(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】EGR装置
(51)【国際特許分類】
F02M 26/15 20160101AFI20221018BHJP
F02M 26/12 20160101ALI20221018BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20221018BHJP
F01N 3/28 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
F02M26/15
F02M26/12
F01N3/24 S
F01N3/28 301W
(21)【出願番号】P 2019056528
(22)【出願日】2019-03-25
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 聡
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-036355(JP,U)
【文献】特開2010-169013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/24
F02M 26/06
F02M 26/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスが導入される内部空間を有する上流部と、
前記上流部に連結された筒状の触媒ケースと、前記触媒ケースに格納された触媒とを有する触媒コンバータと、
前記触媒コンバータの前記排気ガスの流れ方向における下流側に連結された内部空間を有する下流部と、
前記排気ガスの一部を前記内燃機関に循環させるEGR配管と、
を備え、
前記触媒は、前記排気ガスが前記触媒ケースの軸方向に流れる流路を構成し、
前記上流部は、
前記排気ガスを前記上流部の内部に導入する導入口と、
前記EGR配管が連結されたEGR取り出し口と、
前記導入口に連通した第1空間と前記EGR取り出し口に連通した第2空間とに前記上流部の内部空間を仕切る仕切り部と、
前記導入口が設けられた筒状の上流部本体と、
前記EGR取り出し口が設けられた板状の取付部材と、
を有
し、
前記取付部材は、前記上流部本体の一部を外側から覆うように前記上流部本体に取り付けられ、
前記仕切り部は、前記上流部本体のうち、前記取付部材に覆われた部分で構成される、EGR装置。
【請求項2】
請求項
1に記載のEGR装置であって、
前記上流部本体は、前記上流部本体の周方向に連結された複数の板状の分割片を有する、EGR装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、EGR装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内燃機関において、触媒コンバータで排気ガスを浄化し、浄化された排気ガスの一部を内燃機関に循環させるEGR(排気再循環)装置が公知である(特許文献1参照)。
【0003】
従来のEGR装置では、構造を簡素化するため、触媒コンバータの下流側にEGRガスの取り出し口が設けられ、内燃機関にEGRガスを送る配管が触媒コンバータの下流から上流に向かって延伸している。この配管は、触媒コンバータの側方に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように触媒コンバータの側方にEGRガス用の配管が設けられると、EGR装置の幅が大きくならざるを得ない。そのため、EGR装置の搭載に必要なスペースが増大する。
【0006】
本開示の一局面は、搭載に必要なスペースを低減できるEGR装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、内燃機関の排気ガスが導入される内部空間を有する上流部と、上流部に連結された筒状の触媒ケースと、触媒ケースに格納された触媒とを有する触媒コンバータと、触媒コンバータの排気ガスの流れ方向における下流側に連結された内部空間を有する下流部と、排気ガスの一部を内燃機関に循環させるEGR配管と、を備えるEGR装置である。
【0008】
また、触媒は、排気ガスが触媒ケースの軸方向に流れる流路を構成する。上流部は、排気ガスを上流部の内部に導入する導入口と、EGR配管が連結されたEGR取り出し口と、導入口に連通した第1空間とEGR取り出し口に連通した第2空間とに上流部の内部空間を仕切る仕切り部と、を有する。
【0009】
このような構成によれば、上流部から触媒を通過して下流部に到達した排気ガスの一部が、触媒を逆方向に流れて上流部のEGR取り出し口から排出される。そのため、触媒で浄化された排気ガスを上流部からEGRガスとして取り出すことができる。その結果、EGR配管を触媒コンバータの側方に配置する必要がなくなるため、EGR装置の搭載に必要なスペースが低減できる。
【0010】
本開示の一態様では、上流部は、導入口が設けられた筒状の上流部本体と、EGR取り出し口が設けられた板状の取付部材と、を有してもよい。取付部材は、上流部本体の一部を外側から覆うように上流部本体に取り付けられてもよい。仕切り部は、上流部本体のうち、取付部材に覆われた部分で構成されてもよい。このような構成によれば、仕切り部を上流部本体の一部で形成できるので、仕切り部を別部材として設ける場合に比べて容易に上流部を形成できる。
【0011】
本開示の一態様では、上流部本体は、上流部本体の周方向に連結された複数の板状の分割片を有してもよい。このような構成によれば、取付部材で覆われることで第2空間を構成することが可能な形状の上流部本体を、複数の分割片の接合によって容易に形成することができる。
【0012】
本開示の一態様では、上流部は、導入口及びEGR取り出し口が設けられた筒状の上流部本体を有してもよい。仕切り部は、上流部本体の内部に配置された板状の部材で構成されてもよい。このような構成によれば、従来形状の上流部本体を利用して、第1空間及び第2空間を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態のEGR装置の模式的な正面図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III線での模式的な断面図である。
【
図4】
図4Aは、
図1のIVA-IVA線での模式的な断面図であり、
図4Bは、
図1のIVB-IVB線での模式的な断面図である。
【
図5】
図5は、
図1とは異なる実施形態のEGR装置の模式的な正面図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI線での模式的な断面図である。
【
図7】
図7は、
図1及び
図5とは異なる実施形態のEGR装置の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1及び
図2に示すEGR装置1は、内燃機関の排気ガス流路内に設けられる。
【0015】
EGR装置1は、排気ガスの浄化を行うと共に、浄化した排気ガスの一部を内燃機関に循環させる。EGR装置1が設けられる内燃機関としては、例えば、自動車に用いられるガソリンエンジン又はディーゼルエンジンが挙げられる。
【0016】
EGR装置1は、上流部2と、触媒コンバータ3と、下流部4と、EGR配管5とを備える。
【0017】
<上流部>
上流部2は、内燃機関の排気ガスが導入される内部空間を有する部材である。上流部2は、EGR装置1において排気ガスの流れ方向における最も上流側に配置されている。
【0018】
上流部2は、上面と下面とがそれぞれ開口し、上流側から下流側に向かって拡径する円錐台状の筒体(つまりコーン)である。上流部2は、導入口21と、EGR取り出し口22と、上流部本体23と、取付部材24とを有する。
【0019】
導入口21は、排気ガスを上流部2の内部に導入する開口であり、上流部2の上流側の端部に設けられている。導入口21には、内燃機関に連結された排気マニホールド等が接続される。
【0020】
EGR取り出し口22は、後述するEGR配管5が連結された開口である。EGR取り出し口22は、上流部2の周壁に設けられている。EGR取り出し口22からはEGRガスが排出される。EGR取り出し口22の開口面積は、導入口21の開口面積よりも小さい。
【0021】
上流部本体23は、
図3及び
図4Aに示すように、導入口21が設けられた筒状の部材である。上流部本体23は、上流側の端部が導入口21を構成し、下流側の端部は後述する触媒コンバータ3の触媒ケース31に連通した開口を構成している。
【0022】
上流部本体23は、導入口21及び触媒ケース31に連通した第1空間S1を画定している。また、上流部本体23は、円錐台において、後述する取付部材24が取り付けられた部分が内側に凹んだ形状を有する。
【0023】
取付部材24は、EGR取り出し口22が設けられた板状の部材(つまりパッチ)である。取付部材24は、上流部本体23の一部を外側から覆うように上流部本体23に取り付けられている。具体的には、取付部材24は、上流部本体23の外周面と、触媒ケース31の外周面とに跨るように、溶接等によってこれらの部材に固定されている。
【0024】
上流部本体23と取付部材24とによって、EGR取り出し口22及び触媒ケース31に連通した第2空間S2が画定されている。具体的には、上流部本体23は、第1空間S1と第2空間S2とに上流部2の内部空間を仕切る仕切り部23Aを有する。
【0025】
仕切り部23Aは、上流部本体23のうち、取付部材24で覆われた部分で構成されている。仕切り部23Aは、
図3に示すように、触媒ケース31にその一部が進入しており、後述する触媒32の上端部近傍まで延伸している。つまり、触媒ケース31の軸方向から視て、仕切り部23Aは、触媒32と重なる位置に配置されている。
【0026】
上流部2の内部において、第1空間S1から第2空間S2への排気ガスの移動は、仕切り部23Aによって妨げられる。つまり、第1空間S1内の排気ガスは、少なくとも触媒コンバータ3を経由して第2空間S2へと流れる。
【0027】
<触媒コンバータ>
触媒コンバータ3は、上流部2の下流側に配置されている。触媒コンバータ3は、触媒ケース31と、触媒32と、マット33とを有する。
【0028】
触媒ケース31は、上流部2に連結された筒状の部材である。触媒ケース31の上流側の端部は、上流部2の下流側の開口に溶接等によって固定されている。触媒ケース31には、触媒32とマット33とが格納されている。
【0029】
触媒32は、排気ガスとの接触によって排気ガス中の環境汚染物質を改質又は捕集し、排気ガスを浄化する。触媒32は、触媒ケース31に格納されると共に、排気ガスが触媒ケース31の軸方向に流れる複数の流路を触媒ケース31内に構成している。つまり、触媒32は、上流部2から下流部4に向かって延伸し、かつ互いに連通しない複数の流路を有している。
【0030】
触媒32は、例えば、排気ガスの流れ方向と垂直な断面が多角形(例えば四角形、六角形等)の複数のチューブが集合した立体形状を有する。つまり、触媒32は、触媒ケース31の軸方向に延伸する複数の仕切り板が格子状に配置された立体形状(例えばハニカム形状)を有する。
【0031】
マット33は、
図4Bに示すように、触媒ケース31と触媒32との間に配置された弾性変形可能な部材である。マット33は、触媒ケース31の周方向に沿って、触媒32の外周面を覆っている。
【0032】
<下流部>
図3に示すように、下流部4は、触媒コンバータ3の下流側に連結された内部空間を有する部材である。下流部4は、上面と下面とがそれぞれ開口し、上流側から下流側に向かって縮径する円錐台状の筒体(つまりコーン)である。
【0033】
下流部4の上流側の開口は、触媒ケース31の下流側の端部に溶接等によって固定されている。下流部4の下流側の開口は、EGR装置1から排気ガスが排出される排出口41を構成している。
【0034】
<EGR配管>
EGR配管5は、排気ガスの一部を内燃機関に循環させる。EGR配管5は、一端が上流部2のEGR取り出し口22に溶接等によって連結されている。EGR配管5は、触媒コンバータ3と離間して配置されている。
【0035】
<排気ガスの流れ>
図3に示すように、導入口21から上流部2の第1空間S1内に導入された排気ガスは、触媒32を触媒ケース31の軸方向に通過し、下流部4内に流れ込む。
【0036】
触媒コンバータ3を通過した一部の排気ガスは、下流部4内において、触媒32のうち上流部2の第2空間S2と連通した側部32Aを触媒ケース31の軸方向に沿って通過し、第2空間S2に流れ込む。
【0037】
つまり、下流部4内の一部の排気ガスは、EGRガスとして触媒コンバータ3を逆向きに再通過する。このEGRガスの流れは、EGR配管5が触媒コンバータ3に対して負圧となることで発生する。第2空間S2に流れ込んだEGRガスは、EGR配管5から内燃機関に供給される。
【0038】
触媒コンバータ3によって浄化された排気ガスのうち、第2空間S2に供給されるEGRガスを除いた残りの部分は、下流部4の排出口41から図示しない配管を通じて大気に向かって排出される。
【0039】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)上流部2から触媒32を通過して下流部4に到達した排気ガスの一部が、触媒32を逆方向に流れて上流部2のEGR取り出し口22から排出される。そのため、触媒32で浄化された排気ガスを上流部2からEGRガスとして取り出すことができる。その結果、EGR配管5を触媒コンバータ3の側方に配置する必要がなくなるため、EGR装置1の搭載に必要なスペースが低減できる。
【0040】
(1b)第1空間S1と第2空間S2とを仕切る仕切り部23Aが上流部本体23の一部で形成されるので、仕切り部23Aを別部材として設ける場合に比べて容易に上流部2を形成できる。
【0041】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成]
図5に示すEGR装置11は、上流部12と、触媒コンバータ3と、下流部4と、EGR配管5とを備える。触媒コンバータ3、下流部4及びEGR配管5は、
図1のEGR装置1と同じものであるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
<上流部>
上流部12は、上面と下面とがそれぞれ開口し、上流側から下流側に向かって拡径する円錐台状の筒体である。
【0043】
上流部12は、導入口21と、EGR取り出し口22と、上流部本体123と、取付部材24とを有する。導入口21、EGR取り出し口22及び取付部材24は、
図1の上流部2と同じものであるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
上流部本体123は、導入口21が設けられた筒状の部材である。上流部本体123は、第1分割片123Aと、第2分割片123Bとを有する。つまり、本実施形態の上流部本体123は、
図1の上流部本体23を複数の分割片123A,123Bに分割したものである。なお、上流部本体123は、3つ以上の分割片に分割されていてもよい。
【0045】
第1分割片123Aと第2分割片123Bとは、
図6に示すように、例えば溶接によって上流部本体123の周方向に連結されている。本実施形態では、第1分割片123Aと第2分割片123Bとによって、第1空間S1が画定されている。
【0046】
また、第2分割片123Bのうち、取付部材24に覆われた部分が仕切り部123Cを構成している。つまり、第2分割片123Bの一部である仕切り部123Cと取付部材24とによって、第2空間S2が画定されている。
【0047】
[2-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)取付部材24で覆われることで第2空間S2を構成することが可能な形状の上流部本体123を、複数の分割片123A,123Bの接合によって容易に形成することができる。
【0048】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0049】
(3a)上記実施形態のEGR装置において、仕切り部は、必ずしも上流部本体の一部でなくてもよい。つまり、仕切り部は、上流部本体とは別部材であってもよい。また、上流部及び下流部は、触媒コンバータの触媒ケースと一体の部品であってもよい。さらに、上流部及び下流部は円錐形状に限定されない。
【0050】
例えば、
図7に示すEGR装置1Aでは、上流部2Aは、導入口21及びEGR取り出し口22が設けられた筒状の上流部本体23と、上流部本体23の内部に配置された板状の仕切り部25とを有する。これにより、従来形状の上流部本体23を利用して、第1空間S1及び第2空間S2を形成することができる。また、EGR装置1Aでは、筒状の上流部2Aと筒状の下流部3とが触媒コンバータ3の触媒ケース31と一体化されている。
【0051】
(3b)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0052】
1,11…EGR装置、2,12…上流部、3…触媒コンバータ、
4…下流部、5…EGR配管、21…導入口、22…EGR取り出し口、
23…上流部本体、23A…仕切り部、24…取付部材、25…仕切り部、
31…触媒ケース、32…触媒、32A…側部、33…マット、41…排出口、
123…上流部本体、123A…第1分割片、123B…第2分割片、
123C…仕切り部。