(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20221018BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20221018BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221018BHJP
B29C 64/165 20170101ALI20221018BHJP
B29C 64/214 20170101ALI20221018BHJP
B29C 64/218 20170101ALI20221018BHJP
B29C 64/255 20170101ALI20221018BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221018BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20221018BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20221018BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y30/00
B29C64/165
B29C64/214
B29C64/218
B29C64/255
B33Y10/00
B22F3/105
B22F3/16
B28B1/30
(21)【出願番号】P 2018219401
(22)【出願日】2018-11-22
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 文良
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-154882(JP,A)
【文献】特開2017-87469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/393
B33Y 50/02
B33Y 30/00
B29C 64/165
B29C 64/214
B29C 64/218
B29C 64/255
B33Y 10/00
B22F 3/105
B22F 3/16
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の厚みの粉末材料を硬化させて硬化層を形成し、前記硬化層を順次積層することによって三次元造形物を造形する三次元造形装置であって、
ケーシングと、
前記ケーシングに設けられ、前記粉末材料から前記三次元造形物が造形される造形空間を有する造形槽と、
前記ケーシングにおいて前記造形槽の第1方向における一方側に設けられ、前記粉末材料が貯留される第1貯留空間を有する第1供給・回収槽と、
前記ケーシングにおいて前記造形槽の前記第1方向における他方側に設けられ、前記第1供給・回収槽に貯留されているのと同じ前記粉末材料が貯留される第2貯留空間を有する第2供給・回収槽と、
前記第1供給・回収槽から供給された前記粉末材料を前記造形空間に敷き詰め、かつ前記造形空間に収容しきれなかった前記粉末材料を前記第2供給・回収槽まで搬送する
第1敷詰部材と、前記第2供給・回収槽から供給された前記粉末材料を前記造形空間に敷き詰め、かつ前記造形空間に収容しきれなかった前記粉末材料を前記第1供給・回収槽まで搬送する
第2敷詰部材と、を含む敷詰部材と、
前記造形空間内の前記所定の厚みを有する前記粉末材料に対して硬化液を吐出する吐出ヘッドと、
前記第1敷詰部材と前記第2敷詰部材と前記吐出ヘッドとを搭載する支持部材と、
前記支持部材を前記ケーシン
グに対し
て前記第1方向
に移動させる移動機構と、
前記移動機構と前記吐出ヘッドとに電気的に接続された制御装置と、
を備え、
前記第1敷詰部材は、前記支持部材において前記吐出ヘッドの前記第1方向における前記他方側に配置され、
前記第2敷詰部材は、前記支持部材において前記吐出ヘッドの前記第1方向における前記一方側に配置され、
前記制御装置は、
前記支持部材を前記ケーシン
グに対して前記第1方向
の前記他方側に移動させて、前記第1供給・回収槽に貯留されている前記粉末材料を、
前記吐出ヘッドよりも前記他方側に配置された前記第1敷詰部材によって前記所定の厚みで前記造形空間に敷き詰め、前記造形槽内の前記粉末材料に対して前記吐出ヘッドから硬化液を吐出して前記硬化層を形成する第1制御を実行する第1制御部と、
前記支持部材を前記ケーシン
グに対して前記第1方向
の前記一方側に移動させて、前記第2供給・回収槽に貯留されている前記粉末材料を、
前記吐出ヘッドよりも前記一方側に配置された前記第2敷詰部材によって前記所定の厚みで前記造形空間に敷き詰め、前記造形槽内の前記粉末材料に対して前記吐出ヘッドから硬化液を吐出して前記硬化層を形成する第2制御を実行する第2制御部と、
を備え、一つの前記三次元造形物を造形するときに、前記第1制御と前記第2制御とを少なくとも1回ずつ実行するように構成されている、
三次元造形装置。
【請求項2】
前記吐出ヘッドは、前記第1方向と平面視において交差する第2方向に、前記硬化液を吐出する複数のノズルが並んで配置されたラインヘッドであり、
前記第1制御部は、
前記第1敷詰部材によって前記粉末材料を敷き詰めているときに前記吐出ヘッドから前記硬化液を吐出するように構成されており、
前記第2制御部は、
前記第2敷詰部材によって前記粉末材料を敷き詰めているときに前記吐出ヘッドから前記硬化液を吐出するように構成されている、
請求項1に記載の三次元造形装置。
【請求項3】
前記制御装置は、一層の前記硬化層を形成するごとに、前記第1制御と前記第2制御とを交互に実行するように構成されている、
請求項1または2に記載の三次元造形装置。
【請求項4】
前記第1供給・回収槽内に配置され、前記粉末材料が載置される第1テーブルと、
前記制御装置と電気的に接続され、前記第1テーブルを昇降移動させる第1昇降装置と、
前記第2供給・回収槽内に配置され、前記粉末材料が載置される第2テーブルと、
前記制御装置と電気的に接続され、前記第2テーブルを昇降移動させる第2昇降装置と、
をさらに備え、
前記造形槽と、前記第1供給・回収槽と、前記第2供給・回収槽とは、それぞれ、前記ケーシングの上面から下方に凹むように設けられており、
前記第1制御部は、前記第1昇降装置を制御して前記第1テーブルを上昇させ、前記第1供給・回収槽に貯留されている前記粉末材料を前記第1供給・回収槽の上端よりも上方に押し上げた後、前記移動機構を制御して前記造形槽および前記
第1敷詰部材のいずれか一方を前記第1方向の前記一方側から前記他方側に移動させ、前記第1供給・回収槽の前記上端よりも上方に押し上げられた前記粉末材料を前記造形槽の側に移動させ、前記所定の厚みで前記造形空間に敷き詰めるように構成されており、
前記第2制御部は、前記第2昇降装置を制御して前記第2テーブルを上昇させ、前記第2供給・回収槽に貯留されている前記粉末材料を前記第2供給・回収槽の上端よりも上方に押し上げた後、前記移動機構を制御して前記造形槽および前記
第2敷詰部材のいずれか一方を前記第1方向の前記他方側から前記一方側に移動させ、前記第2供給・回収槽の前記上端よりも上方に押し上げられた前記粉末材料を前記造形槽の側に移動させ、前記所定の厚みで前記造形空間に敷き詰めるように構成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項5】
前記第1制御部は、前記第2昇降装置を制御して前記第2テーブルを下降させ、前記第2貯留空間を広げるように構成されており、
前記第2制御部は、前記第1昇降装置を制御して前記第1テーブルを下降させ、前記第1貯留空間を広げるように構成されている、
請求項4に記載の三次元造形装置。
【請求項6】
前記第1敷詰部材および前記第2敷詰部材は、前記制御装置と電気的に接続され、
前記第1制御部は、前記吐出ヘッドよりも前記一方側に配置された前記第2敷詰部材を前記粉末材料と接しないように上方に移動させるように構成され、
前記第2制御部は、前記吐出ヘッドよりも前記他方側に配置された前記第1敷詰部材を前記粉末材料と接しないように上方に移動させるように構成されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項7】
前記
第1敷詰部材および前記第2敷詰部材は、前記制御装置と電気的に接続され、前記第1方向と平面視において交差する第2方向に延びた回転軸を中心として回転可能なローラであり、
前記第1制御部は、前記
第1敷詰部材であるローラを第1回転方向に回転させるように構成されており、
前記第2制御部は、前記
第2敷詰部材であるローラを前記第1回転方向とは逆の第2回転方向に回転させるように構成されている、
請求項1から
6のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項8】
前記第2方向から見た側面視において、前記造形槽を正面として、前記第1供給・回収槽が向かって左側にあり、前記第2供給・回収槽が向かって右側にあるときに、前記第1回転方向は反時計回りの方向であり、前記第2回転方向は時計回りの方向である、
請求項
7に記載の三次元造形装置。
【請求項9】
前記第1貯留空間の容積と、前記第2貯留空間の容積と、が同じである、
請求項1から
8のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項10】
前記第1貯留空間の容積と前記第2貯留空間の容積との合計が、前記造形空間の容積よりも大きい、
請求項1から
9のいずれか一項に記載の三次元造形装置。
【請求項11】
所定の厚みの粉末材料を硬化させて硬化層を形成し、前記硬化層を順次積層することによって三次元造形物を造形する三次元造形物の製造方法であって、
ケーシングと、前記ケーシングに設けられ、前記粉末材料から前記三次元造形物が造形される造形空間を有する造形槽と、前記ケーシングにおいて前記造形槽の第1方向における一方側に設けられ、前記粉末材料が貯留される第1貯留空間を有する第1供給・回収槽と、前記ケーシングにおいて前記造形槽の前記第1方向における他方側に設けられ、前記第1供給・回収槽に貯留されているのと同じ前記粉末材料が貯留される第2貯留空間を有する第2供給・回収槽と、前記第1供給・回収槽から供給された前記粉末材料を前記造形空間に敷き詰め、かつ前記造形空間に収容しきれなかった前記粉末材料を前記第2供給・回収槽まで搬送する
第1敷詰部材と、前記第2供給・回収槽から供給された前記粉末材料を前記造形空間に敷き詰め、かつ前記造形空間に収容しきれなかった前記粉末材料を前記第1供給・回収槽まで搬送する
第2敷詰部材と、を含む敷詰部材と、前記造形空間内の前記所定の厚みを有する前記粉末材料に対して硬化液を吐出する吐出ヘッドと、
前記第1敷詰部材と前記第2敷詰部材と前記吐出ヘッドとを搭載する支持部材と、前記支持部材を前記ケーシン
グに対し
て前記第1方向
に移動させる移動機構と、前記移動機構と前記吐出ヘッドとに電気的に接続された制御装置と、を備え
、前記第1敷詰部材は、前記支持部材において前記吐出ヘッドの前記第1方向における前記他方側に配置され、前記第2敷詰部材は、前記支持部材において前記吐出ヘッドの前記第1方向における前記一方側に配置された三次元造形装置を準備する準備工程と、
前記第1供給・回収槽に貯留されている前記粉末材料を、
前記吐出ヘッドよりも前記他方側に配置された前記第1敷詰部材によって、前記所定の厚みで前記造形空間に敷き詰め、前記造形槽内の前記粉末材料に対して前記吐出ヘッドから硬化液を吐出する第1工程と、
前記第2供給・回収槽に貯留されている前記粉末材料を、
前記吐出ヘッドよりも前記一方側に配置された前記第2敷詰部材によって、前記所定の厚みで前記造形空間に敷き詰め、前記造形槽内の前記粉末材料に対して、前記吐出ヘッドから硬化液を吐出する第2工程と、
を包含する、三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、3次元モデルデータに基づいて立体的な造形物(三次元造形物)を作成する3次元造形装置が知られている。例えば特許文献1には、三次元造形物が造形される造形空間を有する造形槽と、造形槽に供給される粉末材料が貯留される貯留空間を有する供給槽と、造形槽に収容しきれなかった余剰の粉末材料が回収される回収槽と、造形槽に粉末材料を敷き詰めると共に余剰の粉末材料を回収槽まで搬送するローラと、を備えた粉体積層造形方式の三次元造形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の三次元造形装置では、造形槽の一方向のみから粉末材料を供給する。このことにより、本発明者の検討によれば、造形槽内の場所によって敷き詰められた粉末材料に密度のばらつき(敷きムラ)が生じることがある。すなわち、供給槽から遠い側では、供給槽に近い側に比べて相対的に粉末材料の密度が低くなることがある。その結果、供給槽から遠い側で、相対的に三次元造形物の強度が低下したり、表面平滑性が低下したり、エッジ部分がダレやすくなったりすることがある。また、三次元造形物のサイズが大きい場合には、上記した不具合が部分的に生じて、三次元造形物が不均質になってしまうことがある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、造型品質のバラつきが軽減された三次元造形装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明により、所定の厚みの粉末材料を硬化させて硬化層を形成し、前記硬化層を順次積層することによって三次元造形物を造形する三次元造形装置が提供される。この三次元造形装置は、ケーシングと、前記ケーシングに設けられ、前記粉末材料から前記三次元造形物が造形される造形空間を有する造形槽と、前記ケーシングにおいて前記造形槽の第1方向における一方側に設けられ、前記粉末材料が貯留される第1貯留空間を有する第1供給・回収槽と、前記ケーシングにおいて前記造形槽の前記第1方向における他方側に設けられ、前記第1供給・回収槽に貯留されているのと同じ前記粉末材料が貯留される第2貯留空間を有する第2供給・回収槽と、前記第1供給・回収槽から供給された前記粉末材料を前記造形空間に敷き詰め、かつ前記造形空間に収容しきれなかった前記粉末材料を前記第2供給・回収槽まで搬送すると共に、前記第2供給・回収槽から供給された前記粉末材料を前記造形空間に敷き詰め、かつ前記造形空間に収容しきれなかった前記粉末材料を前記第1供給・回収槽まで搬送する敷詰部材と、前記ケーシングおよび前記敷詰部材のいずれか一方を他方に対して前記第1方向に相対的に移動させる移動機構と、前記造形空間内の前記所定の厚みを有する前記粉末材料に対して硬化液を吐出する吐出ヘッドと、前記移動機構と前記吐出ヘッドとに電気的に接続された制御装置と、を備える。前記制御装置は、前記ケーシングおよび前記敷詰部材のいずれか一方を他方に対して前記第1方向に相対的に移動させて、前記第1供給・回収槽に貯留されている前記粉末材料を、前記所定の厚みで前記造形空間に敷き詰め、前記造形槽内の前記粉末材料に対して前記吐出ヘッドから硬化液を吐出して前記硬化層を形成する第1制御を実行する第1制御部と、前記ケーシングおよび前記敷詰部材のいずれか一方を他方に対して前記第1方向に相対的に移動させて、前記第2供給・回収槽に貯留されている前記粉末材料を、前記所定の厚みで前記造形空間に敷き詰め、前記造形槽内の前記粉末材料に対して、前記吐出ヘッドから硬化液を吐出して前記硬化層を形成する第2制御を実行する第2制御部と、を備え、一つの前記三次元造形物を造形するときに、前記第1制御と前記第2制御とを少なくとも1回ずつ実行するように構成されている。
【0007】
上記構成では、造形槽の第1方向における両側にそれぞれ供給・回収槽が配置され、一つの三次元造形物を造形するときに、第1供給・回収槽から粉末材料を供給する第1制御と、第2供給・回収槽から粉末材料を供給する第2制御と、を少なくとも1回ずつ実行する。これにより、三次元造形物の全体としては第1方向における密度の粗密が平均化される。したがって、造形槽の一方向のみから粉末材料を供給する場合と比べて、第1方向における均質性の向上した三次元造形物を得ることができ、三次元造形物の造型品質を向上することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、造型品質のバラつきが軽減された三次元造形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る三次元造形装置の断面図である。
【
図2】一実施形態に係る三次元造形装置の平面図である。
【
図3】一実施形態に係る制御装置のブロック図である。
【
図4】三次元造形物の造形を開始する前の状態を表す三次元造形装置の断面図である。
【
図5】第1昇降工程を表す三次元造形装置の断面図である。
【
図6】第1造形工程を表す三次元造形装置の断面図である。
【
図7】第2昇降工程を表す三次元造形装置の断面図である。
【
図8】第2造形工程を表す三次元造形装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化される。
【0011】
図1は、本実施形態に係る三次元造形装置100の断面図である。
図2は、本実施形態に係る三次元造形装置100の平面図である。なお、以下の説明において、左、右、上、下とは、符号Fの方向から三次元造形装置100を見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味することし、三次元造形装置100からユーザに近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。また、符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を示している。また、符号X、Y、Zは、それぞれ前後方向、左右方向、上下方向を示している。符号Xは第1方向の一例であり、符号Yは第2方向の一例である。符号Fは第1方向の一方側の一例であり、符号Rrは第1方向の他方側の一例である。また、符号X1、X2は、それぞれ、前方(一方側)から後方(他方側)へ向かう方向、後方(他方側)から前方(一方側)へ向かう方向を示している。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、三次元造形装置100の設置態様を何ら限定するものではない。
【0012】
三次元造形装置100は、3次元モデルデータに基づいて、所定の厚み(一層分の断面形状の厚み)の粉末材料90を硬化させて硬化層91を形成し、これを順次一体的に積層することによって所望の三次元造形物92を造形する装置である。詳しくは、三次元造形装置100は、三次元造形物92の断面形状を表す断面データに基づいて、所定の厚みで敷き詰められた粉末材料90に硬化液を吐出し、粉末材料90同士を固着させて、断面データに即した一層の硬化層91を形成する。そして、硬化層91を一層ずつ上下方向Zに順次積ねることによって、三次元造形物92を造形する。なお、本明細書において「断面形状」とは、造形する三次元造形物92を所定の方向(例えば水平方向)に所定の厚み(典型的には、数十~100μm、例えば100μm(0.1mm)。)でスライスしたときの断面の形状をいう。ただし、所定の厚みは、必ずしも一定の厚みでなくてもよい。また、ここでは上下方向Zが、三次元造形における硬化層91の積層方向に一致する。
【0013】
粉末材料90については、特に限定されない。粉末材料90の種類は、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア等の無機材料、鉄、アルミニウム、チタンおよびこれらの合金(典型的にはステンレス鋼、チタン合金、アルミニウム合金)等の金属材料、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、水溶性アクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂、水溶性ポリアミド等の水溶性の樹脂材料、半水石膏(α型焼石膏、β型焼石膏)、アパタイト、食塩、澱粉、プラスチック等であってもよい。粉末材料90は、上記いずれか1種の材料から構成されていてもよいし、2種以上が組み合わされて構成されていてもよい。粉末材料90は、例えば、無機材料と水溶性の樹脂材料とを含む混合粉体であってもよい。
【0014】
三次元造形装置100は、ケーシング10と、造形槽20と、造形テーブル24と、造形テーブル昇降装置25と、第1供給・回収槽30と、第1テーブル34と、第1昇降装置35と、第2供給・回収槽40と、第2テーブル44と、第2昇降装置45と、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rと、支持部材70と、前後方向移動機構72と、ヘッドユニット60と、ローラ51、52と、制御装置80と、を備えている。
【0015】
ケーシング10は、三次元造形装置100の外装体である。ケーシング10は、中空の箱型形状に形成されている。ケーシング10は、前後方向Xに長い形状を有する。ケーシング10には、造形槽20と、造形テーブル昇降装置25と、第1供給・回収槽30と、第1昇降装置35と、第2供給・回収槽40と、第2昇降装置45と、が設けられている。ケーシング10の上面10Aは平坦である。造形槽20と、第1供給・回収槽30と、第2供給・回収槽40とは、それぞれ独立して設けられている。造形槽20と、第1供給・回収槽30と、第2供給・回収槽40とは、前後方向Xに並んで配置されている。ケーシング10は、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rと、前後方向移動機構72と、が設けられている。ケーシング10は、支持部材70が支持されている。
【0016】
造形槽20は、ケーシング10に設けられている。造形槽20は、ケーシング10の上面10Aから下方に凹むように設けられている。造形槽20の前方には、第1供給・回収槽30が配置されている。造形槽20の後方には、第2供給・回収槽40が配置されている。造形槽20は、前後方向Xにおいて、第1供給・回収槽30と、第2供給・回収槽40と、の間に挟まれている。造形槽20は、有底四角筒状である。造形槽20は、上方に向けて開口している。開口部は、ここでは平面視において矩形状である。造形槽20は、三次元造形物が造形される造形空間20Aを有する。造形空間20Aには、第1供給・回収槽30および第2供給・回収槽40から粉末材料90が供給される。造形空間20Aの粉末材料90に硬化液が吐出されて、硬化層91が形成される。
【0017】
造形テーブル24は、造形槽20の底部に配置されている。造形槽20と造形テーブル24とに囲まれた空間が造形空間20Aである。造形テーブル24は、造形空間20Aの底面を構成している。造形テーブル24の形状は、例えば、平面視において矩形状である。造形テーブル24は、水平である。造形テーブル24には、粉末材料90が載置される。硬化層91の形成時には、造形テーブル24の上に所定の厚みで粉末材料90が敷き詰められる。三次元造形物92は、造形テーブル24の上に造形される。造形テーブル24は、造形テーブル昇降装置25と電気的に接続されている。造形テーブル24は、典型的には造形槽20の内部を、造形槽20の側面に沿って上下方向Zに昇降移動可能に構成されている。
【0018】
造形テーブル昇降装置25は、ケーシング10に設けられている。造形テーブル昇降装置25は、造形テーブル24を昇降移動させる装置である。造形テーブル昇降装置25は、造形テーブル24を上下方向Zに移動させる装置である。造形テーブル昇降装置25は、制御装置80に制御される。造形テーブル昇降装置25の構成は、特に限定されない。造形テーブル昇降装置25は、ここでは、造形テーブル支持部材26と、造形テーブル駆動モータ27(
図3も参照)と、ボールねじ(図示せず)と、を備えている。造形テーブル支持部材26は、造形テーブル24の下面に接続されている。造形テーブル支持部材26は、造形テーブル24を下方から支持している。造形テーブル支持部材26は、ボールねじを介して造形テーブル駆動モータ27に接続されている。造形テーブル駆動モータ27は、例えば、サーボモータである。造形テーブル駆動モータ27を駆動させることにより、造形テーブル支持部材26は上下方向Zに移動する。これにより、造形テーブル24は上下方向Zに移動する。造形テーブル24の移動幅は、一層分の断面形状の厚みと等しく定められている。造形テーブル駆動モータ27は、制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。
【0019】
第1供給・回収槽30は、ケーシング10に設けられている。第1供給・回収槽30は、ケーシング10の上面10Aから下方に凹むように設けられている。第1供給・回収槽30は、前後方向Xにおいて、造形槽20の隣に並んで配置されている。第1供給・回収槽30は、造形槽20よりも前方に配置されている。第1供給・回収槽30は、有底四角筒状である。第1供給・回収槽30は、上方に向けて開口している。開口部は、ここでは平面視において矩形状である。
図2に示すように、第1供給・回収槽30の左右方向Yの長さL1は、ここでは造形槽20の左右方向Yの長さLmと同じである。ただし、Lm<L1であってもよい。第1供給・回収槽30は、造形槽20に粉末材料90を供給する供給槽としての機能と、第2供給・回収槽40から造形槽20に対して過剰に供給された余剰の(言い換えれば、造形空間20Aに収容されずに余った)粉末材料90を回収する回収槽としての機能とを兼ね備えている。第1供給・回収槽30は、粉末材料90が貯留される第1貯留空間30Aを有する。
【0020】
第1テーブル34は、第1供給・回収槽30の底部に配置されている。第1供給・回収槽30と第1テーブル34とに囲まれた空間が、第1貯留空間30Aである。第1テーブル34は、第1貯留空間30Aの底面を構成している。第1テーブル34の形状は、例えば、平面視において矩形状である。第1テーブル34は、水平である。第1テーブル34には、粉末材料90が載置される。第1貯留空間30Aの最大容積(第1テーブル34が最も下方に位置するときの容積。以下、C1と略す。)は、ここでは、造形空間20Aの最大容積(造形テーブル24が最も下方に位置するときの容積。以下、Cmと略す。)よりも小さい。C1は、ここでは、0.5Cm≦C1<Cm、例えば、0.6Cm≦C1≦0.7Cm、を満たしている。第1貯留空間30Aに収容可能な粉末材料90の体積は、造形空間20Aに収容可能な粉末材料90の体積よりも小さい。第1テーブル34は、第1昇降装置35と電気的に接続されている。第1テーブル34は、典型的には第1供給・回収槽30の内部を、第1供給・回収槽30の側面に沿って、上下方向Zに昇降移動可能に構成されている。
【0021】
第1昇降装置35は、ケーシング10に設けられている。第1昇降装置35は、第1テーブル34を昇降移動させる装置である。第1昇降装置35は、第1テーブル34を上下方向Zに移動させる装置である。第1昇降装置35は、制御装置80に制御される。第1昇降装置35の構成は、特に限定されない。第1昇降装置35は、造形テーブル昇降装置25と同じ構成であってもよい。第1昇降装置35は、ここでは、第1支持部材36と、第1駆動モータ37(
図3も参照)と、ボールねじ(図示せず)と、を備えている。第1支持部材36は、第1テーブル34の下面に接続されている。第1支持部材36は、第1テーブル34を下方から支持している。第1支持部材36は、ボールねじを介して第1駆動モータ37に接続されている。第1駆動モータ37は、例えば、サーボモータである。第1駆動モータ37を駆動させることにより、第1支持部材36は上下方向Zに移動する。これにより、第1テーブル34は上下方向Zに移動する。第1テーブル34の移動幅は、例えば造形テーブル24の移動幅に対応して予め定められている。第1駆動モータ37は、制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。
【0022】
第2供給・回収槽40は、ケーシング10に設けられている。第2供給・回収槽40は、ケーシング10の上面10Aから下方に凹むように設けられている。第2供給・回収槽40は、前後方向Xにおいて、造形槽20の隣に並んで配置されている。第2供給・回収槽40は、造形槽20よりも後方に配置されている。第2供給・回収槽40は、前後方向Xにおいて、造形槽20を挟んで第1供給・回収槽30の反対側に設けられている。第2供給・回収槽40は、有底四角筒状である。第2供給・回収槽40は、上方に向けて開口している。開口部は、ここでは平面視において矩形状である。
図2に示すように、第2供給・回収槽40は、ここでは第1供給・回収槽30と同形状、同サイズである。第2供給・回収槽40の左右方向Yの長さL2は、ここでは造形槽20の左右方向Yの長さLmと同じである。ただし、Lm<L2であってもよい。第2供給・回収槽40は、造形槽20に粉末材料90を供給する供給槽として機能すると共に、第1供給・回収槽30から造形槽20に対して過剰に供給された余剰の粉末材料90を回収する回収槽として機能する。第2供給・回収槽40は、粉末材料90が貯留される第2貯留空間40Aを有する。
【0023】
第2テーブル44は、第2供給・回収槽40の底部に配置されている。第2供給・回収槽40と第2テーブル44とに囲まれた空間が、第2貯留空間40Aである。第2テーブル44は、第2貯留空間40Aの底面を構成している。第2テーブル44の形状は、例えば、平面視において矩形状である。第2テーブル44は、水平である。第2テーブル44には、粉末材料90が載置される。第2貯留空間40Aの最大容積(第2テーブル44が最も下方に位置するときの容積。以下C2と略す。)は、ここでは、造形空間20Aの最大容積Cmよりも小さい。C2は、ここでは、0.5Cm≦C2、例えば、0.6Cm≦C2≦0.7Cm、を満たしている。第2貯留空間40Aに収容可能な粉末材料90の体積は、造形空間20Aに収容可能な粉末材料90の体積よりも小さい。第2貯留空間40Aの最大容積C2は、ここでは第1貯留空間30Aの最大容積C1と同じである。ただし、第2貯留空間40Aの最大容積C2は、第1貯留空間30Aの最大容積C1よりも小さくてもよいし大きくてもよい。第1貯留空間30Aの最大容積C1と第2貯留空間40Aの最大容積C2との比は、例えば、C1:C2=2:1~1:2であってもよい。
【0024】
第1貯留空間30Aの最大容積C1と第2貯留空間40Aの最大容積C2との合計は、造形空間20Aの最大容積Cmと同じかそれよりも大きい。すなわち、Cm≦(C1+C2)である。上記Cmと上記C1と上記C2とは、概ね、1.1Cm≦(C1+C2)≦2Cm、例えば、1.2Cm≦(C1+C2)≦1.5Cm、を満たしていてもよい。第2テーブル44は、第2昇降装置45と電気的に接続されている。第2テーブル44は、典型的には第2供給・回収槽40の内部を、第2供給・回収槽40の側面に沿って、上下方向Zに昇降移動可能に構成されている。
【0025】
第2昇降装置45は、ケーシング10に設けられている。第2昇降装置45は、第2テーブル44を昇降移動させる装置である。第2昇降装置45は、第2テーブル44を上下方向Zに移動させる装置である。第2昇降装置45は、制御装置80に制御される。第2昇降装置45の構成は、特に限定されない。第2昇降装置45は、第1昇降装置35と同じ構成であってもよい。第2昇降装置45は、ここでは、第2支持部材46と、第2駆動モータ47(
図3も参照)と、ボールねじ(図示せず)と、を備えている。第2支持部材46は、第2テーブル44の下面に接続されている。第2支持部材46は、第2テーブル44を下方から支持している。第2支持部材46は、ボールねじを介して第2駆動モータ47に接続されている。第2駆動モータ47は、例えば、サーボモータである。第2駆動モータ47を駆動させることにより、第2支持部材46は上下方向Zに移動する。これにより、第2テーブル44は、上下方向Zに移動する。第2テーブル44の移動幅は、例えば造形テーブル24の移動幅に対応して予め定められている。本実施形態では、第2テーブル44の移動幅が第1テーブル34の移動幅と等しく定められている。第2駆動モータ47は、制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。
【0026】
左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rは、ケーシング10に設けられている。左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rは、前後方向Xに延びている。左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rは、左右方向Yに平行に配置されている。左ガイドレール12Lは、右ガイドレール12Rよりも左方に配置されている。左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rは、支持部材70の前後方向Xへの移動をガイドする。前後方向Xは、支持部材70の走査方向に対応する。左ガイドレール12Lの前端および右ガイドレール12Rの前端は、第2供給・回収槽40の前端よりも前方に位置している。左ガイドレール12Lの後端および右ガイドレール12Rの後端は、第1供給・回収槽30の後端よりも後方に位置している。左右方向Yにおいて、左ガイドレール12Lと右ガイドレール12Rとの間には、造形槽20と第1供給・回収槽30と第2供給・回収槽40とが設けられている。なお、本実施形態では、ケーシング10に左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rが設けられているが、ガイドレールの設置位置や数は特に限定されない。
【0027】
支持部材70は、ケーシング10の上面10Aに配置されている。支持部材70は、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rに摺動自在に係合している。支持部材70は、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rに沿って前後方向Xに移動可能に構成されている。支持部材70は、左ガイドレール12Lに係合する左脚部70Lと、右ガイドレール12Rに係合する右脚部70Rと、左脚部70Lの上端と右脚部70Rとの上端とを連結する連結部70Cと、を備えている。左脚部70Lおよび右脚部70Rは、上下方向Zに延びている。連結部70Cは左右方向Yに延びている。連結部70Cは、造形槽20と第1供給・回収槽30と第2供給・回収槽40との上方に位置している。支持部材70には、ヘッドユニット60とローラ51、52とが支持されている。支持部材70は、前後方向移動機構72と電気的に接続されている。支持部材70は、左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rに沿って前後方向Xに往復移動可能に構成されている。
【0028】
前後方向移動機構72は、支持部材70をケーシング10に対して前後方向Xに相対的に移動させる機構である。前後方向移動機構72は、ローラ51、52およびヘッドユニット60を、造形槽20と第1供給・回収槽30と第2供給・回収槽40とに対して、前後方向Xに相対的に移動させる機構である。なお、説明の便宜上、前後方向移動機構72は
図2のみに示し、他の図では図示を省略している。前後方向移動機構72の構成は、特に限定されない。前後方向移動機構72は、ここでは、左ガイドレール12Lの前端側に配置されたプーリ73Fと、左ガイドレール12Lの後端側に配置されたプーリ73Rと、右ガイドレール12Rの前端側に配置されたプーリ74Fと、右ガイドレール12Rの後端側に配置されたプーリ74Rと、プーリ73Fとプーリ74Fとを連結する連結ロッド75Aと、プーリ73Rと、プーリ74Rとを連結する連結ロッド75Bと、プーリ73Fとプーリ73Rとに巻き掛けられた左側ベルト76Lと、プーリ74Fとプーリ74Rとに巻き掛けられた右側ベルト76Rと、連結ロッド75Aを回転させる第1モータ77(
図3参照)と、を備えている。左側ベルト76Lは、左脚部70Lに固定されている。右側ベルト76Rは、右脚部70Rに固定されている。
【0029】
第1モータ77は、制御装置80と電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。第1モータ77が駆動すると連結ロッド75Aが回転し、左側ベルト76Lおよび右側ベルト76Rが走行する。これにより、支持部材70が左ガイドレール12Lおよび右ガイドレール12Rに沿って前後方向Xに往復移動する。支持部材70が前後方向Xに往復移動すると、これに伴って、支持部材70に支持されているヘッドユニット60とローラ51、52とが、共に前後方向Xに往復移動する。前後方向移動機構72は、制御装置80に制御される。なお、本実施形態では、第1モータ77は連結ロッド75Aを回転させるように構成されているが、第1モータ77は連結ロッド75Bを回転させるように構成されていてもよい。
【0030】
ヘッドユニット60は、支持部材70に支持されている。ヘッドユニット60は、連結部70Cに固定されている。ヘッドユニット60は、前後方向Xに並ぶ3つのラインヘッド62と、ラインヘッド62を収容するケース64と、を備えている。ラインヘッド62は、造形空間20Aに収容された粉末材料90に硬化液を吐出する装置である。なお、硬化液は、粉末材料90を構成する粒子同士を固着させることが可能な液体(粘性体を含む。)であればよく、特に限定されない。硬化液は、例えば、水、ワックス、バインダ等を含む液体等であってもよい。硬化液は、粉末材料90が水溶性の樹脂材料を含む場合に、例えば水であってもよい。ラインヘッド62は、吐出ヘッドの一例である。
【0031】
ラインヘッド62は、ケーシング10の上方に位置している。ラインヘッド62は、造形槽20よりも上方に位置している。ラインヘッド62の下端は、ケース64の下面よりも下方に突出している。ラインヘッド62は、硬化液を吐出する複数のノズル(図示せず)を有する。ラインヘッド62の左右方向Yの長さLhは、造形槽20の左右方向Yの長さLmと同じかそれよりも長い。複数のノズルは、左右方向Yに直線状に並んでいる。ラインヘッド62における硬化液の吐出機構は特に限定されず、例えばインクジェット方式である。ラインヘッド62は、支持部材70の移動に伴って前後方向Xに往復移動する。ラインヘッド62は、ここでは左右方向Yには移動しない。ラインヘッド62は、制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。ラインヘッド62のノズルからの硬化液の吐出は、制御装置80によって制御される。
【0032】
ローラ51、52は、それぞれ間接的に支持部材70に支持されている。具体的には、ローラ51、52は、それぞれ図示しない支持アームに支持されている。支持アームの一端は、左脚部70Lおよび右脚部70Rにそれぞれ取り付けられている。ローラ51は、ラインヘッド62よりも後方に配置されている。ローラ52は、ラインヘッド62よりも前方に配置されている。ローラ51、52の下端51B、52Bは、それぞれ、ラインヘッド62の下端よりも下方に位置している。ローラ51、52の下端51B、52Bは、同じ高さに位置している。ローラ51、52の下端51B、52Bは、ケーシング10の上方に位置している。ローラ51、52は、それぞれ、ケーシング10の上面10Aとの間に所定のクリアランス(間隙)が形成されるように配置されている。ローラ51、52は、それぞれ、長尺の円筒形状を有している。
図2に示すように、ローラ51、52は、左右方向Yに平行に延びている。ローラ51、52は、ここでは左右方向Yの長さLrが同じである。ローラ51、52の左右方向Yの長さLrは、それぞれ、造形槽20の左右方向Yの長さLmよりも長く、第1供給・回収槽30の左右方向Yの長さL1よりも長く、第2供給・回収槽40の左右方向Yの長さL2よりも長い。ローラ51、52は、支持部材70の移動に伴って、少なくとも第1供給・回収槽30の前端から第2供給・回収槽40の後端までの間を、前後方向Xに水平移動する。ローラ51、52は、ケーシング10の上面10Aに沿って前後方向Xに水平移動する。
【0033】
ローラ51は、第1テーブル34に載置されている粉末材料90を造形槽20へと搬送する。ローラ51は、造形槽20の前方から、造形テーブル24の上に粉末材料90を供給する。ローラ52は、第2テーブル44に載置されている粉末材料90を造形槽20へと搬送する。ローラ51は、造形槽20の後方から、造形テーブル24の上に粉末材料90を供給する。ローラ51、52は、それぞれ、造形テーブル24の上に供給された粉末材料90上を移動して、粉末材料90の表面を平らに均す。粉末材料90は、ローラ51、52によって造形テーブル24上の全面に万遍なく敷き詰められる。粉末材料90は、造形槽20内に所定の厚みで敷き詰められる。造形槽20内に敷き詰められる粉末材料90の上面の高さは、ローラ51、52の下端51B、52Bの高さである。ローラ51、52はまた、造形槽20に収容しきれなかった余剰の粉末材料90を、第1供給・回収槽30または第2供給・回収槽40へと搬送する。
【0034】
ローラ51、52は、それぞれ、左右方向Yに延びた回転軸を中心として、支持アームに回転可能に支持されている。ローラ51、52は、それぞれ、回転軸が左右方向Yと平行になるように配置されている。ローラ51、52は、それぞれ、第2モータ53に接続されている。第2モータ53は、左脚部70Lに設けられている。第2モータ53は、制御装置80に電気的に接続されており、制御装置80によって制御される。ローラ51、52は、それぞれ、粉末材料90を下方から上方に向かって押し上げる(掬い上げる)ように、一方向に回転する。
図1に示すように、ローラ51は、前方から後方へ向かう方向X1に水平移動するときに、第2モータ53を駆動することによって、第1回転方向R1に回転する。
図1において、第1回転方向R1は、反時計回りの方向である。ローラ52は、後方から前方へ向かう方向X2に水平移動するときに、第2モータ53を駆動することによって、第1回転方向R1と逆の第2回転方向R2に回転する。
図1において、第2回転方向R2は、時計回りの方向である。また、本実施形態では、一方のローラを使用する時に、使用しない方のローラが支持アームの支軸を中心として上方に移動する。これにより、使用しない方のローラが造形テーブル24の上に供給された粉末材料90と接しないように構成されている。
【0035】
制御装置80は、三次元造形装置100の全体の動作を制御する。制御装置80の構成は特に限定されない。制御装置80は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から印刷データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶部と、を備えている。本実施形態では、制御装置80は、ケーシング10の内部に設けられている。ただし、制御装置80は、ケーシング10の外部に設置されたコンピュータ等であってもよい。この場合、制御装置80は、有線または無線を介して三次元造形装置100と通信可能に接続されている。
【0036】
図3は、制御装置80のブロック図である。制御装置80は、造形テーブル駆動モータ27と、第1駆動モータ37と、第2駆動モータ47と、第1モータ77と、ラインヘッド62と、第2モータ53と、通信可能に接続され、これらを制御可能に構成されている。制御装置80は、第1制御部81と、第2制御部82と、を備えている。制御装置80の各部の機能は、例えばプログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVD等の記録媒体から読み込まれるものであってもよいし、インターネット等を通じてダウンロードされるものであってもよい。制御装置80の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路等によって実現可能なものであってもよい。
【0037】
第1制御部81は、第1貯留空間30Aに貯留されている粉末材料90を用いて硬化層91を形成する第1制御を実行する。第1制御部81は、造形テーブル駆動モータ27を制御して、造形テーブル24を下方に移動させるように構成されている。このときの造形テーブル24の下方への移動幅T(
図5参照)は、一層分の断面形状の厚みと同じである。これにより、造形テーブル24の上方に、厚みTの空間が形成される。また、第1制御部81は、第1駆動モータ37を制御して、第1テーブル34を上方に移動させるように構成されている。これにより、第1貯留空間30Aに貯留されている粉末材料90の一部または全部を、第1供給・回収槽30の上端よりも上方に押し上げる。通常、第1供給・回収槽30の上端よりも上方に押し上げられる粉末材料90の体積V1(
図5参照)は、平面視における造形テーブル24の面積と上記下方への移動幅Tとを乗じた体積よりも多い。すなわち、粉末材料90は、通常、上記厚みTの空間に収容される量よりも多めに供給される。
【0038】
また、第1制御部81は、第1テーブル34を上方に移動させるときに、第2駆動モータ47を制御して、第2テーブル44を下方に移動させるように構成されていてもよい。このときの第2テーブル44の下方への移動幅は、余剰の粉末材料90の体積を平面視における第2テーブル44の面積で除した高さと同じかそれよりも大きい。なお、余剰の粉末材料90の体積は、第1供給・回収槽30の上端よりも上方に押し上げられる粉末材料90の体積V1から、平面視における造形テーブル24の面積と上記下方への移動幅Tとを乗じた体積を差し引くことで、求められる。これにより、第2貯留空間40Aを広げて、第2貯留空間40Aに余剰の粉末材料90を回収するための空間を適切に確保することができる。
【0039】
第1制御部81は、支持アームの支軸を中心としてローラ52を上方に移動させる。また、第1制御部81は、第2モータ53を制御して、ローラ51を第1回転方向R1に回転させる。第1制御部81は、少なくとも造形テーブル24を下方に移動させかつ第1テーブル34を上方に移動させた後に、ローラ51を第1回転方向R1に回転させながら、第1モータ77を制御して、支持部材70を前方から後方へ向かう方向X1に水平移動させる。これにより、第1供給・回収槽30の上端よりも上に盛り上がって積まれた粉末材料90が造形槽20の側に移動させられ、造形テーブル24の上で均される。この一連の動作によって、造形槽20内に厚みTで粉末材料90が敷き詰められる。また、造形槽20に収容されずに余った粉末材料90は、そのままローラ51によってさらに後方に移動させられ、第2供給・回収槽40に回収される。
【0040】
第1制御部81は、第1貯留空間30Aに貯留されている粉末材料90が造形槽20内に厚みTで敷き詰められた後に、ラインヘッド62を制御して、造形槽20内の粉末材料90に対して、ラインヘッド62から硬化液を吐出する。第1制御部81は、ラインヘッド62のノズルから硬化液を吐出するタイミングや硬化液の量を制御するように構成されている。特に限定されるものではないが、本実施形態において、第1制御部81は、ローラ51が造形テーブル24に粉末材料90を敷き詰めているときに、ラインヘッド62から硬化液を吐出するように構成されている。言い換えれば、支持部材70が前方から後方へ向かう方向X1に1回移動するときに、粉末材料90の敷き詰めと、ラインヘッド62からの硬化液の吐出と、をあわせて行うように構成されている。これにより、三次元造形物92を効率良く造形することができる。
【0041】
第2制御部82は、第2貯留空間40Aに貯留されている粉末材料90を用いて硬化層91を形成する第2制御を実行する。第2制御部82は、造形テーブル駆動モータ27を制御して、造形テーブル24を下方に移動させるように構成されている。このときの造形テーブル24の下方への移動幅T(
図7参照)は、一層分の断面形状の厚みと同じである。これにより、造形テーブル24の上方に、厚みTの空間が形成される。また、第2制御部82は、第2駆動モータ47を制御して、第2テーブル44を上方に移動させるように構成されている。これにより、第2貯留空間40Aに貯留されている粉末材料90の一部または全部を、第2供給・回収槽40の上端よりも上方に押し上げる。通常、第2供給・回収槽40の上端よりも上方に押し上げられる粉末材料90の体積V2(
図7参照)は、平面視における造形テーブル24の面積と上記下方への移動幅Tとを乗じた体積よりも多い。すなわち、粉末材料90は、通常、上記厚みTの空間に収容される量よりも多めに供給される。
【0042】
また、第2制御部82は、第2テーブル44を上方に移動させるときに、第1駆動モータ37を制御して、第1テーブル34を下方に移動させるように構成されていてもよい。このときの第1テーブル34の下方への移動幅は、余剰の粉末材料90の体積を平面視における第1テーブル34の面積で除した高さと同じかそれよりも大きい。なお、余剰の粉末材料90の体積は、第2供給・回収槽40の上端よりも上方に押し上げられる粉末材料90の体積V2から、平面視における造形テーブル24の面積と上記下方への移動幅Tとを乗じた体積を差し引くことで、求められる。これにより、第1貯留空間30Aを広げて、第1供給・回収槽30に余剰の粉末材料90を回収するための空間を適切に確保することができる。
【0043】
第2制御部82は、支持アームの支軸を中心としてローラ51を上方に移動させる。また、第2制御部82は、第2モータ53を制御して、ローラ52を第2回転方向R2に回転させる。第2制御部82は、少なくとも造形テーブル24を下方に移動させかつ第2テーブル44を上方に移動させた後に、ローラ52を第2回転方向R2に回転させながら、第1モータ77を制御して、支持部材70を後方から前方へ向かう方向X2に水平移動させる。これにより、第2供給・回収槽40の上端よりも上に盛り上がって積まれた粉末材料90が造形槽20の側に移動させられ、造形テーブル24の上で均される。この一連の動作によって、造形槽20内に厚みTで粉末材料90が敷き詰められる。また、造形槽20に収容されずに余った粉末材料90は、そのままローラ52によってさらに前方に移動させられ、第1供給・回収槽30に回収される。
【0044】
第2制御部82は、第2貯留空間40Aに貯留されている粉末材料90が造形槽20内に厚みTで敷き詰められた後に、ラインヘッド62を制御して、造形槽20内の粉末材料90に対して、ラインヘッド62から硬化液を吐出する。第2制御部82は、ラインヘッド62のノズルから硬化液を吐出するタイミングや硬化液の量を制御するように構成されている。特に限定されるものではないが、本実施形態において、第2制御部82は、ローラ52が造形テーブル24に粉末材料90を敷き詰めているときに、ラインヘッド62から硬化液を吐出するように構成されている。言い換えれば、支持部材70が後方から前方へ向かう方向X2に1回移動するときに、粉末材料90の敷き詰めと、ラインヘッド62からの硬化液の吐出と、をあわせて行うように構成されている。これにより、三次元造形物92を効率良く造形することができる。
【0045】
本実施形態では、一つの三次元造形物92を造形するときに、第1制御と第2制御とを少なくとも1回ずつ実行する。第1制御と第2制御とを実行する回数は同じであってもよく、異なっていてもよい。上下方向Zの均質性を高める観点からは、第1制御と第2制御とを交互に実行するとよい。ただし、例えば第1制御および/または第2制御を、それぞれ独立して、複数回連続して実行することも可能である。
【0046】
次に、
図4~
図8を参照しつつ、三次元造形物92を造形するときの三次元造形装置100の製造方法について説明する。なお、本実施形態では、一層分の断面形状が厚み0.1mmである硬化層91を上方に次々に積層してゆくことによって、三次元造形物92を製造する場合を例として説明する。本実施形態の製造方法は、第1工程と第2工程とを包含する。第1工程は、第1昇降工程と第1造形工程とをこの順に包含する。第2工程は、第2昇降工程と第2造形工程とをこの順に包含する。以下、各工程について説明する。
【0047】
図4は、造形を開始する前の状態を表す三次元造形装置100の断面図である。
図4に示すように、造形待機時、すなわち、三次元造形が行われていないときには、支持部材70およびヘッドユニット60がホームポジションHPで待機している。ホームポジションHPは、第1供給・回収槽30よりも前方に位置している。造形テーブル24は、造形テーブル駆動モータ27によって初期位置に移動される。造形テーブル24の初期位置は、造形槽20内の最も高い位置である。造形テーブル24は、造形の工程が進むにつれて、次第に造形槽20内の低い位置に移動してゆく。第1テーブル34は、第1駆動モータ37によって初期位置に移動される。第1テーブル34の初期位置は、ここでは第1供給・回収槽30内の最も低い位置よりも上方の位置である。初期位置は、第1テーブル34が下方に移動可能な位置である。第1貯留空間30Aには、上面10Aと面一になるように、粉末材料90が貯留されている。第2テーブル44は、第2駆動モータ47によって初期位置に移動される。第2テーブル44の初期位置は、ここでは第1テーブル34の初期位置と同じ高さである。第2貯留空間40Aには、上面10Aと面一になるように、第1貯留空間30Aと同じ粉末材料90が貯留されている。第2貯留空間40Aに貯留されている粉末材料90の体積は、第1貯留空間30Aに貯留されている粉末材料90の体積と同じである。
【0048】
図5は、第1昇降工程を表す三次元造形装置100の断面図である。第1昇降工程において、第1制御部81は、造形テーブル駆動モータ27を制御して、造形テーブル24を下方に移動させる。このときの造形テーブル24の下方への移動幅Tは、一層分の断面形状の厚みと同じ、すなわち0.1mmである。また、第1制御部81は、第1駆動モータ37を制御して、第1テーブル34を上方に移動させる。これにより、第1貯留空間30Aの粉末材料90の一部が、第1供給・回収槽30の上端よりも上に盛り上がって積まれる形になる。また、第1制御部81は、第2駆動モータ47を制御して、第2テーブル44を下方に移動させる。
【0049】
図6は、第1造形工程を表す三次元造形装置100の断面図である。第1造形工程は、第1昇降工程に続いて実施される。第1造形工程において、第1制御部81は、ローラ52を粉末材料90と接しないように上方に移動させると共に、第2モータ53を制御して、ローラ51を第1回転方向R1、すなわち
図5,
図6における反時計回りの方向に回転させる。第1制御部81は、ローラ51を第1回転方向R1に回転させた状態で、第1モータ77を制御して、支持部材70を前方から後方へ向かう方向X1に水平移動させる。第1制御部81は、支持部材70をホームポジションHPから待機位置SPまで移動する。これにより、第1昇降工程において第1供給・回収槽30の上端よりも上に盛り上がって積まれた粉末材料90が、ローラ50で後上方に向かって押し上げられながら造形槽20の側に移動させられ、造形テーブル24の上で均される。この一連の動作によって、造形テーブル24の上に一層分の断面形状の厚み(0.1mm)で粉末材料90が敷き詰められる。また、造形槽20に収容されずに余った粉末材料90は、そのままローラ51によってさらに後方に移動させられ、第2供給・回収槽40に回収される。
【0050】
第1制御部81は、ラインヘッド62を制御して、造形テーブル24の上の厚み0.1mmの粉末材料90に対して、ラインヘッド62のノズルから硬化液を吐出する。本実施形態では、ラインヘッド62がローラ51と同じ支持部材70に支持されており、ローラ51と共に前方から後方へ向かう方向X1に移動する。また、ラインヘッド62がローラ51よりも前方に配置されている。そのため、粉末材料90の供給が完全に完了する前に、すなわち、ローラ51が粉末材料90を敷き詰めているときに、粉末材料90が敷き詰められた部分から順に硬化液を吐出する。これにより、一層分の硬化層91を効率良く形成することができる。
【0051】
図7は、第2昇降工程を表す三次元造形装置100の断面図である。第2昇降工程は、ここでは第1造形工程に続いて実施される。第2昇降工程において、第2制御部82は、造形テーブル駆動モータ27を制御して、造形テーブル24を下方に移動させる。このときの造形テーブル24の下方への移動幅Tは、一層分の断面形状の厚みと同じ、すなわち0.1mmである。また、第2制御部82は、第2駆動モータ47を制御して、第2テーブル44を上方に移動させる。これにより、第2貯留空間40Aの粉末材料90の一部が、第2供給・回収槽40の上端よりも上に盛り上がって積まれる形になる。また、第2制御部82は、第1駆動モータ37を制御して、第1テーブル34を下方に移動させる。
【0052】
図8は、第2造形工程を表す三次元造形装置100の断面図である。第2造形工程は、第2昇降工程に続いて実施される。第2造形工程において、第2制御部82は、ローラ51を粉末材料90と接しないように上方に移動させると共に、第2モータ53を制御して、ローラ52を第2回転方向R2、すなわち
図7,
図8における時計回りの方向に回転させる。第2制御部82は、ローラ52を第2回転方向R2に回転させた状態で、第1モータ77を制御して、支持部材70を後方から前方へ向かう方向X2に水平移動させる。第2制御部82は、支持部材70を待機位置SPからホームポジションHPまで移動する。これにより、第2昇降工程において第2供給・回収槽40の上端よりも上に盛り上がって積まれた粉末材料90が、ローラ50で上方に向かって押し上げられながら造形槽20の側に移動させられ、造形テーブル24の上で均される。この一連の動作によって、造形テーブル24の上に一層分の断面形状の厚み(0.1mm)で粉末材料90が敷き詰められる。また、造形槽20に収容されずに余った粉末材料90は、そのままローラ52によってさらに前方に移動させられ、第1供給・回収槽30に回収される。
【0053】
第2制御部82は、ラインヘッド62を制御して、造形テーブル24の上の厚み0.1mmの粉末材料90に対して、ラインヘッド62のノズルから硬化液を吐出する。本実施形態では、ラインヘッド62がローラ52と同じ支持部材70に支持されており、ローラ52と共に後方から前方へ向かう方向X2に移動する。また、ラインヘッド62がローラ52よりも後方に配置されている。そのため、粉末材料90の供給が完全に完了する前に、すなわち、ローラ52が粉末材料90を敷き詰めているときに、粉末材料90の敷き詰められた部分から順に硬化液を吐出する。これにより、上記で形成した第1層目の硬化層91の上に、第2層目の硬化層91が形成される。
【0054】
そして、この第1制御部81によって実行される第1制御と、第2制御部82によって実行される第2制御とを、三次元造形物92の造形が完了するまで繰り返す。好ましくは、第1制御と第2制御とを交互に繰り返す。好ましくは、第1制御と第2制御とを同じ回数繰り返す。これにより、第1~第nの硬化層91(nは2以上の整数)が上下方向Zに積み上げられた三次元造形物92を製造することができる。
【0055】
以上のように、三次元造形装置100では、前後方向Xにおいて、造形槽20が第1供給・回収槽30と第2供給・回収槽40との間に挟まれており、一つの三次元造形物92を造形するときに、第1供給・回収槽30から粉末材料90を供給する第1制御と、第2供給・回収槽40から粉末材料90を供給する第2制御と、を少なくとも1回ずつ実行する。これにより、三次元造形物92の全体として、前後方向Xにおける密度の粗密が平均化される。したがって、造形槽の一方向のみから粉末材料90を供給する場合と比べて、前後方向Xにおける均質性の向上した三次元造形物92を得ることができ、三次元造形物92の造型品質を向上することができる。
【0056】
加えて、本実施形態では、一方の供給・回収槽から粉末材料90が供給されるときに、他方の供給・回収槽が余剰の粉末材料90を回収する回収槽として機能する。このため、他方の供給・回収槽に回収された余剰の粉末材料90を、そのまま再利用することができ、粉末材料90の回収のみを専門で行う回収槽は不要となる。また、造形が完了した後に回収槽に回収された粉末材料90をユーザが供給槽に戻す作業も必要なくなる。したがって、ユーザの手間を省いて、ユーザの利便性を向上することができる。
【0057】
本実施形態の三次元造形装置100によれば、第1制御部81は、粉末材料90を敷き詰めているときに吐出ヘッド62から硬化液を吐出するように構成されており、第2制御部82は、粉末材料90を敷き詰めているときに吐出ヘッド62から硬化液を吐出するように構成されている。このように、粉末材料90の供給が完全に完了する前に、粉末材料90の供給された部分から順に、硬化液を吐出して硬化層91を形成することにより、造型品質の向上した三次元造形物92を効率良く得ることができる。すなわち、粉末材料90を敷き詰める工程と、硬化液を吐出する工程とが完全に区分けされている場合と比べて、三次元造形物92の造形に要する時間を短縮することができる。したがって、造型品質の向上した三次元造形物92を効率良く得ることができる。
【0058】
本実施形態の三次元造形装置100によれば、制御装置80は、一層の硬化層91を形成するごとに、上記第1制御と上記第2制御とを交互に実行するように構成されている。
これにより、前後方向Xにおける粉末材料90の敷きムラをバランスよく軽減することができる。したがって、前後方向Xの均質性がより良く向上した三次元造形物92を得ることができる。
【0059】
本実施形態の三次元造形装置100によれば、第1供給・回収槽30内に配置され、粉末材料90が載置される第1テーブル34と、制御装置80と電気的に接続され、第1テーブル34を昇降移動させる第1昇降装置35と、第2供給・回収槽40内に配置され、粉末材料90が載置される第2テーブル44と、制御装置80と電気的に接続され、第2テーブル44を昇降移動させる第2昇降装置45と、をさらに備える。造形槽20と、第1供給・回収槽30と、第2供給・回収槽40とは、それぞれ、ケーシング10の上面10Aから下方に凹むように設けられている。第1制御部81は、第1昇降装置35を制御して第1テーブル34を上昇させ、第1供給・回収槽30に貯留されている粉末材料90を第1供給・回収槽30の上端よりも上方に押し上げた後、前後方向移動機構72を制御して造形槽20およびローラ51、52のいずれか一方を前後方向Xの前方Fから後方Rrに移動させ、第1供給・回収槽30の上端よりも上方に押し上げられた粉末材料90を造形槽20の側に移動させ、上記所定の厚みで造形空間20Aに敷き詰めるように構成されており、第2制御部82は、第2昇降装置45を制御して第2テーブル44を上昇させ、第2供給・回収槽40に貯留されている粉末材料90を第2供給・回収槽40の上端よりも上方に押し上げた後、前後方向移動機構72を制御して造形槽20およびローラ51、52のいずれか一方を前後方向Xの後方Rrから前方Fに移動させ、第2供給・回収槽40の上端よりも上方に押し上げられた粉末材料90を造形槽20の側に移動させ、上記所定の厚みで造形空間20Aに敷き詰めるように構成されている。
【0060】
本実施形態の三次元造形装置100によれば、第1制御部81は、第2昇降装置45を制御して第2テーブル44を下降させ、第2貯留空間40Aを広げるように構成されており、第2制御部82は、第1昇降装置35を制御して第1テーブル34を下降させ、第1貯留空間30Aを広げるように構成されている。これにより、余剰の粉末材料90を回収するための空間を適切に確保することができる。
【0061】
本実施形態の三次元造形装置100によれば、敷詰部材は、第1制御部81と電気的に接続され、第1供給・回収槽30から供給された粉末材料90を造形空間20Aに敷き詰め、かつ造形空間20Aに収容しきれなかった粉末材料90を第2供給・回収槽40まで搬送するローラ51と、第2制御部82と電気的に接続され、第2供給・回収槽40から供給された粉末材料90を造形空間20Aに敷き詰め、かつ造形空間20Aに収容しきれなかった粉末材料90を第1供給・回収槽30まで搬送するローラ52と、を備える。これにより、支持部材70が両方向に移動するとき、すなわち、前方から後方へ向かう方向X1に移動するとき、および、支持部材70が後方から前方へ向かう方向X2に移動するときに、それぞれ、粉末材料90の敷き詰めと、ラインヘッド62からの硬化液の吐出と、を同時に行うことができる。したがって、生産性が略2倍となり、三次元造形物92の造形に要する時間を大幅に短縮することができる。これにより、造型品質の向上した三次元造形物92をより短時間で得ることができる。
【0062】
本実施形態の三次元造形装置100によれば、ローラ51、52とラインヘッド62とが搭載されている支持部材70をさらに備え、前後方向移動機構72は、支持部材70をケーシング10に対して前後方向Xに移動させるように構成されている。ローラ51、52とラインヘッド62とを同じ(例えば単一の)支持部材70に搭載することで、三次元造形装置100の構造を簡素化して、部品点数や組み付け工数を削減することができる。また、三次元造形装置100の製造コストを低減することができる。
【0063】
本実施形態の三次元造形装置100によれば、ローラ51、52は、制御装置80と電気的に接続され、第1方向と平面視において交差する第2方向に延びた回転軸を中心として回転可能なローラ51、52であり、第1制御部81は、ローラ51を第1回転方向R1に回転させるように構成されており、第2制御部82は、ローラ52を第1回転方向R1とは逆の第2回転方向R2に回転させるように構成されている。ローラ51、52を用いることで、平坦な表面を安定して形成することができる。また、進行方向に応じて回転方向を変えることにより、造形槽20の前後方向Xの両側から、造形槽20内に安定して粉末材料90を敷き詰めることができる。したがって、前後方向Xにおける粉末材料90の敷きムラを一層軽減することができる。
【0064】
本実施形態の三次元造形装置100によれば、左右方向Yから見た側面視において、造形槽20を正面として、第1供給・回収槽30が向かって左側にあり、第2供給・回収槽40が向かって右側にあるときに、ローラ51の第1回転方向R1は反時計回りの方向である。これにより、第1供給・回収槽30の粉末材料90がローラ51で下方から上方に向かって押し上げられ、第1貯留空間30Aに潜りこみにくくなる。そのため、粉末材料90を第1供給・回収槽30から造形槽20に安定して搬送することができる。また、本実施形態の三次元造形装置100によれば、左右方向Yから見た側面視において、造形槽20を正面として、第1供給・回収槽30が向かって左側にあり、第2供給・回収槽40が向かって右側にあるときに、ローラ52の第2回転方向R2は時計回りの方向である。これにより、第2供給・回収槽40の粉末材料90がローラ52で下方から上方に向かって押し上げられ、第2貯留空間40Aに潜りこみにくくなる。そのため、粉末材料90を第2供給・回収槽40から造形槽20に安定して搬送することができる。
【0065】
本実施形態の三次元造形装置100によれば、第1貯留空間30Aの容積と、第2貯留空間40Aの容積と、が同じである。これにより、造形槽20の前後方向Xの両側から、バランスよく粉末材料90を供給することができる。
【0066】
本実施形態の三次元造形装置100によれば、第1貯留空間30Aの容積と第2貯留空間40Aの容積との合計が、造形空間20Aの容積よりも大きい。これにより、大きな三次元造形物を製造する場合であっても、造形の途中で粉末材料90を補充する必要がなく、造形が完了するまで安定して粉末材料90を供給することができる。
【0067】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述した実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。請求の範囲に記載の技術には、上述した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上述した実施形態の一部を、他の変形態様に置き換えることも可能であり、上述した実施形態に他の変形態様を追加することも可能である。また、その技術的特徴が必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することも可能である。
【0068】
上述した実施形態では、敷詰部材が棒状の回転体(ローラ51、52)であったがこれに限定されない。敷詰部材は、回転不能であってもよい。敷詰部材は、例えば、ブレード、スキージ、ヘラ等の板状部材でもよい。
【0069】
上述した実施形態では、三次元造形装置100は、吐出ヘッドとしてラインヘッド62を備えていたが、これに限定されない。例えば、吐出ヘッドとして、前後方向Xに直線状に配置された複数のノズルを有し、左右方向Yに移動可能に構成されたいわゆるシャトル型の吐出ヘッドを備えていてもよい。また、吐出ヘッドとして、硬化液以外の吐出液、例えば、シアン、マゼンタ、イエローなどのカラー液を吐出するインクヘッドをさらに備えていてもよい。
【0070】
上述した実施形態では、ケーシング10に対して支持部材70を前後方向Xに相対的に移動させていたが、これに限定されない。例えば、支持部材70をケーシング10に固定し、支持部材70に対して造形槽20、第1供給・回収槽30および第2供給・回収槽40を前後方向Xに相対的に移動させてもよい。
【0071】
上述した実施形態では、ローラ51、52は、いずれもラインヘッド62と一体となって移動可能に構成されていたが、これに限定されない。ローラ51および/またはローラ52は、ラインヘッド62とは異なる支持部材に支持され、独立して移動可能に構成されていてもよい。また、ローラは必ずしも複数である必要はなく、1つであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
20 造形槽
30 第1供給・回収槽
30A 第1貯留空間
34 第1テーブル
40 第2供給・回収槽
40A 第2貯留空間
44 第2テーブル
51、52 ローラ(敷詰部材)
62 ラインヘッド(吐出ヘッド)
70 支持部材
72 移動機構
80 制御装置
90 粉末材料
91 硬化層
92 三次元造形物
100 三次元造形装置