(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】FRP柱梁架構
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20221018BHJP
E04B 1/30 20060101ALI20221018BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
E04B1/94 M
E04B1/30 Z
E04B1/58 506Z
E04B1/94 F
(21)【出願番号】P 2019087950
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 重彰
(72)【発明者】
【氏名】阪井 由尚
(72)【発明者】
【氏名】傳寳 知晃
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-138699(JP,A)
【文献】特開平9-317084(JP,A)
【文献】特開2002-356937(JP,A)
【文献】実開平4-084505(JP,U)
【文献】特開平2-157339(JP,A)
【文献】特開2015-175119(JP,A)
【文献】特開平10-205005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04B 1/18ー1/30
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱部材と、繊維強化プラスチックと仕上材を組み合わせたFRP梁部材とが連結されたFRP柱梁架構であって、
前記FRP梁部材は、断面形状が、矩形状、I形状、T形状、H形状のいずれかに形成された繊維強化プラスチック部と、
前記繊維強化プラスチック部の外周囲に設けられる仕上部と、
前記繊維強化プラスチック部と前記仕上部との間に設けられる、吸熱材が密閉されてなる耐火被覆部と、を備え、
前記柱部材は、前記仕上部及び前記耐火被覆部を外方から貫通し、前記繊維強化プラスチック部と接合されていることを特徴とするFRP柱梁架構。
【請求項2】
前記柱部材は、前記繊維強化プラスチック部の底面を支持し、及び側面を挟持することを特徴とする請求項1に記載のFRP柱梁架構。
【請求項3】
前記仕上部を貫通する部分には、耐火被覆層を有する前記柱部材が設けられることを特徴とする請求項1または2に記載のFRP柱梁架構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱部材と、繊維強化プラスチックを有する梁部材とが連結されたFRP柱梁架構に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の構造材として、あるいは建物の構造を強化、補強する部材として、繊維強化樹脂が注目されている。例えば、建物の柱や梁等を構成する部材の強度を高めるために部材の断面積を大きくすると、部材の大型化や重量増加に繋がってしまう。そこで、強度を確保しつつ、部材の大型化や重量増加を抑えるため、繊維強化樹脂と木材等の他の部材とを組み合わせた複合構造が提案されている。
例えば特許文献1には、複数層の木材素材の層間に、炭素繊維束を配置して接合して形成された、繊維強化集成材が開示されている。炭素繊維束は、繊維強化集成材の外表面から所定の値以上の深さの内部に配置されている。
また、特許文献2には、接着一体とされた五層以上の角材状をなす構造用集成材が開示されている。本構造用集成材は、最も外側に位置する外側層と、当該外側層に隣り合う強化層と、前記外側層との間に当該強化層を挟む内側隣接層とを備えており、前記強化層は並設された複数本の角状材と強化繊維シートを備えてなり、この強化繊維シートが、前記角状材と外側層又は内側隣接層との間と、互いに隣り合う角状材間とに屈曲されて挟み込まれて前記強化層の幅方向の一方端から他方端にわたるように備えられている。
また、特許文献3には、上下に設けた一対の平板状炭素繊維強化樹脂複合材層と、一対の平板状炭素繊維強化樹脂複合材層の間を接続する別個の平板状炭素繊維強化樹脂複合材層とを、H字型となるように構成し、一対の平板状炭素繊維強化樹脂複合材層の間において、別個の平板状炭素繊維強化樹脂複合材層の両側に、集成材を設けた炭素繊維強化集成材が開示されている。
【0003】
上記のような集成材等を例えば梁として使用する場合には、何らかの柱部材により、これを支持しなければならない。
特許文献1や特許文献2に開示されたような集成材においては、火災が生じ外部温度が上昇した際に、柱部材を介して外部の温度が梁に伝達し、炭素繊維束や強化繊維シートの温度が上昇して溶融、燃焼する可能性がある。このため、耐火性能が求められる建物には採用することができない。また、特許文献3に開示されたような炭素繊維強化集成材では、一対の平板状炭素繊維強化樹脂複合材層が外部に露出しているため、耐火性能が低く、特許文献1や特許文献2と同様に、耐火性能が求められる建物には採用することができない。
このような背景より、耐火性能をより向上可能な、柱梁架構が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-245431号公報
【文献】特開2010-221514号公報
【文献】特開平4-279334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、仕上部と、高い剛性を備えた繊維強化プラスチック部を備え、繊維強化プラスチック部の耐火性能を向上可能なFRP柱梁架構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、柱部材と繊維強化プラスチックを有するFRP梁部材とを連結させたFRP柱梁架構として、柱部材の柱頭部を、仕上部及び耐火被覆部を外方から貫通するように設けて、FRP梁部材を構成する構造抵抗要素である、繊維強化プラスチック部の底面、または側面と直接、接合させることで、耐火性能を向上しつつ、柱部材と繊維強化プラスチックを強固に連結できる点に着眼して、本発明に至った。
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。すなわち、本発明は、柱部材と、繊維強化プラスチックと仕上材を組み合わせたFRP梁部材とが連結されたFRP柱梁架構であって、前記FRP梁部材は、断面形状が、矩形状、I形状、T形状、H形状のいずれかに形成された繊維強化プラスチック部と、前記繊維強化プラスチック部の外周囲に設けられる仕上部と、前記繊維強化プラスチック部と前記仕上部との間に設けられる、吸熱材が密閉されてなる耐火被覆部と、を備え、前記柱部材は、前記仕上部及び前記耐火被覆部を外方から貫通し、前記繊維強化プラスチック部と接合されていることを特徴とするFRP柱梁架構を提供する。
上記のような構成によれば、繊維強化プラスチック部の外周囲には仕上部が設けられ、繊維強化プラスチック部と仕上部との間には、吸熱材が密閉されてなる耐火被覆部が設けられている。火災時に外部温度が上昇しても、外部から仕上部等を介して繊維強化プラスチック部に伝達しようとする熱エネルギーは、耐火被覆部の吸熱材により吸収される。また、柱部材は、吸熱材が密閉されてなる耐火被覆部を外方から貫通し、繊維強化プラスチック部と接合されているため、火災時に柱部材を介して熱がFRP梁部材に伝達しようとしても、同様に、耐火被覆部の吸熱材により吸収される。
したがって、繊維強化プラスチック部の温度上昇を抑制可能であり、これにより、繊維強化プラスチック部の耐火性能を向上可能である。
【0007】
本発明の一態様においては、前記柱部材は、前記繊維強化プラスチック部の底面を支持し、及び側面を挟持することを特徴とする。
上記のような構成によれば、柱部材によって、FRP梁部材を構成する繊維強化プラスチック部を支持することができる。
【0008】
本発明の別の態様においては、前記仕上部を貫通する部分には、耐火被覆層を有する前記柱部材が設けられることを特徴とする。
上記のような構成によれば、仕上部を貫通する部分の柱部材にあっては、耐火被覆層を有する柱部材が配置されていることで、貫通部分が耐火被覆層を有する柱部材で塞がれているために、火災時に柱部材からFRP梁部材に伝達する延焼熱の伝搬を防止できる。なわち、火災時に柱部材を介してFRP梁部材の内部に伝達しようとする熱の量が低減するため、更に効果的に、繊維強化プラスチック部の温度上昇を抑制可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、仕上部と、高い剛性を備えた繊維強化プラスチック部を備え、繊維強化プラスチック部の耐火性能を向上可能なFRP柱梁架構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態におけるFRP柱梁架構の模式的な側面図である。
【
図4】上記FRP柱梁架構に用いられている耐火被覆部材の、(a)は斜視図、(b)は断面図、及び(c)は当該耐火被覆部材内に設けられた吸熱シート部の斜視図である。
【
図5】耐火被覆部の有効性を検証するための加熱実験における、実験環境の正面図、上面図、及び側面図である。
【
図6】上記加熱実験の実験結果を示すグラフである。
【
図7】柱部材を対象とした熱伝導解析における、解析モデルの説明図である。
【
図8】
図7の熱伝導解析における、柱部材本体の温度変化を示すグラフである。
【
図9】
図7の熱伝導解析における、柱接合部の温度変化を示すグラフである。
【
図10】
図7の熱伝導解析における、解析結果を示す表である。
【
図11】耐火被覆層を有する柱部材を対象とする加熱実験試験体の説明図である。
【
図12】
図11に示す柱部材の加熱実験試験体の一覧表である。
【
図13】柱部材の加熱実験結果(発砲層厚さと柱表面温度)の比較表である。
【
図14】実施形態の変形例によるFRP柱梁架構を構成するFRP梁部材の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、柱部材と繊維強化プラスチックを有するFRP梁部材が接合されたFRP柱梁架構である。本発明の特徴の1つは、耐火被覆層を備えた柱部材が、FRP梁部材を構成する木質部(仕上部)を貫通し、繊維強化プラスチック部の底面、及び側面を支持させる点である。仕上部の貫通部分は、耐火被覆層を備えた柱部材で隙間なく塞がれている。
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態におけるFRP柱梁架構を用いた構造物の模式的な側面図である。本構造物は、建物1の屋外に設置されている。建物1は、上部構造1aと、下部構造1bとを有している。上部構造1aは、下部構造1bの上方に設けられている。上部構造1aは、下部構造1bよりも水平面内における設置面積が小さく、これによって、下部構造1b上には、上部構造1aが設けられた以外の部分にルーフ部4が設けられている。
構造物は、建物1のルーフ部4上に設置されている。構造物は、FRP柱梁架構2を用いて形成されている。FRP柱梁架構2は、柱部材5と梁(FRP梁部材)3を備えている。梁3は、複数本の柱部材5A~5Fに支持されている。本実施形態において、柱部材5A~5Fは、ルーフ部4及びルーフ部4上に敷設された鉄製の下地材4s上に設けられている。柱部材5A~5Fのうち、上部構造1aに最も近い柱部材5Aは、鉛直上下方向に延びている。柱部材5Aに対し、上部構造1aから離れる側の2本の柱部材5B、5Cは、上方に向かって上部構造1a側に傾斜して延びている。ルーフ部4上において、上部構造1aから最も離れた側の2本の柱部材5D、5Eは、上方に向かって上部構造1aから離間する方向に傾斜して延びている。柱部材5Fは、柱部材5Dの中間部分から、上方に向かって上部構造1aに向かう方向に傾斜して延びている。
梁3は、これらの柱部材5A~5F上に設けられている。梁3は、上部構造1a側から離間するにしたがって、漸次上方に延びるよう、湾曲して設けられている。
このような柱部材5A~5F及び梁3は、
図1の紙面に直交する方向に間隔をあけて複数組が設けられている。
上記のようなFRP柱梁架構2の、複数本の梁3の上に、屋根部10が設けられている。
【0012】
図2は、
図1のA矢視部分の拡大図である。
図2においては、梁3に関しては、後に説明する繊維強化プラスチック部11及び仕上部20のみが、それぞれ実線及び破線で描かれており、他の構成要素は省略されている。柱部材5は、柱部材本体6と、柱部材本体6の上方に接合されて梁3を接合、支持する接合部材7を備えている。本実施形態においては、仕上部20は、木材である。柱部材本体6は、長尺の管体6aにより形成されている。本実施形態においては、管体6aはアルミニウム合金により形成されている。管体6aの表面には、発砲性耐火塗料を塗布することで、所定の層厚さの耐火被覆層6bが形成されている。耐火被覆材としては、例えばエスケー化研株式会社のSKタイカコート(登録商標)、SKタイカシート(登録商標)や、アクゾノーベル株式会社のINTERHANE(登録商標)、INTERCHAR(登録商標)、INTERGARD(登録商標)等が使用可能であるが、これに限られない。柱部材本体6は、
図1に示されるルーフ部4や下地材4sから、梁3の直下まで、上下に延在するように設けられている。
接合部材7は、柱部材本体6に接合される柱接合部8と、柱接合部8の上端に接合されて、梁3に接合される梁接合部9を備えている。柱接合部8は、板体8aにより形成されている。本実施形態においては、板体8aは鋼材である。板体8aの表面には、耐火被覆材を塗布すること等により、所定の厚さ以上の耐火被覆層8bが形成されている。耐火被覆材としては、柱部材本体6の耐火被覆層6bと同様なものが使用され得る。板体8aの上端近傍には、耐火被覆層8bは設けられておらず、板体8aが露出する構成となっている。
柱部材5Dにおいては、柱部材本体6と接合部材7の柱接合部8は、これらの表面を跨って沿うようにスプライスプレート5aが設けられて、スプライスプレート5aと柱部材本体6及び柱接合部8との間にハイテンションボルト5bが緊締されることで接合されている。柱部材5Eにおいては、柱部材本体6と柱接合部8は、フォークエンドピン5cを介して接合されている。
鋼製の柱接合部8は、許容温度200℃の繊維強化プラスチック部11と、許容温度260℃のアルミ製の柱部材本体6が接合する柱部材本体6の上端側には、アルミ柱側から伝わる伝熱温度を200℃以下に抑え、かつアルミ柱と繊維強化プラスチック部との間に所定の距離を確保するために設けられている。柱接合部8の材長は、後述の繊維強化プラスチック梁部材の耐火性能確認実験、及び熱伝導解析結果を踏まえて、200mmとした。
【0013】
図3は、
図2のB-B部分の断面図である。梁接合部9は、下側に位置するように設けられた底板9aと、一対の側板9bを備えている。底板9aは、矩形形状に形成されており、柱接合部8の上端において、柱接合部8に対して垂直に設けられて接合されている。底板9aは、底板9aの幅方向における中央部分が柱接合部8の上端に位置するように設けられている。側板9bは、底板9aの幅方向における両側辺に接続されて上方に延在するように設けられている。このように、一対の側板9bは互いに対向するように設けられており、これら対向する側板9bの間隔は、後述する梁3の繊維強化プラスチック部11の幅と略一致するように、梁接合部9は形成されている。
【0014】
梁3は、断面形状が矩形状に形成された繊維強化プラスチック部11と、仕上部20と、を備えており、繊維強化プラスチックと木材(仕上材)が組み合わされて構成されている。
繊維強化プラスチック部11は、例えば炭素繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維等の強化繊維に樹脂を含浸させて上記形状に成形された繊維強化プラスチックにより形成されている。
繊維強化プラスチック部11は、中心軸に交差する断面形状が、矩形状をなしている。すなわち、繊維強化プラスチック部11は、上下方向に間隔をあけて設けられた上板部11a、下板部11bと、これらを連結する一対の側板部11cを備えている。側板部11cは、
図3に示されるように繊維強化プラスチック部11を断面視したときに、上板部11aと下板部11bの各々の側端部に接合されて上下間でこれらを連結するように設けられている。これら上板部11a、下板部11b、及び一対の側板部11cによって、繊維強化プラスチック部11の胴体部11dが形成され、この胴体部11dの中央には、上板部11a、下板部11b、及び一対の側板部11cによって囲われた中空部Sが形成されている。
後述のように、繊維強化プラスチック部11は、柱部材5に接合される。下板部11b及び側板部11cの、柱部材5に接合される部分には、長さ方向に所定の間隔をおいて、柱部材5との接合用の貫通孔11rが設けられている。
繊維強化プラスチック部11の胴体部11dは、梁3の長手方向に延びる中心軸に交差する断面において、梁3の中央部に内蔵(埋設)されている。すなわち、繊維強化プラスチック部11の胴体部11dは、梁3の外部に露出していない。
【0015】
繊維強化プラスチック部11は、柱部材5の梁接合部9に接合されて支持されている。繊維強化プラスチック部11は、梁接合部9の側板9b間に挟まれるように位置づけられて、底板9a上に載置されている。
このように、柱部材5は、繊維強化プラスチック部11の底面11qを支持し、側面11uを挟持するように設けられている。
繊維強化プラスチック部11の下板部11b及び側板部11cの各々に対向して接触する梁接合部9の底板9a及び側板9bの、柱接合貫通孔11rに対応する位置には、貫通孔9sが開設されている。これら対応するように設けられた貫通孔9sと柱接合貫通孔11rを挿通するように、梁接合部9の外側から繊維強化プラスチック部11に向けてボルト9cが羅着され、緊締されている。
【0016】
繊維強化プラスチック部11の外周囲には、胴体部11dから外方へと突出する突出体11pが設けられている。特に本実施形態においては、突出体11pは、上板部11aの上面から上方に突出するように設けられている。突出体11pは平板状に形成されており、梁3の長手方向に延在するように設けられている。
突出体11pには、第1及び第2の貫通孔11s、11tが設けられている。これらの貫通孔11s、11tは、第1貫通孔11sが第2貫通孔11tの下方に位置するように、互いに間隔をあけて設けられている。第1及び第2の貫通孔11s、11tは、それぞれ、梁3の長手方向に所定の間隔をあけて、複数個が開設されている。
【0017】
突出体11pの2つの側面の各々には、内側接合具12が接合されている。内側接合具12は、2つの板部12a、12bを備えており、これらが互いの側辺において垂直に接合されることで、断面がL字状になるように形成されている。内側接合具12は、一方の板部12aが突出体11pに沿い、他方の板部12bが板部12aの上側に位置して繊維強化プラスチック部11の上板部11aと略平行になるように設けられている。内側接合具12は、突出体11pの両側面に沿って設けられた2つの板部12aにそれぞれ設けられた貫通孔12dと、突出体11pの第1貫通孔11sを挿通するボルト12cにより、突出体11pに接合されている。
内側接合具12の各々には、外側接合具13が接合されている。外側接合具13も内側接合具12と同様に、2つの板部13a、13bにより断面がL字状になるように形成されている。外側接合具13は、一方の板部13bが内側接合具12の板部12bの上に接触して沿い、他方の板部13aが板部13bよりも外側に位置して繊維強化プラスチック部11の側板部11cと略平行になるように設けられ、内側接合具12に接合されている。
【0018】
外側接合具13の板部13aの外側表面には、それぞれ、これに沿って下方に延在するように、平板状の鉛直連結部材14が接合されている。
鉛直連結部材14の各々の下端には、下側接合具15が接合されている。下側接合具15も内側接合具12と同様に、2つの板部15a、15bにより断面がL字状になるように形成されている。下側接合具15は、一方の板部15aが鉛直連結部材14の内側表面に沿うように接合され、他方の板部15bが板部15aよりも内側に位置して繊維強化プラスチック部11の下板部11bと略平行になるように設けられ、鉛直連結部材14に接合されている。
このように、内側接合具12、外側接合具13、鉛直連結部材14、及び下側接合具15により、梁3の長手方向に延びる中心軸に交差する断面において、繊維強化プラスチック部11の胴体部11dを外側から囲う、矩形状の外郭部16が形成されている。
内側接合具12、外側接合具13、鉛直連結部材14、及び下側接合具15のうち、少なくとも内側接合具12と外側接合具13は、梁3の長手方向において短尺に形成されており、梁3の長手方向に間隔を置いて設けられている。
【0019】
仕上部20は、繊維強化プラスチック部11の外周囲に設けられている。仕上部20は、2つの側板部20aと、2つの下板部20bを備えている。
側板部20aは、それぞれ、鉛直連結部材14の外側に、鉛直連結部材14に沿うように設けられて、ねじビス21を外郭部16の内側から外側に位置する側板部20aに向けて締めることにより、鉛直連結部材14に固定されている。
2つの下板部20bは、それぞれ、下側接合具15の板部15bの下方に、板部15bに沿うように設けられて、ボルト・ナット22により板部15bに固定されている。下板部20bは、このように、内側を向くように設けられている。これら2つの下板部20bの内側端面20dは、柱接合部8の、特に耐火被覆層8bの表面に近接または接触して対向するように設けられている。このように、柱部材5の柱接合部8は、仕上部20の下板部20b間に設けられた間隔Gを貫通するように設けられ、この間隔Gを貫通する部分には、柱接合部8の耐火被覆層8bが被覆されている。
このように側板部20a、下板部20bが設けられることにより、繊維強化プラスチック部11の胴体部11dの側方及び下方は、仕上部20により覆われる構造となっている。
また、仕上部20は、内側接合具12、外側接合具13、鉛直連結部材14、及び下側接合具15と、及び突出体11pの第1貫通孔11sを挿通するボルト12cを介在させて、繊維強化プラスチック部11に固定されている。
【0020】
繊維強化プラスチック部11の胴体部11dと、外郭部16及び仕上部20の間には、耐火被覆部30が設けられている。本実施形態においては、耐火被覆部30には、例えばアクアカバー(登録商標)等の耐火被覆部材30Aが設けられている。
図4(a)は耐火被覆部材の斜視図、
図4(b)は耐火被覆部材の断面図、及び
図4(c)は耐火被覆部材内に設けられた吸熱シート部の斜視図である。耐火被覆部材30Aは、マット部31、吸熱シート部32、及びこれらを外側から梱包、被覆する外側被覆材35を備えている。
マット部31は、例えばリフラクトリーセラミックファイバーにより形成されている。
吸熱シート部32は、吸熱材33と被覆材34を備えている。被覆材34は、例えばポリエチレン、アルミ箔、及びナイロンが積層されることによりフィルム状に形成されている。この被覆材34を2枚対向させ、この間に吸熱材33を密閉、封止することにより、吸熱シート部32は形成されている。吸熱材33は、例えば水や、水を保持させた高分子吸収ポリマー等である。
耐火被覆部材30Aは、火災が生じ外部温度が上昇した際に、吸熱材33内の水が蒸発することで熱を奪い、この吸熱により周囲の部材の温度上昇を抑制する。
耐火被覆部材30Aは、複数枚が重ねられて、繊維強化プラスチック部11の胴体部11dと仕上部20の間の空間S1に収まるように曲げられている。特に、耐火被覆部30は、繊維強化プラスチック部11の下方においては、これに接合されている柱部材5の柱接合部8により貫通されるように設けられている。耐火被覆部30は、特に吸熱シート部32が空間S1を形成する各部材に密着するように、設けられている。既に説明したように、柱接合部8の上端近傍には耐火被覆層8bは設けられておらず板体8aが露出しているため、耐火被覆部30は板体8aに直接密着するように設けられている。
【0021】
図3に示されるように、屋根部10が、上記のように形成されたFRP柱梁架構2に支持されている。屋根部10は、骨材81、屋根接続部材82、屋根材84、及びカバー部材86を備えている。
骨材81は、梁3の上方に設けられて、屋根部10を支持している。骨材81は、上側に位置するように設けられた上板部81aと、一対の側板部81cを備えている。側板部81cは、上板部81aの側端部に接続されて下方に延在するように設けられている。このように、上板部81a及び一対の側板部81cは、中心軸に交差する断面形状がC字形状をなすように形成され、これによって形成される空間S2内に、繊維強化プラスチック部11の突出体11pが収容されて、側板部81cの各下端が外側接合具13の板部13b上に位置するように、骨材81は位置づけられている。
骨材81の内側には、梁3の長手方向に所定の間隔をあけて、屋根接続部材82が接合されて設けられている。屋根接続部材82は、突出体11pに、部分的に接触して沿うように形成されている。この屋根接続部材82に設けられた貫通孔82dの各々と、突出体11pの第2貫通孔11tを挿通するボルト・ナット83により、骨材81は突出体11pに接合されている。
骨材81の上方には、パネル状に形成された屋根材84が位置づけられて、ボルト・ナット85等を介してこれらが互いに固定されている。
【0022】
骨材81の各板部81a、81cと、突出体11pにより形成された空間S2内にも、上記耐火被覆部30と同様な構成の、耐火被覆部40が設けられている。耐火被覆部40は、既に説明したような耐火被覆部材30Aが複数枚重ねられて、空間S2に収まるように曲げられ、特に吸熱シート部32が空間S2を形成する各部材に密着するように、設けられている。
上記のように、内側接合具12と外側接合具13は、梁3の長手方向において短尺に形成されているため、内側接合具12の下側の空間S1と上側の空間S2は、内側接合具12と外側接合具13が設けられていない梁3の長手方向の断面位置においては、連通した空間S1、S2となっている。例えばこのような部分においては、耐火被覆部30、40は、一体となって構成されている。
骨材81の2つの側板部81cの外側の表面の各々と、仕上部20の側板部20aの上端をかけ渡すように、カバー部材86が設けられている。これにより、側板部81cの外側の表面と、外側接合具13の板部13bの上面、及びカバー部材86で囲われた空間S3が形成されている。この空間S3内には、断熱材41が設けられている。
【0023】
上記のようなFRP柱梁架構2において火災が生じ、外部温度が上昇した場合に、仕上部20の燃焼等により熱が梁3の内部に伝達しようとしても、空間S1に設けられた耐火被覆部30内の水が蒸発しこの熱を吸熱するため、胴体部11dの一定以上の温度上昇が抑制される。
また、外部の熱は、仕上部20と繊維強化プラスチック部11を接合する外側接合具13の板部13bと内側接合具12の板部12bを介しても、繊維強化プラスチック部11の突出体11pへと伝達し得る。この場合においては、まず、外側接合具13の板部13b上に設けられた断熱材41と、空間S1に、外側接合具13に密着するように設けられた耐火被覆部30により、外側接合具13の板部13bを介した熱の伝達が抑えられる。更に、外側接合具13の板部13bから内側接合具12の板部12bへと熱が伝達しても、空間S1と空間S2の各々に、内側接合具12に密着するように設けられた耐火被覆部30、40により、熱の突出体11pへの更なる伝達が抑えられる。
【0024】
特に梁3の下方においては、アルミニウム合金により形成された柱部材本体6から、鋼製の接合部材7を介し、梁3の繊維強化プラスチック部11へと熱が伝達する。この部分においては、アルミニウム合金と繊維強化プラスチックが鋼材を介して接合されており、アルミニウム合金と繊維強化プラスチックは火災時の許容温度が異なるため、許容温度が高い部材すなわちアルミニウム合金から熱が伝達することにより、許容温度が低い部材すなわち繊維強化プラスチックの温度が上昇し、繊維強化プラスチックが破壊する可能性がある。より具体的には、アルミニウム合金の許容温度を260℃、繊維強化プラスチックの許容温度が200℃とすると、アルミニウム合金からの熱の伝達により繊維強化プラスチックの温度が200℃以上となる可能性がある。
これに対し、本実施形態においては、柱部材本体6の管体6aと、柱接合部8の板体8aは、それぞれ、耐火被覆層6b、8bで被覆されている。このため、火災時に、柱部材本体6の温度上昇が抑えられ、かつ、柱部材本体6から板体8aを介した熱の伝達が抑えられる。
更に、梁3内の、柱接合部8が設けられた空間S1には耐火被覆部30が設けられている。特に、柱接合部8の上端近傍においては、板体8aは耐火被覆層8bにより被覆されておらず、板体8aに接するように設けられた耐火被覆部30が直接板体8aから熱を吸収するため、柱接合部8を介した熱の伝達が抑えられる。
以上が相乗することにより、後に実験結果において詳細に説明するように、アルミニウム合金により形成された柱部材本体6が260℃まで上昇しても、柱接合部8の鋼材の温度を200℃以下に抑え、繊維強化プラスチック部11の温度を200℃以下とすることができる。
【0025】
(繊維強化プラスチック梁の耐火性能確認実験と、熱伝導解析)
繊維強化プラスチック製の梁部材を対象に、梁部材を構成する耐火被覆部の耐火性能について、要素実験を行い、性能確認を行った。
初めに、本実施形態として用いた耐火被覆部30、40の有効性に関する加熱実験及びその結果を説明する。
図5は、加熱実験における、実験環境の正面図、上面図、及び側面図である。
本実験においては、幅60mm、長さ900mmの繊維強化プラスチック部100を用いた。この繊維強化プラスチック部100を炉103に面して配し、繊維強化プラスチック部100と炉103の間に耐火被覆部材101を設けた。耐火被覆部材101としては、厚さ13mmのアクアカバーを2枚重ね、26mmの構成とした。この状況下で、繊維強化プラスチック部100を、耐火被覆部材101の反対側から、ISO834に記載された標準加熱温度曲線に従って、30分間、加熱102した。消火後、繊維強化プラスチック部100の最高温度を確認するまで、温度の計測を続けた。温度は、繊維強化プラスチック部100上の、南位置P11、中央位置P12、北位置P13の3か所において計測した。
図6は、上記加熱実験の実験結果を示すグラフである。線105として示されるように、炉103内の温度が800℃を超えるように加熱した場合であっても、線104として示されるように、繊維強化プラスチック部100の最高温度は、105℃程度であった。繊維強化プラスチック部は、概ね200℃以下程度に維持できれば、構造体として使用した場合の強度を発揮できるが、最高温度はこの許容温度を大きく下回る結果となった。
よって、繊維強化プラスチック梁部材として、梁断面の中央部に設ける繊維強化プラスチック部と、その外周面に設ける耐火被覆部と、仕上部と、で設置する構成について、必要な耐火性能を満足できる点が確認できた。
【0026】
次に、繊維強化プラスチック製の梁部材に対して、熱伝導解析を行い、繊維強化プラスチック梁部材の耐火性能、及び耐火構造性能を確認した。
図7(a)に示されるようなFRP柱梁架構110の柱部材部分を、
図7(b)に示されるようにモデル化した。
この解析モデル110Aにおいては、柱部材本体111の管体111aを、密度が2700kg/m
3、比熱が903J/(kg・K)、熱伝導率が190W/(m・K)のアルミニウム合金製とした。管体111aの長さと幅は、それぞれ、8000mmと150mmとした。管体111aには、アクゾノーベル社の耐火塗料であるInterchar212を、厚さが12.9mmとなるように設定した。このような管体111aに対し、ISO834の標準加熱温度曲線による加熱を30分実施した場合の温度変化を
図8に示す。最高温度は、アルミニウム合金の許容温度である260℃を下回っている。
また、柱接合部112の板体112aを、密度が7850kg/m
3、比熱が481J/(kg・K)、熱伝導率が52W/(m・K)の鋼材とした。板体112aの幅は管体111aと同じく150mmとし、長さLは可変とした。柱接合部112には、セラミックブランケットにより厚さが15mmとなるように耐火被覆層112bを設定した。このような板体112aに対し、ISO834の標準加熱温度曲線による加熱を30分実施した場合の温度変化を
図9に示す。
上記の解析モデル110Aに対し、上記のような温度変化を各部材に適用し、板体112aの長さLをパラメータとして変化させて、各部分の温度変化を、FEM熱伝導解析により解析した。
図10に、解析結果を示す。板体112aの長さLが200mm以上であれば、板体112aの上端部112cの温度が200℃以下となり、繊維強化プラスチック部113の温度が許容値である200℃以下となることがわかった。
【0027】
次に、FRP柱梁架構を構成する耐火被覆層を有する柱部材に対して、加熱実験を行い、柱部材の耐火性能、及び耐火構造性能を確認した。
図11は、加熱実験における、試験体の説明図である。また、
図12は、試験体の一覧表である。柱部材本体6の試験体120は、いずれも高さを1.2m、加熱範囲の長さを1mとした。試験体120の断面形状としては、断面が丸形である断面丸形試験体120Aと、断面がH形である断面H形試験体120Bを用いた。この断面形状に加え、耐火被覆材及び被覆厚をパラメータとし、この1種類につき2体の、計12体の試験体120を用意した。すべての試験体120の種類で、ISO834に規定された標準加熱温度曲線と、火災温度上昇係数αを295とした場合に相当する加熱温度曲線の各々に、1つの試験体120を使用した。
いずれの場合にも、アルミニウム合金の最高温度が確認できるまで計測を続けた。火災温度上昇係数αを295とした場合に相当する加熱温度曲線においては、火災継続時間は22分であったが、より長い30分の加熱を実施した。
図13は、加熱試験の結果を示す表である。本表において、発泡層の厚さは、
図11(c)にa、b、cとして示される3か所において計測した。標準加熱温度曲線の試験では、断面形状が丸形のA1において、アルミニウム合金の温度が許容値(260度)を超えたが、他の試験体は許容値未満となった。火災温度上昇係数αを295とした場合に相当する加熱温度曲線の試験では、全ての試験体120において、許容値未満となった。
よって、本発明のFRP柱梁架構を構成するアルミニウム合金製の柱部材において、発砲性耐火塗料を所定厚さ塗布して耐火被覆層を形成することで、FRP柱梁架構に求められる必要な耐火性能を確保できることが確認できた。
【0028】
次に、上記のFRP柱梁架構の効果について説明する。
【0029】
上記の実施形態のFRP柱梁架構2は、柱部材5と、繊維強化プラスチックと仕上材を組み合わせたFRP梁部材(梁)3とが連結されたFRP柱梁架構2であって、FRP梁部材3は、断面形状が、矩形状に形成された繊維強化プラスチック部11と、繊維強化プラスチック部11の外周囲に設けられる仕上部20と、繊維強化プラスチック部11と仕上部20との間に設けられる、吸熱材33が密閉されてなる耐火被覆部30と、を備え、柱部材5は、仕上部20及び耐火被覆部30を外方から貫通し、繊維強化プラスチック部11と接合されていることを特徴とする。
上記のような構成によれば、繊維強化プラスチック部11の外周囲には仕上部20が設けられ、繊維強化プラスチック部11と仕上部20との間には、吸熱材33が密閉されてなる耐火被覆部30が設けられている。火災時に外部温度が上昇しても、外部から仕上部20等を介して繊維強化プラスチック部11に伝達しようとする熱エネルギーは、耐火被覆部30の吸熱材33により吸収される。また、柱部材5は、吸熱材33が密閉されてなる耐火被覆部30を外方から貫通し、繊維強化プラスチック部11と接合されているため、火災時に柱部材5を介して熱がFRP梁部材3の内部に伝達しようとしても、同様に、耐火被覆部30の吸熱材33により吸収される。
したがって、繊維強化プラスチック部11の温度上昇を抑制可能であり、これにより、繊維強化プラスチック部11の耐火性能を向上可能である。
【0030】
また、柱部材5は、繊維強化プラスチック部11の底面11qを支持し、及び側面11uを挟持することを特徴とする。
上記のような構成によれば、繊維強化プラスチック部11を柱部材5に強固に固定することができる。
【0031】
また、仕上部20を貫通する部分には、耐火被覆層8bを有する柱部材5が設けられることを特徴とする。
上記のような構成によれば、仕上部20を貫通する部分の柱部材5にあっては、耐火被覆層8bを有する柱部材5が配置されていることで、貫通部分が耐火被覆層8bを有する柱部材5で塞がれているために、火災時に柱部材5からFRP梁部材3に伝達する延焼熱の伝搬を防止できる。すなわち、火災時の柱部材5を介してFRP梁部材3の内部に伝達しようとする熱の総量が低減するため、更に効果的に、繊維強化プラスチック部11の温度上昇を抑制可能である。
【0032】
また、繊維強化プラスチック部11の、柱部材5によって支持されている部分には、貫通孔11rが設けられ、繊維強化プラスチック部11は柱部材5にボルト9cを用いて接合されている。
繊維強化プラスチック部は一般に、釘等を打ち込むのが容易ではないところ、上記のような構成によれば、貫通孔11rが繊維強化プラスチック部11に形成され、これに対して柱部材5の、接合部材7の梁接合部9がボルト9cにより接合されているため、これらを容易かつ確実に接合可能である。
【0033】
なお、本発明のFRP柱梁架構は、図面を参照して説明した上述の実施形態に限定されるものではなく、その技術的範囲において他の様々な変形例が考えられる。
例えば、繊維強化プラスチック部11の断面形状は、矩形状に限られない。繊維強化プラスチック部11の断面形状の様々な変形例を、
図14に示す。
図14(a)の繊維強化プラスチック部11Aは、上下方向に間隔をあけて設けられた、幅の短い一対のフランジ部11e、11fと、これらフランジ部11e、11fとを連結するウェブ部11gと、を備えており、断面形状がI形状となるように形成されている。このような繊維強化プラスチック部11Aを支持するFRP柱梁架構2Aの梁接合部9Aは、これに対応する形状を成している。すなわち、梁接合部9Aは、一対のフランジ挟持部9eと、一対のウェブ挟持部9fを備えている。一対のフランジ挟持部9eの各々は、フランジ部11fの両端辺側において、柱接合部8Aの上端から外方に膨らんだ後に上方へ延び、その後内側へ向かうような形状を成しており、互いに対向する一対のフランジ挟持部9eの間にフランジ部11fが収容されて固定されるように形成されている。一対のウェブ挟持部9fの各々は、各フランジ挟持部9eの内端から上方に延在するように設けられており、これら一対のウェブ挟持部9fの間にウェブ部11gが収容されるように形成されている。ウェブ部11gと一対のウェブ挟持部9fの各々には、対応する位置に図示されない貫通孔が開設されており、この貫通孔を挿通するように図示されないボルトが緊締されて、固定されている。
【0034】
図14(b)の繊維強化プラスチック部11Bは、1つのフランジ部11hと、このフランジ部11hの上方へと延在するように設けられたウェブ部11iと、を備えており、断面形状がT形状となるように形成されている。
また、
図14(c)の繊維強化プラスチック部11Cは、上下方向に間隔をあけて設けられた、繊維強化プラスチック部11Aのフランジ部11e、11fよりも幅の長い一対のフランジ部11j、11kと、これらフランジ部11j、11kとを連結するウェブ部11lと、を備えており、断面形状がH形状となるように形成されている。
このような繊維強化プラスチック部11B、11Cを支持するFRP柱梁架構2Bの梁接合部9Bは、これに対応する、共通した形状を備えている。梁接合部9Bは、梁接合部9Aと同様に、一対のフランジ挟持部9gと、一対のウェブ挟持部9fを備えている。梁接合部9Bのフランジ挟持部9gは、これが挟持するフランジ部11h、11kの形状にあわせて、梁接合部9Aのフランジ挟持部9eよりも外方に長く延在するように設けられている。
【0035】
上記以外にも、繊維強化プラスチック部11が十分な強度を有するようであれば、その形状は上記に限られない。例えば、断面形状は円形や楕円形であってもよい。この場合において、繊維強化プラスチック部11の内部は、上記実施形態のように中空であってもよいし、中実に、すなわち空間の無いように形成されていてもよい。
この場合においては、梁接合部9は対応する形状に形成されるのは、言うまでもない。
同様に、繊維強化プラスチック部11は、上記実施形態のような矩形断面を有しつつも、中実に形成されていてもよい。
また、上記実施形態では、繊維強化プラスチックと仕上材(木材)を組み合わせてFRP梁部材を形成しているが、仕上材として、木材に限定することなく、石膏ボード、ケイカル板、金属板、或いはプラスチック板を用いてもよい。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
2 FRP柱梁架構 11、11A~11C 繊維強化プラスチック部
3 梁(FRP梁部材) 11p 突出体
5、5A~5F 柱部材 11q 底面
6 柱部材本体 11u 側面
6b、8b 耐火被覆層 20 木質部(仕上部)
7 接合部材 30、40 耐火被覆部
8 柱接合部 33 吸熱材
9 梁接合部