(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】電磁波減衰体及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20221018BHJP
H01F 10/14 20060101ALI20221018BHJP
H01F 10/16 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H05K9/00 M
H01F10/14
H01F10/16
(21)【出願番号】P 2019012148
(22)【出願日】2019-01-28
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【氏名又は名称】白井 達哲
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【氏名又は名称】竹内 功
(73)【特許権者】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】喜々津 哲
(72)【発明者】
【氏名】黒崎 義成
(72)【発明者】
【氏名】山田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】松中 繁樹
【審査官】柴垣 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113313(JP,A)
【文献】特開2004-303825(JP,A)
【文献】特開平6-125190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01F 10/14
H01F 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層部材と、
磁性部材と、
を備え、
前記多層部材は、複数の磁性層と、導電性の複数の非磁性層と、を含み、
前記複数の磁性層の1つから前記複数の磁性層の別の1つへの方向は、前記多層部材から前記磁性部材への第1方向に沿い、
前記複数の非磁性層の1つは、前記複数の磁性層の前記1つと、前記複数の磁性層の前記別の1つと、の間にあり、
前記磁性部材の前記第1方向に沿う厚さは、前記多層部材の前記第1方向に沿う厚さの1/2以上である、電磁波減衰体。
【請求項2】
前記磁性部材は、前記多層部材と接する、請求項1記載の電磁波減衰体。
【請求項3】
前記磁性部材は、第1部材領域及び第2部材領域を含み、前記第1部材領域は、前記第1方向において前記第2部材領域と前記多層部材との間にあり、
前記第1部材領域は、複数の第1結晶粒を含み、
前記第2部材領域は、複数の第2結晶粒を含み、
前記複数の第1結晶粒のサイズの平均値は、前記複数の第2結晶粒のサイズの平均値よりも小さい、請求項1または2に記載の電磁波減衰体。
【請求項4】
前記磁性部材は、第1部材面及び第2部材面を含み、前記第1部材面は、前記第1方向において前記第2部材面と前記多層部材との間にあり、
前記第1部材面は、複数の第1結晶粒を含み、
前記第2部材面は、複数の第2結晶粒を含み、
前記複数の第1結晶粒のサイズの平均値は、前記複数の第2結晶粒のサイズの平均値よりも小さい、請求項1~3のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【請求項5】
前記複数の磁性層の前記1つは、第3結晶粒を含み、
前記第3結晶粒のサイズの平均値は、40nm以下である、請求項1~4のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【請求項6】
前記複数の磁性層の前記1つは、前記複数の非磁性層の前記1つと対向する第1磁性層面を含み、
前記第1磁性層面は、第1頂部と第1底部とを含み、
前記第1頂部と前記第1底部との間の前記第1方向に沿う距離は、10nm以上である、請求項1~5のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【請求項7】
前記複数の磁性層の前記1つは、前記複数の非磁性層の前記1つと対向する第1磁性層面を含み、
前記第1磁性層面は、第1頂部、第2頂部及び第1底部を含み、
前記第1方向と交差する第2方向における前記第1底部の位置は、前記第2方向における前記第1頂部の位置と、前記第2方向における前記第2頂部の位置と、の間にあり、
前記複数の非磁性層の前記1つの少なくとも一部は、前記第2方向において、前記第1頂部と前記第2頂部との間にある、請求項1~6のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【請求項8】
前記複数の磁性層の前記1つの少なくとも一部は、Co、Ni及びFeよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【請求項9】
前記複数の磁性層の前記1つの前記少なくとも一部は、Cu、Mo及びCuからなる群から選択された少なくとも1つをさらに含む、請求項8記載の電磁波減衰体。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1つに記載の電磁波減衰体と、
電子素子と、
を備えた、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電磁波減衰体及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電磁シールドシートなどの電磁波減衰体が提案されている。電磁波減衰体及び半導体素子を含む電子装置がある。電磁減衰体において、電磁波の減衰特性を向上させることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、電磁波の減衰特性を向上可能な電磁波減衰体及び電子装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、電磁波減衰体は、多層部材及び磁性部材を含む。前記多層部材は、複数の磁性層と、導電性の複数の非磁性層と、を含む。前記複数の磁性層の1つから前記複数の磁性層の別の1つへの方向は、前記多層部材から前記磁性部材への第1方向に沿う。前記複数の非磁性層の1つは、前記複数の磁性層の前記1つと、前記複数の磁性層の前記別の1つと、の間にある。前記磁性部材の前記第1方向に沿う厚さは、前記多層部材の前記第1方向に沿う厚さの1/2以上である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1(a)~
図1(c)は、第1実施形態に係る電磁波減衰体を例示する模式図である。
【
図2】
図2は、電磁波減衰体の特性を例示するグラフ図である。
【
図3】
図3は、電磁波減衰体の特性を例示するグラフ図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、第1実施形態に係る電磁波減衰体を例示する模式的断面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、参考例の電磁波減衰体を例示する模式的断面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る電磁波減衰体を例示する模式的平面図である。
【
図7】
図7は、第1実施形態に係る電磁波減衰体を例示する模式的断面図である。
【
図8】
図8(a)~
図8(d)は、第2実施形態に係る電子装置を例示する模式図である。
【
図9】
図9(a)~
図9(d)は、第2実施形態に係る電子装置の一部を例示する模式的断面図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る電子装置を例示する模式的断面図である。
【
図11】
図11は、第2実施形態に係る電子装置を例示する模式的断面図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る電子装置を例示する模式的断面図である。
【
図13】
図13は、第2実施形態に係る電子装置を例示する模式的断面図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る電子装置を例示する模式的断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態に係る電子装置を例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1(a)~
図1(c)は、第1実施形態に係る電磁波減衰体を例示する模式図である。
図1(c)においては、図を見やすくするために、複数の層の位置がシフトされて描かれている。
【0009】
図1(a)~
図1(c)に示すように、実施形態に係る電磁波減衰体10は、多層部材10M及び磁性部材15を含む。
【0010】
多層部材10Mから磁性部材15への方向は、第1方向に沿う。第1方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。
【0011】
多層部材10Mは、複数の磁性層11と、導電性の複数の非磁性層12と、を含む。複数の磁性層11の1つから複数の磁性層11の別の1つへの方向は、第1方向(Z軸方向)に沿う。複数の非磁性層12の1つは、複数の磁性層11の上記の1つと、複数の磁性層11の上記の別の1つと、の間にある。
【0012】
例えば、複数の磁性層11及び複数の非磁性層12は、第1方向に沿って交互に設けられる。例えば、複数の磁性層11は、第1方向に沿って並ぶ。例えば、複数の非磁性層12は、第1方向に沿って並ぶ。複数の磁性層11の1つは、複数の非磁性層12の1つと、複数の非磁性層12の別の1つと、の間にある。
【0013】
複数の磁性層11の少なくとも一部は、例えば、X-Y平面に対して平行である。複数の非磁性層12の少なくとも一部は、例えば、X-Y平面に対して平行である。磁性部材15は、例えば、例えば、X-Y平面に対して平行である。
【0014】
図1(a)~
図1(c)に示すように、電磁波減衰体10は、基体10sを含んでも良い。例えば、基体10sの上に、複数の磁性層11及び複数の非磁性層12が交互に形成される。
【0015】
実施形態に係る1つの例において、基体10sはモールド樹脂などである。別の例において、基体10sは樹脂層などでも良い。樹脂層は、例えば、プラスチックシートの上に設けられる。実施形態において、基体10sの表面は、凹凸を有しても良い。この場合、後述するように、複数の磁性層11及び複数の非磁性層12は、この凹凸に沿うような凹凸状でも良い。
【0016】
図1(c)に示すように、多層部材10M及び磁性部材15を含む電磁波減衰体10に電磁波81が入射する。電磁波減衰体10に入射した電磁波81は、電磁波減衰体10により減衰する。電磁波減衰体10は、例えば、電磁波シールド体として使用することができる。例えば、複数の磁性層11及び複数の非磁性層12の少なくとも1つは、接地される(
図1(a)参照)。
【0017】
図1(a)に示すように、例えば、磁性部材15は、多層部材10Mと接する。
図1(a)の例では、複数の非磁性層12の1つ(別の1つ)は、磁性部材15と接する。
図1(b)に示す例では、複数の磁性層11の1つは、磁性部材15と接する。複数の磁性層11の1つと、磁性部材15と、の間の境界が不明確でも良い。この場合、磁性部材15と接する磁性層11は、磁性部材15に含まれると見なされても良い。
【0018】
複数の磁性層11の1つの第1方向に沿う厚さを厚さt1とする。厚さt1は、例えば、20nm以上500nm以下である。
【0019】
複数の非磁性層12の1つの第1方向に沿う厚さを厚さt2とする。厚さt2は、例えば、2nm以上500nm以下である。
【0020】
磁性部材15の第1方向に沿う厚さを厚さt5とする。厚さt5は、厚さt1よりも厚い。厚さt5は、厚さt2よりも厚い。厚さt5は、例えば1μm以上である。厚さt5は、例えば1μm以上でも良い。厚さt5は、例えば4μm以上でも良い。厚さt5は、例えば、厚さt1の5倍以上である。
【0021】
実施形態においては、例えば、交互に積層された薄い磁性層及び薄い磁性層を含む多層部材10Mに、厚い磁性部材15が積層される。例えば、磁性部材15の第1方向に沿う厚さt5は、多層部材10Mの第1方向に沿う厚さt0の1/2以上である。
【0022】
このような構成により、多層部材10Mまたは磁性部材15のそれぞれを用いた時の減衰特性から推定できる程度を越える減衰特性が得られることが分かった。
【0023】
以下、本願の発明者が行った実験について説明する。実験において、試料SP01、SP02、SP03、SP04及びSP05が作製される。
【0024】
試料SP01においては、磁性層11及び非磁性層12の組みが設けられる。1つの組みにおいて、磁性層11は、厚さ(第1厚さt1)が100nmのNiFeCuMo層である。1つの組みにおいて、非磁性層12は、厚さ(第2厚さt2)が100nmのCu層である。1つの磁性層11及び1つの非磁性層12を含む組みの数Nsは、10である。試料SP01は、多層部材10Mに対応する。
【0025】
試料SP02においては、磁性層11及び非磁性層12の組みが設けられる。1つの組みにおいて、磁性層11は、厚さ(第1厚さt1)が50nmのNiFeCuMo層である。1つの組みにおいて、非磁性層12は、厚さ(第2厚さt2)が5nmのTa層である。1つの磁性層11及び1つの非磁性層12を含む組みの数Nsは、37である。試料SP02は、多層部材10Mに対応する。
【0026】
試料SP03においては、電磁波減衰体として、厚さが2μmのNiFeCuMo層が用いられる。試料SP03においては、磁性層だけが設けられ、非磁性層が設けられない。試料SP03は、磁性部材15に対応する。
【0027】
試料SP04において、上記の試料SP01に対応する多層部材10Mの上に、さらに、試料SP03に対応する磁性部材15(厚さが2μmのNiFeCuMo層)が設けられる。試料SP01に含まれる非磁性層12(厚さが100nmCu層)が、磁性部材15のNiFeCuMo層と接する。
【0028】
試料SP05において、上記の試料SP02に対応する多層部材10Mの上に、さらに、試料SP03に対応する磁性部材15(厚さが2μmのNiFeCuMo層)が設けられる。試料SP02に含まれる非磁性層12(厚さが5nmのTa層)が、磁性部材15のNiFeCuMo層と接する。
【0029】
これらの試料に電磁波81が入射したときに、試料から出射する電磁波81の強度が測定される。
【0030】
図2及び
図3は、電磁波減衰体の特性を例示するグラフ図である。
これらの図の縦軸は、入射する電磁波81の周波数が100MHzであるときの透過特性T1(dB)である。透過特性T1が低いこと(絶対値が大きいこと)が、電磁波減衰体に入射した電磁波81の減衰の程度が大きいことに対応する。透過特性T1は、低いこと(絶対値が大きいこと)が望ましい。
【0031】
図2に示すように、多層部材10Mに対応する試料SP01においては、透過特性T1は、-16.2dBである。磁性部材15に対応する試料SP03においては、透過特性T1は、-0.1dBである。多層部材10M及び磁性部材15を含む試料SP04においては、透過特性T1は、-17.6dBである。
【0032】
図2には、試料SP01の透過特性T1、及び、試料SP03の透過特性T1を単純に足し合わせる計算により導出した計算結果CP13も記載されている。計算においては、多層部材10Mと磁性部材15との間の相互作用などは考慮されない。計算結果CP13において、透過特性T1は、-16.2dBである。
【0033】
既に説明したように、試料SP04における透過特性T1は、-17.6dBであり、計算結果CP13における-16.2dBよりも明らかに低い(絶対値が大きい)。
【0034】
図3に示すように、多層部材10Mに対応する試料SP02においては、透過特性T1は、-3.5dBである。既に説明したように、磁性部材15に対応する試料SP03においては、透過特性T1は、-0.1dBである。多層部材10M及び磁性部材15を含む試料SP05においては、透過特性T1は、-8.3dBである。
【0035】
図3には、試料SP02の透過特性T1、及び、試料SP03の透過特性T1を単純に足し合わせる計算により導出した計算結果CP23も記載されている。計算においては、多層部材10Mと磁性部材15との間の相互作用などは考慮されない。計算結果CP23において、透過特性T1は、-3.8dBである。
【0036】
既に説明したように、試料SP05における透過特性T1は、-8.3dBであり、計算結果CP23における-3.8dBよりも明らかに低い(絶対値が大きい)。
【0037】
実施形態においては、試料SP04またはSP05などの構成を採用する。これにより、低い(絶対値が大きい)透過特性T1が得られる。実施形態によれば、電磁波の減衰特性を向上可能な電磁波減衰体が提供できる。
【0038】
図2及び
図3に示した結果から、多層部材10M及び磁性部材15を含む構成において、多層部材10Mから磁性部材15への影響、または、磁性部材15から多層部材10Mへの影響が生じていると考えられる。
【0039】
図4(a)及び
図4(b)は、第1実施形態に係る電磁波減衰体を例示する模式的断面図である。
図4(a)に示すように、薄い磁性層11及び薄い非磁性層12を含む多層部材10Mの上に、厚い磁性部材15が設けられている。複数の磁性層11の1つは、第3結晶粒gr3を含む。磁性層11は薄いため、第3結晶粒gr3のサイズd3(例えば粒径)は、比較的小さい。サイズは、X-Y平面に沿う長さである。例えば、第3結晶粒gr2のサイズd3の平均値は、40nm以下である。
【0040】
このような多層部材10Mの上に、磁性部材15が設けられる。磁性部材15は厚いため、磁性部材15の膜が堆積されていくとともに、磁性部材15に含まれる結晶粒のサイズが大きくなる。
【0041】
例えば、磁性部材15は、第1部材領域15ra及び第2部材領域15rbを含む。第1部材領域15raは、第1方向(Z軸方向)において、第2部材領域15rbと多層部材10Mとの間にある。第1部材領域15raは、多層部材10Mの側の領域(下側領域)である。第2部材領域15rbは、反対側の領域(上側領域)である。
【0042】
第1部材領域15raは、複数の第1結晶粒gr1を含む。第2部材領域15rbは、複数の第2結晶粒gr2を含む。複数の第1結晶粒gr1のサイズd1の平均値は、複数の第2結晶粒gr2のサイズd2の平均値よりも小さい。
【0043】
例えば、磁性部材15は、第1部材面15fa及び第2部材面15fbを含む。第1部材面15faは、第1方向(Z軸方向)において、第2部材面15fbと多層部材10Mとの間にある。第1部材面15faは、複数の第1結晶粒gr1を含む。第2部材面15fb、複数の第2結晶粒gr2を含む。複数の第1結晶粒gr1のサイズd1の平均値は、複数の第2結晶粒gr2のサイズの平均値よりも小さい。
【0044】
薄い磁性層11を含む多層部材10Mの上に磁性部材15が設けられることで、磁性部材15に含まれる第3結晶粒gr3のサイズd3が、多層部材10Mの近傍(例えば第1部材領域15ra)において、特に小さくなると考えられる。
【0045】
多層部材10Mの近傍において第3結晶粒gr3のサイズd3が小さいと、第3結晶粒gr3と磁性層11との間に生じる、層間の静磁気相互作用が大きくなると考えられる。
【0046】
一般に、交換結合相互作用は、強磁性体中のスピンの向きを揃える。磁性体が多結晶体の場合には、この交換結合相互作用は、結晶粒界で小さくなるかゼロになる。従って、交流磁界が多結晶体の磁性体に印加されたときに、実質的に結晶粒を1つの単位としてまとまってスピンが歳差運動する。結晶粒のサイズが小さいことで、この動的な挙動を行う単位が小さくなり、例えば、静磁気相互作用などがより強くなる。これにより、例えば、電磁波の減衰特性が向上しやすくなると考えられる。
【0047】
さらに、
図4(b)に示すように、磁性層11が凹凸を含む場合、例えば、凸部と、第3結晶粒gr3との間に生じる静磁気相互作用が大きくなると考えられる。
【0048】
例えば、複数の磁性層11の1つは、複数の非磁性層12の1つと対向する第1磁性層面11faを含む。第1磁性層面11faは、第1頂部11pp及び第1底部11dpを含む。第1頂部11ppと第1底部11dpとの間の第1方向(Z軸方向)に沿う距離dzは、10nm以上である。距離dzは、凹凸の高さ(深さ)に対応する。距離dzは、50nm以上でも良い。
【0049】
例えば、第1磁性層面11faは、第1頂部11pp、第2頂部11pq及び第1底部11dpを含む。第1方向(Z軸方向)と交差する第2方向De2における第1底部11dpの位置は、第2方向De2における第1頂部11ppの位置と、第2方向De2における第2頂部11pqの位置と、の間にある。複数の非磁性層12の1つの少なくとも一部は、第2方向De2において、第1頂部11ppと第2頂部11pqとの間にある。
【0050】
磁性層11がこのような凹凸を含むことで、例えば、凸部(第1頂部11ppを含む部分)の磁化11pmと、磁性部材15の磁化15pmと、の間に大きな静磁気相互作用が生じると考えられる。
【0051】
磁性部材15の結晶粒(例えば第1結晶粒gr1)のサイズd1が小さいことで、磁化11pmと磁化15pmとの間の静磁気相互作用がより大きくできると考えられる。
【0052】
このような相互作用が多層部材10Mと磁性部材15との間に生じると考えられる。これにより、
図2及び
図3に関して説明したように、試料SP04及び試料SP05において、低い(絶対値が大きい)透過特性T1が得られたと考えられる。
【0053】
図5(a)及び
図5(b)は、参考例の電磁波減衰体を例示する模式的断面図である。
図5(a)に示すように、参考例の電磁波減衰体19においては、非磁性層13の上に、磁性部材15が設けられる。非磁性層13は、例えば、厚いCu層である。非磁性層13は、通常の下地層である。
図5(a)に示すように、非磁性層13の結晶粒gr4が大きい。このため、磁性部材15の結晶粒gr5も比較的大きい。結晶粒が大きいため、電磁波81の減衰特性の向上が不十分になると考えられる。
【0054】
図5(b)に示すように、非磁性層13が凹凸を有している場合において、磁性部材15の非磁性層13の近傍領域r1において静磁気相互作用が作用する可能性がある。しかしながら、結晶粒gr5が大きいため静磁気相互作用が平均化されて、静磁気相互作用が小さくなると考えられる。非磁性層13から離れた領域r2においては、静磁気相互作用が実質的に消失する。このため、電磁波の減衰特性の向上が不十分になると考えられる。
【0055】
多層部材10Mと磁性部材15とを組み合わせた時に得られる特別な特性(
図2及び
図3参照)は、従来知られていない。例えば、
図5(a)及び
図5(b)に関して説明した効果により、このような特性が得られると考えられる。
【0056】
実施形態において、磁性層11の厚さt1は、磁性部材15の厚さt5に比べて十分に薄いことが好ましい。例えば、複数の磁性層11の1つの第1方向に沿う厚さt1は、磁性部材15の第1方向に沿う厚さt5の1/5以下である。
【0057】
実施形態において、非磁性層12の厚さt2は、磁性部材15の厚さt5に比べて十分に薄いことが好ましい。例えば、複数の非磁性層12の1つの第1方向に沿う厚さt2は、磁性部材15の第1方向に沿う厚さt5の1/5以下である。
【0058】
図6は、第1実施形態に係る電磁波減衰体を例示する模式的平面図である。
図6では、図を見やすくするために、複数の層の位置がシフトされて描かれている。
図6に示すように、複数の磁性層11のそれぞれの少なくとも一部は、磁化11pm(磁化容易軸)を有する。複数の磁性層11の1つの少なくとも一部における磁化の向きは、複数の磁性層11の別の1つの少なくとも一部における磁化の向きと交差しても良い。これにより、種々の振動面を有する電磁波を効果的に減衰させることができる。
【0059】
例えば、複数の磁性層11を、磁場を印加した状態で形成しても良い。複数の磁性層11の1つの形成において印加する磁場の方向を、複数の磁性層11の別の1つの形成において印加する磁場の方向と変更することで、複数の方向の磁化容易軸を得ることができる。
【0060】
実施形態において、
図6に例示するような磁化の構造は、例えば、偏光顕微鏡などにより観測できる。
【0061】
図7は、第1実施形態に係る電磁波減衰体を例示する模式的断面図である。
図7は、複数の磁性層11の1つを例示している。
図7に示すように、複数の磁性層11の少なくとも1つは、複数の磁性膜11fと、複数の非磁性膜12fと、を含んでも良い。複数の磁性膜11f及び複数の非磁性膜12fは、第1方向(Z軸方向)に沿って交互に設けられる。複数の非磁性膜12fは、例えば、絶縁性でも良く導電性でも良い。例えば、複数の磁性膜11fの1つから複数の磁性膜11fの別の1つへの向きは、第1方向(Z軸方向)に沿う。複数の非磁性膜12fの1つは、複数の磁性膜11fの1つと、複数の磁性膜11fの別の1つと、の間にある。例えば、複数の磁性膜11fは、第1方向に沿って並ぶ。例えば、複数の非磁性膜12fは、第1方向に沿って並ぶ。
【0062】
複数の磁性膜11fの1つの第1方向に沿う厚さt3は、複数の非磁性膜12fの1つの第1方向に沿う厚さt4よりも厚い。厚さt4は、例えば、0.5nm以上7nm以下である。
【0063】
複数の非磁性膜12fは、例えば、下地層として機能する。複数の非磁性膜12fの1つの上に、複数の磁性膜11fの1つが形成されることで、例えば、複数の磁性膜11fのその1つにおいて良好な軟磁性特性が得られる。例えば、複数の磁性膜11fにおいて、適正な磁区または適正な磁壁領域が形成されやすくなる。例えば、高い減衰効果が得やすくなる。
【0064】
複数の磁性膜11fの少なくとも1つの少なくとも一部は、Co、Ni及びFeよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。例えば、複数の磁性膜11fの1つは、軟磁性膜である。
【0065】
複数の非磁性膜12fの少なくとも1つの少なくとも一部は、Cu、Ta、Ti、W、Mo、Nb及びHfよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。複数の非磁性膜12fの少なくとも1つは、例えば、Cu膜である。
【0066】
複数の磁性層11の少なくとも1つの少なくとも一部は、Co、Ni及びFeよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。複数の磁性層11の1つは、例えば、軟磁性層である。複数の磁性層11の少なくとも1つの少なくとも一部は、Cu、Mo及びCuからなる群から選択された少なくとも1つをさらに含んでも良い。
【0067】
複数の磁性層11の少なくとも1つの少なくとも一部は、Fe100-x1-x2αx1Nx2を含んでも良い。αは、例えば、Zr、Hf、Ta、Nb、Ti、Si及びAlよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。組成比x1は、例えば、0.5原子パーセント以上10原子パーセント以下である。組成比x2は、例えば、0.5原子パーセント以上8原子パーセント以下である。
【0068】
複数の磁性層11の少なくとも1つの少なくとも一部は、例えば、NiFe、CoFe、FeSi、FeZrN、または、FeCoなどを含んでも良い。複数の磁性層11の少なくとも1つの少なくとも一部は、例えば、アモルファス合金を含んでも良い。
【0069】
複数の非磁性層12の少なくとも1つの少なくとも一部は、Cu、Al、Ni、Cr、Mn、Mo、Zr及びSiからなる群から選択された少なくとも1つを含んでも良い。
【0070】
(第2実施形態)
図8(a)~
図8(d)は、第2実施形態に係る電子装置を例示する模式図である。
図8(a)は、斜視図である。
図8(b)は、
図8(a)のA1-A2線断面図である。
図8(c)は、
図8(a)のB1-B2線断面図である。
図8(d)は、
図8(a)の矢印AAから見た平面図である。
図1(a)または
図1(b)は、
図8(b)のC1-C2線断面に対応する。
【0071】
図8(a)に示すように、第2実施形態に係る電子装置110は、電子素子50及び電磁波減衰体10を含む。この例では、基板60がさらに設けられる。電磁波減衰体10は、電子素子50の少なくとも一部を覆う。電子素子50は、例えば半導体素子である。
【0072】
図8(b)に示すように、この例では、電子素子50は、半導体チップ50c、絶縁部50i及び配線50wを含む。この例では、基板60において、電極50e、基板接続部50f及び接続部58が設けられる。配線50wは、半導体チップ50cの一部と電極50eとを電気的に接続する。基板接続部50fにより電極50eと接続部58とが電気的に接続される。基板接続部50fは、基板60を貫通する。接続部58は、半導体チップ50cの入出力部として機能する。接続部58は、例えば、端子でも良い。半導体チップ50cの周りに絶縁部50iが設けられる。絶縁部50iは、例えば、樹脂及びセラミックなどの少なくともいずれかを含む。絶縁部50iにより半導体チップ50cが保護される。
【0073】
電子素子50は、例えば、演算回路、制御回路、記憶回路、スイッチング回路、信号処理回路、及び、高周波回路の少なくともいずれかを含む。
【0074】
電磁波減衰体10の基体10s(
図1(a)参照)は、例えば、電子素子50でも良い。電磁波減衰体10の基体10sは、例えば、絶縁部50iでも良い。
【0075】
図8(b)に例示するように、この例では、電磁波減衰体10は、基板60に設けられた端子50tと電気的に接続される。電磁波減衰体10は、端子50tを介して、一定の電位(例えば接地電位)に設定される。電磁波減衰体10は、例えば、電子素子50から放射される電磁波を減衰させる。電磁波減衰体10は、例えば、シールドとして機能する。
【0076】
図8(a)~
図8(c)に示すように、電磁波減衰体10は、面状部分10pと、第1~第4側面部分10a~10dと、を含む。電子素子50から、電磁波減衰体10の面状部分10pへの方向は、第1方向D1(例えばZ軸方向)に沿う。
【0077】
図8(b)及び
図8(c)に示すように、第1方向D1において、面状部分10pと基板60との間に、電子素子50が位置する。
【0078】
図8(c)及び
図8(d)に示すように、X軸方向において、第1側面部分10aと第3側面部分10cとの間に、電子素子50が位置する。
【0079】
図8(b)及び
図8(d)に示すように、Y軸方向において、第2側面部分10bと第4側面部分10dとの間に、電子素子50が位置する。
【0080】
第1実施形態に関して説明した電磁波減衰体10を用いることで、例えば、200MHz以下の低い周波数領域の電磁波を効果的に減衰体できる。電磁波の減衰特性を向上可能な電子装置を提供できる。
【0081】
例えば、電子素子50で生じた電磁波が外部に出射することが抑制できる。外部からの電磁波が電子素子50に届くことが抑制できる。電子素子50において、安定した動作が得やすくなる。
【0082】
面状部分10pは、例えば、実質的に四角形(平行四辺形、長方形または正方形を含む)でも良い。
【0083】
図9(a)~
図9(d)は、第2実施形態に係る電子装置の一部を例示する模式的断面図である。
図9(a)に示すように、電磁波減衰体10の第1側面部分10aは、複数の磁性層11及び複数の非磁性層12を含む。第1側面部分10aにおける、複数の磁性層11及び複数の非磁性層12の積層方向は、第3方向D3である。
【0084】
図9(b)に示すように、電磁波減衰体10の第2側面部分10bは、複数の磁性層11及び複数の非磁性層12を含む。第2側面部分10bにおける、複数の磁性層11及び複数の非磁性層12の積層方向は、第2方向D2である。
【0085】
図9(c)に示すように、電磁波減衰体10の第3側面部分10cは、複数の磁性層11及び複数の非磁性層12を含む。第3側面部分10cにおける、複数の磁性層11及び複数の非磁性層12の積層方向は、第3方向D3である。
【0086】
図9(d)に示すように、電磁波減衰体10の第4側面部分10dは、複数の磁性層11及び複数の非磁性層12を含む。第4側面部分10dにおける、複数の磁性層11及び複数の非磁性層12の積層方向は、第2方向D2である。
【0087】
第1~第4側面部分10a~10dのそれぞれに含まれる磁性層11は、面状部分10pに含まれる磁性層11と連続しても良い。第1~第4側面部分10a~10dのそれぞれに含まれる非磁性層12は、面状部分10pに含まれる非磁性層12と連続しても良い。
【0088】
このように、実施形態に係る電子装置110は、第1実施形態に係る電磁波減衰体10と、電子素子50と、を含む。例えば、電子素子50から電磁波減衰体10への方向は、第1方向(Z軸方向)である。
【0089】
例えば、電磁波減衰体10は、複数の領域(または複数の部分)を含む。電子素子50の少なくとも一部は、複数の領域の間に設けられる。複数の電磁波減衰体10が設けられても良い。複数の電磁波減衰体10は、例えば、面状部分10p及び第1~第4側面部分10a~10dに対応する。例えば、電子素子50の少なくとも一部は、複数の電磁波減衰体10の間に設けられても良い。
【0090】
図10~
図15は、第2実施形態に係る電子装置を例示する模式的断面図である。
図10に示すように、実施形態に係る電子装置111は、電磁波減衰体10と、複数の電子素子(電子素子51、51B、52、53、53B及び53Cなど)と、を含む。
【0091】
電磁波減衰体10の複数の領域の間に、電子素子が設けられる。電子素子と、電磁波減衰体10の複数の領域の1つと、の間に絶縁領域(絶縁部41及び42など)が設けられても良い。電子素子と、絶縁領域(絶縁部41及び42など)と、の間に樹脂部(樹脂部51I、52I及び53Iなど)が設けられても良い。複数の電子素子のそれぞれに、接続部材(接続部材51N、52N及び53Nなど)が設けられても良い。例えば、接続部材により、電子素子と、接続部58と、が電気的に接続されても良い。
【0092】
図11に示す電子装置112のように、接続部材51Nが、基板55に埋め込まれても良い。
【0093】
図12に示す電子装置113のように、実装部材220が設けられても良い。実装部材220は、基板55と電磁波減衰体10を含む。実装部材220と、別の電磁波減衰体10との間に、電子素子(電子素子51及び51B)が設けられる。
【0094】
図13に示す電子装置114のように、電子素子51の側面に電磁波減衰体10が設けられても良い。側面は、X-Y平面と交差する。
【0095】
図14に示す電子装置115のように、複数の電子素子(電子素子51及び52)を連続して囲むように電磁波減衰体10が設けられても良い。
【0096】
図15に示す電子装置116のように、複数の電子素子の1つ(電子素子51)は、電磁波減衰体10の複数の領域の間に設けられる。複数の電子素子の別の1つ(電子素子52)は、電磁波減衰体10の複数の領域の間に設けられなくても良い。
【0097】
電子装置111~116によっても、電磁波の減衰特性を向上可能な電子装置が提供できる。
【0098】
実施形態は、例えば、EMC(ElectroMagnetic Compatibility)のための電磁波減衰体及び電子装置に応用されても良い。
【0099】
実施形態は、以下の構成(例えば技術案)を含んでも良い。
(構成1)
多層部材と、
磁性部材と、
を備え、
前記多層部材は、複数の磁性層と、導電性の複数の非磁性層と、を含み、
前記複数の磁性層の1つから前記複数の磁性層の別の1つへの方向は、前記多層部材から前記磁性部材への第1方向に沿い、
前記複数の非磁性層の1つは、前記複数の磁性層の前記1つと、前記複数の磁性層の前記別の1つと、の間にあり、
前記磁性部材の前記第1方向に沿う厚さは、前記多層部材の前記第1方向に沿う厚さの1/2以上である、電磁波減衰体。
【0100】
(構成2)
前記磁性部材は、前記多層部材と接する、構成1記載の電磁波減衰体。
【0101】
(構成3)
前記複数の非磁性層の別の1つは、前記磁性部材と接する、構成1または2に記載の電磁波減衰体。
【0102】
(構成4)
前記複数の磁性層の前記1つは、前記磁性部材と接する、構成1または2に記載の電磁波減衰体。
【0103】
(構成5)
前記磁性部材の前記第1方向に沿う前記厚さは、前記複数の磁性層の前記1つの前記第1方向に沿う厚さの5倍以上である、構成1~4のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【0104】
(構成6)
前記複数の非磁性層の前記1つの前記第1方向に沿う厚さは、前記磁性部材の前記第1方向に沿う前記厚さの1/5以下である、構成1~5のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【0105】
(構成7)
前記磁性部材は、第1部材領域及び第2部材領域を含み、前記第1部材領域は、前記第1方向において前記第2部材領域と前記多層部材との間にあり、
前記第1部材領域は、複数の第1結晶粒を含み、
前記第2部材領域は、複数の第2結晶粒を含み、
前記複数の第1結晶粒のサイズの平均値は、前記複数の第2結晶粒のサイズの平均値よりも小さい、構成1~6のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【0106】
(構成8)
前記磁性部材は、第1部材面及び第2部材面を含み、前記第1部材面は、前記第1方向において前記第2部材面と前記多層部材との間にあり、
前記第1部材面は、複数の第1結晶粒を含み、
前記第2部材面は、複数の第2結晶粒を含み、
前記複数の第1結晶粒のサイズの平均値は、前記複数の第2結晶粒のサイズの平均値よりも小さい、構成1~6のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【0107】
(構成9)
前記複数の磁性層の前記1つは、第3結晶粒を含み、
前記第3結晶粒のサイズの平均値は、40nm以下である、構成1~8のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【0108】
(構成10)
前記複数の磁性層の前記1つは、前記複数の非磁性層の前記1つと対向する第1磁性層面を含み、
前記第1磁性層面は、第1頂部と第1底部とを含み、
前記第1頂部と前記第1底部との間の前記第1方向に沿う距離は、10nm以上である、構成1~9のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【0109】
(構成11)
前記複数の磁性層の前記1つは、前記複数の非磁性層の前記1つと対向する第1磁性層面を含み、
前記第1磁性層面は、第1頂部、第2頂部及び第1底部を含み、
前記第1方向と交差する第2方向における前記第1底部の位置は、前記第2方向における前記第1頂部の位置と、前記第2方向における前記第2頂部の位置と、の間にあり、
前記複数の非磁性層の前記1つの少なくとも一部は、前記第2方向において、前記第1頂部と前記第2頂部との間にある、構成1~9のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【0110】
(構成12)
前記複数の磁性層の前記1つは、複数の磁性膜と、複数の非磁性膜と、を含み、
前記複数の磁性膜の1つから前記複数の磁性膜の別の1つへの方向は、前記第1方向に沿い、
前記複数の非磁性膜の1つは、前記複数の磁性膜の前記1つと、前記複数の磁性膜の前記別の1つと、の間にあり、
前記複数の磁性膜の前記1つの前記第1方向に沿う厚さは、前記複数の非磁性膜の前記1つの前記第1方向に沿う厚さよりも厚く、
前記厚さは、0.5nm以上7nm以下である、構成1~5のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【0111】
(構成13)
前記複数の非磁性膜の前記少なくとも1つの少なくとも一部は、Cu、Ta、Ti、W、Mo、Nb及びHfよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成12記載の電磁波減衰体。
【0112】
(構成14)
前記複数の磁性膜の前記少なくとも1つの少なくとも一部は、Co、Ni及びFeよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成12または13に記載の電磁波減衰体。
【0113】
(構成15)
前記複数の磁性層の前記1つの少なくとも一部は、Co、Ni及びFeよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1~14のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【0114】
(構成16)
前記複数の磁性層の前記1つの前記少なくとも一部は、Cu、Mo及びCuからなる群から選択された少なくとも1つをさらに含む、構成15記載の電磁波減衰体。
【0115】
(構成17)
前記複数の磁性層の前記1つの少なくとも一部は、Fe100-x1-x2αx1Nx2を含み、
前記αは、Zr、Hf、Ta、Nb、Ti、Si及びAlよりなる群から選択された少なくとも1つを含む、構成1~14のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【0116】
(構成18)
前記複数の非磁性層の前記1つの少なくとも一部は、Cu、Al、Ni、Cr、Mn、Mo、Zr及びSiからなる群から選択された少なくとも1つをさらに含む、構成1~17のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【0117】
(構成19)
前記複数の磁性層の前記1つの少なくとも一部における磁化の向きは、前記複数の磁性層の前記1つの少なくとも一部における磁化の向きと交差する、構成1~18のいずれか1つに記載の電磁波減衰体。
【0118】
(構成20)
構成1~19のいずれか1つに記載の電磁波減衰体と、
電子素子と、
を備えた、電子装置。
【0119】
実施形態によれば、電磁波の減衰特性を向上可能な電磁波減衰体及び電子装置が提供できる。
【0120】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、電磁波減衰体に含まれる多層部材、磁性層、非磁性層及び磁性部材、並びに、電子装置に含まれる電子素子及び半導体チップなどの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0121】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0122】
その他、本発明の実施の形態として上述した電磁波減衰体及び電子装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての電磁波減衰体及び電子装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0123】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0124】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0125】
10…電磁波減衰体、 10M…多層部材、 10a~10d…第1~第4側面部分、 10p…面状部分、 10s…基体、 11…磁性層、 11dp…第1底部、 11f…磁性膜、 11fa…第1磁性層面、 11pm…磁化、 11pp…第1頂部、 11pq…第2頂部、 12…非磁性層、 12f…非磁性膜、 13…非磁性層、 15…磁性部材、 15fa、15fb…第1、第2部材面、 15pm…磁化、 15ra、15rb…第1、第2部材領域、 19…電磁波減衰体、 41、42…絶縁部、 50…電子素子、 50c…半導体チップ、 50e…電極、 50f…基板接続部、 50i…絶縁部、 50t…端子、 50w…配線、 51、51B、52、53、53B、53C…電子素子、 51I、52I、53I…樹脂部、 51N、52N、53N…接続部材、 55…基板、 58…接続部、 60…基板、 81…電磁波、 110~116…電子装置、 220…実装部材、 AA…矢印、 CP13、CP23…計算結果、 D1~D3…第1~第3方向、 De2…第2方向、 SP01~SP05…試料、 T1…透過特性、 d1、d2、d3…サイズ、 dz…距離、 gr1~gr3…第1~第3結晶粒、 gr4、gr5…結晶粒、 r1…近傍領域、 r2…離れた領域、 t0~t5…厚さ