(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池用電極
(51)【国際特許分類】
H01M 4/133 20100101AFI20221018BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221018BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20221018BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221018BHJP
C08L 27/16 20060101ALI20221018BHJP
C08F 214/22 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01M4/133
H01M4/62 Z
H01M4/587
C08K3/04
C08L27/16
C08F214/22
(21)【出願番号】P 2019003346
(22)【出願日】2019-01-11
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】相馬 翔子
(72)【発明者】
【氏名】梁田 風人
(72)【発明者】
【氏名】向畠 眞一郎
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 晃
(72)【発明者】
【氏名】川邉 裕
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 淳
(72)【発明者】
【氏名】御堂 天啓
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-038020(JP,A)
【文献】特開2013-219016(JP,A)
【文献】特開2011-216272(JP,A)
【文献】特開2014-192071(JP,A)
【文献】特開2004-063300(JP,A)
【文献】特開2003-257433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05-10/0587
C08K 3/04
C08L 27/16
C08F 214/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体上に、少なくともリチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素粒子を含む活物質と、バインダーとを含有する電極活物質層を備えた電極において、前記バインダーが、酸性官能基と主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量1万~90万の重合体Xと、主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量100万~200万の重合体Yを含み、かつ、電極活物質層中のバインダーの含有率が5~15質量%であることを特徴とする、非水系二次電池用電極。
【請求項2】
前記重合体Yが、酸性官能基と主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量100万~200万の重合体である、請求項1に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項3】
前記重合体Xの酸性官能基がカルボキシル基である、請求項1又は請求項2に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項4】
前記重合体Yの酸性官能基がカルボキシル基である、請求項2又は請求項3に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項5】
前記重合体Xの酸価が0.1~15mgKOH/gである、請求項1~4のいずれか一項に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項6】
前記重合体Yの酸価が0.1~15mgKOH/gである、請求項2~5のいずれか一項に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項7】
前記バインダーが含有する重合体Xと重合体Yの質量比が、99:1~70:30である請求項1~6のいずれか一項に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項8】
前記リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素粒子のメジアン径が3~30μmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項9】
電極の片面に形成される前記電極活物質層の目付量が10mg/cm
2~35mg/cm
2である、請求項1~8のいずれか一項に記載の非水系二次電池用電極。
【請求項10】
前記電極活物質層の密度が0.7~1.7g/cm
3である、請求項1~9のいずれか一項に記載の非水系二次電池用電極。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系二次電池用電極に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、EVの普及や電子機器の小型化に伴い、出力特性が高く、かつエネルギー密度の高い二次電池に対する需要が高まっている。非水系二次電池の中でも特にリチウムイオン二次電池の需要が高まっており、さまざまな材料、及び電池の開発が行われている。
一般にリチウムイオン二次電池は、正極、負極及び電解質を備える。以下、正極と負極を合わせて単に「電極」と呼ぶ。電極は、集電体上に電極活物質層が形成されてなり、該電極活物質層は、活物質粒子、バインダー及び導電性を付与する炭素材料(以下、導電助剤と呼ぶ)等を配合した電極材からなる。
これまでは、電極活物質層の薄い電極を複数枚積層することで電池の容量と出力特性の両立を図ってきた。しかしながら、近年の二次電池用正極活物質の新規材料の開発、および既存活物質の改良に伴い、正極材料の高容量化が進行し、対向させる負極の高容量化が必要とされている。負極を高容量化する手法として、より単位重量当りの容量が大きい活物質を用いることが挙げられる。この活物質としてはケイ素系の材料が挙げられるが、ケイ素系材料は、充放電に伴う大きな膨潤、収縮による活物質の崩壊や集電体からの脱離などが原因でサイクル耐久性が低く、大きな課題となっている。
他の手法としては、従来と同じ活物質を用いつつ、電極活物質層の塗布量(目付)を大きくすることが挙げられる。ここで言う目付とは、電極活物質層における、集電体投影単位面積当たりの電極活物質層の重量を指し、目付けが大きいほど、面積あたりの容量が大きくなる。しかしながら、電極活物質層を単純に高目付化すると、電極活物質層の密着性が不足し、サイクル耐久性が低下してしまう。そこで密着性を確保するためバインダーの添加量を増加すると、今度は電極材中の活物質含有率の低下によりエネルギー密度が低下するとともに、絶縁体であるバインダー添加量の増加に伴う電気抵抗の上昇により入出力特性が低下してしまう。この電極活物質層の密着性の確保と電気抵抗の上昇抑制は相反しており、両方を同時に解決する手法が求められていた。
【0003】
特許文献1においては、部分的に脱フッ化水素処理及び酸処理を施した変性ポリフッ化ビニリデンと比較的粒子径の大きい炭素材料とを用いることで電極活物質層の活物質濃度を高めることが出来ると報告されている。更に、特許文献2においては、イオン伝導度15mS/cm以上の電解質を用いることで、体積エネルギー密度の高い電極を設計した場合でも、高い出力特性が得られることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-71517号公報
【文献】特開2017-54822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、活物質濃度は高められても、高目付化した場合には、電極活物質層の厚膜化に伴い密着性が不足し、サイクル耐久性が低下する。一方、密着性を確保するためバインダー添加量を増加した場合、電極抵抗の増加により入出力特性が低下してしまう。
特許文献2については、負極活物質層の目付は3~46mg/cm2と、高目付電極も含まれており、目付21.4mg/cm2の負極も例示されている。しかしながら、出力特性の評価は容量発現率40%以上を良好の基準としており、現在求められているような、例えば70%以上などの高い容量維持率とはかけ離れている。確かに電解質層のイオン伝導度の向上による抵抗低減の効果も認められるものの、特に高目付電極を用いた電池では、電極材中の電子移動の抵抗が大きく寄与しており、当該技術では依然求められる入出力特性が得られないという課題がある。
このように、先行技術では高目付を前提とした課題の解決はなされておらず、依然、高目付において高入出力特性と高サイクル耐久性とを両立できる電極が求められている。
本発明は、前記要求を満たすためになされたものであり、高目付においても高い密着性を有し、優れた入出力特性及び高耐久性を両立する非水系電解質二次電池用電極を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、電極活物質層として、少なくともリチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素粒子を含む活物質と、バインダーとを含有する電極活物質層を備えた電極において、酸性官能基と主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量1万~90万の重合体、及び酸性官能基と主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量100万~200万の重合体を含有するバインダー用い、更に前記バインダーが電極活物質層に対して5~15重量%になるよう電極活物質層を設計した場合に、高目付けでも高い密着性を有し、優れた入出力特性及び高サイクル耐久性を実現できることを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明は下記のとおりである。
[1]
集電体上に、少なくともリチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素粒子を含む活物質と、バインダーとを含有する電極活物質層を備えた電極において、前記バインダーが、酸性官能基と主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量1万~90万の重合体Xと、主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量100万~200万の重合体Yを含み、かつ、電極活物質層中のバインダーの含有率が5~15質量%であることを特徴とする、非水系二次電池用電極。
[2]
前記重合体Yが、酸性官能基と主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量100万~200万の重合体Yである、[1]に記載の非水系二次電池用電極。
[3]
前記重合体Xの酸性官能基がカルボキシル基である、[1]又は[2]に記載の非水系二次電池用電極。
[4]
前記重合体Yの酸性官能基がカルボキシル基である、[2]又は[3]に記載の非水系二次電池用電極。
[5]
前記重合体Xの酸価が0.1~15mgKOH/gである、[1]~[4]のいずれかに記載の非水系二次電池用電極。
[6]
前記重合体Yの酸価が0.1~15mgKOH/gである、[2]~[5]のいずれかに記載の非水系二次電池用電極。
[7]
前記バインダーが含有する重合体Xと重合体Yの質量比が、99:1~70:30である[1]~[6]のいずれかに記載の非水系二次電池用電極。
[8]
前記リチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素粒子のメジアン径が3~30μmである、[1]~[7]のいずれかに記載の非水系二次電池用電極。
[9]
電極の片面に形成される前記電極活物質層の目付量が10mg/cm2~35mg/cm2である、[1]~[8]のいずれかに記載の非水系二次電池用電極。
[10]
前記電極活物質層の密度が0.7~1.7g/cm3である、[1]~[9]のいずれかに記載の非水系二次電池用電極。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、高目付においても高い密着性を有し、優れた入出力特性及び高耐久性を両立する非水系電解質二次電池用電極を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」を用いて記載される数値は、その前後に記載される数値を含むものである。
【0009】
本実施形態の電極は、非水系二次電池の負極として用いることが出来る。この非水系二次電池としては、リチウムイオン二次電池であることが好ましい。以下、リチウムイオン二次電池に用いる場合の構成を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0010】
本実施形態の電極は、集電体上に、少なくとも活物質とバインダーとを含有する電極活物質層を備える。前記電極活物質層は、酸性官能基と主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量1万~90万の重合体Xと、酸性官能基と主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量100万~200万の重合体Yを含み、前記バインダーの電極活物質層に対する含有率が5~15重量%である。
【0011】
電極の片面に形成される前記電極活物質層の目付量は、二次電池を組立てた際に対向させる電極の単位面積あたりの容量に応じても適宜調整する必要があることから、必ずしも明確な規定幅はないが、電極活物質層の密着性の確保と単位面積あたりの電極容量の増加という観点で本願特許の特長を活かせるように、電極の片面に形成される前記電極活物質層の目付量は10mg/cm2~35mg/cm2であることが好ましく、12mg/cm2~30mg/cm2であることがより好ましく、13mg/cm2~25mg/cm2であることが更に好ましい。
【0012】
<電極活物質>
電極活物質には、リチウムイオン等の吸蔵及び放出が可能な炭素材料を1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。前記炭素材料の形状は特に制限されず、球状、薄片状、繊維状、不定形粒子などから適宜選択して用いることが出来るが、好ましくは球状である。前記活物質の種類としては、求める電池の入出力特性や電圧挙動、サイクル耐久性などにより適宜選択して用いることができる。例えば、ハードカーボン、ソフトカーボン、天然黒鉛、人造黒鉛、非晶質炭素等が挙げられ、いずれの活物質であっても高目付において高入出力特性と高サイクル耐久性とを両立させることができるが、より容量を重視する場合には、主とする活物質として天然黒鉛または人造黒鉛が好ましく、天然黒鉛がより好ましい。また、より容量とサイクル耐久性を重視する場合には人造黒鉛が好ましく、サイクル耐久性と入出力特性を重視する場合にはハードカーボンが好ましい。
【0013】
前記炭素材料は、不純物の少ないものが好ましく、必要に応じて種々の精製処理を施して用いる。また、これらの炭素材料を炭素質物、例えば非晶質炭素や黒鉛化物で被覆したものを用いても良い。
【0014】
前記炭素材料は、粒子径が小さいほど活物質間、及び活物質-集電体間の接触点、および表面積が多くなり、電極として同等の密着性を得ようとした場合、より多くのバインダーを必要とする。用いる活物質の種類により、バインダーによる接着性が異なるうえ、活物質の入出力特性がそれぞれ異なるため、求める電池の特性により最適な粒径は限定されないが、密着性の観点から、前記炭素材料の粒子径は、1~150μmであることが好ましく、2~120μmであることがより好ましく、3~100μmであることが更に好ましい。加えて、体積基準の累計50%粒径であるメジアン径(以下「D50」と示す)が3~30μmであることが好ましく、特に、黒鉛材料の場合、10~25μmであることがより好ましく、14~22μmであることがさらに好ましい。また、ハードカーボン材料の場合には、3~10μmであることがより好ましい。粒子径、及びD50がかかる範囲にあることで、本実施形態の電極はバインダー添加量に対して最大の密着性を得ることが可能である。粒子径、及びメジアン径D50はレーザー散乱回折法に基づく公知の粒度分布測定装置を用いて測定することが出来る。
【0015】
<バインダー>
本実施形態において、バインダーは、酸性官能基と主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量1万~90万の重合体Xと、主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量100万~200万の重合体Yを含有する。 バインダーが含有する重合体の分子量は小さいほど密着力は低く、また大きいほど抵抗が高くなる傾向がある。前記重合体Xは重量平均分子量(以下「分子量」を示す)が1万~90万であり、5万~80万であることがより好ましい。前記重合体Yは重量平均分子量(以下「分子量」を示す)が100万~200万であり、105万~180万であることがより好ましい。かかる範囲では、高分子量の重合体を用いることによる密着力の向上と、抵抗の増加のバランスがとれ、良好な入出力特性とサイクル耐久性が両立し得る。
バインダーの分子量はポリスチレン標準物質を使用した公知のゲル濾過クロマトグラフ法(GPC法)によって測定することが出来る。
【0016】
前記バインダーが含有する重合体Xと重合体Yの質量比は99:1~70:30が好ましく、95:5~80:20がより好ましい。かかる範囲では、十分な密着性を確保しつつ、電極として非水系二次電池に組み込んだ際に、高い容量維持率と充放電特性を得ることができる。
【0017】
前記バインダーの、電極活物質層中のバインダー含有率は5~15重量%であることが特に好ましい。かかる範囲では、十分な密着性を確保しつつ、電極活物質層中の活物質比率を最も高めることが出来る。
【0018】
前記重合体は酸性官能基を有し、前記酸性官能基としては、カルボキシル基(-COOH)、スルホン酸基(-SO3H)、リン酸基(-PO3H2)等が挙げられ、特にカルボキシル基(-COOH)を有することが好ましい。
【0019】
重合体及びバインダーの酸価は、KOH溶液を用いた公知の電位差滴定法により測定することが出来る。前記バインダーの酸価は0.1mgKOH/g~15.0mgKOH/gであることが好ましく、0.2mgKOH/g~14.0mgKOH/gであることがより好ましい。酸価を示す官能基は炭素との親和性を有し、特にカルボキシル基は炭素との親和性が高いことから、バインダーが前記範囲で酸価を有することで、活物質との密着性が向上し、より一層強度に優れた電極が得られる。
【0020】
本発明に用いるバインダーには、カルボキシル基含有フッ化ビニリデン系重合体を用いることが出来る。
【0021】
本発明に用いる、カルボキシル基含有フッ化ビニリデン系重合体は通常、(1)フッ化ビニリデンおよびカルボキシル基含有モノマー、必要に応じて他のモノマーを共重合する方法(以下、(1)の方法とも記す)、(2)フッ化ビニリデンを重合または、フッ化ビニリデンと他のモノマーとを共重合して得られた、フッ化ビニリデン系重合体と、カルボキシル基含有モノマーを重合または、カルボキシル基含有モノマーと他のモノマーとを共重合して得られた、カルボキシル基含有重合体とを用いて、フッ化ビニリデン系重合体にカルボキシル基含有重合体をグラフトする方法(以下、(2)の方法とも記す)、(3)フッ化ビニリデンを重合または、フッ化ビニリデンと他のモノマーとを共重合し、フッ化ビニリデン系重合体を得た後に、該フッ化ビニリデン系重合体を、アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマーを用いてグラフト重合する方法(以下、(3)の方法とも記す)のいずれかの方法により製造することができる。
【0022】
重合体の製造方法としては、前記(1)~(3)の方法の中でも、工程数、および生産コストの観点から、(1)の方法で製造することが好ましい。すなわち、カルボキシル基含有フッ化ビニリデン系重合体は、フッ化ビニリデンと、カルボキシル基含有モノマーとの共重合体であることが好ましい。
【0023】
本発明に用いるバインダーは、フッ化ビニリデンを、通常は80~99.9重量部、およびカルボキシル基含有モノマーを、通常は0.1~20重量部(但し、フッ化ビニリデンおよびカルボキシル基含有モノマーの合計を100重量部とする)共重合して得られるフッ化ビニリデン系重合体であることが好ましい。なお、前記バインダーとしては、前記フッ化ビニリデンおよびカルボキシル基含有モノマーに加えて、さらに他のモノマーを共重合して得られる重合体であってもよい。なお、他のモノマーを用いる場合には、前記フッ化ビニリデンおよびカルボキシル基含有モノマーの合計を100重量部とすると、他のモノマーは通常0.1~20重量部用いられる。
【0024】
前記カルボキシル基含有モノマーとしては、不飽和一塩基酸、不飽和二塩基酸、不飽和
二塩基酸のモノエステル等が好ましい。
【0025】
前記不飽和一塩基酸としては、アクリル酸、メタクリル酸等が挙げられる。前記不飽和
二塩基酸としては、マレイン酸、シトラコン酸等が挙げられる。また、前記不飽和二塩基
酸のモノエステルとしては、炭素数5~8のものが好ましく、例えばマレイン酸モノメチ
ルエステル、マレイン酸モノエチルエステル、シトラコン酸モノメチルエステル、シトラ
コン酸モノエチルエステル等を挙げることができる。
【0026】
中でも、カルボキシル基含有モノマーとしては、不飽和二塩基酸、不飽和二塩基酸モノ
エステル、アクリル酸およびメタクリル酸から選択される少なくとも一種のモノマーが好
ましく、マレイン酸、シトラコン酸、マレイン酸モノメチルエステル、シトラコン酸モノ
メチルエステル、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましい。
【0027】
前記フッ化ビニリデンおよびカルボキシル基含有モノマーと共重合することが可能な他のモノマーとは、フッ化ビニリデンおよびカルボキシル基含有モノマー以外のモノマーを意味し、他のモノマーとしては、例えばフッ化ビニリデンと共重合可能なフッ素系単量体あるいはエチレン、プロピレン等の炭化水素系単量体が挙げられる。フッ化ビニリデンと共重合可能なフッ素系単量体としては、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロメチルビニルエーテルに代表されるパーフルオロアルキルビニルエーテル等を挙げることができる。なお、前記他のモノマーは、1種単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0028】
また、(1)の方法としては、懸濁重合、乳化重合、溶液重合等の方法が採用できるが、後処理の容易さ等の点から水系の懸濁重合、乳化重合が好ましく、水系の懸濁重合が特に好ましい。
【0029】
<導電助剤>
本実施形態において、電極活物質層の導電性向上を目的に、導電助剤を電極活物質層の5重量%以下添加しても良い。導電助剤としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラックに代表されるカーボンブラック、ならびにカーボンナノチューブに代表される炭素繊維が挙げられる。
【0030】
<電極作製方法>
本実施形態の電極は、少なくとも活物質及びバインダーとを含む電極材を集電体上に塗布した後、乾燥することによって電極活物質層を形成してなる。前記電極材は、少なくとも活物質及びバインダーとを、攪拌子、攪拌翼、ボールミル、スターラー、超音波分散機、ホモジナイザー、自公転ミキサー等を使用する公知の方法を用いて、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMA)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)等の溶媒中に分散させることで得られる。前記電極材はドクターブレード等の手動塗布装置、及び自動塗布装置等の公知の装置を用いて集電体上に塗布した後、25~150℃で乾燥することで電極活物質層を形成することができる。また、乾燥の際の圧力は特に限定はないが、通常は、大気圧下または減圧下で行われる。
【0031】
本発明の非水電解質二次電池用電極を製造する際には、前記非水電解質二次電池用電極材を前記集電体の少なくとも一面、好ましくは両面に塗布を行う。
【0032】
前記集電体は、非水系二次電池の分野で使用される公知の集電体が適用できる。具体例としては、銅、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼等の金属が挙げられる。ただし、リチウムイオンを吸蔵・脱離させるときの電位において安定であることが必要とされ、コストも考慮するとステンレス鋼や銅、特に抵抗の低さとリチウムに対する安定性から銅が好ましい。
集電体の形状は特に制限されないが、シート状であることが好ましい。また、必要に応じて表面処理等を施すことが出来る。厚みは特に制限されないが、例えば5~20μmの厚みが挙げられる。
【0033】
<電極密度>
前記電極は、ロールプレス装置等を用いてプレスを行うことが出来る。前記プレス処理をした電極の密度は0.7~1.7g/cm3であることが好ましく、0.8~1.6 g/cm3であることがより好ましい。電極密度は用途により異なるが、0.7g/cm3より密度が低いと、活物質間の導電性が保てず単位堆積当りの電極容量が必ずしも十分でない場合がある。また、1.7g/cm3以上の密度では、電極活物質層内の空隙が少なくなり、電解液の含浸性の低下、及び充放電を繰り返した際の電極深部での液枯れを引き起こす場合がある。
【実施例】
【0034】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0035】
<バインダーの製造>
[重合体X-1]
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.8g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート3.0g、フッ化ビニリデン399.6gおよびマレイン酸モノメチルエステル0.4gを仕込み、26℃で45時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.2MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥を行い、官能基としてカルボキシル基を含有する、粉末状の官能基含有フッ化ビニリデン重合体(1)を得た。重合体(1)の重量平均分子量は49万であり、酸価は0.5mgKOH/gであった。
【0036】
[重合体X-2]
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.8g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート3.0g、フッ化ビニリデン398.1gおよびマレイン酸モノメチルエステル1.9gを仕込み、25℃で40時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.2MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥を行い、官能基としてカルボキシル基を含有する、粉末状の官能基含有フッ化ビニリデン重合体を得た。重合体(4)の重量平均分子量は32万であり、酸価は2.3mgKOH/gであった。
【0037】
[重合体X-3]
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.8g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート3.0g、フッ化ビニリデン391.9gおよびマレイン酸モノメチルエステル8.1gを仕込み、26℃で45時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.2MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥を行い、官能基としてカルボキシル基を含有する、粉末状の官能基含有フッ化ビニリデン重合体を得た。重合体(4)の重量平均分子量は47万であり、酸価は9.8mgKOH/gであった。
【0038】
[重合体X-4]
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.8g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート3.0g、フッ化ビニリデン386.7gおよびマレイン酸モノメチルエステル13.3gを仕込み、26℃で45時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.2MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥を行い、官能基としてカルボキシル基を含有する、粉末状の官能基含有フッ化ビニリデン重合体を得た。重合体(4)の重量平均分子量は45万であり、酸価は16.1mgKOH/gであった。
【0039】
[重合体X-5]
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.8g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート3.0g、フッ化ビニリデン399.6gおよびマレイン酸モノメチルエステル0.4gを仕込み、30℃で50時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.2MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥を行い、官能基としてカルボキシル基を含有する、粉末状の官能基含有フッ化ビニリデン重合体を得た。重合体(4)の重量平均分子量は78万であり、酸価は0.5mgKOH/gであった。
【0040】
<重合体Yの製造>
[重合体Y-1]
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.8g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート2.5g、フッ化ビニリデン398.1gおよびマレイン酸モノメチルエステル1.9gを仕込み、30℃で60時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.2MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥を行い、官能基としてカルボキシル基を含有する、粉末状の官能基含有フッ化ビニリデン重合体を得た。重合体(2)の重量平均分子量は118万であり、酸価は2.3mgKOH/gであった。
【0041】
[重合体Y-2]
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1030g、メチルセルロース0.8g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート2.2g、フッ化ビニリデン392.1gおよびマレイン酸モノメチルエステル7.9gを仕込み、34℃で70時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.2MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥を行い、官能基としてカルボキシル基を含有する、粉末状の官能基含有フッ化ビニリデン重合体を得た。重合体(3)の重量平均分子量は158万であり、酸価は9.6mgKOH/gであった。
【0042】
[重合体Y-3]
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1030g、メチルセルロース0.8g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート2.2g、フッ化ビニリデン387.1gおよびマレイン酸モノメチルエステル12.9gを仕込み、34℃で70時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.2MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥を行い、官能基としてカルボキシル基を含有する、粉末状の官能基含有フッ化ビニリデン重合体を得た。重合体(4)の重量平均分子量は159万であり、酸価は15.6mgKOH/gであった。
【0043】
[重合体Y-4]
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.8g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート2.5g、フッ化ビニリデン400gを仕込み、30℃で60時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.2MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥を行い、官能基としてカルボキシル基を含有する、粉末状の官能基含有フッ化ビニリデン重合体を得た。重合体(2)の重量平均分子量は120万であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0044】
<重合体Zの製造>
[重合体Z-1]
内容量2リットルのオートクレーブに、イオン交換水1040g、メチルセルロース0.8g、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート3.0g、フッ化ビニリデン400gを仕込み、26℃で45時間懸濁重合を行った。この間の最高圧力は4.2MPaに達した。重合完了後、重合体スラリーを脱水、水洗後80℃で20時間乾燥を行い、官能基としてカルボキシル基を含有する、粉末状の官能基含有フッ化ビニリデン重合体を得た。重合体(2)の重量平均分子量は48万であり、酸価は0mgKOH/gであった。
【0045】
<負極の製造>
(実施例1)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比94:5:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0046】
(実施例2)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比91:8:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0047】
(実施例3)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比89:10:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0048】
(実施例4)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比86:13:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0049】
(実施例5)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比89:8:3の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0050】
(実施例6)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比88:8:4の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0051】
(実施例7)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比91.5:8:0.5の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0052】
(実施例8)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-2を質量比91:8:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0053】
(実施例9)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-3を質量比91:8:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0054】
(実施例10)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-4を質量比91:8:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0055】
(実施例11)
メジアン径8μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比91:8:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0056】
(実施例12)
メジアン径8μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比89:10:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0057】
(実施例13)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比91:8:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付27mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0058】
(実施例14)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比89:10:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付27mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0059】
(実施例15)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-2と重合体Y-1を質量比91:8:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0060】
(実施例16)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-2と重合体Y-1を質量比88:8:4の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0061】
(実施例17)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-3と重合体Y-1を質量比91:8:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0062】
(実施例18)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-4と重合体Y-1を質量比91:8:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0063】
(実施例19)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-5と重合体Y-1を質量比91:8:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0064】
(比較例1)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比96:3:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0065】
(比較例2)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-1と重合体Y-1を質量比84:15:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0066】
(比較例3)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体Z-1と重合体Y-4を質量比91:8:1の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0067】
(比較例4)
メジアン径18μmの天然黒鉛と重合体X-2とを質量比92:8の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み10μmの銅箔上の片面に、ドクターブレード法で目付18mg/cm2になるよう塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度1.4g/cm3になるよう圧延した。
【0068】
製造した負極の組成は以下のとおりである。
【0069】
【0070】
非水二次電池電極および非水二次電池の各種特性は下記のようにして測定及び評価を実施した。
【0071】
<剥離強度の測定>
得られた負極の剥離強度を測定した。デジテック製のDTC-FX300、ASM-1000を用いて、180°テープ剥離強度を測定した。テープはニチバン製LP-18(18mm幅)を用い、50mm剥離した時の平均値を剥離強度とした。
【0072】
<<評価用非水系二次電池の製造と評価>>
<正極の製造>
活物質としてメジアン径10.6μmのマンガン酸リチウム(LMO)、導電助剤として数平均粒子径48nmのアセチレンブラック粉末、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを質量比94:3:3の割合で、ホモジナイザーを用いてNMPに分散させ、電極材スラリーを得た。得られた電極材スラリーは、集電体である厚み20μmのアルミニウム箔上の片面に、ドクターブレード法で塗布し、120℃で30分間乾燥し溶剤を除去した。目付は、正極、負極の同面積での容量比(AC比=負極容量/正極容量)が1.1になるよう設計した。乾燥後の電極は、ロールプレス機を用いて密度2.9g/cm3になるよう圧延した。
【0073】
<電解液の調製>
エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)が体積比1:1の混合溶液を溶媒とし、電解質としてヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF6)を1mol/Lの濃度で溶解した。溶解した溶液100重量部に対して1重量部のビニレンカーボネート(VC)を添加し、電解液を得た。
【0074】
<非水系二次電池の製造>
前記で得た負極を直径14mmの円盤状に、ポリプロピレン(PP)からなるリチウムイオン電池用セパレータを直径16mmの円盤状に、前記で得た正極を直径13mmの円盤状にそれぞれ打抜いた。SUS製の電池容器(CR2032)内に、負極、セパレータ、正極の順で互いに電極の塗布面がセパレータ側を向くように積層・対向させ、前記で得た電解液を添加し電極及びセパレータを含浸させた。更に電極上にSUS製の板(厚さ1mm、直径16mm)、及びウェーブワッシャー(直径15mm)を載せ、ガスケットを装着したキャップをはめ込み、カシメ機でかしめることでコイン型非水系二次電池を得た。
【0075】
作製した電池は、0.1Cのレートで4.2Vまで充電後、4・2Vでの定電圧充電を2時間行うことでコンディショニング処理とした。前記コンディショニング処理を行った電池は、0.1Cのレートで2.8Vまで放電を行った後、各種特性評価に用いた。
【0076】
<出力特性評価>
各実施例で作製した電池について、25℃において0.1Cレートの定電流充電を上限電圧4.2Vとして電流値が0.05Cに収束するまで行った後、0.1Cの定電流放電を下限電圧2.8Vになるまで行った。次いで、充電は前記と同条件で行った後、1Cレートの定電流放電を2.8Vになるまで行い、下記の式(1)から、放電容量発現率(%)を算出した。
(1C放電容量/0.1C放電容量)×100 ・・・・・(1)
【0077】
<入力特性評価>
各実施例で作製した電池について、25℃において0.1Cの定電流充電を上限電圧4.2Vまで行った後、0.1Cの定電流放電を下限電圧2.8Vまで行った。次いで、1 Cの定電流充電を上限電圧4.2Vまで行った後、放電は前記と同条件で行い、下記の式(2)から、充電容量発現率(%)を算出した。
(1C充電容量/0.1C充電容量)×100 ・・・・・(2)
【0078】
<サイクル耐久性評価>
各実施例で作製した電池について、25℃において0.5Cの定電流充電を上限電圧4.2Vまで行った後、0.1Cの定電流放電を下限電圧2.8Vまで行った。この充放電100サイクル繰り返し、下記の式(3)から放電容量維持率(%)を算出した。
(100サイクル目放電容量 / 1サイクル目放電容量)×100 ・・・・・(3)
【0079】
製造した非水系二次電池による負極の評価結果は以下のとおりである。
(判定基準)
剥離強度:◎200N/m以上、○150N/m以上、×150N/m未満
放電容量発現率:◎95%以上、○90%以上、△85%以上、×85%未満
充電容量発現率:◎80%以上、○70%以上、△60%以上、×60%未満
100サイクル放電容量維持率:◎90%以上、○80%以上、△70%以上、
×70%未満
【0080】
【0081】
表に示されるとおり、重合体Xの含有率が3質量%で重合体Yの含有率1質量%であり、電極活物質層中のバインダー含有率が4質量%の比較例1の電極は、バインダー含有率5~15重量%の実施例1~7、実施例13、実施例14の電極と同じ分子量及び酸価のバインダーと、同じメジアン径の負極活物質を用いているが、十分な剥離強度が得られず不合格であった。
【0082】
重合体Xの含有率が15質量%で重合体Yの含有率1質量%であり、電極活物質層中のバインダー含有率が16質量%の比較例2の電極は、バインダー含有率5~15重量%の実施例1~7、実施例13、実施例14の電極と同じ分子量及び酸価のバインダーと同じメジアン径の負極活物質を用いているが、非水系二次電池として用いた際に十分な放電容量発現率、充電容量発現率、100サイクル放電容量維持率が得られず不合格であった。
【0083】
重合体Xが酸性官能基を有さない比較例3の電極は、実施例10に使用している重合体X-1と比べて、ほぼ同様の分子量を持つ重合体Z-1を使用しており、含有率も実施例10と同様であり、重合体Yも同様のものを使用しており、同じメジアン径の負極活物質を用いており、負極目付も同様であるが、十分な剥離強度、放電容量発現率、充電容量発現率、100サイクル放電容量維持率得られず不合格であった。
【0084】
重合体Xの含有率が8%で重合体Yを含まない比較例4の電極は、実施例15、実施例16と同じ重合体Xを、同じ含有率で使用しており、同じメジアン径の負極活物質を用いているが、十分な剥離強度、放電容量発現率、充電容量発現率、100サイクル放電容量維持率得られず不合格であった。
【0085】
酸性官能基と主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量が1万~90万のポリフッ化ビニリデン骨格を有する重合体と、主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量100万~200万の重合体Yを含み、かつ、電極活物質層中のバインダーの含有率が5~15質量%とした実施例1~19の電極を用いた非水系二次電池は、150N/m以上の良好な剥離強度、90%以上の良好な放電容量発現率、70%以上の良好な充電容量発現率、80%以上の良好な100サイクル放電容量維持率を示し合格レベルであった。
【0086】
中でも、酸価が0.1~15mgKOH/gの重合体Xと重合体Yを用いた実施例1~5、実施例7~8、実施例13~15、実施例17、実施例19は剥離強度、放電容量発現率、充電容量発現率、100サイクル放電容量維持率が極めて高く優れていた。
【0087】
酸価が0.1~15mgKOH/gの範囲外であるバインダーを用いた実施例9、実施例10、実施例18は、実施例1~5、実施例7~8、実施例13~15、実施例17、実施例19に比べて剥離強度、放電容量発現率、充電容量発現率、100サイクル放電容量維持率が低くなる傾向であったが、良好であった。
【0088】
重合体Xと重合体Yの質量比が、99:1~70:30の範囲でない実施例6と実施例16は実施例1~5、実施例7~8、実施例13~15、実施例17、実施例19に比べて、放電容量発現率、充電容量発現率、100サイクル放電容量維持率が低くなる傾向であったが優れていた。
【0089】
メジアン径が8μmの負極活物質を使用した実施例11、実施例12はメジアン径が18μmの負極活物質を使用した実施例2、実施例3に比べて剥離強度、放電容量発現率、充電容量発現率、100サイクル放電容量維持率が低くなる傾向であったが、良好であった。
【0090】
上記の結果から、集電体上に、少なくともリチウムイオンを吸蔵・脱離可能な炭素粒子を含む活物質と、バインダーとを含有する電極活物質層を備えた電極において、前記バインダーが、酸性官能基と主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量1万~90万の重合体Xと、主鎖としてポリフッ化ビニリデン骨格とを有する重量平均分子量100万~200万の重合体Yを含み、かつ、電極活物質層中のバインダーの含有率が5~15質量%である非水系二次電池用電極は、高い密着性を有し、非水系二次電池を構成した際に、入出力特性、及び耐久性を高い水準で両立し得る。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の電極は、高目付においても高い密着性を有し、非水系電解質二次電池用電極として用いた際に、優れた入出力特性及び高耐久性を有するので、電池用電極として広く利用されるものである。