
共重合体サンプルを、-150℃~150℃まで、10℃/minで昇温し、その時の0~100℃の吸熱ピークエネルギー(ΔH)と、100~150℃の吸熱ピークエネルギー(ΔH)を測定した。
また、同様にして、100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH)を測定した。
前記ポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH)に対する、共重合体の0~100℃の吸熱ピークエネルギー(ΔH)の比率(ΔH/ΔH)から、0~100℃におけるエチレン単位(非共役オレフィン単位)に由来する結晶化度(%)を算出し、また、前記ポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH)に対する、共重合体の100~150℃の吸熱ピークエネルギー(ΔH)の比率(ΔH/ΔH)から、100~150℃におけるエチレン単位(非共役オレフィン単位)に由来する結晶化度(%)を算出した。
なお、共重合体サンプルの吸熱ピークエネルギーと、ポリエチレンの結晶融解エネルギーは、示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)で測定した。結果を表1に示す。また、比較例1及び実施例1~3の共重合体のDSCチャートを図1図4に示す。
【0158】
<融点>
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、共重合体の融点(T)を測定した。
【0159】
<吸熱ピークエネルギー>
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、10℃/分の昇温速度で-150℃から150℃まで昇温し、その時(1st run)の0~120℃における吸熱ピークエネルギーを測定した。
【0160】
<ガラス転移温度>
示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、JIS K 7121-1987に準拠して、共重合体のガラス転移温度(T)とした。
【0161】
【表1】
【0162】
表1から、実施例1~5の共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定した100~150℃における非共役オレフィン単位に由来する結晶化度が小さく、低歪領域での発熱性が低減されており、また、作業性が良好なことが分かる。なお、実施例1~5の共重合体は、エチレン単位の含有量が多いため、高歪領域でのエネルギーの散逸能も高く、耐摩耗性、耐亀裂成長性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明の共重合体は、ゴム組成物のゴム成分として利用できる。また、本発明の共重合体の製造方法は、かかる共重合体の製造に利用できる。また、本発明のゴム組成物は、タイヤを始め、各種ゴム製品に利用できる。更に、本発明のタイヤは、各種車輌向けのタイヤとして利用できる。
図1
図2
図3
図4