(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】医用情報処理装置、医用情報処理システム及び医用情報処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20221018BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20221018BHJP
A61B 5/0215 20060101ALI20221018BHJP
A61B 5/026 20060101ALI20221018BHJP
A61B 5/029 20060101ALI20221018BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20221018BHJP
【FI】
A61B6/03 360D
A61B6/03 360J
A61B6/03 377
A61B5/055 390
A61B5/0215 A
A61B5/026 110
A61B5/029
A61B34/20
A61B6/03 ZDM
(21)【出願番号】P 2018229681
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2018002974
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西岡 昂彦
(72)【発明者】
【氏名】坂口 卓弥
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/207358(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/174010(WO,A1)
【文献】特表2016-509501(JP,A)
【文献】特表2013-534154(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145638(WO,A1)
【文献】特表2017-534394(JP,A)
【文献】特開2017-140365(JP,A)
【文献】特開2014-061268(JP,A)
【文献】特開2007-075141(JP,A)
【文献】特開2014-108208(JP,A)
【文献】特開2011-115562(JP,A)
【文献】特表2017-518844(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0227620(US,A1)
【文献】特開2018-083056(JP,A)
【文献】国際公開第2014/010177(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/121106(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 - 1/32 、 5/00 - 5/03 、
5/055、 6/00 - 6/14 、
8/00 - 8/15 、34/00 -90/98 、
G06T 1/00 - 1/40 、 3/00 - 7/90 、
G06V10/00 -20/90 、30/418、40/16 、
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の血管が描出された医用画像データを取得する取得部と、
前記医用画像データから血管形状を抽出し、抽出した前記血管形状から各領域における蛇行の程度を求め、前記蛇行の程度に基づいて、血管内にデバイスが挿入されることで前記蛇行の程度が変化する変形領域を特定する特定部と、
前記血管における前記変形領域を出力する出力部と、
を備え
、
前記デバイスは、プレッシャーワイヤであり、
前記特定部は、前記変形領域として、前記プレッシャーワイヤが挿入されることで前記蛇行の程度が小さくなる領域を特定する、医用情報処理装置。
【請求項2】
被検体の血管が描出された医用画像データを取得する取得部と、
前記医用画像データから血管形状を抽出し、抽出した前記血管形状から各領域における蛇行の程度を求め、前記蛇行の程度に基づいて、血管内にデバイスが挿入されることで前記蛇行の程度が変化する変形領域を特定する特定部と、
前記血管における流体指標に対応付けて前記変形領域を出力する出力部と、
を備える、医用情報処理装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記血管における流体指標に対応付けて前記変形領域を出力する、請求項
1に記載の医用情報処理装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記デバイスが挿入されていない状態の前記血管における流体指標に対応付けて、前記変形領域を出力する、請求項
2又は3に記載の医用情報処理装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記デバイスが挿入された状態の前記血管における流体指標に対応付けて、前記変形領域を出力する、請求項
2又は3に記載の医用情報処理装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記血管における流体指標の分布を示した画像データと、前記変形領域とを対応付けて表示させる、請求項
2乃至5のいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項7】
前記特定部は、前記血管形状における少なくとも曲率と捩率とに基づいて前記蛇行の程度を取得し、取得した前記蛇行の程度に基づいて前記変形領域を特定する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項8】
前記特定部は、前記蛇行の程度に加え、更に前記デバイスの構造情報に基づいて前記変形領域を特定する、請求項7に記載の医用情報処理装置。
【請求項9】
前記デバイスは、少なくともワイヤ状の部材を含むものであって、
前記特定部は、前記デバイスの構造情報として、前記ワイヤ状の部材の太さと硬さとの少なくとも一方を含む情報に基づいて前記変形領域を特定する、請求項8に記載の医用情報処理装置。
【請求項10】
前記特定部は、前記デバイスが挿入されていない状態の前記血管における流体指標の位置間の変化量に基づいて、前記蛇行の程度を求める、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項11】
前記血管における流体指標を算出する算出部を更に備え、
前記出力部は、前記算出部が算出した流体指標と、前記変形領域とを対応付けて出力する、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の医用情報処理装置。
【請求項12】
前記算出部は、前記デバイスが挿入されることで生じる前記血管形状の変形を推定し、推定した変形後の前記血管形状に基づいて、前記デバイスが挿入された状態の前記血管における流体指標を算出する、請求項11に記載の医用情報処理装置。
【請求項13】
前記特定部は、前記算出部が算出した前記デバイスが挿入された状態の前記血管における流体指標と、前記デバイスが挿入されていない状態の前記血管における流体指標との差に基づいて、前記蛇行の程度を求める、請求項12に記載の医用情報処理装置。
【請求項14】
前記特定部は、前記算出部が算出した前記デバイスが挿入された状態の前記血管における流体指標と、前記デバイスが挿入されていない状態の前記血管における流体指標との差の位置間の変化量に基づいて、前記蛇行の程度を求める、請求項12に記載の医用情報処理装置。
【請求項15】
被検体の冠動脈が描出された医用画像データを取得する取得部と、
前記医用画像データから血管形状を抽出し、前記血管形状に基づいて、プレッシャーワイヤの挿入により前記血管形状又は血流指標の変化を生じる領域を特定する特定部と、
前記冠動脈における前記領域を出力する出力部と、
を備える、医用情報処理装置。
【請求項16】
被検体の血管が描出された医用画像データを収集する収集部と、
前記医用画像データを取得する取得部と、
前記医用画像データから血管形状を抽出し、抽出した前記血管形状から各領域における蛇行の程度を求め、前記蛇行の程度に基づいて、血管内にデバイスが挿入されることで前記蛇行の程度が変化する変形領域を特定する特定部と、
前記血管における前記変形領域を出力する出力部と、
を備え
、
前記デバイスは、プレッシャーワイヤであり、
前記特定部は、前記変形領域として、前記プレッシャーワイヤが挿入されることで前記蛇行の程度が小さくなる領域を特定する、医用情報処理システム。
【請求項17】
被検体の血管が描出された医用画像データを収集する収集部と、
前記医用画像データを取得する取得部と、
前記医用画像データから血管形状を抽出し、抽出した前記血管形状から各領域における蛇行の程度を求め、前記蛇行の程度に基づいて、血管内にデバイスが挿入されることで前記蛇行の程度が変化する変形領域を特定する特定部と、
前記血管における流体指標に対応付けて前記変形領域を出力する出力部と、
を備える、医用情報処理システム。
【請求項18】
被検体の血管が描出された医用画像データを取得し、
前記医用画像データから血管形状を抽出し、抽出した前記血管形状から各領域における蛇行の程度を求め、前記蛇行の程度に基づいて、血管内にデバイスが挿入されることで前記蛇行の程度が変化する変形領域を特定し、
前記血管における前記変形領域を出力
し、
前記デバイスは、プレッシャーワイヤであり、
前記変形領域として、前記プレッシャーワイヤが挿入されることで前記蛇行の程度が小さくなる領域を特定することを含む、医用情報処理方法。
【請求項19】
被検体の血管が描出された医用画像データを取得し、
前記医用画像データから血管形状を抽出し、抽出した前記血管形状から各領域における蛇行の程度を求め、前記蛇行の程度に基づいて、血管内にデバイスが挿入されることで前記蛇行の程度が変化する変形領域を特定し、
前記血管における流体指標に対応付けて前記変形領域を出力することを含む、医用情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、医用情報処理装置、医用情報処理システム及び医用情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の血流に関する指標(流体指標)を取得する方法として、血管内に挿入したデバイスにより計測する方法と、被検体の血管が描出された医用画像データから算出する方法とが知られている。しかしながら、これらの方法でそれぞれ取得される流体指標の間には乖離がある場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2016-509501号公報
【文献】特表2013-534154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、流体指標の信頼性を示す情報を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の医用情報処理装置は、取得部と、特定部と、出力部とを備える。取得部は、被検体の血管が描出された医用画像データを取得する。特定部は、前記医用画像データから血管形状を抽出し、抽出した前記血管形状から各領域における蛇行の程度を求め、前記蛇行の程度に基づいて、血管内にデバイスが挿入されることで前記蛇行の程度が変化する変形領域を特定する。出力部は、前記血管における前記変形領域を出力する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態に係るCT画像データの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る変形領域について説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態に係るカラー画像及び変形領域の表示の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る変形領域の特定について説明するための図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態に係る変形領域の特定について説明するための図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態に係るカラー画像及び変形領域の表示の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態に係るカラー画像及び変形領域の表示の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る変形領域の特定について説明するための図である。
【
図12】
図12は、第4の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、図面を参照して、医用情報処理装置、医用情報処理システム及び医用情報処理方法の実施形態について詳細に説明する。
【0008】
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態では、医用画像診断装置10及び医用情報処理装置30を含んだ医用情報処理システム1を一例として説明する。
【0009】
図1に示すように、第1の実施形態に係る医用情報処理システム1は、医用画像診断装置10と、画像保管装置20と、医用情報処理装置30とを備える。なお、
図1は、第1の実施形態に係る医用情報処理システム1の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、医用画像診断装置10、画像保管装置20及び医用情報処理装置30は、ネットワークを介して相互に接続される。
【0010】
医用画像診断装置10は、被検体Pから医用画像データを収集する装置である。医用画像診断装置10は、被検体Pの血管が描出された医用画像データを収集し、収集した医用画像データを画像保管装置20及び医用情報処理装置30に送信する。例えば、医用画像診断装置10は、X線CT(Computed Tomography)装置やX線診断装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等である。
【0011】
画像保管装置20は、医用画像診断装置10によって収集された医用画像データを保管する装置である。画像保管装置20は、ネットワークを介して医用画像診断装置10から医用画像データを取得し、取得した医用画像データを、装置内又は装置外に設けられたメモリに記憶させる。例えば、画像保管装置20は、サーバ装置等のコンピュータ機器によって実現される。
【0012】
医用情報処理装置30は、ネットワークを介して医用画像データを取得し、取得した医用画像データを用いた種々の処理を実行する。例えば、医用情報処理装置30は、ネットワークを介して、医用画像診断装置10又は画像保管装置20から医用画像データを取得する。また、医用情報処理装置30は、取得した医用画像データに基づいて、後述する変形領域を特定し、特定した変形領域を出力する。例えば、医用情報処理装置30は、ワークステーション等のコンピュータ機器によって実現される。なお、ネットワークを介して接続可能であれば、医用画像診断装置10、画像保管装置20及び医用情報処理装置30が設置される場所は任意である。例えば、医用情報処理装置30は、医用画像診断装置10と異なる病院に設置されてもよい。
【0013】
図1に示すように、医用情報処理装置30は、入力インターフェース31と、ディスプレイ32と、メモリ33と、処理回路34とを有する。
【0014】
入力インターフェース31は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路34に出力する。例えば、入力インターフェース31は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース31は、医用情報処理装置30本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることとしても構わない。また、入力インターフェース31は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、医用情報処理装置30とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路34へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース31の例に含まれる。
【0015】
ディスプレイ32は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ32は、処理回路34による制御の下、処理回路34により特定された変形領域や、処理回路34により算出された流体指標を表示する。また、ディスプレイ32は、入力インターフェース31を介して操作者から各種指示や各種設定等を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示する。例えば、ディスプレイ32は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。ディスプレイ32は、デスクトップ型でもよいし、医用情報処理装置30本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0016】
メモリ33は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ33は、医用画像診断装置10又は画像保管装置20から取得した医用画像データを記憶する。また、例えば、メモリ33は、医用情報処理装置30に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。
【0017】
処理回路34は、取得機能34a、特定機能34b、算出機能34c及び出力機能34dを実行することで、医用情報処理装置30全体の動作を制御する。ここで、取得機能34aは、取得部の一例である。また、特定機能34bは、特定部の一例である。また、算出機能34cは、算出部の一例である。また、出力機能34dは、出力部の一例である。
【0018】
例えば、処理回路34は、取得機能34aに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、医用画像診断装置10又は画像保管装置20から、被検体Pの血管が描出された医用画像データを取得する。また、例えば、処理回路34は、特定機能34bに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、医用画像データから血管形状を抽出し、抽出した前記血管形状から各領域における蛇行の程度を求め、蛇行の程度に基づいて変形領域を特定する。また、例えば、処理回路34は、算出機能34cに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、被検体Pの血管における流体指標を算出する。また、例えば、処理回路34は、出力機能34dに対応するプログラムをメモリ33から読み出して実行することにより、被検体Pの血管における流体指標に対応付けて変形領域を出力する。
【0019】
図1に示す医用情報処理装置30においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ33へ記憶されている。処理回路34は、メモリ33からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路34は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。なお、
図1においては単一の処理回路34にて、取得機能34a、特定機能34b、算出機能34c及び出力機能34dが実現するものとして説明したが、複数の独立したプロセッサを組み合わせて処理回路34を構成し、各プロセッサがプログラムを実行することにより機能を実現するものとしても構わない。
【0020】
次に、被検体Pの血管が描出された医用画像データを収集する医用画像診断装置10について説明する。本実施形態では、医用画像診断装置10の一例として、X線CT装置100について説明する。また、本実施形態では、医用画像データの一例として、CT画像データ(ボリュームデータ)について説明する。
【0021】
X線CT装置100は、
図2に示すように、架台装置110と、寝台装置130と、コンソール装置140とを有する。なお、
図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置100の構成の一例を示すブロック図である。
図2においては、非チルト状態での回転フレーム113の回転軸又は寝台装置130の天板133の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、
図2は、説明のために架台装置110を複数方向から描画したものであり、X線CT装置100が架台装置110を1つ有する場合を示す。
【0022】
架台装置110は、X線管111と、X線検出器112と、回転フレーム113と、X線高電圧装置114と、制御装置115と、ウェッジ116と、コリメータ117と、DAS(Data Acquisition System)118とを有する。
【0023】
X線管111は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管111は、X線高電圧装置114からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することでX線を発生する。
【0024】
X線検出器112は、X線管111から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、検出したX線量に対応した信号をDAS118へと出力する。X線検出器112は、例えば、X線管111の焦点を中心とした1つの円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列された複数のX線検出素子列を有する。X線検出器112は、例えば、チャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたX線検出素子列がスライス方向(列方向、row方向)に複数配列された構造を有する。また、X線検出器112は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。なお、X線検出器112は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0025】
回転フレーム113は、X線管111とX線検出器112とを対向支持し、制御装置115によってX線管111とX線検出器112とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム113は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム113は、X線管111及びX線検出器112に加えて、X線高電圧装置114やDAS118を更に支持することもできる。更に、回転フレーム113は、
図2において図示しない種々の構成を更に支持することもできる。以下では、架台装置110において、回転フレーム113と共に回転移動する部分及び回転フレーム113を回転部とも記載する。
【0026】
なお、DAS118が生成した検出データは、回転フレーム113に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置110の非回転部分に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、コンソール装置140へと転送される。ここで、非回転部分とは、例えば、回転フレーム113を回転可能に支持する固定フレーム等である。なお、回転フレーム113から架台装置110の非回転部分への検出データの送信方法は、光通信に限らず、非接触型のデータ伝送であれば如何なる方式を採用しても構わない。
【0027】
X線高電圧装置114は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管111に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管111が照射するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置114は、回転フレーム113に設けられてもよいし、図示しない固定フレームに設けられても構わない。
【0028】
制御装置115は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置115は、入力インターフェース143からの入力信号を受けて、架台装置110及び寝台装置130の動作制御を行う。例えば、制御装置115は、回転フレーム113の回転や架台装置110のチルト、寝台装置130及び天板133の動作等について制御を行う。一例を挙げると、制御装置115は、架台装置110をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム113を回転させる。なお、制御装置115は架台装置110に設けられてもよいし、コンソール装置140に設けられてもよい。
【0029】
ウェッジ116は、X線管111から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ116は、X線管111から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管111から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ116は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工して構成される。
【0030】
コリメータ117は、ウェッジ116を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。コリメータ117は、図示しないコリメータ調整回路によって、開口度及び位置が調整される。これにより、X線管111が発生させたX線の照射範囲が調整される。なお、コリメータ117は、X線絞りと呼ばれる場合もある。
【0031】
DAS118は、X線検出器112の各X線検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS118は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0032】
寝台装置130は、スキャン対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台131と、寝台駆動装置132と、天板133と、支持フレーム134とを有する。基台131は、支持フレーム134を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置132は、被検体Pが載置された天板133を、天板133の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム134の上面に設けられた天板133は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置132は、天板133に加え、支持フレーム134を天板133の長軸方向に移動してもよい。
【0033】
コンソール装置140は、メモリ141と、ディスプレイ142と、入力インターフェース143と、処理回路144とを有する。
【0034】
メモリ141は、例えば、RAM、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。例えば、メモリ141は、投影データや再構成画像データ等を記憶する。なお、投影データや再構成画像データ等については、X線CT装置100とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)に記憶させることとしてもよい。また、例えば、メモリ141は、X線CT装置100に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。
【0035】
ディスプレイ142は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ142は、処理回路144によって生成されたCT画像や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI等を出力する。例えば、ディスプレイ142は、液晶ディスプレイやCRTディスプレイである。なお、ディスプレイ142は、架台装置110に設けられてもよい。また、ディスプレイ142は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置140本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0036】
入力インターフェース143は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路144に出力する。例えば、入力インターフェース143は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース143は、コンソール装置140本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース143は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、コンソール装置140とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路144へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース143の例に含まれる。
【0037】
処理回路144は、X線CT装置100全体の動作を制御する。例えば、処理回路144は、収集機能144a、出力機能144b及び制御機能144cを有する。処理回路144は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0038】
例えば、処理回路144は、メモリ141から収集機能144aに相当するプログラムを読み出して実行することにより、被検体Pの血管が描出されたCT画像データを収集する。なお、収集機能144aは、収集部の一例である。
【0039】
例えば、収集機能144aは、まず、X線CT装置100を制御してスキャンを実行する。ここで、収集機能144aは、例えば、コンベンショナルスキャンやヘリカルスキャン、ステップアンドシュート方式といった種々の方式でのスキャンを実行することができる。
【0040】
具体的には、収集機能144aは、寝台駆動装置132を制御することにより、被検体Pを架台装置110の撮影口内へ移動させる。また、収集機能144aは、X線高電圧装置114を制御してX線管111へ高電圧を供給させることにより、血管内に造影剤が注入された状態の被検体Pに対して、X線を照射させる。また、収集機能144aは、コリメータ117の開口度及び位置を調整する。また、収集機能144aは、制御装置115を制御することにより、回転フレーム113を含む回転部を回転させる。また、収集機能144aは、DAS118に検出データを収集させる。ここで、DAS118が収集する検出データにおいては、造影剤により、被検体Pの血管が造影されることとなる。
【0041】
また、例えば、収集機能144aは、DAS118から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施したデータを生成する。なお、前処理を施す前のデータ(検出データ)および前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。
【0042】
また、収集機能144aは、造影剤を用いて収集した投影データから、被検体Pの血管が描出されたCT画像データを生成する。例えば、収集機能144aは、前処理後の投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行うことにより、CT画像データを生成する。また、例えば、収集機能144aは、前処理後の投影データから複数の断層画像データを生成し、複数の断層画像データを公知の方法により変換することで、CT画像データを生成する。
【0043】
なお、再構成の方式には、フルスキャン法、ハーフスキャン法等がある。フルスキャン法は、被検体Pの周囲一周(360°)分の投影データを用いて再構成する方式である。また、ハーフスキャン法は、180°+ファン角度分の投影データを用いて再構成する方式である。いずれの再構成方式に対しても本実施形態へ適用可能である。
【0044】
また、例えば、処理回路144は、メモリ141から出力機能144bに相当するプログラムを読み出して実行することにより、生成されたCT画像データを、メモリ141に記憶させたり、画像保管装置20や医用情報処理装置30に送信したりする。また、出力機能144bは、ディスプレイ142にCT画像データを表示させる。例えば、出力機能144bは、CT画像データに基づいて、ボリュームレンダリング画像やCPR(Curved Multi Planar Reconstruction)画像、MPR(Multi Planar Reconstruction)画像、SPR(Stretched Multi Planar Reconstruction)画像等の表示画像を生成し、生成した表示画像をディスプレイ142に表示させる。また、例えば、処理回路144は、メモリ141から制御機能144cに相当するプログラムを読み出して実行することにより、入力インターフェース143を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路144の各種機能を制御する。
【0045】
図2に示すX線CT装置100においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ141へ記憶されている。処理回路144は、メモリ141からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路144は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。なお、
図2においては、収集機能144a、出力機能144b及び制御機能144cの各処理機能が単一の処理回路144によって実現される場合を示したが、実施形態はこれに限られるものではない。例えば、処理回路144は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成され、各プロセッサが各プログラムを実行することにより各処理機能を実現するものとしても構わない。また、処理回路144が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。
【0046】
なお、
図2においては、X線管111とX線検出器112とを1つずつ示した。即ち、
図2においては、X線CT装置100が一管球型である場合について説明した。しかしながら、X線CT装置100は、X線管111とX線検出器112との複数のペアを回転フレーム113に搭載した、いわゆる多管球型のX線CT装置であってもよい。
【0047】
また、
図2においては、X線管111とX線検出器112とが一体として、被検体Pの周囲を回転する場合について説明した。しかしながら、X線CT装置には、X線管とX線検出器とが一体として被検体の周囲を回転するRotate/Rotate-Type(第3世代CT)、リング状にアレイされた多数のX線検出素子が固定され、X線管のみが被検体の周囲を回転するStationary/Rotate-Type(第4世代CT)等様々なタイプがあり、いずれのタイプでも本実施形態へ適用可能である。
【0048】
また、
図2においては、X線管11がX線を発生させるものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、X線管11に代えて、電子銃から発生した電子ビームを集束させるフォーカスコイルと、電磁偏向させる偏向コイルと、被検体の半周を囲い偏向した電子ビームが衝突することによってX線を発生させるターゲットリングとを含む第5世代方式を用いてX線を発生させることにしても構わない。
【0049】
また、コンソール装置140は、単一のコンソールにて複数の機能を実行してもよいし、複数の機能を別々のコンソールが実行することにしても構わない。例えば、別々のコンソールが、収集機能144a、出力機能144b及び制御機能144c等の処理回路144の機能を分散して有しても構わない。また、処理回路144はコンソール装置140に含まれる場合に限らず、複数の医用画像診断装置にて取得された検出データに対する処理を一括して行う統合サーバに含まれてもよい。
【0050】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、あるいは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサはメモリ33又はメモリ141に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0051】
なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。また、
図1及び
図2においては、単一のメモリ33又はメモリ141が各処理機能に対応するプログラムを記憶するものとして説明した。しかしながら、複数のメモリ33を分散して配置し、処理回路34は、個別のメモリ33から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。同様に、複数のメモリ141を分散して配置し、処理回路144は、個別のメモリ141から対応するプログラムを読み出す構成としても構わない。また、メモリ33及びメモリ141にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。
【0052】
以上、医用情報処理システム1の構成の一例について説明した。かかる構成の下、医用情報処理システム1における医用情報処理装置30は、流体指標の信頼性を示す情報を提供する。具体的には、医用情報処理装置30は、以下詳細に説明する処理回路34による処理によって、血管内にデバイスが挿入されることで蛇行の程度が変化する変形領域を特定し、特定した変形領域を流体指標に対応付けて出力することで、流体指標の信頼性を示す情報を提供する。以下、第1の実施形態に係る医用情報処理装置30が行う処理について詳細に説明する。
【0053】
まず、取得機能34aは、X線CT装置100又は画像保管装置20から、被検体Pの血管が描出されたCT画像データを取得してメモリ33に格納する。例えば、取得機能34aは、
図3の左図に示すCT画像データを取得して、メモリ33に格納する。なお、
図3は、第1の実施形態に係るCT画像データの一例を示す図である。具体的には、
図3の左図は、被検体Pの大動脈、及び、大動脈から分岐する複数の血管が描出されたCT画像データを示す。即ち、取得機能34aは、被検体Pの冠動脈が描出されたCT画像データを取得する。
【0054】
次に、特定機能34bは、CT画像データから血管形状を抽出する。ここで、特定機能34bは、CT画像データに描出された血管の全部について血管形状を抽出してもよいし、CT画像データに描出された血管の一部について血管形状を抽出してもよい。例えば、CT画像データに描出された血管の一部について血管形状を抽出する場合、特定機能34bは、まず、対象領域を設定する。一例を挙げると、特定機能34bは、入力インターフェース31を介して操作者からの指示を受け付けることにより、
図3の左図に示すLADを対象領域として設定する。
【0055】
そして、特定機能34bは、
図3の右図に示すように、CT画像データから、対象領域LADの血管形状を抽出する。例えば、特定機能34bは、CT画像データに対する画像処理により、血管形状として、血管の芯線(芯線の座標情報)、芯線に垂直な断面での血管及び内腔の断面積、芯線に垂直な断面での円柱方向の芯線から内壁までの距離及び芯線から外壁までの距離などの血管形状データを抽出する。
【0056】
次に、特定機能34bは、血管形状データから、血管内にデバイスが挿入されることで蛇行の程度が変化する変形領域を特定する。ここで、変形領域とは、例えば、
図4の左図に示すように、被検体Pの血管において蛇行する領域である。
図4の右図に示すように、変形領域は、デバイスが挿入された場合、挿入されたデバイスの形状に沿って蛇行の程度が小さくなるように変形する。なお、
図4は、第1の実施形態に係る変形領域について説明するための図である。また、
図4においては、変形領域として、複数方向への湾曲が連続する領域を示したが、1の湾曲のみが生じた領域を変形領域に含むこととしてもよい。
【0057】
ここで、血管内に挿入されるデバイスとは、例えば、プレッシャーワイヤや、血管内に留置されるステント、血管内に挿入されるガイドワイヤ、カテーテル等である。以下では一例として、血管内に挿入されるデバイスが、プレッシャーワイヤである場合について説明する。プレッシャーワイヤは、ワイヤ状の部材と圧力計とを含むデバイスであり、血管内に挿入された後、先端部に備える圧力計を用いて血管内の各位置における圧力や心筋血流予備量比(FFR:Fractional Flow Reserve)を計測する。なお、FFRは、例えば、血管において大動脈から近い近位部における圧力と、大動脈から遠い遠位部における圧力との比であり、「FFR=Pd(遠位部の圧力)/Pa(近位部の圧力)」で表される。
【0058】
例えば、特定機能34bは、
図3の右図に示す血管形状データから血管構造情報を取得し、取得した血管構造情報に基づいて変形領域を特定する。ここで、血管構造情報とは、例えば、血管の太さや、血管の長さ、血管壁の厚さ、血管の曲率、血管の捩率、血管の性状(石灰化、プラーク等)、血管の硬さ等である。
【0059】
一例を挙げると、特定機能34bは、
図3の右図に示す血管形状データから、血管構造情報として、血管の曲率及び捩率を取得する。次に、特定機能34bは、曲率及び捩率に基づいて、蛇行の程度を取得する。次に、特定機能34bは、蛇行の程度に基づいて、プレッシャーワイヤが挿入された場合に、血管形状データの各位置において蛇行の程度が変化するか否かを判定する。例えば、特定機能34bは、プレッシャーワイヤの挿入前後で血管の曲率及び捩率の変化量が閾値を超えるか否かに応じて、血管形状データの各位置において蛇行の程度が変化するか否かを判定する。そして、特定機能34bは、蛇行の程度が変化すると判定した位置の集合を、変形領域として特定する。
【0060】
また、特定機能34bは、蛇行の程度に加え、更にプレッシャーワイヤの構造情報を更に用いることとしてもよい。例えば、特定機能34bは、プレッシャーワイヤの構造情報を取得し、蛇行の程度とプレッシャーワイヤの構造情報とに基づいて、血管形状データの各位置において蛇行の程度が変化するか否かを判定する。ここで、プレッシャーワイヤの構造情報とは、例えば、プレッシャーワイヤの太さや、プレッシャーワイヤの長さ、プレッシャーワイヤの硬さ、プレッシャーワイヤの応力、プレッシャーワイヤの稼働可能範囲等である。なお、プレッシャーワイヤの構造情報は、デバイスの構造情報の一例である。
【0061】
一例を挙げると、特定機能34bは、血管形状データから取得した蛇行の程度と、プレッシャーワイヤの構造情報とに基づいて、血管形状データの各位置がプレッシャーワイヤから受ける力(弾性力)を算出する。そして、特定機能34bは、弾性力が閾値を超えるか否かに応じて、血管形状の各位置において蛇行の程度が変化するか否かを判定する。あるいは、特定機能34bは、血管に加わる力と変形との関係を定めたテーブル等に基づいて、算出した弾性力を、血管の曲率及び捩率の変化量に変換する。そして、特定機能34bは、変化量が閾値を超えるか否かに応じて、血管形状の各位置において蛇行の程度が変化するか否かを判定する。更に、特定機能34bは、蛇行の程度が変化すると判定した位置の集合を変形領域として特定する。
【0062】
また、算出機能34cは、被検体Pの血管における流体指標を算出する。例えば、算出機能34cは、特定機能34bがCT画像データから抽出した血管形状データに基づいて流体解析を実行することにより、血管の各位置における流体指標を算出する。
【0063】
例えば、算出機能34cは、まず、流体解析の解析条件を設定する。具体的には、算出機能34cは、解析条件として、血液の物性値、反復計算の条件、解析の初期値等を設定する。例えば、算出機能34cは、血液の物性値として、血液の粘性、密度等を設定する。また、算出機能34cは、反復計算の条件として、反復計算における最大反復回数、緩和係数、残差の許容値等を設定する。また、算出機能34cは、解析の初期値として、流量、圧力、流体抵抗、圧力境界の初期値等を設定する。なお、算出機能34cによって用いられる各種値は、システムに予め組み込んでおいてもよいし、操作者が対話的に定義してもよい。
【0064】
そして、算出機能34cは、血管形状データと解析条件とを用いた流体解析を実行し、血管における流体指標を算出する。例えば、算出機能34cは、血管の内腔や外壁の輪郭、血管の断面積及び芯線等の血管形状データと、血液の物性値、反復計算の条件及び解析の初期値等の解析条件とに基づいて、血管の位置ごとに、圧力、血液の流量、血液の流速、ベクトル及びせん断応力等の流体指標を算出する。一例を挙げると、算出機能34cは、
図3の右図に示す血管形状データと解析条件とを用いて流体解析を行うことで、対象領域LADの入口の境界から出口の境界まで、芯線に沿った所定の位置ごとに圧力、血液の流量、血液の流速、ベクトル及びせん断応力等の流体指標を算出する。即ち、算出機能34cは、対象領域LADについて、圧力、血液の流量、血液の流速、ベクトル及びせん断応力等の分布を算出する。
【0065】
また、例えば、算出機能34cは、血管の位置ごとに算出した圧力、血液の流量、血液の流速、ベクトル及びせん断応力等に基づいて、流体指標を算出する。一例を挙げると、算出機能34cは、対象領域LADにおける圧力の分布に基づいて、対象領域LADにおけるFFRの分布を算出する。
【0066】
次に、出力機能34dは、算出機能34cが算出した流体指標に対応付けて、変形領域を出力する。以下では一例として、FFRに対応付けて、変形領域をディスプレイ32に表示させる場合について説明する。
【0067】
例えば、出力機能34dは、まず、被検体Pの血管におけるFFRの分布を示した画像データを生成する。一例を挙げると、出力機能34dは、
図3の左図に示したCT画像データに対して、カラーテーブルに従ってFFRの値を反映させることにより、
図5に示すカラー画像を生成する。なお、
図5は、第1の実施形態に係るカラー画像及び変形領域の表示の一例を示す図である。
図5においては、CT画像データにおける対象領域LADについて、「0.5」~「1.0」までの値を9分割した場合の各値を基準値とし、各基準値を境界として色を変化させた9色のカラー画像を示す。
【0068】
そして、出力機能34dは、カラー画像と変形領域とを応付けて表示させる。例えば、出力機能34dは、
図5に示すように、ディスプレイ32にカラー画像を表示させるとともに、カラー画像上に変形領域を示す円を重畳表示させる。また、例えば、出力機能34dは、ディスプレイ32に、カラー画像と、ボリュームレンダリング画像等の表示画像とを表示させるとともに、表示画像上に変形領域を示す円を重畳表示させる。
【0069】
ここで、医師等の操作者は、カラー画像が示すFFRの分布を参照することにより、被検体Pの血流の状態を判断したり、治療計画を立てたりすることができる。更に、操作者は、
図5の円が示す変形領域内のFFRが、プレッシャーワイヤを用いて計測するFFRと異なり得ることを知ることができる。
【0070】
具体的には、
図5のカラー画像が示すFFRは、CT画像データに基づいて算出されたものであって、プレッシャーワイヤが挿入されていない状態の血管におけるFFRを示す。一方で、プレッシャーワイヤを用いてFFRを計測する場合、
図4に示したように、血管内に挿入されたプレッシャーワイヤによって血管が変形し、血流の状態も変化する。そして、カラー画像が示すFFRとプレッシャーワイヤを用いて計測されるFFRとは、それぞれ、プレッシャーワイヤの挿入による血管の変形前後のFFRを示すこととなり、値が乖離する場合がる。
【0071】
なお、以下では、CT画像データに基づいて算出されたFFRをCT-FFRとも記載する。CT-FFRは、デバイスが挿入されていない状態の血管における流体指標の一例である。また、以下では、プレッシャーワイヤを用いて計測されたFFRをWire-FFRとも記載する。Wire-FFRは、デバイスが挿入された状態の血管における流体指標の一例である。
【0072】
プレッシャーワイヤが挿入された場合、蛇行する血管の曲率は低下し、曲がり管による血管抵抗値が小さくなるため、Wire-FFRは、同じ位置のCT-FFRよりも大きくなる場合が多い。換言すると、蛇行する血管において、CT-FFRは、Wire-FFRよりも厳しい結果を示す場合が多い。そして、CT-FFRのみを用いる場合、治療が必要でない血管に対して手術を行なってしまう可能性がある。
【0073】
これに対し、出力機能34dは、変形領域を表示することにより、変形領域におけるCT-FFRが、Wire-FFRとは異なり得ることを操作者に知らせることができる。そして、操作者は、変形領域以外の領域のCT-FFR(Wire-FFRとの相関が高いCT-FFR)に基づいて治療計画を立てたり、Wire-FFRと差があることを考慮しつつ変形領域のCT-FFRに基づいて治療計画を立てたり、追加的にWire-FFRの計測を行なったりすることができる。
【0074】
なお、
図5においては、円により変形領域を示すものとして説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力機能34dは、矩形やバーなどの任意の図形により変形領域を示すことができる。また、例えば、出力機能34dは、色により変形領域を示してもよい。一例を挙げると、出力機能34dは、変形領域におけるCT-FFRを所定の色(例えば、黒色や白色など)としたカラー画像を表示させる。
【0075】
次に、医用情報処理装置30による処理の手順の一例を、
図6を用いて説明する。
図6は、第1の実施形態に係る医用情報処理装置30の処理の一連の流れを説明するためのフローチャートである。ステップS101は、取得機能34aに対応するステップである。ステップS102、ステップS106及びステップS107は、特定機能34bに対応するステップである。ステップS103及びステップS104は、算出機能34cに対応するステップである。ステップS105及びステップS108は、出力機能34dに対応するステップである。
【0076】
まず、処理回路34は、X線CT装置100又は画像保管装置20から、被検体Pの血管が描出されたCT画像データを取得してメモリ33に格納する(ステップS101)。次に、処理回路34は、メモリ33からCT画像データを読み出して、CT画像データから血管形状を抽出する(ステップS102)。次に、処理回路34は、抽出した血管形状を用いて流体解析を実行し(ステップS103)、CT-FFRを算出する(ステップS104)。更に、処理回路34は、算出したCT-FFRの分布を示したカラー画像を生成する(ステップS105)。
【0077】
また、処理回路34は、血管形状に基づく蛇行の程度及びデバイスの構造情報を取得する(ステップS106)。次に、処理回路34は、蛇行の程度及びデバイスの構造情報に基づいて変形領域を特定する(ステップS107)。そして、処理回路34は、CT-FFRの分布を示したカラー画像と変形領域とを対応付けて表示させ(ステップS108)、処理を終了する。
【0078】
なお、カラー画像の生成に関わるステップS103、ステップS104及びステップS105と、変形領域の特定に関わるステップS106及びステップS107とを行なう順序は任意であり、並行して行なうこととしてもよい。
【0079】
上述したように、第1の実施形態によれば、取得機能34aは、被検体Pの血管が描出されたCT画像データを取得する。また、特定機能34bは、CT画像データから血管形状を抽出し、抽出した前記血管形状から各領域における蛇行の程度を求め、蛇行の程度に基づいて、血管内にデバイスが挿入されることで蛇行の程度が変化する変形領域を特定する。また、算出機能34cは、被検体Pの血管における流体指標を算出する。また、出力機能34dは、被検体Pの血管における流体指標に対応付けて変形領域を出力する。従って、第1の実施形態に係る医用情報処理装置30は、流体指標の信頼性を示す情報を提供することができる。
【0080】
(第2の実施形態)
上述した第1の実施形態では、血管形状における曲率や捩率等の血管構造情報に基づいて、蛇行の程度を求める場合について説明した。これに対し、第2の実施形態では、流体指標に基づいて蛇行の程度を求める場合について説明する。
【0081】
第2の実施形態に係る医用情報処理装置30は、
図1に示した第1の実施形態に係る医用情報処理装置30と同様の構成を有し、特定機能34b、算出機能34c及び出力機能34dによる処理の一部が相違する。そこで、第1の実施形態において説明した構成と同様の構成を有する点については、
図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0082】
まず、取得機能34aは、被検体Pの血管が描出されたCT画像データを取得し、特定機能34bは、CT画像データから血管形状を抽出する。次に、算出機能34cは、抽出された血管形状に基づいて流体指標を算出する。以下、算出機能34cが、流体指標として、CT-FFRを算出した場合について説明する。次に、特定機能34bは、算出機能34cが算出したCT-FFRに基づいて蛇行の程度を求める。
【0083】
例えば、特定機能34bは、算出機能34cが算出したCT-FFRの位置間の変化量に基づいて、蛇行の程度を求める。即ち、特定機能34bは、デバイスが挿入されていない状態の血管における流体指標の位置間の変化量に基づいて、蛇行の程度を求める。
【0084】
一例を挙げると、特定機能34bは、
図7に示すように、血管形状データにおける対象領域LADの入口の境界から出口の境界まで、芯線に沿った各位置におけるCT-FFRを取得する。なお、
図7は、第2の実施形態に係る変形領域の特定について説明するための図である。
図7において、縦軸はFFRの値を示し、横軸は芯線に沿った位置を示す。例えば、横軸の位置「x0」は、対象領域LADの入口の位置を示す。また、横軸の位置「x3」は、対象領域LADの出口の位置を示す。
【0085】
図7において、位置「x0」から位置「x1」までの間、及び、位置「x2」から位置「x3」までの間は、CT-FFRが緩やかに低下している。即ち、位置「x0」から位置「x1」までの間、及び、位置「x2」から位置「x3」までの間において、CT-FFRの位置間の変化量は小さい。これに対し、位置「x1」から位置「x2」までの間は、CT-FFRが急激に低下している。即ち、位置「x1」から位置「x2」までの間において、CT-FFRの位置間の変化量は大きい。
【0086】
位置「x1」から位置「x2」までの間、CT-FFRの位置間の変化量が大きくなっている要因としては、例えば、位置「x1」から位置「x2」までの間の血管が蛇行しており、曲がり管による血管抵抗値が大きいことが考えられる。従って、特定機能34bは、位置「x1」から位置「x2」までの間の蛇行の程度が大きくなるように、各領域の蛇行の程度を求めることができる。そして、特定機能34bは、蛇行の程度に基づいて変形領域を特定する。例えば、特定機能34bは、蛇行の程度に基づいて、プレッシャーワイヤが挿入された場合に、血管形状データの各位置において蛇行の程度が変化するか否かを判定し、蛇行の程度が変化すると判定した位置の集合(例えば、位置「x1」から位置「x2」までの間)を、変形領域として特定する。
【0087】
なお、特定機能34bは、更に、血管構造情報を用いて変形領域を特定してもよい。例えば、特定機能34bは、位置「x1」から位置「x2」までの間の血管の太さを取得し、CT-FFRの位置間の変化量が大きくなっている要因が、血管の狭窄であるか否かを判定する。そして、特定機能34bは、CT-FFRの位置間の変化量が大きくなっている要因が血管の狭窄でないと判定した場合に、位置「x1」から位置「x2」までの間の蛇行の程度が大きくなるように各領域の蛇行の程度を求め、蛇行の程度に基づいて変形領域を特定する。
【0088】
図7を用いて説明したように、特定機能34bは、位置「x1」から位置「x2」までの間を変形領域として特定する。また、出力機能34dは、カラー画像等に対応付けて、変形領域をディスプレイ32に表示させる。これにより、出力機能34dは、位置「x1」から位置「x2」までの間が変形領域であり、変形領域におけるCT-FFRが、Wire-FFRとは異なり得ることを操作者に知らせることができる。
【0089】
次に、
図8を用いて、変形領域の特定の別の例を説明する。なお、
図8は、第2の実施形態に係る変形領域の特定について説明するための図である。
図8において、縦軸はFFRの値を示し、横軸は芯線に沿った位置を示す。
【0090】
図8に示すCT-FFR’は、算出機能34cが、プレッシャーワイヤが挿入されることで生じる血管形状の変形を推定し、推定した変形後の血管形状に基づいて算出したFFRを示す。例えば、算出機能34cは、まず、血管構造情報とプレッシャーワイヤの構造情報とに基づいて、CT画像データから抽出された血管形状を、プレッシャーワイヤの形状に沿って蛇行の程度が小さくなる(曲率が減少する)ように変形する。そして、算出機能34cは、変形後の血管形状に基づいて、CT-FFR’を算出する。即ち、CT-FFR’は、デバイスが挿入された状態の血管における流体指標の一例である。一方で、
図8に示すCT-FFRは、デバイスが挿入されていない状態の血管における流体指標の一例である。
【0091】
図8において、対象領域LADの入口に近い位置「x0」から位置「x1」までの間、CT-FFRとCT-FFR’とは、同程度の値を示している。即ち、位置「x0」から位置「x1」までの間、CT-FFRとCT-FFR’との差(以下、ΔFFRと記載する)は、小さな値となる。これは、位置「x0」から位置「x1」までの間の蛇行の程度が小さく、CT-FFR’を算出する際、プレッシャーワイヤが挿入されても血管形状の変形がほとんど生じないと推定されたことを示す。
【0092】
一方で、位置「x1」から位置「x2」までの間、ΔFFRは次第に増加している。これは、位置「x1」から位置「x2」までの間の蛇行の程度が大きく、CT-FFR’を算出する際、プレッシャーワイヤが挿入されることで血管形状の変形が生じると推定されたことを示す。従って、特定機能34bは、位置「x1」から位置「x2」までの間の蛇行の程度が大きくなるように、各領域の蛇行の程度を求めることができる。そして、特定機能34bは、蛇行の程度に基づいて変形領域を特定する。例えば、特定機能34bは、蛇行の程度に基づいて、プレッシャーワイヤが挿入された場合に、血管形状データの各位置において蛇行の程度が変化するか否かを判定し、蛇行の程度が変化すると判定した位置の集合(例えば、位置「x1」から位置「x2」までの間)を、変形領域として特定する。
【0093】
また、位置「x2」から位置「x3」までの間、ΔFFRは大きな値となっている。これは、蛇行する位置「x1」から位置「x2」までの間において生じたΔFFRが下流に残存したものであり、必ずしも位置「x2」から位置「x3」までの間が蛇行していることを示すものではない。
【0094】
図8を用いて説明したように、特定機能34bは、位置「x0」から位置「x3」までの間のうち、位置「x1」から位置「x2」までの間を変形領域として特定する。また、出力機能34dは、カラー画像等に対応付けて、変形領域をディスプレイ32に表示させる。例えば、出力機能34dは、CT画像データに対してカラーテーブルに従ってCT-FFRを反映させることにより、CT-FFRの分布を示したカラー画像を生成し、生成したカラー画像と変形領域とを対応付けて表示させる。
【0095】
例えば、出力機能34dは、CT画像データに対してカラーテーブルに従ってCT-FFRの値を反映させたカラー画像であって、変形領域を所定の色としたカラー画像を表示させる。一例を挙げると、出力機能34dは、
図9に示すように、変形領域として特定した位置「x1」から位置「x2」までの間を黒色としたカラー画像を表示させる。なお、
図9は、第2の実施形態に係るカラー画像及び変形領域の表示の一例を示す図である。ここで、出力機能34dは、入力インターフェース31を介して操作者からの指示を受け付けることにより、変形領域を所定の色としたカラー画像と、変形領域にCT-FFRの値を反映させたカラー画像との表示を切り替えることとしてもよい。
【0096】
これにより、出力機能34dは、位置「x1」から位置「x2」までの間が変形領域であり、変形領域におけるCT-FFRが、Wire-FFRとは異なり得ることを操作者に知らせることができる。そして、操作者は、変形領域以外の領域のCT-FFR(Wire-FFRとの相関が高いCT-FFR)に基づいて治療計画を立てたり、Wire-FFRと差があることを考慮しつつ変形領域のCT-FFRに基づいて治療計画を立てたり、追加的にWire-FFRの計測を行なったりすることができる。
【0097】
また、例えば、出力機能34dは、CT画像データに対してカラーテーブルに従ってCT-FFR’を反映させることにより、CT-FFR’の分布を示したカラー画像を生成し、生成したカラー画像と変形領域とを対応付けて表示させる。即ち、出力機能34dは、デバイスが挿入された状態の血管における流体指標に対応付けて、変形領域を表示させる。これにより、出力機能34dは、位置「x1」から位置「x2」までの間が変形領域であり、変形領域におけるCT-FFR’が、CT-FFRと異なることを操作者に知らせることができる。そして、操作者は、変形領域以外の領域のCT-FFR’(CT-FFRとの相関が高いCT-FFR’)に基づいて治療計画を立てたり、CT-FFRと差があることを考慮しつつ変形領域のCT-FFR’に基づいて治療計画を立てたり、追加的にWire-FFRの計測を行なったりすることができる。
【0098】
なお、位置「x2」から位置「x3」までの間は、蛇行はしていないとしても、CT-FFRとWire-FFRとが乖離し得る点では変形領域と同様である。従って、出力機能34dは、位置「x2」から位置「x3」までの間を、変形領域と同様に表示することとしてもよい。例えば、特定機能34bは、位置「x0」から位置「x3」までの間のうち、位置「x1」から位置「x3」までの間を、血流指標の変化を生じる領域として特定する。即ち、特定機能34bは、LADにおいて位置「x1」よりも下流の領域を、血流指標の変化を生じる領域として特定する。そして、出力機能34dは、
図10に示すように、位置「x1」から位置「x3」までの間(LADにおいて位置「x1」よりも下流の領域)を黒色としたカラー画像を表示させる。即ち、出力機能34dは、冠動脈における、血流指標の変化を生じる領域を出力する。なお、
図10は、第2の実施形態に係るカラー画像及び変形領域の表示の一例を示す図である。この場合、出力機能34dは、位置「x1」から位置「x3」までの間におけるCT-FFRがWire-FFRとは異なり得ることを操作者に知らせることができる。あるいは、出力機能34dは、位置「x1」から位置「x3」までの間におけるCT-FFR’がCT-FFRと異なることを操作者に知らせることができる。
【0099】
なお、
図10に示す位置「x1」よりも下流の領域は、変形領域に起因して血流指標の変化が生じた領域である。しかしながら、血流指標の変化を生じる領域は、変形領域に起因することなく生じる場合もある。例えば、Wire-FFRを測定する際には、血管形状の変化が生じない場合でも、血管内に挿入されたプレッシャーワイヤが血流を阻害することによって、血流指標が変化する場合がある。一例を挙げると、血管内にプレッシャーワイヤが挿入されることによって、血管内断面積は、プレッシャーワイヤの断面積の分だけ減少する。そして、血流がプレッシャーワイヤの影響を受けることで、CT-FFRとWire-FFRとに差が生じる場合がある。
【0100】
そこで、特定機能34bは、変形領域に起因するか否かに関わらず、血流指標の変化が生じる領域を特定してもよい。例えば、特定機能34bは、血管構造情報とプレッシャーワイヤの構造情報とに基づいて流体シミュレーションを実行することにより、血管内の血流がプレッシャーワイヤから受ける影響を推定する。一例を挙げると、特定機能34bは、血管内にプレッシャーワイヤが挿入されていない状態での流体シミュレーションと、血管内にプレッシャーワイヤが挿入された状態での流体シミュレーションとを実行し、これら2つのシミュレーション結果の間で不一致が生じた個所を、血流指標の変化が生じる領域として特定する。そして、出力機能34dは、血流指標の変化を生じる領域を出力する。
【0101】
次に、
図11を用いて、変形領域の特定の別の例を説明する。
図11は、第2の実施形態に係る変形領域の特定について説明するための図である。
図11における縦軸は、
図8に示したCT-FFRとCT-FFR’との差であるΔFFRを示す。また、
図11において、横軸は芯線に沿った位置を示す。
【0102】
図11において、ΔFFRは、位置「x0」から位置「x1」までの間は小さな値で略一定となっている。即ち、位置「x0」から位置「x1」までの間、ΔFFRの位置間の変化量は略0となっている。これは、位置「x0」から位置「x1」までの間の蛇行の程度が小さく、CT-FFR’を算出する際、プレッシャーワイヤが挿入されても血管形状の変形がほとんど生じないと推定されたことを示す。
【0103】
一方で、位置「x1」から位置「x2」までの間、ΔFFRは次第に増加している。即ち、位置「x1」から位置「x2」までの間、ΔFFRの位置間の変化量は大きな値となっている。これは、位置「x1」から位置「x2」までの間の蛇行の程度が大きく、CT-FFR’を算出する際、プレッシャーワイヤが挿入されることで血管形状の変形が生じると推定されたことを示す。従って、特定機能34bは、位置「x1」から位置「x2」までの間の蛇行の程度が大きくなるように、各領域の蛇行の程度を求めることができる。そして、特定機能34bは、蛇行の程度に基づいて変形領域を特定する。例えば、特定機能34bは、蛇行の程度に基づいて、プレッシャーワイヤが挿入された場合に、血管形状データの各位置において蛇行の程度が変化するか否かを判定し、蛇行の程度が変化すると判定した位置の集合(例えば、位置「x1」から位置「x2」までの間)を、変形領域として特定する。
【0104】
また、位置「x2」から位置「x3」までの間、ΔFFRは大きな値で略一定となっている。即ち、位置「x2」から位置「x3」までの間、ΔFFRの位置間の変化量は略0となっている。これは、位置「x2」から位置「x3」までの間の蛇行の程度が小さく、CT-FFR’を算出する際、プレッシャーワイヤが挿入されても血管形状の変形がほとんど生じないと推定されたことを示す。
【0105】
図11を用いて説明したように、特定機能34bは、位置「x1」から位置「x2」までの間を変形領域として特定する。また、出力機能34dは、カラー画像等に対応付けて、変形領域をディスプレイ32に表示させる。これにより、出力機能34dは、位置「x1」から位置「x2」までの間が変形領域であり、変形領域におけるCT-FFRがWire-FFRとは異なり得ることを操作者に知らせることができる。あるいは、出力機能34dは、位置「x1」から位置「x2」までの間が変形領域であり、変形領域におけるCT-FFR’がCT-FFRと異なることを操作者に知らせることができる。
【0106】
(第3の実施形態)
上述した第1~第2の実施形態では、CT画像データに基づいて算出された流体指標に対応付けて、変形領域を表示させる場合について説明した。これに対し、第3の実施形態では、プレッシャーワイヤを用いて計測された流体指標に対応付けて、変形領域を表示させる場合について説明する。
【0107】
第3の実施形態に係る医用情報処理装置30は、
図1に示した第1の実施形態に係る医用情報処理装置30と同様の構成を有し、出力機能34dによる処理の一部が相違する。
また、第3の実施形態に係る医用情報処理システム1は、X線CT装置100に代えて、又はX線CT装置100に加えて、X線診断装置200を有する。なお、X線診断装置200は、医用画像診断装置10の一例である。第1の実施形態において説明した構成と同様の構成を有する点については、
図1と同一の符号を付し、説明を省略する。
【0108】
例えば、X線診断装置200は、造影剤が注入された状態の被検体Pに対する回転撮影を実行し、回転撮影によって収集した投影データから3次元X線画像データ(ボリュームデータ)を再構成する。なお、3次元X線画像データは、被検体Pの血管が描出された医用画像データの一例である。そして、X線診断装置200は、3次元X線画像データを画像保管装置20及び医用情報処理装置30に送信する。
【0109】
次に、取得機能34aは、X線診断装置200又は画像保管装置20から、3次元X線画像データを取得する。また、特定機能34bは、3次元X線画像データから血管形状を抽出し、抽出した血管形状から変形領域を特定する。例えば、特定機能34bは、血管形状における曲率や捩率等の血管構造情報に基づいて蛇行の程度を取得し、蛇行の程度に基づいて、変形領域を特定する。
【0110】
また、X線診断装置200は、流体指標の計測を補助する。例えば、X線診断装置200は、操作者が被検体Pの血管内にプレッシャーワイヤを挿入している間、プレッシャーワイヤを含んだX線画像データを経時的に収集し、収集したX線画像データを順次表示する。なお、収集と並行して順次表示されるX線画像については、透視画像とも記載する。そして、操作者は、透視画像を参照しながら、プレッシャーワイヤを被検体Pの血管内において操作し、任意の位置の圧力、Wire-FFR等を計測することができる。なお、3次元X線画像データの収集及び変形領域の特定と、流体指標の計測とを行なう順序は任意である。また、以下では、流体指標としてWire-FFRが計測された場合について説明する。
【0111】
次に、出力機能34dは、計測されたWire-FFRを取得する。例えば、出力機能34dは、被検体Pの血管の複数の位置において計測された複数のWire-FFRと、各Wire-FFRが計測された位置を示す位置情報とを取得する。一例を挙げると、出力機能34dは、被検体PのLADの入口の境界から出口の境界まで所定の位置ごとに計測された複数のWire-FFRと、各Wire-FFRが計測された位置を示す位置情報とを取得する。
【0112】
なお、Wire-FFRが計測された位置を示す位置情報とは、例えば、血管におけるランドマーク(血管の入口、分岐点等)からの距離である。例えば、まず、先端に圧力計を備えるプレッシャーワイヤが被検体Pの血管内に挿入され、プレッシャーワイヤの先端がLAD入口に位置する状態で圧力「P0」が計測される。なお、以下では、LAD入口におけるWire-FFRが「1」であるものとして説明する。この場合、出力機能34dは、例えば、Wire-FFR「1」が計測された位置を示す位置情報として、LAD入口からの距離「0」を取得する。
【0113】
次に、プレッシャーワイヤの先端がLAD入口から距離「L1」に位置する状態で、圧力「P1」が計測される。なお、距離「L1」は、圧力「P0」を計測した後、プレッシャーワイヤを更に送り込んだ長さに対応する。この場合、出力機能34dは、例えば、Wire-FFR「P1/P0」が計測された位置を示す位置情報として、LAD入口からの距離「L1」を取得する。同様に、出力機能34dは、LADにおける複数の位置ごとに計測された複数のWire-FFRのそれぞれについて、位置情報として、LAD入口からの距離を取得する。
【0114】
次に、出力機能34dは、取得した位置情報と、3次元X線画像データとの位置合わせを行なう。例えば、出力機能34dは、まず、3次元X線画像データから抽出された血管形状においてLADの入口の位置を特定する。次に、出力機能34dは、特定した位置からの芯線に沿った距離が、位置情報として取得したLAD入口からの距離と同じになるようにすることで、位置情報が示す位置を血管形状において特定する、これにより、出力機能34dは、Wire-FFRが計測された位置を、3次元X線画像データから抽出された血管形状において特定し、変形領域と対応付けることができる。
【0115】
そして、出力機能34dは、Wire-FFRに対応付けて、変形領域をディスプレイ32に表示させる。例えば、出力機能34dは、LADの各位置において計測されたWire-FFRを縦軸とし、Wire-FFRが計測された位置(LAD入口からの距離等)を横軸としたグラフを生成し、生成したグラフの横軸に対応付けて変形領域を表示させる。また、例えば、出力機能34dは、3次元X線画像データに対して、カラーテーブルに従ってWire-FFRの値を反映させることによりカラー画像を生成し、カラー画像上に変形領域を示す図形等を表示させる。また、例えば、出力機能34dは、3次元X線画像データから表示用のX線画像を生成し、生成したX線画像を表示させるとともに、X線画像上にWire-FFRの値及び変形領域を示す図形等を表示させる。
【0116】
ここで、Wire-FFRは、同じ位置のCT-FFRよりも小さくなる場合が多い。換言すると、蛇行する血管において、Wire-FFRは、CT-FFRよりも楽観的な結果を示す場合が多い。そして、Wire-FFRのみを用いる場合、治療が必要な血管の手術を見送ってしまう可能性がある。これに対し、出力機能34dは、変形領域を表示することにより、変形領域におけるWire-FFRが、CT-FFRとは異なり得ることを操作者に知らせることができる。そして、操作者は、変形領域以外の領域のWire-FFR(CT-FFRとの相関が高いWire-FFR)に基づいて治療計画を立てたり、CT-FFRと差があることを考慮しつつ変形領域のWire-FFRに基づいて治療計画を立てたり、追加的にCTスキャン及びCT-FFRの算出を行なわせたりすることができる。
【0117】
(第4の実施形態)
さて、これまで第1~第3の実施形態について説明したが、上述した実施形態以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0118】
上述した実施形態では、血管構造情報、又は、流体指標に基づいて変形領域を特定する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、特定機能34bは、機械学習により変形領域を特定してもよい。
【0119】
例えば、特定機能34bは、学習データとして、CT画像データから抽出された血管形状と、CT-FFRと、Wire-FFRとの組み合わせを多数取得する。次に、特定機能34bは、CT-FFRとWire-FFRとの差(乖離)が閾値よりも大きくなるか否かに応じて、血管形状から変形領域を特定する。次に、特定機能34bは、血管形状のうち、変形領域における各位置と、変形領域以外の領域における各位置とのそれぞれについて、変形の程度を学習する。そして、特定機能34bは、新たにCT画像データから抽出した血管形状の各領域の変形の程度について、学習結果に基づいて変形領域に相当するか否かを判定することにより、変形領域を特定する。
【0120】
別の例を挙げると、特定機能34bは、プレッシャーワイヤが挿入されていない状態で収集されたCT画像データI1と、プレッシャーワイヤが挿入された状態で収集されたCT画像データI2との組み合わせを多数取得する。次に、特定機能34bは、学習データとして、CT画像データI1から抽出された血管形状B1と、CT画像データI2から抽出された血管形状B2との組み合わせを多数取得する。そして、特定機能34bは、これら複数の学習データを用いて、プレッシャーワイヤを挿入することでCT画像データI1上に生じる血管形状の変化を学習する。例えば、特定機能34bは、機械学習を実行することにより、CT画像データI1から抽出された血管形状B1の入力を受けて、プレッシャーワイヤが挿入された状態で収集されるCT画像データI2の血管形状B2を推定するように機能付けられた学習済みモデルM1を生成する。
【0121】
学習済みモデルM1は、例えば、ニューラルネットワーク(Neural Network)により構成することができる。ニューラルネットワークとは、層状に並べた隣接層間が結合した構造を有し、情報が入力層側から出力層側に伝播するネットワークである。例えば、特定機能34bは、血管形状B1を入力側データとしてニューラルネットワークに入力する。ここで、ニューラルネットワークにおいては、入力層側から出力層側に向かって一方向に、隣接層間でのみ結合しながら情報が伝播する。そして、ニューラルネットワークは、血管形状B1を変化させた血管形状B1’を出力する。
【0122】
例えば、特定機能34bは、複数の学習データを用いて、多層のニューラルネットワークについて深層学習(ディープラーニング)を実行することで、学習済みモデルM1を生成する。なお、多層のニューラルネットワークは、例えば、入力層と、複数の中間層(隠れ層)と、出力層とにより構成される。
【0123】
例えば、特定機能34bは、血管形状B1を入力した際にニューラルネットワークが好ましい結果を出力することができるように、ニューラルネットワークのパラメータを調整する。例えば、特定機能34bは、血管形状B1を入力した際にニューラルネットワークから出力される血管形状B1’と、出力側データ(血管形状B2)との近さを表す関数(誤差関数)を用いて、ニューラルネットワークのパラメータを調整する。一例を挙げると、特定機能34bは、パラメータを変化させながら誤差関数を繰り返し算出して、誤差関数が極小となるようにパラメータを調整する。即ち、特定機能34bは、誤差関数が極小となるように、ニューラルネットワークを学習させる。これにより、特定機能34bは、血管形状B1の入力を受けて血管形状B2を推定するように機能付けられた学習済みモデルM1を生成することができる。
【0124】
学習済みモデルM1を生成した後、CT画像データI1が新たに収集された場合、特定機能34bは、CT画像データI1から血管形状B1を抽出し、抽出した血管形状B1を学習済みモデルM1に入力する。これにより、特定機能34bは、プレッシャーワイヤが挿入された状態で収集されるCT画像データI2の血管形状B2を推定した、血管形状B1’を取得することができる。そして、特定機能34bは、血管形状B1と血管形状B1’との間で不整合が生じている箇所を、プレッシャーワイヤの挿入により血管形状の変化を生じる変形領域として特定することができる。
【0125】
別の例を挙げると、特定機能34bは、学習データとして、CT画像データI1から抽出された血管形状B1と、CT画像データI1上で特定された変形領域との組み合わせを多数取得する。一例を挙げると、特定機能34bは、CT画像データI1上で特定された変形領域として、血管形状B1に対して変形領域がラベル付けされたラベル付き血管形状B3を取得する。なお、ラベル付き血管形状B3については、特定機能34bが自動生成してもよいし、操作者がマニュアルで作成してもよい。
【0126】
そして、特定機能34bは、これら複数の学習データを用いて、プレッシャーワイヤを挿入することでCT画像データI1上に生じる血管形状の変化を学習する。例えば、特定機能34bは、機械学習を実行することにより、CT画像データI1から抽出された血管形状B1の入力を受けて変形領域を推定するように機能付けられた学習済みモデルM2を生成する。
【0127】
学習済みモデルM2は、例えば、ニューラルネットワークにより構成することができる。例えば、特定機能34bは、血管形状B1を入力した際にニューラルネットワークから出力される変形領域と、出力側データ(ラベル付き血管形状B3)が示す変形領域との近さを表す誤差関数を用いて、ニューラルネットワークのパラメータを調整する。これにより、特定機能34bは、血管形状B1の入力を受けて変形領域を推定するように機能付けられた学習済みモデルM2を生成することができる。
【0128】
学習済みモデルM2を生成した後、CT画像データI1が新たに収集された場合、特定機能34bは、CT画像データI1から血管形状B1を抽出し、抽出した血管形状B1を学習済みモデルM2に入力する。これにより、特定機能34bは、プレッシャーワイヤの挿入により血管形状の変化を生じる変形領域を特定することができる。
【0129】
なお、機械学習によって変形領域を特定する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、特定機能34bは、機械学習により、プレッシャーワイヤの挿入により流体指標の変化を生じる領域を特定することができる。
【0130】
例えば、特定機能34bは、CT画像データI1から抽出した血管形状B1及びプレッシャーワイヤの構造情報を入力側データとして取得する。また、特定機能34bは、CT画像データI1上で特定された、流体指標の変化を生じる領域を出力側データとして取得する。次に、特定機能34bは、これら入力側データ及び出力側データの組み合わせから成る複数の学習データを用いた機械学習を実行することにより、血管形状B1の入力を受けて、流体指標の変化を生じる領域を推定するように機能付けられた学習済みモデルM3を生成する。
【0131】
また、学習済みモデルM3を生成した後、CT画像データI1が新たに収集された場合、特定機能34bは、CT画像データI1から血管形状B1を抽出し、抽出した血管形状B1を学習済みモデルM3に入力する。これにより、特定機能34bは、プレッシャーワイヤの挿入により流体指標の変化を生じる領域を特定することができる。
【0132】
また、上述した実施形態では、出力機能34dが、変形領域をディスプレイ32に表示させる場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力機能34dは、特定機能34bにより特定された変形領域を、医用情報処理装置30とネットワークを介して接続された外部装置に出力する場合であってもよい。この場合、外部装置は、出力機能34dにより出力された変形領域を、外部装置が有するディスプレイに表示させることができる。即ち、医用情報処理装置30は、外部装置の操作者に対し、流体指標の信頼性を示す情報を提供することができる。
【0133】
また、上述した実施形態では、算出機能34cが流体指標を算出する場合について説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、出力機能34dは、外部装置において算出された流体指標を、ネットワークを介して取得し、取得した流体指標に対応付けて変形領域を出力してもよい。この場合、処理回路34は、算出機能34cを有しないこととしてもよい。
【0134】
また、上述した実施形態では、出力機能34dが、流体指標に対応付けて変形領域を出力する場合について説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。即ち、出力機能34dは、流体指標に対応付けずに変形領域を出力してもよい。また、この場合、処理回路34は、算出機能34cを有しないこととしてもよい。
【0135】
例えば、出力機能34dは、CT画像データに基づいてボリュームレンダリング画像等の表示画像を生成し、生成した表示画像をディスプレイ32に表示させるとともに、表示画像上に変形領域を示す図形等を表示させる。この場合、医用情報処理装置30は、変形領域においては、デバイスが挿入された状態の血管における流体指標(Wire-FFR等)と、デバイスが挿入されていない状態の血管における流体指標(CT-FFR等)とが異なり得ることを操作者に知らせることができる。そして、操作者は、例えば、治療計画を立てるに当たって、Wire-FFRとCT-FFRとの双方を用いる、流体指標の重みを減らす等の判断をすることができる。
【0136】
また、上述した実施形態では、血管内に挿入されるデバイスの一例として、プレッシャーワイヤについて説明したが、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、特定機能34bは、血管内にステントが挿入されることで変形を生じる変形領域を特定することとしてもよい。この場合、医用情報処理装置30は、変形領域においては、デバイスが挿入されていない状態の血管における流体指標(ステント留置前の流体指標)と、デバイスが挿入された状態の血管における流体指標(ステント留置後の流体指標)とが異なり得ることを操作者に知らせることができる。
【0137】
例えば、まず、医用画像診断装置10は、ステント留置前の被検体Pから医用画像データを収集する。次に、特定機能34bは、医用画像データから血管形状を抽出し、抽出した血管形状から変形領域を特定する。また、算出機能34cは、血管形状に基づいて流体解析を実行することにより、被検体Pの血管における流体指標を算出する。次に、出力機能34dは、流体指標に対応付けて、変形領域をディスプレイ32に表示させる。
【0138】
ここで、操作者は、ステント留置前の流体指標に基づいて、ステント留置術を含む治療計画を立てることができる。また、操作者は、変形領域においては、ステント留置前の流体指標と、ステント留置後の流体指標とが異なり得ること知ることができる。例えば、ステント留置前の流体指標が変形領域において厳しい結果を示す場合、操作者は、ステント留置術の他に追加の治療が必要になる可能性を考慮しつつも、ステント留置後の流体指標も同様の結果を示すとは限らないことを知ることができる。そこで、医用画像診断装置10は、ステント留置術の後、医用画像データを再度収集し、算出機能34cは、流体指標を再度算出する。そして、操作者は、ステント留置後の流体指標に基づいて、追加の治療の要否等の治療計画を立てることができる。
【0139】
また、上述した実施形態では、医用情報処理装置30における処理回路34が、取得機能34a、特定機能34b、算出機能34c及び出力機能34dを有するものとして説明した。しかしながら、実施形態はこれに限定されるものではない。例えば、医用画像診断装置10における処理回路が、取得機能34a、特定機能34b、算出機能34c及び出力機能34dに対応した機能を有する場合であってもよい。
【0140】
例えば、X線CT装置100における処理回路144は、
図12に示すように、特定機能34bに対応する特定機能144d、及び、算出機能34cに対応する算出機能144eを更に有する。なお、
図12は、第4の実施形態に係るX線CT装置100の構成の一例を示すブロック図である。
【0141】
図12に示す場合、まず、収集機能144aは、被検体Pの血管が描出されたCT画像データを収集する。次に、特定機能144dは、CT画像データから血管形状を抽出し、抽出した血管形状から変形領域を特定する。また、算出機能144eは、被検体Pの血管における流体指標を算出する。そして、出力機能144bは、流体指標に対応付けて変形領域を出力する。例えば、出力機能144bは、被検体Pの血管における流体指標の分布を示した画像データと、変形領域とを対応付けて、ディスプレイ142に表示させる。なお、出力機能144bは、外部装置において算出された流体指標を取得し、取得した流体指標に対応付けて、変形領域を出力してもよい。また、出力機能144bは、流体指標に対応付けずに変形領域を出力してもよい。この場合、処理回路144は、算出機能144eを有しないこととしてもよい。
【0142】
なお、処理回路34や処理回路144は、ネットワークを介して接続された外部装置のプロセッサを利用して、機能を実現することとしてもよい。例えば、処理回路34は、メモリ33から各機能に対応するプログラムを読み出して実行するとともに、医用情報処理装置30とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)を計算資源として利用することにより、取得機能34a、特定機能34b、算出機能34c及び出力機能34dを実現する。一例を挙げると、処理回路34は、医用画像データから血管形状を抽出する処理や血管形状から変形領域を特定する処理をクラウド上で実行させることにより、特定機能34bを実現する。
【0143】
上述した実施形態に係る各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。即ち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。更に、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0144】
また、上述した実施形態で説明した処理方法は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することによって実現することができる。このプログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することもできる。
【0145】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、流体指標の信頼性を示す情報を提供することができる。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0147】
1 医用情報処理システム
30 医用情報処理装置
34 処理回路
34a 取得機能
34b 特定機能
34c 算出機能
34d 出力機能