(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】歯科用ハンドピース
(51)【国際特許分類】
A61C 1/08 20060101AFI20221018BHJP
A61C 1/06 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61C1/08 Z
A61C1/06
(21)【出願番号】P 2019030005
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000150327
【氏名又は名称】株式会社ナカニシ
(72)【発明者】
【氏名】堀江 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】張替 勇介
(72)【発明者】
【氏名】鷹觜 権郁
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0029774(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 1/08
A61C 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドと、前記ヘッドに接続するグリップを有し、
前記ヘッドは、治療工具を保持する工具保持体と、前記工具保持体に設けられたヘッド歯車を有し、前記工具保持体は回転自在に前記ヘッド内部に位置し、
前記グリップの内部には、前記ヘッド歯車に駆動力を伝達する第1伝達軸と第2伝達軸と、前記第2伝達軸を内部に通すジャケットケースと、前記第1伝達軸を内部に通す接続ケースと、前記第1伝達軸と前記第2伝達軸の接続空間を形成する中間ケースを備え、
前記第1伝達軸には、モータと連結する連結部を備え、
前記接続ケースには、外部から駆動力を得るためにモータと接続する接続開口を備え、
前記ヘッドと前記ジャケットケースは接続し、前記ジャケットケースと前記中間ケースは接続し、前記中間ケースと前記接続ケースは接続し、
前記第1伝達軸は、軸受ホルダに保持された軸受に回転自在に軸支持され、
前記軸受ホルダは、前記中間ケースの内部に入り込み、該中間ケースの内部に形成された位置決め段部に突き当たることで位置が決まり、
前記位置決め段部は複数設けら
れることで、前記中間ケースは様々な前記第1伝達軸の位置決め部分となることを特徴とする歯科用ハンドピース。
【請求項2】
前記ヘッドと前記ジャケットケースの接続部分と、前記ジャケットケースと前記中間ケースの接続部分と、前記中間ケースと前記接続ケースの接続部分は、密閉構造であることを特徴とする請求項1に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項3】
前記軸受ホルダは、前記中間ケースと前記接続ケースに挟まれていることを特徴とする請求項1に記載の歯科用ハンドピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療箇所を切削する治療工具を回転自在に備え、この治療工具をモータにより回転させる歯科用ハンドピース(以下、ハンドピース)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯科の医療分野において、ハンドピースと呼ばれる手持ちの医療器具を用いた治療が行われている。
ハンドピースは、治療工具を回転自在に保持するヘッドと、ヘッドに接続するグリップと、グリップの後部に接続する駆動源となるモータと、グリップ内部においてモータの駆動力をヘッドへと伝達する伝達機構と、伝達機構を保持する構造を備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この様なハンドピースは、内部の伝達機構のギア比を変えることで、外殻を構成するヘッドやグリップは共通の物を使用して、増速タイプや減速タイプや等速タイプなど、1つの機種で、様々な仕様の製品が揃えられる。
減速タイプとは、治療工具Tが、モータの回転数より低い回転数で回転する(モータの回転速度より遅く回転する)ハンドピースHである。等速タイプとは、治療工具Tが、モータの回転数と同じ回転数で回転する(モータの回転速度と同じ速度で回転する)ハンドピースHである。増速タイプとは、治療工具Tが、モータの回転数より高い回転数で回転する(モータの回転速度より早く回転する)ハンドピースHである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この様なハンドパースは、外殻は共通の物を使用できるが、伝達機構は各タイプによって異なる大きさである。特に、伝達機構をモータと接続する側の第1伝達軸と、この第1伝達軸と接続すると共にヘッドへ駆動力を伝える第2伝達軸を用いるものは、第1伝達軸と第2伝達軸の接続位置が、タイプにより異なるので、この接続位置である接続空間を形成する中間ケースを各タイプごとに用意する必要があるという課題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、1つの機種で様々な仕様があるハンドピースにおいて、内部を構成する伝達機構の接続空間を形成する中間ケースを、各タイプ(仕様)に共通して用いることができる歯科用ハンドピースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決するためには、歯科用ハンドピースにおいて、ヘッドと、ヘッドに接続するグリップを有し、ヘッドは、治療工具を保持する工具保持体と、工具保持体に設けられたヘッド歯車を有し、工具保持体は回転自在にヘッド内部に位置し、グリップの内部には、ヘッド歯車に駆動力を伝達する第1伝達軸と第2伝達軸と、第2伝達軸を内部に通すジャケットケースと、第1伝達軸を内部に通す接続ケースと、第1伝達軸と第2伝達軸の接続空間を形成する中間ケースを備え、第1伝達軸には、モータと連結する連結部を備え、接続ケースには、外部から駆動力を得るためにモータと接続する接続開口を備え、ヘッドとジャケットケースは接続し、ジャケットケースと中間ケースは接続し、中間ケースと接続ケースは接続し、第1伝達軸は、軸受ホルダに保持された軸受に回転自在に軸支持され、軸受ホルダは、中間ケースの内部に入り込み、この中間ケースの内部に形成された位置決め段部に突き当たることで位置が決まり、位置決め段部は複数設けられることで、中間ケースは様々な第1伝達軸の位置決め部分となる様に構成すれば良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1つの機種で様々な仕様があるハンドピースにおいて、内部を構成する伝達機構の接続空間を形成する中間ケースを、各タイプ(仕様)に共通して用いることができる歯科用ハンドピースを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係るハンドピースを示す図であって、(a)ハンドピースの左側面図、(b)ハンドピースを左斜め前からみた斜視図、(c)ハンドピースを左斜め後からみた斜視図
【
図2】(a)
図1(b)のX-X断面図、(b)(a)に示すハンドピースから係止シャフトを外した状態を示す断面図
【
図5】中間ケースを示す図であり、(a)左側面図、(b)左斜め前から見た斜視図、(c)左斜め後ろから見た斜視図、(d)左斜め下方向から見た斜視図、(e)(b)のY-Y断面図
【
図9】等速の伝達機構を備えたハンドピースの断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(実施の形態)
以下、発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、実施の形態に係るハンドピースを示す図であって、(a)ハンドピースの側面図、(b)ハンドピースを左斜め前からみた斜視図、(c)ハンドピースを左斜め後からみた斜視図である。
図2(a)は、
図1(b)のX-X断面図、(b)(a)に示すハンドピースから係止シャフトを外した状態を示す断面図である。
図3は、ハンドピースの分解斜視図である。
図4は、
図3の断面図である。
図5は、中間ケースを示す図である。
図6は、
図4におけるヘッドの拡大断面図である。
図7は、
図3における第1伝達軸の拡大断面図である。
図8は、
図3における接続ケースの拡大断面図である。
【0011】
尚、本発明のハンドピースHにおいて、ヘッド10を備える側を「前」、モータが連結される側を「後」とする。そして、後方側から見て、「左」「右」を規定する。また、
図2と
図4の断面位置は、ハンドピースの左右中心を通る位置である。
【0012】
図1~
図4を参照すると、ハンドピースHは、ヘッド10と、このヘッド10に対して後方に延びるグリップ20を備える。ヘッド10とグリップ20は、外装がチタニウムやアルミニウム、又は、これらの合金などにより形成されている。
グリップ20は、筒状の部位であり、後端には、駆動源であるモータMが接続する。グリップ20はハンドピースHの外殻を構成し、使用時に使用者が手で握る部位となる。
【0013】
また、グリップ20の内部には、モータMの駆動力をヘッド10へと伝達する伝達機構(第1伝達軸60、第2伝達軸70)と、この伝達機構を内部に通して支持する内部ケース(ジャケットケース30、中間ケース40、接続ケース50)と、ヘッド10へと水を供給する流路となる水流路24と、ヘッド10へとエアを供給する流路となるエア流路25と、グリップ20へと光を導光する導光路26が備えられる。
【0014】
ヘッド10
以下、各部について詳細に説明する。
主に
図6を参照して、ヘッド10を説明する。
ヘッド10は、ハンドピースHの先端部分を構成し、治療工具Tが着脱可能に取り付けられる部位である。ヘッド10の外装は、ヘッドハウジング11と保持解除ボタン12から構成されている。
【0015】
ヘッドハウジング11は、下方向に向けて窄む形状を成す筒状の部材であり、後側の面から後方に向けて一体に立ち上がる筒状の部位であるヘッドハウジング接続部11aを備える。
ヘッドハウジング接続部11aには、後方に向けて開口するヘッドハウジング後開口11bが形成されている。ヘッドハウジング後開口11bを形成するヘッドハウジング接続部11aの内壁面には、雌螺子が形成されている。そして、ヘッドハウジング接続部11aの外周面には、雄螺子が形成されている。
更に、ヘッドハウジング11には、上方向に開口する上開口11cと下方向に開口する下開口11dが形成されている。
【0016】
保持解除ボタン12は、使用者が押圧することにより、治療工具Tをヘッド10から取り外し可能にするものであり、上開口11cを塞ぐように配置されたブラケット13の上側に設けられる。
次に、ヘッドハウジング11の内部には、工具保持体14が備えられている。工具保持体14は、内部に治療工具Tを保持する空間を形成する下方向に向いて開口する筒状の部位を備えている。工具保持体14は、保持解除ボタン12が押されることで、保持する治療工具Tの保持を解除し、ヘッド10に対して治療工具Tが着脱自在となる。
尚、保持解除ボタン12の周囲には、ヘッド10の内部と通じている隙間が形成されている。この隙間は、ハンドピースHを洗浄装置に接続して洗浄する際、洗浄装置から供給された薬液や温水が、ヘッド10の内部から排出される部分となる。
【0017】
この様な工具保持体14は、上軸受15及び下軸受16を介してヘッドハウジング11の内部に配置されることで、回転自在に支持される。
また、工具保持体14には、上軸受15と下軸受16の間となる位置に、ヘッド歯車14aが形成されている。ヘッド歯車14aは、ヘッド10の外部から回転駆動力が伝達されて、工具保持体14を回転駆動するためのものである。ヘッド歯車14aには、かさ歯車が用いられている。
工具保持体14に保持された治療工具Tは、下開口11dから下方向に向けてヘッド10の外部に突出した状態となる。
尚、下軸受け16の周囲には、ヘッド10の内部と通じている隙間が形成されている。この隙間は、ハンドピースHを洗浄装置に接続して洗浄する際、洗浄装置から供給された薬液や温水が、ヘッド10の内部から排出される部分となる。
【0018】
グリップ20 ネックスリーブ
次に、
図2~
図4を参照してグリップ20を説明する。
グリップ20は、ネックスリーブ21とグリップスリーブ22から構成されている。
ネックスリーブ21は、前方向に至るにつれて小さくなる窄んだ筒形状を成している。また、ネックスリーブ21は、前側にネックスリーブ前開口21aが、後側にネックスリーブ後開口21bが開口する。ネックスリーブ前開口21aは、ヘッドハウジン接続部11aの形状と同様に円形状であり、開口を形成する内壁には雌螺子が形成されている。
【0019】
また、ネックスリーブ後開口21bは、円形状である。ネックスリーブ後開口21bの後端から所定の部分の開口径を大きくすることで、ネックスリーブ内段部21cが形成されている。更に、ネックスリーブ21の後端から所定の部分の外径を小さくすることで、ネックスリーブ外段部21dが形成されている。ネックスリーブ外段部21dには、雄螺子が形成されている。
【0020】
このようなネックスリーブ21は、ネックスリーブ前開口21aに直交する直線と、ネックスリーブ後開口21bに直交する直線が、交わるように構成されている。つまり、ネックスリーブ21は、前後方向に延びる直線に対して、途中の部分から曲がった形状を成している。
尚、ネックスリーブ21の下面には、導光路26に導かれた光が放射されるライト開口21eが開口している。
【0021】
グリップスリーブ
次に、グリップスリーブ22は、前方向に至るにつれて小さくなる窄んだ筒形状を成している。また、グリップスリーブ22は、前側にグリップスリーブ前開口22aが、後側にグリップスリーブ後開口22bが形成されている。
グリップスリーブ前開口22aは、円形の開口であり、内面に雌螺子が形成され、ネックスリーブ外段部21dに嵌り込み螺子固定される形状を成している。また、グリップスリーブ後開口22bは円形の開口であり、端部から所定の部分の内面に雌螺子が形成されている。
このグリップスリーブ後開口22bの内部には、後述するリング螺子23が螺子固定される。リング螺子23は、リング形状の基体外周部に、雄螺子を形成したものであり。
【0022】
次に、モータMの駆動力をヘッド10へと伝達する伝達機構について説明する。
伝達機構は、第1伝達軸60と第2伝達軸70を備える。主に
図7を参照すると、第1伝達軸60はモータMのモータ接続部Maの内部に位置する回転軸に接続して、回転駆動力を伝達する軸である。第1伝達軸60は、後端にモータMの回転軸に接続する連結部61が設けられ、前端に第2伝達軸60と接続して駆動力を第1伝達軸60へ伝達する第1歯車62が設けられている。
本実施の形態の場合、第1歯車62は、内歯車を用いている。第1歯車62に内歯車を使用するハンドピースHは、モータMの回転数を減速して治療工具Tを回転駆動させる減速ハンドピースである。
【0023】
また、第1伝達軸60は、軸受63に回転自在に軸支持される。本実施の形態では、2つの軸受63を第1伝達軸60の長手方向に連ねて配置している。軸受63は、円筒形状の軸受ホルダ64に保持されている。
軸受ホルダ64は、第1伝達軸60の軸方向と直交する方向である径方向に突出する軸受ホルダ突出部64aが形成されている。
【0024】
この軸受ホルダ突出部64aは、軸受ホルダ64の一部分の直径を大きくすることで、形成されている。この軸受ホルダ突出部64aの直径R1の大きさは、第1歯車62の直径R2よりも大きく構成されている(R1>R2)。つまり、軸受けホルダ突出部64aは、第1歯車62より径方向に突出した部分を有する。
【0025】
次に、主に
図2~
図4を参照すると、第2伝達軸70は、第1伝達軸60とヘッド歯車14aに接続して、回転駆動力を工具保持体14に伝達するものである。第2伝達軸70は、後端に第2歯車71を備え、前端に第3歯車72を備える。
第2歯車71は、第1歯車62と接続する歯車であり、第3歯車72はヘッド歯車(第4歯車)14aと接続する歯車である。また、第2伝達軸70は、前側及び後側で、それぞれ軸受73で回転自在に支持される。
【0026】
次に、伝達機構を内部で支持する内部ケースについて説明する。
図2~
図4を参照すると、内部ケースは、グリップ20の内部の前側に位置するジャケットケース30と、後側に位置する接続ケース50と、中間に位置する中間ケース40を備える。
ジャケットケース30は、内部に第2伝達軸70を通して回転自在に保持する円筒状の部材である。ジャケットケース30は、第2伝達軸70が貫通する軸貫通孔31と、第2伝達軸70を支持する軸受73を収容する軸受収容部32を備えている。
【0027】
ジャケットケース30に第2伝達軸70が保持された状態において、ジャケットケース30の先端より前に第3歯車72が位置し、ジャケットケース30の後端より後方に第2歯車71が位置する。つまり、各歯車がジャケットケース30の前後に突出した状態となる。
また、ジャケットケース30の前端部分には、外表面30aに雄螺子が形成されている。更に、ジャケットケース30の後端側には、後述する中間ケース40との接続位置において、その隙間をシールするOリング等のシール手段33が設けられている。
【0028】
次に、接続ケース50を説明する。
主に
図8を参照すると、接続ケース50は、円筒状の部材であり、モータMのモータ接続部Maが内部に挿入することで、モータMとハンドピースHが接続する部位である。また、接続ケース50の内部には、第1伝達軸60が通っている。接続ケース50は、接続ケース円筒部51と、この接続ケース円筒部51において、前方に向いて開口する接続ケース前開口51aと、後方に向いて開口する接続ケース後開口51bを有する。
【0029】
更に、接続ケース50は、接続ケース円筒部51の表面から径方向に帯状に突出する接続ケース突出部52と、接続ケース後開口51bの周囲に設けられた接続受部54を備える。接続ケース突出部52の頂部には、前後方向に延びる溝52aが形成されている。
また、接続ケース円筒部51の後側において、表面から径方向に帯状に突出する接続ケース螺子受部55が形成されている。
【0030】
接続ケース後開口51bは、モータ接続部Maが接続ケース50内部に入り込み接続するための接続開口である。また、接続ケース後開口51bは、ハンドピースHを洗浄する際に、洗浄装置に取り付けられる部位となり、洗浄時には洗浄液や温水や温風がハンドピースHの内部へ供給される開口となる。
【0031】
円筒部51の内部は、モータ接続部Maを保持する部位であり、内壁にはモータ接続部Maに設けられたシール部材Mbが嵌り込む複数の溝51cが形成されている。接続受部54は、モータMとハンドピースHが接続した状態において、モータMと対向する部位となる。
尚、接続ケース突出部52と接続ケース前開口51aの間の部位は、後述する中間ケース40と接続する接続筒部53となる。接続筒部53は、中間ケース40の中間ケース後開口42aの内側に入り込む部位となる。
【0032】
次に、主に
図5を参照すると、中間ケース40を説明する。
中間ケース40は、ジャケットケース30と接続ケース50の間に位置し、内部に第1伝達軸60と第2伝達軸70の歯車接続空間Pを形成する。つまり、中間ケース40は、異なる方向から内部に入り込む伝達軸を接続する空間を形成する。
【0033】
この中間ケース40は、中間ケース前円筒部41と中間ケース後円筒部42が、中間ケース接続部43を介して、前後に連なるように形成された円筒状の部材である。尚、中間ケース40は、金属材料から削り出すことで一体に形成されるものであり、各部を説明する為に上記のように3つの部位に分けている。
【0034】
中間ケース前円筒部41は、前方に向けて中間ケース前開口41aが開口する円筒状の部位であり、後述する中間ケース後円筒部42より直径が小さい。中間ケース前開口41aの大きさは、第2伝達軸70を保持するジャケットケース30が入り込み、保持される程度の開口径である。
尚、中間ケース前円筒部41は、円筒の中心軸が、前後方向に延びる直線に対して、傾いた状態で、グリップ20の内部に位置する。つまり、中間ケース前開口41aは、斜め上方向を向いている。これは、曲がったネックスリーブ21の形状に合わせて傾かせているものである。
【0035】
次に、中間ケース後円筒部42は、後方に向けて中間ケース後開口42aが開口する円筒状の部位であり、中間ケース前円筒部41より直径が大きい。中間ケース後開口42aの大きさは、第1伝達軸60の軸受けホルダ64が入り込むことが可能な程度の開口径である。
また、中間ケース後円筒部42は、円筒表面から径方向に帯状に突出する第1突出部42bと 第2突出部42cを備える。第1突出部42bは、中間ケース後円筒部42の前側に位置する。第2突出部42cは、中間ケース後円筒部42の後側に位置する。
【0036】
第1突出部42bは、前側の部分の突出高さを後側の部分の突出高さより小さくすることで、突き当て段421bが形成されている。
第1突出部42bの前側の大きさは、ネックスリーブ後開口21bの開口径より小さく構成されている。また、第1突出部42bの後側の大きさは、ネックスリーブ後開口21bの開口径より大きくて、グリップスリーブ前開口22aより小さく構成されている。更に、第1突出部42bの頂部には、前後方向に延びる溝422bが形成されている。
【0037】
次に、第2突出部42cは、第1突出部42bの後側の部分と同じ大きさに構成されている。つまり、第2突出部42cは、グリップスリーブ前開口22aより小さく構成されている。また、第2突出部42cの頂部には、前後方向に貫く開口421cが形成されている。更に、第2突出部42cの右方向を向く部分には、前後方向に延びる横側溝422cが形成されている。
次に、中間ケース後円筒部42の下面において、第1突出部42bから第2突出部42cにかけて、凹部42dが形成されている。この凹部42dは、中間ケース40がグリップ20の内部に配置された状態において、中間ケース40の下面とグリップ20の内面との間に、スペースを形成するためのものである。
【0038】
この様に構成された中間ケース後円筒部42は、円筒の中心軸が、ハンドピースHに対して前後方向に延びる直線に平行となるように、グリップ20の内部に位置する。
これに対して、中間ケース前円筒部41は、円筒の中心軸が、前後方向に延びる直線に対して、傾いた状態で、グリップ20の内部に位置する。つまり、中間ケース前円筒部41は、中間ケース後円筒部42に対して、傾いた状態となる。
【0039】
次に、中間ケース接続部43は、中間ケース前円筒部41と中間ケース後円筒部42を接続する部位である。中間ケース接続部43は、径の異なる2つの円筒部を接続するので、外形状が概ね円錐形状を成している。
また、中間ケース接続部43は、内部が中空であり、中間ケース前円筒部41の内部空間と中間ケース後円筒部42の内部空間が連通するように接続する。つまり、中間ケース40の内部空間は、中間ケース前開口41aから中間ケース後開口42aにかけて、連通した空間となる。そして、この空間は、第1歯車62と第2歯車71の歯車接続空間Pとなる。
【0040】
以上の中間ケース40の内部は、次のように構成されている。
中間ケース40の内壁には、第1伝達軸60の軸受63を支持する軸受ハウジング64が後方より突き当たることで、中間ケース40の内部における第1伝達軸60の位置を決める部位である位置決め段部40aが形成されている。
本実施の形態の場合、第1位置決め段部401aと、この第1位置決め段部401aの後方に位置する第2位置決め段部402aの2つの位置決め段部40aが設けられている。
【0041】
第1位置決め段部401aは、2つの異なる内径の円筒部分を前後に組み合せることにより、形成されている。本実施の形態の場合、中間ケース接続部43の部分の接続部内径r1に対して、中間ケース後円筒部42の前側の部分の内径である前内径r2を大きく構成することで、第1位置決め段部401aを形成している。
【0042】
また、第2位置決め段部402aは、中間ケース後円筒部42の前内径r2より、中間ケース後円筒部42の後側の部分の内径である後内径r3を大きく構成することで、形成されている。
以上のように構成することで、中間ケース40の内壁に、前後に異なる位置に複数の位置決め段部40aが形成される。
【0043】
尚、
図3~
図4に示すように、ハンドピースHは、以上で説明した各部に加え、回り止めシャフト80と係止シャフト81を備える。回り止めシャフト80は、グリップ20の内部に設けられた中間ケース40が、回転しないように固定する為のものである。
また、係止シャフト81は、内部に第2伝達軸70を保持したジャケットケース30が、グリップ20の内部で動かないように押さえるものである。
【0044】
主に
図2~
図4を参照すると、以上のように構成された各部は、次のように組み立てられハンドピースHを構成する。
まず、ヘッド10に対して、第2伝達軸70を保持したジャケットケース30が接続する。
ヘッド10へは、ハウジング後開口11bに対して、第3歯車72側から第2伝達軸70及びジャケットケース30が入り込む。そして、ジャケットケース30の前側端は、ハウジング後開口11bからヘッドハウジング接続部11aの内部に入り込み固定される。
【0045】
ジャケットケース30は、前端部分に形成されている雄螺子により、ヘッドハウジング接続部11aの内壁面に形成された雌螺子に螺子固定される。このように、ヘッドハウジング11に対してジャケットケース30が螺子固定されることで、両部材は強固に突き当たり、両部材の間の隙間を無くすことができる密閉構造となっている。
【0046】
また、第3歯車72は、上軸受15と下軸受16の間に入り込み、ヘッド歯車14aと接続した状態で、ヘッド10の内部で回転可能に位置する。この様にヘッド10に対して、ジャケットケース30が接続することで、ヘッド10の内部空間とジャケットケース30の内部空間である軸貫通孔31は、連通した状態となる。
【0047】
次に、ヘッド10と第2伝達軸70を保持したジャケットケース30が接続した状態の物に、ネックスリーブ21が接続する。まず、ネックスリーブ21の内部空間の下側の領域には、あらかじめ、水流路24とエア流路25と導光路26となる部材が設けられている。導光路26は、ライト開口21eに接続している。
【0048】
そして、これらの部材が設けられたネックスリーブ21は、ネックスリーブ前開口21aから、内部にジャケットケース30を通しながらヘッドハウジング接続部11aに至る。そして、ヘッドハウジング接続部11aの外周面に形成された雄螺子に、ネックスリーブ前開口21aに形成された雌螺子が螺子固定される。
【0049】
次に、ヘッド10とジャケットケース30とネックスリーブ21が接続した状態の物に、中間ケース40が取り付けられる。
まず、ネックスリーブ21に対して、ネックスリーブ後開口21bから、中間ケース40が中間ケース前円筒部41側から入り込む。この時、中間ケース前開口41aから、第2伝達軸70を保持したジャケットケース30が中間ケース40の内部に入り込む。
【0050】
そして、中間ケース40は、第1突出部42bがネックスリーブ21の内部に入り込む。ここで、第1突出部42bの後側の部分は、ネックスリーブ後開口21bより大きく形成されている。従って、第1突出部42bの突き当て段421bは、ネックスリーブ後開口21bの開口縁に突き当たる。これにより、ネックスリーブ21に対する中間ケース40の前方向に位置が決まる。
【0051】
この様に、第1突出部42bは、突き当て段421bより前の部分がネックスリーブ21の内部に入り込み、突き当て段421bより後の部分がネックスリーブ21の後側の外側に位置する。
言い換えると、中間ケース40は、ネックスリーブ21に対して後ろから前方向に突き当たり配置されるので、後述するグリップスリーブ22がネックスリーブ21に接続して構成されるグリップ20の内部において、ネックスリーブ21の部分に前方を突き当てて配置されることになる。
【0052】
また、上記のように、ネックスリーブ21に対して中間ケース40が入り込んだ状態において、 中間ケース40の内部には、ジャケットケース30と第2伝達軸70の後側の部分が位置する。
ジャケットケース30は、中間ケース前円筒部41において保持されている。ジャケットケース30と中間ケース前円筒部41の間には、両部材の間に隙間を塞ぐシール手段33が設けられている。このシース手段33により、ジャケットケース30と中間ケース前円筒部41の間は、密閉構造となっている
第2伝達軸70は、中間ケース40の内部において、ジャケットケース30の内部から突出している。従って、第2伝達軸70の後端に設けられた第2歯車71は、中間ケース40の内部に位置する。
【0053】
尚、中間ケース40とネックスリーブ21の間には、回り止めシャフト80が設けられている。回り止めシャフト80は、前後方向に延びるように、中間ケース40の横側溝422cを通り、ネックスリーブ21側に係止されている。
このように、回り止めシャフト80が両部材を貫いて配置されているので、中間ケース40がネックスリーブ21に対して回らないように構成されている。
【0054】
次に、ネックスリーブ21に取り付けられた中間ケース40に対して、第1伝達軸60が取り付けられる。まず、第1伝達軸60は、第1歯車62側を前にして、中間ケース後開口42aから中間ケース40の内部にへと入り込む。第1歯車62の直径R2は、中間ケース後円筒部42の後内径r3及び前内径r2より小さいので、第1歯車62は前内径r2の部分まで入り込む。
また、軸受ホルダ64の突出部64aの直径R1は、前内径r2より大きいので、中間ケース40の内径の形成された第2位置決め段部402aに突き当たる。
【0055】
つまり、第1伝達軸60は、軸受ホルダ64の突出部64aが、第2位置決め段部402aに前方に向いて突き当たることで、前方向の位置が決まる。この状態において、第1歯車62は、中間ケース後円筒部42の前内径がr2の部分に、第2歯車71と接続した状態で、回転自在に位置する。
また、軸受ホルダ64は、突出部64aが中間ケース後円筒部42の内壁に径方向から支持される。更に、中間ケース40の凹部42dの下に水流路24とエア流路25と導光路26が位置する。
【0056】
次に、各部と接続したネックスリーブ21に対して、グリップスリーブ22が取り付けられる。グリップスリーブ22は、グリップスリーブ前開口22aがネックスリーブ外段部21dに嵌り、グリップスリーブ前開口22aの雌螺子が、ネックスリーブ外段部21dの雄螺子に螺子止めすることで、ネックスリーブ21に固定される。
【0057】
この状態において、グリップスリーブ22の内部には、中間ケース40と第1伝達軸60とネックスリーブ21から伸びる水流路24とエア流路25と導光路26を通した状態となる。また、中間ケース40の第1突出部42bの後側と第2突出部42cは、グリップスリーブ22の内壁に径方向から支持される。
【0058】
次に、各部と接続したグリップスリーブ21に対して、接続ケース50が取り付けられる。接続ケース50は、グリップスリーブ後開口22bからグリップスリーブ22の内部に入り込む。
接続ケース50の接続筒部53の外径は、中間ケース40の後内径r3より小さく構成されている。従って、接続筒部53は、中間ケース後開口42aから中間ケース40の内部に入り込む。そして、接続筒部53の開口縁は、突出部64aに対して後側から突き当たる。
つまり、突出部64aは、前側を第2位置決め段部402a、後側を接続筒部53に挟み込まれた状態となる。
【0059】
この様な状態において、接続ケース50の内部には、第1伝達軸60が位置する。また、接続ケース50の下側であって、グリップスリーブ22との間には、水流路24とエア流路25と導光路26が位置する。
更に、接続ケース50の接続ケース突出部52と接続ケース螺子受部55は、グリップスリーブ22の内壁に径方向から支持される。
【0060】
次に、接続ケース50を内部に備えたグリップスリーブ21に対して、リング螺子23を取付ける。リング螺子23は、接続受部54側から、接続ケース50とグリップスリーブ22の間に挿入される。そして、リング螺子23は、グリップスリーブ後開口22bに形成された雌螺子に、リング螺子23の外周に形成された雄螺子を螺子込むことで、グリップスリーブ21に取り付けられる。
リング螺子23は、グリップスリーブ21にねじ込まれて取り付けられることで、前方向に移動していき、接続ケース50の接続ケース螺子受部55に後側から突き当たり、螺子締められる。
【0061】
ここで、中間ケース40の第1突出部42bは、ネックスリーブ後開口21bの開口縁に、突き当て段421bが突き当たる。つまり、中間ケース40は、ネックスリーブ21に対して突き当たり、前方向の位置が決まる。
また、第1伝達軸60は、軸受ホルダ64の突出部64aが、中間ケース40の第2位置決め段部402aに前方に向いて突き当たることで、前方向の位置が決まる。
【0062】
更に、接続ケース50の接続筒部53は、中間ケース後開口42aから中間ケース40の内部に入り込む。そして、接続筒部53の開口縁は、突出部64aに対して後側から突き当たる。つまり、接続ケース50は、第1伝達軸60の軸受けホルダ64に対して突き当たり、前方向の位置が決まる。
このように、ネックスリーブ21に対して、中間ケース40が突き当たり、更に、中間ケース40に対して第1伝達軸60が突き当たり、更に、第1伝達軸60に対して接続ケース50が突き当たるよう構成されている。
【0063】
そして、これらの部材を内部に保持するグリップスリーブ22は、ネックスリーブ21に対して螺子により固定される。つまり、グリップスリーブ22とネックスリーブ21は、一体のグリップ20を形成する筺体となる。
従って、グリップスリーブ後開口22bにリング螺子23を螺子込むことで、リング螺子23とネックスリーブ22の間に、中間ケース40と第1伝達軸60の軸受けホルダ64と接続ケース50が挟まれる。
【0064】
リング螺子23をグリップスリーブ後開口22bに螺子込むことで、接続ケース螺子受部55にリング螺子23が当接し、接続ケース50を前方向に押す。これにより、接続ケース50が軸受ホルダ64を前方向に押し、更に、軸受ホルダ64が中間ケース40に押しつけられ、更に、中間ケース40がネックスリーブ22に押しつけられる。
つまり、リング螺子23をグリップスリーブ22に対して螺子止めすることで、ネックスリーブ22と中間ケース40と第1伝達軸60の軸受けホルダ64と接続ケース50が密着して、ネックスリーブ22とリング螺子23の間に固定される。
【0065】
この様に各部が構成されるので、接続ケース50と中間ケース40とジャケットケース30の内部に、伝達機構を備える空間を形成する。そして、ジャケットケース30がヘッド10に接続しているので、この伝達機構を備える空間は、ヘッド10の内部空間と連通する。
特に、第1伝達軸60の軸受ホルダ64と接続ケース50が接する部分は、軸受ホルダ64が保持されている中間ケース40の内部に、接続ケース50の接続筒部53が入り込んで、この接続筒部53の端が軸受ホルダ64と接している。
【0066】
つまり、接続筒部53と中間ケース40が、径方向に重なる部分が形成される。これにより、接続筒部53と中間ケース40の接続部分にラビリンス構造が形成され、接続ケース50と中間ケース40により形成される内部空間が、径方向外側に対して密閉構造となる。
また、接続筒部53と中間ケース40の間に、軸受ホルダ64が挟まれて固定されるので、軸受ホルダ64を備える第1伝達軸60が、ハンドピースHの内部に安定する。
【0067】
次に、グリップスリーブ22に取り付けられた接続ケース50に、係止シャフト81が挿入され取り付けられる。係止シャフト81の後端には、雄螺子が形成されている。接続ケース50の接続受部54には、係止シャフト81を取付けるシャフト取り付け開口56が開口している。シャフト取り付け開口56は、雌螺子が形成された貫通した開口である。
【0068】
シャフト取り付け開口56から挿入された係止シャフト81は、中間ケース40の開口421cを貫き溝422bを通り、ジャケットケース30に至る。ジャケットケース30は、係止シャフト81に対して傾いているので、係止シャフト81により抑えつけられる。
これにより、ジャケットケース81には、下方向を向く力が作用し、ネックスリーブ21に対して抑えつけられ固定される。
以上のように各部を構成することで、治療工具Tが、モータの回転数より高い回転数で回転する(モータの回転速度より速く回転する)増速タイプのハンドピースHが構成される。
【0069】
このように、グリップ20を構成するネックスリーブ21とグリップスリーブ22の内部において、ジャケットケース30と中間ケース40と接続ケース50は、それぞれ接続して、内部に伝達機構を通して保持する保持空間Sを形成する。そして、ジャケットケース30はヘッド10と内部空間が連通した状態で接続しているので、保持空間Sとヘッド10の内部が連通する。
また、ヘッド10とジャケットケース30、ジャケットケース30と中間ケース40、中間ケース40と接続ケース50のそれぞれの接続部分は、密閉構造となっている。
【0070】
このように各部が構成されているので、ハンドピースHを洗浄する為に接続ケース後開口51bに洗浄装置を接続して洗浄を開始すると、接続ケース後開口51bから保持空間Sの内部に薬液や温水が流入し、第1伝達軸60や第2伝達軸70がこれらの液体により洗浄されて、温風によって乾燥される。
そして、保持空間Sからヘッド10に至ったこれらの液体は、ヘッド10の内部を洗浄して、ヘッド10の各部の隙間からハンドピースHの外部に排出する。
【0071】
この時、保持空間Sから、ヘッド10とジャケットケース30、ジャケットケース30と中間ケース40、中間ケース40と接続ケース50のそれぞれの接続部分は、密閉構造となっているので、これらの接続部分から保持空間Sの外部へ、薬液や温水の漏れ出しを防ぐことができる。
つまり、グリップ20と、保持空間Sを形成するジャケットケース30と中間ケース40と接続ケース50との間に隙間に、薬液や温水の漏れ出しを防ぐことができる。これにより、洗浄後に内部に洗浄液や水が残りにくい歯科用ハンドピースを提供することができる。
【0072】
特に、ネックスリーブ21のネックスリーブ内段部21cに対して中間ケース40を後方より突き当て、この中間ケース40と接続ケース50の間に挟むように、第1伝達軸60の軸受ホルダ64を配置する。
そして、ネックスリーブ21のネックスリーブ外段部21dに固定されたグリップスリーブ22の後開口22bに、リング螺子23を螺子込むことで、接続ケース螺子受部55が前方押され、ネックスリーブ21とリング螺子23の間に、中間ケース40と軸受ホルダ64と接続ケース50が挟み込まれ固定される。
上記のリング螺子23の取り付けについて、グリップスリーブ22は、グリップ20を構成することから、リング螺子23はグリップに螺子込まれることになる。
【0073】
これにより、軸受ホルダ64と中間ケース40と接続ケース50の接する部分に構成されるラビリンス構造が、より強固に密閉され、この部分から内部ケースの外に薬液等が漏れにくくなる
また、内ケースを構成する中間ケース40と接続ケース50で軸受ホルダ64を挟み込み固定するので、モータMの駆動力を受ける第1伝達軸60を、内ケースに対して、より強固に保持することができる。
【0074】
ここで、中間ケース40の内部構造について更に説明する。
中間ケース40の内部には、位置決め段部40aが、前側の位置となる第1位置決め段部401aと後側の位置となる第2位置決め段部402aの2つ段部が形成されている。
そして、以上で説明した増速タイプのハンドピースHの場合、第2位置決め段部402aに、軸受ホルダ64の突出部64aの前側を突き当てることで、中間ケース40の内部において軸受ホルダ64の位置を決めている。
【0075】
増速タイプのハンドピースHの場合、途中で曲げられたグリップの内部空間で、第1伝達軸の第1歯車である内歯車に、第2伝達軸の第2歯車を接触させ互いの歯をかみ合わせる必要があるため、後述する等速タイプや減速タイプのハンドピースHと比べて、第1伝達軸60が短く、第2伝達軸70が長く構成されている。
【0076】
本実施の形態の中間ケース40は、増速タイプや減速タイプや等速タイプなど、様々な仕様の伝達機構の形態に対して、共通して用いることができるものである。
尚、減速タイプとは、治療工具Tが、モータの回転数より低い回転数で回転する(モータの回転速度より遅く回転する)ハンドピースHである。また、等速タイプとは、治療工具Tが、モータの回転数と同じ回転数で回転する(モータの回転速度と同じ速度で回転する)ハンドピースHである。
【0077】
以下、
図9を参照して、等速タイプの伝達機構を用いた形態を説明する。
図9は、等速の伝達機構を備えたハンドピースの断面図である。尚、以上で説明した増速タイプのハンドピースHと同じ構成又は共通の構成は、同じ符号を付し説明を省略する。
まず、等速タイプのハンドピースHに用いられる第1伝達軸60の軸受ホルダ64は、軸受ホルダ突出部64aの前方向に延びる延長部が形成されている。延長部は、軸受ホルダ突出部64aの近くに位置する後延長部64bと、この後延長部64bの前側に位置する前延長部64cから構成されている。
【0078】
後延長部64bは、円筒形状を成し、直径R4は中間ケース40の前内径r2と同じか、若干小さく構成されている。前延長部64aは、円筒形状を成し、直径R5は中間ケース前円筒部41の前内径r1と同じか、若干小さく構成されている。
この様に構成されているので、等速タイプのハンドピースHに用いられる軸受ホルダ64は、前方側から後方側に向けて、前延長部64a、後延長部64b、軸受ホルダ突出部64aと、徐々に大きくなる円筒部分が連なり形成されている。
【0079】
この様に構成された軸受けホルダ64を有する第1伝達軸60は、次のように中間ケース40に取り付けられる。
第1伝達軸60は、第1歯車62側を前にして、中間ケース後開口42aから中間ケース40の内部にへと入り込む。ここで、第1歯車62の直径R6は、中間ケース前円筒部41の内径である前円筒部内径r4と接続部内径r1と前内径r2と後内径r3のいずれよりも小さく構成されている。
従って、第1歯車62は、中間ケース前円筒部41の内部に至る。
【0080】
次に、前延長部64cは、直径R5は中間ケース接続部43の前内径r1と同じか、若干小さく構成されているので、中間ケース接続部43の内部に入り込む。
そして、後延長部64bは、直径R4は中間ケース後円筒部42の前内径r2と同じか、若干小さく構成されているので、中間ケース後円筒部42の前内径r2の部分の内部に入り込む。この時、後延長部64bの前面641bは、第1位置決め段部401aに後ろから突き当たる。
【0081】
つまり、第1伝達軸60は、軸受ホルダ64の後延長部64bの前面641bが、第1位置決め段部401aに前方に向いて突き当たることで、前方向の位置が決まる。位置決め段部40aは、第1伝達軸の位置決め部分となる。
この状態において、第1歯車62は、中間ケース前円筒部41の内部に、第2歯車71と接続した状態で、回転自在に位置する。また、軸受ホルダ64は、突出部64aが中間ケース後円筒部42の内壁に径方向から支持される。
【0082】
以上、等速タイプのハンドピースHの構成を説明したが、増速タイプは、第1伝達軸において、増速機構となる遊星ギアを有する点で異なるが、その他の構成は、等速タイプのハンドピースHと同様である。
このように、中間ケース40の内部に、第1伝達軸60の位置を決める複数の位置決め段部40aを設けることにより、中間ケース40を変えることなく、等速や増速や減速等、異なるさまざまな仕様のハンドピースHの伝達機構に対応することができる。つまり、中間ケース40は、さまざまな仕様のハンドピースHに共通して用いることができる。
【0083】
つまり、組み立てるハンドピースHの仕様の違いにより、用いる伝達機構が変り、第1伝達軸60の長さが変わっても、中間ケース40をさまざまな仕様の第1伝達軸60に対して、共通して用いることができる。
尚、本実施の形態においては、位置決め段部40aは2段のもので説明したが、3段以上でもよい。段数を増やすことで、より多くの様々な伝達機構に対応することができる。
【0084】
また、本実施の形態における歯車に係る説明について、歯車と歯車が接続するとは、歯車の歯と歯が噛み合い、駆動力が伝達可能な状態となることである。また、前後方向に延びる直線とは、第1の伝達軸が伸びる方向と平行な直線である。つまり、モータMがハンドピースHに接続する接続する方向と平行な方向である。
【符号の説明】
【0085】
H ハンドピース
T 治療工具
M モータ
Ma モータ接続部
P 歯車接続空間
10 ヘッド
11 ヘッドハウジング
11a ヘッドハウジング接続部
11b ヘッドハウジング後開口
11c 上開口
11d 下開口
12 保持解除ボタン
13 ブラケット
14 工具保持体14
14a ヘッド歯車(第4歯車)
15 上軸受
16 下軸受
20 グリップ
21 ネックスリーブ
21a ネックスリーブ前開口
21b ネックスリーブ後開口
21c ネックスリーブ内段部
21d ネックスリーブ外段部
21e ライト開口
22 グリップスリーブ
22a グリップスリーブ前開口
22b グリップスリーブ後開口
23 リング螺子
30 ジャケットケース
30a 外表面
31 軸貫通孔
32 軸受収容部
33 シール手段
40 中間ケース
40a 位置決め段部
401a 第1位置決め段部
402a 第2位置決め段部
41 中間ケース前円筒部
41a 中間ケース前開口
42 中間ケース後円筒部
42a 中間ケース後開口
42b 第1突出部
421b 突き当て段
422b 溝
42c 第2突出部
421c 開口
422c 横側溝
42d 凹部
43 中間ケース接続部
50 接続ケース
51 接続ケース円筒部
51a 接続ケース前開口
51b 接続ケース後開口
52 接続ケース突出部
53 接続筒部
54 接続受部
55 接続ケース螺子受部
56 シャフト取り付け開口
60 第1伝達軸
61 連結部
62 第1歯車
63 軸受
64 軸受ホルダ
64a 軸受ホルダ突出部
64b 後延長部
64c 前延長部
70 第2伝達軸
71 第2歯車
72 第3歯車
73 軸受
80 回り止めシャフト
81 係止シャフト