(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】積層造形物の製造方法及び積層造形物
(51)【国際特許分類】
B23K 9/04 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
B23K9/04 R
B23K9/04 E
(21)【出願番号】P 2019011274
(22)【出願日】2019-01-25
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飛田 正俊
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 伸志
(72)【発明者】
【氏名】山田 岳史
(72)【発明者】
【氏名】藤井 達也
(72)【発明者】
【氏名】黄 碩
【審査官】後藤 泰輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193776(JP,A)
【文献】特開2016-216822(JP,A)
【文献】特開2017-115855(JP,A)
【文献】特開2003-266174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00-10/02、26/00-26/70
B22F 3/00、7/00
B29C 41/00、64/00
B33Y 10/00、40/00、80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の軸体と、前記軸体の外周に、溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを層状に積層してなる造形体とを備え、前記軸体の軸方向に沿って延伸する軸方向空洞が前記造形体に形成された積層造形物の製造方法であって、
前記軸体の外周に前記溶着ビードを積層させて前記造形体を造形する際に、前記軸方向空洞となる空間部を有するサポート部材を、予め前記軸体の軸方向に沿って前記軸体の外周面に装着させるサポート部材装着工程を行う
積層造形物の製造方法。
【請求項2】
前記サポート部材は、前記空間部の一方側が開放した断面視C字状のチャンネル材であり、
前記サポート部材装着工程において、前記空間部の開放側を前記軸体の外周面に向けて前記サポート部材を軸方向に沿って配設する
請求項1に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項3】
前記サポート部材装着工程において、前記軸体の外周面に配置させた前記サポート部材と前記軸体との接触箇所に、前記溶着ビードを形成して前記サポート部材を前記軸体に固定する
請求項1または請求項2に記載の積層造形物の製造方法。
【請求項4】
棒状の軸体と、
前記軸体の外周に、溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを層状に積層してなる造形体と、
を備えた積層造形物であって、
前記造形体には、
空間部を有するサポート部材が前記軸体の軸方向に沿って設けられ、
前記サポート部材の前記空間部によって、軸方向へ延伸する軸方向空洞が形成されている
積層造形物。
【請求項5】
前記造形体は、前記軸方向空洞と連通する軸回りに広がる周方向空洞を有し、前記周方向空洞と前記軸方向空洞とが互いに連通されている
請求項
4に記載の積層造形物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形物の製造方法及び積層造形物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生産手段としての3Dプリンタのニーズが高まっており、特に金属材料への適用については航空機業界等で実用化に向けて研究開発が行われている。金属材料を用いた3Dプリンタは、レーザやアーク等の熱源を用いて、金属粉体や金属ワイヤを溶融させ、溶融金属を積層させて造形物を造形する。
【0003】
このような造形物を造形する技術として、溶加材を供給する溶接トーチを移動させることで、溶融金属を積層させて造形物を造形する溶接技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、溶着ビードを積層させて製造する造形物として、ミキサーやポンプなどのロータを造形する場合、軸体の周囲に溶着ビードを積層して造形体を造形し、その後、造形体の周囲を切削する。
ところで、内部に冷却媒体を循環させる冷却室や流路等の空洞を有するロータ等の造形物は、後工程で空洞を切削等によって形成するのが困難である。このため、空洞を有する造形物を積層造形によって製造する場合、造形体の造形時に空洞を容易に形成する技術が要求される。
【0006】
本発明は、上記事項に鑑みてなされたものであり、その目的は、溶着ビードを積層して造形体を造形する際に、造形体に容易に空洞を形成することが可能な積層造形物の製造方法及び積層造形物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は下記構成からなる。
(1) 棒状の軸体と、前記軸体の外周に、溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを層状に積層してなる造形体とを備え、前記軸体の軸方向に沿って延伸する軸方向空洞が前記造形体に形成された積層造形物の製造方法であって、
前記軸体の外周に前記溶着ビードを積層させて前記造形体を造形する際に、前記軸方向空洞となる空間部を有するサポート部材を、予め前記軸体の軸方向に沿って前記軸体の外周面に装着させるサポート部材装着工程を行う
積層造形物の製造方法。
(2) 棒状の軸体と、
前記軸体の外周に、溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを層状に積層してなる造形体と、
を備えた積層造形物であって、
前記造形体には、
空間部を有するサポート部材が前記軸体の軸方向に沿って設けられ、
前記サポート部材の前記空間部によって、軸方向へ延伸する軸方向空洞が形成されている
積層造形物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶着ビードを積層して造形体を造形する際に、造形体に容易に空洞を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の製造方法で製造する積層造形物の概略斜視図である。
【
図2】積層造形物の造形体に形成された空洞を説明する模式的な斜視図である。
【
図3】積層造形物を製造する製造システムの模式的な概略構成図である。
【
図4】積層造形物を製造する際の領域設定の仕方を説明する積層造形物の軸方向に沿う断面図である。
【
図5A】積層造形物の造形体の形成手順を示す製造途中の積層造形物の軸方向に沿う概略断面図である。
【
図5B】積層造形物の造形体の形成手順を示す製造途中の積層造形物の軸方向に沿う概略断面図である。
【
図5C】積層造形物の造形体の形成手順を示す製造途中の積層造形物の軸方向に沿う概略断面図である。
【
図5D】積層造形物の造形体の形成手順を示す製造途中の積層造形物の軸方向に沿う概略断面図である。
【
図5E】積層造形物の造形体の形成手順を示す製造途中の積層造形物の軸方向に沿う概略断面図である。
【
図6A】積層造形物の造形体の形成手順を示す製造途中の積層造形物の領域A2における軸方向と直交する方向に沿う概略断面図である。
【
図6B】積層造形物の造形体の形成手順を示す製造途中の積層造形物の領域A2における軸方向と直交する方向に沿う概略断面図である。
【
図6C】積層造形物の造形体の形成手順を示す製造途中の積層造形物の領域A2における軸方向と直交する方向に沿う概略断面図である。
【
図6D】積層造形物の造形体の形成手順を示す製造途中の積層造形物の領域A2における軸方向と直交する方向に沿う概略断面図である。
【
図6E】積層造形物の造形体の形成手順を示す製造途中の積層造形物の領域A2における軸方向と直交する方向に沿う概略断面図である。
【
図7】軸体に装着するサポート部材の斜視図である。
【
図8】軸体に装着する他の形状のサポート部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の製造方法で製造する積層造形物の概略斜視図である。
図2は積層造形物の造形体に形成された空洞を説明する模式的な斜視図である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、積層造形物Wは、軸体41と、造形体43とを有しており、軸体41の外周に造形体43が造形されている。この積層造形物Wは、例えば、ミキサーやポンプなどのロータとして用いられる。
【0012】
軸体41は、例えば、鋼棒等の断面円形の丸棒体である。この軸体41の外周に造形された造形体43は、断面視において楕円形状に形成されており、両端部での楕円の長軸の向きに対して中央部での楕円の向きが直交されている。また、両端部と中央部との間では、楕円の向きが連続的に変化されている。この造形体43は、軸体41の周囲に周方向へ複数の溶着ビードを形成して積層させ、さらに切削加工を行うことで形成されている。
【0013】
造形体43は、複数の冷却室(周方向空洞)45が形成されている。これらの冷却室45は、軸方向に間隔をあけて設けられている。冷却室45は、軸方向に直交する断面において、造形体43の外形よりも小さい内形を有している。また、造形体43は、複数の連通路(軸方向空洞)47を有している。連通路47は、軸体41の軸方向に沿って設けられており、冷却室45で開口されている。これにより、冷却室45は、連通路47を介して互いに連通されている。造形体43に冷却室45及び連通路47が設けられた積層造形物Wでは、冷却室45及び連通路47に冷却水等の冷却媒体が充填される。そして、この冷却媒体が冷却室45及び連通路47へ流れることで、積層造形物Wが冷却される。
【0014】
次に、上記の積層造形物Wの造形体43を製造する製造システムについて説明する。
図3は積層造形物を製造する製造システムの模式的な概略構成図である。
【0015】
図3に示すように、本構成の製造システム100は、積層造形装置11と、積層造形装置11を統括制御するコントローラ15と、を備える。
【0016】
積層造形装置11は、先端軸にトーチ17を有する溶接ロボット19と、トーチ17に溶加材(溶接ワイヤ)Mを供給する溶加材供給部21とを有する。トーチ17は、溶加材Mを先端から突出した状態に保持する。
【0017】
コントローラ15は、CAD/CAM部31と、軌道演算部33と、記憶部35と、これらが接続される制御部37と、を有する。
【0018】
溶接ロボット19は、多関節ロボットであり、先端軸に設けたトーチ17は、溶加材Mが連続供給可能に支持される。トーチ17の位置や姿勢は、ロボットアームの自由度の範囲で3次元的に任意に設定可能となっている。
【0019】
トーチ17は、不図示のシールドノズルを有し、シールドノズルからシールドガスが供給される。本構成で用いられるアーク溶接法としては、被覆アーク溶接や炭酸ガスアーク溶接等の消耗電極式、TIG溶接やプラズマアーク溶接等の非消耗電極式のいずれであってもよく、作製する積層造形物Wに応じて適宜選定される。
【0020】
例えば、消耗電極式の場合、シールドノズルの内部にはコンタクトチップが配置され、溶融電流が給電される溶加材Mがコンタクトチップに保持される。トーチ17は、溶加材Mを保持しつつ、シールドガス雰囲気で溶加材Mの先端からアークを発生する。溶加材Mは、ロボットアーム等に取り付けた不図示の繰り出し機構により、溶加材供給部21からトーチ17に送給される。そして、トーチ17を移動しつつ、連続送給される溶加材Mを溶融及び凝固させると、溶加材Mの溶融凝固体である線状の溶着ビードが形成される。
【0021】
なお、溶加材Mを溶融させる熱源としては、上記したアークに限らない。例えば、アークとレーザとを併用した加熱方式、プラズマを用いる加熱方式、電子ビームやレーザを用いる加熱方式等、他の方式による熱源を採用してもよい。電子ビームやレーザにより加熱する場合、加熱量を更に細かく制御でき、溶着ビードの状態をより適正に維持して、積層構造物の更なる品質向上に寄与できる。
【0022】
CAD/CAM部31は、作製しようとする積層造形物Wの形状データを作成した後、複数の層に分割して各層の形状を表す層形状データを生成する。軌道演算部33は、生成された層形状データに基づいてトーチ17の移動軌跡を求める。記憶部35は、生成された層形状データやトーチ17の移動軌跡等のデータを記憶する。
【0023】
制御部37は、記憶部35に記憶された層形状データやトーチ17の移動軌跡に基づく駆動プログラムを実行して、溶接ロボット19を駆動する。つまり、溶接ロボット19は、コントローラ15からの指令により、軌道演算部33で生成したトーチ17の移動軌跡に基づき、溶加材Mをアークで溶融させながらトーチ17を移動する。
【0024】
上記構成の製造システム100は、設定された層形状データから生成されるトーチ17の移動軌跡に沿って、トーチ17を溶接ロボット19の駆動により移動させるとともに、軸体41を軸回りに回動させながら、溶融した溶加材Mからなる溶着ビードをトーチ17によって軸体41の周囲に積層させる。これにより、軸体41の外周に溶着ビードからなる造形体43が造形された積層造形物Wを製造する。この積層造形物Wは、造形体43の造形後に切削加工を施すことで設計された外形に形成される。軸体41は、その両端が、ベース23上に設けられた支持部25に支持されて回動可能とされている。
【0025】
次に、軸体41の周囲に溶着ビードを積層させて造形体43を造形して積層造形物Wを製造する場合について説明する。
図4は積層造形物を製造する際の領域設定の仕方を説明する積層造形物の軸方向に沿う断面図である。
図5A~
図5Eは積層造形物の造形体の形成手順を示す製造途中の積層造形物の軸方向に沿う概略断面図である。
図6A~
図6Eは積層造形物の造形体の形成手順を示す製造途中の積層造形物の領域A2における軸方向と直交する方向に沿う概略断面図である。
図7は軸体に装着するサポート部材の斜視図である。
【0026】
(領域設定工程)
製造する積層造形物Wの3次元形状データである最終製品CADデータに基づいて、製造する積層造形物Wを、軸方向の複数の領域に分割する。具体的には、
図4に示すように、造形体43が溶着ビードのみで形成される領域A1、造形体43が周方向空洞である冷却室45と溶着ビードとで形成される領域A2及び造形体43が軸方向空洞である連通路47と溶着ビードとで形成される領域A3に分割する。
【0027】
(造形体形成工程)
3次元形状データを複数種類の領域A1~A3に分割した造形体43を、軸体41を回動させながら軸体41の外周面に溶着ビードを積層させることで造形する。
【0028】
次に、この造形体43を造形する造形体形成工程を詳述する。
(1)サポート部材装着工程
図5A及び
図6Aに示すように、連通路47を形成する領域A3において、軸体41の外周面にサポート部材51を装着させる。
図7に示すように、サポート部材51は、平板部53と、平板部53の両側縁から同一方向に向かって突設する一対の側板部55とを有する断面視C字状のチャンネル材である。このサポート部材51は、例えば、金属、カーボンあるいはセラミックなどから形成されている。このサポート部材51は、平板部53と側板部55とで囲われた空間部Sを有しており、この空間部Sは、平板部53と反対側である一方側が開放されている。このサポート部材51を、その空間部Sの開放側を軸体41に向けて軸体41の軸方向に沿って配設する。そして、軸体41とサポート部材51の側板部55との接触箇所に積層造形装置11のトーチ17によって溶着ビードを形成し、軸体41の周面に配設したサポート部材51を軸体41に固定する。これにより、軸体41の外周面にサポート部材51を装着させる。なお、サポート部材51は、軸体41に対して接着材によって接着固定してもよい。
【0029】
(2)造形部形成工程
図5B及び
図6Bに示すように、周方向空洞である冷却室45の形成予定位置を除く位置に溶着ビードBを積層させて造形部61を形成する。具体的には、軸体41を回動させながら、冷却室45を形成する領域A2を除く領域A1,A3に、トーチ17によって軸体41の外周面に溶着ビードBを周方向に沿って形成して積層させ、溶着ビードBからなる造形部61を造形する。このとき、造形部61における冷却室45側の壁面61aが冷却室45の最外周よりも外周側に達するように造形部61を形成する。
【0030】
(3)閉塞部材装着工程
図5C及び
図6Cに示すように、まず、造形部61における冷却室45の形成予定位置側の互いに対向する壁面61aに、周方向へわたってトーチ17によって支持用溶着ビードBsを形成する。この支持用溶着ビードBsは、冷却室45の最外周に沿って、最外周よりも僅かに内周側に形成する。なお、この支持用溶着ビードBsは、全周に沿って間欠的に形成してもよい。
【0031】
図5D及び
図6Dに示すように、領域A2に長尺の板状に形成された可撓性を有する閉塞部材65を巻き付けて支持用溶着ビードBsに支持させる。この閉塞部材65は、例えば、金属、カーボンあるいはセラミック等から形成されたもので、領域A2の幅寸法よりも僅かに小さい幅寸法を有している。この閉塞部材65を領域A2に巻き付けることで、この閉塞部材65によって冷却室45の外周側が閉塞される。なお、閉塞部材65としては、網状に形成されたものでもよい。
【0032】
(4)ビード積層工程
図6Eに示すように、領域A2において、閉塞部材65の外周側にトーチ17によってカバー用溶着ビードBcを積層させる。このカバー用溶着ビードBcは、造形部61を造形する際の溶着ビードBよりも低い入熱量で形成する溶着ビードである。そして、このカバー用溶着ビードBcを閉塞部材65の外周側に積層させたら、
図5Eに示すように、全ての領域A1~A3にトーチ17によって溶着ビードBを形成して積層させて造形体43を形成する。
【0033】
(切削工程)
軸体41の外周に造形体43を造形させたら、造形体43の外周を切削加工装置等によって切削し、最終製品形状に形成する。
【0034】
以上、説明したように、本実施形態に係る積層造形物Wの製造方法によれば、軸方向空洞である連通路47となる空間部Sを有するサポート部材51を軸体41の軸方向に沿って軸体41の外周面に予め装着させて溶着ビードBを積層させ、造形体43を形成する。これにより、軸体41の軸方向に沿って延伸する軸方向空洞である連通路47が造形体43に形成された積層造形物Wを容易に製造することができる。
【0035】
これにより、姿勢を容易に変更することができない大型の造形物を製造する場合であっても、造形物に流路等として用いられる軸方向空洞を容易にかつ高精度に形成することができる。
【0036】
そして、本実施形態に係る製造方法で製造された積層造形物Wによれば、軸体41の軸方向に沿って設けられたサポート部材51の空間部Sからなる連通路47が造形体43に設けられている。これにより、連通路47を冷却水などの冷却媒体を通す流路として用いることができる。つまり、互いに連通された冷却室45及び連通路47に冷却水などの冷却媒体を流して冷却することが可能な積層造形物Wを提供できる。
【0037】
特に、断面視C字状の安価なチャンネル材をサポート部材51として用いるので、軸方向空洞である連通路47を有する積層造形物Wを安価に製造することができる。
【0038】
しかも、サポート部材51は、軸体41の外周面に配置させて軸体41との接触箇所に溶着ビードBを形成することで、容易にかつ迅速に軸体41へ固定することができる。これにより、造形体43の造形作業を効率的に行うことができる。
【0039】
このように、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0040】
例えば、軸体41に装着するサポート部材51としては、
図8に示すように、平面視T字状に形成されたものを用いてもよい。このサポート部材51は、軸方向空洞である連通路47を形成する軸空洞形成部51aと、周方向空洞である冷却室45に配置される周空洞形成部51bとを有している。そして、このサポート部材51を用いる場合、サポート部材装着工程において、軸方向空洞である連通路47の形成位置に軸空洞形成部51aを配置させ、周方向空洞である冷却室45の形成位置に周空洞形成部51bを配置させる。
【0041】
このようにすれば、サポート部材51の軸空洞形成部51aによって連通路47を容易に形成することができ、しかも、冷却室45に対してサポート部材51の周空洞形成部51bの空間部Sを連通させることができる。これにより、冷却室45と連通路47とがサポート部材51の空間部Sによって確実に連通された積層造形物Wを製造することができる。
【0042】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) 棒状の軸体と、前記軸体の外周に、溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを層状に積層してなる造形体とを備え、前記軸体の軸方向に沿って延伸する軸方向空洞が前記造形体に形成された積層造形物の製造方法であって、
前記軸体の外周に前記溶着ビードを積層させて前記造形体を造形する際に、前記軸方向空洞となる空間部を有するサポート部材を、予め前記軸体の軸方向に沿って前記軸体の外周面に装着させるサポート部材装着工程を行う
積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、軸方向空洞となる空間部を有するサポート部材を軸体の軸方向に沿って軸体の外周面に予め装着させて溶着ビードを積層させ、造形体を形成する。これにより、軸体の軸方向に沿って延伸する軸方向空洞が造形体に形成された積層造形物を容易に製造することができる。
これにより、姿勢を容易に変更することができない大型の造形物を製造する場合であっても、造形物に流路等として用いられる軸方向空洞を容易にかつ高精度に形成することができる。
【0043】
(2) 前記サポート部材は、前記空間部の一方側が開放した断面視C字状のチャンネル材であり、
前記サポート部材装着工程において、前記空間部の開放側を前記軸体の外周面に向けて前記サポート部材を軸方向に沿って配設する
(1)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、断面視C字状の安価なチャンネル材をサポート部材として用いるので、軸方向空洞を有する積層造形物を安価に製造することができる。
【0044】
(3) 前記サポート部材装着工程において、前記軸体の外周面に配置させた前記サポート部材と前記軸体との接触箇所に、前記溶着ビードを形成して前記サポート部材を前記軸体に固定する
(1)または(2)に記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、軸体の外周面に配置させたサポート部材を溶着ビードによって容易にかつ迅速に軸体へ固定することができる。これにより、造形体の造形作業を効率的に行うことができる。
【0045】
(4) 前記造形体は、前記軸方向空洞と連通する軸回りに広がる周方向空洞を有し、
前記サポート部材は、前記軸方向空洞となる空間部を有する軸空洞形成部と、前記周方向空洞となる空間部を有する周空洞形成部とを有し、
前記サポート部材装着工程において、前記軸方向空洞の形成位置に前記軸空洞形成部を配置させ、前記周方向空洞の形成位置に前記周空洞形成部を配置させる
(1)~(3)のいずれか一つに記載の積層造形物の製造方法。
この積層造形物の製造方法によれば、サポート部材の軸空洞形成部によって軸方向空洞を容易に形成することができる。しかも、サポート部材の周空洞形成部を周方向空洞の形成位置に配置させることで、造形体に形成する周方向空洞に対してサポート部材の周空洞形成部の空間部を連通させることができる。これにより、周方向空洞と軸方向空洞とがサポート部材の空間部によって確実に連通された積層造形物を製造することができる。
【0046】
(5) 棒状の軸体と、
前記軸体の外周に、溶加材を溶融及び凝固させた溶着ビードを層状に積層してなる造形体と、
を備えた積層造形物であって、
前記造形体には、
空間部を有するサポート部材が前記軸体の軸方向に沿って設けられ、
前記サポート部材の前記空間部によって、軸方向へ延伸する軸方向空洞が形成されている
積層造形物。
この積層造形物によれば、軸体の軸方向に沿って設けられたサポート部材の空間部からなる軸方向空洞が造形体に設けられている。これにより、軸方向空洞を冷却水などの冷却媒体を通す流路として用いることができる。
【0047】
(6) 前記造形体は、前記軸方向空洞と連通する軸回りに広がる周方向空洞を有し、前記周方向空洞と前記軸方向空洞とが互いに連通されている
(5)に記載の積層造形物。
この積層造形物によれば、互いに連通された周方向空洞及び軸方向空洞に冷却水などの冷却媒体を流して冷却することが可能な積層造形物を提供できる。
【符号の説明】
【0048】
41 軸体
43 造形体
45 冷却室(周方向空洞)
47 連通路(軸方向空洞)
51 サポート部材
51a 軸空洞形成部
51b 周空洞形成部
B 溶着ビード
M 溶加材
S 空間部
W 積層造形物