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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】直流電源装置および電力制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/00 20060101AFI20221018BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20221018BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H02M3/00 H
H02M3/155 H
H02M3/28 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018229331
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020092543
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000516
【氏名又は名称】曙ブレーキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 春仁
(72)【発明者】
【氏名】田部 友睦
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-050264(JP,A)
【文献】特開2010-279118(JP,A)
【文献】特開2014-039383(JP,A)
【文献】特開平01-259753(JP,A)
【文献】特開2010-161862(JP,A)
【文献】特開2012-095449(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0059632(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/00-3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力供給源から供給される電圧の不確定な入力電力に基づいて、スイッチング動作を行い、少なくとも前記入力電力に比べて電圧の変化を抑制した出力電力を生成する直流電源装置であって、
前記スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比を調整する動作と、前記スイッチング動作の周波数を調整する動作とを同時に行う機能を有する、パルス変調部、
を備え
前記パルス変調部は、前記スイッチング動作の1周期区間中のオン時間とオフ時間の比を調整するPWM制御部と、前記スイッチング動作の1周期区間の長さを調整するPFM制御部と、前記PWM制御部のオン時間中における少なくとも一部のタイミングで、前記スイッチング動作をオフにする間引き制御部と、を有し、
前記間引き制御部は、前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧検出値の変化を前記スイッチング動作に反映する、
ことを特徴とする直流電源装置。
【請求項2】
前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧検出値を、所定の非線形特性に従って変換した結果を、前記スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比、および前記スイッチング動作の周波数の少なくとも一方に反映する非線形変換部を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の直流電源装置。
【請求項3】
前記出力電力の電圧検出値を所定の上限値および下限値と比較した結果を、前記パルス変調部の動作に反映するミュート制御部を有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直流電源装置。
【請求項4】
電力供給源から供給される電圧の不確定な入力電力に基づいて、スイッチング動作を行い、少なくとも前記入力電力に比べて電圧の変化を抑制した出力電力を生成するための電力制御方法であって、
前記スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比を調整する第1動作と、前記スイッチング動作の周波数を調整する第2動作とを同時に実施し、
前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧変化を、前記第1動作および前記第2動作の少なくとも一方に反映
前記スイッチング動作の1周期区間中のオン時間とオフ時間の比を表す第1制御量を連続的に又は逐次決定し、
前記スイッチング動作の1周期区間の長さを表す第2制御量を連続的に又は逐次決定し、
前記第1制御量に応じたオン時間中における少なくとも一部のタイミングで、前記スイッチング動作をオフにするための第3制御量を連続的に又は逐次決定し、
前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧検出値の変化に対して、前記第1制御量、前記第2制御量、および前記第3制御量を同時に前記スイッチング動作に反映する、
ことを特徴とする電力制御方法。
【請求項5】
前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧検出値を、所定の非線形特性に従って変換した結果を、前記スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比、および前記スイッチング動作の周波数の少なくとも一方に反映する、
ことを特徴とする請求項に記載の電力制御方法。
【請求項6】
前記出力電力の電圧検出値を所定の上限値および下限値とそれぞれ比較し、比較した結果を前記スイッチング動作に反映する、
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源装置および電力制御方法に関し、特に出力電圧を安定化するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、貨物列車を編成する一般的な車両は、架線や電源車など車両外部から電源電力の供給を受けることができない。しかし、このような車両においても、車両の状態などを検知するための電子機器を搭載するニーズがあり、この電子機器等を動作させるために必要な電源電力を調達する必要がある。そこで、車両の車軸に車軸発電機を搭載することにより、この車軸発電機の出力から必要な電源電力を確保することが可能である。
【0003】
しかし、このような発電機は車両の走行速度、すなわち車軸の回転速度に応じて発電状態が広い範囲で変動する。つまり、数[km/h]程度の低速走行状態では十分に高い電圧を確保することが難しく、逆に数十[km/h]程度の通常走行状態では、100[V]以上の高すぎる電圧が出力される。また、低速状態でも十分に高い電圧が得られるように発電機を設計すると、通常走行状態で出力される電圧が更に高すぎる状態になってしまう。
【0004】
また、貨物列車の場合に限らず、例えば風力発電機の場合にも、風速の変動に伴って発電状態が大きく変動し、出力電圧が変動する。したがって、上記のような発電機を利用する場合には、出力電圧を安定化する機能を備えた直流電源装置を発電機の出力に接続して使用することが想定される。
【0005】
また、例えば電気自動車(EV)において、200~400[V]程度の高電圧を出力する車載電源から、車載電子機器が必要とする低電圧の電源電力を確保するために、直流電源装置が用いられる可能性もある。
【0006】
上記のような直流電源装置の種類については、必要な出力電圧を生成する構造上の違いにより、シリーズレギュレータと、スイッチングレギュレータの2種類に分けられる。シリーズレギュレータは、レギュレータ内部の電流経路に直列に接続したトランジスタなどを用いて必要な電圧降下を発生させ、入力電圧に比べて電圧の低い安定した出力電圧を生成する。
【0007】
また、スイッチングレギュレータはトランジスタなどのスイッチング素子のオンオフを周期的に繰り返し、出力する電力の平均値を調整することにより、目的の出力電圧を生成することができる。また、スイッチング方式の違いにより、パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)と、パルス周波数変調(PFM:Pulse Frequency Modulation)とがある。
【0008】
例えば、特許文献1のスイッチング電源回路は、軽負荷のときのPFM制御から重負荷のときのPWM制御に移行する際のリップル電圧を低減して円滑な制御モードの移行を実現するための技術を示している。また、特許文献2のスイッチング電源制御回路は、回路規模を増大させることなく、比較的簡便な操作で複数の制御方式を切り替えるための技術を示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2008-92712号公報
【文献】特開2015-130722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
例えば、貨物列車上で車軸発電機の出力から電力を取り出して、一般的な電子機器等の負荷が必要とする5~12[V]程度の直流電力を調達しようとする場合には、直流電源装置の入出力間の電位差が、数[V]から100[V]以上の広い範囲で変動することになる。
【0011】
このような環境で直流電源装置を使用する場合には、シリーズレギュレータの場合には、降圧用のトランジスタにおける電力損失が非常に大きくなり、無駄な電力消費が増えるとともに、損失に比例して発熱量が増大するという問題が生じる。
【0012】
また、スイッチングレギュレータの場合には、例えば特許文献1および特許文献2の技術を採用することにより、パルス幅変調とパルス周波数変調との2種類の制御を使い分けることができる。パルス幅変調の場合は、パルスのオン時間とオフ時間とが一定の周期で繰り返すので、発生するスイッチングノイズの除去が容易である反面、軽負荷時でもスイッチング回数が多いのでスイッチングに伴う損失の低減が難しい。パルス周波数変調の場合には、逆に軽負荷時はスイッチング回数が減るため損失の低減が容易になるが、発生するスイッチングノイズの周波数も変動するためノイズの除去が難しくなる。また、ノイズ除去などの目的でインダクタ、すなわち電気コイルを利用する場合には、無効電力が発生するため制御が困難になる。
【0013】
そこで、特許文献1および特許文献2のようにパルス幅変調とパルス周波数変調との2種類の制御を使い分けることにより、重負荷時と軽負荷時のいずれの状態においても損失を減らすことが容易になる。しかしながら、PWM動作モードとPFM動作モードの切替を行う際に、出力電圧のリップルが増大したり、モード遷移に時間がかかり電圧の安定性が低下する場合がある。更に、PWM動作モードとPFM動作モードのどちらを選択した場合であっても、制御に限界があるため緻密な電力制御ができない。例えば、PWM動作モードにおいて一定の制御周期の中で、スイッチング素子がオンする時間幅を調整することはできるが、制御周期が一定であるため、オン区間のタイミングをずらしたり、1つのオン区間の途中にそれとは別のオフ区間を割り当てることはできないので、微妙な調整ができない。
【0014】
例えば、貨物列車上で車軸発電機の出力から電力を取り出し、直流電源装置の内部でスイッチングして負荷へ電力を供給する場合、車両の低速域では直流電源装置がなるべく多くのエネルギーをそのまま出力に伝達できるように制御できることが望ましい。また、車両が定常の速度で走行し、車軸発電機から非常に高い電圧が出力されている時には、直流電源装置は入力されたエネルギーのごく一部分だけを出力に伝達することが望ましい。また、車軸発電機が出力する電圧の変動や、負荷が消費するエネルギーの変化に対応して、直流電源装置は入力から出力に伝達するエネルギーの量を適切に調整し、負荷に供給される電圧のリップルを低減できることが望ましい。また、軽負荷時のような状況では、スイッチングの回数を減らして直流電源装置内部の損失を減らすことが望ましい。
【0015】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、入力電圧の変動や負荷の変動が非常に大きいような環境であっても、変動に適切に追従して損失の増大を抑制すると共に、出力電圧を安定した状態に維持することが容易な直流電源装置および電力制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述した目的を達成するために、本発明に係る直流電源装置および電力制御方法は、下記(1)~()を特徴としている。
(1) 所定の電力供給源から供給される電圧の不確定な入力電力に基づいて、スイッチング動作を行い、少なくとも前記入力電力に比べて電圧の変化を抑制した出力電力を生成する直流電源装置であって、
前記スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比を調整する動作と、前記スイッチング動作の周波数を調整する動作とを同時に行う機能を有する、パルス変調部、
を備え
前記パルス変調部は、前記スイッチング動作の1周期区間中のオン時間とオフ時間の比を調整するPWM制御部と、前記スイッチング動作の1周期区間の長さを調整するPFM制御部と、前記PWM制御部のオン時間中における少なくとも一部のタイミングで、前記スイッチング動作をオフにする間引き制御部と、を有し、
前記間引き制御部は、前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧検出値の変化を前記スイッチング動作に反映する、
ことを特徴とする直流電源装置。
【0017】
上記(1)の構成の直流電源装置によれば、動作モードの切替が不要なので、動作モードの切替に伴って出力電圧が不安定になるのを避けることができる。すなわち、広い範囲に亘る入力電圧の変動や負荷の変動に対して、スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比の調整と、周波数の調整とをそれぞれ連続的かつ継続的に行うことができるので、損失の大幅な増大を招くことなく出力電圧を安定に維持できる。しかも、スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比の調整と、周波数の調整とを組み合わせた制御を同時に実施するので、調整可能な範囲を広げたり緻密な電力制御を行うことが可能である。また、複数の制御の組み合わせにより、制御周期が固定化されるのを避けることができる。すなわち、スイッチングにより発生するノイズの周波数スペクトルが広い範囲に拡散されるため、特定周波数のノイズを除去するためにインダクタなどを接続する必要もなくなる。
更に、上記(1)の構成の直流電源装置によれば、例えば損失を低減するためにPWM制御周期を長くして、単位時間あたりのスイッチング回数を減らす場合でも、間引き制御により必要に応じてスイッチングの時間幅を間引いたり、スイッチングの周期を調整することができる。したがって、スイッチング損失の増大を抑制しつつ、入力電圧や負荷の変動に対して、精密な電力制御が可能になる。
【0018】
(2) 前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧検出値を、所定の非線形特性に従って変換した結果を、前記スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比、および前記スイッチング動作の周波数の少なくとも一方に反映する非線形変換部を有する、
ことを特徴とする上記(1)に記載の直流電源装置。
【0019】
上記(2)の構成の直流電源装置によれば、入力電圧の変動や出力電圧の変動に対して、スイッチングに伴う損失の増大を抑制し、かつ出力電力を安定化するために必要な制御を容易に行うことが可能になる。例えば、貨物列車が低速走行を行っている状態で直流電源装置の入出力間の電位差を減らして負荷に与える電圧の上昇を早めることが望まれる領域や、高すぎる入力電圧に対して直流電源装置内部のスイッチング損失を減らしたい領域や、負荷の急激な変化に対して直流電源装置の応答速度を早くすることが望まれる領域などのそれぞれに対して、適切な制御を容易に行うことが可能になる。
【0022】
) 前記出力電力の電圧検出値を所定の上限値および下限値と比較した結果を、前記パルス変調部の動作に反映するミュート制御部を有する、
ことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の直流電源装置。
【0023】
上記()の構成の直流電源装置によれば、例えば出力電圧が安定している状態とそれ以外の状態とを区別してパルス変調の制御を実施できる。これにより、出力電圧が既に安定しているときに、余分な制御が発生するのを抑制し、動作を安定させることが可能である。
【0024】
) 所定の電力供給源から供給される電圧の不確定な入力電力に基づいて、スイッチング動作を行い、少なくとも前記入力電力に比べて電圧の変化を抑制した出力電力を生成するための電力制御方法であって、
前記スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比を調整する第1動作と、前記スイッチング動作の周波数を調整する第2動作とを同時に実施し、
前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧変化を、前記第1動作および前記第2動作の少なくとも一方に反映
前記スイッチング動作の1周期区間中のオン時間とオフ時間の比を表す第1制御量を連続的に又は逐次決定し、
前記スイッチング動作の1周期区間の長さを表す第2制御量を連続的に又は逐次決定し、
前記第1制御量に応じたオン時間中における少なくとも一部のタイミングで、前記スイッチング動作をオフにするための第3制御量を連続的に又は逐次決定し、
前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧検出値の変化に対して、前記第1制御量、前記第2制御量、および前記第3制御量を同時に前記スイッチング動作に反映する、
ことを特徴とする電力制御方法。
【0025】
上記()の構成の電力制御方法によれば、動作モードの切替が不要なので、動作モードの切替に伴って出力電圧が不安定になるのを避けることができる。すなわち、広い範囲に亘る入力電圧の変動や負荷の変動に対して、スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比の調整と、周波数の調整とをそれぞれ連続的かつ継続的に行うことができるので、損失の大幅な増大を招くことなく出力電圧を安定に維持できる。しかも、スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比の調整と、周波数の調整とを組み合わせた制御を同時に実施するので、調整可能な範囲を広げたり緻密な電力制御を行うことが可能である。また、複数の制御の組み合わせにより、制御周期が固定化されるのを避けることができる。すなわち、スイッチングにより発生するノイズの周波数スペクトルが広い範囲に拡散されるため、特定周波数のノイズを除去するためにインダクタなどを接続する必要もなくなる。
更に、上記(4)の構成の電力制御方法によれば、例えば損失を低減するためにPWM制御周期を長くして、単位時間あたりのスイッチング回数を減らす場合でも、間引き制御により必要に応じてスイッチングの時間幅を間引いたり、スイッチングの周期を調整することができる。したがって、スイッチング損失の増大を抑制しつつ、入力電圧や負荷の変動に対して、精密な電力制御が可能になる。
【0026】
) 前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧検出値を、所定の非線形特性に従って変換した結果を、前記スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比、および前記スイッチング動作の周波数の少なくとも一方に反映する、
ことを特徴とする上記()に記載の電力制御方法。
【0027】
上記()の構成の電力制御方法によれば、入力電圧の変動や出力電圧の変動に対して、スイッチングに伴う損失の増大を抑制し、かつ出力電力を安定化するために必要な制御を容易に行うことが可能になる。例えば、貨物列車が低速走行を行っている状態で直流電源装置の入出力間の電位差を減らして負荷に与える電圧の上昇を早めることが望まれる領域や、高すぎる入力電圧に対して直流電源装置内部のスイッチング損失を減らしたい領域や、負荷の急激な変化に対して直流電源装置の応答速度を早くすることが望まれる領域などのそれぞれに対して、適切な制御を容易に行うことが可能になる。
【0030】
) 前記出力電力の電圧検出値を所定の上限値および下限値とそれぞれ比較し、比較した結果を前記スイッチング動作に反映する、
ことを特徴とする上記(4)または(5)に記載の電力制御方法。
【0031】
上記()の構成の電力制御方法によれば、例えば出力電圧が安定している状態とそれ以外の状態とを区別してパルス変調の制御を実施できる。これにより、出力電圧が既に安定しているときに、余分な制御が発生するのを抑制し、動作を安定させることが可能である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の直流電源装置および電力制御方法によれば、入力電圧の変動や負荷の変動が非常に大きいような環境であっても、変動に適切に追従して損失の増大を抑制すると共に、出力電圧を安定した状態に維持することが容易になる。特に、動作モードの切替が不要なので、動作モードの切替に伴って出力電圧が不安定になったり、電圧のリップルが増大するのを避けることができる。
【0033】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、本発明の実施形態における直流電源装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、非線形信号変換部に関する入出力特性の例を示すグラフである。
図3図3(a)および図3(b)は、互いに入力電圧が異なる状態における3つの信号の例を示す波形図である。
図4図4(a)および図4(b)は、入力電圧が同じ状態における4つの信号の例を示す波形図である。
図5図5(a)および図5(b)は、入力電圧が同じで負荷が互いに異なる状態における3つの信号の例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0036】
<直流電源装置の構成例>
本発明の実施形態における直流電源装置の構成例を図1に示す。
【0037】
図1に示した電源装置10は、発電機20の出力から電源として入力電力Pinを取り込み、これを安定化処理し、出力電力Poutとして負荷21に供給するために利用される。具体例としては、発電機20が貨物列車などに搭載される車軸発電機である場合や、風力発電機である場合や、電気自動車などに搭載される高圧電源である場合などが想定される。負荷21としては、この車両に搭載されている電子機器や、各乗客が持ち込む携帯電子機器などが想定される。
【0038】
発電機20が車軸発電機である場合には、入力電力Pinの電圧は、車両の走行速度の変動に伴って、0~100[V]以上の広い範囲で変化することになる。また、例えば車両が数[km/h]程度の低速で走行を開始した直後の環境においても、負荷21に必要な電力が供給されることが望まれる。また、電源装置10は、入力電力Pinの電圧が100[V]のような環境においても、過大な電圧が負荷21に出力されないように制御する必要がある。
【0039】
したがって、例えば負荷21に供給すべき出力電力Poutの電圧が12[V]である場合には、電源装置10における入力電力Pinと出力電力Poutの電位差が0~100[V]程度の広い範囲で変化することが想定される。電源装置10は、基本的にスイッチングレギュレータを構成しているので、入出力間の電位差が大きくなっても、内部で発生する損失および発熱を減らすことが可能である。但し、一般的にはスイッチングの周期が比較的短い場合には精密な電力制御は難しく、スイッチングの周期が短くなるとスイッチングに伴う損失が急激に増大する傾向がある。
【0040】
また、負荷21のオンオフなどに伴って出力電力Poutの電流が変動すると、出力電力Poutの電圧が変化するので、これを抑制すると共に十分な電流を負荷側に供給できるように電源装置10が制御を行う必要がある。
【0041】
また、安定した外部電源などを利用できる環境でない限り、電源装置10内部の各回路が動作するために必要な電源電力も、入力電力Pinから取り込んで生成する必要がある。つまり、車両が動き始めた直後は、電源装置10自身も動作が停止した状態になっているので、入力電力Pinの電圧が立ち上がった直後に、電源装置10がすばやくそれ自身の動作を起動して、負荷21に十分な電圧の出力電力Poutを供給できることが望まれる。
【0042】
図1に示した電源装置10は、電力入力部11、非線形信号変換部12、電圧制御部13、パルス制御部14、電力スイッチ回路15、整流回路16、ミュート制御部17、電力出力回路18、および起動回路19を備えている。
【0043】
なお、非線形信号変換部12、電圧制御部13、パルス制御部14、およびミュート制御部17の各機能は、本実施形態では演算増幅器などのアナログ電子回路を用いて実現している。勿論、これらの機能を一般的な論理回路やコンピュータの処理で置き換えることも可能であるが、電源電圧の立ち上がり時の応答速度の点で、アナログ電子回路を利用する方が有利である。
【0044】
電力入力部11は、発電機20から出力される入力電力Pinを取り込んで直流入力電力P0を生成するための回路である。例えば、入力電力Pinが交流電力の場合には、電力入力部11内部の整流回路が交流を整流して直流電圧に変換する。また、複数の電力供給源が存在する場合には、電力入力部11は複数のいずれかの電力供給源から選択的に入力電力Pinを取り込む。
【0045】
非線形信号変換部12は、所望の非線形変換特性(図2参照)に合わせて、信号SG1の電圧を信号SG2の電圧に変換する。これにより、直流入力電力P0の変動範囲、入力電力Pin-出力電力Pout間の電位差の変動範囲、負荷21の変動範囲などを考慮して、適切な制御特性を実現することが容易になる。また、制御系の出力側からフィードバックされる信号SG6を非線形信号変換部12に入力し、この信号SG6の電圧を信号SG2に反映しても良い。
【0046】
電圧制御部13は、パルス制御部14を制御するために必要な信号SG3の電圧を、2つの信号SG2、SG6に基づいて生成する。この信号SG3の電圧は、パルス制御部14がその内部でパルス幅変調などによりパルスを生成する際に使用する閾値である。
【0047】
パルス制御部14は、PWM制御部14a、PFM制御部14b、間引き制御部14c、および出力パルス発生部14dを備えている。なお、間引き制御部14cの機能をPFM制御部14bが代行する場合は、間引き制御部14cを省略することも可能である。
【0048】
PWM制御部14aは、制御周期毎に、オン状態の時間幅とオフ状態の時間幅との比率を自動調整可能なパルス幅変調(PWM)のための制御を実施する。PWM制御部14aにおける制御周期は予め固定される場合もあるし、自動調整される場合もある。実際には、パルス制御部14内部の発振器(図示せず)が生成した三角波信号と、信号SG3の電圧に相当する閾値とをPWM制御部14a内のアナログコンパレータで比較することにより、信号SG31のパルスが生成される。
【0049】
PFM制御部14bは、信号SG3の電圧に応じてパルス周波数変調(PFM)されたパルス信号を信号SG32として生成するためのアナログ回路である。なお、PFM制御部14bの出力を、PWM制御部14aの制御周期に反映して、この制御周期を可変にしてもよい。
【0050】
間引き制御部14cは、PWM制御部14aが生成するPWMパルスがオンになる区間で当該パルスの実際のオン時間が短縮されるように不定期で時間の間引きを行ったり、このPWMパルスがオフになる区間に必要に応じて別のパルスを挿入するための信号SG33を生成する。
【0051】
出力パルス発生部14dは、PWM制御部14a、PFM制御部14b、および間引き制御部14cがそれぞれ出力する信号SG31、SG32、およびSG33の加算、減算、論理演算などの処理を行ってこれらを合成した結果を信号SG4として出力する。したがって、信号SG4に現れるパルス信号は、PWM制御により生成されたパルスと、PFM制御により生成されるパルスと、間引き制御出力とを合成したものとなる。
【0052】
なお、PWM制御の制御周期に相当する周波数と、PFM制御の周波数とが異なる場合には、信号SG32のパルスの影響が、信号SG31のパルスオン区間やパルスオフ区間のタイミングで不定期に現れる。つまり、PWM制御部14aおよびPFM制御部14bが同時に動作している場合には、間引き制御部14cと同様の動作をPFM制御部14bが行うので、間引き制御部14cは不要になる。
【0053】
いずれにしても、出力パルス発生部14dが出力する信号SG4の中には、PWM制御部14aが生成したパルス幅変調パルスの他に、PFM制御部14b又は間引き制御部14cが生成した別のパルスが不定期で現れる。また、不定期で現れるパルスの周波数は、信号SG3の電圧に応じてPFM制御部14bが自動的に調整する。
【0054】
電力スイッチ回路15は、通電のオンオフを制御可能な大電力用の半導体スイッチングデバイスを含み、パルス制御部14が出力する信号SG4のパルスがオンの区間でのみ、導通状態になって直流入力電力P0を負荷21側へ供給可能な状態になる。つまり、信号SG4におけるパルスのオンオフ時間の比率に応じて、負荷21側へ供給される電力の平均値が調整される。
【0055】
電力スイッチ回路15の主要部を構成する半導体スイッチングデバイスの具体例としては、NチャネルのMOSFET、GaNFET、SiCFETを採用することが想定される。これにより、スイッチングの効率を上げることができる。
【0056】
整流回路16は、電力スイッチ回路15の出力側の電源ラインに流れる電流の方向を制限する機能を有する。
ミュート制御部17は、整流回路16の出力側に現れる信号SG5を制御系の入力側にフィードバックし、全体として安定な動作を実現するように制御ループを形成する。本実施形態では、ミュート制御部17の出力する信号SG6が、パルス制御部14がパルス発生のために使用する閾値のミュートを状況に応じて実施する。
【0057】
ミュート制御部17は、電圧上限検知部17a、電圧下限検知部17b、および演算部17cを備えている。電圧上限検知部17aは、予想される信号SG5の電圧変化範囲の中に設けた窓の上限電圧と、信号SG5の電圧とをアナログコンパレータを用いて比較し、上限電圧を超えたか否かを表す信号を出力する。電圧下限検知部17bは、上記窓の下限電圧と、信号SG5の電圧とをアナログコンパレータを用いて比較し、下限電圧以上か否かを表す信号を出力する。演算部17cは、電圧上限検知部17aの出力信号と、電圧下限検知部17bの出力信号との演算を実施して信号SG6を生成する。
このミュート制御部17は、上記窓の範囲内でのみ動作を制限するように、電源装置10の制御系に信号SG6でフィードバックをかけることができる。
【0058】
電力出力回路18は、負荷21に供給する出力電力Poutをより安定化するための制御を実施する。電力出力回路18は、例えば、過大な電圧が出力されるのを制限するための回路や、過大な電流が出力に流れるのを制限するための回路を有している。
【0059】
起動回路19は、例えば直流入力電力P0の電圧が0[V]から立ち上がる際のようにパルス制御部14がまだ動作していないリニア領域で、電力スイッチ回路15の通電動作を起動するための信号を生成する。
【0060】
<非線形変換特性の例>
非線形信号変換部12に関する入出力特性の例を図2に示す。図2において、横軸は入力電圧[V]、すなわち信号SG1の電圧に相当し、縦軸は出力電圧[V]、すなわち信号SG2の電圧に相当する。
【0061】
図2に示すように、非線形信号変換部12においては入力電圧と出力電圧との関係が非線形になっている。例えば、入力電圧が0~35[V]程度の範囲内では出力電圧は11[V]程度でほぼ変化がない。また、入力電圧が45~90[V]程度の範囲内では、入力電圧の増大に反比例して出力電圧が減少する。また、入力電圧が95[V]以上の範囲では入力電圧の変化に対する出力電圧の変化の傾きが緩やかになっている。
【0062】
<特徴的な動作の説明>
図1に示した電源装置10においては、パルス制御部14内に備わっているPWM制御部14aおよびPFM制御部14bが同時に動作して、その結果が信号SG4のパルスに反映される。つまり、PWMと、PFMとの2種類、又はそれに間引き制御部14cを加えた3種類の制御を同時に行った結果として生成されるパルスに従い、電力スイッチ回路15のスイッチング動作が実施される。
【0063】
PWMとPFMとを同時に実施することにより、PWMの制御周期が一定の場合であっても、PWMで生成した周期的な複数パルスの間に別のパルスがランダムに発生したり、PWMで生成したパルスのオン区間の時間幅をランダムに間引きするようなパルスが信号SG4に現れる。
【0064】
したがって、PWMの制御周期を短くして電力スイッチ回路15における定常時のスイッチング頻度を上げなくても、必要に応じてPFMのパルスを挿入したり、PWMパルスの時間幅の間引きを行って精密な電力制御を実現できる。PWMの制御周期を長くすることにより、スイッチングに伴って発生する損失を低減できる。また、スイッチングに使用するパルスの発生周期をランダムに変化させることにより、不要輻射として発生するノイズの周波数スペクトルにおけるピーク位置を広い範囲で拡散できるので、ノイズ対策が容易になる。
【0065】
図1に示した電源装置10においては、直流入力電力P0の電圧を非線形信号変換部12を用いてノンリニアな特性に従って制御するように、変換してパルス制御部14に入力している。つまり、信号SG1の入力電圧と、パルス制御部14に閾値電圧として入力される信号SG3との関係が非線形になる。
【0066】
これにより、所望の制御特性で動作するように電源装置10を設計することが容易になる。例えば、直流入力電力P0の電圧が35[V]以下の領域では、直流入力電力P0-出力電力Pout間の電位差を0[V]に近づけることで、出力電力Poutの立ち上がりを早めることができる。したがって、この領域では非線形信号変換部12が出力する信号SG2の電圧を11[V]程度にすることで、パルス制御部14の動作を止め、電力スイッチ回路15がほぼ全ての時間帯にわたりオン(導通)状態になるように制御する。
【0067】
また、直流入力電力P0の電圧が40~90[V]程度の範囲内の領域では、直流入力電力P0の電圧上昇に伴って、出力電力Poutの電圧が上がりすぎるのを抑制するために、余剰分のエネルギーを電力スイッチ回路15のスイッチングにより削減する。そのために、適切な電圧を信号SG2として出力し、パルス制御部14に閾値電圧として入力される信号SG3の電圧を調整する。これにより、PWMおよびPFM制御により生成されたパルスが信号SG4として電力スイッチ回路15の制御入力に印加される。
【0068】
また、電力スイッチ回路15の出力側の信号SG5の電圧をパルス制御部14の入力側にフィードバックすることにより、信号SG5および出力電力Poutの電圧が目標とする所定電圧、例えば12[V]に近い状態で安定するようにパルス制御部14が自動的に制御を実施する。
【0069】
また、信号SG5の電圧が、窓の範囲内に収まっている場合には、ミュート制御部17が出力する信号SG6により、パルス制御部14の動作が制限され、その時の制御状態が維持される。そして、信号SG5の電圧が窓の上限電圧を超えるか、又は窓の下限電圧以下になると、パルス制御部14の自動制御が再開されて、PWMおよびPFMの制御により窓の範囲内に近づく方向に信号SG5の電圧が調整される。
【0070】
いずれにしても、PWM制御部14aおよびPFM制御部14bの同時制御により、パルス制御部14の制御特性を可変にすることができる。すなわち、直流入力電力P0-出力電力Pout間の電位差に合わせて、電源装置10の内部で発生するスイッチング損失が適切に低減され、且つ出力電力Poutの電圧が適切に維持されるようなパルスを信号SG4として出力できる。
【0071】
また、非線形信号変換部12を利用しているので、直流入力電力P0-出力電力Pout間の電位差に合わせて、パルス制御部14が閾値電圧として使用する信号SG3の電圧を所望の非線形特性に従って適正に自動調整できる。また、非線形信号変換部12を利用して直流入力電力P0の電圧が低い領域で電源装置10内の制御における入出力の関係をリニアにできるので、入出力の関係にヒステリシスが生じるのを避けることができる。
【0072】
上記のような制御により、直流入力電力P0の電圧変化だけでなく、負荷21に流れる電流の早い変動にも追従して、出力電力Poutの電圧が安定化するように、適切に制御できる。しかも、電源装置10内部におけるスイッチングの損失を低減し、発熱も抑制できる。
【0073】
実際には、PWM制御部14aにおける単独の制御特性は、数分の1[sec]~数[μsec]程度のパルス時間幅(オン時間)の変化に対応するように設計できる。また、PFM制御部14bにおける単独の制御特性は、直流レベルから数百[Hz]程度の範囲の周波数変化に対応するように設計できる。
【0074】
<動作波形の具体例>
<入力電圧変化に応じた波形の変化>
互いに入力電圧が異なる状態における3つの信号の例を図3(a)および図3(b)に示す。図3(a)および図3(b)において、横軸は時間、縦軸は電圧を表している。なお、各波形の把握が容易になるよう、各信号の縦軸における0の位置は異ならせている。
【0075】
図3(a)に示した各信号SG4、SG6、SG30は、直流入力電力P0の電圧が40.5[V]の状態における各波形を表している。また、図3(b)中の各信号SG4、SG6、SG30は、直流入力電力P0の電圧が111[V]の状態における各波形を表している。また、信号SG30はパルス制御部14の内部に含まれる発振器により生成される。この信号SG30の波形は三角波であり、PWM制御部14aがPWM制御で信号SG4のパルスを生成するためのベース信号として利用される。図3(a)および図3(b)において、信号SG30の1周期に対応する周波数は約390[Hz]である。
【0076】
図3(a)に示す状態では、約27[msec]周期(37[Hz])で信号SG4、SG6にパルスが発生しているが、全区間のうち、パルスのオン状態(高レベル)の区間の比率が非常に大きい。つまり、電力スイッチ回路15がほぼ全区間にわたりオン状態になるので、直流入力電力P0のほとんどのエネルギーが電力スイッチ回路15を通過して出力電力Poutとして負荷21に供給される。
【0077】
すなわち、直流入力電力P0の電圧が低い領域では、図2に示す特性により非線形信号変換部12の出力の信号SG2の電圧が高くなるので、パルス制御部14の制御により図3(a)のようなパルスが信号SG4に現れる。このパルスは、ベース信号SG30の周期に基づいて生成される一般的なPWM信号とは大きく異なる。
【0078】
一方、図3(b)に示す状態では、図3(a)と比べて短い周期で、信号SG4にパルスが現れている。但し、図3(b)に示したように信号SG4のパルスは、ベース信号SG30の1周期毎に現れているのではなく不定期である。つまり、PWMパルスの間引きが不定期で行われている。しかも、信号SG4のパルスの高レベル区間の時間幅は、信号SG6が高レベルの区間の幅に比べて短縮されている。また、信号SG6が高レベルである1つの区間の中で複数のパルスが発生している箇所もある。
【0079】
図3(a)および図3(b)に示したような信号SG4のパルスを生成することにより、入力電圧の広い範囲にわたって緻密な電力制御を行うことが可能である。この場合、電力スイッチ回路15をスイッチングするためのパルスが一般的なPWMのように一定の周期で繰り返し発生するわけではないので、スイッチングの頻度を減らし、電力の損失を減らすことができる。また、スイッチングの周期が不定期であるので、輻射ノイズの対策が容易になる。
【0080】
<入力電圧が中間的なレベルの場合の波形>
直流入力電力P0の電圧が74[V]の状態における4つの信号の例を図4(a)および図4(b)に示す。図4(a)、図4(b)において、横軸は時間、縦軸は電圧を表している。なお、各波形の把握が容易になるよう、各信号の縦軸における0の位置は異ならせている。
【0081】
図4(a)、図4(b)に示した例においても、信号SG4にパルスが頻繁に現れている。但し、信号SG4におけるパルスの制御周期は一定ではなく、パルスが高レベルになるオン区間の時間幅も1周期毎に微妙に変動している。つまり、PWM制御部14aで生成されるパルスの間引きや、各パルスのオン時間幅の間引きが行われている。
【0082】
例えば、信号SG5の電圧が上がりすぎる状態になると、フィードバックされる信号SG6が高レベルになっている区間で、パルス制御部14が制御を行い、信号SG4に出力するパルスの間引きや、オン時間幅の間引きなどを行うことができる。これにより、信号SG5の電圧を下げることができる。
【0083】
<負荷の変化に応じた波形の変化>
入力電圧が同じ(約62[V])で負荷が互いに異なる状態における3つの信号の例を図5(a)および図5(b)に示す。図5(a)、図5(b)において、横軸は時間、縦軸は電圧を表している。また、図5(a)は負荷21のインピーダンスが50[Ω]の状態を表し、図5(b)は負荷21のインピーダンスが25[Ω]の状態を表している。
【0084】
つまり、図5(b)の状態では図5(a)と比べて負荷21に流れる電流が大幅に増大するので、それに伴って安定した状態を維持するために、電源装置10の動作状態が変化する。
【0085】
したがって、図5(b)に示したように、信号SG4に現れるパルスの出現頻度、すなわち周波数が図5(a)と比べて大幅に増大している。これにより、電力スイッチ回路15が通電状態になる頻度も高くなり、負荷21が必要とする電力の補充を短時間でまかなうことが可能になる。その様子が、図5(a)、図5(b)中の信号SG5の波形変化に現れている。つまり、このような制御により、負荷が増大したときの電圧リップルの増大を抑制できる。
【0086】
<電源装置10の利点>
図1に示した電源装置10においては、パルス制御部14内のPWM制御部14a、PFM制御部14bが同時に動作した結果を出力パルス発生部14dの出力の信号SG4に反映することができる。したがって、PWMとPFMのモード切替を行う必要がなく、切替に伴って出力電力Poutの電圧や電流が不安定になるのを防止できる。
【0087】
また、電力スイッチ回路15をスイッチングするための信号SG4のパルス周波数が変動するので、不要放射のスペクトルが広い帯域に拡散される。したがって、特定の周波数にノイズのピークが生じることがなく、ノイズ対策が容易になる。また、ノイズを減らすために電気コイルを接続する必要がなく、無効電力が生じない。
【0088】
なお、図1に示した電源装置10の制御内容は、論理回路の動作に置き換えたり、コンピュータのソフトウェア処理に置き換えることも可能である。また、コンピュータなどを利用する場合には、例えば発電機20が起動する時の制御動作の立ち上がりを早くするために、特別な外部電源を用意したり、蓄電池を利用してコンピュータを常時動作可能な状態で待機させておくことも想定される。
【0089】
ここで、上述した本発明の実施形態に係る直流電源装置および電力制御方法の特徴をそれぞれ以下[1]~[8]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 電力供給源(発電機20)から供給される電圧の不確定な入力電力(直流入力電力P0)に基づいて、スイッチング動作を行い、少なくとも前記入力電力に比べて電圧の変化を抑制した出力電力を生成する直流電源装置(電源装置10)であって、
前記スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比を調整する動作(PWM制御部14a)と、前記スイッチング動作の周波数を調整する動作(PFM制御部14b)とを同時に行う機能(出力パルス発生部14d)を有する、パルス変調部(パルス制御部14)、
を備えたことを特徴とする直流電源装置。
【0090】
[2] 前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧検出値を、所定の非線形特性に従って変換した結果を、前記スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比、および前記スイッチング動作の周波数の少なくとも一方に反映する非線形変換部(非線形信号変換部12)を有する、
ことを特徴とする上記[1]に記載の直流電源装置。
【0091】
[3] 前記パルス変調部は、前記スイッチング動作の1周期区間中のオン時間とオフ時間の比を調整するPWM制御部(14a)と、前記スイッチング動作の1周期区間の長さを調整するPFM制御部(14b)と、前記PWM制御部のオン時間中における少なくとも一部のタイミングで、前記スイッチング動作をオフにする間引き制御部(14c)と、を有し、
前記間引き制御部は、前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧検出値の変化を前記スイッチング動作に反映する、
ことを特徴とする上記[1]または[2]に記載の直流電源装置。
【0092】
[4] 前記出力電力の電圧検出値を所定の上限値および下限値と比較した結果を、前記パルス変調部の動作に反映するミュート制御部(17)を有する、
ことを特徴とする上記[1]乃至[3]のいずれかに記載の直流電源装置。
【0093】
[5] 電力供給源から供給される電圧の不確定な入力電力に基づいて、スイッチング動作を行い、少なくとも前記入力電力に比べて電圧の変化を抑制した出力電力を生成するための電力制御方法であって、
前記スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比を調整する第1動作(PWM制御部14a)と、前記スイッチング動作の周波数を調整する第2動作(PFM制御部14b)とを同時に実施し、
前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧変化を、前記第1動作および前記第2動作の少なくとも一方に反映する、
ことを特徴とする電力制御方法。
【0094】
[6] 前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧検出値を、所定の非線形特性に従って変換した結果を、前記スイッチング動作におけるオン時間とオフ時間の比、および前記スイッチング動作の周波数の少なくとも一方に反映する、
ことを特徴とする上記[5]に記載の電力制御方法。
【0095】
[7] 前記スイッチング動作の1周期区間中のオン時間とオフ時間の比を表す第1制御量を連続的に又は逐次決定し、
前記スイッチング動作の1周期区間の長さを表す第2制御量を連続的に又は逐次決定し、
前記第1制御量に応じたオン時間中における少なくとも一部のタイミングで、前記スイッチング動作をオフにするための第3制御量を連続的に又は逐次決定し、
前記入力電力および前記出力電力の少なくとも一方の電圧検出値の変化に対して、前記第1制御量、前記第2制御量、および前記第3制御量を同時に前記スイッチング動作に反映する、
ことを特徴とする上記[5]または[6]に記載の電力制御方法。
【0096】
[8] 前記出力電力の電圧検出値を所定の上限値および下限値とそれぞれ比較し、比較した結果を前記スイッチング動作に反映する、
ことを特徴とする上記[5]乃[7]のいずれかに記載の電力制御方法。
【符号の説明】
【0097】
10 電源装置
11 電力入力部
12 非線形信号変換部
13 電圧制御部
14 パルス制御部
14a PWM制御部
14b PFM制御部
14c 間引き制御部
14d 出力パルス発生部
15 電力スイッチ回路
16 整流回路
17 ミュート制御部
17a 電圧上限検知部
17b 電圧下限検知部
17c 演算部
18 電力出力回路
19 起動回路
20 発電機
21 負荷
Pin 入力電力
P0 直流入力電力
Pout 出力電力
P1,P2 電力
SG1,SG2,SG3,SG4,SG5,SG6 信号
図1
図2
図3
図4
図5