(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】外壁版の目地構造及び建物
(51)【国際特許分類】
E04B 2/90 20060101AFI20221018BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20221018BHJP
E04G 5/04 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
E04B2/90
E04F13/08 Y
E04G5/04 D
(21)【出願番号】P 2018205033
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 崇
(72)【発明者】
【氏名】木村 大地
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-027429(JP,A)
【文献】実開平04-004143(JP,U)
【文献】実開昭63-143640(JP,U)
【文献】特開2008-202213(JP,A)
【文献】特開2007-056594(JP,A)
【文献】実開昭60-006052(JP,U)
【文献】特開平10-018583(JP,A)
【文献】特開2018-071108(JP,A)
【文献】特開2000-110287(JP,A)
【文献】特開2000-328701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/88-2/96
E04F 13/08
E04G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁を構成する複数の外壁版が躯体に対してロッキング構法によって取り付けられ
た建物における、外壁版の目地構造であって、
前記外壁版を下方から支持する支持部材と、
足場接続用のアンカー部材を接続可能な固定部材と、を備え、
前記支持部材は、前記躯体を構成する梁のフランジの上面側に固定され、
前記固定部材は、
前記フランジの下面側に固定され、
上下に配置された外壁版間の横目地部に配置されることを特徴とする外壁版の目地構造。
【請求項2】
前記固定部材の上方又は下方に位置する前記外壁版の何れか一方のみに、該固定部材を配置するための切欠き部が形成されている、請求項1に記載の外壁版の目地構造。
【請求項3】
前記固定部材は、前記横目地部の目地幅の中心よりも下側に偏心して配置される、請求項1または2に記載の外壁版の目地構造。
【請求項4】
前記固定部材は、前記外壁版の横幅の中央部に配置される、請求項1~3の何れか一項に記載の外壁版の目地構造。
【請求項5】
前記固定部材は、前記アンカー部材を接続可能な雌ねじを有する、請求項1~4の何れか一項に記載の外壁版の目地構造。
【請求項6】
前記固定部材は、前
記梁の上側フランジの下面側に固定される、請求項1~5の何れか一項に記載の外壁版の目地構造。
【請求項7】
前記固定部材は、該固定部材の先端が前記外壁の表面に露出するように配置される、請求項1~6の何れか一項に記載の外壁版の目地構造。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の外壁版の目地構造を備えることを特徴とする建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場を建物の躯体に接続するための固定部材を備えた建物における、外壁版の目地構造、及び建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の周囲に足場を設置して外壁の施工作業等を行うことがある。そして、足場の安定性を高めるために、壁つなぎ用のアンカー部材等を介して、足場を建物の躯体に接続する方法が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、壁つなぎ用のアンカー部材を建物の躯体に接続するための壁つなぎ取付金物が開示されている。当該壁つなぎ取付金物は、一端側に、建物の鉄骨柱に係合可能なフック部が設けられ、他端側に、アンカー部材を接続可能な接続部が設けられたものである。
【0004】
そして、この壁つなぎ取付金物は、複数の外壁版(外壁パネル)により構成される外壁において、左右に隣接する外壁版間の縦目地部を通してフック部を建物の鉄骨柱に係合させるとともに、他端側の接続部を縦目地部から外部に突出させた状態で、接続部に足場側のアンカー部材を接続して使用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された壁つなぎ取付金物は、左右に隣接する外壁版間の縦目地部に配置することを前提としている。そのため、例えば、各外壁版がロッキング構法により躯体に取付けられた建物のように、左右に隣接する外壁版間の縦目地部の隙間が小さい場合、または隙間がない場合には、使用することが困難である。
【0007】
また、壁つなぎ取付金物の設置間隔は、足場の強度を確保する観点から、所定の範囲に定められている。特許文献1の壁つなぎ取付金物は、左右に隣接する外壁版間の縦目地部に配置するものであるため、当該縦目地部の位置を上記所定の設置間隔に合わせなければならず、外壁版の割り付けに影響が生じる虞がある。
【0008】
それゆえ本発明は、外壁版がロッキング構法により躯体に取り付けられる建物においても足場を躯体に接続可能とし、また、外壁版の割り付けに影響が生じ難い構成とした、外壁版の目地構造及び建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、外壁を構成する複数の外壁版が躯体に対してロッキング構法によって取り付けられており、足場接続用のアンカー部材を接続可能な固定部材が躯体に固定される建物における、外壁版の目地構造であって、
前記固定部材が、上下に配置された外壁版間の横目地部に配置されることを特徴とするものである。
【0010】
なお、本発明の外壁版の目地構造にあっては、前記固定部材の上方又は下方に位置する前記外壁版の何れか一方のみに、該固定部材を配置するための切欠き部が形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の外壁版の目地構造にあっては、前記固定部材は、前記横目地部の目地幅の中心よりも下側に偏心して配置されることが好ましい。
【0012】
また、本発明の外壁版の目地構造にあっては、前記固定部材は、前記外壁版の横幅の中央部に配置されることが好ましい。
【0013】
また、本発明の外壁版の目地構造にあっては、前記固定部材は、前記アンカー部材を接続可能な雌ねじを有することが好ましい。
【0014】
また、本発明の外壁版の目地構造にあっては、前記固定部材は、前記躯体を構成する梁の上側フランジの下面側に固定されることが好ましい。
【0015】
また、本発明の外壁版の目地構造にあっては、前記固定部材は、該固定部材の先端が前記外壁の表面に露出するように配置されることが好ましい。
【0016】
また、本発明の建物は、上記の何れかの外壁版の目地構造を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、外壁版がロッキング構法により躯体に取り付けられる建物においても足場を躯体に接続可能とし、また、外壁版の割り付けに影響が生じ難い構成とした、外壁版の目地構造及び建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態としての外壁版の目地構造を示す鉛直方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、各図において共通する構成には同一の符号を付している。
【0020】
図1は、建物100における外壁版の目地構造1を示す鉛直方向の断面図(縦断面図)であり、
図2は、当該外壁版の目地構造1を建物100の外側から見た正面図である。
【0021】
ここで、一例としての建物100の全体構成について説明する。建物100は、例えば、鉄骨造の骨組みを有する2階建ての住宅とすることができる。また、建物100は、地盤に固定された基礎構造体と、当該基礎構造体上に固定される上部構造体と、で構成される。
【0022】
基礎構造体は、上部構造体の下方に位置し、その骨組みを支持するものであり、例えば、鉄筋コンクリート造の断面T字状の布基礎とすることができる。上部構造体は、複数の柱と、柱間に架設された複数の梁4とで構成される骨組み(躯体)と、この躯体の外周側に配置される外壁2と、躯体を構成する梁4上に配置される各階の床及び屋根と、を備える。
【0023】
建物100は、建物100の外周を取り囲む外壁2(外周壁)を備え、外壁2は、複数のパネル状の外壁版3が連接して配置されることにより構成される。また、各外壁版3は、躯体に対してロッキング構法によって取り付けられている。つまり、各外壁版3は、層間変位等に伴い、躯体に対して左右に揺動することができるように構成されている。
【0024】
ここで、外壁版3の具体例としては、例えば、軽量気泡コンクリート(以下、「ALC」と記載する。「ALC」とは「autoclaved light weight concrete」の略である。)のパネル、PCコンクリートパネル、及び押出成型セメント板などを用いることができるが、ロッキング構法により躯体に取付け可能なものであれば、外壁版3の材質、形状等の具体的な構成は特に限定されない。この外壁版3を、躯体を構成する構造部材としての梁4、柱等の外周側に連接することにより、外皮層としての外壁2を形成することができる。なお、上下に配置された外壁版3間の横目地部11、左右に隣接する外壁版3間の縦目地部12にはそれぞれ、シーリング13、14が施される(
図2参照)。
【0025】
なお、本例では、左右に隣接する外壁版3間の隙間(縦目地部12の目地底に形成される外壁版3間の隙間)が1mmであり、また、上下に配置された外壁版3間の隙間(横目地部11の目地底に形成される外壁版3間の隙間)が15mmであるが、それぞれの隙間の大きさは適宜変更可能である。また、本例において縦目地部12の目地幅は17mmであり、横目地部11の目地幅は20mmである。なお、「目地幅」とは、目地底の幅ではなく、所謂「シーリング幅」、すなわち、各目地部11、12においてシーリング13、14を施す範囲の最大幅を意味する。
【0026】
図1に示すように、建物100は、外壁版3を支持し、躯体を構成する構造部材としての梁4と、足場を躯体に接続するためのアンカー部材を接続可能な固定部材5とを備える。
【0027】
梁4は、建物100の外周を取り囲む外壁2に沿って配置され、水平方向に延在するものであり、複数の柱によって支持される。本例の梁4は、ウェブ4aと、当該ウェブ4aの上下端にそれぞれ連なる上側フランジ4b及び下側フランジ4cとを有するH形鋼で構成されている。なお、梁4の形状及び材質は適宜変更可能である。
【0028】
梁4の上側フランジ4b及び下側フランジ4cには、ボルト7等を通すための複数の貫通孔が形成されている。上側フランジ4bの上面には、支持部材6が、ボルト7及びナット8等の締結部材により固定されている。
【0029】
本例の支持部材6は、断面がT字状となるように溶接された板状の鋼材からなる長尺部材であり、梁4の延在方向に沿って配置される。また、本例の支持部材6は、外壁版3の横幅(水平方向の長さ)全体を下方から支持するように延在している。なお、支持部材6は、必ずしも外壁版3の横幅全体を支持する長尺部材である必要はなく、外壁版3の横幅よりも長さの短い複数の支持部材を用いる構成としてもよい。その場合、例えば1枚の外壁版3に対して、複数の支持部材を、互いに間隔をあけて配置して、当該外壁版3を支持する構成とすることができる。
【0030】
本例の支持部材6は、
図1、2に示すように、水平方向に延在する水平板部6aと、水平板部6aの上面から垂直に立設する鉛直板部6bとを有する。水平板部6aにおける鉛直板部6bよりも屋内側の部分は、上側フランジ4bの上面に載置され、当該上側フランジ4bに締結固定される。また、水平板部6aにおける鉛直板部6bよりも屋外側の部分は、外壁版3の下面に当接して外壁版3を下方から支持する。また、鉛直板部6bは、外壁版3の屋内側の面にあてがわれ、支持部材6に対して外壁版3がロッキング(揺動)可能な状態で、ボルト等の締結部材を用いて締結される。すなわち、外壁版3は、支持部材6に対して外壁版3の厚さ方向に移動しないように構成される。
【0031】
また、梁4には、固定部材5がボルト7及びナット8等の締結部材により固定されている。ここで、本例の固定部材5は、
図3、4にも示すように、梁4に締結固定される板状の固定部5aと、内周面に雌ねじが設けられた円筒状の接続部5bとを有する。固定部5aには、ボルト7等を通すための貫通孔5cが2箇所に形成されている。また、固定部5aには、接続部5bを所定の高さに配置するための屈曲部5d、5eが形成されている。当該屈曲部5d、5eで高さを調整することによって、固定部5aを躯体(本例では梁4の上側フランジ4bの下面)に固定した状態で、接続部5bが外壁版3の横目地部11の所定の高さに配置される。なお、固定部材5は、金属製の部材(金物)とすることができるが、材質は特に限定されず、適度な剛性を有するものであれば樹脂製等でもよい。
【0032】
接続部5bは、足場を躯体に接続するためのアンカー部材を接続可能な構成であり、本例の場合、当該アンカー部材は、接続部5bの雌ねじに螺合する雄ねじを備える。なお、接続部5b側に雄ねじを設け、アンカー部材側に雌ねじを設けてもよい。また、固定部材5とアンカー部材との接続は、雄ねじと雌ねじとのねじ結合による接続方法に限らず、他の接続方法を用いた構成でもよい。また、固定部材5の形状は適宜変更可能であり、例えば、屈曲部5d、5eを設けずに固定部5a全体を平坦な板状としてもよいし、固定部5aに対する接続部5bの位置、角度等を変更することも可能である。
【0033】
図1に示すように、固定部材5は、外壁2の屋内側に位置する梁4から、上下に配置された外壁版3間の横目地部11の隙間を通って、外壁2の表面まで延在している。すなわち、固定部材5は、上下に配置された外壁版3間の横目地部11に配置され、且つ、外壁2を厚さ方向に貫通しており、接続部5bの先端は、外壁2の表面に露出している。また、本例の固定部材5は、接続部5bの軸心Aが、水平方向に延在し、且つ、平面視で外壁2(外壁版3)に対して垂直に延在するように配置される。また、本例では、固定部材5の下方に位置する外壁版3に、固定部材5を配置するための切欠き部15が形成されている。また、本例の固定部材5は、支持部材6の下方に配置されている。
【0034】
また、
図1、2に示すように、外壁版3の表面において、固定部材5の接続部5bの周囲には凹状のシーリングポケット16(座掘り部分)が形成される。シーリングポケット16には、シーリング剤(隙間充填剤)が充填されてシーリング17を形成する。これにより、固定部材5と外壁版3との間の隙間を塞いで外壁2の気密性、防水性を確保することができる。なお、シーリングポケット16は、例えば
図2に示すように、正面視で円形とすることができるが、これに限定されず、他の形状としてもよい。
【0035】
また、本例では、梁4に支持部材6を固定するボルト7及びナット8を用いて、固定部材5を梁4に固定している。つまり、本例においては、
図1に示すボルト7が、支持部材6の水平板部6aと、上側フランジ4bと、固定部材5とをまとめて貫通した状態で締結されている。このように、支持部材6と固定部材5とを、共通の締結部材を用いてまとめて梁4に締結固定することにより、使用する締結部材の数を削減することができる。
【0036】
以上のように、本実施形態にあっては、梁4に固定した固定部材5を、上下に配置された外壁版3間の横目地部11に配置する構成としている。そして、外壁2の表面に露出した固定部材5の接続部5bに対して、足場接続用のアンカー部材を接続することで、足場を躯体(梁4)に接続することができる。このように、本実施形態では、横目地部11に配置した固定部材5を用いて、容易に足場を躯体に接続することができる。
【0037】
なお、ロッキング構法の外壁2の場合、基本的に、左右に隣接する外壁版3間の(縦目地部12の)隙間よりも上下に配置された外壁版3間の(横目地部11の)隙間の方が大きくなっている。このため、本実施形態のように上下に配置された外壁版3間の横目地部11に固定部材5を配置することで、固定部材5を配置するための、外壁版3に形成する切欠き部15を少なくとも小さくすることができ、場合によっては当該切欠き部15を不要とすることができる。すなわち、固定部材5を配置するための外壁版3の削り量を低減することができる。
【0038】
また、本実施形態では、縦目地部12の目地幅(シーリング幅)よりも横目地部11の目地幅の方が大きい。したがって、横目地部11に固定部材5を配置することで、シーリングポケット16を形成するための外壁版3の切削量を低減することができる。その結果、施工にかかる手間が低減されるのみならず、外壁版3の切削による外壁2の意匠性の低下も抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態では、固定部材5が外壁2から大きく突出しない構成としているので、施工後に固定部材5を撤去する必要がなく、建物100の補修、メンテナンス等の際に再度、固定部材5をそのまま使用することができる。また、アンカー部材を接続するための接続部5bを雌ねじ構造とすることで、外壁版3に埋め込むように配置することができ、外壁版3の表面からの突出量を低減することができる。さらに、接続部5bを雌ねじ構造としたことで、外壁版3の表面から突出しないようにすることも可能となる。また、接続部5bを雌ねじ構造としたことで、雄ねじ構造とする場合に比べて、シーリングポケット16にシーリング剤を充填する際に、ねじ溝(ねじ山)にシーリング剤が付着し難い。また、接続部5bのねじ穴を着脱可能な蓋等で塞いでおけば、ねじ孔にシーリング剤が入り込むことをより確実に防止することができる。さらに、施工後において、接続部5bのねじ穴を蓋で塞ぐことで、ねじ穴にゴミ等が侵入することも防止することができる。そして、建物100の補修等の際に再度アンカー部材を接続する時には、蓋を接続部5bから取り外して使用すればよい。
【0040】
また、横目地部11に固定部材5を配置する構成としたことにより、縦目地部12の場合と比べて、外壁版3の割り付けに影響が生じ難くなる。すなわち、横目地部11に固定部材5を配置する構成としたことで、足場の強度及び安定性を確保する上で定められた所定の設置間隔で固定部材5を容易に配置することができる。
【0041】
このように、本実施形態によれば、外壁版3がロッキング構法により躯体に取り付けられる建物100において足場を躯体に接続可能とし、また、外壁版3の割り付けに影響が生じ難い構成とした外壁版の目地構造1、及び建物100を提供することができる。
【0042】
また、上下に配置された外壁版3間の横目地部11の目地幅、及び、固定部材5の厚み等の条件に応じて、外壁版3には、本例のように、固定部材5を配置するための切欠き部15が形成される場合がある。切欠き部15を設ける場合、固定部材5を上方又は下方の外壁版3に寄せて配置して、固定部材5の上方又は下方に位置する外壁版3の何れか一方のみに、切欠き部15が形成されるようにすることが好ましい。このような構成とすることで、外壁版3を切削等により切り欠く施工手間を軽減することができる。なお、固定部材5の上方及び下方に位置する外壁版3の両方に切欠き部15を設けてもよい。
【0043】
また、本例の固定部材5は、
図1に示すように、横目地部11の目地幅の中心となる線Cよりも下側に偏心して配置されている。すなわち、本例の固定部材5は、固定部材5の接続部5bの軸心Aが、横目地部11の目地幅の中心線Cよりも下方に位置するように配置されている。このような構成とすることにより、シーリングポケット16を形成するための、固定部材5の上方の外壁版3の切欠き量が、固定部材5の下方の外壁版3の切欠き量よりも小さくなる。その結果、建物100の下方からシーリングポケット16を見上げた際に目立ち難くなり、シーリングポケット16による外観の意匠性の低下を抑制することができる。すなわち、固定部材5の上方に設けたシーリングポケット16は、下方から見上げた際に影となるため目立ち易く、外観の意匠性を損ない易いところ、固定部材5の上方側のシーリングポケット16を、下方側のシーリングポケット16よりも小さくすることで目立ち難くして、見栄えの悪化を防止することができる。
【0044】
ここで、固定部材5は、横目地部11に配置されていればその位置は特に限定されるものではないが、
図2に実線で示すように、外壁版3の横幅の中央部に配置されることが好ましい。このような構成により、ロッキング時のシーリング13、17への負荷を低減することができる。すなわち、ロッキング時の変位量は、外壁版3の横幅の両側端部に比べて中央部の方が小さいため、当該中央部に固定部材5を配置することで、ロッキング時における固定部材5と外壁版3との相対的な位置ずれを小さくすることができる。その結果、固定部材5と上下の外壁版3に挟まれた位置にあるシーリング13、17への負荷を低減することができる。
【0045】
なお、固定部材5は、
図2に二点鎖線で示すように、横目地部11と縦目地部12の交点部分に配置してもよい。この場合、切欠き部15及びシーリングポケット16を形成するための切削量をさらに低減することができ、切削の施工手間を軽減することができる。
【0046】
また、本実施形態では、固定部材5を、梁4の上側フランジ4bの下面側に固定している。上側フランジ4bの上面には、本例のような支持部材6に限らず、他の金物類、床材、及び上階の柱等が配置されることがあるため、上側フランジ4bの下面側に固定部材5を配置することで、固定部材5の取付け位置が制限され難くなる。その結果、足場の強度を確保する上で適切な間隔で固定部材5を設置することができるので、足場の強度及び安定性を確保し易くなる。
【0047】
本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲で記載された内容を逸脱しない範囲で、様々な構成により実現することが可能である。例えば、上記実施形態では、梁4の上側フランジ4bの下面側に固定部材5を締結固定しているが、これに限られず、例えば、上側フランジ4bの上面側に固定部材5を固定してもよい。また、固定部材5を、ウェブ4aまたは下側フランジ4cに固定してもよいし、梁4以外の躯体(例えば柱等)に固定してもよい。また、固定部材5は、躯体に対して溶接により固定してもよい。また、固定部材5は、本例のように躯体に直接固定してもよいし、他の部材を介して間接的に固定してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1:外壁版の目地構造
2:外壁
3:外壁版
4:梁(躯体)
4a:ウェブ
4b:上側フランジ
4c:下側フランジ
5:固定部材
5a:固定部
5b:接続部
5c:貫通孔
5d、5e:屈曲部
6:支持部材
6a:水平板部
6b:鉛直板部
7:ボルト(締結部材)
8:ナット(締結部材)
11:横目地部
12:縦目地部
13、14:シーリング
15:切欠き部
16:シーリングポケット
17:シーリング剤
A:固定部材の接続部の軸心
C:目地幅の中心線
100:建物