(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】馳締解体機及び馳締外囲体の馳締解体工法
(51)【国際特許分類】
E04D 15/04 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
E04D15/04 S
(21)【出願番号】P 2018213340
(22)【出願日】2018-11-13
【審査請求日】2021-10-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】北村 雄
【審査官】清水 督史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-068732(JP,A)
【文献】特開2010-133122(JP,A)
【文献】特開2009-161941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 15/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略截頭円錐形状の受けロールと、略逆截頭円錐形状の押圧ロールと、略くさび状に形成された馳開き部を有する馳起こし治具とを備え、該馳起こし治具は前記受けロールと前記押圧ロールの進行方向の前方位置で且つ前記受けロールの外周と前記押圧ロールの外周の重なり箇所付近に設けられ、前記受けロールと前記押圧ロールの両方もしくは一方を、モータ駆動部により回転駆動してなることを特徴とする馳締解体機。
【請求項2】
請求項1に記載の馳締解体機において、前記馳起こし治具は、馳開き部と台座と取付け具とを備えたことを特徴とする馳締解体機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の馳締解体機において、前記馳開き部の該馳締解体機の進行方向の先端部はくさび状に形成され、該くさび形状は刀型になるように形成され、前記馳開き部の上面の断面は凹状に形成されてなることを特徴とする馳締解体機。
【請求項4】
請求項1,2又は3のいずれか1項に記載の馳締解体機において、前記受けロールの高さ方向下端には円板形状の鍔状部が形成され、前記押圧ロールと前記受けロールとの間の隙間部がクランク状に形成されてなることを特徴とする馳締解体機。
【請求項5】
請求項1,2,3又は4のいずれか1項に記載の馳締解体機において、前記受けロールと前記押圧ロール及び馳起こし治具は、設置面から所定高さに支持すると共に、馳締外囲体の山形部を跨ぐ架台が具備されてなることを特徴とする馳締解体機。
【請求項6】
請求項5に記載の馳締解体機において、前記架台は上下調節可能でその下部には走行輪が装着されてなることを特徴とする馳締解体機。
【請求項7】
略截頭円錐形状の受けロールと略逆截頭円錐形状の押圧ロールと略くさび状に形成された馳開き部を有する馳起こし治具とを備えた馳締解体機を馳締外囲体の山形部頂部に設置し、上馳部の端部を工具にて前記山形部頂部に対して略平行形状の上馳変形部とし、該上馳変形部に前記馳起こし治具を
下馳部と前記上馳部の隙間に配置し、前記受けロールを馳締部の重合側面側に配置し、前記押圧ロールを前記上馳部の端部を該押圧ロールの上面部に接地するように配置し、前記押圧ロールの外周側面の下端を前記受けロールに近接させつつ押圧し、前記受けロールと前記押圧ロールと馳起こし治具とを前記馳締部の長手方向に沿って相方向可能に移動しつつ該馳締部の長手方向に亘って前記上馳部の頂部を上方向へと湾曲させた
上馳湾曲変形部を連続して形成し、前記下馳部から前記上馳部を外して解体することを特徴とする馳締外囲体の馳締解体工法。
【請求項8】
請求項7に記載の馳締解体工法において、前記馳締解体機には、前記受けロール及び前記押圧ロールが前記馳締外囲体の山形部を跨ぐと共に走行輪が具備された架台が装着され、前記受けロールと前記押圧ロールと前記馳起こし治具による前記上馳湾曲変形部を連続して成形すると共に前記山形部の長手方向に沿って走行可能に走行させてなることを特徴とする馳締外囲体の馳締解体工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根,壁等の馳締タイプの折板建築用板から構成された馳締外囲体において、これらを解体するときに、前記馳締部の連結している状態を簡易且つ迅速に引き離すことができ、極めて簡易に解体できる馳締解体機及び馳締外囲体の馳締解体工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、多数の馳締タイプ(主に折板等)の建築用板からなる屋根,壁等の外囲体が多く施工されている。その馳締タイプの建築用板は、下馳部と上馳部とを有しており、隣接する建築用板の下馳部に上馳部を被せて上馳部を下馳部に巻き付けるようにして連結してゆくものであり、水密性に優れ、また、連結強度においても極めて強固なるものにできる。
【文献】特開平10-317623号公報
【文献】特開2004-68308号公報
【文献】特開2009-161941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したように、馳締タイプの建築用板同士で馳締連結を行う場合に、上馳部を下馳部に巻き付けるように塑性変形させるための、その結合力は極めて強固であり、耐久性の有る屋根、壁を施工することができるものである。それゆえに、馳締外囲体を解体しなければならない場合には、容易に解体することができず、作業員による手作業で長時間をかけておこなわれていた。
【0004】
また、屋根等を解体するものとして、上記特許文献1が存在するが、作業員の手作業及び作業員の力量によって解体するものであり、一つの馳を解体するのに多大な労力と時間がかかってしまうという問題があった。加えて、屋根全体を解体するには多くの作業員と時間を費やしてしまうため多大なコストを消費してしまうという課題があった。
【0005】
上記特許文献2では、解体用治具を折板に取付けてその該治具に備えられたワイヤーを巻き取り機等により引っ張ることにより解体するものであり、解体作業自体は手作業よりも労力は抑えられている。しかし、一つの馳を解体する毎に前記治具と巻き取り機を移動させる必要があるため煩わしく、作業員に負担がかかってしまうという問題があった。
【0006】
さらに、特許文献3では、二つの円盤型ロールを用いて馳締部を変形させて解体する馳締解体機によって、容易に馳締部を解体することを可能としている。しかし、解体機によって変形した馳締部は、
図7(A)及び(B)に示すように、単に上馳を持ち上げるだけでは下馳から上馳を引き離すことができず、上馳を反転させながら引き離すか、場合によっては、工具を使用して下馳部を引き離し易いように上馳側の端部を持ち上げて変形させた上で下馳と上馳を引き離す必要があったため、解体作業が面倒で、時間がかかることが多く作業的負荷が生じてしまう不利益が存在していた。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする目的(技術的課題)は、馳締部における連結している状態を、簡易且つ迅速に簡単に引き離し、作業員の労力を著しく軽減化するとともに馳締外囲体を容易に解体することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、発明者は上記課題を解決すべく、鋭意,研究を重ねた結果、請求項1の発明を、略截頭円錐形状の受けロールと、略逆截頭円錐形状の押圧ロールと、略くさび状に形成された馳開き部を有する馳起こし治具とを備え、前記馳起こし治具は前記受けロールと前記押圧ロールの進行方向の前方位置で且つ前記受けロールの外周と前記押圧ロールの外周の重なり箇所付近に設けられ、前記受けロールと前記押圧ロールの両方もしくは一方を、モータ駆動部により回転してなることを特徴とする馳締解体機としたことにより、上記課題を解決した。
【0009】
請求項2の発明を、請求項1において、前記馳起こし治具は、馳開き部と、台座と、取付け具とを備えたことを特徴とする馳締解体機としたことにより、上記課題を解決した。請求項3の発明を、請求項1又は2において、前記馳開き部の該馳締解体機の進行方向の先端部はくさび状に形成され、該くさび形状は前記馳開き部の馳部に近接する側面の長さより前記取付け具の側面の長さの方が長くなるように形成され、馳開き部の上面の断面は凹状に形成されてなることを特徴とする馳締解体機としたことにより、上記課題を解決した。
【0010】
請求項4の発明を、請求項1,2又は3のいずれか1項に記載の馳締解体機において、前記受けロールの高さ方向下端には円板形状の鍔状部が形成され、前記押圧ロールと前記受けロールとの間の隙間部がクランク状に形成されてなることを特徴とする馳締解体機としたことにより、上記課題を解決した。請求項5の発明を、請求項1,2,3又は4のいずれか1項に記載の馳締解体機において、前記受けロールと前記押圧ロール及び馳起こし治具は、設置面から所定高さに支持すると共に、馳締外囲体の山形部を跨ぐ架台が具備されてなることを特徴とする馳締解体機としたことにより、前記課題を解決した。請求項6の発明を、請求項5に記載の馳締解体機において、前記架台は上下調節可能でその下部には走行輪が装着されてなることを特徴とする馳締解体機としたことにより、前記課題を解決した。
【0011】
請求項7の発明を、略截頭円錐形状の受けロールと略逆截頭円錐形状の押圧ロールと略くさび状に形成された馳開き部を有する馳起こし治具とを備えた馳締解体機を馳締外囲体の山形部頂部に設置し、上馳部の端部を工具にて前記山形部頂部に対して略平行形状の上馳変形部とし、該上馳変形部に前記馳起こし治具を下馳部と前記上馳部の隙間に配置し、前記受けロールを馳締部の重合側面側に配置し、前記押圧ロールを前記上馳部の端部を該押圧ロールの上面部に接地するように配置し、前記押圧ロールの外周側面の下端を前記受けロールに近接させつつ押圧し、前記受けロールと前記押圧ロールと馳起こし治具とを前記馳締部の長手方向に沿って相方向可能に移動しつつ該馳締部の長手方向に亘って前記上馳部の頂部を上方向へと湾曲させた上馳湾曲変形部を連続して形成し、前記下馳部から前記上馳部を外して解体することを特徴とする馳締外囲体の馳締解体工法としたことにより、上記課題を解決した。
【0012】
請求項8の発明を、請求項7において、前記馳締解体機には、前記受けロール及び前記押圧ロールが前記馳締外囲体の山形部を跨ぐと共に走行輪が具備された架台が装着され、前記受けロールと前記押圧ロールと前記馳起こし治具による前記上馳変形部を連続して成形すると共に前記山形部の長手方向に沿って走行可能に走行させてなることを特徴とする馳締外囲体の馳締解体工法としたことにより、上記課題を解決した。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、進行方向の前方位置に馳起こし治具を設けることにより、上馳部の端部を頂部に対して略水平形状に解体変形させた馳締部に沿って設置しやすく、馳締解体機を馳締部の長手方向に沿って移動させることで、馳起こし治具が上馳部と下馳部の隙間を拡げ、その後に通過する受けロールと押圧ロールにより、容易に連続して略水平形状に変形させることができ、素早く馳締外囲体の解体を行うことができる効果がある。
【0014】
請求項2の発明によって、馳起こし治具と馳締解体機との固定を強固にすることで、馳締外囲体の解体を安定して行うことができる。請求項3の発明により、馳締外囲体の解体時の上馳部の端部を容易に開くことが可能となる。請求項4の発明によって、前記受けロールの高さ方向下端には円板形状の鍔状部が形成されることにより、馳締部を解体変形部へと円滑に行うことができる利点がある。
【0015】
請求項5の発明によって、前記受けロール及び前記押圧ロールは、設置面から所定高さに支持すると共に、馳締外囲体の山形部を跨ぐ架台が具備されたことにより、馳締部の解体作業を正確且つ安定した状態で連続して行う効果が得られる。請求項6の発明によって、前記架台の下部には走行輪が装着されたことにより、移動を連続して行い、作業効率を向上させることができる。
【0016】
請求項7の発明によって、馳締外囲体の馳締部における解体を極めて簡易且つ迅速に行うことができる。請求項8の発明によって、馳締解体機を馳締外囲体の山形部に沿って移動するときに、前記受けロールと押圧ロールとを前記山形部の馳締部の高さに合わせて、略正確に移動させることができ、馳締部の解体を一層安定且つ効率的に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】(A)は本発明の正面図、(B)は(A)の底面図、(C)はロール関連箇所の正面図である。
【
図2】(A)は本発明の右側面図、(B)は本発明の左側面図、(C)は馳開き部を有する馳起こし治具の斜視図である。
【
図3】(A)は既設馳締外囲体の馳締部に馳起こし治具を近接させて馳起し作業をせんとする斜視図、(B)は(A)の平面図、(C)は馳起こし作業をせんとする既設馳締外囲体の一部断面図である。
【
図4】(A)は既設馳締外囲体の馳締部に馳起こし治具の一部を挿入させている平面図、(B)は(A)の一部断面図、(C)は既設馳締外囲体の馳締部に馳起こし治具を挿入させて馳起こし状態の平面図、(D)は(C)の一部断面図である。
【
図5】(A)は既設馳締外囲体の馳締部の上馳部を工具にて馳折状態から開き状態に作業せんとする断面図、(B)は馳締部の上馳部を工具にて開き状態に作業している断面図、(C)は馳開き部を馳締部内に挿入し始めている馳締部の状態断面図、(D)は馳開き部が馳締部内を通過している馳締部の状態断面図である。
【
図6】(E)は上馳部の下端に押圧ロールを当接している状態断面図、(F)は馳起こし作業を完了した状態の断面図、(G)は既設馳締外囲体の一枚の馳締屋根板を剥がすように反転している一部状態図、(H)は解体前の馳締部の拡大断面図。
【
図7】(A)は従来技術としての馳起こし完了した既設馳締外囲体の一部断面図、(B)は(A)の一枚の馳締屋根板を剥がすように反転している一部状態図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明における馳締解体機は、
図1,
図2に示すように、主に受けロール1,押圧ロール3,馳起こし治具4及び架台8とから構成される。前記受けロール1は、
図1に示すように、ロール部11と鍔状部12とから構成されている。前記ロール部11は、高さ方向において、上方から下方に向かって次第に直径が大きくなる略截頭円錐形状に形成されている。鍔状部12は、前記ロール部11の下端位置に形成され、該ロール部11の下端から直径方向に突出する円板形状に形成されたものである。該鍔状部12は、板厚の厚さが小さい円板形状となっている。
【0019】
前記受けロール1は、この中心に駆動軸部2が装着されている。該駆動軸部2は、軸部21が固定軸受筐体部によって支持されている。該軸部21は、モータ駆動部5に接続され、モータ駆動部5によって前記軸部21及び受けロール1が回転する。
【0020】
前記押圧ロール3は、
図1に示すように、主押圧ロール部31と補助ロール部32とから構成されている。前記主押圧ロール部31は、前記主押圧ロール部31の下部に前記補助ロール部32が設けられている。該補助ロール部32は、前記主押圧ロール部31の直径よりも小さく形成された略扁平円筒形状の円板として形成されたものである。上面31aは平面として形成されている。
【0021】
前記受けロール1側に装着された前記駆動軸部2の軸部21の上部箇所には、被駆動歯車21aが装着されており、モータ駆動部5側にはモータ軸51には駆動歯車51aが装着され、該駆動歯車51aと前記被駆動歯車21aとが噛合って、モータ駆動部5から駆動軸部2に回転が伝達され、前記受けロール1が回転することができる。
【0022】
また、前記押圧ロール3には、該押圧ロール3の位置を
図1(A)の左右側に調整可能とするハンドル7が設けられている。前記ハンドル7を締め付け又は緩めることにより前記押圧ロール3と前記受けロール1との隙間を開閉させるために形成されている[
図1(C)参照]。開閉調整可能とすることで、馳締外囲体Aに前記馳締解体機を設置する際に、設置前にハンドル7によって押圧ロール3の上面31aに上馳部105の端部を設置することが容易となる。
【0023】
馳起こし治具4は、
図1乃至
図3に示すように、前記受けロール1と押圧ロール3の進行方向の前方位置で且つ前記受けロール1の外周と前記押圧ロール3の外周の重なり箇所付近に装着されるものである。前馳起こし治具4は、
図1(B)に示すように、架台8に装着され、馳開き部41と台座42と取り付け具43とから構成されている[
図2(C)参照]。前記馳開き部41は、進行方向の前方側が略くさび状に形成されている。また、前記台座42は、前記取り付け具43と前記馳開き部41との固定をより強固にするための役割をなすものである。
【0024】
前記馳起こし治具4は、馳締部106の下馳部104と上馳部105との間に略くさび状に食い込んで、前記受けロール1と前記押圧ロール3によって、馳締部106を上馳変形部Hに形成すると共に、前記受けロール1と前記押圧ロール3の進行方向と共に移動し、下馳部104と上馳部105とを引き離す解体を促進するものである。
【0025】
図2(C)に示すように、前記馳開き部41の先端部はくさび状に形成され、該くさび形状は前記馳開き部の馳部に近接する側面の長さより前記取付け具の側面の長さの方が長くなるように、刀型状に形成されている。さらに、馳開き部41の上面の断面は凹状に形成されている。これらの形状は、後述する解体法において、上馳部105と下馳部104の隙間に食い込みやすく、さらには隙間を拡大しやすくする役目をなすものである。
【0026】
モータ駆動部5には、握り部52が設けられており、該握り部52に図示しない操作部が装着されており、該操作部によって、モータ駆動部5の始動停止等の操作を行うことができる。同様に特に図示しないが、前記押圧ロール3に駆動軸部2が装着される実施形態も存在する。この実施形態により、前記モータ駆動部5から駆動軸部2に回転が伝達され、押圧ロール3を回転させることもある。さらに、前記モータ駆動部5によって、受けロール1及び押圧ロール3の両方を回転させる実施形態も存在する。
【0027】
架台8は、
図1,
図2に示すように、前記受けロール1及び前記押圧ロール3と馳起こし治具4等を設置し、馳締外囲体Aの山形部を跨ぐようにして所定高さに支持する役目をなすものである。具体的には、前記受けロール1と前記押圧ロール3とを、馳締外囲体Aの馳締部106の適正な高さの位置に設定することができるようになっている。
【0028】
前記架台8は、板状の取付板81の両側に上側板片82,82が設けられ、該上側板片82,82には上下調節可能な脚柱部83,83が取り付けられている。該脚柱部83,83の下端には、それぞれ下側板片84,84が設けられている。該下側板片84の前後には、走行輪85,85が設けられている。
【0029】
前記脚柱部83は、軸端に外螺子部が形成された枠状体であり、前記上側板片82の貫通孔82aに貫通されナット等の固着具によって固着されている。また、前記取付板81に対しても螺子,ナット又は溶接等の固着手段にて固着されている。前記下側板片84の下面側には走行輪85が装着されており、前記架台8は、走行輪85によって移動自在なる構成となっている。
【0030】
馳締外囲体Aは、
図1(A)の点線位に示すように、複数の折板タイプの建築用板10から構成される。該建築用板10には、主板101の幅方向両側に立上り側部102,102が形成され、該立上り側部102の上端に頂部103が形成され、一方側の頂部103には下馳部104が形成され、他方側の頂部103には上馳部105が形成されている〔
図3(C)及び
図6(H)参照〕。
【0031】
前記下馳部104は、垂直状立上り部104aの上端より(主板101側から見て)外方に向かって略半円状に膨出する下側弧状片104bが形成されており、該下側弧状片104bの上端から下側頂片104cが形成され、該下側頂片104cの外端より下面側に断面つ字状の折返し端縁104dが形成されている。該折返し端縁104dは、前記下側弧状片104bの裏面側に偏平C字形状となるように形成されたり、略密着状に形成されている。
【0032】
前記上馳部105は、前記他方側の垂直状立上り部105aの上端より前記主板101側に略半円状に膨出する上側弧状片105bが形成されている。該上側弧状片105bは、前記下馳部104の下側弧状片104bが内接する程度の大きさの円弧状に形成されたものであり、前記上側弧状片105bの上端より外方に上側頂片105cが形成されている。
【0033】
前記上側頂片105cは、前記下馳部104の下側弧状片104bと同様に略平坦状な面となっている。該上側頂片105cの外端下側には断面つ字状の締付け片105dが形成されている。該締付け片105dは馳締連結された状態で、前記下側頂片104cと上側頂片105cとの隙間を覆いつつ、外部から雨水を遮断する役目をなす部位である。
【0034】
隣接する建築用板10,10の立上り側部102,102を下馳部104と上馳部105によって馳締接合することによって略?状の馳締部106が形成される。つまり、前記下馳部104と上馳部105とで馳締連結されている。前記馳締部106は、前記下馳部104の垂直状立上り部104aと、上馳部105の垂直状立上り部105aとが垂直方向に略密着状態で重合し、前記下側弧状片104bと前記上側弧状片105bとが重合し、前記下側頂片104cと前記上側頂片105cとが重合する。
【0035】
このとき、下馳部104と上馳部105の各部位は密着又は略密着状態にある。前記上馳部105の締付け片105dは、前述したように、下側頂片104cと上側頂片105cとの間の隙間を被覆して雨仕舞いをするものであり、前記下馳部104の下側弧状片104bと下側頂片104cに巻き込むようにして、前記下側弧状片104bと下側頂片104cを、前記締付け片105dと、上側弧状片105bと上側頂片105cとによって挟持状態に構成するものである。
【0036】
次に、本発明の馳締解体機によって、馳締外囲体Aの馳締部106を解体する工法について
図4乃至
図7に基づいて説明する。その前に手作業段取りがある。つまり、前記馳締部106の下馳部104と上馳部105とからなる上馳部105の長手方向端部箇所を工具Tにて馳折状態から開き状態となるように、上馳部105の端部を拡げつつ、頂部103に対して略平行形状とするよう上馳変形部Hを形成する[
図5(A)及び(B)参照]。結果として、
図3(A)~(C)の馳締部106の変形状態とする。
【0037】
そして、前記馳締解体機の馳起こし治具4の馳開き部41を、
図4(A)~(D)に示すように、下馳部104と上馳部105の隙間、具体的には馳締部106を前記工具Tにて上馳変形部Hとした場所である前記折返し端縁104dと前記締付け片105dの間に設置すると共に、(略截頭円錐形状の)受けロール1と、(略円板形状の)押圧ロール3を馳締外囲体Aの山形部106の頂部に設置する。このとき、押圧ロール3は、ハンドル7によって、押圧ロール3と受けロール1の隙間を開口した状態としておく。
【0038】
図5(C)及び(D)に示すように、前記上馳変形部Hとした馳締部106の外側に受けロール1を配置し、ハンドル7を締め付け、押圧ロール3を受けロール1側の方向へと移動させていく。つまり、前記馳締部106の締付け片105dが押圧ロール3の上面部に接地するように変形側106bの内側に押圧ロール3が配置される。このときの、受けロール1,押圧ロール3及び上馳変形部Hのそれぞれの位置関係は、
図6(E)に示されている。押圧ロール3の上面部は、締付け片105dに当接している状態である。
【0039】
次に、前記下馳部104の前記折返し端縁104dと、前記上馳部105の締付け片105dとの間に、馳起こし治具4が食い込みながら馳締解体機が移動してゆく[
図4、
図5(C)及び(D)参照]。馳起こし治具4によって前記下馳部104の前記折返し端縁104dと、前記上馳部105の締付け片105dとの間を開いた隙間を、押圧ロール3の外周側面31aの下端角部箇所が下馳部104の折返し端縁104dに接近して押圧し始めることにより、前記隙間の幅をさらに拡大していく。
【0040】
具体的には、上述したように、前記馳締解体機を設置した際に押圧ロール3の上面部に馳締部106の締付け片105dを接地させておくことで、押圧ロール3全体を下馳部104の折返し端縁104dと、前記上馳部105の締付け片105dとの間に食い込ませ、締付け片105dを上方向へ押し上げることができる[
図6(E)参照]。
【0041】
さらに、締付け片105dが上方向へ押し上げられることによって、前記上側頂片105cが上方向へと湾曲され、前記下側頂片104cと前記上側頂片105cとの隙間を拡大していくこととなる[
図6(F)参照]。このとき、前記上側頂片105cが上方向に湾曲し、前記下側頂片104cと前記上側頂片105cとの隙間が拡大した変形部を、上馳湾曲変形部Jとする。
【0042】
このような工程を経て、馳締解体機が通過した後には、下馳部104の折返し端縁104dと、前記上馳部105の締付け片105dとの間と、前記下側頂片104cと前記上側頂片105cとの間に隙間を形成すると共に、前記上馳部の端部である締付け片105d及び頂部である上側頂片105cを変形させ、上馳湾曲変形部Jを連続して形成してゆく[
図6(F)参照]。
【0043】
上述の解体法では、上馳側部105が変形するのに対して、下馳側部104は略変形することはない。上馳と下馳を引き離す際には、上馳をそのまま持ち上げる、若しくは、上馳を少し反転させるのみで簡単に上馳と下馳を引き離すことが可能であり、上馳と下馳の両方を変形してゆく従来の解体法よりも、容易に解体することが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
1…受けロール、3…押圧ロール、31a…外周側面、4…馳起こし治具、
41…馳開き部、42…台座、43…取付け具、5…モータ駆動部、12…鍔状部、
8…架台、85…走行輪、A…馳締外囲体、106…馳締部、104…下馳部、
105…上馳部、106a…重合側面側、106b…変形側、H…上馳変形部、
J…上馳湾曲変形部、T…工具。