(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】熱可塑性包装材料の抗付着性を高めるためのリリース成分
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20221018BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20221018BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20221018BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20221018BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20221018BHJP
C08K 5/053 20060101ALI20221018BHJP
C08K 5/103 20060101ALI20221018BHJP
C08L 25/06 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C08L23/00
B32B27/00 H
B32B27/32 Z
C08J3/22 CES
C08J3/22 CET
C08K3/26
C08K5/053
C08K5/103
C08L25/06
(21)【出願番号】P 2018559915
(86)(22)【出願日】2017-05-22
(86)【国際出願番号】 EP2017062256
(87)【国際公開番号】W WO2017202764
(87)【国際公開日】2017-11-30
【審査請求日】2020-05-19
(32)【優先日】2016-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】シェレロ・ナターシャ
(72)【発明者】
【氏名】ムレ・ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】マルゾン・アンゲリカ
(72)【発明者】
【氏名】サッキ・アレッサンドラ・ステラ
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-292993(JP,A)
【文献】特開平10-324662(JP,A)
【文献】特開平11-310648(JP,A)
【文献】特開2014-195965(JP,A)
【文献】特開2012-046692(JP,A)
【文献】特開2015-067705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00
B32B 27/00
B32B 27/32
C08J 3/22
C08K 3/26
C08K 5/053
C08K 5/103
C08L 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー及び/またはポリスチレン類である熱可塑性材料中でのリリース組成物としての組成物Zの使用であって、
前記組成物Zは、成分A、成分C、及び成分Dを含むか、または成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含み、
成分Aは、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー及びポリスチレン類からなる群から選択される熱可塑性材料であり;
成分Bは、グリセロール、ポリグリセロール、グリセロールエステル、ポリグリセロールエステル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり;
成分Cは、ソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり;
成分Dは、層状複水酸化物の群から選択される無機添加剤である、
前記使用。
【請求項2】
ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー及び/またはポリスチレン類である熱可塑性材料中でのリリース組成物としての組成物Zの使用であって、
前記組成物Zは、成分A、成分B及び/またはC、及び成分Dを含み、
成分Aは、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー及びポリスチレン類からなる群から選択される熱可塑性材料であり;
成分Bは、グリセロール、ポリグリセロール、グリセロールエステル、ポリグリセロールエステル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり;
成分Cは、ソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり;
成分Dは、層状複水酸化物の群から選択される無機添加剤であり、
但し、
ハイロドタルサイト焼成物、シリカ系消臭剤、脂肪酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、及びポリスチレン系樹脂を含み、
・前記ハイドロタルサイト焼成物の含有割合が2.5質量%以上15質量%未満であり、・前記シリカ系消臭剤の含有割合が2.5質量%以上15質量%未満であり、
・前記脂肪酸金属塩の含有割合が0.2質量%以上5.0質量%未満であり、
・前記グリセリン脂肪酸エステルの含有割合が0.2質量%以上5.0質量%未満である、
ポリスチレン系樹脂組成物は、前記組成物Zからは除く、
前記使用。
【請求項3】
成分Dがハイドロタルサイト類である、請求項1
または2に記載の使用。
【請求項4】
組成物Zが、成分Eとして一種以上の更に別の添加剤を更に含む、請求項1~
3のいずれか一つに記載の使用。
【請求項5】
成分Eが着色剤である、請求項
4に記載の使用。
【請求項6】
組成物Zが、
14~99.98重量%の成分A;
0.01~70重量%の成分C、または成分BとC、または成分B及び/またはC;
0.01~80重量%の成分D;
0~80重量%の成分E;
を含み、
ここで重量%は、それぞれ、組成物Zの全重量を基準とし;及び成分A、B及び/またはC、D、任意選択的に及びEの重量%は合計して常に100%である、
請求項1~
5のいずれか一つに記載の使用。
【請求項7】
成分Bが、組成物Zの全重量を基準にして0.05~20%の量で存在する、請求項1~6のいずれか一つに記載の使用。
【請求項8】
成分Cが、組成物Zの全重量を基準にして0.05~20%の量で存在する、請求項1~7のいずれか一つに記載の使用。
【請求項9】
成分Dが、組成物Zの全重量を基準にして0.05~30%の量で存在する、請求項1~8のいずれか一つに記載の使用。
【請求項10】
成分A、成分C、及び成分Dを含むかまたは成分A、成分B、成分C、及び成分Dを含む組成物Zを含む、成形されたプラスチック物品であって、但し、
成分Aは、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー及びポリスチレン類からなる群から選択される熱可塑性材料であり;
成分Bは、グリセロール、ポリグリセロール、グリセロールエステル、ポリグリセロールエステル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり、
成分Cは、ソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり、
成分Dは、層状複水酸化物の群から選択される無機添加剤であり、
前記成形されたプラスチック物品は包装用容器である、
前記プラスチック物品。
【請求項11】
成分A、成分B及び/またはC、及び成分Dを含む組成物Zを含む、成形されたプラスチック物品であって、但し、
成分Aは、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー及びポリスチレン類からなる群から選択される熱可塑性材料であり;
成分Bは、グリセロール、ポリグリセロール、グリセロールエステル、ポリグリセロールエステル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり、
成分Cは、ソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり、
成分Dは、層状複水酸化物の群から選択される無機添加剤であり、
前記成形されたプラスチック物品は包装用容器であり、
但し、
ハイロドタルサイト焼成物、シリカ系消臭剤、脂肪酸金属塩、グリセリン脂肪酸エステル、及びポリスチレン系樹脂を含み、
・前記ハイドロタルサイト焼成物の含有割合が2.5質量%以上15質量%未満であり、・前記シリカ系消臭剤の含有割合が2.5質量%以上15質量%未満であり、
・前記脂肪酸金属塩の含有割合が0.2質量%以上5.0質量%未満であり、
・前記グリセリン脂肪酸エステルの含有割合が0.2質量%以上5.0質量%未満である、
ポリスチレン系樹脂組成物は、前記組成物Zからは除く、
前記プラスチック物品。
【請求項12】
成分A、成分B及び/またはC、及び成分Dを含む組成物Zを含む、成形されたプラスチック物品であって、但し、
成分Aは、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー及びポリスチレン類からなる群から選択される熱可塑性材料であり;
成分Bは、グリセロール、ポリグリセロール、グリセロールエステル、ポリグリセロールエステル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり、
成分Cは、ソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり、
成分Dは、層状複水酸化物の群から選択される無機添加剤であり、
前記成形されたプラスチック物品は、粘着性のある製品のための包装用容器である、
前記プラスチック物品。
【請求項13】
前記粘着性のある製品が、ケチャップ、ヨーグルト、乳飲料、マヨネーズ、ドレッシング、歯磨きペースト、ヘアコンディショナ及びボディクリームからなる群から選択される、請求項12に記載の成形されたプラスチック物品。
【請求項14】
前記容器が、パーソナルケア用品、化粧料、医薬品、家庭用品、工業製品、食品または飲料を含む、請求項10~13のいずれか一つに記載の成形されたプラスチック物品。
【請求項15】
前記物品が単層または多層物品である、請求項10~14のいずれか一つに記載の成形されたプラスチック物品。
【請求項16】
成分Dがハイドロタルサイト類である、請求項10~
15のいずれか一つに記載の成形されたプラスチック物品。
【請求項17】
組成物Zが、成分Eとして一種以上の更に別の添加剤を更に含む、請求項10~
16のいずれか一つに記載の成形されたプラスチック物品。
【請求項18】
成分Eが着色剤である、請求項
17に記載の成形されたプラスチック物品。
【請求項19】
組成物Zが、
14~99.98重量%の成分A;
0.01~70重量%の成分C、または成分BとC、または成分B及び/またはC;
0.01~80重量%の成分D;
0~80重量%の成分E;
を含み、
ここで重量%は、それぞれ、組成物Zの全重量を基準とし;及び成分A、B及び/またはC、D、任意選択的に及びEの重量%は合計して常に100%である、
請求項10~
18のいずれか一つに記載の成形されたプラスチック物品。
【請求項20】
成分Bが、組成物Zの全重量を基準にして0.05~20%の量で存在する、請求項10~19のいずれか一つに記載の成形されたプラスチック物品。
【請求項21】
成分Cが、組成物Zの全重量を基準にして0.05~20%の量で存在する、請求項10~20のいずれか一つに記載の成形されたプラスチック物品。
【請求項22】
成分Dが、組成物Zの全重量を基準にして0.05~30%の量で存在する、請求項10~21のいずれか一つに記載の成形されたプラスチック物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装物品に抗付着性を供し、粘着性のある製品に対するリリース特性を高め、それ故、包装材中に残る製品の量を減少するリリース剤を含む、有機ポリマーでできた包装材料に関する。また本発明は、包装材に対して向上したリリース性を付与することができる、単層及び多層で硬質の包装容器もしくは柔軟なフィルムにも関する。更に、本発明は、食品、飲料、パーソナルケア用品、化粧料、家庭用品、工業製品及び医薬品の包装でのリリース剤の使用、並びに上記リリース組成物を含むプラスチック材料及び物品に関する。
【0002】
本発明の目的において、マスターバッチ(MB)は、ポリマー性キャリアもしくは液状ベヒクル及び添加剤を含む組成物であり、ここで、添加剤は、最終の用途または最終の物品中よりも高い濃度でマスターバッチ中に存在し、そしてキャリアは、最終の用途または最終の物品の有機ポリマーである必要はない。マスターバッチ中の添加剤の好ましい濃度は、好ましくは0.5~90重量%の範囲、より好ましくは1~80重量%の範囲であり、ここで重量%はそれぞれマスターバッチの全重量を基準とする。
【0003】
本発明の目的において、コンパウンド(CO)は、有機ポリマー及び添加剤を含む組成物であり、ここで、添加剤は、最終の用途または最終の物品にとって望ましい濃度でコンパウンド中に存在し、そして有機ポリマーは、最終の用途または最終の物品の有機ポリマーであり、そのため、コンパウンドは、単に、物理的な成形プロセスによって最終の用途または最終の物品の所望の形状にされるものである。
【背景技術】
【0004】
多くの食品及び飲料、パーソナルケア用品、化粧料、医薬品、家庭用品及び工業製品は、プラスチック容器中に包装される。包装用途に通常使用されるポリマー性材料は、ポリオレフィン(すなわち、LDPE、LLDPE、HDPE、PP)及びポリスチレンである。
【0005】
本発明の一つの課題は、プラスチック包装材のリリース性を高めること及び(特に溶剤ベースが水である調合物において)粘着性のある最終消費者製品の排出挙動(emptying behaviour)を向上することである。可能な用途の最終消費者製品のリストには、排他的なものではないが、ケチャップ、ヨーグルト、乳飲料、マヨネーズ、ドレッシング、歯磨きペースト、ヘアコンディショナ及びボディクリームなどが含まれる。
【0006】
多くの最終消費者製品は、包装材から簡単に除去することができない;これらは(例えばマヨネーズ、ケチャップ、歯磨きペースト及びヘアコンディショナ)、それらの固有の処方及びレオロジー状態に関連する性質の故に、包装用物品の内表面に付着する。包装材中に残る残渣は、最終消費者にとって大きな割合の廃棄物となり、また、完全に空になっていない包装材のリサイクル可能性を悪化させて、大きな環境的な影響を持つ。
【0007】
包装用物品の内表面と隣接する最終消費者製品との間の付着を軽減することを目的として、様々なタイプの包装用途のため及び様々な最終消費者製品のために使用される容器の向上した排出性へのニーズがある。
【0008】
最終消費者製品の抗付着性を得る幾つかの解決策が報告されており、これらは、主として、包装材料の表面コーティングもしくは表面後処理にまたは包装材料の添加剤配合に関連する。
【0009】
US2013/0251769(特許文献1)は、食品及び他の消費者製品の包装及び加工装置に使用される非湿潤性で自己潤滑性の表面を開示している。液体カプセル化コーティング(liquid encapsulated coatings)を有する容器は、効果的な排出性を示した。
【0010】
US2014/0187666(特許文献2)は、滑りやすい液体注入(liquid-infused)多孔性表面を開示している。このような表面は、潤滑液が注入された微細構造化された基材からなり、前記潤滑液はこの基材によって固定されそして抗湿潤性を示し、そうして、広い範囲の生物学的な材料の付着を大きく低下させる。
【0011】
EP1362792(特許文献3)は、プラスチック製の食品包装材を開示しており、この包装材では、包装材料の組成がまたは、少なくとも、食材と直接接触している多層包装構造の内側層の組成が、グリセロールモノステアレート(GMSとして既知、これは、C18炭素鎖を有するステアリン酸のグリセロールエステルである)を含む。後者は、食品を包装用容器からより簡単に取り出すことを可能するリリース剤として記載されている。この添加剤は、特に、チーズが包装材料に粘着することを或る一定期間防ぐと記載されている。GMSはむしろ親水性であり、そしてそれの小さい分子量の故に迅速に移行する;これは次いで親水性のチーズによって吸収されそしてプラスチック包装材料の表面から数ヶ月間の間抽出される。
【0012】
US2007/0179230(特許文献4)は、ステアリン酸(C18)よりも長い鎖長を有する脂肪酸に基づくポリオールエステル添加剤の使用を開示している。これは、多層包装材構造の内側層から食材への添加剤の移行を低下させ、そして貯蔵時間中の抗付着効果を延長する。低下した移行の故に、より少量の添加剤を用いて満足な抗付着効果を得ることができる。最も適したポリオールエステルは、炭素原子数20~30の脂肪酸鎖長を有するグリセロールもしくはグリコールモノエステル、最も好ましくはグリセロールモノベヘネート(C22)である。グリセロールモノベヘネートが、貯蔵時間が長くなるとその間に熱可塑性包装材料からなおも移行して、食材によって吸収されることが確認された。
【0013】
EP2230270(特許文献5)は、少なくとも4個の炭素原子の鎖長を有する二価、三価もしくは多価アルコールと脂肪酸との高分子量疎水性ポリオールエステルをベースとする熱可塑性包装材料に使用できる抗付着剤を開示している。これらの添加剤の大きい分子量は、多層包装材構造の内側層から食材への移行効果を低下させるが、添加剤濃度と、最終の包装用製品への予期される抗付着効果との間の相間関係は報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】US2013/0251769
【文献】US2014/0187666
【文献】EP1362792
【文献】US2007/0179230
【文献】EP2230270
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
纏めると、(大概は食材に使用される)抗付着性を有する包装材料を製造するために幾つかの試みが行われてきた。有機添加剤を含む多層包装材構造の使用を含む多くの方策がある。これらの系の殆どは、少なくとも一つのまたは複数の欠点を持ち、このような欠点には、包装材製造の後の多段階の後処理、リサイクル性の低下、及び食材中への有機添加剤の移行(その結果、最終消費者製品の予期される貯蔵寿命と比べて抗付着効果が低下するようになる)などが含まれる。既知の組成物は、特に包装用物品のリリース性に関して、工業的な現在の要件の全ては満足しない。
【0016】
包装デザインのフレキシビリティを可能としつつ、成形性及び機械的安定性、例えば密度、剛性及び引き裂き強度に関してポリマー性材料と適合した熱可塑性包装材料及び容器に抗付着性を供する、より良好な解決策への要望がある。特に及び本発明の範囲内において、好ましい解決策は、熱可塑性材料及び対応する包装用容器に抗付着性を付与するリリース剤を含むマスターバッチ及びコンパウンドである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、物品、例えば食品及び飲料、パーソナルケア用品、化粧料、医薬品、家庭用品及び工業的プラスチック製品のための包装材料の形成ための、熱可塑性材料のブレンド中での、以下に開示されるような特定の有機化合物と組み合わせた特定の無機化合物の使用が、無機化合物を含まない、熱可塑性材料と有機添加剤とのブレンドと比べて、リリース性能にかなりの向上を示す。
【0018】
それ故、本発明の一つの対象は、成分A、成分B及び/またはC、及び成分Dを含む組成物Zであり、ここで、
成分Aは、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー及びポリスチレン類からなる群から選択される熱可塑性材料であり;
成分Bは、グリセロール、ポリグリセロール、グリセロールエステル、ポリグリセロールエステル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤;
成分Cは、ソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり;
成分Dは、層状複水酸化物の群から選択される無機添加剤である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
「成分B及び/またはC」という表現は、成分B単独、または成分C単独、または成分Bと成分Cとの組み合わせのいずれかを意味する。
【0020】
本発明の他の対象の一つは、成分A、成分B及び/またはC、及び成分Dからなる組成物Zである。ここで、成分A、B、C及びDは先に定義した通りである。
【0021】
好ましくは、成分Bは、組成物Zの全重量を基準にして0.05~20重量%、より好ましくは0.1~10重量%、最も好ましくは0.1~5重量%の量で存在する。
【0022】
好ましくは、成分Cは、組成物Zの全重量を基準にして0.05~20重量%、より好ましくは0.1~10重量%、最も好ましくは0.1~5重量%の量で存在する。
【0023】
好ましくは、無機成分Dは、組成物Zの全重量を基準にして0.05~30重量%、より好ましくは0.1~15重量%、最も好ましくは1~5重量%の量で存在する。
【0024】
好ましいポリオレフィン及びポリオレフィンコポリマー、すなわち本発明の意味において成分Aは、当技術分野で既知の熱可塑性ポリオレフィンであり、そして次のものからなる群から選択される:
- ポリエチレン(PE)、好ましくは高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン低密度ポリエチレン(mLDPE)及びメタロセン線状低密度ポリエチレン(mLLDPE)からなる群から選択されるポリエチレン(PE)、
- ポリプロピレン(PP)、好ましくはポリプロピレンホモポリマー(PPH)、ポリプロピレンランダムコポリマー(PP-R)及びポリプロピレンブロックコポリマー(PP-ブロック-COPO)からなる群から選択されるポリプロピレン(PP)、
- PEコポリマー、好ましくはエチレン-ビニルアセテートコポリマー(EVA)、エチレンとメチルアクリレートとのコポリマー(EMA)、エチレンとブチルアクリレートとのコポリマー(EBA)、エチレンとエチルアクリレートとのコポリマー(EEA)、及びシクロオレフィンコポリマー(COC)からなる群から選択されるPEコポリマー、
- 汎用ポリスチレン(GPPS)及び耐衝撃性ポリスチレン(HIPS);
より好ましくは、
- 高密度ポリエチレン(HDPE)及び低密度ポリエチレン(LDPE)
- ポリプロピレンホモポリマー(PPH)、
- 汎用ポリスチレン(GPPS)。
【0025】
好ましいポリスチレン類、すなわち本発明の意味において成分Aは、スチレンホモポリマー、アルキルスチレンホモポリマー、好ましくはC1~C4アルキルスチレンホモポリマー、例えばα-メチルスチレンホモポリマー;スチレンコポリマー、特に耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)であることができる。
【0026】
耐衝撃性ポリスチレン類(HIPS)は、一般的に、スチレンと任意選択的に一種以上の共重合性ビニルモノマーとの混合物、好ましくは、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、ブチルスチレン、ハロスチレン、ビニルアルキルベンゼン、例えばビニルトルエン、ビニルキシレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタクリル酸の低級アルキルエステルの混合物を、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ゴム様スチレン-ジエンコポリマー、アクリルゴム、ニトリルゴム及びオレフィン系ゴム、例えばプロピレンジエンモノマーゴム(PDM)及びプロピレンゴム(PR)から選択されるコポリマーを含むゴム様幹ポリマーの存在下に、グラフトすることによる重合によって製造される。耐衝撃性ポリスチレンでは、上記ゴム様幹ポリマーは、通常は、グラフトポリマーの全重量の5~80重量%、好ましくは5~50重量%を構成する。
【0027】
成分Aの好ましい密度は、1.0~1.1g/cm3、より好ましくは1.02~1.06g/cm3、更により好ましくは1.03~1.05g/cm3である。
【0028】
好ましいポリスチレン類は、ISO1133に従い0.1~300g/10分、より好ましくは1~200g/10分、更により好ましくは5~100g/10分、特に10~50g/10分、より特には15~35g/10分、就中20~25g/10分の200℃/5kgでのMFRを有するポリスチレン類である。
【0029】
好ましいグリセロール、ポリグリセロール並びにそれらのエステル、すなわち本発明の意味での成分Bはグリセロールであり、好ましくはジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-及びヘキサグリセロール、より好ましくはジ-、トリ-及びテトラグリセロール、及びそれらのアルキルエステルであり、ここで前記エステルは、C8~C18、より好ましくはC10~C18、特にC12~C18のアルキル鎖長を有する。グリセロール、ポリグリセロール並びにそれらのエステルを含むこれらのタイプの添加剤は商業的に入手可能であり、一例は、Danisco社によって供給されているGrindsted PGE 308D(登録商標)である。
【0030】
好ましいソルビトール及びソルビタン並びにそれらのエステル、すなわち本発明の意味において成分Cは、ソルビトール及びソルビタン並びにそれらのモノ-、ジ-、トリ-及びテトラエステルであり、ここで前記エステルは、C8~C18、より好ましくはC10~C18、特にC12~C18の鎖長を有する。最も好ましくは、該コンパウンドは、ソルビトール及びソルビタン並びにC12鎖長とのそれらのモノエステルを含む。ソルビトール及びソルビタン並びにこれらのエステルを含む有機添加剤は商業的に入手可能であり、そのようなものの一例は、Croda社により供給されるATMER 100(登録商標)である。
【0031】
好ましい層状複水酸化物、すなわち本発明の意味内での成分Dはハイドロタルサイト類である。
【0032】
特に好ましいものは、天然もしくは合成ハイドロタルサイト類またはハイドロタルサイト様の構造を持つ化合物、及びこれらの混合物、好ましくは7~15%のAl、10~28%のMg、任意選択的に及び5~15%のZnを含むものであり、ここで9~12%のAl及び20~24%のMgを含むアルミニウム-マグネシウム-ヒドロキシカーボネート、及び8~13%のAl及び12~18%のMg及び9~13%のZnを含むアルミニウム-マグネシウム-亜鉛-ヒドロキシカーボネートが好ましい。
【0033】
例は、[MgxAl(OH)2X+2]+[0.5CO3
*nH2O](x=2またはx=3)、例えばハイドロタルサイト、[MgxFe(OH)2X+2]+[0.5CO3
*nH2O](x=3)、例えばパイオライト、[MgxCr(OH)2X+2]+[0.5CO3
*nH2O](x=3)、例えばスティヒタイト、[MgxMn(OH)2X+2]+[0.5CO3
*nH2O](x=3)、例えばデソーテルサイト、[MgxFe(OH)2X+2]+[OH*2H2O](x=3)、例えばメイクスネナイトである。数nは1~4であることができる。
【0034】
これらの特に好ましいハイドロタルサイト類は、Hycite 713(登録商標)、Sorbacid 911(登録商標)、Sorbacid 944(登録商標)としてClariant社から商業的に入手できる。
【0035】
任意選択的に、組成物Zは、一種以上の更に別の添加剤(成分E)も含み、これらは、成分A、B、C及びDとは異なり、そして植物及び動物着色剤から誘導される天然着色剤並びに合成着色剤;好ましい合成着色剤は、合成有機及び無機染料及び顔料であり、
- 好ましい合成有機顔料はアゾもしくはジスアゾ顔料、レーキ化アゾもしくはジスアゾ顔料または多環式顔料、特に好ましくはフタロシアニン、ジケトピロロピロール、キナクリドン、ペリレン、ジオキサジン、アントラキノン、チオインディゴ、ジアリールまたはキノフタロン顔料であり;
- 好ましい合成無機顔料は、金属酸化物、混合酸化物、硫酸アルミニウム類、クロメート類、金属粉末、真珠光沢顔料(マイカ)、発光着色剤、酸化チタン類、カドニウム鉛顔料、酸化鉄類、カーボンブラック、シリケート、チタン酸ニッケル類、コバルト顔料または酸化クロム類であり;
- フィラー及びナノサイズフィラー、好ましくはシリカ、ゼオライト、シリケート、特に好ましくはケイ酸アルミニウム類、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カルシウム類;チョークまたはタルク;金属水和物;
- 助剤、好ましくは酸捕捉剤、加工助剤、カップリング剤、滑潤剤、発泡剤、多価アルコール、成核剤、または酸化防止剤、例えばステアレート、または酸化物、例えば酸化マグネシウム;
- 酸化防止剤、好ましくは一次または二次酸化防止剤;
- 帯電防止剤;
- UV吸収剤、スリップ剤、防曇剤、凝縮防止剤、懸濁液安定剤、ブロッキング防止剤、ワックス、及びこれらの物質の混合物、
からなる群から選択される。
【0036】
好ましくは、組成物Zは、
14~99.98重量%の成分A;
0.01~70重量%の成分B及び/またはC;
0.01~80重量%の成分D;
0~80重量%の成分E;
を含み、
ここで重量%は、それぞれ、組成物Zの全重量を基準とし;及び成分A、B及び/またはC、D、任意選択的に及びEの重量%は合計して常に100%である。
【0037】
好都合には、組成物Zは包装用物品であるかもしくは包装用物品の一部であり、またはマスターバッチMBもしくはコンパウンドCOであり、これらは加工して包装材料とし、次いで包装用物品に形成することができる。
【0038】
組成物Zは、周囲温度で液状または固体であることができる。
【0039】
好ましくは、組成物ZがマスターバッチMBである場合は、組成物Zは、
14~90重量%の成分A;
5~40重量%の成分B及び/またはC;
5~80重量%の成分D;
0~80重量%の成分E;
を含み、
より好ましくは、
39~88重量%の成分A;
5~30重量%の成分B及び/またはC;
7~40重量%の成分D;
0~80重量%の成分E;
を含み、
ここで重量%は、それぞれ、組成物Zの全重量を基準とし;及び成分A、B及び/またはC、D、任意選択的に及びEの重量%は合計して常に100%である。
【0040】
好ましくは、組成物ZがコンパウンドCOである場合は、組成物Zは、
88~99.98重量%の成分A;
0.01~5重量%の成分B及び/またはC;
0.01~10重量%の成分D;
0~10重量%の成分E;
を含み、
より好ましくは、
90~99.4重量%の成分A;
0.1~3重量%の成分B及び/またはC;
0.5~5重量%の成分D;
0~8.9重量%の成分E;
を含み、
ここで重量%は、それぞれ、組成物Zの全重量を基準とし;及び成分A、B及び/またはC、D、任意選択的に及びEの重量%は合計して常に100%である。
【0041】
本発明の他の観点の一つは、成分A、B及び/またはC、D、任意選択的に及びEを物理的に混合するステップを含む、組成物Zを製造する方法である。
【0042】
本発明の他の観点の一つは、(上述したようにポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー及び/またはポリスチレン類である)熱可塑性材料中でのリリース組成物としての成分Zの使用である。
【0043】
リリース組成物とは、本発明の意味において、熱可塑性ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー及び/またはポリスチレン類からなるかまたはを含む包装材料の抗付着性を向上して、包装用容器中に残る最終製品の残渣の減少を可能にする組成物である。このような熱可塑性包装材料は、包装の内側表面に粘着する傾向を持つ任意の食品または食品以外の製品のための包装用物品に使用することができる。
【0044】
本発明の組成物Zは、好都合に、成形(例えばブロー成形)してプラスチック物品とする。
【0045】
それ故、本発明の他の対象の一つは、上記組成物Zを含む成形されたプラスチック物品である。
【0046】
本発明による成形されたプラスチック物品は、包装用材料、好ましくは容器、フィルムまたはシート、特に製品処方の粘着性の故にリリース性表面が必要なパーソナルケア用品、化粧料、医薬品、家庭用品、工業製品、食品及び飲料の包装に使用される包装用材料であることができる。
【0047】
リリース剤組成物Zを含むのに好適な包装用材料は、柔軟性、剛性、半剛性またはそれらの組み合わせであることができる。
【0048】
剛性の包装用物品は、典型的には、100~1000マイクロメートルの範囲の壁厚を有する。典型的な柔軟性包装材は、典型的には、5~250マイクロメートルの厚さを有する。
【0049】
本発明のリリース剤組成物を含む剛性包装用物品または柔軟性フィルムは、単層からなることができ、または複数の層を含んでもよい。
【0050】
好ましくは、組成物Zが使用される剛性容器、例えばボトル、または柔軟性フィルムは、多層構造でできている。
【0051】
本発明の他の対象の一つは、上に定義したようなプラスチック材料または物品の製造方法であって、成分A、B及び/またはC、D、任意選択的に及びEを、互いに物理的に混合し、そして成形プロセスに付すことを特徴とする前記方法である。
【0052】
物的な混合のためには、プラスチック工業において慣用の混合装置を使用することができる。好ましくは、この混合装置は、液状マスターバッチまたは固形マスターバッチを製造するのに使用するものであることができ、またはこれらの装置の組み合わせであることができる。
【0053】
液状マスターバッチのための混合装置は、高速分散機(例えば、CowlesTMタイプの分散機)、メディアミル、三本ロールミル、サブミルまたはローターステータータイプ分散機であることができる。
【0054】
固形のマスターバッチMBまたはコンパウンドCOを製造するために使用される混合装置は、混合機、押出機、混練機、プレス、ミル、カレンダー、ブレンダー、射出成形機、射出延伸ブロー成形機(ISBM)、押出ブロー成形機(EBM)、圧縮成形機、圧縮延伸ブロー成形機であることができ;より好ましくは、混合機、押出機、射出成形機、圧縮成形機、圧縮延伸ブロー成形機であることができ;更により好ましくは混合機、押出機、及び押出ブロー成形機であることができる。
【0055】
該物品のための成形プロセスは、製造するべき物品の所望の形状に依存する。
容器は、好ましくは、ブロー成形、射出成形、射出延伸ブロー成形、押出ブロー成形、圧縮成形、圧縮延伸ブロー成形プロセスによって製造される。
【0056】
フィルム及びシートは、好ましくは、要求される厚さと特定の性質を得るために必要な層の数に依存して、キャストもしくはブローフィルム押出または共押出プロセスによって、そして最終的にその後に、ポスト押出成形プロセス、例えば熱成形または延伸することによって製造される。熱成形プロセスでは、プラスチックシートは、成形しやすい温度に加熱し、型中で特定の形状に成形し、そしてトリミングして最終の物品を生成する。真空を使用する場合は、この方法は、一般的に真空成形と称される。ポスト押出延伸プロセスでは、押出されたフィルムは、例えば、延伸によって二軸配向させることができる。
【0057】
二種以上のマスターバッチまたは成分を含む組成物Zの場合には、上記の成分及び/またはマスターバッチを主流ポリマー中に導入するために、押出機には計量供給システムを装備してよい。この計量供給は、一つ以上の個々の成分を用いてまたは一つ以上のマスターバッチを用いて直接行うことができる。
【0058】
使用する計量供給装置のタイプは、個々の成分またはマスターバッチが計量供給される時のそれらの形態に依存する。
【0059】
固形成分の場合には、通常は、供給スクリュータイプの計量供給デバイスが使用され、そして導入位置は、主たるポリマーグラニュールの供給と一緒に押出機の主入口であってよく、または押出機に沿って位置する加圧されていない射出ゾーン中であってよい。固形のマスターバッチの場合は、計量供給デバイスは、マスターバッチを予備溶融し、それを加圧し、そして計量供給ポンプを用いて計量供給する追加の押出機を含むシステムであってよく、計量供給されるマスターバッチの量は、有利には加圧することなく、主押出機に沿った位置で供給される。
【0060】
液状の個々の成分または液状のマスターバッチの場合には、計量供給デバイスは、主ポリマーグラニュールの供給と一緒に押出機の主入口のところで液状マスターバッチを加圧無しで導入するか、または押出機に沿って位置する箇所に加圧下に液状マスターバッチを導入する一つ以上の計量供給ポンプを含むシステムであってよい。
【0061】
組成物Zを形成する成分の混合は、一つのステップで、二つのステップで、または複数のステップで行うことができる。
【0062】
成分A、B及び/またはC、D、任意選択的に及びEが、例えば押出ブロー成形機において、液状または固形の濃縮物の形態でまたは純粋な成分として、直接計量供給される及び/または希釈される場合には、混合は一つのステップで行うことができる。
【0063】
第一のステップにおいて成分B及び/またはC、及びDを成分A中に予備分散し、そして一つまたは二つ以上の続くステップにおいて成分A、任意選択的に及び成分Eに添加する場合には、混合は二つまたは三つのステップで行うこともできる。
【0064】
好ましくは、成分B及び/またはC、及び成分Dを成分A中に予備分散して二つの別個のマスターバッチを作成し、次いでこれらのマスターバッチを成分A、任意選択的に及びEと組み合わせる。
【0065】
本発明の一つの好ましい態様においては、第一のステップで、成分B及び/またはC、及び成分Dを、成分A中に分散して二つの別個のマスターバッチを提供する。例えば単軸もしくは二軸スクリュー押出機において溶融コンパウンド化(melt compounded)した後に、押出物をストランドの形態で引き抜き、そして通常の方法、例えば切断によりペレットとして回収する。第二のステップにおいて、例えば押出ブロー成形機中で、得られたマスターバッチを計量供給し、そしてコンバーター/コンパウンダーによって成分Aペレットと任意選択的に及び成分Eペレットとの主流中に希釈し、一方または両方を任意選択的に粉砕するか、あるいはコンパウンドA中にコンパウンドEの濃縮物の主流中に希釈する。
【0066】
本発明の他の態様の一つでは、第一のステップにおいて、成分B及び/またはC、D及び任意選択的にEを成分A中に分散して、マスターバッチを提供する。例えば単軸もしくは二軸スクリュー押出機において溶融コンパウンド化した後に、押出物をストランドの形態で引き抜き、そして通常の方法、例えば切断によりペレットとして回収する。第二のステップにおいて、得られた固形のマスターバッチを計量供給し、そしてコンバーター/コンパウンダーによって、例えば射出延伸ブロー成形機の成分Aの主流中に、物品中の成分B、C、D及びEの最終の所望の濃度に相当する率でかつ別途成分Eを計量供給するステップ無しで、希釈する。
【0067】
混合は、好ましくは連続式にまたはバッチ式に行われ、より好ましくは連続式に行われ;固形のマスターバッチMBの場合には、好ましくは押出、混合、ミリングまたはカレンダリングによって、より好ましくは押出によって;液状マスターバッチMBの場合には、好ましくは混合またはミリングによって;コンパウンドCOの場合には、好ましくは押出またはカレンダリングによって、より好ましくは押出によって行われる。
【0068】
混合は、好ましくは、0~330℃の温度で行われる。
【0069】
混合時間は、好ましくは5秒間~36時間、好ましくは5秒間~24時間である。
【0070】
連続式混合の場合の混合時間は好ましくは5秒間~1時間である。
【0071】
バッチ式混合の場合の混合時間は好ましくは1秒間~36時間である。
【0072】
液状マスターバッチMBの場合は、混合は好ましくは0~150℃の温度で、混合時間を0.5分間~60分間として行われる。
【0073】
固形マスターバッチMBまたはコンパウンドCOの場合は、混合は好ましくは80~330℃の温度で、混合時間を5秒間~1時間として行われる。
【0074】
本発明の具体的な物品には、特に抗付着性が必要とされる、パーソナルケア用品、化粧料、医薬品、家庭用品、工業製品、食品または飲料を包装するための容器、フィルム及びシートなどが挙げられる。
【0075】
本発明の組成物は、柔軟な構造物中に使用される硬質のパッケージ及びフィルムに熱成形するために使用されるシートにおいても特に有用である。本発明の組成物は、化粧料用容器及び医薬品用もしくは医療用デバイス用容器の製造にも使用される。
【0076】
本発明の好ましい物品は、硬質包装用物品、例えばボトル、熱成形したシート及び柔軟なフィルムである。
【0077】
本発明のより好ましい物品は、当技術分野で既知の任意のタイプのブロー成形プロセスで好都合に製造される中空容器である。
【0078】
熱可塑性中空容器のブロー成形は、慣用的に、押出された熱可塑性ポリマー性パリゾンのブロー成形(押出ブロー成形-EBM)または(通常は熱可塑性ポリマーから射出成形される)熱可塑性ポリマー性予備成形物のブロー成形(射出延伸ブロー成形-ISBM)のいずれかで行われる。高温の熱可塑性ポリマー性パリゾンまたは加熱された予備成形物は、型の空洞内に受け取られ、そうして加圧ガスが、型の空洞の形状への容器のブロー成形をもたらす。
【0079】
試験方法
密度値は、ASTM D792に従い決定する(g/cm3)。
【0080】
メルトフローレート(MFR)の値は、ASTM D1238に従い決定する(規定の温度及び重量でのg/10分)。
【0081】
包装用物品、特にボトルからの最終消費者製品の残渣を決定するための測定法:
250mlの空のボトルの風袋重量を、0.1gの精度の天秤を用いて測定する:これらのボトルを200gの選択された最終消費者製品で満たし、そして秤量して、「充填ボトル重量」を決定し、これらのボトルを蓋で閉めそして放置して、シェルフポジションで23℃で24時間コンディショニングする。次いでこれらのボトルを手で搾りかつ振って中身を排出する。この排出段階は120秒間である。この第一の排出の後に、これらのボトルを蓋で閉め、上側を下に向けた状態で24時間放置し、次いで蓋を取り、そして振らないで手で絞って、製品の最後の液滴まで排出する。
【0082】
これらのボトルを秤量して「空重量」を決定する。残渣の割合は次のよう計算する:[(空重量-風袋)/(充填ボトル重量-風袋)]×100
【実施例】
【0083】
以下の例に記載の重量%は、混合物、組成物または物品の全重量を基準とし;部は重量部である。
【0084】
他に記載がなければ、「ex」は実施例を意味し;「cpex」は比較例を意味し;MBはマスターバッチを意味し;COはコンパウンドを意味する。
使用した物質
成分A1:
低密度ポリエチレン(LDPE)粉末:LDPE Riblene(登録商標),M.F.I.2g/10分,190℃,2.16kg;密度0.925g/cm3(ASTM D3236-88)
成分A2:
低密度ポリエチレン(LDPE)粉末:LDPE M.F.I.20g/10分,190℃,2.16kg(ASTM D1238);密度0.922g/cm3(ASTM D1505)
成分A3:
高密度ポリエチレン(HDPE)粉末:HDPE M.F.I.25g/10分,190℃,2.16kg(ASTM D1238);密度0.955g/cm3(ASTM D1505)
成分A4:
高密度ポリエチレン(HDPE)グラニュール:HDPE Eraclene(登録商標),M.F.I.0.25g/10分,190℃,2.16kg;密度0.953g/cm3(ASTM D1505)
成分B1:
Grindsted(登録商標)PGE 308D(植物脂肪酸でエステル化したモノ-、ジ-、トリ-及びテトラグリセロールの混合物;全エステル含有率>90%)、Danisco社から商業的に入手可能
成分C1:
Atmer(登録商標)100 液状ソルビタンエステル(mp 10℃) CAS No.8028-02-2,Croda社から入手可能;
成分D1:
Clariant社からSorbacid(登録商標)911として商業的に入手可能な添加剤,CAS 11097-59-9
成分D2:
Clariant社からHycite(登録商標)713として商業的に入手可能な添加剤,CAS 11097-59-9
成分E1:
ピグメントブルー29 Ultramarine Blue CAS101357-30-6
マスターバッチMB1~MB6
【0085】
これらの成分を、150℃の温度でLeistritz(登録商標)ZSE 18HP押出機で一緒に均一化して、固形マスターバッチMB1~MB6を得た:表1に詳細を記す。
【0086】
【0087】
ex1~ex7及びcpex a)~cpex7:
成分A4及び他の成分を、表2に従う比率で混合及び均一化した。得られたコンパウンドCO1~CO15を使用して、Magic mp(登録商標)機で押出ブロー成形プロセスにより250ml容積の二層型ボトルを製造した。作業モードの一例として、Magic mp(登録商標)機(モデルME-500/ND)のメインストリームに適用されたメインホッパー中に装入し、他の成分(MB1、MB2、MB3、MB4、MB5、MB6)を第二の計量供給ユニットを通して加え、各々のホッパーは押出バレルに接続する。次いで、材料A4の及び他の成分の溶融物流をダイ中に押し通して、パリゾンを生成する。バレル温度は180℃と190℃との間の温度に維持でき;サイクル時間は15秒間と18秒間との間で変えることができる。
【0088】
高温の熱可塑性ポリマー性パリゾンは、型の空洞内に受け取られ、そうして加圧ガスが、型の空洞の形状への容器のブロー成形をもたらす。
【0089】
(例えば250ml(公称容量)ボトル用の型を備えた)このユニットで、前記パリゾンをボトル型中に挿入しそして最大で6~8barに達する圧力プロフィルを用いて乾燥空気を注入してブロー成形する。このブロー成形プロセスは10~15秒間要する。次いで、ブロー成形ボトルを、必要な試験のために前記のブロー成形ユニットから集める。
【0090】
試験のために選択した最終消費者製品はケチャップCalve(登録商標)であり、次いで、上記のコンパウンドCO1~CO15を用いて製造したボトル中に残ったケチャップの残渣を、上記の方法によって測定した。表3に詳細を記す。
【0091】
【0092】
【表3】
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1.
成分A、成分B及び/またはC、及び成分Dを含む組成物Zであって、
成分Aは、ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー及びポリスチレン類からなる群から選択される熱可塑性材料であり;
成分Bは、グリセロール、ポリグリセロール、グリセロールエステル、ポリグリセロールエステル及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり、
成分Cは、ソルビトール、ソルビトールエステル、ソルビタン、ソルビタンエステル、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される有機添加剤であり;
成分Dは、層状複水酸化物の群から選択される無機添加剤である、
前記組成物Z。
2.
成分Bが、組成物Zの全重量を基準にして0.05~20%の量で存在する、上記1.に記載の組成物。
3.
成分Cが、組成物Zの全重量を基準にして0.05~20%の量で存在する、上記1.または2.に記載の組成物。
4.
成分Dが、組成物Zの全重量を基準にして0.05~30%の量で存在する、上記1.~3.のいずれか一つに記載の組成物。
5.
成分Dがハイドロタルサイト類であることを特徴とする、上記1.~4.のいずれか一つに記載の組成物。
6.
組成物Zが、成分Eとして一種以上の更に別の添加剤を更に含む、上記1.~5.のいずれか一つに記載の組成物。
7.
成分Eが着色剤である、上記6.に記載の組成物。
8.
組成物Zが、
14~99.98重量%の成分A;
0.01~70重量%の成分B及び/またはC;
0.01~80重量%の成分D;
0~80重量%の成分E;
を含み、
ここで重量%は、それぞれ、組成物Zの全重量を基準とし;及び成分A、B及び/またはC、D、任意選択的に及びEの重量%は合計して常に100%である、
上記1.~7.のいずれか一つに記載の組成物。
9.
成分A、B及び/またはC、D、任意選択的に及びEを物理的に混合するステップを含む、上記1.~8.のいずれか一つに記載の組成物Zを製造する方法。
10.
ポリオレフィン、ポリオレフィンコポリマー及び/またはポリスチレン類である熱可塑性材料中でのリリース組成物としての、上記1.~9.のいずれか一つに記載の組成物Zの使用。
11.
上記1.~9.のいずれか一つに記載の上記組成物Zを含む、成形されたプラスチック物品。
12.
包装用材料、フィルムまたはシートである、上記11.に記載の成形されたプラスチック物品。
13.
包装用材料が容器である、上記12.に記載の成形されたプラスチック物品。
14.
前記容器が、パーソナルケア用品、化粧料、医薬品、家庭用品、工業製品、食品または飲料を含む、上記13.に記載の成形されたプラスチック物品。
15.
前記物品が単層または多層物品である、上記11.~14.のいずれか一つに記載の成形されたプラスチック物品。