(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20221018BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20221018BHJP
B60H 3/06 20060101ALI20221018BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
E02F9/00 M
B60H1/00 101W
B60H3/06 C
B60H3/06 Z
B60K11/04 D
(21)【出願番号】P 2018218899
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】原 桂吾
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕
(72)【発明者】
【氏名】今谷 高章
(72)【発明者】
【氏名】豊田 充啓
(72)【発明者】
【氏名】平岡 顕
(72)【発明者】
【氏名】清水 洋之
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-182710(JP,A)
【文献】特開平11-091366(JP,A)
【文献】特開2014-167286(JP,A)
【文献】特開2001-329568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0017901(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00
B60H 1/00
B60H 3/06
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧アクチュエータを作動させるための作動油が通るオイルクーラを含む複数の熱交換器を有する熱交換器ユニットと、
作動油の温度を検出する作動油温度センサと、
正転時に前記熱交換器ユニットに対して冷却風を供給する冷却ファンと、
前記冷却ファンを作動させる電気モータと、
前記電気モータを介して前記冷却ファンの作動を制御するコントローラと、
前記冷却ファンの正転作動時間をカウントするタイマーと、
加えられた手動操作に応じて前記冷却ファンを逆転させるための逆転信号を前記コントローラに出力する逆転信号出力スイッチとを備え、
前記コントローラは、前記タイマーによってカウントされた正転作動時間が第1所定時間に達した場合に前記冷却ファンを第2所定時間だけ逆転させると共に前記冷却ファンの逆転終了時に前記タイマーをリセットし、かつ、前記タイマーによってカウントされた正転作動時間が前記第1所定時間に達していない場合でも前記逆転信号出力スイッチから逆転信号が出力されたときには前記冷却ファンを前記第2所定時間だけ逆転させると共に前記冷却ファンの逆転終了時に前記タイマーをリセット
し、
前記冷却ファンが逆転する条件として、前記作動油温度センサによって検出された作動油温度が閾値以下であることが含まれる建設機械。
【請求項2】
さらに、エアコンディショナ用冷媒を圧縮するコンプレッサと、前記コンプレッサによって圧縮された前記冷媒を凝縮するコンデンサとを備え、前記熱交換器ユニットは前記コンデンサを含み、
前記コントローラは前記冷却ファンを逆転させる際に前記コンプレッサの作動を停止させる、請求項1記載の建設機械。
【請求項3】
さらに、前記冷却ファンの正転時における前記熱交換器ユニットの上流側に配置されたフィルタを備える、請求項1または2記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却ファンを逆転させることによって熱交換器ユニットから塵芥を除去可能な建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に油圧ショベル等の建設機械のエンジンルームには、各種流体を冷却するための複数の熱交換器を有する熱交換器ユニットと、熱交換器ユニットに対して冷却風を供給する冷却ファンとが設けられている。熱交換器ユニットには、エンジン冷却水を冷却するためのラジエタや、油圧アクチュエータを作動させるための作動油を冷却するオイルクーラ等が含まれる。そして、冷却ファンによって生成された冷却風は、複数の熱交換器のそれぞれを通る各種流体を冷却し、エンジンルーム内を通過してエンジンルーム外に排出される。
【0003】
建設機械が稼働する作業現場には埃や細かな木屑等の塵芥が多量に浮遊している場合があり、このような作業現場において建設機械が稼働していると、冷却ファンの冷却風によって塵芥が運ばれ、熱交換器ユニットに塵芥が堆積し熱交換器の冷却効率が悪化するおそれがある。そこで、建設機械には、熱交換器ユニットの冷却効率の悪化を防止するため、熱交換器ユニットに堆積した塵芥を冷却ファンの逆転によって吹き飛ばして除去するようになっているものがある。冷却ファンの逆転は、たとえば建設機械のオペレータが手動で逆転スイッチを操作して必要な時間だけ行われ、あるいは建設機械に搭載されたコントローラによって所定時間ごとに行われるようになっている(たとえば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、逆転スイッチの操作により冷却ファンの逆転が行われるようになっている場合、定期的に逆転スイッチを操作することはオペレータにとって煩わしいものであり、また、逆転スイッチの操作をオペレータが失念してしまったときには熱交換器ユニットに塵芥が堆積して冷却効率の低下を招くおそれがある。一方、コントローラにより所定時間ごとに冷却ファンの逆転が行われるようになっている場合、比較的塵芥が多い作業現場では、所定時間を経過する前に熱交換器ユニットに塵芥が多量に付着して冷却効率の低下を招くおそれがある。
【0006】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、オペレータの手間を軽減することができると共に熱交換器ユニットの冷却効率の低下を確実に防止することができる建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明が提供するのは以下の建設機械である。すなわち、 油圧アクチュエータを作動させるための作動油が通るオイルクーラを含む複数の熱交換器を有する熱交換器ユニットと、作動油の温度を検出する作動油温度センサと、正転時に前記熱交換器ユニットに対して冷却風を供給する冷却ファンと、前記冷却ファンを作動させる電気モータと、前記電気モータを介して前記冷却ファンの作動を制御するコントローラと、前記冷却ファンの正転作動時間をカウントするタイマーと、加えられた手動操作に応じて前記冷却ファンを逆転させるための逆転信号を前記コントローラに出力する逆転信号出力スイッチとを備え、前記コントローラは、前記タイマーによってカウントされた正転作動時間が第1所定時間に達した場合に前記冷却ファンを第2所定時間だけ逆転させると共に前記冷却ファンの逆転終了時に前記タイマーをリセットし、かつ、前記タイマーによってカウントされた正転作動時間が前記第1所定時間に達していない場合でも前記逆転信号出力スイッチから逆転信号が出力されたときには前記冷却ファンを前記第2所定時間だけ逆転させると共に前記冷却ファンの逆転終了時に前記タイマーをリセットし、前記冷却ファンが逆転する条件として、前記作動油温度センサによって検出された作動油温度が閾値以下であることが含まれる建設機械である。
【0008】
さらに、エアコンディショナ用冷媒を圧縮するコンプレッサと、前記コンプレッサによって圧縮された前記冷媒を凝縮するコンデンサとを備え、前記熱交換器ユニットは前記コンデンサを含み、前記コントローラは前記冷却ファンを逆転させる際に前記コンプレッサの作動を停止させるのが好ましい。さらに、前記冷却ファンの正転時における前記熱交換器ユニットの上流側に配置されたフィルタを備えるのが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明が提供する建設機械においては、タイマーによってカウントされた正転作動時間が第1所定時間に達した場合にコントローラによって冷却ファンが第2所定時間だけ逆転されるので、比較的塵芥の少ない作業現場では、オペレータが逆転信号出力スイッチを操作する必要はなくオペレータの手間を軽減することができると共に、熱交換器ユニットの冷却効率の低下を確実に防止することができる。
【0010】
また、本発明の建設機械においては、タイマーによってカウントされた正転作動時間が第1所定時間に達していない場合でも逆転信号出力スイッチから逆転信号が出力されたときにはコントローラによって冷却ファンが第2所定時間だけ逆転されるため、比較的塵芥の多い作業現場では、オペレータが適宜のタイミングで逆転信号出力スイッチを操作することにより、熱交換器ユニットの冷却効率の低下を確実に防止することができる。
【0011】
さらに、本発明の建設機械においては、正転作動時間が第1所定時間に達したことに起因して冷却ファンの逆転が行われた場合だけでなく、オペレータによる逆転信号出力スイッチの操作に起因する冷却ファンの逆転が行われた場合においても、冷却ファンの逆転終了時にコントローラによってタイマーがリセットされることから、冷却ファンの逆転が必要以上に短い間隔で行われることがない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に従って構成された建設機械の構成の一部を示すブロック図。
【
図2】
図1に示すコントローラによって実行される冷却ファンの逆転処理を示すフローチャートの前半部分。
【
図3】
図1に示すコントローラによって実行される冷却ファンの逆転処理を示すフローチャートの後半部分。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成された建設機械の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1を参照して説明すると、全体を符号2で示す建設機械は、複数の熱交換器を有する熱交換器ユニット4と、正転時に熱交換器ユニット4に対して冷却風を供給する冷却ファン6と、冷却ファン6の正転時における熱交換器ユニット4の上流側に配置されたフィルタ8とを備える。
【0015】
図示の実施形態の熱交換器ユニット4は、油圧ポンプ(図示していない。)を駆動するエンジン10の冷却水が通るラジエタ12と、油圧シリンダや油圧モータ等の油圧アクチュエータ(図示していない。)を作動させるための作動油が通るオイルクーラ14と、過給機(図示していない。)によって圧縮された空気が通るアフタークーラ16と、エアコンディショナ用冷媒が通るコンデンサ18と、燃料が通る燃料クーラ20とを含む。なお、熱交換器ユニット4は、ラジエタ12等の上記複数の熱交換器をすべて含んでいる必要はなく、上記複数の熱交換器のうちの1個以上でよく、あるいは上記熱交換器以外の熱交換器を含んでいてもよい。また、上記複数の熱交換器は任意に配置され得る。
【0016】
図1に示すとおり、建設機械2には、エンジン冷却水の温度を検出する冷却水温度センサ22と、作動油の温度を検出する作動油温度センサ24と、過給機によって圧縮された後にアフタークーラ16を通って冷却された圧縮空気の温度を検出する空気温度センサ26とが設けられている。なお、冷却水温度センサ22はラジエタ12の上流側に位置するエンジンサーモスタット(図示していない。)の更に上流側に配置され、作動油温度センサ24はオイルクーラ14の下流側に位置する作動油タンク(図示していない。)の更に下流側に配置され、空気温度センサ26はアフタークーラ16の下流側に配置され得る。
【0017】
図示していないが、建設機械2は、オペレータが搭乗するキャブと、キャブ用エアコンディショナを備えており、キャブ用エアコンディショナは、キャブの外部に配置された室外装置と、キャブの内部に配置された室内装置とを含む。室外装置は、冷媒を圧縮するコンプレッサと、このコンプレッサによって圧縮された冷媒を凝縮する上記コンデンサ18と、コンデンサ18によって凝縮された冷媒を貯留するレシーバとを有する。一方、室内装置は、レシーバから送られた冷媒を膨張させるエキスパンションバルブと、エキスパンションバルブによって膨張された冷媒を蒸発させるエバポレータとを有する。そして、エアコンディショナは、キャブ内に配置されたエアコンスイッチの操作によって作動または停止するようになっている。
【0018】
図示の実施形態の冷却ファン6は、
図1において点線で示すエンジンルーム28内において熱交換器ユニット4に隣接して配置されており、電気モータや油圧モータ等の適宜の駆動源30によって駆動される。そして、冷却ファン6の正転時には、
図1において矢印F1で示す方向に空気流が生成され、熱交換器ユニット4に対して冷却風が供給される。これによって、熱交換器ユニット4の各熱交換器を通る各種流体が冷却され、冷却風はエンジンルーム28内を通過してエンジンルーム28外に排出される。また、冷却ファン6の逆転時には
図1において矢印F2で示す方向に空気流が生成される。なお、図示の実施形態では単一の冷却ファン6が設けられているが、冷却ファン6は複数設けられていてもよい。
【0019】
図1を参照することによって理解されるとおり、フィルタ8は、冷却ファン6の正転時における熱交換器ユニット4の上流側に配置されており、埃や木屑等の塵芥を捕集してラジエタ12等の熱交換器のフィンに塵芥が堆積するのを防止する。そして、フィルタ8で捕集された塵芥は、冷却ファン6の逆転によってフィルタ8から吹き飛ばされて除去される。このようなフィルタ8が熱交換器ユニット4の上流側に配置されていると、冷却ファン8の逆転では除去されず僅かに残留した塵芥をオペレータが清掃により除去する場合に、熱交換器ユニット4の各熱交換器のフィンを清掃する必要がなく、フィルタ8のみを清掃すればよいので、メンテナンス作業性の向上を図ることができる。ただし、建設機械2にフィルタ8が設けられていることは必須ではなく任意であり、建設機械2にフィルタ8が設けられていない場合には、熱交換器ユニッ4に堆積した塵芥の大部分が冷却ファン6の逆転によって吹き飛ばされて除去される。
【0020】
さらに、建設機械2は、冷却ファン6の作動を制御するコントローラ32と、冷却ファン6の正転作動時間をカウントするタイマー34と、加えられた手動操作に応じて冷却ファン6を逆転させるための逆転信号をコントローラ32に出力する逆転信号出力スイッチ36とを備える。
【0021】
コントローラ32はコンピュータから構成されている。冷却ファン6の駆動源30が電気モータである場合には、駆動源30とコントローラ32とが電気的に接続され、コントローラ32は、駆動源30に対して正転信号または逆転信号を出力することにより冷却ファン6の作動を制御する。また、駆動源30が油圧モータである場合には、駆動源30への作動油の供給を制御する電磁制御弁(図示していない。)とコントローラ32とが電気的に接続され、コントローラ32は、電磁制御弁に対して正転信号または逆転信号を出力し電磁制御弁の油路を切り換えることにより、駆動源30を正転または逆転させ、冷却ファン6の作動を制御する。
図1に示すとおり、コントローラ32は、各温度センサ22、24、26に電気的に接続されており、各温度センサ22、24、26が検出した各流体温度が入力されるようになっている。
【0022】
タイマー34は、コントローラ32から駆動源30または電磁制御弁に対して正転信号を出力している時間をカウントするようになっている。タイマー34はコントローラ32に組み込まれていてもよく、あるいはコントローラ32とは別に建設機械2に装着されていて、コントローラ32と電気的に接続されていてもよい。
【0023】
逆転信号出力スイッチ36は、キャブ内に配置され、コントローラ32に電気的に接続されている。また、逆転信号出力スイッチ36の形式は任意であり、たとえばタッチパネル式や押しボタン式、ダイヤル式、シーソー式等が採用され得る。
【0024】
上述したとおりの建設機械2においては、エンジン10が始動されると、エンジン冷却水や作動油等の熱交換器ユニット4を通る各種流体の温度が所定値以上である等の作動条件(各種流体の過冷却を防止するための作動条件)を満たしている場合に、コントローラ32から駆動源30または電磁制御弁に対して正転信号が出力されて冷却ファン6が正転し、熱交換器ユニット4に冷却風が供給される。
【0025】
そして、コントローラ32は、タイマー34によってカウントされた正転作動時間が第1所定時間(たとえば20分)に達した場合に、駆動源30または電磁制御弁に逆転信号を出力して冷却ファン6を第2所定時間(たとえば1分)だけ逆転させると共に冷却ファン6の逆転終了時にタイマー34をリセットする。第1所定時間および第2所定時間は任意に設定変更可能となっているのが好適である。なお、このようにコントローラ32によって定期的に冷却ファン6を逆転させるモード(以下「自動モード」という。)を起動または停止にするための自動モードON・OFFスイッチ38がキャブ内に設けられていてもよい。
【0026】
また、コントローラ32は、タイマー34によってカウントされた正転作動時間が第1所定時間に達していない場合でも、キャブ内のオペレータによって逆転信号出力スイッチ36が操作され、逆転信号出力スイッチ36から逆転信号が出力されたときには、駆動源30または電磁制御弁に逆転信号を出力して冷却ファン6を第2所定時間だけ逆転させると共に冷却ファン6の逆転終了時にタイマー34をリセットするようになっている。
【0027】
なお、自動モードにおいて冷却ファン6を逆転させるための条件については、正転作動時間が第1所定時間に達したこと以外の条件を加えてもよい。また、逆転信号出力スイッチ36の操作に起因して冷却ファン6を逆転させるための条件については、逆転信号出力スイッチ36の操作以外の条件を加えてもよい。
【0028】
次に、
図2および
図3を参照して建設機械2のコントローラ32によって実行される冷却ファン6の逆転処理の例について説明する。
【0029】
図2に示すとおり、まず、自動モードが起動されているか否かが判定される(ステップS1)と共に、逆転信号出力スイッチ36から逆転信号が出力されたか否かが判定される(ステップS11)。自動モードが起動されており(ステップS1の判定がYes)、かつ逆転信号出力スイッチ36から逆転信号が出力されていない(ステップS11の判定がNo)場合、処理はステップS2に進行する。一方、ステップS1の判定がYesであるかNoであるかに関わらず、ステップS11の判定がYesの場合、処理はステップS12に進行する。
【0030】
ステップS2に進行した場合について説明すると、ステップS2では、タイマー34によってカウントされた正転作動時間が第1所定時間に達したか否かが判定される。ステップS2の判定がYesの場合、処理はステップS3に進行する。一方、ステップS2の判定がNoの場合、ステップS2の判定がYesとなるまでステップS2が繰り返される。
【0031】
ステップS3では、作動油温度センサ24によって検出された作動油温度が閾値以下であるか否かが判定される。ステップS3の判定がYesの場合、冷却水温度センサ22によって検出されたエンジン冷却水温度が閾値以下であるか否かが判定され(ステップS4)、ステップS4の判定がYesの場合、空気温度センサ26によって検出された圧縮空気の温度が閾値以下であるか否かが判定される(ステップS5)。
【0032】
そして、ステップS5の判定がYesの場合、コントローラ32から逆転信号が出力され、冷却ファン6の逆転が開始する(ステップS6)。これによって、フィルタ8で捕集された塵芥がフィルタ8から吹き飛ばされて除去される。あるいは、フィルタ8が設けられていない場合には熱交換器ユニット4に堆積した塵芥が熱交換器ユニット4から吹き飛ばされて除去される。
【0033】
また、ステップS6では、冷却ファン6の逆転開始と共に、エアコンディショナのコンプレッサがコントローラ32によって停止されるのが好ましい。冷却ファン6を逆転させると、エンジン10の周囲、ラジエタ12、オイルクーラ14およびアフタークーラ16を通過して加熱された空気がコンデンサ18を通過するため、エアコンディショナ用冷媒が加熱されることとなる。エアコンディショナの稼働中に冷媒が過度に加熱されるとエアコンディショナのシステムに過大な負荷がかかり、エアコンディショナが故障するおそれがある。このため、冷却ファン6を逆転する際にはエアコンディショナを停止させる必要があるが、冷却ファン6の逆転開始前にエアコンディショナを毎回停止させることはオペレータにとって手間であると共に、エアコンディショナの停止操作をオペレータが失念してしまうこともある。したがって、ステップS6において、冷却ファン6の逆転開始と共に、エアコンディショナのコンプレッサを停止させ冷媒の流れを停止させることが好ましく、これによってエアコンディショナに過大な負荷がかかるのを防止することができる。
【0034】
図3を参照して説明すると、ステップS6が実行された後、作動油温度が閾値以下であるか否か(ステップS7)、エンジン冷却水温度が閾値以下であるか否か(ステップS8)、圧縮空気の温度が閾値以下であるか否か(ステップS9)のそれぞれが判定される。ステップS7からS9までの各判定がYesの場合、冷却ファン6の逆転開始から第2所定時間が経過したか否かが判定される(ステップS10)。そして、第2所定時間が経過するまで冷却ファン6の逆転が継続されると共に、ステップS7からS9までの各判定が繰り返される。冷却ファン6の逆転開始から第2所定時間が経過すると、冷却ファン6が正転に復帰し、正転作動時間をカウントするタイマー34がリセットされると共に、
図2および
図3に示す例では、エアコンディショナのコンプレッサの停止が解除される(ステップS20)。
【0035】
このような自動モードONの場合において、ステップS3からS5まで、およびステップS7からS9までの各判定のいずれかがNoのとき、キャブ内のモニタ(図示していない。)にエラーが表示される等の警告がオペレータに対して行われ(ステップS21)、冷却ファン6が逆転しているか否かが判定される(ステップS22)。冷却ファン6が逆転していた場合にはステップS20が実行され、冷却ファン6が逆転していない場合には処理が終了する。
【0036】
ここから、ステップS11の判定がYesであり、ステップS12に処理が進行した場合について説明する。ステップS12では、油圧回路がロックされているか否かが判定される。すなわち、ステップS12では、油圧アクチュエータを操作するための操作具(図示していない。)にオペレータから操作が加えられても、油圧シリンダや油圧モータ等の各種油圧アクチュエータが作動しないようになっているか否かが判定される。
【0037】
ステップS12の判定がYesの場合、作動油温度が閾値以下であるか否かが判定され(ステップS13)、ステップS13の判定がYesの場合、エンジン冷却水温度が閾値以下であるか否かが判定される(ステップS14)。なお、
図2および
図3に示す例では、逆転信号出力スイッチ36が操作された場合において、ステップS12で油圧回路がロックされていることが冷却ファン6の逆転開始の作動条件となっており、冷却ファン6が逆転する際に油圧アクチュエータが作動することがなくエンジン10の負荷が比較的小さいことから、圧縮空気温度が閾値以下であるか否かの判定は行われない。
【0038】
そして、ステップS14の判定がYesの場合、コントローラ32から逆転信号が出力され、冷却ファン6の逆転が開始すると共に、エアコンディショナのコンプレッサがコントローラ32によって停止される。
【0039】
ステップS15が実行された後、油圧回路がロックされているか否か(ステップS16)、作動油温度が閾値以下であるか否か(ステップS17)、エンジン冷却水温度が閾値以下であるか否か(ステップS18)のそれぞれが判定される。ステップS16からS18までの各判定がYesの場合、冷却ファン6の逆転開始から第2所定時間が経過したか否かが判定される(ステップS19)。そして、第2所定時間が経過するまで冷却ファン6の逆転が継続されると共に、ステップS16からS18までの各判定が繰り返される。冷却ファン6の逆転開始から第2所定時間が経過すると、冷却ファン6が正転に復帰し、正転作動時間をカウントするタイマー34がリセットされると共にエアコンディショナのコンプレッサの停止が解除される(ステップS20)。
【0040】
このような逆転信号出力スイッチ36が操作された場合において、ステップS12からS14まで、およびステップS16からS18までの各判定のいずれかがNoのとき、オペレータに対して警告が行われ(ステップS21)、冷却ファン6が逆転しているか否かが判定される(ステップS22)。冷却ファン6が逆転していた場合にはステップS20が実行され、冷却ファン6が逆転していない場合には処理が終了する。
【0041】
以上のとおりであり、図示の実施形態では、タイマー34によってカウントされた正転作動時間が第1所定時間に達した場合にコントローラ32が冷却ファン6を第2所定時間だけ逆転させるので、比較的塵芥の少ない作業現場では、オペレータが逆転信号出力スイッチ36を操作する必要はなくオペレータの手間を軽減することができると共に、フィルタ8の目詰まりを抑制して熱交換器ユニット4の冷却効率の低下を確実に防止することができる。
【0042】
また、図示の実施形態では、タイマー34によってカウントされた正転作動時間が第1所定時間に達していない場合でも逆転信号出力スイッチ36から逆転信号が出力されたときにはコントローラ32が冷却ファン6を第2所定時間だけ逆転させるため、比較的塵芥の多い作業現場では、オペレータが適宜のタイミングで逆転信号出力スイッチ36を操作することにより、フィルタ8の目詰まりを抑制して熱交換器ユニット4の冷却効率の低下を確実に防止することができる。
【0043】
さらに、図示の実施形態では、正転作動時間が第1所定時間に達したことに起因して冷却ファン6の逆転が行われた場合だけでなく、オペレータによる逆転信号出力スイッチ36の操作に起因する冷却ファン6の逆転が行われた場合においても、冷却ファン6の逆転終了時にコントローラ32がタイマー34をリセットすることから、冷却ファン6の逆転が必要以上に短い間隔で行われることがない。
【0044】
なお、上述の冷却ファン6の逆転処理の例では、各種流体温度が閾値以下であることや油圧回路がロックされていることを冷却ファン6の逆転開始および逆転継続の条件として説明したが、これらは任意条件とすることができる。
【符号の説明】
【0045】
2:建設機械
4:熱交換器ユニット
6:冷却ファン
8:フィルタ
18:コンデンサ
32:コントローラ
34:タイマー
36:逆転信号出力スイッチ