(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】コンバインの穀稈搬送装置
(51)【国際特許分類】
A01D 57/00 20060101AFI20221018BHJP
A01D 61/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A01D57/00 H
A01D57/00 L
A01D61/00 301A
A01D61/00 301J
(21)【出願番号】P 2019019237
(22)【出願日】2019-02-06
【審査請求日】2021-07-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿川 陽一
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-127663(JP,A)
【文献】特開2006-121945(JP,A)
【文献】特開2016-202006(JP,A)
【文献】特開2004-275014(JP,A)
【文献】特開2016-067263(JP,A)
【文献】特開2016-182093(JP,A)
【文献】特開2004-201531(JP,A)
【文献】特開2007-289045(JP,A)
【文献】特開2007-228805(JP,A)
【文献】特開2001-045842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 57/00 ー 57/30
A01D 61/00 - 61/04
A01D 63/00 - 65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈り取った穀稈を搬送する始端部と終端部に設ける回転輪体と駆動スプロケットとテンション輪体に巻き掛ける左右の株元搬送チェーンを穀稈の合流部において、その穀稈の搬送中途部と終端部、又は終端部どうしを互いに対向させて設け、この合流部における株元搬送チェーンの対向間隔を、一方の株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体の後退によって拡げ、係る合流部に詰まった穀稈を取り除くことができるように構成すると共に、この際の株元搬送チェーンの弛みに基づく株元搬送チェーンの始端部に設ける回転輪体からの離脱を阻止するチェーン外れ防止体を設け
、前記駆動スプロケットを手動駆動手段によって正逆回転させて、合流部に詰まった穀稈を株元搬送チェーンの正逆回転作動によって解す時に、前記駆動スプロケットの逆回転作動時に生ずる駆動スプロケットからの株元搬送チェーンの離脱を阻止する歯飛び防止体を付設し、この歯飛び防止体を株元搬送チェーンに接近させて駆動スプロケットからの株元搬送チェーンの離脱を阻止する作用位置と、株元搬送チェーンから離して駆動スプロケットからの株元搬送チェーンの離脱を許容する非作用位置に移動自在に設けることを特徴とするコンバインの穀稈搬送装置。
【請求項2】
前記チェーン外れ防止体を、刈り取った穀稈を搬送する始端部の回転輪体に巻き掛ける株元搬送チェーンの上下のリンクプレート間に臨むように設け、この上下のリンクプレート間に詰まった藁屑等の異物を掻き落とすように構成することを特徴とする請求項1のコンバインの穀稈搬送装置。
【請求項3】
前記株元搬送チェーンに付設する歯飛び防止体を、合流部に詰まった穀稈を取り除く際に後退させる株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体の移動に連動させて、その非作用位置から作用位置、或いはその作用位置から非作用位置に移動するように構成することを特徴とする請求項
1又は請求項2に記載のコンバインの穀稈搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、稲や麦等を刈取って収穫するコンバインに係り、詳しくは刈取部に設ける複数の引起装置によって引き起こして刈刃装置によって刈取った穀稈を合流させて脱穀部に搬送する穀稈搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
稲や麦等を刈取って収穫するコンバインは、圃場の立毛穀稈を刈取部に設ける複数の引起装置や掻込装置によって引き起こして刈刃装置によって刈取り、また、刈取った複数条列の穀稈を左右の穂先及び株元搬送装置によって構成する穀稈搬送装置によって合流させて脱穀部に搬送し、さらに、脱穀部は扱歯を備える扱胴や揺動流板等によって刈取部から搬送された穀稈から穀粒を脱粒・選別処理して収穫する。
【0003】
そして、このようなコンバインで刈幅を広くして能率的に刈取作業を行う場合は、引起装置や掻込装置、また穂先及び株元搬送装置を多数設けて、刈取った穀稈を遅滞なくもれなく脱穀部に搬送する必要があり、例えば、5条乃至6条刈りのコンバインでは、その刈取条数と同数の5つ乃至6つの引起装置と掻込装置、及び3つの穂先及び株元搬送装置を設けている。
【0004】
また、この場合、5つ乃至6つの引起装置と掻込装置及び刈刃装置によって刈取った穀稈を脱穀部に搬送すべく、操縦部側となる機体の最も右側に位置する右穂先及び株元搬送装置の搬送経路の中途に、中央に位置する穂先及び株元搬送装置によって搬送した穀稈を合流させ、更に機体の最も左側に位置する左穂先及び株元搬送装置によって搬送した穀稈を右穂先及び株元搬送装置の搬送経路の終端部において合流させ、その後、扱深さ搬送装置等によって扱ぎ深さ調節を加えて脱穀部に搬送する。
【0005】
しかし、このように右穂先及び株元搬送装置の搬送経路の中途や終端部に中央や左側に位置する穂先及び株元搬送装置によって搬送した穀稈を合流させると、特に株元搬送装置に係る合流部における搬送通路は稈こぼれを防止するためあまり広く取ることができないから、一時に大量の穀稈が合流しようとすると穀稈が停滞気味となる。そして、この合流部でひとたび停滞が生ずると次々に搬送されてくる後続の穀稈によって搬送経路は穀稈で満たされて詰まりを生じ、これによって株元搬送装置は過負荷となって搬送不能に陥る。
【0006】
そこで、株元搬送装置を構成する一方の株元搬送チェーンの搬送終端部を巻回支持する回転輪を他方の株元搬送チェーンに対する遠近方向に位置変更するようにして、通常は、回転輪を接近位置させることで合流部の幅を狭くして少量の穀稈であっても姿勢乱れや脱落などなく確実に合流させながらも、合流部での刈取穀稈の詰まりが発生した場合には、回転輪を離隔位置させることで合流部の幅を広くして、詰まりを緩やかなものにでき、これにより、合流部からの穀稈の引き抜きを行い易くすることが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0007】
また、同様に株元搬送チェーンの合流部で刈取穀稈の詰まりが発生した場合に、この詰まりを取り除くために株元搬送チェーンの終端ローラを他方の株元搬送チェーンから離れる方向に移動させた状態で、株元搬送チェーンを正逆回転駆動して、穀稈を解すことにより詰まった穀稈を取り除き易くすることが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平11-127663号公報
【文献】特開2004-275014号公報
【文献】特開2016-67263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記特許文献1~3に記載されたコンバインでは、左右の株元搬送装置の合流部で刈取穀稈の詰まりが生じた際に、一方の株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体を後退させると、この株元搬送チェーンの終端部から回転輪体が離れて、株元搬送チェーンの終端部は回転輪体による規制を失って、穀稈の搬送方向の上流側や下流側、或いは詰まりの少ない穀稈の間に弛んで撓み、その結果として株元搬送チェーンの対向間隔(搬送通路幅)が拡がる。
【0010】
そして、この状態で一方の株元搬送チェーンと他方の株元搬送チェーンとの間に詰まった穀稈を引き抜こうとすると、係る引き抜く穀稈と残った穀稈、或いは株元搬送チェーンとの間の引き抜き抵抗(摩擦力)が搬送通路の拡大によって低減し、比較的容易に穀稈を引き抜くことができるようになって、これにより搬送通路における穀稈の詰まりを解消させることができる。
【0011】
また、このように株元搬送チェーンの終端部を弛ませた状態で、特許文献3のように株元搬送チェーンを正逆回転駆動すると、弛んだ株元搬送チェーンの終端部が回転輪体に再び巻き掛けられるまで後退する。そして、その結果、搬送通路から株元搬送チェーンの終端部が消失することになって、搬送通路は一層拡大して詰まった穀稈は圧着状態から解放される。
【0012】
さらに、株元搬送チェーンが駆動されて終端部の株元搬送チェーンに寄り掛かる穀稈は、搬送方向の上流側や下流側に移動しようとし、それに伴って搬送通路に残された穀稈との間のもつれを解き放そうとする。そのため、株元搬送チェーンの正逆回転駆動を止めて搬送通路から穀稈を引く抜く際に、正逆回転駆動によって予め詰まった穀稈は解し作用を受けているから、より引き抜き抵抗が少なく取り除き易くなる。
【0013】
ところで、株元搬送チェーンは刈り取った穀稈を脱穀部のフィードチェーンに向けて搬送するものであるから、その始端側を低く、また、終端側を高くして前低後高状に傾斜させて設ける。そのため、前述のように一方の株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体を後退させて、株元搬送チェーンの終端部を弛ませて穀稈の詰まりを取り除くと、株元搬送チェーンの終端部の弛みは株元搬送チェーンの自重によって始端部寄りに移動し、始端部に設ける回転輪体から株元搬送チェーンが離脱してチェーン外れを生じさせようとする。
【0014】
そして、その場合、始端部寄りに移動する株元搬送チェーンの弛みは株元搬送チェーンのテンション輪体の緊張作用によって一部は吸収されるものの、詰まった穀稈をより取り除き易くするために終端部における搬送通路幅を大きく拡げると、テンション輪体による弛み取りが間に合わなかったり、テンション輪体の機械的な作動限界に至って、搬送始端部に設ける回転輪体から株元搬送チェーンが離脱してチェーン外れを生じさせる虞がある。
【0015】
また、株元搬送チェーンの終端部を弛ませた状態で株元搬送チェーンを正回転駆動して詰まった穀稈を解そうとすると、株元搬送チェーンの終端部の弛みは駆動スプロケットの回転によって、始端部に設ける回転輪体寄りに移動する。また、株元搬送チェーンを逆転駆動して詰まった穀稈を解そうとすると、株元搬送チェーンの終端部の弛みは始端部に設ける回転輪体、並びに駆動スプロケットを経由して駆動スプロケットの繰り出し側に移動する。
【0016】
そのため、株元搬送チェーンの正逆回転駆動を繰り返して行って最終的に正回転駆動を最後に行って終了すると、株元搬送チェーンの弛みは始端部に設ける回転輪体側に蓄えられ、また、逆回転駆動を最後に行って終了すると駆動スプロケットと搬送終端部に設ける回転輪体との間に蓄えられることになる。さらに、この場合、穀稈の詰まりを取り除くと駆動スプロケットと終端部に設ける回転輪体との間に蓄えられた弛みは、株元搬送チェーンの自重によって始端部に設ける回転輪体側に移動する。
【0017】
従って、株元搬送チェーンの正逆回転駆動を止めて穀稈の詰まりを取り除くと、何れの場合も株元搬送チェーンの弛みは始端部に設ける回転輪体側に移動して、始端部に設ける回転輪体から株元搬送チェーンが離脱してチェーン外れを生じさせる虞がある。そして、このような状態で株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体を前進させて通常の搬送状態に戻す際に、始端部に設ける回転輪体から株元搬送チェーンが外れていることに気付けば、株元搬送チェーンを掛け直して刈取作業を再開すれば良い。
【0018】
しかし、これに気付くことなく刈取作業を再開すると、株元搬送チェーンが正常に穀稈を搬送しないので再び穀稈を詰まらせる原因となる。また、始端部に設ける回転輪体から株元搬送チェーンが外れている状態で株元搬送チェーンを駆動すると、株元搬送チェーンのリンクプレートがガイドレールや挟持レール等に接触して互いが損傷するという問題がある。
【0019】
そこで、本発明は、穀稈の合流部において穀稈が詰まった際に、この合流部における株元搬送チェーンの対向間隔を、一方の株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体の後退によって拡げて詰まりを解消させる際の株元搬送チェーンの外れを防止して、株元搬送チェーンの適正な搬送状態への復帰を支障なく行うことができ、また、合わせて穀稈の詰まりを解消させる際の解し作用を確実に行うことができる、コンバインの穀稈搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、上記課題を解決するため第1に、刈り取った穀稈を搬送する始端部と終端部に設ける回転輪体と駆動スプロケットとテンション輪体に巻き掛ける左右の株元搬送チェーンを穀稈の合流部において、その穀稈の搬送中途部と終端部、又は終端部どうしを互いに対向させて設け、この合流部における株元搬送チェーンの対向間隔を、一方の株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体の後退によって拡げ、係る合流部に詰まった穀稈を取り除くことができるように構成すると共に、この際の株元搬送チェーンの弛みに基づく株元搬送チェーンの始端部に設ける回転輪体からの離脱を阻止するチェーン外れ防止体を設け、前記駆動スプロケットを手動駆動手段によって正逆回転させて、合流部に詰まった穀稈を株元搬送チェーンの正逆回転作動によって解す時に、前記駆動スプロケットの逆回転作動時に生ずる駆動スプロケットからの株元搬送チェーンの離脱を阻止する歯飛び防止体を付設し、この歯飛び防止体を株元搬送チェーンに接近させて駆動スプロケットからの株元搬送チェーンの離脱を阻止する作用位置と、株元搬送チェーンから離して駆動スプロケットからの株元搬送チェーンの離脱を許容する非作用位置に移動自在に設けることを特徴とする。
【0021】
また、本発明は第2に、前記チェーン外れ防止体を、刈り取った穀稈を搬送する始端部の回転輪体に巻き掛ける株元搬送チェーンの上下のリンクプレート間に臨むように設け、この上下のリンクプレート間に詰まった藁屑等の異物を掻き落とすように構成することを特徴とする。
【0023】
また、本発明は第3に、前記株元搬送チェーンに付設する歯飛び防止体を、合流部に詰まった穀稈を取り除く際に後退させる株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体の移動に連動させて、その非作用位置から作用位置、或いはその作用位置から非作用位置に移動するように構成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のコンバインの穀稈搬送装置によれば、刈り取った穀稈を搬送する始端部と終端部に設ける回転輪体と駆動スプロケットとテンション輪体に巻き掛ける左右の株元搬送チェーンを穀稈の合流部において、その穀稈の搬送中途部と終端部、又は終端部どうしを互いに対向させて設け、この合流部における株元搬送チェーンの対向間隔を、一方の株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体の後退によって拡げ、係る合流部に詰まった穀稈を取り除くことができるように構成すると共に、この際の株元搬送チェーンの弛みに基づく株元搬送チェーンの始端部に設ける回転輪体からの離脱を阻止するチェーン外れ防止体を設ける。
【0025】
そのため、左右の株元搬送チェーンの合流部で穀稈が詰まった際には、一方の株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体を後退させて、株元搬送チェーンの対向間隔を拡げて合流部に詰まった穀稈を容易に取り除くことができる。また、一方の株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体を後退させて生ずる株元搬送チェーンの弛みは、株元搬送チェーンの始端部に設ける回転輪体からの株元搬送チェーンの離脱を誘発する。しかし、ここでチェーン外れ防止体は株元搬送チェーンの始端部に設ける回転輪体からの離脱を効果的に阻止するから、株元搬送チェーンのチェーン外れを防ぐことができる。
【0026】
従って、合流部に詰まった穀稈を取り除いた後、一方の株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体を元の位置に前進させれば、株元搬送チェーンの終端部は、その側の回転輪体に巻き掛けられて他方の株元搬送チェーン寄りに移動して株元搬送チェーンの始端部側の弛みを取るから元の状態に株元搬送装置を復帰させることができる。また、刈取作業を再開した際に株元搬送チェーンはチェーン外れを生じていないので再び穀稈を詰まらせることはなく、株元搬送チェーンのリンクプレートがガイドレールや挟持レール等に接触して互いが損傷することもない。
【0027】
さらに、前記チェーン外れ防止体を、刈り取った穀稈を搬送する始端部の回転輪体に巻き掛ける株元搬送チェーンの上下のリンクプレート間に臨むように設け、この上下のリンクプレート間に詰まった藁屑等の異物を掻き落とすように構成すると、チェーン外れ防止体を株元搬送チェーンの上下のリンクプレート間に臨ませて、株元搬送チェーンを始端部の回転輪体から離脱しないようにチェーンピンを確実に受け止めることができる。
【0028】
また、チェーン外れ防止体が株元搬送チェーンの上下のリンクプレート間に詰まった藁屑等の異物を掻き落とすスクレーパの役割を果たすから、リンクプレートの突起による穀稈の搬送性能の低下や始端部の回転輪体への藁屑等の巻き付きを無くして、株元搬送装置の搬送性能を長時間に亘って維持することができる。
【0029】
さらに、前記駆動スプロケットを手動駆動手段によって正逆回転させて、合流部に詰まった穀稈を株元搬送チェーンの正逆回転作動によって解すと、合流部の搬送通路から株元搬送チェーンが確実に退避して通路幅が拡がり、詰まった穀稈は圧着状態から解放される。そして、終端部の株元搬送チェーンに寄り掛かる穀稈は、搬送方向の上流側や下流側に揺さぶられて、搬送通路に残された穀稈との間のもつれが少なくなるから搬送通路から穀稈をより一層引き抜き易くすることができる。
【0030】
なお、この場合もチェーン外れ防止体は株元搬送チェーンのチェーン外れを防止するから、駆動スプロケットを手動駆動手段によって支障なく正逆回転させることができる。また、前記駆動スプロケットの逆回転作動時に生ずる駆動スプロケットからの株元搬送チェーンの離脱を阻止する歯飛び防止体を付設し、この歯飛び防止体を株元搬送チェーンに接近させて駆動スプロケットからの株元搬送チェーンの離脱を阻止する作用位置と、株元搬送チェーンから離して駆動スプロケットからの株元搬送チェーンの離脱を許容する非作用位置に移動自在に設ける。
【0031】
そして、このように構成すると、駆動スプロケットを手動駆動手段によって逆回転させた際に株元搬送チェーンの終端部の弛みは搬送始端部に設ける回転輪体、並びに駆動スプロケットを経由して駆動スプロケットの繰り出し側に移動して、駆動スプロケットの歯から株元搬送チェーンを浮き上がらせる。また、駆動スプロケットの前方に設けるテンション輪体は、弛みが無くなった後は詰まった穀稈の負荷によって浮き上がろうとするから、駆動スプロケットに巻き掛ける株元搬送チェーンの巻き掛け角は少なくなってチェーン飛びして株元搬送チェーンの逆回転作動を不能する。
【0032】
しかし、この場合、歯飛び防止体を作用位置に移動させておくと、歯飛び防止体は駆動スプロケットからの株元搬送チェーンの離脱を阻止するから、株元搬送チェーンの巻き掛け角が少なくなってもチェーン飛びを防ぎ、株元搬送チェーンの逆回転作動を継続して行わせることができ、それに伴って詰まった穀稈の解し作用を支障なく行わせることができる。
【0033】
また、歯飛び防止体を非作用位置に移動させておくと、歯飛び防止体が株元搬送チェーンから離れて駆動スプロケットからの株元搬送チェーンの離脱を許容するから、刈取作業中に株元搬送チェーンの合流部に穀稈が詰まった際には、テンション輪体が詰まった穀稈の負荷によって浮き上がり、駆動スプロケットに対して株元搬送チェーンがチェーン飛びして株元搬送チェーンの正回転作動を不能するから、合流部への穀稈の更なる押し込みを阻止して、穀稈の詰まりを助長させたり株元搬送装置の重大な損傷を防止することができる。
【0034】
そして、前記株元搬送チェーンに付設する歯飛び防止体を、合流部に詰まった穀稈を取り除く際に後退させる株元搬送チェーンの終端部に設ける回転輪体の移動に連動させて、その非作用位置から作用位置、或いはその作用位置から非作用位置に移動するように構成すると、歯飛び防止体を合流部に詰まった穀稈の取り除く際に作用位置に、また、通常の刈取作業時は非作用位置に自動的に移動させることができるから、株元搬送チェーンの駆動スプロケットからの歯飛びを阻止する状態と歯飛びを許容する状態を誤りなく確実に現出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明を適用するコンバインの側面図である。
【
図2】キャビンを取り外したコンバインの平面図である。
【
図7】ガイドレールを支持姿勢に切換えた状態を示す右株元搬送装置の平面図である。
【
図8】ガイドレールを退避姿勢に切換えた状態を示す右株元搬送装置の平面図である。
【
図9】ガイドレールの姿勢切換部を示す断面図である。
【
図10】支持姿勢に切換えたガイドレールを示す平面図である。
【
図11】退避姿勢に切換えたガイドレールを示す平面図である。
【
図13】副搬送フレームを退避させた状態を示す左株元搬送装置の平面図である。
【
図14】左株元搬送装置の始端寄りの断面図である。
【
図16】扱深さ搬送装置から挟持レールを取外す状態を示す斜視図である。
【
図17】刈取部入力軸の手動操作部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように稲や麦を刈取りながら脱穀する5条刈りの自脱型コンバイン1は、略矩形状に枠組みする機体フレーム(機体)2の下方に走行フレーム3を介して左右のクローラ走行装置4を設ける。なお、左右のクローラ走行装置4は、トランスミッションケース5の左右から突出する駆動軸に取り付ける駆動スプロケット6と、走行フレーム3に軸支するアイドルホイール7、及びトラックローラ8と、これらに巻回するゴムクローラ9を備える。
【0037】
また、機体フレーム2の機体前進方向の右側前部には、略矩形状になす運転フレームを一体的に連結し、この運転フレーム及びその後方の機体フレーム2にかけて操縦部10を設ける。なお、操縦部10はフロア11の後方に運転席12を設け、また、フロア11の前部にはフロントコンソール(前部操作盤)13を、フロア11と運転席12の左側にはサイドコンソール(側部操作盤)14を設け、さらに、キャビン15で操縦部10を覆っている。
【0038】
また、機体フレーム2の左側前部から操縦部10の前方にかけて刈取部16を図示しない油圧シリンダによって昇降自在に設ける。そして、刈取部16は、その前端下部に設ける分草体17とナローガイド18によって、圃場の立毛穀稈を刈取穀稈と未刈取穀稈とに区分けし、左右の分草体17の間に入った刈取穀稈を引起爪を備える引起装置19によって引起し、その後、
図3、及び
図4に示すように突起付き掻込ベルト20とスターホイール21で構成する掻込装置22で寄せ集めながら穀稈の株元をレシプロ方式の刈刃装置23によって切断する。
【0039】
さらに、刈刃装置23によって切断して刈取った穀稈は、掻込装置22のスターホイール21で後方に送り、また、後方に送った穀稈は左右と中央に設ける株元搬送装置24、25、26に引き継がせて更に後方に向けて搬送する。そして、中央に設ける株元搬送装置26の終端部は右株元搬送装置24の搬送経路の中途に設ける合流部G1に臨み、この中株元搬送装置26によって搬送した穀稈は、中途の合流部G1において右株元搬送装置24によって搬送してきた穀稈と合流し、以後、右株元搬送装置24に引き継がれる。
【0040】
一方、左側に設ける株元搬送装置25の終端部は右株元搬送装置24の終端部に臨み、この左株元搬送装置25によって搬送した穀稈は、右株元搬送装置24によって搬送してきた穀稈と、両搬送装置24、25の終端部となる合流部G2において合流する。また、合流した穀稈は、その始端部を両合流部G2に臨ませる扱深さ搬送装置27に引き継がせ、更に後上方に向けて搬送する(
図6参照)。
【0041】
そして、扱深さ搬送装置27に引き継がせた穀稈は、扱深さ搬送装置27の終端部から補助搬送装置28を介して脱穀フイードチェーン29に引き継がれる。なお、ここまで主に穀稈の株元側の搬送経路について説明したが、穀稈の穂先側は右株元搬送装置24と扱深さ搬送装置27、及び補助搬送装置28の上方側に設ける穂先搬送装置30と、左株元搬送装置25及び中株元搬送装置26の上方側に設ける左掻込搬送装置31と中掻込搬送装置32の各搬送チェーン(
図5参照)に取付ける搬送爪に係止して搬送する。
【0042】
また、脱穀部33は、刈取部16後方の機体フレーム2の左側に設け、上方を覆うシリンダーカバー34の下方に第1と第2の扱室を設ける。この内、第1扱室には刈取部16から搬送してきた穀稈を扱口に沿って搬送する脱穀フイードチェーン29とその挟持レール35、扱歯を備える第1扱胴とその受網等を設ける。また、第2扱室は第1扱胴の後端穂先側より機体の後方に向かうように第1扱室に併設し、第1扱室で脱粒処理しきれなかった穀粒の混ざった藁屑等を処理する第2扱胴とその受網を設ける。
【0043】
一方、第1と第2の扱室の下方には選別室を設ける。この選別室には揺動運動する揺動流板、1番螺旋及び2番螺旋、唐箕ファン及び吸引ファン等を設け、扱室の受網より漏下した穀粒等を揺動流板上において選別し、選別した穀粒は1番螺旋から揚穀装置36を介してグレンタンク37に移送し、藁屑等が混じった2番物は2番螺旋から2番還元装置を介して揺動流板上に戻す。
【0044】
また、揺動流板の終端に至った藁屑、吸引ファンに捕捉された藁屑、或いは第2扱胴の終端から排出された藁屑は、脱穀部33後方の機外に排出する。さらに、脱穀処理を完了して扱室から排出する排稈は、排藁搬送装置38によってディスク型カッター39に向けて搬送し、さらに、ディスク型カッター39は、排藁搬送装置38で搬送してきた排稈を細断して刈取跡地に切藁として放出する。
【0045】
そして、前記グレンタンク37は、操縦部10の後方に設けるディーゼルエンジン等から構成する原動部40のさらに後方に設け、揚穀装置36によって移送してきた穀粒を一時的に貯留する。また、グレンタンク37内に穀粒が満杯になると、グレンタンク37から穀粒を排出して機外のコンテナ等に放出すべく排出オーガ41を作動させる。
【0046】
なお、排出オーガ41は、グレンタンク37の底部に設ける横螺旋と縦螺旋を内装する縦パイプを備え、この縦パイプはグレンタンク37の後方にオーガ旋回モータによって回動可能に立設する第1縦パイプ42と、第1縦パイプ42の上部にギヤケース43介して油圧シリンダ44によって昇降可能になす第2縦パイプ45によって構成する。
【0047】
次に、前述の刈取部16についてより詳しく説明すると、
図1乃至
図6に示すように刈取部16は、機体フレーム2の左側前部寄りに設ける支柱の上部にその後部側を回動自在に支持し、油圧シリンダによって前部側が上下方向に昇降する略エ字状に連結するパイプケースによって構成する伝動フレーム46を備える。また、この伝動フレーム46の前部に前処理フレーム47やサポートフレーム等を取付ける。
【0048】
さらに、これら伝動フレーム46や前処理フレーム47、或いはサポートフレーム等には、引起装置19、掻込装置22、刈刃装置23、株元搬送装置24、25、26、扱深さ搬送装置27、補助搬送装置28、穂先搬送装置30、及び掻込搬送装置31、32等の各装置や分草体17、サイドカバー48、穂先案内板49、フード50等を取付ける。
【0049】
そして、伝動フレーム46内にはベベルギヤを備える伝動軸を軸支し、
図5に示すように原動部40に設けるエンジンは、搬送HST(静油圧式無段変速装置)51とベルトテンションクラッチで構成する刈取クラッチ52を介して伝動フレーム46内の入力伝動部46aの入力軸53を駆動し、その後、縦伝動部46b、穂先・補助搬送伝動部46c、右株元伝動部46d、扱深さ伝動部46e、下伝動部46f、中・左株元伝動部46g、及び引起し伝動部46hから各装置を駆動する。
【0050】
なお、
図17に示すように前記入力伝動部46aの入力軸53は、その左端側を延長して脱穀フイードチェーン29のガイド29aに穿設する孔を通して外側方に突出させる。また、入力軸53の端部53aは6角軸に形成し、この6角軸に例えばラチェットレンチ54等の工具を装着して、入力軸53を手動操作によって正逆回転させることができるようにする(
図5参照)。
【0051】
そのため、刈取部16の特に株元搬送装置24、25、26に後述するように穀稈の詰まりを生じた際に、これらの搬送装置の搬送チェーンを通常の搬送下手側に向けて作動させたり、逆方向の搬送上手側に向けて作動させて、これにより穀稈の詰まりを解して穀稈の除去作業を容易にする。なお、手動操作を行わない場合は、ガイド29aの孔にキャップ55を装着して入力軸53の端部53aを覆う。
【0052】
また、
図3乃至
図14に示すように前記株元搬送装置24、25、26は、多数の上下の突起付きリンクプレートをチェーンローラを装着するピンで結合して無端帯になす株元搬送チェーン、駆動スプロケット、従動スプロケット、ベアリングによって回転自在に設けるローラ、同じくベアリングによって回転自在に設けるテンションローラ、テンションスプリング、搬送フレーム、レール、チェーンガイド、挟持レール、ガイド杆等によって構成する。
【0053】
すなわち、右株元搬送装置24は、右株元伝動部46dに設ける駆動スプロケット56と、伝動フレーム46(下伝動部46f)の右端寄りに取り付けるシャフト22aにその掻込装置22と共に回転自在に取り付ける従動スプロケット57と、駆動スプロケット56側の伝動フレーム46(右株元伝動部46d)と従動スプロケット57側のシャフト22aに右ホルダ58を介して取り付ける右株元搬送フレーム59を備える。
【0054】
また、右株元搬送フレーム59は、その前フレーム60にパイプフレーム61の先端部を取り付け、また、このパイプフレーム61の後端部に上プレート62を固着する。また、上プレート62に下プレート63をローラ取付けシャフトを用いて取り付ける。そして、前フレーム60にチェーンローラに当接する2つの固定レールプレート64a、64bを固着して設ける。また、パイプフレーム61には1つの固定ローラ65aを設け、上プレート62及び下プレート63には2つの固定ローラ65b、65cと、回動自在に軸支するアーム66の先端に設けるテンションローラ65dと、このテンションローラ65dにテンションを付与する引張コイルスプリング67を設ける。
【0055】
さらに、右株元搬送フレーム59には、チェーンの支持姿勢とチェーンから後退する退避姿勢に切り換えることができる可動ガイドレール68を設ける。この可動ガイドレール68は、搬送経路に沿って長尺な主プレート69にチェーンローラに当接するレールプレート70を固着し、また、主プレート69の複数の取付座69aに上下のガイドプレート71を取り付け、この上下のガイドプレート71の間にリンクプレートを閉じ込めてチェーンの上下を案内させる。
【0056】
そして、主プレート69の先端寄りに支点軸69bを設け、この支点軸69bを前フレーム60に設けるボス60aに嵌合し、可動ガイドレール68の後部寄りが支点軸69bを中心に回動して搬送経路に対して進退するように取り付ける。また、主プレート69の後端寄りにスリーブ69cを固着し、このスリーブ69cにロックピン72を装着する。
【0057】
上記ロックピン72は、その頭部に横方向となるボス部72aを設け、また、小径の軸部72bに所定の間隔を空けて2つの大径の軸部72c、72dを設け、さらに、小径の軸部72bの下端寄りに螺子部72eを設ける。また一方、右株元搬送フレーム59の上プレート62と下プレート63に夫々2つの孔62a,63a、62b,63bとこの2つの孔の間を繋ぐ溝62c,63cを設ける。
【0058】
そして、スリーブ69cに装着したロックピン72の2つの大径の軸部72c,72dが上プレート62と下プレート63の何れか1つの孔62a,63a、62b,63bに嵌ると、可動ガイドレール68の後部寄りは右株元搬送フレーム59にロックピン72を介して回動不能に位置決めすることができる。また、その小径の軸部72bが上プレート62と下プレート63の溝62c,63cに臨むようにロックピン72を上動させると、大径の軸部72c,72dによる可動ガイドレール68の後部寄りの位置決めを解除することができる。
【0059】
さらに、その状態でロックピン72を前後動操作すると、小径の軸部72bが溝62c,63cの中を移動して、大径の軸部72c,72dが一方の孔62a,63aから他方の孔62b,63bに、或いは他方の孔62b,63bから一方の孔62a,63aに嵌る位置までロックピン72を移動させることができ、これによって可動ガイドレール68の後部寄りを前方側に移動させたチェーンの支持姿勢と後方側に移動させた退避姿勢に切換えることができる。
【0060】
次に、上記ロックピン72を上下動及び前後動させて可動ガイドレール68を支持姿勢と退避姿勢に切換える操作レバー73について説明すると、この操作レバー73は左右のプレートとその先端を結合する連結プレートで構成するアーム73aの後部にパイプで構成する操作杆73bを一体に固着して形成する。そして、このアーム73aの先端部には長穴73cを設け、この長穴73cにクレビスピンを通してロックピン72のボス部72aをアーム73aの先端部に取り付ける。
【0061】
また、アーム73aの後端部に丸穴73dを設け、その丸穴73dに座付ボルトを通して取付軸74の頭部のボス部74aに取り付ける。そして、この取付軸74は上プレート62と下プレート63に設ける取付穴に通して、軸端にCリングを嵌めて抜け止めする。なお、取付軸74には上プレート62の上面に当接するストッパ74bを固着する。また、下プレート63の下面から突出する取付軸74にはライナーと共にリンクプレート75の後部寄りを上下動自在に嵌合して装着する。
【0062】
そして、このリンクプレート75の前部寄りに設ける長穴75aにロックピン72の軸部72bを通して、この軸部72bに座金とともに圧縮コイルスプリング76を装着して、その螺子部72eにナットを装着して組み付ける。
【0063】
従って、以上のように構成すると、ロックピン72は圧縮コイルスプリング76によって常時下方側に付勢され、操作レバー73を操作しない状態では、下方側の軸部72dがリンクプレート75の上面に当接するまで下動し、大径の軸部72c,72dが夫々上プレート62と下プレート63の何れか1つの孔62a,63a、62b,62bに嵌って、可動ガイドレール68は支持姿勢又は退避姿勢に位置決め保持され、操作レバー73の左右方向の回動操作は不能となる。
【0064】
また、操作レバー73の操作杆73bを押し下げると、アーム73aが圧縮コイルスプリング76の付勢力に抗してロックピン72を上動させ、その後、圧縮コイルスプリング76が密着して操作レバー73をそれ以上押し下げることができない状態では、ロックピン72の小径の軸部72bが上プレート62と下プレート63の溝62c,63cに臨み、可動ガイドレール68の後部寄りの位置決めが解除されると共に、操作レバー73の左右方向の回動操作が許容される。
【0065】
そこで、操作レバー73の操作杆73bを左右方向に回動操作すると、アーム73aがロックピン72を前後動させて、可動ガイドレール68をチェーンを案内する支持姿勢、或いはチェーンから後退する退避姿勢に切換えることができる。また、可動ガイドレール68を支持姿勢又は退避姿勢に切り換えた後、操作レバー73から手を離せば、当初に説明する通り、圧縮コイルスプリング76によってロックピン72は下動して、可動ガイドレール68は支持姿勢又は退避姿勢に位置決め保持され、操作レバー73の左右方向の回動操作は不能となる。
【0066】
また、右株元搬送装置24の構成について元に戻って説明すると、前述の駆動スプロケット56と、従動スプロケット57と、右株元搬送フレーム59に設ける3つの固定ローラ65a、65b、65c、及びテンションローラ65dには、右株元搬送チェーン77を巻き掛ける。そして、この右株元搬送チェーン77の前方となる搬送経路には、
図3に示すように挟持レール78とガイド杆79を設ける。
【0067】
この挟持レール78とガイド杆79は、右から2番目の掻込装置22にブラケットを介して取り付けるホルダ80に取り付け、この内、挟持レール78は右株元搬送チェーン77のリンクプレート間に臨ませ、右株元搬送チェーン77と挟持レール78との間に穀稈を挟扼する圧縮コイルスプリングをホルダ80中に設ける。また、ガイド杆79は挟持レール78に引き続いて、その自らの弾性によって穀稈を右株元搬送チェーン77側に向けて押圧する。
【0068】
なお、右株元搬送フレーム59の前フレーム60に設ける固定レールプレート64bに対向させて、図示しないガイド体を前フレーム60から設け、このガイド体によって右株元搬送チェーン77の従動スプロケット57に対するチェーンの外れを防止する。また、右株元搬送装置24のテンションローラ65dは、操作レバー73を切り換えて右株元搬送チェーン77の可動ガイドレール68をチェーンから後退する退避姿勢に切換えた際に、操作レバー73のアーム73aの先端が当接するストッパ66aをテンションローラ65dのアーム66の先端部に設ける。
【0069】
そのため、可動ガイドレール68を退避姿勢に切換えて駆動スプロケット56を逆回転させた際、テンションローラ65dは右株元搬送チェーン77の張力によってチェーンから後退しようとするが、この場合、ストッパ66aが操作レバー73のアーム73aの先端に当接して、テンションローラ65dの後退を阻止するので、駆動スプロケット56から右株元搬送チェーン77が浮き上がってチェン飛びすることを防止して、穀稈が詰まった際の逆回転駆動による穀稈の解し作動を確実に行うことができる。
【0070】
次に、左株元搬送装置25について説明すると、
図12乃至
図14に示すように左株元搬送装置25は、中・左株元伝動部46gに設ける駆動スプロケット81と、この駆動スプロケット81の駆動シャフトを軸支する伝動フレーム46に回動自在に取付けるテンションアーム82に取付けるテンションローラ83と、テンションローラ83にテンションを付与する引張コイルスプリング84と、伝動フレーム46(下伝動部46f)の左端寄りに取付けるシャフト22eにその掻込装置22と共に回転自在に取付ける従動スプロケット85と、3つの固定ローラ86a、86b、86c、及びチェーンの終端部において穀稈をチェーンから引き離して扱深さ搬送装置27に引き継ぐガイド杆87等を取付ける左株元搬送フレーム88と、上記スプロケット及びローラに巻き掛ける左株元搬送チェーン89を備える。
【0071】
そして、上記左株元搬送フレーム88は、主搬送フレーム90の後部寄りに設ける角パイプ部90aにその先端寄りを嵌合して左斜め前後方向にスライド可能に設ける副搬送フレーム91を備え、この内、主搬送フレーム90は、1つの固定ローラ86cとガイド杆87を取り付けると共に、左株元搬送チェーン89のガイドレール90bを一体に設ける。そして、この主搬送フレーム90は、前記テンションアーム82を取り付ける伝動フレーム46と左ホルダ92を介してシャフト22eに取り付ける。
【0072】
また、副搬送フレーム91は上下の巻込み防止板91a、91bを介して2つの固定ローラ86a、86bを取り付け、上巻込み防止板91aの上面に一端を取り付ける後支持パイプ93の他端を引起し伝動部46hを設ける伝動フレーム46にハンドル付きボルトB1を用いて連結する。従って、副搬送フレーム91をその2つの固定ローラ86a、86bと共に左斜め前方にスライドさせて、搬送通路に詰まった穀稈の除去作業を行う場合は、先ずハンドル付きボルトB1を取り外して、副搬送フレーム91と伝動フレーム46との連結を解除する。
【0073】
次に、主搬送フレーム90の角パイプ部90aと副搬送フレーム91を固定するハンドル付きボルトB2を取り外し、主搬送フレーム90の後部寄りに設けるピン90cに回動自在に取り付けるカム94を、操作レバー95によって副搬送フレーム91の前端面に当接する規制状態から前方に離れる解除状態に操作する。そして、後支持パイプ93を前方に押して、副搬送フレーム91の前端面が主搬送フレーム90の後端面に当接するまで副搬送フレーム91を移動させ、左株元搬送装置25の終端部の搬送通路を固定ローラ86a、86bの前方への後退によって拡げて穀稈の除去作業を行う。
【0074】
また、穀稈の除去作業を終了した場合は、後支持パイプ93を後方に押して副搬送フレーム91を元の位置にスライドさせた後、操作レバー95を操作してカム94を規制状態になし、また、ハンドル付きボルトB2を取り付け、最終的にハンドル付きボルトB1によって伝動フレーム46に後支持パイプ93を連結して、副搬送フレーム91を固定する。なお、上記操作レバー95は、支点越えするトグルスプリング96を設けることによって、副搬送フレーム91の前方側へのスライドを阻止する規制状態と、副搬送フレーム91の前方側へのスライドを許容する解除状態の2つの操作位置に切り換え保持することができる。
【0075】
さらに、左株元搬送装置25には左株元搬送チェーン89の駆動スプロケット81からの離脱を阻止する歯飛び防止体97を設ける。この歯飛び防止体97はプレートを円弧状に湾曲させて構成し、支持杆98の先端に取り付ける。また、支持杆98は主搬送フレーム90に取り付けるホルダ99に左斜め前後方向に移動自在に支持させ、この支持杆99の後部に後支持パイプ93に嵌合するプレート100を取り付ける。
【0076】
そのため、穀稈の除去作業を行う場合に後支持パイプ93を前方に押して、副搬送フレーム91の前端面が主搬送フレーム90の後端面に当接するまで副搬送フレーム91を移動させた際には、歯飛び防止体97が駆動スプロケット81に巻き掛けた左株元搬送チェーン89のチェーンローラに外方から接近する作用位置に移動し、左株元搬送チェーン89のチェーンローラが駆動スプロケット81から離脱しないように阻止して、左株元搬送チェーン89の歯飛びを防止する。
【0077】
また、穀稈の除去作業を終了して副搬送フレーム91を元の位置に移動させた際には、歯飛び防止体97が駆動スプロケット81に巻き掛けた左株元搬送チェーン89のチェーンローラから外方に離れた非作用位置に移動し、この場合は、駆動スプロケット81からの左株元搬送チェーン89の離脱を阻止しないから、左株元搬送チェーン89の歯飛びを許容することになる。
【0078】
従って、穀稈の詰まり除去作業を行う場合に、固定ローラ86a、86bの搬送通路からの退避と共に、駆動スプロケット81を逆回転させて穀稈の解しを行う際には、左株元搬送チェーン89が駆動スプロケット81から浮き上がって、これを駆動することが出来ない状態が発生する。しかし、ここで歯飛び防止体97を設けて左株元搬送チェーン89の歯飛びを防止することによって、左株元搬送チェーン89を作動させて穀稈の解し作用を確実に行うことができる。
【0079】
また、左株元搬送装置25には、固定ローラ86a、86bの搬送通路からの退避(後退)に伴って発生する左株元搬送チェーン89の弛みに基づく左株元搬送チェーン89の始端部に設ける従動スプロケット85からの離脱を阻止するチェーン外れ防止体101を設ける。このチェーン外れ防止体101はプレートをクランク状に折り曲げて形成し、従動スプロケット85の上方に設ける突起付き掻込ベルト20のカバー102の下面に取り付ける。
【0080】
そして、カバー102に基部を取り付けたチェーン外れ防止体101の先端は、従動スプロケット85の2歯程度の幅を備えて従動スプロケット85の先端寄り外方に位置させ、また、従動スプロケット85に巻き掛ける左株元搬送チェーン89の上下のリンクプレート間に臨み、左株元搬送チェーン89のチェーンローラが従動スプロケット85の歯から離脱しないように阻止してチェーン外れを防止する。
【0081】
さらに、チェーン外れ防止体101は、このように左株元搬送チェーン89の上下のリンクプレート間に位置させるから、上下のリンクプレート間に詰まった藁屑等の異物を掻き落とすスクレーパとしての役割を果たし、リンクプレートの突起による穀稈の搬送性能の低下や引いては従動スプロケット85への藁屑等の巻き付きを無くす。
【0082】
なお、従動スプロケット85の上下に設ける突起付き掻込ベルト20の駆動プーリ103とスターホイール21eは、従動スプロケット85と一体に回転するように連結し、駆動スプロケット81の駆動によって回転する従動スプロケット85によって駆動する。また、従動スプロケット85の上下の歯体の間に設ける溝85aにはガイドレール90bのベースプレートの先端90dを差し入れて、従動スプロケット85のスクレーパとして機能させる。
【0083】
さらに、
図3に示すように左株元搬送装置25の左株元搬送チェーン89に対向させて、挟持レール104とガイド杆105を設ける。この挟持レール104とガイド杆105は、左から2番目の掻込装置22にブラケットを介して取り付けるホルダ106に取り付け、この内、挟持レール104は左株元搬送チェーン89のリンクプレート間に臨ませ、左株元搬送チェーン89と挟持レール104との間に穀稈を挟扼する圧縮コイルスブリングをホルダ106中に設ける。また、ガイド杆105は挟持レール104に引き続いて、その自らの弾性によって穀稈を左株元搬送チェーン89側に向けて押圧する。
【0084】
また、
図3乃至
図5に示すように中・左株元伝動部46gから左掻込搬送装置31は駆動され、また、同じく中・左株元伝動部46gから駆動される駆動スプロケット81によって回転する従動スプロケット85は、前述のように掻込装置22を駆動し、また、掻込装置22のスターホイール21eは互いに噛み合う左から2番目の掻込装置22のスターホイール21dを駆動し、さらに、左から2番目の掻込装置22のスターホイール21dは互いに噛み合う左から3番目の掻込装置22のスターホイール21cを駆動する。
【0085】
そして、このスターホイール21cは突起付き掻込ベルト20と駆動スプロケット107によって中株元搬送装置26と中掻込搬送装置32を駆動する。なお、スターホイール21cと駆動スプロケット107と突起付き掻込ベルト20の駆動プーリは前処理フレーム47から立ち上げた搬送フレーム108の前端寄りに回転自在に軸支したシャフト22cに一体的に取り付け、また、この搬送フレーム108の後端寄りに従動スプロケット109と固定ローラ110とテンションローラ111を設け、中株元搬送チェーン112は、これら駆動スプロケット107と従動スプロケット109と固定ローラ110とテンションローラ111に巻き掛ける。
【0086】
また、
図3に示すように中株元搬送チェーン112に対向させて挟持レール113とガイド杆114を設ける。この内、挟持レール113はその前端を前処理フレーム47に回動自在に取り付け、その中間部を右から2番目の掻込装置22にブラケットを介して取り付ける圧縮コイルスブリングを備えるホルダ115から突出するロッド116の先端に連結し、その後端寄りを中株元搬送チェーン112のリンクプレート間に臨ませる。
【0087】
そして、ガイド杆114は右から2番目の掻込装置22に取り付けるホルダ80に取り付け、挟持レール113に引き続いて、その自らの弾性によって穀稈を中株元搬送チェーン112側に向けて押圧する。なお、中株元搬送装置26の上方に設ける中掻込搬送装置32は、中株元搬送装置26の従動スプロケット109を取り付けるシャフト32aを介して駆動する。
【0088】
次に、株元搬送装置の終端部から脱穀部33に向けて扱ぎ深さ調節を加えて搬送する扱深さ搬送装置27について説明すると、
図15及び
図16に示すように、この扱深さ搬送装置27は、扱深さ伝動部46eに設ける駆動スプロケット117と、この駆動スプロケット117を軸支する伝動フレーム46にその先端部を回動自在に取り付けるガイドレール118aを備える搬送フレーム118と、搬送フレーム118の後端部にブラケット119を介して設けるローラ120と、駆動スプロケット117とローラ120に巻き掛ける突起付きの扱深さ搬送チェーン121
と、カバー122等を設ける。
【0089】
また、扱深さ搬送装置27は、その始端部の駆動スプロケット117を回動中心として後端部を上下動させる電動モータ、扱深さセンサSや手動スイッチによって電動モータを作動させる扱深さ制御装置を備える。さらに、扱深さ搬送チェーン121に対向させて設ける挟持レール123は、搬送フレーム118の後端部にその一端を取り付けるU字状パイプ124の他端に取付座124aを設け、この取付座124aに着脱自在に取り付けるホルダ125に装着する。
【0090】
すなわち、挟持レール123は、レール本体123aの先端部に入口ガイド杆123bを固着して形成し、このレール本体123aに取り付けたロッド123cをホルダ125に支持させ、ホルダ125内に設ける圧縮コイルスプリング126によって扱深さ搬送チェーン121に向けて付勢する。また、ホルダ125には操作レバー127によってスライドさせるロックプレート128と、操作レバー127をロック位置で固定するノブ付きボルト129を設ける。
【0091】
そして、挟持レール123と共にホルダ125を取付座124aから取り外す際には、先ずノブ付きボルト129を取り外して操作レバー127をロック位置から上方に向けて解除位置まで回動操作する。そして、これによってロックプレート128は前方に向けてスライドして、取付座124aに設ける係止ピン130と、ロックプレート128に設けるロック孔128との係合が解除される。
【0092】
そこで、ホルダ125を手前側に引くと、取付座124aに設けるテーパ付きナット131と係止ピン130に対するホルダ125の嵌合が外れ、ホルダ125を上方に向けて取り外すことができる。また、取付座124aに挟持レール123と共にホルダ125を取り付ける際には、上述と逆の手順によって取り付けることができる。
【0093】
以上、刈取部16の詳細な構造について説明したが、次に本発明の特徴部分に係る作用について説明する。即ち、圃場において立毛穀稈を刈取る際に通常、5条刈コンバイン1であれば各引起装置19毎に1条の条列を引起こして刈取ることになる。しかし、隣接する立毛穀稈の条間が狭ければ2条の条列を1つの引起装置19によって引起こして刈取ることがあり、その場合、刈取部16は6条以上となる多量の穀稈を脱穀部33に向けて搬送することになって、特に株元搬送装置24、25、26に穀稈の詰まりを生ずる場合がある。
【0094】
そこで、刈取作業を中断して穀稈の詰まりを除去することになるが、その場合、先ず扱深さ搬送装置27の挟持レール123をそのホルダ125と共に操作レバー127によって取り外すと、挟持レール123と扱深さ搬送チェーン121による穀稈の挟持力が消失し、また、扱深さ搬送チェーン121の外方側が開放されるから穂先搬送装置30の係止爪や扱深さ搬送チェーン121上に残っている穀稈を容易に取り除くことができる。
【0095】
また、扱深さ搬送チェーン121から穀稈を取り除くと、右株元搬送装置24の可動ガイドレール68を支持姿勢と退避姿勢に切換える操作レバー73が、穀稈によって隠された状態から外部に露出する状態になる。そこで、右株元搬送装置24の可動ガイドレール68を操作レバー73の外側方への回動操作によって退避姿勢に切換える。
【0096】
さらに、左株元搬送装置25の副搬送フレーム91を伝動フレーム46に固定しているハンドル付きボルトB1を取り外すと共に、主搬送フレーム90の角パイプ部90aと副搬送フレーム91を固定するハンドル付きボルトB2を取り外し、操作レバー95によってカム94を規制状態から解除状態に操作する。また、後支持パイプ93を前方に押して、副搬送フレーム91の前端面が主搬送フレーム90の後端面に当接するまで副搬送フレーム91を移動させ、左株元搬送装置25の終端側に設ける2つの固定ローラ86a、86bを前方に後退させる。
【0097】
そして、以上の操作を行ったうえで刈取部16の左外側方から詰まった穀稈を引き抜いて除去する際、右株元搬送装置24と左株元搬送装置25の合流部G2となる両株元搬送装置24、25の終端部では、一方の左株元搬送装置25の2つの固定ローラ86a、86bが前方に後退して、この左株元搬送チェーン89の終端部から2つの固定ローラ86a、86bが離れ、左株元搬送チェーン89の終端部は2つの固定ローラ86a、86bによる規制を失う。
【0098】
また、規制を失った左株元搬送チェーン89の終端部は、合流部G2に詰まった穀稈に押されて、搬送方向の上流側や下流側、或いは比較的隙間の多い穀稈の間に弛んで撓み、その結果、右株元搬送チェーン77と左株元搬送チェーン89の対向間隔(搬送通路幅)は拡がる。
【0099】
そして、この状態で右株元搬送チェーン77と左株元搬送チェーン89との間に詰まった穀稈を引き抜こうとすると、係る引き抜く穀稈と残った穀稈、或いは右株元搬送チェーン77又は左株元搬送チェーン89との間の引き抜き抵抗(摩擦力)が搬送通路幅の拡大によって低減し、比較的容易に穀稈を引き抜くことができる。
【0100】
さらに、このように左株元搬送チェーン89の終端部を弛ませた状態で、刈取部16の入力軸53をラチェットレンチ54等の工具を用いて正逆回転駆動すると、左株元搬送装置25の駆動スプロケット81が回転して左株元搬送チェーン89を作動させるから、左株元搬送チェーン89の終端部に弛みが無くなって、左株元搬送チェーン89は2つの固定ローラ86a、86bに再び巻き掛けられるまで後退する。
【0101】
従って、左株元搬送チェーン89を作動させると、拡大させた搬送通路から左株元搬送チェーン89の終端部が消失することになって、搬送通路は一層拡大して詰まった穀稈は圧着状態から解放される。また、駆動スプロケット81と同様に右株元搬送装置24の駆動スプロケット56も右株元搬送チェーン77を作動させるから、両株元搬送チェーン77、89が駆動されて、終端部の両株元搬送チェーン77、89に寄り掛かる穀稈は、搬送方向の上流側や下流側に移動しようとし、それに伴って搬送通路に残された穀稈との間のもつれを解き放す。
【0102】
そのため、入力軸53の手動駆動を止めて、搬送通路から穀稈を引く抜く際に、正逆回転駆動によって予め詰まった穀稈は解し作用を受けているから、より引き抜き抵抗が少なく取り除き易くなる。また、右株元搬送装置24の可動ガイドレール68は、操作レバー73によって退避姿勢に切換えている。
【0103】
そして、可動ガイドレール68が退避姿勢に切換えられていると、右株元搬送装置24と左株元搬送装置25の合流部G2より搬送上手側において詰まった穀稈は、右株元搬送装置24の可動ガイドレール68が後方に退避することによって、支持を失った右株元搬送チェーン77の中途部を自ら押して、中株元搬送装置26の従動スプロケット109と固定ローラ110に巻き掛ける中株元搬送チェーン112の終端部と右株元搬送チェーン77の中途部との間の搬送通路を後方側に拡げる。
【0104】
そのため、右株元搬送装置24と左株元搬送装置25の合流部G2から更に搬送上手側の、右株元搬送装置24の中途部と中株元搬送装置26の終端部の合流部G1に至る搬送通路に詰まった穀稈を引き抜こうとすると、この間の搬送通路の拡大によって引き抜き抵抗が低減し、比較的容易に穀稈を引き抜くことができる。
【0105】
また、刈取部16の入力軸53を手動駆動して右株元搬送チェーン77と中株元搬送チェーン112を作動させると、この場合も同様に穀稈の詰まりを解して、詰まった穀稈の除去作業をより一層容易にすることができ、これにより株元搬送装置24、25、26の搬送経路における穀稈の詰まりを悉く解消させることができる。
【0106】
ところで、株元搬送装置24、25、26、掻込搬送装置31、32、扱深さ搬送装置27、穂先搬送装置30、及び補助搬送装置28等から構成する穀稈搬送装置は、刈り取った穀稈を脱穀部33の脱穀フイードチェーン29に向けて搬送するものであるから、各々の搬送始端側を低く、また、搬送終端側を高く位置させて前低後高状に傾斜させて設ける。
【0107】
そのため、前述のように左株元搬送チェーン89の終端部に設ける2つの固定ローラ86a、86bを後退させて、左株元搬送チェーン89の終端部を弛ませて穀稈の詰まりを取り除くと、左株元搬送チェーンの終端部の弛みは自らの自重によって低い側となる始端部寄りに移動し、搬送始端部に設ける従動スプロケット85から左株元搬送チェーン89が離脱してチェーン外れを生じさせようとする。
【0108】
そして、その場合、始端部寄りに移動する左株元搬送チェーン89の弛みは、左株元搬送チェーン89のテンションローラ83の緊張作用によって一部は吸収されるものの、詰まった穀稈をより取り除き易くするために終端部における搬送通路幅を大きく拡げると、テンションローラ83による弛み取りが間に合わなかったり、テンションローラ83の機械的な作動限界に至って、始端部に設ける従動スプロケット85から左株元搬送チェーン89が離脱してチェーン外れを生じさせる虞がある。
【0109】
また、左株元搬送チェーン89の終端部を弛ませた状態で左株元搬送チェーン89を正回転駆動して詰まった穀稈を解そうとすると、左株元搬送チェーン89の終端部の弛みは固定ローラ86c、駆動スプロケット81、及びテンションローラ83を経由して、チェーンの緩み側となる始端部に設ける従動スプロケット85寄りに移動する。また、左株元搬送チェーン89を逆回転駆動して詰まった穀稈を解そうとすると、左株元搬送チェーン89の終端部の弛みは始端部に設ける従動スプロケット85、テンションローラ83、駆動スプロケット81を経由してチェーンの緩み側となる駆動スプロケット81と固定ローラ86cと固定ローラ86bの間に移動する。
【0110】
そのため、左株元搬送チェーン89の正逆回転駆動を繰り返して行って最終的に正回転駆動を最後に行って終了すると、左株元搬送チェーン89の弛みは始端部に設ける従動スプロケット85側に蓄えられ、また、逆回転駆動を最後に行って終了すると駆動スプロケット81と終端部に設ける固定ローラ86bとの間に蓄えられることになる。さらに、この場合、穀稈の詰まりを取り除くと駆動スプロケット81と終端部に設ける固定ローラ86bとの間に蓄えられた弛みは、左株元搬送チェーン89の自重によって始端部に設ける従動スプロケット85側に移動する。
【0111】
従って、左株元搬送チェーン89の正逆回転駆動を止めて穀稈の詰まりを取り除くと、何れの場合も左株元搬送チェーン89の弛みは始端部に設ける従動スプロケット85側に移動して、始端部に設ける従動スプロケット85から左株元搬送チェーン89が離脱してチェーン外れを生じさせる虞がある。そして、このような状態で左株元搬送チェーン89の終端部に設ける2つの固定ローラ86a、86bを前進させて通常の搬送状態に戻す際に、始端部に設ける従動スプロケット85から左株元搬送チェーン89が外れていることに気付けば、左株元搬送チェーン89を掛け直して刈取作業を再開すれば良い。
【0112】
しかし、これに気付くことなく刈取作業を再開すると、左株元搬送チェーン89が正常に穀稈を搬送しないので再び穀稈を詰まらせる原因となる。また、始端部に設ける従動スプロケット85から左株元搬送チェーン89が外れている状態で左株元搬送チェーン89を駆動すると、左株元搬送チェーン89のリンクプレートがガイドレール90bや挟持レール104等に接触して互いが損傷するという問題がある。
【0113】
そこで、係る問題を解決するため、左株元搬送装置25には前述のように、固定ローラ86a、86bの搬送通路からの後退に伴って発生する左株元搬送チェーン89の弛みに基づく左株元搬送チェーン89の始端部に設ける従動スプロケット85からの離脱を阻止するチェーン外れ防止体101を設け、従動スプロケット85からの左株元搬送チェーン89の外れを防止する。
【0114】
即ち、従動スプロケット85の最先端部にチェーン外れ防止体101を前方側から臨ませて設けると、このチェーン外れ防止体101によって外れを防止される部位の左株元搬送チェーン89の左右方向(搬送方向)の両側に(下流側と上流側に)分散して、又は一側に(下流側か上流側に)纏まって、左株元搬送チェーン89の終端部の弛みがチェーンを湾曲乃至屈曲させて蓄えられる。
【0115】
そのため、固定ローラ86a、86bを前進させて元の位置に戻すと、この場合、駆動スプロケット81は駆動を停止しているから、左株元搬送チェーン89は主に挟持レール104に案内されながらガイドレール90bに沿って上方に移動し、これにより先ずガイドレール90bの始端とチェーン外れ防止体101の間の弛みが取られる。
【0116】
また、次にこの間の弛みが無くなると、チェーン外れ防止体101とテンションローラ83の間の弛みがチェーン外れ防止体101にガイドされながら取られ、この間中には何れも従動スプロケット85からのチェーン外れは生じないから、最終的に元の通りに左株元搬送チェーン89を従動スプロケット85に弛みなく適正に巻き掛けることができる。
【0117】
さらに、前述のようにラチェットレンチ54等の工具を用いて左株元搬送装置25の駆動スプロケット81を正逆回転駆動して、合流部G2に詰まった穀稈を左株元搬送チェーン89の正逆回転作動によって解すと、合流部G2の搬送通路から左株元搬送チェーン89が確実に退避して通路幅が拡がり、詰まった穀稈を引き抜き易くなる。そして、その場合、チェーン外れ防止体101は左株元搬送チェーン89の従動スプロケット85からのチェーン外れを阻止するから、左株元搬送チェーン89は正常に作動させることができる。
【0118】
しかし、左株元搬送チェーン89を逆回転駆動して詰まった穀稈を解そうとすると、左株元搬送チェーン89の終端部の弛みは始端部に設ける従動スプロケット85、テンションローラ83、駆動スプロケット81を経由して駆動スプロケット81の弛み側に移動し、また、左株元搬送チェーン89の終端部には詰まった穀稈の負荷が作用しているから、最終的にチェーンの弛みは駆動スプロケット81と固定ローラ86cと固定ローラ86bの間に溜って、駆動スプロケット81の緩み側となる歯から左株元搬送チェーン89を浮き上がらせる。
【0119】
また、駆動スプロケット81の前方に設けるテンションローラ83は、通常のチェーンの緩み側から張り側に位置することになって、この側の弛みが無くなった後は左株元搬送チェーン89の終端部に詰まった穀稈の重負荷が作用するチェーン張力によって、その緊張を解除する側に退避しようとするから、駆動スプロケット81の張り側となる歯から左株元搬送チェーン89が浮き上がり、それによって駆動スプロケット81に対する左株元搬送チェーン89の巻き掛け角が少なくなって、駆動スプロケット81から左株元搬送チェーン89がチェーン飛びして左株元搬送チェーン89の逆回転作動を不能する。
【0120】
一方、刈取作業中に穀稈搬送装置に穀稈が詰まった際には、速やかに穀稈搬送装置の駆動を停止して、更なるに穀稈の詰まりを防止して穀稈搬送装置の損傷を防止する必要がある。そこで、左株元搬送チェーン89に穀稈詰まり等の過負荷が加わってチェーン張力が増大した際に、駆動スプロケット81から左株元搬送チェーン89をチェーン飛びさせて左株元搬送チェーン89の回転作動を停止させるため、駆動スプロケット81の歯先を丸める等してチェーン飛びし易くしている。
【0121】
従って、通常の刈取作業時における左株元搬送チェーン89の正回転駆動時には、駆動スプロケット81からのチェーン飛びを許容しながら、穀稈の解しを行う左株元搬送チェーン89の特に逆回転駆動時には、駆動スプロケット81からのチェーン飛びを阻止する必要がある。そこで、この問題を解決するため、前述のように左株元搬送装置25に歯飛び防止体97を設け、この歯飛び防止体97を穀稈の解しを行う左株元搬送チェーン89の回転駆動時に作用させるように、固定ローラ86a、86bの搬送通路からの退避作動に連動させて非作用位置から作用位置、或いは作用位置から非作用位置に移動させる。
【0122】
以上、本発明の実施形態について説明したが、左株元搬送装置25に設ける固定ローラ86a、86b、86cやテンションローラ83はスプロケットで構成してもよく、或いは、スターホイール21cや突起付き掻込ベルト20を別経路で駆動するようになすものであれば、従動スプロケット85をローラに構成してもよい。また、チェーン外れ防止体101は従動スプロケット85の最先端寄りの下面に臨ませ、左株元搬送チェーン89の下リンクプレートを下方から受け止めてチェーン外れを防止させてもよく、さらに、左株元搬送装置25の穀稈の詰まり除去機構を中株元搬送装置26に適用してもよく、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0123】
1 コンバイン
16 刈取部
19 引起装置
22 掻込装置
23 刈刃装置
24 右株元搬送装置
25 左株元搬送装置
26 中株元搬送装置
27 扱深さ搬送装置
30 穂先搬送装置
33 脱穀部
54 ラチェットレンチ(手動駆動手段)
77 右株元搬送チェーン
81 駆動スプロケット
83 テンションローラ(テンション輪体)
85 従動スプロケット(始端部に設ける回転輪体)
86a 固定ローラ(終端部に設ける回転輪体)
86b 固定ローラ(終端部に設ける回転輪体)
89 左株元搬送チェーン
97 歯飛び防止体
101 チェーン外れ防止体