(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】車載用ウーファー装置
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20221018BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H04R1/02 102B
B60R11/02 S
(21)【出願番号】P 2019102557
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100081259
【氏名又は名称】高山 道夫
(72)【発明者】
【氏名】田端 孝行
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/052080(WO,A1)
【文献】特表2013-509049(JP,A)
【文献】国際公開第2013/005578(WO,A1)
【文献】特表2012-503940(JP,A)
【文献】特開平7-137581(JP,A)
【文献】特開2015-071372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00- 1/02
H04R 1/20- 1/34
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気回路と前記磁気回路に接続される振動板とを有し、前記磁気回路を電気的に駆動することにより前記振動板を振動させて音波を発生可能なスピーカユニットと、
前記振動板の第1面が指向する側であって前記スピーカユニットに接続されるヘルムホルツ共鳴器と、
前記第1面の裏面である前記振動板の第2面が指向する側であって前記スピーカユニットと接続される密閉空間を構成するための密閉容器と、
前記ヘルムホルツ共鳴器、前記スピーカユニット及び前記密閉容器を貫通する管状部と、を備える車載用ウーファー装置。
【請求項2】
前記スピーカユニットは、前記ヘルムホルツ共鳴器と前記密閉容器を接続して前記管状部を形成し、前記ヘルムホルツ共鳴器の内部空間又は前記密閉容器の内部空間と、前記管状部の内部空間を離隔するためのシール部を備える請求項1に記載の車載用ウーファー装置。
【請求項3】
前記スピーカユニットと接続される上カバー部材と、前記上カバー部材に形成されるダクトを備え、
前記ヘルムホルツ共鳴器は、
少なくとも、前記スピーカユニットと前記上カバー部材により構成されるチャンバ空間と、前記チャンバ空間に接続され、前記スピーカユニットの外周に沿って区画された外周ダクト空間と、を有し、前記ダクトにより前記外周ダクト空間が外部に連通する構造である請求項1又は2に記載の車載用ウーファー装置。
【請求項4】
前記スピーカユニットと接続されるベース部材を備え、
前記密閉容器は、少なくとも、前記スピーカユニットと前記ベース部材とにより構成される請求項1から3のいずれか一項に記載の車載用ウーファー装置。
【請求項5】
前記磁気回路は、前記振動板の前記第2面側に接続される請求項1から4のいずれか一項に記載の車載用ウーファー装置。
【請求項6】
前記磁気回路は、前記振動板の前記第1面側に接続される請求項1から4のいずれか一項に記載の車載用ウーファー装置。
【請求項7】
前記ヘルムホルツ共鳴器は、共振周波数が前記スピーカユニットの使用帯域周波数の上限より高く設定される請求項1から6のいずれか一項に記載の車載用ウーファー装置。
【請求項8】
外形が略円筒形状である請求項1から7のいずれか一項に記載の車載用ウーファー装置。
【請求項9】
自動車のスペアタイヤ収容部に設置し、
前記管状部を挿通する固定具により前記スペアタイヤ収容部に固定される請求項1から8のいずれか一項に記載の車載用ウーファー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、主に車載用のウーファー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車室内における音楽再生の環境は、手軽に高品質な音が楽しめるデジタルコンテンツの普及により、重低音まで再生される機会が多くなってきている。
【0003】
自動車における車載用ウーファー装置の設置場所としては、車室内に向けて音波を放射することができ、且つ装置を設けるスペースを確保する必要があるため、主にドアの内部、後部座席背面等の車室と荷室(トランク)との仕切部分、及び座席シート下等に限られている。
【0004】
特に、低音域を再生するウーファーや重低音域を再生するサブウーファー等のスピーカユニットを用いた車載用ウーファー装置は一般的に大型となるため、設置スペースの限られる車両に搭載するには工夫が必要である。
【0005】
そこで、低音域を再生するウーファー等の車載用スピーカ装置を小型化する技術として、例えば特許文献1が存在する。また、車載用ウーファー装置の設置場所の工夫として、例えば特許文献2が存在する。
【0006】
特許文献1には、ベントダクトを含む少なくとも1つのヘルムホルツ共鳴器を備えるスピーカ装置の構成が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、ホイール凹部にスピーカボックスを収容し、収納凹部の床面からボルトを引き出し、ボルトの端部にスピーカボックスの上面側からナットを螺着し、スピーカボックスをホイール凹部内に固定するようにした車載用スピーカの構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2013-509049号公報
【文献】特開平7-137581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1は、スピーカ装置を固定する構造の開示が無く、例えば、特許文献2のようにスペアタイヤ収容部に当該スピーカ装置を設置する際のヘルムホルツ共鳴器のダクト以外の気密を確保する構造が開示されていない、
【0010】
また特許文献2は、ヘルムホルツ共鳴器の構造が無く、スピーカ内を区画する構成において、ボルトを挿通する貫通孔の気密構造についての構造が開示されていない。
【0011】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、小型化を図りつつ低音域の再生を実現し、且つスペアタイヤ収容部等へ効率よく設置可能な車載用ウーファー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記した目的を達成するために本開示に係る車載用ウーファー装置は、磁気回路と前記磁気回路に接続される振動板とを有し、前記磁気回路を電気的に駆動することにより前記振動板を振動させて音波を発生可能なスピーカユニットと、前記振動板の第1面が指向する側であって前記スピーカユニットに接続されるヘルムホルツ共鳴器と、前記第1面の裏面である前記振動板の第2面が指向する側であって前記スピーカユニットと接続される密閉空間を構成するための密閉容器と、前記ヘルムホルツ共鳴器、前記スピーカユニット、及び記密閉容器を貫通する管状部と、を備える。
【0013】
また、前記スピーカユニットは、前記ヘルムホルツ共鳴器と前記密閉容器と接続して前記管状部を形成し、前記ヘルムホルツ共鳴器の内部空間又は前記密閉容器の内部空間と、前記管状部を内部空間と離隔するためのシール部を備えてもよい。
【0014】
また、前記スピーカユニットと接続される上カバー部材と、前記上カバー部材に形成されるダクトを備え、前記ヘルムホルツ共鳴器は、少なくとも、前記スピーカユニットと前記上カバー部材により構成されるチャンバ空間と、前記チャンバ空間に接続され、前記スピーカユニットの外周に沿って区画された外周ダクト空間と、を有し、前記ダクトにより前記外周ダクト空間が外部に連通する構造であってもよい。
【0015】
また、前記スピーカユニットと接続されるベース部材を備え、前記密閉容器は、少なくとも、前記スピーカユニットと前記ベース部材とにより構成されてもよい。
【0016】
また、前記磁気回路は、前記振動板の前記第2面側に接続されてもよい。
【0017】
また、前記磁気回路は、前記振動板の前記第1面側に接続されてもよい。
【0018】
また、前記ヘルムホルツ共鳴器は、共振周波数が前記スピーカユニットの使用帯域周波数の上限より高く設定されてもよい。
【0019】
また、車載用ウーファー装置は、外形が略円筒形状でもよい。
【0020】
また、自動車のスペアタイヤ収容部に設置し、前記管状部を挿通する固定具により前記スペアタイヤ収容部に固定されてもよい。
【発明の効果】
【0021】
上記手段を用いる本開示に係る車載用ウーファー装置によれば、小型化を図りつつ低音域の再生を実現し、且つスペアタイヤ収容部等へ効率よく設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置の斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置の斜視断面図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置の斜視断面図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置の上カバーを外した状態を示す斜視図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置の断面図である。
【
図6】本開示のヘルムホルツ共鳴器を有するスピーカ装置とローパスフィルタを組み合わせた場合の周波数特性を比較した図である。
【
図7】自動車のスペアタイヤ収容部を示す斜視図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置をスペアタイヤ収容部に搭載した場合の断面図である。
【
図9】本開示の実施形態のバリエーションに係る車載用ウーファー装置を含む自動車の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の実施形態を図面に基づき説明する。
【0024】
(車載用ウーファー装置全体構造について)
図1から
図5を用いて、本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置1について説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置1の斜視図である。
図2、
図3は、本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置の斜視断面図である。
図4は、本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置の上カバーを外した状態を示す斜視図である。
図5は、本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置の中心軸Oを通るようにカットした断面図である。
【0025】
車載用ウーファー装置1は、上カバー部材11、ベース部材12が接合されて構成される略円筒形状のスピーカ装置である。車載用ウーファー装置1は、略円筒形状の中心軸Oと同軸となる貫通孔19を有する。また端部にダクト14を備える。また、内部にスピーカユニット20を備える。
図4に示すように、スピーカユニット20は、枠29が車載用ウーファー装置1の内部の中間プレート部材13に固定されている。中間プレート部材13は、ベース部材12に固定されている。なお、中間プレート部材13とベース部材12は一体に形成されていてもよい。また、中間プレート部材13は、上カバー部材11に固定されてもよいし、上カバー部材11と一体に形成されていてもよい。
【0026】
車載用ウーファー装置1の内部空間は、スピーカユニット20を境界として、密閉空間51と、ヘルムホルツ共鳴器を構成するチャンバ空間52と外周ダクト空間53を合わせた空間に分けられる。密閉空間51は、ベース部材12と中間プレート部材13とスピーカユニット20により閉じられる密閉容器として構成される空間である。また、チャンバ空間52は、上カバー部材11と中間プレート部材13とスピーカユニット20により作られる空間である。外周ダクト空間53は、上カバー部材11とベース部材12により作られ、スピーカユニット20の周囲を取り囲むように配置される空間である。外周ダクト空間53は、チャンバ空間52と接続されている。ダクト14は、上カバー部材11に構成されて、外周ダクト空間53はダクト14を介して外部と連通する。上カバー部材11は、チャンバ空間52と外周ダクト空間53と、ダクト14の開口により、ヘルムホルツ共鳴器を構成する。スピーカユニット20から放射される音波は、チャンバ空間52、外周ダクト空間53、ダクト14の開口を通って外部へ放射される。なお、ヘルムホルツ共鳴器については後述する。
【0027】
スピーカユニット20は、
図5に示すように、振動板21と磁気回路22を有している。スピーカユニット20は、振動板21の中心を通り、振動方向に平行な軸を中心軸とした略同心円形状である。当該中心軸は、車載用ウーファー装置1の全体の略円筒形状の中心軸Oと同軸である。振動板21は中央の貫通孔19の周囲にセンターエッジ部21aが形成され、中央部から径方向外方にコーン部21bが延びており、コーン部21bの周縁には周縁エッジ部21cが形成されている。センターエッジ部21aは管状の第1シール部30と気密に接続される。第1シール部30の下方には管状の第2シール部31が気密に接続され、さらに第2シール部31と後述する円柱部24bが気密に接続され、スピーカユニット20の中央の貫通孔19の一部を形成する管状部18の一部を構成する。なお、スピーカユニット20の中心軸と、車載用ウーファー装置1の全体の略円筒形状の中心軸Oは、貫通孔を形成できる程度にずれていても構わない。
【0028】
コーン部21bは、中央基端部分が磁気回路22のコイルが巻かれたボイスコイルボビン23に接続され、ボイスコイルボビン23の振動が伝達される。つまり、スピーカユニット20の軸方向と振動板21の振幅方向は同一となる。
【0029】
磁気回路22は、背面側が円板状のフランジ部24aをなし、当該フランジ部24aの中央から円柱部24bが突出しているヨーク24を有している。ヨーク24の円柱部24bの外周にはボイスコイルボビン23が軸方向に振動可能に配置され、さらにその外周側には環状のマグネット25が配設されている。当該マグネット25はヨーク24のフランジ部24aと環状のプレート26により挟持されている。
【0030】
磁気回路22は、主にこれらボイスコイルボビン23、ヨーク24、マグネット25、プレート26から構成されており、マグネット25が磁気回路外側に配置された、いわゆる外磁型の磁気回路である。
【0031】
また、プレート26から振動板21の周縁エッジ部21cまでをフレーム27が覆っている。フレーム27の内面からボイスコイルボビン23外周との間にはダンパ28が設けられ、当該ダンパ28がボイスコイルボビン23を振動可能に支持している。
【0032】
また図示しないが、各ボイスコイルボビン23にはボイスコイルが巻かれており、そのボイスコイルは信号伝達回路と接続されており、各ボイスコイルボビン23は当該信号伝達回路からの信号を受けて振動する。信号伝達回路には、例えば、ローパスフィルタや、バンドパスフィルタのように、ボイスコイルボビン23を駆動する周波数帯域を制限するデバイスを組み込むことができる。
【0033】
ここで、車載用ウーファー装置1の全体構造に戻ると、ヘルムホルツ共鳴器を構成する中間プレート部材13とスピーカユニット20の枠29は、密接部Aにおいて、チャンバ空間52と密閉空間51を気密に区画する。また、ヘルムホルツ共鳴器を構成する上カバー部材11と第1シール部30は、密接部Bにおいて、チャンバ空間52と貫通孔19を気密に区画する。さらに、密閉容器を構成するベース部材12とヨーク24は、密接部Cにおいて、密閉空間51と貫通孔19を気密に区画する。このようにして、ヘルムホルツ共鳴器とスピーカユニット20と密閉容器を貫通する貫通孔19を構成する管状部18が構成され、ヘルムホルツ共鳴器の内部空間、密閉容器の内部空間と、管状部18の内部空間である貫通孔19を離隔することができる。
【0034】
(ヘルムホルツ共鳴器について)
次に、ヘルムホルツ共鳴器について説明する。ヘルムホルツ共鳴器は、ヘルムホルツ共鳴器を構成する構造の、L:ダクト長、Sp:ダクト断面積、V:チャンバ内体積と、c:音速、fp:ポート共振周波数が、以下の数1の関係で示される。
【0035】
【0036】
数1より、ダクト断面積Spを小さくし、ダクト長Lを長くし、チャンバ内体積Vを大きくすることによりポート共振周波数fpを下げることができることがわかる。例えば、ヘルムホルツ共鳴器を取り付けた所定サイズのスピーカ装置について説明する。振動板21と、振動板21に接する空間であるチャンバ内体積Vを2.0[リットル]、ダクト14の開口断面積Spを3940[mm2]、ダクト長Lを500[mm]、気温20℃の場合の音速cを343.2[m/s]とすると、数1より、ポート共振周波数fpは約110[Hz]になる。そのため、ローパスフィルタ等により、再生する使用帯域周波数をポート共振周波数以下の80[Hz]以下とすることで、低音域の周波数を効率よく放射することができる。
【0037】
図6は、スピーカユニット20にヘルムホルツ共鳴器を取り付けたスピーカ装置(点線)と、遮断周波数が80[Hz]の2次のローパスフィルタ(計算値)を組み合わせた場合(実線)の周波数特性を示した図である。
図6は、横軸に周波数(単位はHz)、縦軸に所定条件で測定したスピーカの音圧レベル(単位はdB)を示す。
【0038】
図6で示すように、ヘルムホルツ共鳴器を取り付けたスピーカ装置は、50Hz付近で音圧レベルの極大値を有する。本開示の実施形態に係るヘルムホルツ共鳴器を取り付けた車載用ウーファー装置1(スピーカ装置)は、スピーカユニットの使用帯域周波数の上限を80Hzとしたとき、ヘルムホルツ共鳴器の共振周波数を使用帯域周波数より高く設定するようにチャンバ内体積を小さく設定することで、チャンバに連通するダクトの空気質量が振動板の移動質量Mms(Moving Mass)に影響し、車載用ウーファー装置1の最低共振周波数f
0を下げる効果がある。具体的には、ヘルムホルツ共鳴器に至る振動板21に接するチャンバ内体積を例えば2リットル程度と少なくすることにより、振動板21に対して空気負荷質量が増加することで、振動板21の移動質量Mmsが増加し、f
0を低下させる効果がある。
【0039】
以上説明したように、ヘルムホルツ共鳴器を取り付けたスピーカ装置は、低音再生能力を高くすることができる。そのため、本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置1も、小型でありながら低音再生能力を高めることができる。
【0040】
(設置について)
図7は、自動車のトランクルーム内のスペアタイヤ収容部40にスペアタイヤ43が設置され、ナット等の締結部材42で固定された状態を示す斜視図である。本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置1は、スペアタイヤ収容部40に、スペアタイヤ43と置き換えて設置するものである。スペアタイヤ収容部40は、トランクルーム内に凹部として形成されている。
【0041】
図8は、本開示の実施形態に係る車載用ウーファー装置1をスペアタイヤ収容部40に搭載した場合の断面図である。車載用ウーファー装置1は、略円筒形状をしており、同じく円筒形状であるスペアタイヤと代替してスペアタイヤ収容部40に設置することにより、スペアタイヤ収容部40の空間体積を効率よく利用することができる。車載用ウーファー装置1は、スペアタイヤ収容部40から突出している固定具であるボルト41が、車載用ウーファー装置1の管状部18が形成する貫通孔19を挿通し、ナット等の締結部材42がボルト41に螺合することで、スペアタイヤ収容部40に固定される。車載用ウーファー装置1は、スペアタイヤ収容部40の底部である自動車のフロアに直接固定されるため、スピーカユニット20を駆動した際に、車載用ウーファー装置1に不要な振動等を生じすることを防ぐことができる。
【0042】
このように、振動板21の第1面が指向する側であってスピーカユニット20に接続されるヘルムホルツ共鳴器と、第1面の裏面である振動板の第2面が指向する側であってスピーカユニット20と接続される密閉空間を構成するための密閉容器と、ヘルムホルツ共鳴器とスピーカユニット20と密閉容器を貫通する管状部18とを備えることで、管状部18に挿通するボルト等で車載用ウーファー装置1を固定しつつ、ヘルムホルツ共鳴器のダクト14が構成する開口以外の気密性を確保することができる。そのため、ヘルムホルツ共鳴器により、口径の小さなスピーカユニットであっても、車載用ウーファー装置1の最低共振周波数f0を低くし、より低い低音域(低周波数域)まで再生可能である。これにより、当該車載用ウーファー装置1は、小型でありながら、低音域まで再生することができる。
【0043】
また、振動板21の第2面側は密閉容器に指向していることにより、振動板21の第1面から放射される音波と、第2面から放射される音波が干渉することなく、打ち消すことがないため、安定した低音再生能力を確保することができる。
【0044】
さらに、外周ダクト空間53は、スピーカユニット20の外周に沿って区画されているため、車載用ウーファー装置1の大きさを大きくすることなく、外周ダクト空間53の長さを長くとることができる。そのため、ポート共振周波数を低くすることができ、低音再生能力を向上することができる。
【0045】
以上で本開示の実施形態の説明を終えるが、本開示の態様はこの実施形態に限定されるものではない。
【0046】
例えば、
図9で示すように、トランク空間44に設置された車載用ウーファー装置1のダクト14に接続される導管46を車室内空間45まで導くことで、車載用ウーファー装置1の放射する音波を効率よく車室内空間45で聞こえるようにする構成をとっても構わない。その場合、導管46が外周ダクト空間を実質的に延長することとなり、ポート共振周波数を低くすることができ、低音再生能力を向上することができる。
【0047】
また、以上の実施形態の説明では、振動板21の第1面側にヘルムホルツ共鳴器を構成し、第1面の裏面である振動板21の第2面側に密閉空間を構成する密閉容器が構成されており、振動板21の第2面側に磁気回路22を接続したもの、すなわち、磁気回路22側に密閉容器が構成された構成について説明してきた。しかし、本開示は、振動板21の第1面側に磁気回路22を接続したもの、すなわち、磁気回路22側にヘルムホルツ共鳴器が構成された構成であっても構わない。
【0048】
また、上カバー部材11とベース部材12は、螺子で締結または、溶着などで締結する。上カバー部材11とベース部材12の接合部分は、気密性を確保するためにパッキンをはさんで締結してもよい。
【0049】
また上記実施形態におけるスピーカユニット20は正面からみて同心円形状のスピーカであるが、スピーカ形状はこれに限られず、例えば正面からみて矩形やトラック型のスピーカでもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 車載用ウーファー装置
11 上カバー部材
12 ベース部材
13 中間プレート部材
14 ダクト
18 管状部
19 貫通孔
20 スピーカユニット
21 振動板
21a センターエッジ部
21b コーン部
21c 周縁エッジ部
22 磁気回路
23 ボイスコイルボビン
24 ヨーク
24a フランジ部
24 円柱部
25 マグネット
26 プレート
27 フレーム
28 ダンパ
29 枠
30 第1シール部
31 第2シール部
40 スペアタイヤ収容部
41 ボルト
42 締結部材
43 スペアタイヤ
44 トランク空間
45 車室内空間
46 導管
51 密閉空間
52 チャンバ空間
53 外周ダクト空間