(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20221018BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20221018BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221018BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20221018BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221018BHJP
H01M 4/75 20060101ALI20221018BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20221018BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20221018BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/058
H01M10/052
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/75 Z
H01M4/66 A
H01M50/414
(21)【出願番号】P 2019053321
(22)【出願日】2019-03-20
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】瀬上 正晴
(72)【発明者】
【氏名】中野 広幸
(72)【発明者】
【氏名】牧村 嘉也
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 厳
【審査官】石井 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168286(WO,A1)
【文献】特表2014-532278(JP,A)
【文献】特表2017-508249(JP,A)
【文献】特表2016-527681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
H01M4/64-4/84
H01M10/00-10/04;10/06-10/34
H01M10/05-10/0587
H01M50/40-50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方面、他方面及び側面を有するとともに前記一方面から前記他方面に向かって延びる複数の孔を有する第1の電極と、前記複数の孔の各々に挿入された第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されたセパレータ層と、を備え、
前記第2の電極が、活物質及びバインダーを含む活物質層と、金属ワイヤからなる芯材と、を備えるロッド型の電極であり、
前記金属ワイヤが、前記第2の電極の動作電位において安定である金属からな
り、
前記第1の電極が炭素を含む負極であり、
前記第1の電極の前記複数の孔の各々の径が100μm以上600μm以下であり、
前記第1の電極の活物質密度が1.1g/cm
3
以上1.5g/cm
3
以下であり、
前記第2の電極が正極であり、
前記第2の電極の活物質密度が2.1g/cm
3
以上2.9g/cm
3
以下であり、
前記第2の電極の前記金属ワイヤの径が20μm以上50μm以下である、
二次電池。
【請求項2】
前記セパレータ層がフッ化ビニリデンに由来する重合単位とヘキサフルオロプロピレンに由来する重合単位とを有する共重合体から構成されている、
請求項
1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記第2の電極の前記バインダーがポリテトラフルオロエチレンを含む、
請求項1
または2に記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は二次電池等を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一方面、他方面及び側面を有するとともに一方面から他方面へと向かって伸びる複数の孔を有する第1の電極と、当該複数の孔の各々に挿入されたロッド型の第2の電極とを備える三次元構造を有する二次電池が開示されている。この構造を採用することにより、電極間距離の近接化、集電構造の簡素化等が可能となり、高容量且つ高い入出力特性を有する二次電池とすることが可能と考えられる。尚、特許文献2に開示されているように、串歯状の電極構造も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2011/0171518号
【文献】特開2014-026916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたような所定の三次元構造を有する二次電池は、充放電サイクル後の容量維持率が低い場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は上記課題を解決するための手段の一つとして、一方面、他方面及び側面を有するとともに前記一方面から前記他方面に向かって延びる複数の孔を有する第1の電極と、前記複数の孔の各々に挿入された第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されたセパレータ層と、を備え、前記第2の電極が、活物質及びバインダーを含む活物質層と、金属ワイヤからなる芯材と、を備えるロッド型の電極であり、前記金属ワイヤが、前記第2の電極の動作電位において安定である金属からなる、二次電池を開示する。
【0006】
本開示の二次電池において、前記第1の電極が炭素を含む負極であり、前記第1の電極の前記複数の孔の各々の径が100μm以上600μm以下であり、前記第1の電極の活物質密度が1.1g/cm3以上1.5g/cm3以下であり、前記第2の電極が正極であり、前記第2の電極の活物質密度が2.1g/cm3以上2.9g/cm3以下であり、前記第2の電極の前記金属ワイヤの径が20μm以上50μm以下であってもよい。
【0007】
本開示の二次電池において、前記セパレータ層がフッ化ビニリデンに由来する重合単位とヘキサフルオロプロピレンに由来する重合単位とを有する共重合体から構成されていてもよい。
【0008】
本開示の二次電池において、前記第2の電極の前記バインダーがポリテトラフルオロエチレンを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の二次電池によれば、ロッド型の第2の電極において金属ワイヤからなる芯材を用いることで、第2の電極の強度等を高めることができる。第2電極中に金属ワイヤが存在することで、バインダーが金属ワイヤに絡み、バインダーの偏在化を抑制できたものと推定される。これにより、充放電サイクル後の容量維持率の高い二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】二次電池10の構成の一例を説明するための概略図である。
【
図2】第1の電極1の構成の一例を説明するための概略図である。
【
図3】第2の電極2の構成の一例を説明するための概略図である。
【
図4】二次電池10の製造方法の一例を説明するための概略図である。
【
図5】実施例にて作製したハニカム型電極の構造の一例を示す写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.二次電池10
図1に、二次電池10の構成の一例を概略的に示す。
図1(A)が二次電池10の外観を概略的に示す斜視図であり、
図1(B)が
図1(A)におけるIB-IB断面を概略的に示す図である。また、
図2に、二次電池10に備えられる第1の電極1の構成の一例を概略的に示す。
図2(A)が第1の電極1の外観を概略的に示す斜視図であり、
図2(B)が
図2(A)におけるIIB-IIB断面を概略的に示す図であり、
図2(C)が孔1dの径について説明するための概略図である。さらに、
図3に、二次電池10に備えられる第2の電極2の構成の一例を概略的に示す。
図3(A)が第2の電極2の外観を概略的に示す図であり、
図3(B)が第2の電極2の径について説明するための概略図である。
【0012】
図1~3に示すように、二次電池10は、一方面1a、他方面1b及び側面1cを有するとともに一方面1aから他方面1bに向かって延びる複数の孔1dを有する第1の電極1と、複数の孔1dの各々に挿入された第2の電極2と、第1の電極1と第2の電極2との間に配置されたセパレータ層3と、を備えている。二次電池10においては、第2の電極2が、活物質及びバインダーを含む活物質層2aと、金属ワイヤからなる芯材2bと、を備えるロッド型の電極であり、金属ワイヤが、第2の電極2の動作電位において安定である金属からなる。
【0013】
1.1.第1の電極1
図2に示すように、第1の電極1は、一方面1a、他方面1b及び側面1cを有するとともに一方面1aから他方面1bに向かって延びる複数の孔1dを有する。第1の電極1は一定の強度を有していればよく、その壁面は密であっても多孔質であってもよい。
【0014】
1.1.1.一方面1a及び他方面1b
第1の電極1の一方面1a及び他方面1bの面形状は特に限定されるものではない。
図2には当該面形状が四角形状のものを例示したが、四角形状以外の多角形状であってもよいし、円形状であってもよいし、これら以外の形状であってもよい。一方面1a及び他方面1bは必ずしも平坦でなくてもよい。一方面1a及び他方面1bの面積(複数の貫通孔1dの開口面積を含む全面の面積)は特に限定されるものではなく、目的とする電池の規模や性能に応じて当該面積を適宜決定すればよい。例えば、一方面1a及び他方面1bの面積を50mm
2以上100000mm
2以下としてもよい。
【0015】
1.1.2.側面1c
第1の電極1の一方面1a及び他方面1bは側面1cを介して結合している。側面1cは平面によって構成されていてもよいし、曲面によって構成されていてもよいし、平面と曲面との組み合わせによって構成されていてもよい。第1の電極1の側面1cの一方面1aから他方面1bまでの長さ(第1の電極1の高さ)は特に限定されるものではない。目的とする電池の規模や性能に応じて、第1の電極1の高さを適宜決定すればよい。例えば、当該高さを5mm以上2000mm以下としてもよい。
【0016】
1.1.3.孔1d
第1の電極1は一方面1aから他方面1bへと向かって伸びる複数の孔1dを有する。
図2には、孔1dの断面形状(開口形状)が四角形状のものを例示したが、四角形状以外の多角形状であってもよいし、円形状であってもよいし、これら以外の形状であってもよい。孔1dの径は特に限定されるものではない。充放電サイクル後の容量維持率を一層高める観点からは、孔1dの径が100μm以上600μm以下であってもよい。
【0017】
尚、第1の電極1における「孔1dの径」は、例えば、以下のようにして特定することができる。すなわち、
図2(C)に示すように、当該孔1dの開口形状を特定し、当該開口形状に内接し得る最大の円を特定したうえで、当該最大内接円の直径D1を「孔1dの径」とみなす。
【0018】
第1の電極1において、孔1dの断面積(開口面積)は特に限定されるものではない。目的とする電池の規模や性能に応じて、孔1dの断面積を適宜決定すればよい。例えば、孔1dの1個あたりの断面積を0.0001mm2以上1mm2以下としてもよい。また、一方面1aの面積をA1、複数の孔10dの合計の断面積をA2とした場合、A2/A1が0.2以上0.8以下であってもよい。
【0019】
複数の孔1dの間の隔壁(リブ)の幅(リブ厚)は特に限定されるものではなく、強度等を考慮して適宜決定すればよい。例えば、当該リブ厚を0.01mm以上1mm以下としてもよい。
【0020】
第1の電極1に設けられる複数の孔1dの数は特に限定されるものではない。孔1dの存在頻度、大きさ、総数は対極の容量比との関係から適宜決定してもよい。
【0021】
図2(B)に示すように、第1の電極1において、孔1dは一方面1aから他方面1bへと略直線的に設けられていてもよい。また、押出成形による第1の電極1の成形性を考慮した場合、孔1dは、
図2(B)に示すように、第1の電極1の一方面1aから他方面1bへと貫通する貫通孔であってもよい。或いは、孔1dは、一方面1aに開口を有するとともに他方面1bには貫通していない孔であってもよい。
【0022】
1.1.4.材質
第1の電極1は、電池の充放電時にキャリアイオンを挿入・脱離可能な材料を含む。第1の電極1を負極とする場合、当該第1の電極1は負極活物質を含み得る。第1の電極1を正極とする場合、当該第1の電極1は正極活物質を含み得る。公知の活物質のうち、所定のキャリアイオンを吸蔵放出する電位(充放電電位)が、卑な電位であるものを負極活物質とし、貴な電位であるものを正極活物質として用いることができる。
【0023】
負極活物質は二次電池の負極活物質として公知のものをいずれも採用可能である。二次電池10をリチウムイオン二次電池とする場合、負極活物質としてはグラファイトやハードカーボン等の炭素;SiやSi合金;チタン酸リチウム等の各種酸化物;金属リチウムやリチウム合金等を用いることができる。充放電サイクル後の容量維持率を一層高める観点からは、負極活物質として炭素を採用してもよい。負極活物質は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。負極活物質は粒子状であってもよい。粒子状の負極活物質を採用する場合、その一次粒子径は1nm以上500μm以下であってもよい。下限は5nm以上であってもよし、10nm以上であってもよいし、50nm以上であってもよい。上限は100μm以下であってもよいし、50μm以下であってもよい。負極活物質は1次粒子同士が集合して2次粒子を形成していてもよい。この場合、2次粒子の粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5μm以上1000μm以下であってもよい。下限は1μm以上であってもよく、上限は500μm以下であってもよい。
【0024】
正極活物質は二次電池の正極活物質として公知のものをいずれも採用可能である。二次電池10をリチウムイオン二次電池とする場合、正極活物質は構成元素としてLiを含み得る。例えば、Liを含む酸化物やポリアニオン等が挙げられる。より具体的には、コバルト酸リチウム(LiCoO2等);ニッケル酸リチウム(LiNiO2等);マンガン酸リチウム(LiMn2O4等);LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2;Li1+xMn2-x-yMyO4(MはAl、Mg、Co、Fe、Ni、Znから選ばれる一種以上)で表される異種元素置換Li-Mnスピネル;リン酸金属リチウム(LiMPO4、MはFe、Mn、Co、Niから選ばれる1種以上);等が挙げられる。正極活物質は1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。正極活物質は粒子状であってもよい。粒子状の正極活物質を採用する場合、その一次粒子径は1nm以上500μm以下であってもよい。下限は5nm以上であってもよいし、10nm以上であってもよいし、50nm以上であってもよい。上限は100μm以下であってもよいし、50μm以下であってもよい。正極活物質は1次粒子同士が集合して2次粒子を形成していてもよい。この場合、2次粒子の粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば、0.5μm以上1000μm以下であってもよい。下限は1μm以上であってもよく、上限は500μm以下であってもよい。
【0025】
第1の電極1における活物質の含有量は特に限定されるものではなく、目的とする電池の性能に応じて適宜決定すればよい。例えば、第1の電極の全体を100質量%として、活物質の含有量を60質量%以上99質量%以下とすることができる。下限は80質量%以上であってもよく、上限は98質量%以下であってもよい。
【0026】
第1の電極1における活物質密度は特に限定されるものではない。例えば、第1の電極1の活物質密度は0.9g/cm3以上1.6g/cm3以下であってもよい。充放電サイクル後の容量維持率を一層高める観点からは、第1の電極1の活物質密度は1.1g/cm3以上1.5g/cm3以下であってもよい。
【0027】
尚、「第1の電極1の活物質密度」は、例えば、以下の通り特定することできる。すなわち、第1の電極1から所定の幅及び高さの測定試料を切り出す。当該測定試料の体積(幅×幅×高さ)から、孔1dの幅(径)の平均値LOP及び孔1dの間のリブ厚の平均値LWから算出される孔体積を除外し、切り出した測定試料に含まれる壁部の体積V1を算出する(壁部に細かな空隙が存在する場合、当該細かな空隙を含んだ壁部の体積V1を算出する)。熱重量分析等から壁部に含まれる活物質以外の成分(後述のバインダー等)の重量を特定する。切り出した測定試料の重量WNEからバインダー等の重量を除外することで活物質の重量WAを特定する。上記の重量WAと体積V1とから、活物質密度WA/V1を求める。
【0028】
第1の電極1において粒子状の活物質を採用する場合、第1の電極1は、当該粒子状の活物質と、当該活物質同士を結着させるためのバインダーとを含んでいてもよい。第1の電極1に含まれ得るバインダーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、これらの共重合体、これらと他の重合単位との共重合体等が挙げられる。バインダーは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。第1の電極1におけるバインダーの含有量は特に限定されるものではなく、目的とする電池の性能に応じて適宜決定すればよい。例えば、第1の電極の全体を100質量%として、バインダーの含有量を1質量%以上40質量%以下とすることができる。下限は2質量%以上であってもよく、上限は20質量%以下であってもよい。
【0029】
第1の電極1には、上記した活物質やバインダーのほか、導電助剤が含まれていてもよい。第1の電極1に含まれ得る導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック(KB)や気相法炭素繊維(VGCF)やカーボンナノチューブ(CNT)やカーボンナノファイバー(CNF)や黒鉛等の炭素材料;ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。導電助剤は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。導電助剤の形状は、粉末状、繊維状等、種々の形状を採用できる。第1の電極1における導電助剤の含有量は特に限定されるものではなく、目的とする電池の性能に応じて適宜決定すればよい。
【0030】
二次電池10を全固体電池とする場合、第1の電極1には固体電解質が含まれていてもよい。第1の電極1に含まれ得る固体電解質は、有機系固体電解質であっても無機系固体電解質であってもよい。無機系固体電解質としては硫化物固体電解質が挙げられる。二次電池10をリチウムイオン二次電池とする場合、硫化物固体電解質としては、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Si2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI-LiBr、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5-GeS2等が挙げられる。固体電解質は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。第1の電極1における固体電解質の含有量は特に限定されるものではなく、目的とする電池の性能に応じて適宜決定すればよい。
【0031】
第1の電極1には、上記以外の添加剤や不純物が含まれていてもよい。例えば、第1の電極1の成形時に使用した潤滑剤や可塑剤等が残渣として残っていてもよい。
【0032】
1.2.第2の電極2
図1に示すように、第2の電極2は、第1の電極1の複数の孔1dの各々に挿入されている。
図3に示すように、第2の電極2は、活物質及びバインダーを含む活物質層2aと、金属ワイヤからなる芯材2bと、を備えるロッド型の電極である。
【0033】
1.2.1.形状
第2の電極2は芯材2bを含んでおり、第2の電極2の長手方向は芯材2bの長手方向に沿ったものとなる。第2の電極2の長手方向と直交する断面の径や断面積は、第1の電極1の孔1dの開口形状等に応じて適宜決定すればよい。例えば、第2の電極2の径は50μm以上550μm以下であってもよい。また、第2の電極2の断面積は0.00009mm2以上0.95mm2以下であってもよい。
【0034】
尚、「第2の電極2の径」は、例えば、以下のようにして特定することができる。すなわち、
図3(B)に示すように、第2の電極2の長手方向と直交する断面形状を特定し、当該断面形状に外接し得る最小の円を特定したうえで、当該最小外接円の直径D2を「第2の電極2の径」とみなす。
【0035】
尚、第2の電極2の形状は、必ずしも、第1の電極1の孔1dと対応する形状でなくてもよい。例えば、第1の電極1の孔1dの開口形状が四角形状である場合に、第2の電極2の断面形状が円形状であってもよい。
【0036】
第2の電極2の長手方向の長さについても特に限定されるものではなく、第1の電極1の孔1dの長さに応じて適宜決定すればよい。例えば、第2の電極2の長手方向の長さを5mm以上2100mm以下とすることができる。第2の電極2の長手方向の長さは、
図1(B)に示すように、第1の電極1の孔1dの長さや第1の電極1の一方面1aから他方面1bまでの長さよりも長くてもよく、すなわち、第2の電極2の一部が第1の電極1の孔1dから突出していてもよい。或いは、第2の電極2の長さが、第1の電極1の孔1dの長さよりも短くてもよく、すなわち、第2の電極2が第1の電極1の孔1dの内部に完全に収容されていてもよい。
【0037】
1.2.2.活物質層2a
活物質層2aは活物質とバインダーとを含む。第1の電極1が負極である場合、第2の電極2の活物質層2aに含まれる活物質は正極活物質である。第1の電極1が正極である場合、第2の電極2の活物質層2aに含まれる活物質は負極活物質である。第2の電極2に含まれ得る活物質の種類や量は特に限定されるものではなく、目的とする電池の性能に応じて適宜決定すればよい。
【0038】
第2の電極2の活物質密度は特に限定されるものではない。例えば、第2の電極2の活物質密度は1.8g/cm3以上3.0g/cm3以下であってもよい。充放電サイクル後の容量維持率を一層高める観点からは、第2の電極2の活物質密度は、2.1g/cm3以上であってもよく、2.2g/cm3以上であってもよく、2.9g/cm3以下であってもよく、2.8g/cm3以下であってもよい。
【0039】
尚、「第2の電極2の活物質密度」は、例えば、以下の通り特定することできる。すなわち、第2の電極2の径や長手方向の長さから第2の電極の全体の体積V2を特定する。第2の電極2に含まれる芯材2b(金属ワイヤ)の径や長さから第2の電極2に含まれる芯材2bの体積V2bを特定する。体積V2から体積V2bを除外することで、活物質層2aの体積V2aを特定する。第2の電極2の全体の重量W2から、第2の電極2に含まれる金属ワイヤ2bの重量W2bを除外することで、活物質層2aの重量W2aを特定する。熱重量分析等から活物質層2aに含まれる活物質以外の成分(バインダー等)の重量を特定する。活物質層の重量W2aからバインダー等の重量を除外することで活物質の重量WBを特定する。当該重量WBと上記の体積V2aとから、活物質密度WB/V2aを求める。
【0040】
第2の電極2に含まれ得るバインダーとしては、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ABR)、ブタジエンゴム(BR)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、これらの共重合体、これらと他の重合単位との共重合体等が挙げられる。特に、本発明者の知見では、第2の電極2のバインダーがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む場合、第2の電極2の弾性を高めることができるとともに、芯材2bによるバインダーの最適配置の効果が特に顕著に高くなる。バインダーは1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。第2の電極2におけるバインダーの含有量は特に限定されるものではなく、目的とする電池の性能に応じて適宜決定すればよい。例えば、第2の電極の全体を100質量%として、バインダーの含有量を1質量%以上40質量%以下とすることができる。下限は2質量%以上であってもよく、上限は20質量%以下であってもよい。
【0041】
第2の電極2には、上記した活物質やバインダーのほか、導電助剤が含まれていてもよい。第2の電極2に含まれ得る導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック(KB)や気相法炭素繊維(VGCF)やカーボンナノチューブ(CNT)やカーボンナノファイバー(CNF)や黒鉛等の炭素材料;ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。導電助剤は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。導電助剤の形状は、粉末状、繊維状等、種々の形状を採用できる。第2の電極2における導電助剤の含有量は特に限定されるものではなく、目的とする電池の性能に応じて適宜決定すればよい。
【0042】
二次電池10を全固体電池とする場合、第2の電極2には固体電解質が含まれていてもよい。第2の電極2に含まれ得る固体電解質は、有機系固体電解質であっても無機系固体電解質であってもよい。無機系固体電解質としては硫化物固体電解質が挙げられる。二次電池10をリチウムイオン二次電池とする場合、硫化物固体電解質としては、Li2S-P2S5、Li2S-SiS2、LiI-Li2S-SiS2、LiI-Si2S-P2S5、Li2S-P2S5-LiI-LiBr、LiI-Li2S-P2S5、LiI-Li2S-P2O5、LiI-Li3PO4-P2S5、Li2S-P2S5-GeS2等が挙げられる。固体電解質は1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。第2の電極2における固体電解質の含有量は特に限定されるものではなく、目的とする電池の性能に応じて適宜決定すればよい。
【0043】
1.2.3.芯材2b
第2の電極2は芯材2bとして金属ワイヤを含む。第2の電極2において芯材2bとして金属ワイヤを採用することで、活物質層2aにおけるバインダーを最適配置に導くことができるものと考えられ、第2の電極2の強度を高めることができるとともに、二次電池としての充放電サイクル後の容量維持率を向上させることができる。
【0044】
金属ワイヤは、第2の電極2の動作電位において安定である金属からなる。例えば、第2の電極2の動作電位がLi基準で3.0V以上4.6V以下である場合、Al、Fe、ステンレス鋼、Pt及びAuからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属又は合金からなる金属ワイヤを採用してもよい。尚、第2の電極2の動作電位がLi基準で3.0V以上4.6V以下である場合において、仮にNiやCuからなる金属ワイヤを採用した場合、第2の電極2の動作電位において金属ワイヤが溶解する虞がある。第2の電極2の動作電位は上記の活物質の種類に応じて適宜決定すればよい。
【0045】
金属ワイヤの径は特に限定されるものではない。充放電サイクル後の容量維持率を一層高める観点からは、金属ワイヤの径が20μm以上50μm以下であってもよい。
【0046】
尚、「金属ワイヤの径」は、例えば、「円相当径」として特定することができる。すなわち、金属ワイヤの長手方向と直交する断面の面積を特定し、当該断面の面積に相当する真円の直径を特定し、当該真円の直径を「金属ワイヤの径」とみなす。
【0047】
金属ワイヤの長さは特に限定されるものではなく、第2の電極2の長手方向長さに応じて適宜決定すればよい。
図1(B)や
図3(A)に示すように、金属ワイヤの一端又は両端が活物質層2aから突出していてもよい。或いは、金属ワイヤの全体が活物質層2aの内部に含まれていてもよい。
【0048】
1.3.セパレータ層3
図1に示すように、セパレータ層3は、第1の電極1と第2の電極2との間に配置されている。より具体的には、セパレータ層3は、第1の電極1の孔1dの内壁と、第2の電極2の活物質層2aの表面との間に配置されている。
【0049】
1.3.1.形状
セパレータ層3の形状は、第1の電極1や第2の電極2の形状に応じて適宜決定すればよい。
図1に示す形態において、セパレータ層3は全体として筒状であり、第2の電極2の表面のうち、第1の電極1の孔1dの内壁と対向する部分の実質的に全面を被覆している。或いは、セパレータ層3は、第1の電極1の孔1dの内壁を被覆していてもよい。セパレータ層3と第1の電極1との間や、セパレータ層3と第2の電極2との間には、隙間があってもよいし、なくてもよい。セパレータ層3は複数の層からなっていてもよい。
【0050】
セパレータ層3は、第1の電極1と第2の電極2との短絡を防止し、且つ、必要なキャリアイオン伝導度を発現させることが可能な厚みを有していればよい。例えば、セパレータ層3の厚みは3μm以上40μm以下であってもよい。下限は5μm以上であってもよい。上限は25μm以下であってもよいし、20μm以下であってもよい。
【0051】
1.3.2.材質
セパレータ層3は、所定のキャリアイオン伝導度を発現し得る材料からなる。例えば、二次電池10を電解液系電池とする場合、セパレータ層3は電解液に含浸された状態において所定のキャリアイオン伝導度を発現し得る。この場合、セパレータ層3は各種ポリマーにより構成することができる。より高いキャリアイオン伝導度を発現させ得る観点、及び、セパレータ層3のピンホールの生成やセパレータ層3の破壊を抑制する観点からは、セパレータ層3がフッ化ビニリデンに由来する重合単位(VdF単位)とヘキサフルオロプロピレンに由来する重合単位(HFP単位)とを有する共重合体(PVdF-HFP)から構成されていてもよい。この場合、共重合体におけるVdF単位とHFP単位との重合比は特に限定されるものではない。また、共重合体の分子量についても特に限定されるものではない。
【0052】
或いは、セパレータ層3は微粒子と微粒子を結合するバインダーとを含んで構成されていてもよい。微粒子と微粒子を結合するバインダーとにより多孔質なセパレータ層を容易に形成可能であり、これを電解液に含浸させることで所定のキャリアイオン伝導度を発現し得る。この場合、微粒子としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、ベーマイト等の無機微粒子や、ポリエチレン、ポリプロピレン等の有機微粒子や、無機微粒子と有機微粒子との混合微粒子のいずれを採用してもよい。セパレータ層3に含まれ得るバインダーとしては、例えば、第1の電極1におけるバインダーとして例示したものうちの1種以上を採用可能である。或いは、上述のPVdF-HFPを採用してもよい。セパレータ層3における微粒子及びバインダーの量は特に限定されるものではなく、第1の電極1や第2の電極2の表面への密着性等を考慮して適宜決定すればよい。
【0053】
一方、二次電池10を全固体電池とする場合、セパレータ層3は固体電解質等を有することで所定のキャリアイオン伝導度を発現し得る。この場合、固体電解質としては上述したものから適宜選択して採用すればよい。
【0054】
1.4.その他の構成
上記の説明では、二次電池10において第1の電極1の孔1dの内部にのみセパレータ層3が設けられた形態について説明したが、セパレータ層が設けられる箇所は孔1dの内部のみに限定されるものではない。セパレータ層が孔1dの外部にはみ出し、第1の電極1の一方面1aや他方面1bを被覆していてもよい。
【0055】
第2の電極2についても同様である。すなわち、第2の電極2は、上述したロッド型の電極部分に加えて、第1の電極1の一方面1a側や他方面1b側にはみ出した部分を有していてもよい。例えば、セパレータ層が孔1dの外部にはみ出し、第1の電極1の一方面1aや他方面1bを被覆している場合、当該一方面1aや他方面1bを被覆するセパレータ層の表面にまで、第2の電極2が延在していてもよい。
【0056】
また、上記の説明では、二次電池10に備えられる必要最小限の構成である、第1の電極1、第2の電極2及びセパレータ層3のみを説明したが、二次電池10は第1の電極1、第2の電極2及びセパレータ層3のほかに、任意に、電池として必要なその他の構成を備えていてもよい。
【0057】
例えば、二次電池10は、第1の電極1に接続された第1の集電体と、第2の電極2に接続された第2の集電体とを備えていてもよい。この場合、第1の集電体は、第1の電極1の側面1cに接続されていてもよく、第2の集電体は、第1の電極1の一方面1a側又は他方面1b側に存在する第2の電極2の表面や金属ワイヤに接続されていてもよい。
【0058】
集電体は、例えば、金属箔や金属メッシュ等により構成可能である。集電体を構成する金属としては、Cu、Ni、Co、Cr、Au、Pt、Al、Fe、Ti、Zn、ステンレス鋼等が挙げられる。集電体の厚みは特に限定されるものではない。例えば0.1μm以上1mm以下であってもよいし、1μm以上100μm以下であってもよい。
【0059】
上述したように、二次電池10は、電解液を備えるものであってもよいし、電解液を備えない固体電池であってもよい。
図1に示す三次元構造をより容易に実現できる観点からは、二次電池10は電解液を備えるものであってもよい。二次電池10が電解液を備える場合、当該電解液はキャリアイオンを含み得る。キャリアイオンとしては、例えば、上述したリチウムイオンが挙げられる。ただし、本開示の技術が解決しようとする課題は、リチウムイオン二次電池においてのみ生じるものではなく、リチウムイオン以外の各種カチオン(ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン等)や、各種アニオン(水酸化物イオン、フッ化物イオン等)をキャリアイオンとする二次電池においても同様の課題が生じ得る。本開示の技術は、これら各種カチオン電池やアニオン電池のいずれにおいても採用可能であり、同様の効果が期待できる。電解液は水系電解液であっても非水系電解液であってもよい。電解液の組成は二次電池の電解液の組成として公知のものと同様とすればよい。
【0060】
言うまでもないが、二次電池10は必要な端子を備えていてもよいし、また、電池ケース内に収容されていてもよい。電池ケースとしては公知のラミネートパック等が挙げられる。二次電池10を用いた単セル形状は、コイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、扁平型、角形型等、種々の形状を採用でき、また、電池の大きさも自動車用等の大型電池から、携帯端末用等の小型電池まで広く採用できる。
【0061】
2.二次電池10の製造方法
二次電池10を製造する方法は特に限定されるものではない。
図4に二次電池10の製造方法の流れの一例を示す。
図4に示すように、二次電池10は、金属ワイヤを芯材2bとしてその周囲に活物質層2aを配置してロッド型の第2の電極2を作製する第1工程(
図4(A))と、第2の電極2の側面をセパレータ層3で被覆して被覆電極体4を得る第2工程(
図4(B))と、第1の電極1を得る第3工程(
図4(C))と、第1の電極1の孔1dに被覆電極体4を挿入する第4工程(
図4(D))とを備えている。
【0062】
第1工程において、第2の電極2は、例えば、活物質とバインダーとその他の任意成分とを混合して混合物を得た後、当該混合物の内部に金属ワイヤを挿入しつつ加圧成形することにより容易に作製できる。加圧成形後の成形体を目的とする形状に切断して第2の電極2としてもよい。その他、種々の方法によって第2の電極2を作製することができる。
【0063】
第2工程において、被覆電極体4は、例えば、セパレータ層3を構成する材料からなる薄膜を第2の電極2の側面に巻きつけて固着させることにより容易に作製できる。或いは、第2の電極2の側面にセパレータ層3を構成する材料を湿式塗布後、乾燥することによって被覆電極体4を得てもよい。或いは、第2の電極2の側面にセパレータ層3を構成する材料を配置した後、乾式で加圧成形することによって被覆電極体4を得てもよい。その他、種々の方法によって被覆電極体4を作製することができる。
【0064】
第3工程において、第1の電極1は、例えば、活物質と任意成分(バインダーや可塑剤等)と溶媒とを含む粘土状の混合物を押出成形し、その後、乾燥や焼成を行うことによって容易に作製できる。或いは、活物質等を一方面1a、他方面1b及び側面1cを有する形状に成形後、機械的手段によって一方面1aから他方面1bへと複数の孔1dを設ける(成形体に孔を空ける)ことによって第1の電極1を得てもよい。
【0065】
第4工程において、第1の電極1の孔1dに被覆電極体4を挿入する手段は特に限定されず、機械的に挿入してもよいし、手作業で挿入してもよい。
【0066】
尚、セパレータ層3は第2の電極2の表面ではなく、第1の電極1の孔1dの内壁に設けてもよい。また、二次電池10を製造する際の各工程の順序は、上記の順序に限定されるものではない。
【0067】
3.効果について補足
第2の電極の活物質層においてバインダーが偏在化してしまうと、そこが電子・イオンの抵抗部分となり易い。この点、第2の電極の活物質層において、バインダーが網目状に均一に分布していることが理想的である。また、第2の電極の強度が十分でない場合、充放電サイクルにおける繰り返しの膨張・収縮によって、第2の電極が劣化し、二次電池としての性能が低下する虞がある。これに対し、二次電池10によれば、第2の電極2に芯材2bとして金属ワイヤが存在することにより、活物質層2a中のバインダーが金属ワイヤに絡み、活物質層2aにおけるバインダーの偏在化を抑制できるものと考えられる。結果として、第2の電極2の強度が高まるとともに、充放電後の容量維持率が向上する。
【0068】
また、本発明者の知見によれば、第1の電極1が負極であり、第2の電極2が正極であり、且つ、第1の電極1の複数の孔1dの各々の径が100μm以上600μm以下であること、第1の電極1の活物質密度が1.1g/cm3以上1.5g/cm3以下であること、第2の電極2の活物質密度が2.1g/cm3以上2.9g/cm3以下であること、及び、第2の電極2の金属ワイヤの径が20μm以上50μm以下であることのうちの少なくとも一つ、特にすべてを満たす場合に、電子伝導性とイオン伝導性との双方が一層良好となり、充放電後の容量維持率が一層向上する。
【0069】
また、本発明者の知見によれば、第2の電極2のバインダーがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む場合、第2の電極2の弾性を高めることができ、しかも、金属ワイヤに対してバインダーがより強く絡み、バインダーの最適配置の効果が特に顕著となる。結果として、充放電サイクルを繰り返した際の三次元構造を安定化させることができる。
【0070】
さらに、本発明者の知見によれば、セパレータ層3がフッ化ビニリデンに由来する重合単位とヘキサフルオロプロピレンに由来する重合単位とを有する共重合体(PVdF-HFP)から構成されている場合、セパレータ層3におけるピンホールの生成や破壊を抑制することができる。特に、第2の電極1においてバインダーとしてPTFEを採用するとともに、セパレータ層3においてPVdF-HFPを採用した場合に、PTFEとPVdF-HFPとの高い親和性によって、上述の効果が一層顕著なものとなる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を示しつつ本開示の技術についてさらに説明するが、本開示の技術は以下の形態に限定されるものではない。
【0072】
1.実施例1
1.1.第1の電極の作製
負極活物質として黒鉛粉末と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンと、潤滑剤・可塑剤としてグリセリン及びステアリン酸と、溶媒としてN-メチル-2-ピロリドンとを用い、これらを混練することで粘土状の混合物を得た。得られた混合物を押出成形したうえで、120℃で30分予備乾燥を行った。その後、180℃で5時間乾燥したうえで、不活性雰囲気下、600℃で3時間焼成することで、ハニカム型の負極を得た。得られた負極の孔の径は500μmであり、以下の手順で特定される活物質密度は1.2g/cm3であった。
【0073】
ハニカム型の負極の活物質密度は、不活性雰囲気下、600℃で3時間焼成した後のものである。当該焼成後の活物質密度は、電池完成後の活物質密度と一致する。
【0074】
ハニカム型の負極の活物質密度は以下の手順で特定した。
(1)負極を幅10mm×10mm、高さ10mmの四角サイズに切り出した。切り出したハニカムのSEM画像の一例を
図5に示す。
(2)SEM画像を複数枚撮影し、計10カ所のハニカム孔幅(最大内接円の直径)とハニカム壁厚(リブ厚)とを測定し、その平均値を求めた。
(3)切り出したハニカムのサイズ(10mm×10mm×10mm)から、ハニカム孔幅の平均値L
OPとハニカム壁厚の平均値L
Wとから算出される孔体積を除外し、ハニカム本体の体積(ハニカム壁部の体積)を算出した。
(4)熱重量分析を行い、ハニカムに含まれるバインダーの残差量を特定した。本実施例では当該残差量は2wt%であった。すなわち、切り出したハニカムの重量W
NEに対して、当該ハニカムに含まれる活物質の重量はW
NE×0.98であった。
(5)以下の式に基づき、ハニカムにおける活物質密度d
NEを算出した。
【0075】
【0076】
1.2.第2の電極の作製
正極活物質としてLiCo1/3Ni1/3Mn1/3O2と、導電助剤としてカーボンブラックと、バインダーとしてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)とを、重量比で、正極活物質:導電助剤:バインダー=85:10:5となるように秤量し、これらを混合後、アルミニウム製の金属ワイヤ(ワイヤ径20μm)を挟んで平板状の単離厚膜とし、加圧して高密度化した。その後、単離厚膜を金属ワイヤに沿って切断し、120℃で8時間乾燥させることで、金属ワイヤを芯材とするロッド型の正極を得た。得られた正極について、以下の手順で特定される活物質密度は2.2g/cm3であった。
【0077】
上述の120℃での乾燥や、後述の150℃でのセパレータ層固着の際、ロッド型正極からバインダー等が飛散、除去されることはない。すなわち、ロッド型の正極の120℃での乾燥後における活物質密度は、電池完成後の活物質密度と一致する。また、ロッド型正極の活物質層に含まれる正極活物質、導電助剤及びバインダーの含有比は、仕込み比(85:10:5)から実質的に変化がないものといえる。
【0078】
ロッド型の正極の活物質密度は、当該ロッド型正極の径(最小外接円の直径)DPE、長さLPE、重量WPE、金属ワイヤの径DBW、長さLBW、重量WBWとして、以下の式から算出することができる。尚、活物質層における正極活物質の含有量は、上述の通り、85wt%である。
【0079】
【0080】
1.3.セパレータ層の作製
ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(PVdF-HFP)をN-メチルピロリドンに溶解させ、これをガラス基板に塗布して乾燥後、剥離することで、厚さ5μmのPVdF-HFP単離膜を得た。
【0081】
1.4.セパレータ層による被覆
得られたPVdF-HFP単離膜を上記のロッド型の正極に巻き付けて、150℃で加熱することで正極の表面に単離膜を固着させ、被覆電極体を得た。
【0082】
1.5.二次電池の作製
被覆電極体を30本用意し、上記のハニカム型の負極の孔に挿入することで評価用の二次電池を得た。二次電池は電解液系の電池とした。電解液には、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネートを、体積比で、30:40:30で混合した混合溶媒に、LiPF6を1Mの濃度で溶解させたものを用いた。電池をガラス製容器に封入し、負極と正極とに導線を接続し、以下の評価を行った。
【0083】
1.6.充放電サイクル後の容量維持率の評価
作製した二次電池を25℃の温度環境下、C/10レートで上限電圧4.1Vの定電流定電圧充電(定電圧2時間)、及び、下限電圧3.0Vの定電流放電を行った。この時の放電容量を初期容量Q1とした。その後、同様の条件で充放電サイクルを10サイクル行った後の放電容量をサイクル後容量Q2とした。Q1とQ2とから、充放電サイクル後の容量維持率(Q2/Q1)を算出した。
【0084】
2.実施例2
ロッド型の正極におけるバインダーとして、PTFEに替えてPVdFを採用したこと以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0085】
3.実施例3
セパレータ層として、PVdF-HFP単離膜に替えて20μm厚のポリプロピレン(PP)製膜を用い、且つ、固着温度を110℃としたこと以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0086】
4.実施例4
ロッド型の正極におけるバインダーとして、PTFEに替えてPVdFを採用するとともに、セパレータ層として、PVdF-HFP単離膜に替えて20μm厚のポリプロピレン製膜を用い、且つ、固着温度を110℃としたこと以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0087】
5.実施例5
ハニカム型の負極を作製する際の押出条件を変更することで、負極の活物質密度を1.1g/cm3としたこと以外は、実施例4と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0088】
6.実施例6
ハニカム型の負極を作製する際の押出条件を変更することで、負極の活物質密度を1.5g/cm3としたこと以外は、実施例4と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0089】
7.実施例7
ハニカム型の負極を作製する際の押出条件を変更することで、負極の孔径を300μmとしたこと以外は、実施例4と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0090】
8.実施例8
ロッド型の正極を作製する際の加圧高密度化条件を変更することで、正極の活物質密度を2.8g/cm3としたこと以外は、実施例4と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0091】
9.実施例9
アルミニウム製の金属ワイヤの径を50μmとしたこと以外は、実施例4と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0092】
10.実施例10
ハニカム型の負極を作製する際の押出条件を変更することで、負極の孔径を700μmとするとともに活物質密度を1.6g/cm3とし、また、セパレータ層として、PVdF-HFP単離膜に替えて25μm厚のポリプロピレン製膜を用い、さらに、ロッド型の正極を作製する際の金属ワイヤ径を100μmとし、且つ、加圧高密度化条件を変更することで正極の活物質密度を3.0g/cm3としたこと以外は、実施例2と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0093】
11.実施例11
ハニカム型の負極を作製する際の押出条件を変更することで、負極の活物質密度を0.9g/cm3とし、ロッド型の正極を作製する際の加圧高密度化条件を変更することで、正極の活物質密度を1.8g/cm3としたこと以外は、実施例10と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0094】
12.比較例1
金属ワイヤを用いずにロッド型の正極を作製したこと以外は、実施例1と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0095】
13.比較例2
金属ワイヤを用いずにロッド型の正極を作製したこと以外は、実施例4と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0096】
14.比較例3
金属ワイヤを用いずにロッド型の正極を作製したこと以外は、実施例10と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0097】
15.比較例4
金属ワイヤを用いずにロッド型の正極を作製したこと以外は、実施例11と同様にして二次電池を作製し同様の評価を行った。
【0098】
16.評価結果
下記表1に、実施例1~11及び比較例1~4に係る二次電池の作製条件、及び、二次電池の充放電サイクル後の容量維持率の評価結果を示す。尚、表1に示す容量維持率は、比較例1に係る容量維持率を100%として規格化した値である。
【0099】
【0100】
表1から以下のことが分かる。
(1)比較例1~4と比較して、実施例1、4、10及び11のようにロッド型の正極に芯材として金属ワイヤを配置した場合、二次電池の充放電サイクル後の容量維持率が顕著に向上する。ロッド型の正極において芯材として金属ワイヤが存在することにより、活物質層中のバインダーが金属ワイヤに絡み、活物質層におけるバインダーの偏在化を抑制できたためと考えられる。
(2)ロッド型の正極中のバインダーの種類によって、容量維持率が変化する。具体的には、ロッド型の正極中のバインダーとしてPTFEを採用した実施例1のほうが、PVdFを採用した実施例2よりも、容量維持率が向上する。PTFEを採用することで、ロッド型正極の弾性を高めることができ、しかも、金属ワイヤによる最適配置の効果が特に顕著となり、充放電サイクルを繰り返した際の三次元構造を安定化させることができたものと考えられる。
(3)セパレータ層の材質によって、容量維持率が変化する。具体的には、セパレータ層においてPVdF-HFPを採用した実施例1、2の方が、PPを採用した実施例3~11よりも、容量維持率が向上する。PVdF-HFPを採用することで、セパレータ層におけるピンホールの生成や破壊を抑制することができたものと考えられる。
(4)ハニカム型の負極の孔径や活物質密度、ロッド型の正極のワイヤ径や活物質密度によって、容量維持率が変化する。具体的には、ハニカム型負極の複数の孔の各々の径が100μm以上600μm以下であり、ハニカム型負極の活物質密度が1.1g/cm3以上1.5g/cm3以下であり、ロッド型正極の活物質密度が2.1g/cm3以上2.9g/cm3以下であり、金属ワイヤの径が20μm以上50μm以下である実施例1~9のほうが、当該条件を満たさない実施例10、11よりも容量維持率が向上する。
【0101】
尚、上記の実施例においては、ハニカム型電極を負極とし、ロッド型電極を正極とした形態について説明したが、本開示の二次電池はこの形態に限定されるものではない。ハニカム型電極を正極とし、ロッド型電極を負極としてもよい。
【0102】
また、上記の実施例においては、特定の材料を用いた形態について説明したが、本開示の二次電池はこの形態に限定されるものではない。ハニカム型電極における活物質やバインダー等の種類、セパレータ層を構成する材料の種類、ロッド型電極における活物質やバインダーや導電助剤や金属ワイヤの種類等を変更した場合においても、同様の効果が奏されるものと考えられる。
【0103】
また、上記の実施例においては、非水電解液を用いた形態について説明したが、本開示の二次電池はこの形態に限定されるものではない。水系電解液を用いてもよいし、或いは、電解液ではなく固体電解質を用いてもよい。
【0104】
さらに、上記の実施例においては、キャリアイオンとしてリチウムイオンを用いた形態について説明したが、本開示の二次電池はこの形態に限定されるものではない。リチウムイオン二次電池以外の各種カチオン二次電池やアニオン二次電池においても、同様の効果が奏されるものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本開示の二次電池は、車搭載用等の大型電源から携帯端末用等の小型電源まで広く利用可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 第1の電極
1a 一方面
1b 他方面
1c 側面
1d 孔
2 第2の電極
2a 活物質層
2b 芯材(金属ワイヤ)
3 セパレータ層
10 二次電池