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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】道路認識装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221018BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20221018BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G06T7/00 650A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019012645
(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公開番号】P2020119477
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2021-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昌也
(72)【発明者】
【氏名】植松 巧
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-091285(JP,A)
【文献】特開2018-206129(JP,A)
【文献】特開2014-044744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺センサ(120)を有する車両(10)に搭載される道路認識装置(110)であって、
前記周辺センサによって検出した路側物の形状と、他車両の移動履歴との少なくとも一つ以上を周辺情報として認識する周辺環境認識部(111)と、
前記周辺情報の信頼度を設定する信頼度設定部(112)と、
前記信頼度の高い周辺情報を優先的に用いて前記車両の走行している自車線の基準線を求める基準線設定部(113)と、
前記基準線を出力する出力部(114)と、を備え、
前記信頼度設定部は、
前記車両の方向指示器(250)が作動している場合に、前記方向指示器が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低く設定し、
前記方向指示器が作動している場合であって、かつ、前記車両が車線変更不可区間を走行している場合に、少なくとも前記路側物の形状と前記他車両の移動履歴とのいずれかを含む周辺情報の信頼度を低く設定する、道路認識装置。
【請求項2】
請求項に記載の道路認識装置であって、
前記基準線設定部は、自車線の基準線を用いて前記車両の隣車線の基準線を求める、道路認識装置。
【請求項3】
請求項に記載の道路認識装置であって、
前記基準線設定部は、前記車両が車線変更不可区間を走行している場合に、前記隣車線の基準線を求めない、道路認識装置。
【請求項4】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の道路認識装置であって、
前記信頼度設定部は、前記方向指示器が作動している場合であって、かつ、合流地点を検出した場合に、前記方向指示器が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低く設定する、道路認識装置。
【請求項5】
周辺センサを有する車両に搭載される道路認識装置であって、
前記周辺センサによって検出した道路の区画線の形状と、路側物の形状と、他車両の移動履歴との少なくとも一つ以上を周辺情報として認識する周辺環境認識部と、
前記周辺情報の信頼度を設定する信頼度設定部と、
前記信頼度の高い周辺情報を優先的に用いて前記車両の走行している自車線の基準線を求める基準線設定部と、
前記基準線を出力する出力部と、を備え、
前記信頼度設定部は、前記車両の方向指示器が作動している場合に、前記方向指示器が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低く設定し、
前記基準線設定部は、自車線の基準線を用いて前記車両の隣車線の基準線を求める、道路認識装置。
【請求項6】
周辺センサを有する車両に搭載される道路認識装置であって、
前記周辺センサによって検出した道路の区画線の形状と、路側物の形状と、他車両の移動履歴との少なくとも一つ以上を周辺情報として認識する周辺環境認識部と、
前記周辺情報の信頼度を設定する信頼度設定部と、
前記信頼度の高い周辺情報を優先的に用いて前記車両の走行している自車線の基準線を求める基準線設定部と、
前記基準線を出力する出力部と、を備え、
前記信頼度設定部は、
前記車両の方向指示器が作動している場合に、前記方向指示器が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低く設定し、
前記方向指示器が作動している場合であって、かつ、合流地点を検出した場合に、前記方向指示器が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低く設定する、道路認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、道路認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路認識装置として、カメラで認識した道路の区画線を用いて車線の基準線を求めるものが知られている。例えば、自動運転車両は、基準線に沿って自動走行を行うことができる。特許文献1には、合流地点において、方向指示器が示す方向と反対側の区画線を用いて、走行レーンに沿った軌道を求める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3871772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば、本線に合流する合流車線において、方向指示器が示す方向と反対側の区画線を用いて基準線を求めると、基準線が区画線に沿って湾曲し、本線まで進入してしまう場合があり得る。この場合基準線に沿って車両を走行させると、合流のための制御無しで、意図せずに車両が本線に進入してしまうおそれがある。そのため、基準線を適切に求めることができる技術が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。本開示の第1の形態によれば、周辺センサ(120)を有する車両(10)に搭載される道路認識装置(110)が提供される。この道路認識装置は、前記周辺センサによって検出した路側物の形状と、他車両の移動履歴との少なくとも一つ以上を周辺情報として認識する周辺環境認識部(111)と、前記周辺情報の信頼度を設定する信頼度設定部(112)と、前記信頼度の高い周辺情報を優先的に用いて前記車両の走行している自車線の基準線を求める基準線設定部(113)と、前記基準線を出力する出力部(114)と、を備え、前記信頼度設定部は、前記車両の方向指示器(250)が作動している場合に、前記方向指示器が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低く設定し、前記方向指示器が作動している場合であって、かつ、前記車両が車線変更不可区間を走行している場合に、少なくとも前記路側物の形状と前記他車両の移動履歴とのいずれかを含む周辺情報の信頼度を低く設定する。
本開示の第2の形態によれば、周辺センサを有する車両に搭載される道路認識装置が提供される。この道路認識装置は、前記周辺センサによって検出した道路の区画線の形状と、路側物の形状と、他車両の移動履歴との少なくとも一つ以上を周辺情報として認識する周辺環境認識部と、前記周辺情報の信頼度を設定する信頼度設定部と、前記信頼度の高い周辺情報を優先的に用いて前記車両の走行している自車線の基準線を求める基準線設定部と、前記基準線を出力する出力部と、を備え、前記信頼度設定部は、前記車両の方向指示器が作動している場合に、前記方向指示器が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低く設定し、前記基準線設定部は、自車線の基準線を用いて前記車両の隣車線の基準線を求める。
本開示の第3の形態によれば、周辺センサを有する車両に搭載される道路認識装置が提供される。この道路認識装置は、前記周辺センサによって検出した道路の区画線の形状と、路側物の形状と、他車両の移動履歴との少なくとも一つ以上を周辺情報として認識する周辺環境認識部と、前記周辺情報の信頼度を設定する信頼度設定部と、前記信頼度の高い周辺情報を優先的に用いて前記車両の走行している自車線の基準線を求める基準線設定部と、前記基準線を出力する出力部と、を備え、前記信頼度設定部は、前記車両の方向指示器が作動している場合に、前記方向指示器が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低く設定し、前記方向指示器が作動している場合であって、かつ、合流地点を検出した場合に、前記方向指示器が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低く設定する。また、本開示は、以下の形態としても実現できる。
【0006】
本開示の一形態によれば、周辺センサ(120)を有する車両(10)に搭載される道路認識装置(110)が提供される。道路形状認識装置は、前記周辺センサによって検出した道路の区画線の形状と、路側物の形状と、他車両の移動履歴との少なくとも一つ以上を周辺情報として認識する周辺環境認識部(111)と、前記周辺情報の信頼度を設定する信頼度設定部(112)と、前記信頼度の高い周辺情報を優先的に用いて前記車両の走行している自車線の基準線を求める基準線設定部(113)と、前記基準線を出力する出力部(114)と、を備え、前記信頼度設定部は、前記車両の方向指示器(250)が作動している場合に、前記方向指示器が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低く設定する。
【0007】
この形態の道路形状認識装置によれば、基準線設定部は、方向指示器が作動している場合に、方向指示器が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低くするため、基準線を適切に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自動運転システムの構成を示す概要図である。
図2】道路認識処理を表わすフローチャートである。
図3】信頼度設定処理を表すフローチャートである。
図4】基準線の例を示す図である。
図5】基準線設定処理を表すフローチャートである。
図6】合流支援の説明図である。
図7】第2実施形態における信頼度設定処理を表すフローチャートである。
図8】車線の例を示す図である。
図9】第2実施形態における基準線設定処理を表すフローチャートである。
図10】第3実施形態における信頼度設定処理を表すフローチャートである。
図11】車線の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.第1実施形態:
図1に示すように、車両10は、自動運転制御システム100を備える。本実施形態において、自動運転制御システム100は、道路認識装置110と、周辺センサ120と、自車状況センサ126と、運転制御部210と、駆動力制御ECU(Electronic Control Unit)220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240と、方向指示器250と、を備える。道路認識装置110と、運転制御部210と、駆動力制御ECU220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240と、方向指示器250とは、車載ネットワーク260を介して接続される。
【0010】
道路認識装置110は、周辺環境認識部111と、信頼度設定部112と、基準線設定部113と、出力部114と、を備える。道路認識装置110は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、これらの各部の機能を実現する。ただし、これらの各部の機能の一部又は全部をハードウェア回路で実現してもよい。
【0011】
周辺環境認識部111は、周辺センサ120の検出信号を用いて周辺情報を認識する。より具体的には、周辺環境認識部111は、周辺センサ120によって検出した道路の区画線の形状と、路側物の形状と、他車両の移動履歴との少なくとも一つ以上を周辺情報として認識する。信頼度設定部112は、周辺情報の信頼度を設定する。基準線設定部113は、信頼度の高い周辺情報を優先的に用いて、車両10が走行している車線の基準線を求める。基準線とは、例えば、車線の中心線であり、車両10は、基準線に沿って自動走行を行うことができる。基準線設定部113は、例えば、区画線や路側物の形状、他車両の移動履歴を示す点列から求められた線を、車線の中心にずらして基準線を求める。例えば、区画線の形状を用いる場合、基準線設定部113は、区画線の形状から求められた線を車線幅の半分オフセットさせることで基準線を求める。出力部114は、基準線設定部113が求めた基準線を、車載ネットワーク260を通じて運転制御部210等に出力する。
【0012】
周辺センサ120は、カメラ122と物体センサ124とを備える。カメラ122は、自車両の周囲を撮像して画像を取得する。物体センサ124は、自車両の周囲の状況を検出する。物体センサ124として、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、超音波センサ等の反射波を利用した物体センサが挙げられる。本実施形態において、周辺環境認識部111は、カメラ122が撮像した画像および物体センサ124の検出結果から、走行している道路の左右の区画線の存在とその位置や、路側物の存在とその位置、他車両の存在、位置、大きさ、距離、進行方向、速度、ヨー角速度、等を検出する。周辺環境認識部111は、他車両との車車間通信によってこれらの情報の一部または全部を検出しても良い。
【0013】
自車状況センサ126は、車両センサとヨーレートセンサとを備える。自車状況センサ126は、車両10の状況として、車両10の速度や方向指示器250の作動の有無、ヨーレートを検出する。
【0014】
運転制御部210は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、自動運転機能を実現する。運転制御部210は、例えば、基準線設定部113が求めた基準線に沿って走行するように、駆動力制御ECU220および制動力制御ECU230、操舵制御ECU240を制御する。運転制御部210は、例えば、車両10が隣車線に車線変更を行う場合に、車両10が走行している車線の基準線から隣車線の基準線を走行するように合流支援を行ってもよい。また、運転制御部210は、方向指示器250の作動を制御する。
【0015】
駆動力制御ECU220は、エンジンなど車両の駆動力を発生するアクチュエータを制御する電子制御装置である。運転者が手動で運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、アクセルペダルの操作量に応じてエンジンや電気モータである動力源を制御する。一方、自動運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、運転制御部210で演算された要求駆動力に応じて動力源を制御する。
【0016】
制動力制御ECU230は、車両の制動力を発生するブレーキアクチュエータを制御する電子制御装置である。運転者が手動で運転を行う場合、制動力制御ECU230は、ブレーキペダルの操作量に応じてブレーキアクチュエータを制御する。一方、自動運転を行う場合、制動力制御ECU230は、運転制御部210で演算された要求制動力に応じてブレーキアクチュエータを制御する。
【0017】
操舵制御ECU240は、車両の操舵トルクを発生するモータを制御する電子制御装置である。運転者が手動で運転を行う場合、操舵制御ECU240は、ステアリングハンドルの操作に応じてモータを制御して、ステアリング操作に対するアシストトルクを発生させる。これにより、運転者が少量の力でステアリングを操作でき、車両の操舵を実現する。一方、自動運転を行う場合、操舵制御ECU240は、運転制御部210で演算された要求操舵角に応じてモータを制御することで操舵を行う。
【0018】
図2に示す道路認識処理は、基準線設定部113が車両10の走行車線の基準線を求める一連の処理である。この処理は車両10の走行中、道路認識装置110により繰り返し実行される処理であり、例えば、100ms毎に繰り返し実行される処理である。
【0019】
まず、周辺環境認識部111は、ステップS100で、周辺情報を取得する。より具体的には、カメラ122が撮影した車両10の周辺画像や、物体センサ124が検出した車両10の周辺状況から、周辺情報を取得する。
【0020】
次に、信頼度設定部112は、ステップS110において、ステップS100により取得した周辺情報に信頼度を設定する。本実施形態において、信頼度設定部112は、周辺情報として、(1)道路の区画線の形状と、(2)路側物の形状と、(3)他車両の移動履歴と、にそれぞれ信頼度を設定する。信頼度設定の詳細については後述する。
【0021】
続いて、基準線設定部113は、ステップS120において、ステップS110で設定した信頼度が高い周辺情報を優先的に用いて車両10が走行している自車線の基準線や、隣車線の基準線を求める。基準線の求め方の詳細については後述する。
【0022】
最後に、出力部114は、ステップS130において、ステップS120で求められた基準線を運転制御部210に出力する。
【0023】
図3に示す信頼度設定処理は、図2のステップS110において、信頼度設定部112が周辺情報の信頼度を設定する一連の処理である。ステップS200において、信頼度設定部112は、車両10の方向指示器250が作動しているか否か判別する。信頼度設定部112は、方向指示器250の作動が解除されてから予め定められた期間内であれば、方向指示器250が作動していると判定してもよい。方向指示器250が作動している場合、信頼度設定部112は、ステップS210に進み、方向指示器250が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低くするよう、信頼度を設定する。一方、方向指示器250が作動していない場合、信頼度設定部112は、ステップS215に進み、信頼度を設定する。信頼度設定部112は、ステップS210、S215において、例えば、車両10から距離が遠い位置の周辺情報であるほど信頼度を低く設定する。また、信頼度設定部112は、例えば、区画線の形状の信頼度を、他車両の移動体履歴の信頼度と路側物の形状の信頼度よりも高く設定する。
【0024】
図4に示すように、車両10は、合流車線である車線Ln1を走行しており、他車両20は、車線Ln1の隣車線である車線Ln2を走行している。基準線B1は、車線Ln1の区画線の形状と、路側物30の形状と、他車両20の移動履歴21とを用いて求められる。図示の便宜上、周辺情報I1~I3はハッチングを付した領域で示している。周辺情報I1は、車線Ln1の車両10の作動している方向指示器250側の区画線の形状であり、周辺情報I2は、車線Ln1の車両10の方向指示器250が示す方向と逆方向側の区画線の形状である。周辺情報I3は、車両10の方向指示器250が示す方向と逆方向側の路側物30の形状である。移動履歴21を周辺情報I4ともいう。周辺情報I4は、車線Ln1の車両10の方向指示器250が示す方向側である隣車線Ln2を走行する他車両20の移動履歴21である。信頼度設定部112は、ステップS210(図3)において、車両10の方向指示器250が示す方向と逆方向側の情報である周辺情報I2、I3の信頼度を、車両10の方向指示器250が示す方向側の情報である周辺情報I1、I4の信頼度よりも低く設定する。
【0025】
図5に示す基準線設定処理は、図2に示すステップS120において、基準線設定部113が基準線を求める一連の処理である。まず、ステップS300において、基準線設定部113は、信頼度が高い周辺情報を優先的に用いて車両10が走行している自車線Ln1の基準線B1を求める。図4を例として説明すると、基準線設定部113は、信頼度が高い周辺情報I1、I4を、信頼度が低い周辺情報I2、I3よりも優先的に用いて、自車線Ln1の基準線B1を求める。より具体的には、基準線設定部113は、例えば、各周辺情報I1~I4より求められる線を車線Ln1の中心にずらし、各信頼度に応じて、つまり、信頼度が高いほど重みが大きくなるように加重平均することで基準線B1を求めることができる。そのため、基準線B1が、車線Ln1の車両10の方向指示器250が示す方向と逆方向側の区画線の形状や路側物30の形状のように車線Ln2側に向かって湾曲することを抑制できる。なお、基準線設定部113は、予め定められた閾値以上の信頼度である周辺情報のみを用いて基準線B1を求めてもよい。
【0026】
次に、基準線設定部113は、ステップS310において、隣車線Ln2が検出されたか否か判定する。隣車線Ln2の検出は、周辺情報を用いて行い、例えば、カメラ122が撮像した画像に車両10の進行方向と同方向に走行する他車両20が車両10の隣に認識される場合に隣車線Ln2が検出される。隣車線Ln2が検出されない場合、基準線設定部113は基準線設定処理を終了する。一方、隣車線Ln2が検出された場合、基準線設定部113はステップS320の処理に進み、自車線Ln1の基準線B1を用いて隣車線Ln2の基準線B2を求める。隣車線Ln2の基準線B2は、例えば、自車線の基準線B1を車線Ln1の幅分隣方向にずらすことで、求められる。
【0027】
図6に示すように、運転制御部210は、出力部114より出力された基準線B1、B2を用いて、経路R1を走行するように各ECUを制御し、車線変更に伴う合流支援を行う。経路R1は、自車線Ln1の基準線B1と隣車線Ln2の基準線B2とを滑らかに繋ぐ曲線である。
【0028】
以上で説明した本実施形態の道路認識装置110によれば、基準線設定部113は、方向指示器250が作動している場合に、方向指示器250が示す方向と逆方向側の周辺情報I2、I3の信頼度を低くする。基準線設定部113は、信頼度の高い周辺情報I1を優先的に用いて基準線B1を求める。そのため、例えば、本線に合流する合流車線において、基準線が区画線に沿って湾曲し、本線まで進入してしまうことを抑制でき、基準線B1を適切に求めることができる。
【0029】
また、基準線設定部113は、道路の区画線の形状だけでなく、壁やガードレール等の路側物30の形状と、他車両20の移動履歴21とを用いて、基準線B1を求めている。そのため、区画線の形状が認識できない場合であっても、基準線B1を求めることができる。また、路側物30の形状や他車両20の移動履歴21は、道路の区画線よりも遠方を認識しやすいため、道路の区画線の形状と組み合わせて用いることで、遠方まで高精度に基準線B1を求めることができる。
【0030】
また、基準線設定部113は、自車線Ln1の基準線B1に加えて、隣車線Ln2の基準線B2も求めているため、車線変更する場合に、自車線Ln1の基準線B1と隣車線Ln2の基準線B2とを繋ぐ経路に沿って走行する合流支援を行うことができる。
【0031】
B.第2実施形態:
図7に示す第2実施形態の信頼度設定処理は、車線変更不可区間の有無に応じて信頼度を設定する点が図3に示した第1実施形態の信頼度設定処理と異なる。第2実施形態の自動運転制御システムの構成は、第1実施形態の自動運転制御システムの構成と同一であるため、自動運転制御システムの構成の説明は省略する。
【0032】
図8に示すように、車両10は、合流車線である車線Ln3を走行しており、車線Ln3と車線Ln3の隣車線である車線Ln4との間には、立ち入り禁止領域NAが設置されている。図示の便宜上、周辺情報I5はハッチングを付した領域で示している。周辺情報I5は、禁止領域NAの隣車線Ln4側に設置された、例えば車線変更禁止区間を示すガードレール等の路側物40の形状である。
【0033】
第2実施形態では、ステップS200(図7)で方向指示器250が作動していると判定された場合、信頼度設定部112は、ステップS203において、車両10が走行している車線Ln3が車線変更不可区間か否か判定する。信頼度設定部112は、周辺情報を用いて車線変更不可区間の判定を行う。信頼度設定部112は、例えば、カメラ122が撮像した画像に立ち入り禁止や導流帯を示す道路標示が認識される場合に、車線変更不可区間であると判定する。また、信頼度設定部112は、ナビゲーションシステム等から車線変更不可区間の有無を取得してもよい。車線変更不可区間でない場合、信頼度設定部112は、ステップS210に進み、方向指示器250が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低くするよう、信頼度を設定する。一方、車線変更不可区間である場合、信頼度設定部112は、ステップS213の処理に進み、方向指示器250が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度に加えて、少なくとも路側物の形状と他車両の移動履歴とのいずれかを含む周辺情報の信頼度を低く設定する。図8を例として説明すると、信頼度設定部112は、周辺情報I5の信頼度を低く設定する。
【0034】
図9に示す第2実施形態の基準線設定処理は、車線変更不可区間が検出された場合に、隣車線Ln4の基準線を求めない点が図5に示す第1実施形態の基準線設定処理と異なる。
【0035】
第2実施形態では、ステップS300の処理の後に、基準線設定部113は、ステップS303において、車両10が走行している道路が車線変更不可区間か否か判定する。基準線設定部113は、上述したステップS203で行った車線変更不可区間か否かの判定結果を信頼度設定部112から取得して用いてもよく、また、基準線設定部113自身が判定してもよい。車線変更不可区間でない場合、基準線設定部113は、ステップS310に進み、隣車線を検出した場合、ステップS320で隣車線Ln4の基準線を求める。一方、車線変更不可区間である場合、基準線設定部113は、基準線設定処理を終了する。つまり、車線変更不可区間である場合、隣車線Ln4の基準線を求めない。
【0036】
以上で説明した本実施形態の道路認識装置110では、基準線設定部113は、
方向指示器250が作動しており、かつ、車両10が車線変更不可区間を走行している場合に、方向指示器250が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度に加えて、少なくとも路側物の形状と他車両の移動履歴とのいずれかを含む周辺情報を低く設定する。例えば、車線変更不可区間では、自車線Ln3と隣車線Ln4とが並行でない場合があり、隣車線Ln4を走行している他車両の移動履歴や車線変更禁止区間を示す路側物の形状を用いて自車線Ln3の基準線を求めると、実際の車線の形状と異なる基準線となるおそれがあるためである。そのため、基準線をより適切に求めることができる。
【0037】
また、本実施形態では、基準線設定部113は、車両10が車線変更不可区間を走行している場合に、隣車線の基準線を求めない。例えば、車線変更不可区間では、自車線Ln3と隣車線Ln4とが並行でない場合があり、実際の車線の形と異なる隣車線Ln4の基準線が求められるおそれがあるためである。そのため、実際の車線の形状と異なる隣車線Ln4の基準線が求められることを抑制できる。なお、車線変更不可区間では、車線変更に伴う合流支援を行わないため、隣車線Ln4の基準線を求めなくても、走行に影響し難い。
【0038】
C.第3実施形態:
図10に示す第3実施形態の道路認識処理は、合流地点の有無に応じて信頼度を設定する点が図3に示す第1実施形態の道路認識処理と異なる。第3実施形態の自動運転制御システムの構成は、第1実施形態の自動運転制御システムの構成と同一であるため、自動運転制御システムの構成の説明は省略する。
【0039】
図11に示すように、車両10は、車線Ln5を走行しており、車線Ln5と車線Ln5の隣車線Ln6とは、合流することなく並列している。つまり、図4図8に示す合流地点を有している道路と異なり、図11に示す道路は、合流地点を有していない。
【0040】
第3実施形態では、ステップS200(図10)で方向指示器250が作動していると判定された場合、信頼度設定部112は、ステップS207において、合流地点が検出されたか否か判別する。本実施形態では、信頼度設定部112は、周辺情報を用いて合流地点の検出を行う。信頼度設定部112は、例えば、カメラ122が撮像した画像で車両10の走行する車線を示す左右の区画線の間隔が狭くなっていく地点や、車両10の右側の区画線と車両10の左側の路側物との間隔が狭くなっていく地点を、合流地点として検出する。また、信頼度設定部112は、ナビゲーションシステム等から合流地点の有無を取得してもよい。合流地点が検出された場合、信頼度設定部112は、ステップS210に進み、方向指示器250が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低くするよう、信頼度を設定する。なお、合流地点において、車両の走行する車線であって車両の前方を走行する他車両の移動履歴は、車線変更を行う可能性が高いため、基準線設定部113が基準線を求める際に用いないように信頼度を設定することが好ましい。他車両が車両の前方を走行しているか否かは、例えば、カメラ122の撮像した画像や物体センサ124の検出結果から判定できる。一方、図11に示す状況のように、合流地点が検出されない場合、信頼度設定部112は、ステップS215に進み、第1実施形態と同様に信頼度の設定を行う。
【0041】
以上で説明した本実施形態の道路認識装置110によれば、基準線設定部113は、
方向指示器250が作動しており、かつ、合流地点が検出された場合に、方向指示器250が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低く設定する。つまり、方向指示器250が作動していても、合流地点でない場合、方向指示器250が示す方向と逆方向側の周辺情報の信頼度を低くしない。そのため、合流地点が検出されない車線Ln5において、方向指示器250が示す方向と逆方向側の周辺情報が過度に使えなくなることを抑制できる。
【0042】
D.その他の実施形態:
(D1)上述した実施形態において、基準線設定部113は、周辺情報として、区画線や路側物の形状、他車両の移動履歴を用いて基準線を求めている。この代わりに、基準線設定部113は、これらの周辺情報だけでなく、他車両との車車間通信によって取得した他車両が算出した基準線を用いて基準線を求めてもよい。例えば、基準線設定部113は、隣車線を走行している他車両が算出した基準線を車線幅分オフセットさせ、区画線の形状より求められる線を自車線の中心にずらし、平均することで基準線を求める。
【0043】
(D2)上述した実施形態において、出力部114は、基準線設定部113が求めた基準線を運転制御部210に出力している。この代わりに、出力部114は、基準線よりも高精度に道路形状を線で表す道路モデルを算出する道路モデル算出部に出力してもよい。道路モデル算出部は、周辺情報や基準線に基づき、例えば、カルマンフィルタや最小二乗法を用いて道路モデルを算出できる。この場合、運転制御部210は、道路モデル算出部が算出した道路モデルに沿って走行するように各ECUを制御する。
【0044】
(D3)上述した第1実施形態において、基準線設定部113は、図3に示す基準線設定処理で、隣車線Ln2がある場合に、隣車線Ln2の基準線を検出している。この代わりに、基準線設定部113は、この処理(ステップS310、320)を省略して、自車線の基準線のみ求めて出力してもよい。
【0045】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
10 車両、110 道路認識装置、111 周辺環境認識部、112 信頼度設定部、113 基準線設定部、114 出力部、120 周辺センサ、250 方向指示器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11