(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】液晶媒体
(51)【国際特許分類】
C09K 19/30 20060101AFI20221018BHJP
C09K 19/42 20060101ALI20221018BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20221018BHJP
C09K 19/20 20060101ALI20221018BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20221018BHJP
C09K 19/14 20060101ALI20221018BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20221018BHJP
C09K 19/16 20060101ALI20221018BHJP
C09K 19/18 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C09K19/30
C09K19/42
C09K19/34
C09K19/20
C09K19/12
C09K19/14
G02F1/13 500
G02F1/13 505
C09K19/16
C09K19/18
(21)【出願番号】P 2018521562
(86)(22)【出願日】2016-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2016001647
(87)【国際公開番号】W WO2017071790
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-02
(31)【優先権主張番号】102015013822.7
(32)【優先日】2015-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593033142
【氏名又は名称】メルク・パテント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250, 64293 Darmstadt
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ヴィテク
(72)【発明者】
【氏名】ダークマー クラス
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-510112(JP,A)
【文献】特開2007-186703(JP,A)
【文献】特開2008-156642(JP,A)
【文献】特開2013-250369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00 - 19/60
G02F 1/13
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基礎とする液晶媒体において、前記媒体は、式I-1~I-5
【化1】
[式中、
R
1は、1~15のC原子を有するアルキル基またはアルコキシ基を意味し、前記基中で、1以上のH原子はFに置き換えられていてもよく、かつ1以上のCH
2基は、それぞれ互いに無関係に、
【化2】
-C≡C-、-CH=CH-、-O-、-CO-O-、または-O-CO-に、O原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよく、
L
11、L
12、L
13およびL
14は、互いに無関係に、HまたはFを意味し、
X
1は、F、Cl、CN、6までのC原子を有するハロゲン化されたアルキル基、ハロゲン化されたアルケニル基、ハロゲン化されたアルコキシ基、またはハロゲン化されたアルケニルオキシ基を意味する]
の化合物の群から選択される1以上の化合物を≧40%の全体濃度で含み、
且つ、
前記媒体は、式II-1~II-14
【化3-1】
【化3-2】
【化3-3】
[式中、
R
2
は、1~7のC原子を有するアルキル基を意味し、
L
21
およびL
22
は、互いに無関係に、HまたはFを意味し、
X
2
は、F、Cl、CN、6までのC原子を有するハロゲン化されたアルキル基、またはハロゲン化されたアルコキシ基を意味する]
の化合物の群から選択される1以上の化合物を18%~50%の全体濃度で含み、
前記媒体は、さらに、式IV-8及び/又は式IV-11
【化4】
式中、
R
41
およびR
42
は、互いに無関係に、1~7のC原子を有するn-アルキルを意味し、かつ
L
4
は、HまたはFを意味する、
で示される化合物の少なくとも1つを6~13%の濃度範囲で含み、
更に120℃を超える透明点を有することを特徴とする、液晶媒体。
【請求項2】
前記媒体は、さらに、式IAおよびIB
【化5】
[式中、R
1、L
11、L
12、およびX
1は、請求項1において述べた意味を有し、かつL
13およびL
14は、L
11について述べた意味を有し、A
11およびA
12は、シクロヘキサン環を意味する]
の化合物の群から選択される1以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1
記載の媒体。
【請求項3】
前記媒体は、さらに、式III-1~III-9
【化6-1】
【化6-2】
[式中、
R
3は、請求項2においてR
2について述べた意味を有し、
L
31、L
32は、HまたはFを意味し、
X
3は、F、Cl、6までのC原子を有するハロゲン化されたアルキル基、またはハロゲン化されたアルコキシ基を意味する]
の化合物の群から選択される1以上の化合物を含むことを特徴とする、請求項1
または2記載の媒体。
【請求項4】
前記媒体は、さらに、式IV-1、式IV-2、式IV-3、式IV-4、式IV-5および式IV-6
【化7】
式中、
R
41およびR
42は、互いに無関係に、1~7のC原子を有するn-アルキルを意味し、かつ
L
4は、HまたはFを意味する、
から選択される化合物の少なくとも1つを5~18%の濃度範囲で含むことを特徴とする、請求項1記載の媒体。
【請求項5】
前記媒体は、さらに、式IV-5で示される化合物の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項
4記載の媒体。
【請求項6】
請求項1から
5までのいずれか1項記載の液晶媒体の、電気光学目的のための使用。
【請求項7】
自動車用の照明装置のための液晶光バルブまたは液晶表示装置中での請求項
6記載の使用。
【請求項8】
請求項1から
5までのいずれか1項記載の液晶媒体を含む電気光学部品。
【請求項9】
前記部品は液晶光バルブであることを特徴とする、請求項
8記載の電気光学部品。
【請求項10】
請求項
9記載の液晶光バルブを含む、自動車用の照明装置。
【請求項11】
請求項
9記載の液晶光バルブを含む液晶表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体、およびその電気光学目的のための、ことに自動車用の照明装置内で使用するための液晶光バルブのための使用、この媒体を含む液晶光バルブ、およびこの液晶光バルブを基礎とする照明装置に関する。
【0002】
液晶は、とりわけ、表示装置内で誘電体として使用される、というのもこのような物質の光学特性は、印加電圧により影響を受けることができるためである。液晶に基づく電気光学装置は、当業者にとってじつによく知られており、かつ多様な効果に基づくことができる。この種の装置は、例えばねじれネマティック(「twisted nematic」)構造を有するTNセル、またはSTNセル(「super-twisted nematic」)である。現代のTNディスプレイおよびSTNディスプレイは、カラー画像を加色により生成するための組込式の赤色、緑色および青色カラーフィルタを備えた、個別にアドレス指定可能な液晶光バルブ(画素)のアクティブマトリックスに基づく。
【0003】
液晶表示装置中に利用される電気光学効果は、最近では、他の用途のためにも使用されている。独国特許出願公開第19910004号明細書(DE 19910004 A1)には、自動車用の照明装置の輝度分布の任意の構成のためのブラインドとしてのLCDスクリーンが記載されていて、それにより、輝度分布は運転状況に柔軟に適合されるべきである。
【0004】
このような自動車用の適応照明装置(英語:adaptive front lighting system(アダプティブフロントライティングシステム)、AFS)は、その都度の状況および環境条件に適合したヘッドライト光を生成し、かつ周囲を一定にかつ最適に照らし、かつ他の道路利用者の妨げにならないために、例えば光の状況および天気の状況、車両の動きまたは他の道路利用者の存在に反応することができる。米国特許第4,985,816号明細書(US 4,985,816)には、例えば液晶表示装置の画素に類似する光透過性エレメントのスクリーンからなる液晶表示(LCD)プレートの形の空間光変調器が、対向する車両のドライバーを眩惑させないかまたは余り眩惑させない目的で、光円錐の電気的に切り替え可能な完全なまたは部分的なシェーディングを形成する部材が開示されている。このような空間光変調器は、既に述べたように、液晶光バルブともいわれる。プロジェクタの場合と同じような機能様式に基づき、プロジェクタ型の車両照明についても述べられている。光円錐の制御されたシェーディングのための画像情報を、この場合、好ましくはデジタルカメラが供給する。
【0005】
本発明の主旨の液晶光バルブは、光の変調のための唯一の面を含むか、または液晶表示装置の画素(英語で「Pixel」)に相当する、多数の同じまたは異なる部分面のスクリーン(マトリックス)を含むことができる。したがって、液晶光バルブのスクリーンは、単色のマトリックス液晶表示装置の特殊な場合であるか、またはそのマトリックス液晶表示装置の一部と見なすことができる。
本発明の主旨の照明装置は、ことにAFSまたはAFSの一部である。本発明の主旨の照明装置は、ことに、車両または自動車の前方の領域を照らすために用いられる。
【0006】
本発明の主旨の自動車は、ことに道路交通において個々に利用可能な陸上車両である。本発明の主旨の自動車は、ことに内燃機関を備えた陸上車両に限定されない。
【0007】
上述の米国特許第4,985,816号明細書(US 4,985,816)に開示された液晶光バルブの場合に、TNセルは光学的変調エレメントとして利用され、この光学的変調エレメントは自動車照明の所望な輝度プロフィールに対応する画素であり、この場合、例えば画素の透過率の変調(制御)のためにTN液晶に制御電圧を印加する。ここで必要な偏光子のために、光源の光のほぼ半分が利用可能であるだけである。同様にTNセルを基礎として、照明装置の光源の光の半分より多くを利用可能にする代替案は、独国特許出願公開第102013113807号明細書(DE 10 2013 113 807 A1)に開示されている。ここでは、光は、偏光ビームスプリッターを用いて、互いに垂直の偏光面を有する2つの部分放射に分けられ、かつ互いに別々に切り替え可能な、2つの別個の液晶エレメントを透過するように変向される。
【0008】
このような照明装置は、典型的に60~80℃の比較的高い動作温度により特徴付けられ、このことは、使用される液晶媒体に特別な要求を課す:澄明点は120℃より高く、好ましくは140℃より高くなければならず、かつ強い光負荷のためにこの媒体は特に高い光安定性を有しなければならない。これは、場合によっては、例えばできる限り低い複屈折を有する材料の使用により支援することができる。さらに、この液晶材料は、良好な化学的および熱的安定性、ならびに電場に対して良好な安定性を有しなければならない。さらに、この液晶材料は、低い粘度を有し、かつセル内での比較的短い応答時間、できる限り低い動作電圧、および高いコントラストを生じることが好ましい。
【0009】
さらに、この液晶材料は、通常の動作温度で、つまり室温の上下にできる限り広い領域で、適切な中間相を有し、例えば上述のセルのために、好ましくは-40℃~150℃で、ネマティックまたはコレステリック中間相を有することが好ましい。液晶は、原則としていくつかの成分の混合物として使用されるため、これらの成分は互いに良好に混合可能であることが重要である。電気伝導率、誘電異方性、および光学異方性のような他の特性は、セルタイプおよび適用分野に応じて異なる要求を満たさなければならない。例えば、ねじれネマティック構造を有するセルのための材料は、正の誘電異方性および低い電気伝導率を有することが好ましい。
【0010】
例えば、個々の画素のスイッチングのために組込型非線形エレメントを備えたマトリックス液晶表示装置(MLC表示装置)内での光バルブのために、大きな正の誘電異方性、広いネマティック相、比較的低い複屈折、極めて高い比抵抗、良好な光安定性および温度安定性、ならびに比較的低い蒸気圧を有する媒体が望ましい。この種のマトリックス液晶表示装置は公知であり、かつこの構造的原理は、本発明による照明装置用にも使用することができる。
【0011】
個々の画素の個別のスイッチングのための非線形エレメントとして、例えば能動素子(つまりトランジスタ)を使用することができる。これは「アクティブマトリックス」と呼ばれ、この場合2つのタイプを区別することができる:
1. 基板としてシリコンウェハ上のMOS(金属酸化物半導体)または他のダイオード。
2. 基板としてガラス板上の薄膜トランジスタ(TFT)。
【0012】
基板材料としての単結晶シリコンの使用は、ディスプレイサイズを制限する、というのも多様な部分ディスプレイのモジュール状の構成は衝撃時に問題を引き起こすためである。
【0013】
好ましいより有望なタイプ2の場合、電気光学効果として通常ではTN効果が使用される。2つの技術が区別される:例えばCdSeのような化合物半導体からなるTFT、または多結晶シリコンもしくはアモルファスシリコンを基礎とするTFT。後者の技術に関しては世界的規模で集中的に取り組まれている。
【0014】
TFTマトリックスは、表示装置の一方のガラスプレートの内側に取り付けられていて、他方のガラスプレートは内側に透明な対向電極を備えている。画素電極のサイズと比べて、TFTは極めて小さく、画像を実際に妨げることはない。
【0015】
照明装置用のこのTFT表示装置および相応する光バルブは、通常では交差した偏光子を備えたTNセルとして透過状態で動作し、かつ背面側から照明されている。
【0016】
MLC表示装置の概念は、ここでは、組込型非線形エレメントを備えたあらゆるマトリックスディスプレイを含み、つまりアクティブマトリックスの他に、バリスタまたはダイオード(MIM=金属-絶縁体-金属)のような受動素子を備えた表示装置も含む。
【0017】
コントラストの角度依存性およびスイッチング時間に関する問題の他に、MLC表示装置の場合、液晶混合物の十分には高くない比抵抗に起因する困難が生じる[TOGASHI, S., SEKOGUCHI, K., TANABE, H., YAMAMOTO, E., SORIMACHI, K., TAJIMA, E., WATANABE, H., SHIMIZU, H., Proc. Eurodisplay 84, Sept. 1984: A 210-288 Matrix LCD Controlled by Double Stage Diode Rings(二段ダイオードリングを用いて制御したマトリックスLCD), p. 141 ff, Paris; STROMER, M., Proc. Eurodisplay 84, Sept. 1984: Design of Thin Film Transistors for Matrix Addressing of Television Liquid Crystal Displays(テレビ用液晶ディスプレーのマトリックスアドレッシングのための薄膜トランジスタのデザイン), p. 145 ff, Paris]。抵抗が低くなるにつれて、MLC表示装置のコントラストは悪化し、かつ「after image elimination(残像除去)」の問題が起こることがある。液晶混合物の比抵抗は、表示装置の内側表面との相互作用により、一般に、MLC表示装置の寿命にわたり低下するため、許容可能な耐用時間を得るために、高い(初期)抵抗が極めて重要である。ことに、低電圧混合物の場合に、極めて高い比抵抗を実現することは今まで不可能であった。さらに、この比抵抗は、温度上昇の際にならびに温度負荷および/または光負荷の後でできる限り低い増加を示すことが重要である。このことは、自動車用の照明装置内での光バルブの使用時にも重要である、というのも液晶はこの照明装置内では極端な温度負荷および光負荷に曝され、かつ低い初期比抵抗および負荷の際の比抵抗の急速な上昇は、原則として低い長期間安定性と相関するためである。
【0018】
先行技術からの混合物の低温特性も特に不利である。低温でも結晶化および/またはスメクチック相が生じることなく、かつ粘度の温度依存性ができる限り低いことが要求される。したがって、先行技術からのMLC表示装置は、照明装置内に適用するための要求を満たしていない。
【0019】
したがって、極めて高い比抵抗と同時に、大きな動作温度範囲および高い光安定性を有する液晶混合物についていまだに大きな需要が存在する。
【0020】
自動車用の照明装置のための液晶光バルブの場合、セル内で次の利点を可能にする媒体が望ましい:
- 拡張されたネマティック相領域(ことに高温に対して)
- 低温でも貯蔵安定性、
- 低温でのスイッチング性
- 光に対して高められた耐久性。
【0021】
先行技術から使用されている媒体を用いて、残りのパラメータを同時に維持しながらこの利点を実現することは不可能である。例えば、公開明細書の独国特許出願公開第10223061号明細書(DE 102 23 061 A1)および独国特許出願公開第102008062858号明細書(DE 10 2008 062858 A1)の液晶媒体は、低いΔnを有するが、澄明点は、本発明の用途にとって低すぎる範囲内の約80℃である。
【0022】
本発明の基礎となる課題は、上述の欠点を有しないかまたはわずかな程度でしか有しない、かつ好ましくは同時に極めて高い澄明点および低い複屈折を有する、ことに自動車用の照明装置のための上述の液晶光バルブ用の媒体を提供することである。
【0023】
この課題は、液晶部材中に本発明による媒体を使用する場合に解決することができることが見出された。
【0024】
したがって、本発明の主題は
a) 式I
【化1】
の1以上の化合物を≧40%の全体濃度で
および任意に
b) 式II
【化2】
の1以上の化合物を含み、式中、
R
1およびR
2は、1~15のC原子を有するアルキル基またはアルコキシ基を意味し、これらの基中で、1以上のH原子はFに置き換えられていてもよく、かつ1以上のCH
2基は、それぞれ互いに無関係に、
【化3】
-C≡C-、-CH=CH-、-O-、-CO-O-または-O-CO-に、O原子が互いに直接結合しないように置き換えられていてもよく、
【化4】
は、登場するごとに同じであるかまたは異なり、
【化5】
を意味し、
L
11、L
12、L
21およびL
22は、互いに無関係に、HまたはFを意味し、
好ましくは
L
11および/またはL
21は、Fを意味し、
X
1およびX
2は、F、Cl、CN、6までのC原子を有するハロゲン化されたアルキル基、ハロゲン化されたアルケニル基、ハロゲン化されたアルコキシ基、またはハロゲン化されたアルケニルオキシ基を意味し、
Z
2は、-CH
2CH
2-、-CF
2CF
2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH
2O-、または単結合、
好ましくは
-CH
2CH
2-、または単結合、特に好ましくは単結合を意味する
ことを特徴とする、正の誘電異方性を有する極性化合物の混合物を基礎とする液晶媒体である。
【0025】
本出願の場合に全ての原子はそれらの同位体を含む。ことに、1以上の水素原子(H)は、重水素(D)に置き換えられていてもよく、このことは、いくつかの実施形態の場合に特に好ましい;高い重水素化度は、ことに低い濃度の場合に、化合物の分析による検出を可能にするかまたは容易にする。
【0026】
以後の定義において省略して「R」といわれる基R1~R3、R41、R42、R51およびR52の1以上が、アルキル基および/またはアルコキシ基を意味する場合、これらは直鎖または分枝鎖であることができる。この基は直鎖であることが好ましく、2、3、4、5、6または7のC原子を有し、したがって、好ましくはエチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシまたはヘプトキシ、さらにメチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、メトキシ、オクトキシ、ノノキシ、デコキシ、ウンデコキシ、ドデコキシ、トリデコキシまたはテトラデコキシを意味する。
【0027】
オキサアルキルは、好ましくは直鎖2-オキサプロピル(=メトキシメチル)、2-オキシブチル(=エトキシメチル)または3-オキシブチル(=2-メトキシエチル)、2-、3-または4-オキシペンチル、2-、3-、4-または5-オキシヘキシル、2-、3-、4-、5-または6-オキシヘプチル、2-、3-、4-、5-、6-または7-オキサオクチル、2-、3-、4-、5-、6-、7-または8-オキサノニル、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-または9-オキサデシルを意味する。
【0028】
Rは、CH2基が-CH=CH-に置き換えられているアルキル基を意味する場合、この基は直鎖または分枝鎖であることができる。好ましくは、この基は直鎖であり、かつ2~10のC原子を有する。したがって、この基は、特にビニル、プロパ-1-もしくはプロパ-2-エニル、ブタ-1-、2-もしくはブタ-3-エニル、ペンタ-1-、2-、3-もしくはペンタ-4-エニル、ヘキサ-1-、2-、3-、4-もしくはヘキサ-5-エニル、ヘプタ-1-、2-、3-、4-、5-またはヘプタ-6-エニル、オクタ-1-、2-、3-、4-、5-、6-もしくはオクタ-7-エニル、ノナ-1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-またはノナ-8-エニル、デカ-1-、2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-もしくはデカ-9-エニルを意味する。
【0029】
Rは、CH2基が-O-に置き換えられかつもう一つが-CO-に置き換えられているアルキル基を意味する場合、これらは好ましくは隣接している。したがって、この基は、アシルオキシ基-CO-O-またはオキシカルボニル基-O-CO-を含む。好ましくは、この基は直鎖であり、かつ2~6のC原子を有する。したがって、この基は、特にアセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2-アセチルオキシエチル、2-プロピオニルオキシエチル、2-ブチリルオキシエチル、2-アセチルオキシプロピル、3-プロピオニルオキシプロピル、4-アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2-(メトキシカルボニル)エチル、2-(エトキシカルボニル)エチル、2-(プロポキシカルボニル)エチル、3-(メトキシカルボニル)プロピル、3-(エトキシカルボニル)プロピルまたは4-(メトキシカルボニル)ブチルを意味する。
【0030】
Rは、CH2基が非置換のまたは置換された-CH=CH-に置き換えられ、かつ隣接するCH2基がCOまたはCO-OまたはO-COに置き換えられているアルキル基を意味する場合、この基は直鎖または分枝鎖であることができる。好ましくは、この基は直鎖であり、かつ4~12のC原子を有する。したがって、この基は、特にアクリロイルオキシメチル、2-アクリロイルオキシエチル、3-アクリロイルオキシプロピル、4-アクリロイルオキシブチル、5-アクリロイルオキシペンチル、6-アクリロイルオキシヘキシル、7-アクリロイルオキシヘプチル、8-アクリロイルオキシオクチル、9-アクリロイルオキシノニル、10-アクリロイルオキシデシル、メタクリロイルオキシメチル、2-メタクリロイルオキシエチル、3-メタクリロイルオキシプロピル、4-メタクリロイルオキシブチル、5-メタクリロイルオキシペンチル、6-メタクリロイルオキシヘキシル、7-メタクリロイルオキシヘプチル、8-メタクリロイルオキシオクチル、9-メタクリロイルオキシノニルを意味する。
【0031】
Rは、一箇所CNまたはCF3により置換されたアルキル基もしくはアルケニル基を意味する場合、この基は好ましくは直鎖である。CNまたはCF3による置換は、任意の位置にある。
【0032】
Rは、少なくとも一箇所ハロゲンにより置換されたアルキル基もしくはアルケニル基を意味する場合、この基は好ましくは直鎖であり、かつハロゲンは好ましくはFまたはClである。複数箇所の置換の場合に、ハロゲンは好ましくはFである。この生じる基は、過フッ化された基を含める。一箇所の置換の場合、フッ素置換基または塩素置換基は任意の位置にあることができるが、好ましくはω-位置にあることができる。
【0033】
分枝したウイング基Rを有する化合物は、ときおり、通常の液晶基礎材料中の比較的良好な溶解度に基づき重要であるが、ことにこの化合物が光学活性である場合、キラルドーパントとしても重要である。この種のスメクチック化合物は、強誘電性材料用の成分として適している。
【0034】
この種の分枝した基は、原則として、1以下の鎖分枝部を含む。好ましくは分枝した基Rは、イソプロピル、2-ブチル(=1-メチルプロピル)、イソブチル(=2-メチルプロピル)、2-メチルブチル、イソペンチル(=3-メチルブチル)、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、イソプロポキシ、2-メチルプロポキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、2-エチルヘキソキシ、1-メチルヘキソキシ、1-メチルヘプトキシである。
【0035】
Rは、2以上のCH2基が-O-および/または-CO-O-に置き換えられているアルキル基である場合、この基は直鎖または分枝鎖であることができる。好ましくは、この基は分枝鎖であり、3~12のC原子を有する。したがって、この基は、特にビス-カルボキシ-メチル、2,2-ビス-カルボキシ-エチル、3,3-ビス-カルボキシ-プロピル、4,4-ビス-カルボキシ-ブチル、5,5-ビス-カルボキシ-ペンチル、6,6-ビス-カルボキシ-ヘキシル、7,7-ビス-カルボキシ-ヘプチル、8,8-ビス-カルボキシ-オクチル、9,9-ビス-カルボキシ-ノニル、10,10-ビス-カルボキシ-デシル、ビス-(メトキシ-カルボニル)-メチル、2,2-ビス-(メトキシ-カルボニル)-エチル、3,3-ビス-(メトキシ-カルボニル)-プロピル、4,4-ビス-(メトキシ-カルボニル)-ブチル、5,5-ビス-(メトキシ-カルボニル)-ペンチル、6,6-ビス-(メトキシ-カルボニル)-ヘキシル、7,7-ビス-(メトキシ-カルボニル)-ヘプチル、8,8-ビス-(メトキシ-カルボニル)-オクチル、ビス-(エトキシカルボニル)-メチル、2,2-ビス-(エトキシカルボニル)-エチル、3,3-ビス-(エトキシカルボニル)-プロピル、4,4-ビス-(エトキシカルボニル)-ブチル、5,5-ビス-(エトキシカルボニル)-ヘキシルを意味する。
【0036】
式Iの化合物は、好ましくは下位式I-1~I-5
【化6】
の化合物から選択され、
式中、パラメータは、式Iに述べられた意味を有し、かつL
13およびL
14は、互いに無関係に、HまたはFを意味し、かつ好ましくは
R
1は、7までのC原子を有するn-アルキルを意味し、
X
1は、F、Cl、6までのC原子を有するハロゲン化されたアルキルまたはハロゲン化されたアルコキシを意味し、
L
11~L
14は、それぞれ互いに無関係に、HまたはFを意味する。
X
1は、特に好ましくは、F、Cl、CF
3、OCF
3、またはOCHF
2である。
【0037】
特に好ましい実施形態の場合に、式Iの化合物は、式I-1a~I-1d
【化7】
の化合物から選択され、
式中、R
1は、1~7のC原子を有するn-アルキルを意味する。
全く特に好ましくは、この媒体は、式I-1bの少なくとも1つの化合物を含む。
【0038】
他の好ましい実施形態の場合に、本発明による媒体は、式IAおよびIB
【化8】
の化合物の群から選択される1以上の化合物を含み、
式中、パラメータは、式Iに述べられた意味を有し、かつ好ましくは
R
1は、7までのC原子を有するn-アルキルを意味し、
X
1は、F、Cl、6までのC原子を有するハロゲン化されたアルキルまたはハロゲン化されたアルコキシを意味し、
L
11~L
14は、それぞれ互いに無関係に、HまたはFを意味し、
X
1は、特に好ましくは、F、Cl、CF
3、OCF
3、またはOCHF
2である。
【0039】
式IAの化合物は、好ましくは次の下位式IA-1~IA-7、特に好ましくは式IA-1の化合物から選択される。
【化9】
式中、パラメータは、上述の意味を有する。
【0040】
特に好ましくは、式IAの化合物は、式IA-1a~IA-1d
【化10】
の化合物から選択され、
式中、R
1は、上述の意味を有し、X
1は、好ましくはFまたはOCF
3を意味する。
式IA-1dの化合物が、全く特に好ましい。
【0041】
式IBの特に好ましい化合物は、式IB-1
【化11】
の化合物から選択され、
式中、パラメータは上述の意味を有し、かつ好ましくは基L
11およびL
12の少なくとも1つはFを意味し、かつX
1は、F、Cl、CF
3またはOCF
3を意味する。
【0042】
式IIの化合物は、好ましくは下位式II-1~II-14
【化12-1】
【化12-2】
【化12-3】
の化合物から選択され、
式中、パラメータは、式IIに述べられた意味を有し、かつ好ましくは、
R
2は、7までのC原子を有するn-アルキルを意味し、
X
2は、F、Cl、6までのC原子を有するハロゲン化されたアルキルまたはハロゲン化されたアルコキシを意味し、
かつ、基L
21およびL
22の少なくとも1つはFを意味する。
X
1は、特に好ましくは、F、Cl、CF
3、OCF
3、またはOCHF
2である。
【0043】
特に好ましくは、本発明による媒体は、式II-1、II-5、II-9およびII-12の化合物から選択される、全く特に好ましくは、下位式II-1a、II-1b、II-5a~II-5d、II-9a、II-9b、II-12aおよびII-12b
【化13-1】
【化13-2】
から選択される1以上の化合物を含み、
式中、R
2は、上述の意味を有し、かつ好ましくは1~7のC原子を有するn-アルキルを意味する。
【0044】
全く特に好ましくは、この媒体は、式II-1b、II-5a、II-5bおよびII-9aの化合物の群から選択される1以上の化合物を含む。
【0045】
好ましい実施形態の場合に、この媒体は、一般式III
【化14】
の1以上の化合物を含み、
式中、
R
3は、式IIにおいてR
2について述べた意味を有し、
【化15】
は、登場するごとに互いに無関係に、
【化16】
を意味し、
【化17】
L
31およびL
32は、互いに無関係に、HまたはFを意味し、
X
3は、F、Cl、CN、6までのC原子を有するハロゲン化されたアルキル基、ハロゲン化されたアルケニル基、ハロゲン化されたアルコキシ基、またはハロゲン化されたアルケニルオキシ基を意味し、
Z
3は、出現することに、互いに無関係に、-CH
2CH
2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH
2O-、-C≡C-または単結合を意味し、好ましくは1つまたは両方は、単結合を意味する。
【0046】
式IIIの化合物は、好ましくは式III-1~III-9:
【化18-1】
【化18-2】
の化合物の群から選択され、
式中、
L
31およびL
32は、互いに無関係に、HまたはFを意味し、
X
3は、F、Cl、6までのC原子を有するハロゲン化されたアルキルまたはハロゲン化されたアルコキシ、好ましくはFまたはOCF
3を意味する。
【0047】
特に好ましくは、この媒体は、式III-1およびIII-3の化合物の群から選択される1以上の化合物を含む。
【0048】
全く特に好ましくは、この媒体は、次の下位式:
【化19】
の1以上の化合物を含み、
式中、R
3は、好ましくは1~7のC原子を有するn-アルキルを意味する。
【0049】
好ましくは、本発明による媒体は、式IV
【化20】
の1以上の化合物を含み、
式中、
R
41およびR
42は、互いに無関係に、上述の式IIにおいてR
2について述べた意味を有し、好ましくはR
41はアルキルを意味し、かつR
42はアルキルまたはアルコキシを意味するか、またはR
41はアルケニルを意味しかつR
42は、アルキルを意味し、
【化21】
は、登場するごとに互いに無関係に、
【化22】
を意味し、
【化23】
Z
41およびZ
42は、登場するごとに互いに無関係に、-CH
2CH
2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH
2O-、-CF
2O-、-C≡C-または単結合を意味し、好ましくはこの1つ以上が単結合を意味し、かつ
pは、0、1または2、好ましくは0または1を意味する。
【0050】
式IVの化合物は、好ましくは化合物IV-1~IV-13
【化24-1】
【化24-2】
の群から選択され、
式中、
R
41およびR
42は、互いに無関係に、1~7のC原子を有するn-アルキルを意味し、かつ
L
4は、HまたはF、好ましくはFを意味する。
【0051】
特に好ましくは、本発明による媒体は、化合物IV-5、IV-8およびIV-11の群から選択される1以上の化合物を含む。
【0052】
他の好ましい実施形態の場合に、本発明による媒体は、式V
【化25】
の1以上の化合物を含み、
式中、
R
51およびR
52は、互いに無関係に、上述の式IIにおいてR
2について述べた意味を有し、好ましくはR
51はアルキルを意味し、かつR
52はアルキルまたはアルケニルを意味し、
【化26】
は、登場するごとに互いに無関係に、
【化27】
を意味し、
【化28】
Z
51およびZ
52は、互いに無関係に、かつZ
51が2回登場する場合には、これについても互いに無関係に、-CH
2CH
2-、-COO-、トランス-CH=CH-、トランス-CF=CF-、-CH
2O-、または単結合を意味し、好ましくはこれらの1つ以上は単結合を意味し、かつ
rは、0、1または2、好ましくは1または2、特に好ましくは1を意味する。
【0053】
他の好ましい実施形態の場合に、この媒体は、式V-1およびV-2
【化29】
の化合物の群から選択される1以上の化合物を含み、
式中、R
51およびR
52は、それぞれ上述の式Vにおいて述べた意味を有し、かつ好ましくはアルキルを意味する。
【0054】
式I~Vの化合物は、文献(例えば、Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie, Georg-Thieme-Verlag, Stuttgartのような標準図書)に記載されているような自体公知の方法により、しかも挙げられた反応にとって公知でかつ適している反応条件下で製造される。この場合、ここに詳細に述べられていない自体公知の変法を使用することもできる。式IおよびIAの化合物は、例えば独国特許出願公開第102008062858号明細書(DE 10 2008 062858 A1)から公知である。式IBの化合物は、独国特許出願公開第102223061号明細書(DE 102223061 A1)に開示されている。
【0055】
本発明の別の主題は、縁取と共にセルを形成する2枚の並行平板のキャリアプレートと、キャリアプレート上の個々の画素をスイッチングするための組込型非線形エレメントと、セル内に存在する、本発明による媒体を含む正の誘電異方性および高い比抵抗を有するネマティック液晶混合物とを有する電気化学部材、ことにTN効果またはSTN効果を基礎とする光バルブ、ならびに電気光学目的のためのこの媒体の使用でもある。
【0056】
本発明の別の主題は、自動車用の照明装置中での、および液晶表示装置中での、ことにTN表示装置、STN表示装置またはMLC表示装置中でのその使用である。
【0057】
本発明の別の主題は、この部材を含む自動車用の照明装置、ならびに電気光学表示装置である。
【0058】
本発明による液晶混合物は、使用するパラメータ領域の大きな拡張を可能にする。澄明点、相の幅、低温での粘度、熱安定性およびUV安定性、ならびに誘電異方性の達成可能な組合せは、先行技術からの今までの広範囲の材料を上回る。
【0059】
本発明による混合物の成分の適切な選択により、他の好ましい特性を維持しながら、比較的高い閾電圧で比較的高い澄明点(例えば150℃を越える)を、または低い閾電圧で低い澄明点を実現することができることは自明である。同様に、相応してわずかに高められた粘度で、比較的大きなΔεおよびそれによるわずかな閾値を有する混合物を得ることができる。本発明による電気光学部材は、好ましくはGoochおよびTarry[C.H. Gooch und H.A. Tarry, Electron. Lett. 10, 2-4, 1974; C.H. Gooch und H.A. Tarry, Appl. Phys., Vol. 8, 1575-1584, 1975]による第1透過極小で動作し、ここでは、特に有利な電気光学特性、例えば特性曲線の高い勾配およびコントラストの低い角度依存性(独国特許第3022818号明細書(DE-PS 30 22 818))の他に、第2極小で同等の表示装置の場合と同じ閾電圧で、より小さな誘電異方性で足りる。それにより、本発明による混合物の使用下で、第1極小で、シアン化合物との混合物の場合よりも明らかに高い比抵抗を実現することができる。当業者は、簡単な日常手順を用いて、個々の成分およびその質量割合の適切な選択により、この部材の所定の層厚に対して必要な複屈折を調節することができる。
【0060】
「電圧保持率(Voltage Holding-ratio)」(HR)の測定[S. Matsumoto et al., Liquid Crystals
5, 1320 (1989); K. Niwa et al., Proc. SID Conference, San Francisco, June 1984, p. 304 (1984); G. Weber et al., Liquid Crystals
5, 1381 (1989)]は、式I、IAおよびIBの化合物を含む本発明による混合物が、式I、IAおよびIBの化合物の代わりに、式
【化30】
のシアノフェニルシクロヘキサン、または式
【化31】
のエステルを含む同等の混合物よりも、温度の上昇と共に、HRの明らかによりわずかな低下を示すことを明らかにした。
【0061】
本発明による混合物のUV安定性も、かなり良好であり、つまり、この混合物は、UV負荷下でHRの明らかによりわずかな低下を示す。
【0062】
本発明による液晶混合物は、-20℃まで、好ましくは-30℃まで、特に好ましくは-40℃までネマティック相を維持しながら、120℃を越える、好ましくは130℃を越える、特に好ましくは140℃を越える澄明点と同時に、≧6、好ましくは≧8の誘電異方性値Δε、および比抵抗についての高い値を達成することを可能にし、それにより卓越した本発明による光バルブを達成することができる。ことに、この混合物は、小さな動作電圧により特徴付けられる。TN閾値は、2.0V未満、好ましくは1.5V未満、特に好ましくは<1.3Vである。
【0063】
本発明による液晶混合物は、0.050~0.110、好ましくは0.060~0.100、特に好ましくは0.080~0.090の範囲内で光学異方性(Δn)を有する。
【0064】
本発明による混合物の20℃での回転粘度γ1は、好ましくは<350mPa・s、特に好ましくは<300mPa・sである。ネマティック相領域は、好ましくは少なくとも140K、ことに少なくとも180Kである。好ましくは、この領域は、少なくとも-40°~+140°に及ぶ。
【0065】
好ましい実施形態が次に挙げられている:
- 媒体は、式Iの1以上の化合物を、40~70%、好ましくは40~60%、特に好ましくは40%~50%の範囲内の全体濃度で含む。
- 媒体中の式IIの化合物の全体濃度は、18~50%、好ましくは23~45%、特に好ましくは30~40%である。
- 媒体は、式II-1bの1以上の化合物を、10~35%、好ましくは12~30%、特に好ましくは15~25%の全体濃度で含む。
- 媒体中の式IV-1、IV-2、IV-3、IV-4、IV-5およびIV-6の化合物の全体濃度は、3~20%、好ましくは5~18%、特に好ましくは8%~16%である。好ましくは、媒体は、式IV-5の少なくとも1つの化合物を含む。
- 式IV-7、IV-8、IV-9、IV-10、IV-11、IV-12およびIV-13の化合物の全体濃度は、2~20%、好ましくは4~16%、特に好ましくは6~13%である。好ましくは、媒体は、式IV-8またはIV-11の少なくとも1つの化合物を含む。
- 媒体は、化合物CCGU-n-F、CCCG-n-F、CCCQU-n-F、CCCQU-n-OTおよびCDUQU-n-Fの群から選択される1以上の化合物を含む(頭文字の意味は、下記の表AおよびBから推知することができる)。
- 媒体中の不飽和側鎖(つまりRが、アルケニルまたはアルキニルを意味する)を有する化合物の割合は、0~10%、好ましくは0~5%、特に好ましくは0~2%である。
【0066】
本発明による液晶混合物は、式IA、IBおよびI~Vの化合物から選択される1以上の化合物の使用下で、先行技術と比べて、複屈折について低い値を生じ、この場合、同時に広幅のネマティック相、高い澄明点、およびスメクチック-ネマティックの低い転移温度が観察され、それにより貯蔵安定性が改善されることが見出された。ことに、式I、IAおよびIBの1以上の化合物の他に、式IIの1以上の化合物、ことに式II-1bの化合物を含む混合物が好ましい。上述の全ての化合物は、無色であり、安定であり、かつ相互におよび他の液晶材料と良好に混合可能である。
【0067】
式I、IA、IBおよびII~Vの化合物の最適な量比は、広範囲に及んで、所望の特性、式I、IA、IBおよびII~Vの成分の選択、および場合により存在する別の成分の選択に依存する。
上述の範囲内の適切な量比は、各場合に応じて容易に決定することができる。
【0068】
本発明による混合物中の式I、IA、IBおよびII~Vの化合物の全体量は重要ではない。この混合物は、多様な特性を最適化する目的で1以上の他の成分を含むことができる。しかしながら、応答時間および閾電圧に関して観察された効果は、原則として、式I、IA、IB、IIおよびIIIの化合物の全体濃度が高くなればそれだけ大きくなる。さらに、澄明点は、式IA、IB、IIIおよびIVの化合物の割合が多くなればそれだけ高くなる。
【0069】
偏光子、電極ベースプレート、および表面処理を備えた電極からなる本発明による光バルブの構造は、この種の部材にとって通常の構造様式に対応する。この場合、通常の構造様式の概念は、ここでは、この部材、ことにポリSi TFTまたはMIMを基礎とするマトリックス表示素子の全ての変更および修正を十分にとらえかつ含んでいる。
【0070】
しかしながら、本発明による液晶光バルブと、ねじれネマティックセルに基づく今まで通常の液晶光バルブとの本質的な差は、液晶層の液晶パラメータの選択にある。
【0071】
本発明により使用可能な液晶混合物の製造は、それ自体通常の様式で行われる。原則として、少量で使用される成分の所望の量は、主成分を構成する成分中で、合理的に比較的高い温度で溶かされる。有機溶媒、例えばアセトン、クロロホルムまたはメタノール中のこれらの成分の溶液を混合し、かつ混合後にこの溶媒を、例えば蒸留により除去することも可能である。
【0072】
この誘電体は、当業者に公知でかつ文献に記載された他の添加物を含んでいてもよい。例えば、多色性色素、またはキラルドーパント0~15%を添加することができる。
【0073】
Cは結晶相を意味し、Sはスメクチック相を意味し、ScはスメクチックC相を意味し、Nはネマティック相を意味し、Iは等方相を意味する。
【0074】
V10は、10%の透過率についての電圧を表す(プレート表面に対して垂直の観察方向)。tonは、V10の2.0倍の値に相当する動作電圧でのスイッチオン時間を表し、toffは、スイッチオフ時間を表す。Δnは、光学異方性を表し、noは屈折率を表す。Δεは、誘電異方性を表す(Δε=ε∥-ε⊥、ここで、ε∥は、分子長軸方向に対して平行の誘電率であり、ε⊥は、それに対して垂直の誘電率である)。電気光学データは、他に明確に述べられていない限り、TNセル内で、第1極小で(つまり、0.5のd・Δn値で)20℃で測定された。光学データは、他に明確に述べられていない限り、20℃で測定された。
【0075】
本出願および次の実施例において、液晶化合物の構造は頭文字によって表されていて、この場合、化学式への変換は、次の表AおよびBに従って行われる。全ての基C
nH
2n+1およびC
mH
2m+1は、nまたはm個のC原子を有する直鎖アルキル基であり;nおよびmは整数であり、かつ好ましくは0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12を意味する。表Bによるコード化は、それ自体自明である。表Aにおいては、基本形態についての頭文字が示されているだけである。個別の場合に、基本形態についての頭文字から、ダッシュにより隔てられて、置換基R
1*、R
2*、L
1*、L
2*およびL
3*についてのコードが続く。
【表1】
【0076】
好ましい混合組成物は、表AおよびBで明らかになる。
表A:
【化32-1】
【化32-2】
【0077】
表B:
【化33-1】
【化33-2】
【化33-3】
【化33-4】
【0078】
式IおよびIAの化合物の他に、表Bからの少なくとも1、2、3または4の化合物を含む液晶混合物が特に好ましい。
【0079】
表C:
表C中に、原則として本発明による混合物に添加することが可能なドーパントが示される。
【化34-1】
【化34-2】
【0080】
次の表Dは、本発明による媒体中で安定剤として使用することができる例示的な化合物を示す。
【0081】
表D:
【化35-1】
【化35-2】
【化35-3】
【化35-4】
【0082】
本発明の好ましい実施形態の場合に、液晶媒体は、表Dの1以上の化合物を含む。
【0083】
次の実施例は本発明を詳説するが、本発明を限定するものではない。上述および後述において百分率データは、質量百分率を意味する。全ての温度は、摂氏で示されている。Fp.は、融点を表し、Kp.=澄明点である。さらに、K=結晶質の状態、N=ネマティック相、S=スメクチック相、およびI=等方性相を意味する。これらの記号の間の記載事項は、転移温度を表す。Δnは、光学異方性(589nm、20℃)を意味し、流動粘度ν20(mm2/sec)および回転粘度γ1(mPa・s)は、それぞれ20℃で決定された。
【0084】
実施例M1
BCH-3F.F 7.00% 澄明点[℃]:122
BCH-5F.F 10.00% Δn[589nm、20℃]:0.0960
CCP-31 10.00%
CCP-33 6.00%
CCP-3F.F.F 10.00%
CCP-5F.F.F 6.00%
CBC-53F 6.00%
CCQU-2-F 15.00%
CCQU-3-F 15.00%
CCQU-5-F 15.00%
【0085】
実施例M2
CCQU-2-F 15.00% 澄明点[℃]:140
CCQU-3-F 15.00% Δn[589nm、20℃]:0.0946
CCQU-5-F 15.00% Δε[1kHz、20℃]:13.8
CCP-3F.F.F 12.00% γ1[mPa・s、20℃]:332
CCP-5F.F.F 6.00%
CCGU-3-F 10.00%
CCP-3-1 10.00%
CBC-53F 6.00%
CBC-33F 3.00%
CDUQU-3-F 8.00%
【0086】
実施例M3
PGP-2-4 2.00% 澄明点[℃]:123
PGP-2-5 2.00% Δn[589nm、20℃]:0.0955
BCH-5F.F 7.00%
CCP-3F.F.F 14.00%
CCP-5F.F.F 5.00%
CCQU-2-F 14.00%
CCQU-3-F 16.00%
CCQU-5-F 12.00%
CCP-3-1 10.00%
ECCP-5F.F 10.00%
CBC-33F 4.00%
CBC-53F 4.00%
【0087】
実施例M4
BCH-5F.F 12.00% 澄明点[℃]:140
BCH-3F.F.F 5.00% Δn[589nm、20℃]:0.0946
CCP-31 5.00%
CCP-33 5.00%
CCP-3F.F.F 15.00%
CCP-5F.F.F 7.00%
CBC-33F 4.00%
CBC-53F 4.00%
CCQU-2-F 8.00%
CCQU-3-F 20.00%
CCQU-5-F 15.00%
【0088】
実施例M5
BCH-5F.F 10.00% 澄明点[℃]:140
CCP-3F.F.F 14.00% Δn[589nm、20℃]:0.0946
CCP-5F.F.F 6.00%
CCQU-2-F 14.00%
CCQU-3-F 16.00%
CCQU-5-F 12.00%
CCGU-3-F 7.00%
CCP-3-1 8.00%
ECCP-5F.F 8.00%
CBC-33F 2.00%
CBC-53F 3.00%
【0089】
実施例M6
CCQU-2-F 8.00% 澄明点[℃]:140
CCQU-3-F 20.00% Δn[589nm、20℃]:0.0946
CCQU-5-F 18.00%
CCP-3F.F.F 8.00%
CCP-5F.F.F 4.00%
CCGU-3-F 10.00%
CCP-3-1 5.00%
CCP-3-3 3.00%
CCOC-3-3 3.00%
CCOC-4-3 3.00%
BCH-3F.F 8.00%
BCH-5F.F 10.00%
【0090】
実施例M7
PGP-2-5 2.00% 澄明点[℃]:140
CCGU-3-F 8.00% Δn[589nm、20℃]:0.0946
BCH-3F.F 2.00%
BCH-5F.F 6.00%
CCP-3F.F.F 14.00%
CCP-5F.F.F 6.00%
CCQU-2-F 15.00%
CCQU-3-F 18.00%
CCQU-5-F 12.00%
CCP-3-1 3.00%
CCP-3-3 2.00%
ECCP-5F.F 6.00%
CBC-33F 3.00%
CBC-53F 3.00%
【0091】
実施例M8
CCQU-2-F 15.00% 澄明点[℃]:131
CCQU-3-F 16.00% Δn[589nm、20℃]:0.0898
CCQU-5-F 14.00% Δε[1kHz、20℃]:12.7
CCP-1F.F.F 4.00% γ1[mPa・s、20℃]:294
CCP-2F.F.F 7.00%
CCP-3F.F.F 8.00%
CCP-5F.F.F 5.00%
CCGU-3-F 6.00%
CCP-3-1 8.00%
CBC-53F 7.00%
CBC-33F 4.00%
CDUQU-3-F 6.00%
【0092】
実施例M9
CCQU-2-F 14.00% 澄明点[℃]:130
CCQU-3-F 16.00% Δn[589nm、20℃]:0.0814
CCQU-5-F 15.00% Δε[1kHz、20℃]:11.0
CCP-2F.F.F 7.00% γ1[mPa・s、20℃]:274
CCP-3F.F.F 14.00%
CCP-5F.F.F 5.00%
CCGU-3-F 8.00%
CCP-3-1 8.00%
CCOC-3-3 3.00%
CCOC-4-3 4.00%
CCCG-3-F 6.00%
【0093】
実施例M10
CCQU-2-F 14.00% 澄明点[℃]:127.9
CCQU-3-F 16.00% Δn[589nm、20℃]:0.0810
CCQU-5-F 15,00% Δε[1kHz、20℃]:11.5
CCP-2F.F.F 7.00% γ1[mPa・s、20℃]:275
CCP-3F.F.F 14.00%
CCP-5F.F.F 5.00%
CCGU-3-F 8.00%
CCP-3-1 8.00%
CCOC-3-3 3.00%
CCOC-4-3 4.00%
CCCQU-3-F 6.00%
【0094】
実施例M11
CCQU-2-F 14.00% 澄明点[℃]:127.9
CCQU-3-F 16.00% Δn[589nm、20℃]:0.0810
CCQU-5-F 15.00% Δε[1kHz、20℃]:11.6
CCP-2F.F.F 7.00% γ1[mPa・s、20℃]:285
CCP-3F.F.F 14.00%
CCP-5F.F.F 5.00%
CCGU-3-F 8.00%
CCP-3-1 8.00%
CCOC-3-3 3.00%
CCOC-4-3 4.00%
CCCQU-3-OT 6.00%
【0095】
実施例M12
CCQU-2-F 14.00% 澄明点[℃]:128.8
CCQU-3-F 16.00% Δn[589nm、20℃]:0.0796
CCQU-5-F 15.00%
CCP-2F.F.F 7.00%
CCP-3F.F.F 14.00%
CCP-5F.F.F 5.00%
CCGU-3-F 6.00%
CCP-3-1 8.00%
CCOC-3-3 3.00%
CCOC-4-3 4.00%
CCCQU-3-OT 4.00%
CCCQU-3-F 4.00%