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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ステアリング装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/185 20060101AFI20221018BHJP
   B62D 1/19 20060101ALI20221018BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20221018BHJP
   F16C 35/06 20060101ALI20221018BHJP
   F16C 35/02 20060101ALI20221018BHJP
   F16C 19/06 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
B62D1/185
B62D1/19
F16F15/02 Z
F16C35/06 Z
F16C35/02 A
F16C19/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019525471
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2018022506
(87)【国際公開番号】W WO2018230587
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2017116603
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000144810
【氏名又は名称】株式会社山田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(72)【発明者】
【氏名】白石 善紀
【審査官】川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-222202(JP,A)
【文献】特開2006-264424(JP,A)
【文献】特開2008-195354(JP,A)
【文献】実開昭60-023314(JP,U)
【文献】特開2014-105811(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0039403(US,A1)
【文献】特開2016-060450(JP,A)
【文献】特開2009-029362(JP,A)
【文献】特開2016-112988(JP,A)
【文献】特開2008-189223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/185
B62D 1/19
F16F 15/02
F16C 35/06
F16C 35/02
F16C 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタシャフトと、
前記アウタシャフトに対してシャフト軸線方向に移動可能に前記アウタシャフト内に挿入されるとともに、ステアリングホイールが取り付けられるインナシャフトと、
前側軸受を介して前記アウタシャフトを前記シャフト軸線回りに回転可能に支持するアウタコラムと、
後側軸受を介して前記インナシャフトを前記シャフト軸線回りに回転可能に支持するとともに、前記アウタコラムに対して前記シャフト軸線方向に移動可能に前記アウタコラム内に挿入されたインナコラムと、を備え、
前記インナシャフトは、
前記アウタシャフト内に進入可能な進入領域と、
前記進入領域に前記シャフト軸線方向で連なり、前記アウタシャフト内に進入しない非進入領域と、を有し、
前記後側軸受は、前記非進入領域において、前記シャフト軸線方向に間隔をあけて配置された第1軸受及び第2軸受を有しているステアリング装置。
【請求項2】
前記前側軸受、前記第1軸受及び前記第2軸受の少なくとも1つは、樹脂ブッシュである請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記第1軸受は、前記第2軸受よりも車体前方に位置し、
前記インナコラムのうち、前記第1軸受に対して車体前方に位置する部分には、前記第1軸受の外輪に前記シャフト軸線方向で突き当たる第1ストッパが形成され、
前記インナコラムのうち、前記第2軸受に対して車体後方に位置する部分には、前記第2軸受の外輪に前記シャフト軸線方向で突き当たる第2ストッパが形成されている請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記非進入領域は、前記進入領域よりも大径に形成されている請求項1から請求項3の何れか1項に記載のステアリング装置。
【請求項5】
前記進入領域は、中空円筒状に形成され、
前記非進入領域は、中実円柱状に形成されている請求項1から請求項4の何れか1項に記載のステアリング装置。
【請求項6】
前記アウタシャフトには、係止状態で前記アウタコラムに対するアウタシャフトの回転を規制するキーロックカラーが外嵌され、
前記キーロックカラーの外径は、前記インナコラムの内径よりも小さい請求項1から請求項5の何れか1項に記載のステアリング装置。
【請求項7】
前側シャフトと、
前記前側シャフトに対して車体後方に位置して、前記前側シャフトに対してシャフト軸線方向に移動可能に構成されるとともに、ステアリングホイールが取り付けられる後側シャフトと、
前側軸受を介して前記前側シャフトを前記シャフト軸線回りに回転可能に支持する前側コラムと、
後側軸受を介して前記後側シャフトを前記シャフト軸線回りに回転可能に支持するとともに、前記前側コラムに対して前記シャフト軸線方向に移動可能に構成された後側コラムと、を備え、
前記後側軸受は、前記シャフト軸線方向に所定の間隔をあけて配置された第1軸受及び第2軸受を有し、
前記シャフト軸線方向における前記第1軸受及び前記第2軸受間の距離は、20mm以上40mm以下に設定され
前記後側シャフトは、
第1小径部及び第2小径部と、
前記シャフト軸線方向における前記第1小径部及び前記第2小径部の間に位置するとともに、前記第1小径部及び前記第2小径部に一体に形成された大径部と、備え、
前記第1軸受の内輪は、前記第1小径部と前記大径部との境界面に突き当たった状態で、前記第1小径部に外嵌され、
前記第2軸受の内輪は、前記第2小径部と前記大径部との境界面に突き当たった状態で、前記第2小径部に外嵌されているステアリング装置。
【請求項8】
後端部にステアリングホイールが取り付けられるステアリングシャフトと、
前記ステアリングシャフトを支持する後側軸受と、
前記後側軸受の前方で前記ステアリングシャフトを支持する前側軸受と、
前記後側軸受と前記前側軸受とを介して前記ステアリングシャフトをシャフト軸線回りに回転可能に支持するステアリングコラムと、を備え、
前記後側軸受は、前記シャフト軸線方向に所定の間隔をあけて配置された第1軸受及び第2軸受を有し、
前記シャフト軸線方向における前記第1軸受及び前記第2軸受間の距離は、20mm以上40mm以下に設定され
前記ステアリングシャフトは、
第1小径部及び第2小径部と、
前記シャフト軸線方向における前記第1小径部及び前記第2小径部の間に位置するとともに、前記第1小径部及び前記第2小径部に一体に形成された大径部と、備え、
前記第1軸受の内輪は、前記第1小径部と前記大径部との境界面に突き当たった状態で、前記第1小径部に外嵌され、
前記第2軸受の内輪は、前記第2小径部と前記大径部との境界面に突き当たった状態で、前記第2小径部に外嵌されているステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関するものである。
本願は、2017年6月14日に出願された日本国特許出願第2017-116603号に対し優先権を主張し、それら内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ステアリング装置には、テレスコピック機能を備えたものがある。テレスコピック機能は、運転者の体格差や運転姿勢に応じてステアリングホイールの前後位置を調整する。この種のステアリング装置は、車体に取り付けられるアウタコラムと、アウタコラム内に挿入されてアウタコラムに対して移動可能なインナコラムと、を備えている。例えば下記特許文献1の構成において、インナコラム内には、アウタシャフトが軸受を介して回転可能に支持されている。アウタシャフトの後端部には、ステアリングホイールが取り付けられる。アウタコラム内には、インナシャフトが軸受を介して回転可能に支持されている。インナシャフトは、アウタシャフト内に挿入されている。
【0003】
特許文献1の構成によれば、テレスコピック動作時において、インナコラム及びアウタシャフトがアウタコラム及びインナシャフトに対してそれぞれ軸方向に移動する。特許文献1の構成では、アウタシャフトが車体後方に位置し、軸方向の両端部で軸受に支持されている。そのため、特許文献1の構成では、振動剛性を高めることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2006-69360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ステアリング装置では、テレスコピック動作時や二次コラプス時(二次衝突時のストローク)のストローク量を確保した上で、所望の振動剛性を得る点で未だ改善の余地があった。
【0006】
本発明に係る態様は、上述した事情に考慮してなされたもので、ストローク量を確保した上で、所望の振動剛性を得ることができるステアリング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の態様を採用した。
(1)本発明の一態様に係るステアリング装置は、アウタシャフトと、前記アウタシャフトに対してシャフト軸線方向に移動可能に前記アウタシャフト内に挿入されるとともに、ステアリングホイールが取り付けられるインナシャフトと、前側軸受を介して前記アウタシャフトを前記シャフト軸線回りに回転可能に支持するアウタコラムと、後側軸受を介して前記インナシャフトを前記シャフト軸線回りに回転可能に支持するとともに、前記アウタコラムに対して前記シャフト軸線方向に移動可能に前記アウタコラム内に挿入されたインナコラムと、を備える。前記インナシャフトは、前記アウタシャフト内に進入可能な進入領域と、前記進入領域に前記シャフト軸線方向で連なり、前記アウタシャフト内に進入しない非進入領域と、を有している。前記後側軸受は、前記非進入領域において、前記シャフト軸線方向に間隔をあけて配置された第1軸受及び第2軸受を有している。
【0008】
本態様のステアリング装置は、アウタコラム内でアウタシャフトを回転可能に支持し、インナコラム内でインナシャフトを回転可能に支持する構成である。この構成によれば、車体前方に位置するアウタシャフトにキーロックカラー等の装着部材が外嵌されている場合であっても、インナコラムやインナシャフトの移動軌跡上に装着部材が配置されるのを抑制できる。そのため、テレスコピック動作時や二次コラプス時等のストローク時において、インナコラムやインナシャフトと装着部材との干渉を抑制できる。これにより、従来のように車体前方に位置するアウタコラム内でインナシャフトが回転可能に支持され、車体後方に位置するインナコラム内でアウタシャフトが回転可能に支持される構成に比べて、インナコラム及びインナシャフトのストローク量を確保できる。
特に、本態様では、テレスコピック動作時や二次コラプス時にアウタシャフト内に進入しない非進入領域に第1軸受及び第2軸受を配置した。この構成によれば、各軸受のうち、車体前方に位置する軸受と、アウタシャフトやアウタシャフトの周辺部材と、がストローク時に干渉するのを抑制できる。インナシャフトの変位が抑制され、インナシャフトが安定して支持される。これにより、振動剛性を向上させることができる。
したがって、本態様では、ストローク量を確保した上で、所望の振動剛性を得ることができる。
【0009】
(2)上記(1)の態様のステアリング装置において、前記前側軸受、前記第1軸受及び前記第2軸受の少なくとも1つは、樹脂ブッシュであることが好ましい。
本態様によれば、ステアリング装置の簡素化を図ることができる。
【0010】
(3)上記(1)の態様のステアリング装置において、前記第1軸受は、前記第2軸受よりも車体前方に位置していることが好ましい。前記インナコラムのうち、前記第1軸受に対して車体前方に位置する部分には、前記第1軸受の外輪に前記シャフト軸線方向で突き当たる第1ストッパが形成されていることが好ましい。前記インナコラムのうち、前記第2軸受に対して車体後方に位置する部分には、前記第2軸受の外輪に前記シャフト軸線方向で突き当たる第2ストッパが形成されていることが好ましい。
本態様によれば、インナコラムに対する第1軸受及び第2軸受のシャフト軸線方向の位置ずれを抑制できるので、ステアリングシャフトの抜け止めを行うことができる。
特に、インナコラムに形成されたストッパによりステアリングシャフトの抜け止めを行うことで、外輪の固定にストップリング等を別体で用いる必要がない。そのため、部品点数の削減を図ることができる。
【0011】
(4)上記(1)から(3)何れかの態様のステアリング装置において、前記非進入領域は、前記進入領域よりも大径に形成されていることが好ましい。
本態様によれば、インナシャフトの剛性を向上させることができるので、振動剛性を向上させることができる。
しかも、本態様では、非進入領域のみを大径に形成することで、インナシャフト全体を大径に形成する場合に比べて大径化に伴う重量増加を可能な限り抑制できる。
【0012】
(5)上記(1)から(4)の何れかの態様のステアリング装置において、前記進入領域は、中空円筒状に形成されていることが好ましい。前記非進入領域は、中実円柱状に形成されていることが好ましい。
本態様によれば、インナシャフトの剛性を向上させることができるので、振動剛性を向上させることができる。
特に、本態様では、非進入領域のみを中実に形成することで、インナシャフト全体を中実に形成する場合に比べて中実にしたことに伴う重量増加を可能な限り抑制できる。
【0013】
(6)上記(1)から(5)の何れかの態様のステアリング装置において、前記アウタシャフトには、係止状態で前記アウタコラムに対するアウタシャフトの回転を規制するキーロックカラーが外嵌されていることが好ましい。前記キーロックカラーの外径は、前記インナコラムの内径よりも小さいことが好ましい。
本態様によれば、キーロックカラーの配置場所に関わらず、インナコラムのストローク時に、インナコラムとキーロックカラーとの干渉を確実に抑制できる。これにより、インナコラムのストローク量を確保できる。
【0014】
(7)本発明の一態様に係るステアリング装置は、前側シャフトと、前記前側シャフトに対して車体後方に位置して、前記前側シャフトに対してシャフト軸線方向に移動可能に構成されるとともに、ステアリングホイールが取り付けられる後側シャフトと、前側軸受を介して前記前側シャフトを前記シャフト軸線回りに回転可能に支持する前側コラムと、後側軸受を介して前記後側シャフトを前記シャフト軸線回りに回転可能に支持するとともに、前記前側コラムに対して前記シャフト軸線方向に移動可能に構成された後側コラムと、を備える。前記後側軸受は、前記シャフト軸線方向に所定の間隔をあけて配置された第1軸受及び第2軸受を有している。前記シャフト軸線方向における前記第1軸受及び前記第2軸受間の距離は、20mm以上40mm以下に設定され、前記後側シャフトは、第1小径部及び第2小径部と、前記シャフト軸線方向における前記第1小径部及び前記第2小径部の間に位置するとともに、前記第1小径部及び前記第2小径部に一体に形成された大径部と、備え、前記第1軸受の内輪は、前記第1小径部と前記大径部との境界面に突き当たった状態で、前記第1小径部に外嵌され、前記第2軸受の内輪は、前記第2小径部と前記大径部との境界面に突き当たった状態で、前記第2小径部に外嵌されていることが好ましい。
(8)本発明の一態様に係るステアリング装置は、後端部にステアリングホイールが取り付けられるステアリングシャフトと、前記ステアリングシャフトを後側軸受と、前記後側軸受の前方で前記ステアリングシャフトを前側軸受と、前記後側軸受と前記前側軸受とを介して前記ステアリングシャフトをシャフト軸線回りに回転可能に支持するステアリングコラムと、を備えている。前記後側軸受は、前記シャフト軸線方向に所定の間隔をあけて配置された第1軸受及び第2軸受を有している。前記シャフト軸線方向における前記第1軸受及び前記第2軸受間の距離は、20mm以上40mm以下に設定され、前記ステアリングシャフトは、第1小径部及び第2小径部と、前記シャフト軸線方向における前記第1小径部及び前記第2小径部の間に位置するとともに、前記第1小径部及び前記第2小径部に一体に形成された大径部と、備え、前記第1軸受の内輪は、前記第1小径部と前記大径部との境界面に突き当たった状態で、前記第1小径部に外嵌され、前記第2軸受の内輪は、前記第2小径部と前記大径部との境界面に突き当たった状態で、前記第2小径部に外嵌されていることが好ましい。
本願発明者は、上述した目的を達成するために、検討した結果、第1軸受及び第2軸受間の距離が40mmよりも長い範囲での振動剛性の変化の割合は、距離が40mm以下の範囲での振動剛性の変化の割合に比べて小さくなることを見出した。すなわち、距離が所定の範囲を超えると、その後距離を増加しても振動剛性の大幅な向上は見込めないことが分かった。
そこで、本態様によれば、第1軸受及び第2軸受間の距離を40mm以下に設定することで、所望の振動剛性を得ることができる。第1軸受及び第2軸受間の距離を40mm以下に設定することで、前側シャフト及び前側コラムと、後側シャフト及び後側コラムと、がシャフト軸線方向に移動する際のストローク量を確保できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の各態様によれば、ストローク量を確保した上で、所望の振動剛性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係るステアリング装置の断面図である。
図2】第1実施形態に係るステアリング装置の拡大断面図である。
図3】第2実施形態に係るステアリング装置の拡大断面図である。
図4】第1軸受及び第2軸受間の距離Dと、振動剛性と、の関係を示すグラフである。
図5】第3実施形態に係るステアリング装置の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、ステアリング装置1の断面図である。
図1に示すように、ステアリング装置1は、車両に搭載されている。ステアリング装置1は、ステアリングホイール2の回転操作に伴って車輪の舵角を調整する。なお、以下の説明における前後上下左右等の向きは、特に記載が無ければ車両に取り付けられた状態での向きとする。この場合、図中矢印UPは上方を示し、矢印FRは前方を示している。
【0018】
ステアリング装置1は、コラムユニット11と、ステアリングシャフト12と、を主に備えている。コラムユニット11及びステアリングシャフト12は、それぞれ軸線Oに沿って延びる筒状に形成されている。したがって、以下の説明では、コラムユニット11及びステアリングシャフト12の軸線Oの延びる方向を単に軸方向(シャフト軸線方向)といい、軸線Oに直交する方向を径方向といい、軸線O回りの方向を周方向という場合がある。
【0019】
本実施形態のステアリング装置1は、軸線Oが前後方向に対して交差した状態で車両に搭載される。具体的に、ステアリング装置1の軸線Oは、後方に向かうに従い上方に延在している。但し、以下の説明では、便宜上、ステアリング装置1において、軸方向でステアリングホイール2に向かう方向を単に後方とし、ステアリングホイール2とは反対側に向かう方向を単に前方とする。また、径方向のうち、ステアリング装置1が車両に取り付けられた状態での上下方向に沿う方向を単に上下方向とする。
【0020】
<コラムユニット>
コラムユニット11は、アウタコラム(前側コラム)21と、インナコラム(後側コラム)22と、を有している。
アウタコラム21は、軸線Oに沿って延びる筒状に形成されている。アウタコラム21は、ブラケット(不図示)を介して車体に取り付けられている。アウタコラム21内における前端部には、前側軸受28の外輪が嵌合(圧入)されている。
【0021】
インナコラム22は、軸線Oに沿って延びる筒状に形成されている。具体的に、インナコラム22は、コラム小径部24と、コラム大径部25と、接続部26と、を有している。コラム大径部25は、コラム小径部24の後方に位置する。接続部26は、コラム小径部24及びコラム大径部25間を接続する。
【0022】
コラム小径部24の外径は、アウタコラム21の内径よりも小さくなっている。コラム小径部24は、アウタコラム21の後方からアウタコラム21内に挿入されている。インナコラム22は、コラム小径部24の外周面がアウタコラム21の内周面上を摺動しながら、アウタコラム21に対して軸方向に移動可能に構成されている。
【0023】
図2は、ステアリング装置1の拡大断面図である。
図2に示すように、接続部26は、コラム小径部24の後端縁とコラム大径部25の前端縁とを接続している。図示の例において、接続部26は、後方に向かうに従い漸次外径が拡大している。但し、接続部26は、軸線Oに直交していてもよい。
コラム大径部25は、接続部26の後端縁から後方に延設されている。コラム大径部25の外径は、アウタコラム21の内径よりも大きくなっている。本実施形態のインナコラム22において、コラム小径部24はアウタコラム21内に進入可能な進入領域である。インナコラム22において、コラム大径部25及び接続部26はアウタコラム21内に進入不能な非進入領域になっている。
【0024】
コラム大径部25の前端部は、前端部よりも後方に位置する部分(以下、薄肉部25bという。)よりも内径が拡大した厚肉部25aを構成している。厚肉部25aと薄肉部25bとの境界部分には、軸線Oに直交する段差面(第1ストッパ)25cが形成されている。なお、コラム大径部25は、少なくとも段差面25cを有する構成であれば、外径や内径の寸法は、適宜変更が可能である。
【0025】
<ステアリングシャフト>
図1に示すように、ステアリングシャフト12は、アウタシャフト(前側シャフト)40及びインナシャフト(後側シャフト)41を備えている。
アウタシャフト40は、軸線Oに沿って延びる中空円筒状に形成されている。アウタシャフト40は、アウタコラム21内に挿入されている。アウタシャフト40の外周面とアウタコラム21の内周面との間は、径方向に隙間を有している。アウタシャフト40の後端部は、インナコラム22内に進入している。アウタシャフト40の前端部は、上述した前側軸受28の内輪に圧入されている。これにより、アウタシャフト40は、アウタコラム21内で前側軸受28を介して軸線O回りに回転可能に支持されている。アウタシャフト40の前端部は、アウタコラム21から前方に突出している。アウタシャフト40の前端部(アウタコラム21よりも前方に突出した部分)は、自在継手(不図示)等を介して例えばステアリングギヤボックス(不図示)等に連結される。
【0026】
アウタシャフト40における軸方向の中間部分には、キーロックカラー45が外嵌されている(アウタシャフト40の外周面に嵌め込まれている)。キーロックカラー45は、筒状に形成されている。キーロックカラー45の外径は、コラム小径部24の内径よりも小さい。キーロックカラー45には、軸方向に延びる溝部46が形成されている。溝部46は、周方向に間隔をあけて複数形成されている。アウタコラム21において、キーロックカラー45の下方に位置する部分には、アウタコラム21を貫通するスリット48が形成されている。何れかの溝部46には、車両のイグニッションオフ時等において、スリット48を通して係止部材(不図示)が進入する(係止状態)。これにより、コラムユニット11に対するステアリングシャフト12の回転が規制される。
【0027】
インナシャフト41は、軸線Oに沿って延びる中空円筒状に形成されている。具体的に、インナシャフト41は、摺動部(進入領域)51、軸受装着部(非進入領域)52及びホイール連結部(非進入領域)53が前方から後方にかけて連なって形成されている。本実施形態において、摺動部51、軸受装着部52及びホイール連結部53は、一様な径に形成されている。
【0028】
摺動部51は、アウタシャフト40内に後方から挿入されている。インナシャフト41は、アウタコラム21に対するインナコラム22の軸方向の移動に伴い、摺動部51の外周面がアウタシャフト40の内周面上を摺動しながら、アウタシャフト40に対して軸方向に移動可能に構成されている。なお、摺動部51の外周面には、例えば雄スプライン(不図示)が形成されている。雄スプラインは、アウタシャフト40の内周面に形成された雌スプライン(不図示)に係合している。これにより、インナシャフト41は、アウタシャフト40に対する相対回転が規制された上で、アウタシャフト40に対して軸方向に移動する。但し、ステアリングシャフト12の伸縮構造や回転規制の構造は、適宜変更が可能である。
【0029】
ホイール連結部53は、インナコラム22から後方に突出している。ホイール連結部53には、ステアリングホイール2が連結されている。
【0030】
図2に示すように、軸受装着部52における軸方向の両端部には、後側軸受61,62が装着されている。これにより、インナシャフト41は、インナコラム22に対して軸線O回りに回転可能に構成されている。
【0031】
後側軸受61,62は、第1軸受61、及び第1軸受61よりも後方に位置する第2軸受62である。各後側軸受61,62の内輪は、各後側軸受61,62間にスペーサ65を挟んだ状態で、軸受装着部52に圧入されている。スペーサ65は、インナシャフト41の周囲を取り囲む筒状に形成されている。スペーサ65における軸方向の両端面は、各後側軸受61,62の内輪にそれぞれ突き当たっている。なお、スペーサ65は、インナシャフト41に一体で形成されていてもよい。
【0032】
各後側軸受61,62の外輪は、コラム大径部25の薄肉部25b内に圧入されている。第1軸受61の外輪は、上述した段差面25cに後方から突き当たっている。一方、第2軸受62の外輪には、コラム大径部25の後端部に形成されたカシメ部(第2ストッパ)67が後方から当接している。
【0033】
本実施形態において、各後側軸受61,62間の距離D(各後側軸受61,62間の間隔)は、40mm以下に設定されていることが好ましく、20mm以上40mm以下に設定されていることがより好ましい。
【0034】
なお、本実施形態のステアリング装置1は、テレスコ調整機構(不図示)を備えている。テレスコ調整機構は、アウタコラム21(アウタシャフト40)に対するインナコラム22(インナシャフト41)の軸方向の移動を規制するロック状態、及び軸方向の移動を許容するロック解除状態に切り替える。テレスコ調整機構は、例えばロック状態においてアウタコラム21を介してインナコラム22を締め付ける。これにより、アウタコラム21に対するインナコラム22の移動が規制される。
【0035】
一方、テレスコ調整機構は、ロック解除状態においてインナコラム22の締め付けを解除する。これにより、アウタコラム21に対するインナコラム22の移動が許容される。例えば、ロック解除状態において、ステアリングホイール2を前方に押し込むことで、ステアリングホイール2がインナコラム22及びインナシャフト41とともに前方に移動する。ロック解除状態において、ステアリングホイール2を後方に引き込むことで、ステアリングホイール2がインナコラム22及びインナシャフト41とともに後方に移動する。その後、テレスコ調整機構を再びロック状態に切り替えることで、ステアリングホイール2の前後位置を任意の位置に設定できる。
【0036】
二次衝突の際には、ステアリングホイール2に対して前方に向けた衝突荷重が運転者から作用する。衝突荷重が所定以上の場合には、ステアリングホイール2がインナコラム22やインナシャフト41とともに、アウタコラム21(アウタシャフト40)に対して前方に移動する。この際、アウタコラム21とインナコラム22との間の摺動抵抗により、二次衝突時に運転者に加わる衝撃荷重が緩和される。
【0037】
ところで、上述した特許文献1の構成では、車体前方に配置されたアウタコラム内でインナシャフトが回転可能に支持され、車体後方に配置されたインナコラム内でアウタシャフトが回転可能に支持されている。この場合、車体前方に例えば、キーロックカラー等の装着部材が装着されていると、インナコラム(アウタシャフト)の前進時に、装着部材とアウタシャフトとが干渉するおそれがある。そのため、特許文献1の構成では、テレスコピック動作や二次コラプスでのストローク量を確保することが難しい。
【0038】
そこで、本実施形態では、車体前方に配置されたアウタコラム21内でアウタシャフト40を回転可能に支持し、車体後方に配置されたインナコラム22内でインナシャフト41を回転可能に支持する構成とした。
この構成によれば、装着部材(例えば、キーロックカラー45等)が、インナコラム22やインナシャフト41の移動軌跡上に配置されるのを抑制できる。そのため、テレスコピック動作時や二次コラプス時等のストローク時において、インナコラム22やインナシャフト41と装着部材との干渉を抑制できる。これにより、従来に比べて、インナコラム22及びインナシャフト41のストローク量を確保できる。
【0039】
特に、本実施形態では、軸受装着部52に軸方向に間隔をあけて後側軸受61,62が装着される構成とした。
この構成によれば、インナシャフト41の後部において、テレスコピック動作時や二次コラプス時にアウタシャフト40内に進入しない部分に複数の後側軸受61,62を装着できる。これにより、第1軸受61と、アウタシャフト40やアウタシャフト40の周辺部材と、がストローク時に干渉するのを抑制できる。インナシャフト41の変位が後側軸受61,62によって抑制され、インナシャフト41が安定して支持される。これにより、振動剛性を向上させることができる。
したがって、本実施形態では、ストローク量を確保した上で、所望の振動剛性を得ることができる。
【0040】
本実施形態では、キーロックカラー45の外径がインナコラム22の内径よりも小さい構成とした。
この構成によれば、キーロックカラー45の配置場所に関わらず、インナコラム22のストローク時に、インナコラム22とキーロックカラー45との干渉を確実に抑制できる。これにより、インナコラム22のストローク量を確保できる。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図3は、第2実施形態に係るステアリング装置100の拡大断面図である。本実施形態では、軸受装着部52を摺動部51よりも大径に形成した点で上述した実施形態と相違している。以下の説明では、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図3に示すステアリング装置100において、インナシャフト41は、筒部101と、中実部102と、を有している。筒部101は、摺動部51を構成する。中実部102は、筒部101の後端部に接合されている。中実部102は、軸受装着部52及びホイール連結部53を構成する。すなわち、本実施形態において、摺動部51は、上述した第1実施形態と同様に中空円筒状に形成されている。一方、軸受装着部52及びホイール連結部53は、中実円柱状で一体に形成されている。
【0042】
軸受装着部52は、軸方向の両端部に位置する小径部(第1小径部110及び第2小径部111)と、各小径部110,111間に位置する大径部112と、を有している。
各小径部110,111の外径は、摺動部51の外径よりも大きくなっている。
【0043】
第1小径部110と大径部112との境界部分には、軸線Oに直交する第1境界面114が形成されている。
一方、第2小径部111と大径部112との境界部分には、軸線Oに直交する第2境界面115が形成されている。
【0044】
第1小径部110には、第1軸受61の内輪が外嵌されている(第1小径部110の外周面に嵌め込まれている)。第1軸受61の内輪は、第1境界面114に前方から突き当たっている。一方、第1軸受61の外輪は、上述した段差面25cに後方から突き当たっている。
第2小径部111には、第2軸受62の内輪が外嵌されている(第2小径部111の外周面に嵌め込まれている)。第2軸受62の内輪は、第2境界面115に後方から突き当たっている。一方、第2軸受62の外輪は、カシメ部67に前方から当接している。
【0045】
本実施形態においても、各後側軸受61,62間の距離D(大径部112の軸方向の長さ)は、40mm以下に設定されていることが好ましく、20mm以上40mm以下に設定されていることがより好ましい。
【0046】
なお、インナシャフト41のインナコラム22への組付方法は以下の通りである。
まず、第1小径部110に第1軸受61を圧入する。次に、インナコラム22内にインナシャフト41を後方から圧入する。インナシャフト41は、第1軸受61の外輪が段差面25cに突き当たるまで圧入する。これにより、第1軸受61がインナコラム22内に圧入される。
続いて、第2小径部111とインナコラム22の薄肉部25bとの間に、第2軸受62を後方から圧入する。その後、インナコラム22の後端部をカシメてカシメ部67を形成する。これにより、インナシャフト41がインナコラム22に回転可能に組み付けられる。
【0047】
この構成により、インナコラム22に対する後側軸受61,62の軸方向の位置ずれを抑制でき、インナシャフト41の抜け止めを行うことができる。
特に、インナコラム22に形成された段差面25cとカシメ部67によりステアリングシャフト12の抜け止めを行うことで、外輪の固定にストップリング等を別体で用いる必要がない。そのため、部品点数の削減を図ることができる。
【0048】
ホイール連結部53は、第2小径部111の後端縁から後方に向かうに従い漸次縮径した後、さらに後方に延設されている。ホイール連結部53の後端部には、ステアリングホイール2が連結される。
【0049】
本実施形態では、軸受装着部52を中実部102により形成する構成とした。
この構成によれば、軸受装着部52の剛性を向上させることができるので、より振動剛性を向上させることができる。
特に、本実施形態では、軸受装着部52及びホイール連結部53のみを中実部102により形成する。これにより、本実施形態では、インナシャフト41全体を中実に形成する場合に比べて中実部102を採用したことに伴う重量増加を可能な限り抑制できる。
【0050】
本実施形態では、軸受装着部52の外径が摺動部51の外径よりも大きい構成とした。
この構成によれば、インナシャフト41の剛性を向上させることができるので、振動剛性を向上させることができる。
しかも、本実施形態では、軸受装着部52のみを大径に形成する。これにより、本実施形態では、インナシャフト41全体を大径に形成する場合に比べて大径化に伴う重量増加を可能な限り抑制できる。
【0051】
なお、上述した第2実施形態では、軸受装着部52及びホイール連結部53を中実に形成した場合について説明したが、この構成のみに限られない。軸受装着部52及びホイール連結部53の少なくとも一方を中空に形成してもよい。
上述した第2実施形態では、インナシャフト41の剛性確保のために、中実化及び大径化する構成について説明したが、この構成のみに限らず、インナシャフト41の一部を肉厚に形成してもよい。
【0052】
ここで、本願発明者は、各後側軸受61,62間の距離Dと、振動剛性と、の関係をシミュレーションにより検討した。図4は、距離Dと振動剛性との関係を示すグラフである。なお、図4において、実線は左右方向の振動剛性を示し、破線は上下方向の振動剛性を示している。
図4に示すように、距離Dが増加するに従い、振動剛性が高くなっていることが分かる。しかし、距離Dが40mmよりも長い範囲での振動剛性の変化の割合は、距離Dが40mm以下の範囲での振動剛性の変化の割合に比べて小さくなっている。すなわち、距離Dが所定の範囲を超えると、その後距離Dを増加しても振動剛性の大幅な向上は見込めないことが分かる。
【0053】
そのため、本実施形態のように、インナシャフト41において、摺動部51よりも後方に位置する部分を軸受装着部52に設定したとしても、振動剛性を確保するために軸受装着部52の軸方向の長さを大幅に確保する必要がない。
搭載する車によって必要な振動剛性は異なるため、距離Dは適宜設定することが好ましい。本実施形態では、各後側軸受61,62間の距離Dを20mm以上40mm以下に設定する。これにより、第1軸受61と装着部材との干渉を抑制し、ストローク量を確保した上で、所望の振動剛性を得ることができる。距離Dは、25mm以上35mm以下に設定することがより好ましい。これにより、軸受装着部52の重量と、振動剛性のバランスが良くなり、重量を必要以上に増大せずに振動剛性を高くすることができる。ステアリングシャフト12は、アウタシャフト40及びインナシャフト41からなる構成に限られない。単一のステアリングシャフトからなる構成であっても、各後側軸受61,62間の距離Dを同様に設定することにより、所望の振動剛性を得ることができる。すなわち、ステアリングシャフトが後側軸受61,62及び前側軸受28を介して回転可能にステアリングコラムに支持された構成においても、後側軸受61,62を距離D離間させて配置することが好ましい。
【0054】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。図5は、第3実施形態に係るステアリング装置200の拡大断面図である。本実施形態では、後側軸受61,62のうち、少なくとも一方の軸受(本実施形態では第1軸受61)に樹脂ブッシュを用いる点で上述した実施形態と相違している。
図5に示すステアリング装置200において、インナシャフト41は、軸方向の全体に亘って中空円筒状に形成されている。インナシャフト41は、筒部201と、支持部202と、を有している。筒部201は、摺動部51を構成する。
【0055】
支持部202は、筒部201の後端部から後方に延設されている。支持部202は、軸受装着部52及びホイール連結部53を構成する。
【0056】
軸受装着部52は、軸方向の両端部に位置するテーパ部(第1テーパ部210及び第2テーパ部211)と、テーパ部210,211間に位置する大径部212と、を有している。
第1テーパ部210は、後方に向かうに従い漸次拡径されている。第1テーパ部210の前端部は、筒部201の後端部に連なっている。第1テーパ部210の後端部は、大径部212の前端部に連なっている。
第2テーパ部211は、前方に向かうに従い漸次拡径されている。第2テーパ部211の前端部は、大径部212の後端部に連なっている。
【0057】
大径部212の後端部には、前部(拡径部214)に比べて外径が縮径した縮径部215が形成されている。拡径部214における後端面(拡径部214と縮径部215との段差面)は、軸線Oに直交する第2境界面221を構成している。
【0058】
インナコラム22は、コラム大径部225、接続部226及びコラム小径部227を有している。コラム大径部225は、コラム小径部227の前方に位置している。接続部226は、コラム大径部225の後端部とコラム小径部227の前端部との間を接続している。
【0059】
コラム大径部225の外径は、アウタコラム21の内径よりも小さくなっている。コラム大径部225は、アウタコラム21の後方からアウタコラム21内に挿入されている。
【0060】
図5に示すように、本実施形態の第1軸受61は樹脂ブッシュである。第1軸受61は、軸線Oと同軸に配置された多段筒状に形成されている。具体的に、第1軸受61は、シャフト支持部231、接続筒232及びコラム支持部233を有している。
【0061】
シャフト支持部231は、コラム支持部233よりも小径に形成されている。シャフト支持部231は、大径部212(拡径部214)の前端部を取り囲んでいる。シャフト支持部231の内周面には、摺動支持部235が形成されている。摺動支持部235は、シャフト支持部231の内周面から径方向の内側に膨出している。摺動支持部235は、周方向に間隔をあけて複数配置されている。各摺動支持部235は、大径部212の外周面を摺動可能に支持している。したがって、シャフト支持部231は、摺動支持部235を介してインナシャフト41を回転可能に支持している。なお、シャフト支持部231は、インナシャフト41を直接支持していてもよい。
【0062】
接続筒232は、後方に向かうに従い漸次拡径している。接続筒232は、段差を介してシャフト支持部231及びコラム支持部233同士を接続してもよい。
【0063】
コラム支持部233の内径は、インナシャフト41の外径よりも大きくなっている。コラム支持部233の外径は、インナコラム22(コラム小径部227)の内径以下になっている。したがって、コラム支持部233の外周面は、インナコラム22(コラム小径部227)の内周面に近接又は当接している。コラム支持部233には、位置決め凸部240が形成されている。位置決め凸部240は、コラム支持部233から径方向の外側に膨出する半球状に形成されている。位置決め凸部240は、インナコラム22に形成された位置決め孔241に嵌め込まれている。これにより、インナコラム22に対する第1軸受61の軸線O回りの回転が規制されている。本実施形態において、位置決め凸部240は、周方向に間隔をあけて複数配置されている。
【0064】
第1軸受61には、前側スリット250及び後側スリット251が形成されている。各スリット250,251は、それぞれ軸方向に延在している。各スリット250,251は、周方向に交互(互い違い)に配置されている。
【0065】
前側スリット250は、シャフト支持部231の前端面で開放されるとともに、接続筒232を経てコラム支持部233の前部まで達している。
後側スリット251は、コラム支持部233の後端面で開放されるとともに、接続筒232を経てシャフト支持部231の後部まで達している。
【0066】
第1軸受61において、周方向で隣り合う前側スリット250間に位置する部分(主にシャフト支持部231及び接続筒232)は径方向に弾性変形可能に構成されている。
第1軸受61において、周方向で隣り合う後側スリット251間に位置する部分(主にコラム支持部233及び接続筒232)は、径方向に弾性変形可能に構成されている。
【0067】
第2軸受62の内輪は、インナシャフト41の縮径部215に圧入されている。第2軸受62の内輪は、第2境界面221に後方から当接している。
第2軸受62の外輪は、インナコラム22内に圧入されている。第2軸受62の外輪には、カシメ部67が後方から当接している。
【0068】
本実施形態においても、各後側軸受61,62間の距離D(各後側軸受230,62間の間隔)は、40mm以下に設定されていることが好ましい。
【0069】
本実施形態では、上述した実施形態と同様の作用効果を奏することに加え、第1軸受61に樹脂ブッシュを採用することで構成の簡素化を図ることができる。
【0070】
上述した実施形態では、第1軸受61に樹脂ブッシュを採用した場合について説明したが、この構成のみに限られない。樹脂ブッシュは、前側軸受28及び後側軸受(第1軸受61及び第2軸受62)の少なくとも何れかに採用する構成であってもよい。第2軸受62に樹脂ブッシュを用いる場合には、例えばシャフト支持部231が後方を向いた状態でインナシャフト41に組み付けられることが好ましい。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。
例えば、上述した実施形態では、軸線Oが前後方向に交差している構成について説明していたが、この構成のみに限られない。軸線Oは、車両3の前後方向に一致していてもよく、左右方向に傾いていてもよい。
【0072】
上述した実施形態では、アウタコラム21がアウタシャフト40を支持し、インナコラム22がアウタコラム21の後方でインナシャフト41を支持する構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、アウタコラム21がインナシャフト41を支持し、インナコラム22がアウタコラム21の後方でアウタシャフト40を支持する構成でもよい。
アウタコラム(後側コラム)21がインナコラム(前側コラム)22の後方に位置する構成であってもよい。この場合、アウタコラム21は、アウタシャフト40及びインナシャフト41の何れか一方(後側シャフト)を支持すればよい。インナコラム22は、アウタシャフト40及びインナシャフト41の何れか他方(前側シャフト)を支持すればよい。
【0073】
上述した実施形態では、車体後方に位置するインナコラム22の後部に後側軸受61,62が配置される構成について説明したが、車体後方にアウタコラム21が配置される場合には前側軸受を2つ配置する構成であってもよい。この場合においても、前側軸受間の距離は、40mm以下に設定されていることが好ましく、20mm以上40mm以下、更には、25mm以上35mm以下に設定されていることがより好ましい。これにより、ストローク量を確保した上で、所望の振動剛性を得ることができる。
【0074】
上述した実施形態では、アウタシャフト40にキーロックカラー45が外嵌されている構成について説明したが、この構成のみに限られない。例えば、ステアリング装置1は、キーロックカラー45を有さない構成でもよい。アウタシャフト40には、キーロックカラー45以外の装着部材が外嵌されていてもよい。
【0075】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…ステアリング装置
2…ステアリングホイール
21…アウタコラム(前側コラム、後側コラム)
22…インナコラム(後側コラム、前側コラム)
25c…段差面(第1ストッパ)
28…前側軸受
40…アウタシャフト(前側シャフト、後側シャフト)
41…インナシャフト(後側シャフト、前側シャフト)
45…キーロックカラー
51…摺動部(進入領域)
52…軸受装着部(非進入領域)
53…ホイール連結部(非進入領域)
61…第1軸受(後側軸受)
62…第2軸受(後側軸受)
67…カシメ部(第2ストッパ)
図1
図2
図3
図4
図5