(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】変圧器
(51)【国際特許分類】
H01F 27/40 20060101AFI20221018BHJP
H01F 41/00 20060101ALI20221018BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20221018BHJP
H02H 3/08 20060101ALI20221018BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01F27/40 120
H01F41/00 F
H01F30/10 K
H02H3/08 P
H02H7/00 H
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018226853
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-08-31
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518042280
【氏名又は名称】イートン インテリジェント パワー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Eaton Intelligent Power Limited
【住所又は居所原語表記】30 Pembroke Road, Dublin 4 D04 Y0C2, Ireland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヘラルド コルネリス スホーネンベルフ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハナ マリア エリサベト モルスキーフト
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-149222(JP,U)
【文献】実開昭60-099837(JP,U)
【文献】特開2006-025513(JP,A)
【文献】実公昭40-022049(JP,Y1)
【文献】実開昭54-180244(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/33-27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 41/00-41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
H02H 3/08- 3/253
H02H 7/00- 7/055
H02H 7/10- 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器(1;20)であって、
・電磁誘導によって相互に結合された一次巻線(2)および二次巻線(3)を有する本体と、
・第1のヒューズ(11)を介して前記二次巻線(3)に電気的に接続された測定装置(10)と、
を含む変圧器(1;20)において、
コイル(5)と、常開接点(7,8)を備える少なくとも1つの極(6)と、を有するリレー(4)が設けられており、
前記少なくとも1つの極(6)は、前記コイル(5)を励磁することによって投入され、
前記コイル(5)は、前記一次巻線(2)に直列に配置されており、
前記極(6)が投入されたときに前記第1のヒューズ(11)を短絡させるために、前記常開接点(7,8)を備える前記少なくとも1つの極(6)は、前記第1のヒューズ(11)を介して前記二次巻線(3)の間に配置されている
ことを特徴とする変圧器(1;20)。
【請求項2】
前記リレー(4)の前記コイル(5)に並列に配置された第2のヒューズ(21)をさらに含む、
請求項1記載の変圧器(20)。
【請求項3】
前記リレー(4)の前記コイル(5)は、一方の端部が接地するように電気的に配置されており、他方の端部が前記一次巻線(2)に電気的に配置されている、
請求項1または2記載の変圧器(1;20)。
【請求項4】
前記二次巻線(3)の一方の端部は、接地するように電気的に配置されており、
前記二次巻線(3)の他方の端部は、前記第1のヒューズ(11)に電気的に配置されている、
請求項3記載の変圧器(1;20)。
【請求項5】
前記第1のヒューズ(11)と前記リレー(4)の前記少なくとも1つの極(6)との間に直列に配置されたインピーダンス(22)、例えば抵抗器をさらに含む、
請求項1から4までのいずれか1項記載の変圧器(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変圧器であって、
・電磁誘導によって相互に結合された一次巻線および二次巻線を有する本体と、
・第1のヒューズを介して二次巻線に電気的に接続された測定装置と、
を含む、変圧器に関する。
【背景技術】
【0002】
変圧器は、典型的には、電気の輸送に使用される高電圧を家庭および工場で使用される電化製品に適した低電圧に、例えば230Vまたは400Vに低下または降圧するために使用されるか、あるいは、測定装置の取り扱いに適した、例えば110、110√3、または100V(変圧比は定格一次電圧に基づく)の二次出力電圧を有する測定変圧器として使用される。
【0003】
例えばエネルギの測定に必要とされるように、二次電圧が、特定の負荷範囲に対する一次電圧を正確に表すものでなければならない場合には、巻線を含む、二次回路のインピーダンスは、測定装置の負荷の範囲内で測定ができるだけ正確であることを可能にするためにできるだけ低く抑えられなければならない。
【0004】
典型的に、二次巻線には、高い過電流に対して低いインピーダンスのヒューズも設けられており(例えば短絡保護として)、この場合、ヒューズが反応しない過電流では、二次巻線が故障してしまうであろう。たとえ電流がさほど増加しなくても、変圧器の温度が増加し過ぎて変圧器の故障を引き起こす可能性もある。ヒューズのこの低いインピーダンスは、かなり高い遮断値を示唆しており、したがって、変圧器を損傷し得るがヒューズによって遮断することができないような、高過ぎる過電流の領域が存在することが多い。
【0005】
米国特許出願公開第2004080878号明細書(US 2004080878)は、二次回路における電流が閾値を超過したかどうかを判定する回路制御ロジックを一次巻線に接続している変圧器を開示している。超過している場合には、二次回路を保護するために一次巻線における電流が回路制御ロジックによって遮断される。
【0006】
しかしながら、一次巻線に高電圧で接続されている変圧器の場合には、制御ロジックを絶縁する必要があり、さもなければ制御ロジックが損傷することになる。さらに、制御ロジックは変圧器を複雑にし、製造コストを増加させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、上述した欠点を軽減するか、またはそれどころか除去することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題は、上位概念に記載の変圧器において、コイルと、常開接点を備える少なくとも1つの極とを有するリレーが設けられており、少なくとも1つの極は、コイルを励磁することによって投入され、コイルは、一次巻線に直列に配置されており、極が投入されたときに第1のヒューズを短絡させるために、常開接点を備える少なくとも1つの極は、第1のヒューズを介して二次巻線の間に配置されていることを特徴とする、変圧器によって解決される。
【0009】
本発明の変圧器によれば、一次巻線が、リレーのコイルのための電流源を提供する。一次巻線と、リレーのコイルとを正しく設計することによって、リレーコイルのインピーダンスを、一次巻線のインピーダンスと比較して無視することができるようになり、これによって、リレーコイルの追加は、電圧源にとって顕著な影響を有さなくなる。
【0010】
二次巻線における電流が増加すると、一次巻線における電流も増加する。リレーを設計し、リレーのコイルを同調させることによって、第1のヒューズを溶断し得る電流よりも低い電流で、リレーが少なくとも1つの極を投入するようにさせることが可能である。
【0011】
少なくとも1つの極が投入されると、極の接点が短絡回路を形成し、これによって、二次巻線、測定装置、または二次巻線に接続された負荷をさらに妨げることなく第1のヒューズが溶断する。
【0012】
第1のヒューズが溶断するとすぐに、二次巻線における電流、ひいては一次巻線における電流がゼロになり(一次巻線の残りの磁化電流は無視することができる)、これによってリレーは、自身の休止位置に戻るように移動する。この場合、接点は、常開である。
【0013】
本発明による変圧器の好ましい実施形態は、変圧におけるさらに高い精度を目指すために、リレーのコイルに並列に配置された第2のヒューズをさらに含む。
【0014】
変圧器システムの精度に影響を及ぼし得る、リレーコイルのインピーダンスの両端において起こり得る如何なる電圧降下をも低減するために、コイルに並列に第2のヒューズを配置することができる。結果として、ヒューズを介した並列経路は、コイルの両端における電圧降下を非常に低い値まで減少させる。一次(HV)電流が(二次側の過負荷に起因して)特定の値を超過すると、この第2のヒューズが溶断し、コイルにHV一次電流が流れるようにし、リレーの接点を閉成させる。二次巻線における電流に基づいて、第2のヒューズが溶断した後にリレーのコイルが励磁され、その結果、第1のヒューズが溶断し、したがって、変圧器を再び使用する際には、第1のヒューズと第2のヒューズの両方を交換する必要がある。
【0015】
本発明による変圧器のさらなる実施形態では、リレーのコイルは、一方の端部が接地するように電気的に配置されており、かつ他方の端部が一次巻線に電気的に配置されている。
【0016】
好ましくは、二次巻線の一方の端部は、接地するように電気的に配置されており、
二次巻線の他方の端部は、第1のヒューズに電気的に配置されている。
【0017】
本発明による変圧器のさらに好ましい実施形態は、第1のヒューズとリレーの少なくとも1つの極との間に直列に配置されたインピーダンス(例えば抵抗器)をさらに含む。
【0018】
極が投入され、接点が閉成されて第1のヒューズを短絡させると、短絡回路における電流が非常に高くなり、これによってリレーの接点が損傷する。短絡経路に直列にインピーダンス(抵抗器)を設けることによって、短絡電流が制限されるが、それでもなお、この短絡電流は、第1のヒューズを所望の時間内で溶断させるために十分に高いものである。
【0019】
本発明の上記の特徴および他の特徴を、添付の図面と併せて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による変圧器の第1の実施形態の電気回路図である。
【
図2】本発明による変圧器の第2の実施形態の電気回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1には、本発明による変圧器の第1の実施形態1が示されている。変圧器1は、一次巻線2および二次巻線3を有し、これらは電磁誘導によって相互に結合されている。
【0022】
変圧器1にはさらにリレー4が設けられており、このリレー4は、コイル5と、接点7および8を有する極6と、を含む。回路が作動されるまで開成されており、リレー4が作動されると接点7と8との間に電気的な接続が形成されることによって回路が閉成されるという意味で、接点7および8は常開(ノーマルオープン)である。コイル5は、一次巻線2に直列に配置されており、この組み合わせに高電圧源9が供給されている。
【0023】
測定装置10は、二次回路における電圧を監視するために、ヒューズ11を介して二次巻線3に電気的に接続されている。
【0024】
接点8は、ヒューズ11と測定装置10との間に電気的に接続されており、したがって、接点7および8が閉成されるとヒューズ11を介して短絡回路が形成される。
【0025】
例えば負荷12が、短絡、装置の追加、または高オーム抵抗の結果として二次巻線から過多の電流を引き込んだ場合には、一次巻線における電流が増加し、リレー4のコイル5の励磁を引き起こす。コイル5が励磁されると、極6が投入されて接点7および8が閉成され、これによって二次回路におけるヒューズ11が溶断し、二次巻線3に対する潜在的な損傷が防止される。
【0026】
例えばリレー4は、低電圧リレー(例えば12,24,または48V)であり、このような低電圧リレーは、極6を投入して接点7および8を閉成するために約40~100mAの電流を必要とするであろう。このような低電圧リレー4を用いた場合には、変圧器1の一次巻線2をリレー4のコイル5のための電流源と見なすことができる。コイル5のインピーダンスは、一次巻線2のインピーダンスと比較して無視することができるだろう。
【0027】
精度に対して過度な影響を創出しないようにするために、リレー4の定格電圧をできるだけ低くするべきである。例えば、測定装置10は、ほんの数VAの負荷しかもたらさないので、変圧器1の57Vの公称二次電圧では、この結果、約40mAの二次電流しか生じない。
【0028】
一次回路において結果的に生じる電流は、中高電圧電源9の場合には、典型的に100分の1から200分の1になる。測定装置10および負荷12による総負荷が15VAであると仮定すると、一次電流は10mA未満となる。二次回路における過負荷が4A(230VA)と示されている場合には、一次回路の電流は、約20~40mAになり、この約20~40mAにおいてリレー4が励磁されるべきであり、リレー4は、自身の極6を投入して自身の接点7および8を閉成すべきである。
【0029】
図2は、本発明による変圧器の第2の実施形態20を示す。この第2の実施形態は、第1の実施形態1に類似しており、同様の部分は、同じ参照符号で示されている。
【0030】
変圧器20の精度を阻害しないようにするために、(例えば20mAの)第2のヒューズ21がリレー4のコイル5に並列に配置されている。これによって、コイル5のインピーダンスの影響が低減されるか、またはそれどころか除去され、これによって、リレー4による変圧器20の精度に対する阻害が低減されるか、またはなくなる。
【0031】
もちろん、第2のヒューズ21の代わりに、電磁適合性(EMC)を増加させるためのRCスナバ、または単に、感度を低下させるべき場合に連続的な迂回経路を設けるための並列の抵抗器、または過電圧等に反応するためのサージアレスタ(ZnOまたはスパークチューブ)のような、コイル5に並列な他の装置を設けることも可能であろう。
【0032】
変圧器20はさらに、第1のヒューズ11とリレー4の極6との間に直列に配置された抵抗器22を有する。この抵抗器22は、接点7および8の閉成時に、接点7または8を損傷するほどに短絡電流が高くなり過ぎないことを保証する。
【0033】
抵抗器22を用いない場合であって、かつ公称二次電圧が57Vである場合には、ヒューズ11が溶断する前に、短絡回路における電流が75Aにも達することがある。
【0034】
例えば、抵抗器22によって短絡電流を約20Aに制限した場合、(典型的には規定された6Aの公称連続電流の)ヒューズ11は、依然として約0.4秒で溶断する。これは、概して十分に速いものであり、その一方で、リレー4の接点7および8は今や保護されている。