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▶ フイルメニツヒ ソシエテ アノニムの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】マノオールの製造
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/61 20060101AFI20221018BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 9/88 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 9/90 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 15/60 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221018BHJP
   C12P 7/02 20060101ALI20221018BHJP
   C07C 33/05 20060101ALN20221018BHJP
   C07C 33/14 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
C12N15/61
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N9/88
C12N9/90
C12N15/60
C12N15/63 Z ZNA
C12P7/02
C07C33/05 C
C07C33/14
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019534152
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-05-21
(86)【国際出願番号】 EP2017083372
(87)【国際公開番号】W WO2018114839
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-17
(31)【優先権主張番号】16206349.9
(32)【優先日】2016-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390009287
【氏名又は名称】フイルメニツヒ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】Firmenich SA
【住所又は居所原語表記】7,Rue de la Bergere,1242 Satigny,Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル シャルク
(72)【発明者】
【氏名】ローラン ダヴィエ
(72)【発明者】
【氏名】レティツィア ロッチ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ソリス エスカランテ
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/113570(WO,A1)
【文献】特開平07-206655(JP,A)
【文献】特開昭63-162683(JP,A)
【文献】国際公開第2015/197075(WO,A1)
【文献】Accession No. BAH56559.1,Database GenBank [online],2009年04月11日,インターネット<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/226528029?sat=3&satkey=10868933>[検索日2021年10月06日]
【文献】Accession No. AIE77092.1,Database GenBank [online],2014年07月14日,インターネット<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/662858700?sat=18&satkey=15783621>[検索日2021年10月06日]
【文献】Accession No. AHL67261.1,Database GenBank [online],2014年03月16日,インターネット<https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/593023736?sat=4&satkey=109138237>[検索日2021年10月06日]
【文献】Anne Caniard et al.,Discovery and functional characterization of two diterpene synthases for sclareol biosynthesis in Salvia sclarea (L.) and their relevance for perfume manufacture,BMC Plant Biology,2012年,12:119,pp.1-13
【文献】TOYOMASU Tomonobu et al.,Cloning and Characterization of cDNAs Encoding ent-Copalyl Diphosphate Synthases in Wheat: Insight into the Evolution of Rice Phytoalexin Biosynthetic Genes,Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry,2009年,73(3),pp.772-775
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00 - 7/08
9/00 - 9/99
15/00 - 15/90
C12P 1/00 - 41/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(+)-マノオールの製造方法であって、
a)ゲラニルゲラニルジホスフェート(GGPP)とコパリルジホスフェート(CPP)シンターゼとを接触させて、コパリルジホスフェートを形成すること、ここで前記CPPシンターゼは、配列番号14又は配列番号15に対して、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものとする、かつ
b)前記CPPとスクラレオールシンターゼとを接触させて、(+)-マノオールを形成すること、ここで前記スクラレオールシンターゼは、配列番号4又は配列番号5に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸を含むものとする、
を含む、(+)-マノオールの製造方法。
【請求項2】
さらに、(+)-マノオールを単離することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップa)が、GGPPを製造できる非ヒト宿主生物又は細胞を培養し、配列番号14又は配列番号15に対して、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCPPシンターゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを発現するよう形質転換させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、前記ステップa)の前に、GGPPを製造することができる非ヒト宿主生物又は細胞を、
a)配列番号14又は配列番号15に対して、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつCPPシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸で形質転換させて、前記生物又は細胞が、該CPPシンターゼ活性を有するポリペプチドを発現すること、及び
b)配列番号4又は配列番号5に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸を含み、かつスクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸で形質転換させて、前記生物又は細胞が、該スクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドを発現すること
を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
さらに、化学合成又は生化学合成又は双方の組み合わせを使用して、(+)-マノオールを(+)-マノオール誘導体に加工することを含む、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記誘導体が、アルコール、アセタール、アルデヒド、酸、エーテル、ケトン、ラクトン、アセテート及び/又はエステルである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記誘導体が、コパロール、コパラル、マノオールオキシ、Z-11、ガンマ-アンブロール及びアンブロックスからなる群から選択される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
非ヒト宿主生物又は細胞を形質転換する方法であって、前記非ヒト宿主生物又は細胞を、コパリルジホスフェートシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸及びスクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸で形質転換することを含み、ここで、コパリルジホスフェートシンターゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号14又は配列番号15に対して、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつスクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号4又は配列番号5に対して、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、前記方法。
【請求項9】
前記非ヒト宿主生物又は細胞が、植物、原核生物、又は真菌である、請求項4又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記非ヒト宿主生物又は細胞が、E.コリ(E. coli)又はサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項4、8又は9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
発現ベクターであって、
a)配列番号14又は配列番号15に対して、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むCPPシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸、及び
b)配列番号4又は配列番号5に対して、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むスクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸
を含む発現ベクター。
【請求項12】
非ヒト宿主生物又は細胞であって、
a)請求項11に記載の発現ベクター、又は
b)コパリルジホスフェートシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸及びスクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸
を含み、
ここで前記コパリルジホスフェートシンターゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号14又は配列番号15に対して、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、前記スクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号4又は配列番号5に対して、少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、前記核酸の少なくとも1つが、非ヒト宿主生物又は細胞に対して異種性である、
前記非ヒト宿主生物又は細胞。
【請求項13】
植物、原核生物、真菌、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、又はサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)である、請求項12に記載の非ヒト宿主生物又は細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において、コパリルジホスフェートシンターゼ及びスクラレオールシンターゼを使用した(+)-マノオールの生化学的製造方法が提供される。
【0002】
背景技術
テルペンは、ほとんどの生物(微生物、動物及び植物)において見出される。これらの化合物は、5個の炭素単位、いわゆるイソプレン単位からなり、それらの構造において存在するこれらの単位の数により分類される。したがって、モノテルペン、セスキテルペン及びジテルペンは、それぞれ炭素原子10個、15個及び20個を含むテルペンである。例えば、セスキテルペンは、植物界において広く見いだせる。多くのセスキテルペン分子は、それらのフレーバー及びフレグランス特性、並びにそれらの化粧品効果、医薬品効果及び抗菌効果について公知である。多数のセスキテルペン炭化水素及びセスキテルペノイドが、同定されている。
【0003】
テルペンの生合成生成物は、酵素、いわゆるテルペンシンターゼを含む。これらの酵素は、非環式テルペン前駆体を1つ以上のテルペン生成物に変換する。特に、ジテルペンシンターゼは、前駆体ゲラニルゲラニルジホスフェート(GGPP)の環化によりジテルペンを製造する。GGPPの環化は、しばしば、2つの酵素ポリペプチドである、2つの連続した酵素反応において組み合わせて作用するI型及びII型のジテルペンシンターゼを必要とする。II型ジテルペンシンターゼは、環状ジテルペンジホスフェート中間体を生じるGGPPの末端二重結合のプロトン付加により開始されるGGPPの環化/転位を触媒作用する。そしてこの中間体を、イオン化により開始される環化を触媒作用するI型ジテルペンシンターゼによりさらに変換する。
【0004】
ジテルペンシンターゼは、植物及び他の生物に存在し、かつ基質、例えばGGPPを使用するが、それらは異なる生成物プロフィールを有する。ジテルペンシンターゼをコードする遺伝子及びcDNAは、クローンを生じ、かつ相応する組換え酵素を特徴付ける。
【0005】
コパリルジホスフェート(CPP)シンターゼ酵素及びスクラレオールシンターゼ酵素は、植物中で生じる酵素である。したがって、生化学的プロセスにおいてこれらの酵素及び多様体を発見し、かつそれらを使用して(+)-マノオールを生成することが望ましい。
【0006】
要約
本明細書において、
a)ゲラニルゲラニルジホスフェート(GGPP)とコパリルジホスフェート(CPP)シンターゼとを接触させて、コパリルジホスフェートを形成すること、ここでCPPシンターゼは、
i)配列番号14及び配列番号15からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
ii)配列番号17及び配列番号18からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも71%、72%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
iii)配列番号20及び配列番号21からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含むものとする、かつ
b)CPPとスクラレオールシンターゼとを接触させて、(+)-マノオールを形成すること、かつ
c)任意に、(+)-マノオールを単離すること
を含む、(+)-マノオールの製造方法が提供される。
【0007】
本明細書において、さらに(+)-マノオールを(+)-マノオール誘導体に加工することをさらに含む前記方法が提供される。
【0008】
本明細書において、CPPシンターゼ活性を有するポリペプチドであって、
a)配列番号14及び配列番号15からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
b)配列番号17及び配列番号18からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも71%、72%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
c)配列番号20及び配列番号21からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、
を含む、ポリペプチドも提供される。
【0009】
さらに、スクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドであって、配列番号4、配列番号5、配列番号23、及び配列番号25からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドが提供される。
【0010】
本明細書において、前記ポリペプチドをコードする核酸も提供される。
【0011】
本明細書において、CPPシンターゼをコードする核酸であって、配列番号13、配列番号16、配列番号19、配列番号22、配列番号26、配列番号29、配列番号30、配列番号31、又は配列番号32に示される核酸配列に対して、少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸も提供される。
【0012】
さらに、本明細書において、スクラレオールシンターゼをコードする核酸であって、配列番号6、配列番号24、配列番号27、配列番号33、又は配列番号34に対して、少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む核酸が提供される。
【0013】
前記核酸を含む発現ベクター、前記核酸もしくは前記発現ベクターを含む非ヒト宿主生物又は細胞、GGPPを製造することができる非ヒト宿主生物又は細胞、非ヒト宿主生物又は細胞の形質転換方法、及び(+)-マノオールを製造するための非ヒト宿主生物又は細胞の培養方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ゲラニルゲラニルジホスフェート(GGPP)から(+)-マノオールへの酵素経路を示す図。
図2】ゲラニルゲラニルジホスフェート(GGPP)から(+)-マノオール及びスクラレオールへの酵素経路を示す図。
図3】GGPPのin vitro酵素変換のGCMS分析を示す図。A.組換えSmCPS酵素を使用。B.組換えScScS酵素を使用。C.単一アッセイにおけるSmCPS酵素とScScS酵素の組み合わせ。
図4】SmCPS、ScScS及びメバロン酸経路酵素を発現するエシェリキア・コリ(Escherichia coli)(大腸菌)細胞を使用して製造した(+)-マノオールのGCMS分析を示す図。A. E.コリ培地の抽出物の合計イオンクロマトグラム。B.(+)-マノオール標準の合計イオンクロマトグラム。C.クロマトグラムAにおける主なピーク(保持時間14.55分)の質量スペクトル。D.(+)-マノオール基準品の質量スペクトル。
図5】メバロン酸経路酵素、GGPPシンターゼ、ScSCS、並びに5つの異なるCPPシンターゼ:サルビア・ミルティオリザ(Salvia miltiorrhiza)(タンジン)からのSmCPS2、コレウス・フォルスコリ(Coleus forskohlii)からのCfCPS1、トリチクム・アエスチブム(Triticum aestivum)(パンコムギ)からのTaTps1、マルビウム・ヴルガレ(Marrubium vulgare)(ニガハッカ)からのMvCps3、ロスマリヌス・オフィキナリス(Rosmarinus officinalis)(ローズマリー)からのRoCPS1を発現するE.コリ細胞を使用して製造した(+)-マノオールのGCMS分析を示す図。
図6】メバロン酸経路酵素、GGPPシンターゼ、SmCPS2、及びI型ジテルペンシンターゼ:ニコチアナ・グルチノサ(Nicotiana glutinosa)からのNgSCS-del29又はサルビア・スクラレア(Salvia sclarea)(クラリセージ)からのSsScSを発現するE.コリ細胞を使用して製造した(+)-マノオールのGCMS分析を示す図。
図7】サッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)発現プラスミドを、6つのDNA断片:a)LEU2酵母マーカー、b)AmpR E.コリマーカー、c)酵母複製源、d)E.コリ複製源、e)CrtEと試験したスクラレオールシンターゼをコードする配列の1つとの同時発現のための断片、及びf)試験したコパリルジホスフェート(CPP)シンターゼをコードする配列の1つの発現のための断片と一緒に酵母の同時形質転換によりin vivoで構築した図。
図8】GGPPシンターゼ、ScSCS、並びに5つの異なるCPPシンターゼ:サルビア・ミルティオリザからのSmCPS2、コレウス・フォルスコリからのCfCPS1、トリチクム・アエスチブムからのTaTps1、マルビウム・ヴルガレからのMvCps3及びロスマリヌス・オフィキナリスからのRoCPS1の短縮型を発現する改質したS.セレビジエ株YST045を使用して製造した(+)-マノオールのGCMS分析を示す図。
【0015】
発明の詳細な説明
定義
明細書及び付属の特許請求の範囲について、「又は」の使用は、特に明記されない限り「及び/又は」を意味する。
【0016】
同様に、「含有する(comprise)」、「含有する(comprises)」、「含有している(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」及び「含んでいる(including)」は、置き換えることができ、かつ制限することを意図しない。
【0017】
さらに、種々の実施形態の記載が「含有している(comprising)」の用語を使用する場合に、当業者は、ある特定の例において、一実施形態が「実質的にからなる(consisting essentially of)」又は「からなる(consisting of)」の言語を使用して代わりに記載されてよいことを理解していることを、さらに理解すべきである。
【0018】
以下の用語は、他に特定されない限りそれらに帰する意味を有する。
【0019】
「ポリペプチド」の用語は、連続して重合させたアミノ酸残基、例えば、少なくとも15残基、少なくとも30残基、少なくとも50残基のアミノ酸配列を意味する。本明細書において提供されるいくつかの実施形態において、ポリペプチドは、酵素、又はそれらの断片、又はそれらの多様体であるアミノ酸配列を含む。
【0020】
「単離された」ポリペプチドの用語は、その自然環境から、組換え法、生化学的方法及び合成法を含む当業者に公知の任意の方法又は方法の組み合わせによって取り出したアミノ酸配列を言う。
【0021】
「タンパク質」の用語は、天然に生じようと合成であろうと、アミノ酸が、共有ペプチド結合によって連結されており、かつオリゴペプチド、ペプチド、ポリペプチド及び完全長タンパク質を含む、任意の長さのアミノ酸配列を言う。
【0022】
「生物学的機能」、「機能」、「生物学的活性」又は「活性」の用語は、(+)-マノオールの形成に触媒作用を及ぼすCPPシンターゼ及びスクラレオールシンターゼ活性の能力を言う。
【0023】
「核酸配列」、「核酸」及び「ポリヌクレオチド」の用語は、互換的にヌクレオチドの配列を意味するために使用される。核酸配列は、一本鎖又は二本鎖のデオキシリボヌクレオチド、又は任意の長さのリボヌクレオチドであってよく、遺伝子のコード配列及び非コード配列、エキソン、イントロン、センス及びアンチセンスの相補的配列、ゲノムDNA、cDNA、miRNA、siRNA、mRNA、rRNA、tRNA、組換え核酸配列、単離された及び精製された天然に生じるDNA及び/又はRNA配列、合成DNA及びRNA配列、断片、プライマー及び核酸プローブ;並びにかかる配列の相補体を含む。当業者は、RNAの核酸配列が、種々のチミン(T)をウラシル(U)によって置き換えたDNAの配列と同一であることに気付いている。
【0024】
単離された核酸又は単離された核酸配列は、天然に生じる核酸又は核酸配列とは異なる環境にある核酸又は核酸配列を言う。本明細書において使用される核酸に適用される「天然に生じる」の用語は、天然に細胞中で見られる核酸を言う。例えば、生物において、例えば生物の細胞において存在し、天然に源から単離されてよく、研究室において人間によって意図的に改質されていない核酸配列が、天然に生じるものである。
【0025】
本明細書において使用される「精製された」、「実質的に精製された」、及び「単離された」の用語は、本発明の化合物が通常その天然の状態で会合している他の異なる化合物を有さない状態を言い、そのため、「精製された」、「実質的に精製された」、及び「単離された」対象物は、所与の試料の質量の少なくとも0.5質量%、1質量%、5質量%、10質量%もしくは20質量%、又は少なくとも50質量%もしくは75質量%を含む。特定の一実施形態において、これらの用語は、所与の試料の質量の少なくとも95質量%、96質量%、97質量%、98質量%、99質量%又は100質量%を含む本発明の化合物を言う。本明細書において使用されるように、核酸又はタンパク質に関する場合に、「精製された」、「実質的に精製された」、及び「単離された」核酸又はタンパク質の用語は、細胞又は生物中で天然に生じるものとは異なる精製又は濃縮された状態も言う。(1)他の関連する構造もしくは化合物からの精製又は(2)細胞又は生物中で通常会合しないものに対する構造又は化合物との会合、を含む、細胞又は生物中で天然に生じるものよりも高い精製又は濃縮の任意の程度は、「単離された」の意味の範囲内である。本明細書において記載された核酸もしくはタンパク質又は核酸もしくはタンパク質の種類は、当業者に公知の種々の方法及びプロセスに従って単離されてよく又はそうでなければ通常天然に会合していないものに対する構造又は化合物と会合されてよい。
【0026】
本明細書において使用されるように、「増幅している」及び「増幅」の用語は、以下に詳細に記載されるように、天然に発現された核酸の組換えを生じる又は検出するための任意の適した増幅法の使用を言う。例えば、本発明は、in vivo、ex vivo又はin vitroで天然に発現されたもの(例えばゲノムDNA又はmRNA)又は本発明の組換え(例えばcDNA)核酸を(例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって)増幅するための方法及び試薬(例えば、特異的縮重オリゴヌクレオチドプライマー対、オリゴdTプライマー)を提供する。
【0027】
「組換え核酸配列」は、天然に生じない、そうでなければ生物学的生物において見られない核酸配列を生じる、1種以上の源からの遺伝物質と一緒にもたらすための実験的方法(分子クローニング)の使用から生じる核酸配列である。
【0028】
「組換えDNA技術」は、例えば、Weigel及びGlazebrookによって編集されたLaboratory Manuals(2002 Cold Spring Harbor Lab Press)、並びにSambrookら(1989 Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press)において記載されているような組換え核酸配列を生成するための分子生物学的方法を言う。
【0029】
「遺伝子」の用語は、適した調節領域、例えばプロモーターに操作可能に連結された、RNA分子、例えば細胞中のmRNAに転写された領域を含むDNA配列を意味する。したがって、遺伝子は、いくつかの操作可能に連結された配列、例えばプロモーター、例えば翻訳開始において含まれる配列を含む5’リーダー配列、cDNA又はゲノムDNAのコード領域、イントロン、エキソン、及び/又は例えば転写終結点を含む3’非翻訳配列を含む。
【0030】
「キメラ遺伝子」は、通常、種において天然に見られないあらゆる遺伝子、特に、天然に互いに関連しない核酸配列の1つ以上の部位が存在する遺伝子を言う。例えば、プロモーターは、転写領域の一部もしくは全てと又は他の調節領域と天然に関連しない。「キメラ遺伝子」の用語は、プロモーター又は転写制御配列が、1つ以上のコード配列に、もしくは1つのアンチセンス、すなわちセンス鎖の逆相補鎖に操作可能に連結され、又は繰り返し配列を逆転させる(センス及びアンチセンス、それによりRNA転写が転写に対して二本鎖RNAを形成する)、発現構築物を含むと解される。「キメラ遺伝子」という用語は、新たな遺伝子を製造するために1つ以上のコード配列の一部の組合せによって得られる遺伝子も含む。
【0031】
「3’UTR」又は「3’非翻訳配列」(「3’非翻訳領域」又は「3’末端」とも言われる)は、例えば転写終結点及び(ほとんど、しかし全てではないが真核mRNAの)ポリアデニル化シグナル、例えばAAUAAA又はそれらの多様体を含む、遺伝子のコード配列の下流に見られる核酸配列を言う。転写の終結後に、mRNA転写は、ポリアデニル化シグナルの下流で開裂してよく、かつ翻訳の場所、例えば細胞質へのmRNAの輸送中に含まれるポリ(A)末端が付加されてよい。
【0032】
「遺伝子の発現」は、タンパク質中への遺伝子の転写及びmRNAの翻訳を含む。過剰発現は、同一の遺伝的背景の非形質転換細胞又は非形質転換生物における生成のレベルを超える、トランスジェニック細胞又はトランスジェニック生物におけるmRNA、ポリペプチド及び/又は酵素活性のレベルによって測定される遺伝子生成物の生成を言う。
【0033】
本明細書において使用される「発現ベクター」は、宿主細胞中へ異物又は外因性のDNAを導入するための分子生物学的方法及び組換えDNA技術を使用して設計された核酸分子を意味する。発現ベクターは、典型的に、ヌクレオチド配列の適正な転写のために要求される配列を含む。コード領域は、通常、関心のあるタンパク質についてコードするが、RNA、例えばアンチセンスRNA、siRNA等についてもコードしてよい。
【0034】
本明細書において使用される「発現ベクター」は、ウィルスベクター、バクテリオファージ及びプラスミドを含む、あらゆる線状又は環状の組み換えベクターを含むが、これらに制限されない。当業者は、発現系に従って適したベクターを選択することができる。一実施形態において、発現ベクターは、転写、翻訳、開始及び終結を調節する少なくとも1つの制御配列、例えば転写プロモーター、オペレーター又はエンハンサー、又はmRNAリボソーム結合部位に操作可能に連結され、及び任意に、少なくとも1つの選択マーカーを含む、本明細書における一実施形態の核酸を含む。ヌクレオチド配列は、制御配列が、本明細書における一実施形態の核酸に機能的に関連する場合に、「操作可能に連結」される。「制御配列」は、本明細書の一実施形態の核酸配列の発現レベルを決定し、かつ制御配列に操作可能に連結される核酸配列の転写の割合を制御することができる核酸配列をいう。制御配列は、プロモーター、エンハンサー、転写因子、プロモーターエレメント等を含む。
【0035】
「プロモーター」は、RNAポリメラーゼのための結合部位、及びこれらに制限されないが転写因子結合部位、リプレッサー及び活性化タンパク質結合部位を含む適正な転写のために要求される他の因子を提供することにより、コード配列の発現を制御する核酸配列をいう。プロモーターの用語の意味は、「プロモーター制御配列」の用語も含む。プロモーター制御配列は、転写、RNAプロセシング又は関連してコードする核酸配列の安定性に影響しうる上流及び下流のエレメントを含みうる。プロモーターは、天然由来の配列及び合成の配列を含む。コード核酸配列は、通常、転写開始部位で出発する転写の方向に関連してプロモーターの下流に配置される。
【0036】
「構成的プロモーター」の用語は、操作可能に連結される核酸配列の連続的な転写を可能にする非制御プロモーターをいう。
【0037】
本明細書において使用されるように、「操作可能に連結」の用語は、機能的関連にあるポリヌクレオチドエレメントの連結をいう。核酸は、それが他の核酸配列と機能的関係に置かれる場合に「操作可能に連結」される。例えば、プロモーター、むしろ転写制御配列は、コード配列の転写に影響する場合に、コード配列に操作可能に連結される。操作可能に連結は、連結されているDNA配列が典型的に隣接することを意味する。プロモーター配列に関連付けられたヌクレオチド配列は、形質転換されるべき細胞又は生物、例えば宿主細胞、植物細胞、植物もしくは微生物に関して相同性又は異種性の起源のものであってよい。前記配列は、全体的に又は部分的に合成されているものでもよい。起源に関わらず、プロモーター配列に関連する核酸配列は、連結されるプロモーター特性に従って発現されるか又は発現抑制される。関連する核酸は、全ての時間で又は代わりに特定の時間で生物を通じて、又は特異的な組織、細胞もしくは細胞コンパートメント中で、発現又は抑制されるべきであることが所望されるタンパク質をコードしてよい。かかるヌクレオチド配列は、特に、それらで改変された又は形質転換された宿主細胞又は生物に対して所望の表現型の特徴を付与するタンパク質をコードする。より詳述すれば、関連するヌクレオチド配列は、宿主細胞又は生物中で(+)-マノオールシンターゼの製造をもたらす。
【0038】
「標的ペプチド」は、タンパク質、又は細胞内オルガネラ、すなわちミトコンドリア、もしくは色素体に対するポリペプチド、又は細胞外空間に対するポリペプチド(分泌シグナルペプチド)を標的とするアミノ酸配列をいう。標的ペプチドをコードする核酸配列は、タンパク質又はポリペプチドのアミノ末端、例えばN-末端をコードする核酸配列に融合されてよく、又は天然の標的ポリペプチドを置き換えるために使用されてよい。
【0039】
「プライマー」の用語は、鋳型の核酸配列にハイブリダイズされ、かつ鋳型に対して相補的な核酸配列の重合のために使用される、短い核酸配列をいう。
【0040】
本明細書において使用されるように、「宿主細胞」又は「形質転換細胞」の用語は、転写に対してCPPシンターゼタンパク質及び/又はスクラレオールシンターゼタンパク質をもたらす、又は(+)-マノオールを共に製造する、少なくとも1つの核酸分子、例えば所望のタンパク質又は核酸配列をコードする組換え遺伝子を保有するために改変された細胞(又は生物)をいう。
【0041】
宿主細胞は、特に細菌細胞、真菌細胞又は植物細胞である。宿主細胞は、宿主細胞の核ゲノム又はオルガネラゲノムに組込まれる組換え遺伝子を含んでよい。代わりに、宿主は、組換え遺伝子を染色体外で含んでよい。相同配列は、オルソガス配列又はパラロガス配列を含む。系統学的方法、配列類似性、及びハイブリダイゼーション法を含む、オルソガス又はパラロガスを同定する方法は、当業者に公知であり、本明細書において記載されている。
【0042】
パラログは、類似した配列及び類似した機能を有する2以上の遺伝子を生じる遺伝子重複から生じる。パラログは、典型的に、一緒にクラスター形成し、関連する植物種内で遺伝子の重複によって形成される。パラログは、ペアワイズのBlast解析を使用して類似の遺伝子の群で見出されるか、又はプログラム、例えばCLUSTALを使用した遺伝子ファミリーの系統発生解析中に見出される。パラログにおいて、コンセンサス配列は、関連する遺伝子内の配列及び遺伝子の類似の機能を有する配列に対して特徴的に同定されうる。
【0043】
オルソログ、又はオルソガス配列は、それらが共通祖先の子孫である種において見出されることから、互いに類似する配列である。例えば、共通祖先を有する植物種は、類似した配列及び機能を有する多くの酵素を含むことが公知である。当業者は、オルソガス配列を同定することができ、かつオルソログの機能を、例えばCLUSTAL又はBLASTプログラムを使用して1つの種の遺伝子ファミリーについてのポリジーン系図(polygenic tree)を構築することによって予測することができる。
【0044】
「選択可能なマーカー」の用語は、発現に対して、選択可能なマーカーを含む1つの細胞又は複数の細胞を選択するために使用されてよい任意の遺伝子をいう。選択可能なマーカーの例を以下に記載する。当業者は、種々の抗生物質、殺菌剤、栄養要求性又は除草剤の選択可能なマーカーが種々の標的種に適用可能であることを周知している。
【0045】
「生物」の用語は、任意の非ヒト多細胞生物又は単細胞生物、例えば植物、又は微生物をいう。特に、微生物は、細菌、酵母、藻類又は真菌である。
【0046】
「植物」の用語は、植物プロトプラスト、植物組織、再生植物を生じる植物細胞組織培養物、又は植物の一部、又は植物器官、例えば根、茎、葉、芽、花、葉柄、花弁、花粉、胚珠、胚、塊茎、果実、種子、それらの子孫等を含む植物細胞を含むために区別なく使用される。任意の植物は、本明細書における一実施形態の方法を実施するために使用されてよい。
【0047】
特定の実施形態
一実施形態において、本明細書において、宿主細胞又は非ヒト生物を、コパリルジホスフェートシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸で及びスクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸で形質転換することを含む、宿主細胞又は非ヒト生物の形質転換方法が提供され、ここで、コパリルジホスフェートシンターゼ活性を有するポリペプチドは、
a)配列番号14及び配列番号15からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
b)配列番号17及び配列番号18からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも71%、72%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
c)配列番号20及び配列番号21からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含む。
【0048】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号4、配列番号5、配列番号23、及び配列番号25からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0049】
一実施形態において、本明細書において、ゲラニルゲラニルジホスフェート(GGPP)を製造することができる非ヒト宿主生物又は細胞を培養し、そして形質転換させて、コパリルジホスフェートシンターゼ活性を有するポリペプチドを発現させ、かつさらに形質転換させてスクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドを発現させることを含む方法が提供され、ここで、コパリルジホスフェートシンターゼ活性を有するポリペプチドは、
a)配列番号14及び配列番号15からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
b)配列番号17及び配列番号18からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも71%、72%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
c)配列番号20及び配列番号21からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含む。
【0050】
特に、スクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号4、配列番号5、配列番号23、及び配列番号25からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0051】
さらに、本明細書において、CPPシンターゼをコードする核酸を含む発現ベクターが提供され、ここで、CPPシンターゼは、
a)配列番号14又は配列番号15に対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
b)配列番号17又は配列番号18に対して、少なくとも71%、72%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
c)配列番号20又は配列番号21に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含むポリペプチドを含み、さらに発現ベクターは、スクラレオールシンターゼ酵素をコードする核酸を含む。
【0052】
特に、スクラレオールシンターゼは、配列番号4、配列番号5、配列番号23、又は配列番号25に対して、少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、2つの酵素、すなわちCPPシンターゼ及びスクラレオールシンターゼは、同一の細胞中で形質転換される2つの異なるベクター又はプラスミド上にあってよい。さらなる実施形態において、これらの2つの酵素は、2つの異なる細胞中で形質転換された2つの異なるベクター又はプラスミド上にあってよい。
【0053】
さらに、本明細書において、CPPシンターゼをコードする少なくとも1つの核酸及びスクラレオール酵素をコードする少なくとも1つの核酸を含むか又は該核酸を保有させるために形質転換させた非ヒト宿主生物又は細胞が提供され、ここで、CPPシンターゼは、
a)配列番号14又は配列番号15に対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
b)配列番号17又は配列番号18に対して、少なくとも71%、72%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
c)配列番号20又は配列番号21に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含む。
【0054】
特に、スクラレオールシンターゼは、配列番号4、配列番号5、配列番号23、又は配列番号25に対して、少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0055】
さらに、本明細書において、CPPシンターゼをコードする少なくとも1つの核酸及びスクラレオール酵素をコードする少なくとも1つの核酸を含むか又は該核酸を保有させるために形質転換させた非ヒト宿主生物又は細胞が提供され、ここで、CPPシンターゼは、配列番号1及び配列番号2からなる群から選択されるポリペプチドに対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、スクラレオールシンターゼは、配列番号23及び配列番号25からなる群から選択されるポリペプチドに対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0056】
一実施形態において、本明細書において提供されるCPPシンターゼをコードする核酸は、配列番号3、配列番号13、配列番号16、配列番号19、配列番号22、配列番号26、配列番号29、配列番号30、配列番号31、又は配列番号32に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0057】
一実施形態において、本明細書において提供されるCPPシンターゼをコードする核酸は、配列番号3、配列番号13、配列番号16、配列番号19、配列番号22、配列番号26、配列番号29、配列番号30、配列番号31、又は配列番号32に対して少なくとも95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0058】
一実施形態において、本明細書において提供されるCPPシンターゼをコードする核酸は、配列番号3、配列番号13、配列番号16、配列番号19、配列番号22、配列番号26、配列番号29、配列番号30、配列番号31、又は配列番号32に対して少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0059】
一実施形態において、本明細書において提供されるCPPシンターゼをコードする核酸は、配列番号3、配列番号13、配列番号16、配列番号19、配列番号22、配列番号26、配列番号29、配列番号30、配列番号31、又は配列番号32に対して99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0060】
一実施形態において、本明細書において提供されるCPPシンターゼをコードする核酸は、配列番号3、配列番号13、配列番号16、配列番号19、配列番号22、配列番号26、配列番号29、配列番号30、配列番号31、又は配列番号32に示されるヌクレオチド配列を含む。
【0061】
一実施形態において、CPPシンターゼは、
a)配列番号14及び配列番号15からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
b)配列番号17及び配列番号18からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも71%、72%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
c)配列番号20及び配列番号21からなる群から選択されるポリペプチドに対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含むポリペプチドを含む。
【0062】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号14に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0063】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号14に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0064】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号14に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0065】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号14に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0066】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号14に対して少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0067】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号14に挙げたアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0068】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号15に対して少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0069】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号15に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0070】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号15に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0071】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号15に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0072】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号15に対して少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0073】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号15に挙げたアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0074】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号17に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0075】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号17に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0076】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号17に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0077】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号17に対して少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0078】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号17に挙げたアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0079】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号18に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0080】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号18に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0081】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号18に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0082】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号18に対して少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0083】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号18に挙げたアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0084】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号20に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0085】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号20に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0086】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号20に対して少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0087】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号20に挙げたアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0088】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号21に対して少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0089】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号21に対して少なくとも95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0090】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号21に対して少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0091】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号21に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0092】
一実施形態において、CPPシンターゼは、配列番号21に挙げたアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。
【0093】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼ酵素をコードする核酸は、配列番号6、配列番号24、配列番号27、配列番号33、又は配列番号34に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を含む。
【0094】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号4に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0095】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号4に対して少なくとも95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0096】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号4に対して少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0097】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号4に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0098】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号4に挙げたアミノ酸配列を含む。
【0099】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号5に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0100】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号5に対して少なくとも95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0101】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号5に対して少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0102】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号5に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0103】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号5に挙げたアミノ酸配列を含む。
【0104】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号23に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0105】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号23に対して少なくとも95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0106】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号23に対して少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0107】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号23に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0108】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号23に挙げたアミノ酸配列を含む。
【0109】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号25に対して少なくとも90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0110】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号25に対して少なくとも95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0111】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号25に対して少なくとも98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0112】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号25に対して少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0113】
一実施形態において、スクラレオールシンターゼは、配列番号25に挙げたアミノ酸配列を含む。
【0114】
他の実施形態において、本明細書において記載された少なくとも1つの核酸を含む発現ベクターが本明細書において提供される。
【0115】
他の実施形態において、本明細書において記載されたCPPシンターゼをコードする核酸及び本明細書において記載されたスクラレオールシンターゼをコードする核酸を含む1つ以上の発現ベクターを含む非ヒト宿主生物又は細胞が本明細書において提供される。
【0116】
他の実施形態において、本明細書に記載された少なくとも1つの核酸を含む非ヒト宿主生物又は細胞、又は本明細書に記載された少なくとも1つの核酸を保有するために形質転換させて、本明細書において記載された少なくとも1つのポリペプチドを異種発現又は過剰発現する非ヒト宿主生物又は細胞が本明細書において提供される。
【0117】
実施形態において、本発明は、形質転換されていない同様の細胞又は生物よりも高い量でポリペプチドを発現する、形質転換させた細胞又は生物を提供する。
【0118】
トランスジェニック宿主生物又は細胞、例えば植物、真菌、原生動物、又は高次真核細胞の培養物の製造について、当業者に公知のいくつかの方法がある。細菌、真菌、酵母、植物及び哺乳動物細胞の宿主との使用に適したクローニング及び発現ベクターは、例えば、Pouwelsら, Cloning Vectors: A Laboratory Manual, 1985, Elsevier, New York、及び Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd edition, 1989, Cold Spring Harbor Laboratory Pressにおいて記載されている。特に高次植物及び/又は植物細胞のためのクローニングベクター及び発現ベクターは、当業者に入手可能である。例えば、Schardlら、Gene, 1987, 61:1-11を参照されたい。
【0119】
宿主生物又は細胞を形質転換してトランスジェニック核酸を保有させるための方法は、当業者によく知られている。トランスジェニック植物の製造のために、例えば現在の方法は以下を含む:植物プロトプラストのエレクトロポレーション、リポソーム媒介形質転換、アグロバクテリウム媒介形質転換、ポリエチレングリコール媒介形質転換、微粒子銃、植物細胞のマイクロインジェクション、及びウィルスを使用する形質転換。
【0120】
一実施形態において、形質転換したDNAは、非ヒト宿主生物及び/又は細胞の染色体中に組み込まれて、安定な組換えシステムをもたらす。これらに制限されないが、レコンビナーゼ媒介カセット変換(RMCE)、ウィルス部位特異的染色体挿入、アデノウィルス及び前核注入を含む、当業者に公知のあらゆる染色体組込み方法が、本発明の実施において使用されうる。
【0121】
(+)-マノオールを製造するための方法を実施するための一実施形態において、本発明の任意の実施形態において記載されたCPPシンターゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチド及びスクラレオールシンターゼ活性を有する少なくとも1つのポリペプチドを作成するための方法が本明細書において提供される。
【0122】
一実施形態は、
a)本明細書において記載されたゲラニルゲラニルジホスフェート(GGPP)とコパリルジホスフェート(CPP)シンターゼとを接触させて、コパリルジホスフェートを形成すること、及び
b)本明細書において記載されたCPPとスクラレオールシンターゼとを接触させて、(+)-マノオールを形成すること
を含むマノオールの製造方法を提供し、ここで、ステップa)は、GGPPを製造することができる非ヒト宿主生物又は宿主細胞を培養し、本明細書において記載された1つ以上の核酸で又は本明細書において記載された1つ以上の発現ベクターで形質転換させて、非ヒト宿主生物又は宿主細胞に本明細書において記載されたCPPシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸及び本明細書において記載されたスクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする核酸を保有させ、そして該ポリペプチドを発現又は過剰発現させることを含む。
【0123】
一実施形態は、ステップa)の前に、GGPPを製造することができる非ヒト宿主生物又は宿主細胞を
a)CPPシンターゼ活性を有する、
i)配列番号14又は配列番号15に対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
ii)配列番号17又は配列番号18に対して、少なくとも71%、72%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列、又は
iii)配列番号20又は配列番号21に対して、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含むポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸で形質転換させて、前記生物又は細胞がCPPシンターゼ活性を有するポリペプチドを発現させ、かつ
b)本明細書において記載されたスクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸で形質転換させて、前記生物又は細胞がスクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドを発現させること
をさらに含む、マノオールを製造するための前記方法を提供する。
【0124】
一実施形態において、GGPPを製造できる非ヒト宿主生物又は宿主細胞は、
a)配列番号15を含むCPPシンターゼをコードする核酸と配列番号5を含むスクラレオールシンターゼをコードする核酸、又は
b)配列番号18を含むCPPシンターゼをコードする核酸と配列番号5を含むスクラレオールシンターゼをコードする核酸、又は
c)配列番号21を含むCPPシンターゼをコードする核酸と配列番号5を含むスクラレオールシンターゼをコードする核酸、又は
d)CPPシンターゼをコードする配列番号16を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号6を含む核酸、又は
e)CPPシンターゼをコードする配列番号19を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号6を含む核酸、又は
f)CPPシンターゼをコードする配列番号22を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号6を含む核酸、又は
g)CPPシンターゼをコードする配列番号26を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号27を含む核酸、又は
h)CPPシンターゼをコードする配列番号29を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号27を含む核酸、又は
i)CPPシンターゼをコードする配列番号30を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号27を含む核酸、又は
j)CPPシンターゼをコードする配列番号31を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号27を含む核酸、又は
k)CPPシンターゼをコードする配列番号32を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号27を含む核酸、又は
l)配列番号2を含むCPPシンターゼをコードする核酸と配列番号23を含むスクラレオールシンターゼをコードする核酸、又は
m)配列番号15を含むCPPシンターゼをコードする核酸と配列番号23を含むスクラレオールシンターゼをコードする核酸、又は
n)配列番号18を含むCPPシンターゼをコードする核酸と配列番号23を含むスクラレオールシンターゼをコードする核酸、又は
o)配列番号21を含むCPPシンターゼをコードする核酸と配列番号23を含むスクラレオールシンターゼをコードする核酸、又は
p)配列番号2を含むCPPシンターゼをコードする核酸と配列番号25を含むスクラレオールシンターゼをコードする核酸、又は
q)配列番号15を含むCPPシンターゼをコードする核酸と配列番号25を含むスクラレオールシンターゼをコードする核酸、又は
r)配列番号18を含むCPPシンターゼをコードする核酸と配列番号25を含むスクラレオールシンターゼをコードする核酸、又は
s)配列番号21を含むCPPシンターゼをコードする核酸と配列番号25を含むスクラレオールシンターゼをコードする核酸、又は
t)CPPシンターゼをコードする配列番号16を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号24を含む核酸、又は
u)CPPシンターゼをコードする配列番号19を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号24を含む核酸、又は
v)CPPシンターゼをコードする配列番号22を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号24を含む核酸、又は
w)CPPシンターゼをコードする配列番号26を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号33を含む核酸、又は
x)CPPシンターゼをコードする配列番号26を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号34を含む核酸、
y)CPPシンターゼをコードする配列番号29を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号33を含む核酸、又は
z)CPPシンターゼをコードする配列番号29を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号34を含む核酸、
aa)CPPシンターゼをコードする配列番号30を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号33を含む核酸、又は
bb)CPPシンターゼをコードする配列番号30を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号34を含む核酸、又は
cc)CPPシンターゼをコードする配列番号31を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号33を含む核酸、又は
dd)CPPシンターゼをコードする配列番号31を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号34を含む核酸、又は
ee)CPPシンターゼをコードする配列番号32を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号33を含む核酸、又は
ff)CPPシンターゼをコードする配列番号32を含む核酸とスクラレオールシンターゼをコードする配列番号34を含む核酸
を含み、ここで、核酸配列及び/シンターゼの組み合わせは、本明細書において記載されたように列挙された配列番号に対する多様体及び種々の割合の同一性も含む。
【0125】
一実施形態において、本明細書において提供される非ヒト宿主生物は、植物、原核生物又は真菌である。
【0126】
一実施形態において、本明細書において提供される非ヒト宿主は、微生物、特に細菌又は酵母である。
【0127】
一実施形態において、本明細書において提供される細菌はエシェリキア・コリ(Escherichia coli)であり、かつ酵母はサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0128】
一実施形態において、本明細書において提供される非ヒト生物はサッカロミセス・セレビジエである。
【0129】
一実施形態において、前記細胞は原核細胞である。
【0130】
他の実施形態において、前記細胞は細菌細胞である。
【0131】
一実施形態において、前記細胞は真核細胞である。
【0132】
一実施形態において、前記真核細胞は、酵母細胞又は植物細胞である。
【0133】
一実施形態において、マノオールは、例えばPaddonら、Nature, 2013, 496:528-532において記載されたように、発酵を介することを含む、本明細書において記載された形質転換された細菌又は酵母の培養によって製造されてよい。
【0134】
一実施形態において、(+)-マノオールを製造するためのプロセスは、少なくとも98.5%の純度で(+)-マノオールを製造する。
【0135】
他の実施形態において、本明細書において提供される方法は、さらに、当業者に通常公知の方法を使用して化学的合成もしくは生化学的合成又は双方の組み合わせを使用して(+)-マノオールを誘導体に加工することを含む。
【0136】
一実施形態において、(+)-マノオール誘導体は、炭化水素、アルコール、アセタール、アルデヒド、酸、エーテル、ケトン、ラクトン、アセテート及びエステルからなる群から選択される。
【0137】
本発明の任意の実施形態に従って、前記(+)-マノオール誘導体は、任意に1、2又は3個の酸素原子を含むC10~C25化合物である。
【0138】
さらなる実施形態において、前記誘導体は、マノオールアセテート((3R)-3-メチル-5-[(1S,4aS,8aS)-5,5,8a-トリメチル-2-メチレンデカヒドロ-1-ナフタレニル]-1-ペンテン-3-イルアセテート)、コパロール((2E)-3-メチル-5-[(1S,4aS,8aS)-5,5,8a-トリメチル-2-メチレンデカヒドロ-1-ナフタレニル]-2-ペンテン-1-オール)、コパロールアセテート((2E)-3-メチル-5-[(1S,4aS,8aS)-5,5,8a-トリメチル-2-メチレンデカヒドロ-1-ナフタレニル]-2-ペンテン-1-イルアセテート)、コパラル((2E)-3-メチル-5-[(1S,4aS,8aS)-5,5,8a-トリメチル-2-メチレンデカヒドロ-1-ナフタレニル]-2-ペンテナール)、(+)-マノオールオキシ(4-[(1S,4aS,8aS)-5,5,8a-トリメチル-2-メチレンドデカヒドロ-1-ナフタレニル]-2-ブタノン)、Z-11((3S,5aR,7aS,11aS,11bR)-3,8,8,11a-テトラメチルドデカヒドロ-3,5a-エポキシナフト[2,1-c]オキセピン)、ガンマ-アンブロール(ambrol)(2-[(1S,4aS,8aS)-5,5,8a-トリメチル-2-メチレンドデカヒドロ-1-ナフタレニル]エタノール)及びAmbrox(登録商標)(3aR,5aS,9aS,9bR)-3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン)からなる群から選択される。
【0139】
他の実施形態において、本明細書において提供される方法は、さらに、(+)-マノオールと適した反応系とを接触させて、該(+)-マノオールを適した(+)-マノオール誘導体に変換することを含む。前記適した反応系は、酵素的性質(例えば、1つ以上の酵素の要求)又は化学的性質(例えば、1つ以上の合成化学物質の要求)のものであってよい。
【0140】
例えば、(+)-マノオールは、例えば米国特許番号第7,294,492号(US Patent No. 7,294,492)において挙げられているように、文献において記載されたプロセスを使用してマノオールオキシ又はガンマ-アンブロールに酵素により変換されてよく、ここで該文献は、参照をもってその全体を本明細書に組み込まれたものとする。
【0141】
さらに他の実施形態において、(+)-マノオール誘導体は、コパロール、及びC1~C5カルボン酸とのそのエステルである。
【0142】
さらに他の実施形態において、(+)-マノオール誘導体は、C1~C5カルボン酸との(+)-マノオールエステルである。
【0143】
一実施形態において、(+)-マノオール誘導体は、コパラルである。
【0144】
一実施形態において、(+)-マノオール誘導体は、マノオールオキシである。
【0145】
さらに他の実施形態において、(+)-マノオール誘導体は、Z-11である。
【0146】
一実施形態において、(+)-マノオール誘導体は、アンブロール、又はそれらの混合物及びC1~C5カルボン酸とそのエステル、及び特にガンマ-アンブロール及びそのエステルである。
【0147】
さらなる実施形態において、(+)-マノオール誘導体は、Ambrox(登録商標)、スクラレオリド(sclareolide)(3a,6,6,9a-テトラメチルデカヒドロナフト[2,1-b]フラン-2(1H)-オン及びその全てのジアステレオマー及び立体異性体としても公知)、3,4a,7,7,10a-ペンタメチルドデカヒドロ-1H-ベンゾ[f]クロメン-3-オール又は3,4a,7,7,10a-ペンタメチル-4a,5,6,6a,7,8,9,10,10a,10b-デカヒドロ-1H-ベンゾ[f]クロメン及びその全てのジアステレオマー及び立体異性体の環状ケトン及び開環型、(1R,2R,4aS,8aS)-1-(2-ヒドロキシエチル)-2,5,5,8a-テトラメチルデカヒドロナフタレン-2-オール DOL、ガンマ-アンブロールである。
【0148】
どのようにして前記誘導体(例えば、トリエン炭化水素、アセテート又はコパロール)が得られるかについての特定の例を実施例において詳述する。
【0149】
例えば、本発明により得られるマノオールは、欧州特許第212254号(EP 212254)に従って、マノオールオキシ(ケトン、それ自体公知の方法)に、そしてアンブロール(アルコール)及びアンブロックス(エーテル)に加工されてよい。
【0150】
特定のセスキテルペンを触媒により合成するポリペプチドの能力は、本明細書において提供される実施例において詳述するように、酵素アッセイを実行することによって確認できる。
【0151】
ポリペプチドは、それらの(+)-マノオールシンターゼ活性及びそれらのスクラレオールシンターゼ活性を維持することが提供された短縮ポリペプチドを含むことも意味する。
【0152】
本明細書において以下で意図されるように、本明細書において記載された配列を改質することによって得られるヌクレオチド配列は、当業者に公知の任意の方法を使用して、例えば任意のタイプの変異、例えば欠失、挿入又は置換の変異を導入することによって実施されてよい。かかる方法の例は、多様体ポリペプチド及びそれらの製造方法に関する記載の一部に挙げられている。
【0153】
2つのペプチド配列又はヌクレオチド配列の同一性のパーセンテージは、2つの配列のアライメントが生じる場合に2つの配列において同一であるアミノ酸残基又はヌクレオチド残基の数の関数である。同一残基は、アライメントの与えられた位置で2つの配列において同一である残基と定義される。配列同一性のパーセンテージは、本明細書において使用されるように、2つの配列間の同一の残基の数を最も短い配列における残基の総数で割り、100をかけることによって最適なアライメントから算出される。最適なアライメントは、同一性のパーセンテージが最も高い可能性があるアライメントである。ギャップは、1つ又は双方の配列中に、最適なアライメントを得るためにアライメントの1つ以上の位置で導入されうる。これらのギャップは、同一でない残基として、配列同一性のパーセンテージの計算のために考慮に入れられる。アミノ酸又は核酸の配列同一性のパーセンテージを決定する目的のためのアライメントは、コンピュータプログラム及び例えばウェブ上で入手できる公的に入手可能なコンピュータプログラムを使用する種々の方法で得られてよい。好ましくは、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/bl2seq/wblast2.cgiで国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information(NCBI))から入手できるデフォルトパラメータに対するBLASTプログラム(Tatianaら, FEMS Microbiol Lett., 1999, 174:247-250)セットは、タンパク質又は核酸配列の最適なアライメントを得るため、及び配列同一性のパーセンテージを算出するために使用されてよい。
【0154】
インビトロでGGPPと接触されるべきポリペプチドは、標準のタンパク質又は酵素抽出技術を使用して、それを発現する任意の生物から抽出することによって得られてよい。宿主生物が培地中に本明細書における実施形態のポリペプチドを放出する単細胞生物又は細胞である場合に、ポリペプチドは、培地から、例えば遠心分離、任意に続いて洗浄ステップ及び適した緩衝溶液中での再懸濁によって簡単に採取されてよい。他の実施形態において、GGPPは、培地中でポリペプチドと接触されてよく、ポリペプチドは、宿主生物、単細胞生物、又は細胞から遊離されてよい。前記生物又は細胞が、その細胞内でポリペプチドを蓄積する場合に、ポリペプチドは、細胞の破壊又は溶解によって得られてよい。細胞溶解物からのポリペプチドのさらなる抽出に対して、又は必ずしもかかる抽出を行わずに細胞溶解物との接触を解して、GGPPをポリペプチドと接触させてよい。
【0155】
他の特定の実施形態に従って、任意の前記実施形態の方法を、in vivoで実施する。本明細書において提供されるこれらの実施形態は、予めポリペプチドを単離することなくin vivoで前記方法を実施することができるため、特に有利である。前記反応は、形質転換した生物又は細胞内で直接生じて、前記ポリペプチドを発現する。
【0156】
前記生物又は細胞は、ポリペプチドを「発現」することを意味するが、但し該生物又は細胞は、該ポリペプチドをコードする核酸を保有するために形質転換され、この核酸は、mRNAに転写され、そしてポリペプチドが、宿主生物又は細胞中で見出される。「発現」の用語は、「異種発現」及び「過剰発現」を含み、後者は、形質転換していない生物又は細胞中で測定されるものを超える、及びそれより多いmRNA、ポリペプチド及び/又は酵素活性のレベルをいう。非ヒト宿主生物又は細胞を形質転換するための適した方法のより詳細な記載は、かかる形質転換した非ヒト宿主生物又は細胞について記載された明細書の一部で以下に記載されている。
【0157】
特定の生物又は細胞は、本明細書において記載された核酸で形質転換する前に、又は前記核酸と一緒に、天然にGGPPを製造する場合に、又は天然にGGPPを製造しないがGGPPを製造するように形質転換される場合に、「GGPPを製造できる」ことを意味する。生物又は細胞を天然に生じるよりも高い量のGGPPを製造するために形質転換させた生物又は細胞は、「GGPPを製造することができる生物又は細胞」にも包含される。生物、例えば微生物を形質転換して、それらがGGPPを製造するためのいくつか方法は、例えば、Schalkら、J. Am. Chem. Soc., 2013, 134:18900-18903において公知である。
【0158】
in vivoで本明細書における実施形態の方法を実施するために適した非ヒト宿主生物は、任意の非ヒト多細胞又は単細胞生物であってよい。特定の実施形態において、in vivoで本明細書における一実施形態を実施するために使用される非ヒト宿主生物は、植物、原核生物又は真菌である。あらゆる植物、原核生物又は真菌を使用できる。特に有用な植物は、多量のテルペンを自然に製造するものである。より特定の実施形態において、in vivoで本明細書における実施形態の方法を実施するために使用される非ヒト宿主生物は、微生物である。あらゆる微生物を使用できるが、さらにより特定の実施形態に従って、該微生物は細菌又は酵母である。最も特に、細菌はE.コリであり、かつ前記酵母はサッカロミセス・セレビジエである。
【0159】
これらの生物のいくつかは、天然にGGPPを製造しないか、少量のみ製造する。本明細書における実施形態の方法を実施するために適切であるために、これらの生物は、前記前駆体を製造するために形質転換されるか、又は前記前駆体を大量に製造するために操作されうる。それらは、前記で説明されているように、前記実施形態のいずれかに従って記載された核酸での改質前、又は同時に、形質転換されてよい。
【0160】
一実施形態において、GGPPを製造できる非ヒト宿主生物又細胞は、本明細書において記載されたCPPシンターゼ又はそれらの多様体をコードする核酸及び本明細書において記載されたスクラレオールシンターゼ又はそれらの多様体をコードする核酸で形質転換され、その際、GGPPを製造できる非ヒト宿主生物又細胞は、操作されてGGPPシンターゼを過剰発現するか、又はGGPPシンターゼをコードする核酸で形質転換される。
【0161】
一実施形態において、非ヒト宿主生物又細胞は、GGPPシンターゼをコードする核酸、本明細書において記載されたCPPシンターゼ又はそれらの多様体をコードする核酸、及び本明細書において記載されたスクラレオールシンターゼ又はそれらの多様体をコードする核酸を含み、その際少なくとも1つの該核酸は、非ヒト宿主生物又細胞に対して異種性である。
【0162】
単離された高次真核細胞を、完全な生物の代わりに、in vivoで本明細書における実施形態の方法を実施するための宿主としても使用できる。適した真核細胞は、あらゆる非ヒト細胞であってよいが、しかし特に植物細胞又は真菌細胞である。
【0163】
他の実施形態に従って、本明細書に記載された任意の実施形態において使用されるCPPシンターゼ活性を有するポリペプチド又は本明細書に記載された核酸によりコードされるポリペプチドは、遺伝子操作によって得られた多様体であってよいが、但し該多様体は、そのCPPシンターゼ活性を維持している。
【0164】
他の実施形態に従って、本明細書に記載された任意の実施形態において使用されるスクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチド又は本明細書に記載された核酸によりコードされるポリペプチドは、遺伝子操作によって得られた多様体であってよいが、但し該多様体は、そのスクラレオールシンターゼ活性を維持しているか、又はマノオールシンターゼ活性を有している。
【0165】
本明細書において使用されるように、ポリペプチドは、本明細書において同定されるアミノ酸配列を含むポリペプチド又はペプチド断片、並びに短縮されたポリペプチド又は多様体ポリペプチドとして意図され、但し、それらは、CPPシンターゼ活性及びそれらのスクラレオールシンターゼ活性及び/又はマノオールシンターゼ活性を維持している。
【0166】
多様体ポリペプチドの例は、選択的mRNAスプライシング事象から又は本明細書において記載されたポリペプチドのタンパク質切断からもたらされる天然に生じるタンパク質である。タンパク質分解による変異は、例えば、本明細書における実施形態のポリペプチドからの1つ以上の末端アミノ酸のタンパク質分解性除去による、種々のタイプの宿主細胞における発現に対するN末端又はC末端での差異を含む。以下に記載されているように、本明細書における実施形態の核酸の天然又は人工の変異によって得られた核酸によってコードされたポリペプチドも、本明細書における実施形態により含まれる。
【0167】
アミノ末端及びカルボキシル末端で追加のペプチド配列の融合から得られるポリペプチド多様体も、本明細書における実施形態の方法で使用されうる。特に、かかる融合は、ポリペプチドの発現を高めることができ、タンパク質の精製において有用であり、又は所望の環境又は発現システムでポリペプチドの酵素活性を改良する。かかる追加のペプチド配列は、例えばシグナルペプチドであってよい。したがって、多様体ポリペプチド、例えば他のオリゴペプチド又はポリペプチドとの融合によって得られたもの、及び/又はシグナルペプチドに連結させたものを使用する方法が本明細書において含まれる。他の機能性タンパク質、例えばテルペン生合成経路からの他のタンパク質との融合から得られるポリペプチドは、有利には、本明細書における実施形態の方法においても使用されうる。
【0168】
多様体は、ポリペプチド骨格に共有結合又は非共有結合する改質基の付着により、本明細書における実施形態のポリペプチドとも異なる。
【0169】
多様体は、導入されたN結合した又はO結合したグリコシル化部位、及び/又はシステイン残基の付加によって本明細書に記載のポリペプチドとは異なるポリペプチドも含む。当業者は、どのようにアミノ酸配列を改質するか、及び生物学的活性を保持するかを認識している。
【0170】
したがって、一実施形態において、本発明は、前記実施形態のいずれかにおいて記載されたCPPシンターゼ活性又はスクラレオールシンターゼ活性又はマノオールシンターゼ活性を有する多様体ポリペプチドを製造するための方法を提供し、該方法は、
(a)前記実施形態のいずれかに従って核酸を選択するステップ、
(b)選択した核酸を改質して、少なくとも1つの変異体核酸を得るステップ、
(c)宿主細胞又は単細胞生物を変異体核酸配列で形質転換して、変異体核酸配列によってコードされたポリペプチドを発現するステップ、
(d)少なくとも1つの改質された性質についてポリペプチドをスクリーニングするステップ、及び
(e)任意に、ポリペプチドが所望の多様体CPPシンターゼ活性、スクラレオールシンターゼ活性、又はマノオールシンターゼ活性を有さない場合に、プロセスステップ(a)~(d)を、所望の多様体CPPシンターゼ活性、スクラレオールシンターゼ活性、又はマノオールシンターゼ活性を有するポリペプチドが得られるまで繰り返すステップ、
(f)任意に、所望の多様体CPPシンターゼ活性又はスクラレオールシンターゼ活性又はマノオールシンターゼ活性を有するポリペプチドが、ステップ(d)において同定された場合に、ステップ(c)において得られた対応する変異体核酸を単離するステップ
を含む。
【0171】
一実施形態に従って、CPPシンターゼ活性又はスクラレオールシンターゼ活性を有するポリペプチドと組み合わせた場合に製造された多様体ポリペプチドは、(+)-マノオールを製造することができる。
【0172】
ステップ(b)において、多数の変異体核酸配列を、例えばランダム変異、部位特異的変異、又はDNAシャッフリングによって製造してよい。遺伝子シャッフリングの詳細な手法は、Stemmer、DNA shuffling by random fragmentation and reassembly : in vitro recombination for molecular evolution(Proc Natl Acad Sci USA., 1994, 91(22): 10747-1075)において見いだせる。要するに、DNAシャッフリングは、組換えのために選択された少なくとも2つの核酸を含む、in vitroでの公知の配列のランダム組換えのプロセスを言う。例えば、変異は、野生型配列の断片にライゲーションできる制限酵素部位に置かれた変異体配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することによって特定の座で導入されてよい。ライゲーションに続いて、得られた再構築された配列は、所望のアミノ酸の挿入、置換又は欠失を有する類似体をコードする。代わりに、オリゴヌクレオチド指定部位特異的変異法を実施して、予め決定したコドンを置換、欠失又は挿入によって改変できる、改変した遺伝子を提供してよい。
【0173】
例えば本発明の実施例において開示されているような標準法に従って宿主細胞を形質転換するために使用されうる変異体核酸が得られ、かつ分離されうる。
【0174】
ステップ(d)において、ステップ(c)において得られたポリペプチドを、少なくとも1つの改質された性質、例えば所望の改質された酵素活性についてスクリーニングする。発現させたポリペプチドをスクリーニングしてよい所望の酵素活性の例は、KM値又はVmax値により測定される高められた又は低減された酵素活性、改質された位置化学又は立体化学、及び改変された基質利用率又は生成物分布を含む。酵素活性のスクリーニングを、当業者によく知られている方法及び本発明の実施例において開示されている方法に従って実施してよい。
【0175】
ステップ(e)は、プロセスステップ(a)~(d)の繰り返しを提供し、好ましくは並行して実施してよい。したがって、著しい数の変異体核酸を製造することによって、多くの宿主細胞を、高められた数のポリペプチドの続くスクリーニングを可能にする、同時の種々の変異体核酸で形質転換してよい。したがって、所望の多様体ポリペプチドを得る機会は、当業者の裁量で増加させてよい。
【0176】
本明細書に開示された配列において示されている遺伝子配列に加えて、DNA配列多型が所与の集団内に存在してよく、本明細書に開示されるポリペプチドのアミノ酸配列の変化をもたらしうることは、当業者に明白であろう。かかる遺伝的多型は、異なる集団からの細胞中に又は天然の対立遺伝子変異による集団内に存在しうる。対立遺伝子変異型は機能的等価物を含んでもよい。
【0177】
さらなる実施形態は、具体的に開示された核酸からかかる配列多型によって誘導された分子にも関する。これらの自然変異は、通常、本明細書に開示された遺伝子のヌクレオチド配列又はポリペプチドのアミノ酸配列において約1~5%の変動をもたらす。前記のように、本明細書における実施形態のポリペプチドをコードする核酸は、前記方法がin vivoで実施される場合に使用されることが意図される非ヒト宿主生物又は細胞を改質するために有用な手段である。
【0178】
したがって、前記実施形態のいずれかに従ってポリペプチドをコードする核酸も、本明細書において提供される。
【0179】
本明細書における実施形態の核酸は、一本鎖形又は二本鎖形(DNA及び/又はRNA)でのデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマーを含むと定義されてよい。「ヌクレオチド配列」の用語は、別々の断片の形で、又はより大きい核酸の成分としてポリヌクレオチド分子又はオリゴヌクレオチド分子を含むとも解されるべきである。本明細書における実施形態の核酸は、実質的に内在性材料を汚染することを有さないものを含むある単離されたヌクレオチド配列も含む。本明細書における実施形態の核酸は短縮されていてよいが、但し前記のように本明細書において含まれるポリペプチドをコードする。
【0180】
一実施形態において、CPPシンターゼをコードする本明細書における実施形態の核酸は、植物、例えばサルビア・ミルティオリザ(Salvia miltiorrhiza)、又は他の種、例えばコレウス・フォルスコリ(Coleus forskohlii)、トリチクム・アエスチブム(Triticum aestivum)、マルビウム・ヴルガレ(Marrubium vulgare)又はロスマリヌス・オフィキナリス(Rosmarinus officinalis)において天然に存在するか、又は配列番号3、配列番号13、配列番号16、配列番号19、配列番号22、配列番号26、配列番号29、配列番号30、配列番号31、又は配列番号32を改質することによって得られてよい。
【0181】
さらなる実施形態において、スクラレオールシンターゼをコードする本明細書における実施形態の核酸は、植物、例えばサルビア・スクラレア(Salvia sclarea)、又は他の種、例えばニコチアナ・グルチノサ(Nicotiana glutinosa)において天然に存在するか、又は配列番号6、配列番号24、配列番号27、配列番号33又は配列番号34を改質することによって得られてよい。
【0182】
変異は、これらの核酸のあらゆる種類の変異、例えば点変異、欠失変異、挿入変異及び/又はフレームシフト変異であってよい。多様体核酸は、そのヌクレオチド配列を特定の発現系に適応するために製造されてよい。例えば、細菌発現系は、アミノ酸が特定のコドンによってコードされる場合に、ポリペプチドをより効率的に発現することが公知である。
【0183】
遺伝子コードの縮重によって、1つより多いコドンが、同一のアミノ酸配列をコードしてよく、多重核酸配列は、同一のタンパク質又はポリペプチドについてコードでき、その際、全てのこれらのDNA配列は、本明細書における実施形態に含まれる。適宜、CPPシンターゼ及びスクラレオールシンターゼをコードする核酸配列は、宿主細胞中で増加させた発現について最適化されてよい。例えば、本明細書における実施形態のヌクレオチドを、改良された発現のために特に宿主にコドンを使用して合成してよい。
【0184】
本明細書における実施形態の方法をin vivoで実施するために適した宿主生物又は細胞を形質転換するための他の重要な手段は、本明細書における実施形態のあらゆる実施形態に従った核酸を含む発現ベクターである。したがって、かかるベクターも、本明細書において提供される。
【0185】
本明細書における実施形態の少なくとも1つの核酸を保有するために形質転換させて、本明細書における実施形態の少なくとも1つのポリペプチドを異種発現又は過剰発現する組換えた非ヒト宿主生物及び細胞は、本明細書における実施形態の方法を実施するための非常に有用な手段でもある。したがって、かかる非ヒト宿主生物及び細胞も本明細書において提供される。
【0186】
前記実施形態のいずれかに従った核酸は、非ヒト宿主生物及び細胞を形質転換するために使用されてよく、かつ発現されたポリペプチドは、前記ポリペプチドのいずれかであってよい。
【0187】
本明細書における実施形態の非ヒト宿主生物は、任意の非ヒト多細胞又は単細胞生物であってよい。特定の実施形態において、非ヒト宿主生物は、植物、原核生物又は真菌である。あらゆる植物、原核生物又は真菌が、本明細書において提供される方法に従って形質転換されるために適している。特に有用な植物は、多量のテルペンを自然に製造するものである。
【0188】
より特定の実施形態において、非ヒト宿主生物は、微生物である。あらゆる微生物が本明細書における使用に適しているが、さらにより特定の実施形態に従って、該微生物は細菌又は酵母である。最も特に、前記細菌はE.コリであり、かつ前記酵母はサッカロミセス・セレビジエである。
【0189】
単離された高次真核細胞を、完全な生物の代わりに、形質転換させることもできる。高次真核細胞とは、ここで酵母細胞を除いたあらゆる非ヒト真核細胞を意味する。特定の高次真核細胞は、植物細胞又は真菌細胞である。
【0190】
本明細書において提供される実施形態は、cDNA、ゲノムDNA及びRNA配列を含むが、これらに制限されない。
【0191】
本明細書における実施形態のポリヌクレオチドを含む遺伝子は、利用できるヌクレオチド配列情報、例えば付属の配列表において見出される情報に基づいて、及び当業者に公知の方法により、クローン作製されてよい。これらは、例えば、センス方向で生じ、かつセンス鎖の合成を開始し、かつ他は逆相補的な方法で作製され、かつアンチセンス鎖を生じる、かかる遺伝子のフランキング配列を示すDNAプライマーの設計を含む。熱安定性のDNAポリメラーゼ、例えばポリメラーゼ連鎖反応において使用されるものは、かかる実験を実施するために一般に使用される。代わりに、遺伝子を表すDNA配列は、化学的に合成され、続いて、例えば適合性の細菌、例えばE.コリによって増殖されてよいDNAベクター分子中で導入されてよい。
【0192】
本明細書において、配列番号3、配列番号13、配列番号16、配列番号19、配列番号22、配列番号26、配列番号29、配列番号30、配列番号31、又は配列番号32、及び配列番号6、配列番号24、配列番号27、配列番号33、又は配列番号34の変異によって得られる核酸配列が提供され、かかる変異は、常に生じてよい。1つ以上のヌクレオチドの変異、欠失、挿入、及び/又は置換を、それらDNA配列に導入することができることは、当業者に明らかである。
【0193】
CPPシンターゼ及びスクラレオールシンターゼタンパク質をコードする本明細書における実施形態の核酸配列は、宿主細胞又は宿主生物中でCPPシンターゼ及びスクラレオールシンターゼを製造するために、発現ベクター中に挿入されてよく、及び/又は発現ベクター中で挿入されたキメラ遺伝子において含まれてよい。宿主細胞のゲノム中へ導入遺伝子を挿入するためのベクターは、当業者に周知であり、かつプラスミド、ウィルス、コスミド及び人工染色体を含む。キメラ遺伝子が挿入される二元の又は同時組み込み型のベクターも、宿主細胞を形質転換するために使用される。
【0194】
本明細書において提供される実施形態は、それぞれ別々に、CPPシンターゼ及びスクラレオールシンターゼをコードする核酸を含む組換え発現ベクターを提供し、関連する核酸配列、例えばプロモーター配列に操作可能に連結する。
【0195】
代わりに、プロモーター配列は、ベクター中で既に存在していてよく、その結果、転写されるべき核酸配列は、プロモーター配列の下流のベクター中に挿入される。ベクターは、典型的に、複製、マルチクローニング部位、及び選択可能なマーカーの起点を有するために操作される。
【0196】
実施例
実施例1
ジテルペンシンターゼ遺伝子
2つのジテルペンシンターゼ:II型及びI型ジテルペンシンターゼが、ゲラニルゲラニルジホスフェート(GGPP)をマノオールに変換するために必要である。次の実施例において、いくつかのII型及びI型ジテルペンシンターゼの組合せを選択し、そしてマノオールの製造について評価した。II型シンターゼについて、5つのコパリルジホスフェート(CPP)シンターゼを選択した:
- サルビア・ミルティオリザからのSmCPS、NCBIアクセッション番号ABV57835.1。
- コレウス・フォルスコリからのCfCPS1、NCBIアクセッション番号AHW04046.1。
- トリチクム・アエスチブムからのTaTps1、NCBIアクセッション番号BAH56559.1。
- マルビウム・ヴルガレからのMvCps3、NCBIアクセッション番号AIE77092.1。
- ロスマリヌス・オフィキナリスからのRoCPS1、NCBIアクセッション番号AHL67261.1。
【0197】
5つのCPPシンターゼをコードするcDNAのコドン使用頻度を、E.コリ中で最適な発現のために改質し(DNA 2.0、Menlo Park、CA 94025)、そしてNdeI及びKpnI制限酵素部位を、それぞれ5’-末端及び3’-末端で追加した。さらに、cDNAを、予測されるペプチドシグナル(それぞれ、SmCPS、CfCPS1、TaTps1、MvCps3及びRoCPS1について58アミノ酸、63アミノ酸、59アミノ酸、63アミノ酸及び67アミノ酸)の消失を有する組換えCPPシンターゼを発現するように設計した。
【0198】
I型ジテルペンシンターゼについては、サルビア・スクラレアからのスクラレオールシンターゼ(SsScS)を使用した(NCBIアクセッション番号AET21246.1、国際公開特許番号第2009095366号(WO2009095366))。cDNAのコドン使用頻度を、E.コリ発現について最適化し(DNA 2.0、Menlo Park、CA 94025)、50個の最初のN末端コドンを除去し、そしてNdeI及びKpnI制限酵素部位を、それぞれ5’-末端及び3’-末端で追加した。全てのcDNAを、in vitroで合成し、そしてpJ208プラスミド又はpJ401プラスミド(DNA 2.0、Menlo Park、CA 94025、USA)中でクローニングした。
【0199】
実施例2
発現プラスミド
改質したSmCPSをコードするcDNA(SmCPS2)及びスクラレオールシンターゼ(SsScS)をコードするcDNA(1132-2-5_opt)を、NdeI及びKpnIで消化し、そしてそれぞれpETDuet-SmCPS2発現プラスミド及びpETDuet-1132opt発現プラスミドを提供するpETDuet-1プラスミドにライゲートした。
【0200】
他のプラスミドを、ゲラニルゲラニルジホスフェート(GGPP)シンターゼと一緒にSmCPS2酵素及びSsScS酵素を同時発現させるように構築した。GGPPシンターゼについて、GGPPシンターゼ(NCBIアクセッション番号AAA24819.1)をコードするパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)からのCrtE遺伝子(NCBIアクセッション番号M38424.1)を使用した。CrtE遺伝子を、コドン最適化及び3’末端及び5’末端でのNcoI及びBamHI 制限酵素認識部位の追加により合成し(DNA 2.0、Menlo Park、CA 94025、USA)、そしてpETDuet-1プラスミドのNcoI部位とBamHI部位との間でライゲートして、pETDuet-CrtEプラスミドを得た。SmCPS2をコードするcDNAを、NdeI及びKpnIで消化し、そしてpETDuet-1-CrtEプラスミドにライゲートして、pETDuet-CrtE-SmCPS2構築物を提供した。そして短縮したSsScSをコードする最適化したcDNA(1132-2-5_opt)を、In-Fusion(登録商標)技術(Clontech、Takara Bio Europe)を使用して、pETDuet-CrtE-SmCPS2プラスミドに導入した。このクローニングのために、pETDuet-1132optを、フォワードプライマーSmCPS2-1132Inf_F1 5’-CTGTTTGAGCCGGTCGCCTAAGGTACCAGAAGGAGATAAATAATGGCGAAAATGAAGGAGAACTTTAAACG-3’(配列番号9)及びリバースプライマー1132-pET_Inf_R1 5’-GCAGCGGTTTCTTTACCAGACTCGAGGTCAGAACACGAAGCTCTTCATGTCCTCT-3’(配列番号10)を使用するPCR増幅における鋳型として使用した。PCR産物を、KpnI制限酵素及びXhoI制限酵素で消化したプラスミドpETDuet-CrtE-SmCPS2に、In-Fusion(登録商標) Dry-Down PCR Cloning Kit(Clontech, Takara Bio Europe)を使用してライゲートして、新たなプラスミドpETDuet-CrtE-SmCPS2-SsScSを提供した。このプラスミドにおいて、CrtE遺伝子は、pETDuetプラスミドの第1のT7プロモーターの制御下にあり、かつCPPシンターゼ及びスクラレオールシンターゼをコードするcDNAは、第2のT7プロモーターの制御下でバイシストロン性構築物中で組織化される。
【0201】
pETDuet-CrtE-SmCPS2-SsScSプラスミドを、4つの他のCPPシンターゼをコードする酵素を保有する新たな発現プラスミドの構築のための鋳型として使用した。SmCPS2 cDNAを、NdeI-KpnI制限酵素による消化-ライゲーションアプローチを使用して、4つの新たなCPPシンターゼをコードするcDNAの1つによって置き換えて、新たなプラスミドpETDuet-CrtE-CfCPS1del63-SsScS、pETDuet-CrtE-TaTps1del59-SsScS、pETDuet-CrtE-MvCps3del63-SsScS及びpETDuet-CrtE-RoCPS1del67-SsScSを提供した。
【0202】
実施例3
E.コリにおける異種発現及び酵素活性
発現プラスミド(pETDuet-SmCPS2又はpETDuet-1132opt)を使用して、Bl21(DE3)E.コリ細胞(Novagene、Madison、WI)を形質転換させた。形質転換させた細胞の単コロニーを使用して、LB培地25mlに植え付けた。37℃で5~6時間のインキュベート後に、培養物を20℃のインキュベーターに移し、そして平衡のために1時間置いた。そしてタンパク質の発現を、0.1mM IPTGを添加することにより誘発し、その培養物を20℃で一夜インキュベートした。翌日、その細胞を遠心分離により採取し、pH7で50mM MOPSO(3-モルホリノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム塩、3-(N-モルホリニル)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム塩)緩衝液、10%グリセロール、1mM DTTの0.1容量で再懸濁し、そして超音波破砕により分解した。抽出物を遠心分離(20000gで30分)により清浄し、そして可溶性タンパク質を含む上清を、他の実験のために使用した。
【0203】
実施例4
in vitroでのジテルペンシンターゼ活性アッセイ
20mMのMgCl2で補った50mM MOPSO(pH7、10%グリセロール)及び50~200μMの精製したゲラニルゲラニルジホスフェート(GGPP)(Keller及びThompson、J. Chromatogr, 1993, 645(1):161-167により記載されたように製造した)の最終容量1mL中でタンパク質抽出物50~100μlを使用してTeflon密閉ガラス管中で酵素アッセイを実施した。そのガラス管を5~48時間30℃でインキュベートし、その酵素生成物をペンタン1容量で2回抽出した。窒素流下での濃縮後に、抽出物をGC-MSにより分析し、そして対照タンパク質(空のプラスミドで形質転換した細胞から得られる)からの抽出物と比較した。GC-MS分析を、DB1カラム(30m×0.25mm×0.25mmの膜厚、Agilent)を備え、5975シリーズの質量分析器を連結したAgilent 6890シリーズGCシステムで実施した。キャリヤーガスは、1ml/分の一定流でのヘリウムであった。注入は、260℃での注射器温度設定でスプリットレスモードであり、そして炉の温度を、10℃/分で100℃~225℃、そして30℃/分で~280℃としてプログラムした。生成物の同定を、基準品の保持指数及び質量スペクトルとの一致に基づいて確認した。
【0204】
これらの条件下で及びプラスミドpETDuet-SmCPS2又はpETDuet-1132opt(それぞれSmCPS酵素又はScScS酵素を異種発現する)で形質転換させたE.コリ細胞からの組換えタンパク質と一緒に、ジテルペン分子の製造は、溶媒抽出物中で検出されなかった(ジホスフェート含有ジテルペンはこれらの条件下で検出されない)。そして同様のアッセイを実施したが、シングルアッセイにおいて組換えSmCPS及びSsScSを含む2つのタンパク質抽出物を組み合わせた。これらのアッセイにおいて、1つの主生成物が形成され、基準品との質量スペクトル及び保持指数の一致により(+)-マノオールと同定された(図3)。この実験は、スクラレオールシンターゼをCPPシンターゼと一緒に使用してマノオールを製造できたことを証明した。
【0205】
実施例5
E.コリ細胞を使用したin vivoでのマノオール製造
全細胞の培養物を使用してマノオールのin vivoでの製造を、E.コリ細胞を使用して評価した。実施例2において記載した同時発現プラスミドに挿入されたCrtE遺伝子は、ファルネシル-ジホスフェート(FPP)を使用するGGPPシンターゼ活性を有する酵素をコードし、ゲラニルゲラニルジホスフェート(GGPP)を製造する。内在性GGPPプールのレベル及びしたがって細胞のジテルペンにおける生産性を増加するために、FPPを導く異種性完全メバロン酸経路を、同一の細胞中で同時発現させた。この経路の酵素を、2つのプロモーターの制御下で2つのオペロン中で組織化させた全ての遺伝子を含む単一プラスミドを使用して発現させた。この発現プラスミドの構築は、特許文献国際公開特許番号第2013064411号(WO2013064411)又はSchalkら(J. Am. Chem. Soc., 2013, 134:18900-18903)において記載されている。簡単に説明すると、E.コリアセトアセチル-CoAチオラーゼ(atoB)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(黄色ブドウ球菌)HMG-CoAシンターゼ(mvaS)、スタフィロコッカス・アウレウスHMG-CoAレダクターゼ(mvaA)及びサッカロミセス・セレビジエFPPシンターゼ(ERG20)遺伝子からなる第一の合成オペロンを、in vitroで合成し(DNA2.0、Menlo Park、CA、USA)、そしてNcoI-BamHIで消化したpACYCDuet-1ベクター(Invitrogen)に連結して、pACYC-29258を得た。メバロン酸キナーゼ(MvaK1)、ホスホメバロン酸キナーゼ(MvaK2)、メバロン酸ジホスフェートデカルボキシラーゼ(MvaD)、及びイソペンテニルジホスフェートイソメラーゼ(idi)を含む第二のオペロンを、ストレプトコッカス・ニューモニア(Streptococcus pneumoniae)(肺炎連鎖球菌)のゲノムDNA(ATCC BAA-334)から増幅し、そしてpACYC-29258の第二のマルチクローニング部位にらいげーとして、プラスミドpACYC-29258-4506を提供した。したがって、このプラスミドは、アセチル補酵素AからFPPを導く生合成経路の全ての酵素をコードする遺伝子を含む。
【0206】
KRX E.コリ細胞(Promega)を、プラスミドpACYC-29258-4506と、pETDuet-CrtE-SmCPS2-SsSc、pETDuet-CrtE-CfCPS1del63-SsScS、pETDuet-CrtE-TaTps1del59-SsScS、pETDuet-CrtE-MvCps3del63-SsScS、又はpETDuet-CrtE-RoCPS1del67-SsScSから選択される1つのプラスミドと共に同時形質転換させた。形質転換させた細胞を、カルベニシリン(50μg/ml)及びクロラムフェニコール(34μg/ml)LBアガロースプレート上で選択した。単コロニーを使用して、同一の抗生物質で補足した5mLの液体LB培地に植え付けた。その培養物を37℃で一夜インキュベートした。翌日、同一の抗生物質で補った2mLのTB培地を一夜培養物の0.2mLに植えた。37℃で6時間インキュベートした後に、その培養物を28℃まで冷却させ、そして0.1mM IPTG、0.2%ラムノース及びデカン1:10容量をそれぞれの管に添加した。その培養物を48時間28℃でインキュベートした。そしてその培養物をMTBE(メチルtert-ブチルエーテル)2容量で2回抽出し、その有機相を500μLまで濃縮させ、そして炉温度を100℃で1分保持し、続いて220℃まで10℃/分及び3000℃まで20℃/分の温度勾配であったことを除いて実施例4において前記したGC-MSにより分析した。
【0207】
これらの培養条件下で、マノオールを、II型ジテルペンシンターゼ及びサルビア・スクラレアのスクラレオールシンターゼ(SsScS)のそれぞれの組み合わせで製造した(図4及び5)。製造されたジテルペン化合物の量を、内部標準(アルファ-ロンギピネン)を使用して定量した。以下の表は、ScScSを種々のII型ジテルペンシンターゼと組み合わせた場合にSmCPS/SsScSの組合せと比較した製造されたマノオールの量を示す(これらの実験条件下で、SmCPS及びSsScSを発現する細胞により製造されたマノオールの濃度は300~500mg/L(図4)であった)。これらの条件下で、製造されたマノオールの最も高い相対量は、TaTps1del59との組合せであった。
【表1】
【0208】
実施例6
組換え細胞を使用した(+)-マノオールの製造、精製及びNMR分析
E.コリ培養物1リットルを、SmCPS/SsScS酵素の組合せを使用して、デカン有機相を固相抽出のために50g/L Amberlite XAD-4に置き換えたことを除いて、実施例5に記載した条件下で製造した。培養液を濾過し、樹脂を回収した。そしてその樹脂を3カラム容量の水で洗浄し、そして3カラム容量のMTBEを使用して溶出した。そして生成物を、さらにヘプタン:MTBE 8:2(v/v)から構成される移動相を使用してシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。マノオールの構造を、Bruker Avance 500MHz質量分析計を使用して1H-NMR及び13C-NMRにより確認した。旋光度を、Perkin-Elmer 241旋光計を使用して測定し、[α]D 20=+26.9°(0.3%、CHCl3)の値で(+)-マノオールの製造を確認した。
【0209】
実施例7
ニコチアナ・グルチノサからのスクラレオールシンターゼを使用したE.コリ中でのin vivoでのマノオールの製造
ニコチアナ・グルチノサからのスクラレオールシンターゼは、国際公開特許番号第2014/022434号(WO 2014/022434)において記載されており、かつラブデンジオールジホスフェート(LPP)からスクラレオールを製造することが示されている。国際公開特許番号第2014/022434号において記載されている2つのスクラレオールシンターゼNgSCS-del29(国際公開特許番号第2014/022434号における配列番号78に対応する)及びNgSCS-del38(国際公開特許番号第2014/022434号における配列番号40に対応する)を、実施例5と同一の条件下で(+)-マノオールの製造について評価した。
【0210】
NgSCS-del29をコードするcDNAを、E.コリ発現について最適化したコドン使用頻度及びそれぞれ5’末端及び3’末端でKpnI部位及びXhoI部位を含むように設計した。このDNAを、DNA 2.0(Newark、CA 94560)により合成した。
【0211】
pETDuet-CrtE-SmCPS2-SsScSプラスミド(実施例2)を、新たな発現プラスミドの構築のための鋳型として使用した。pETDuet-CrtE-SmCPS2-SsScSプラスミドを、KpnI制限酵素部位及びXhoI制限酵素部位で消化して、SsScS cDNAをNgSCS-del29 cDNAに置き換えて、新たなpETDuet-CrtE-SmCPS2-del29プラスミドを提供した。
【0212】
KRX E.コリ細胞(Promega)を、プラスミドpACYC-29258-4506(実施例5)及びpETDuet-CrtE-SmCPS2-del29プラスミドと一緒に同時形質転換させた。形質転換させた細胞を選択し、そして実施例5において記載したジテルペンの製造のための条件下で培養した。ジテルペンの製造をGC-MS分析を使用して評価し、そして製造されたジテルペン化合物を内部標準(アルファ-ロンギピネン)を使用して定量した。ジテルペンシンターゼSmCPS2及びNgSCS-del29の新たな組合せで、マノオールを、形質転換したE.コリ細胞により製造した(図6)。ジテルペンシンターゼSmCPS2及びNgSCS-del38の組合せは、使用した実験条件下でマノオールを製造しなかった。したがって、試験したニコチアナ・グルチノサのスクラレオールシンターゼの少なくとも1つを使用しても、CPPからマノオールを製造できる。しかしながら、ニコチアナ・グルチノサシンターゼを使用して製造した量は、SsSCSシンターゼよりも非常に低かった(以下の表を参照されたい)。
【表2】
【0213】
実施例8
前記実施例において得られたマノオールを、次の実験に従ってそのエステルに変換した(そのアセテートへの実施例としては以下である):
【化1】
文献(G. Ohloff, Helv. Chim. Acta 41, 845 (1958))に従って、純結晶の(+)-マノオール32.0g(0.11モル)を、ジメチルアニリン100ml中で塩化アセチル20.0g(0.25モル)により、室温で5日間処理した。その混合物を、変換率100%に達するまで50℃で7時間さらに保持した。冷却後に、その反応混合物をエーテルで希釈し、連続して10%H2SO4、水性NaHCO3及び水で洗浄して中和した。乾燥(Na2SO4)及び濃縮後に、生成物を蒸留(バルブツーバルブ、沸点=160℃、0.1mbar)して、さらなる精製なしに使用したマノオールアセテート20.01g(79.4%)を得た。
MS: M+ 332 (0); m/e: 272 (27), 257 (83), 137 (62), 95 (90), 81 (100).
1H-NMR (CDCl3): 0.67, 0.80, 0.87, 1.54及び2.01 (それぞれ5s, 3H), 4.49 (s, 1H), 4.80 (s, 1H), 5.11 (m, 1H), 5.13 (m, 1H), 5.95 (m, 1H).
13C-NMR (CDCl3): 14.5 (q), 17.4 (t), 19.4 (t), 21.7 (q), 22.2 (q), 23.5 (q), 24.2 (t), 33.5 (s), 33.6 (t), 38.3 (t), 39.0 (t), 39.3 (t), 39.8 (s), 42.2 (t), 55.6 (d), 57.2 (t), 83.4 (s), 106.4 (t), 113.0 (t), 142.0 (d), 148.6 (s), 169.9 (s).。
【0214】
実施例9
前記実施例において得られたマノオールアセテートを、次の実験に従ってそのトリエンに変換した(そのスクラレン及び(Z+E)-ビホルメンへの実施例としては以下である):
【化2】
室温でシクロヘキサン4ml中でマノオールアセテート0.4gの溶液に、BF3.AcOH複合体0.029g(0.05等量)を添加した。室温で15分後に、その反応物を水性NaHCO3で急冷し、そして水で洗浄して中和した。GC-MS分析は、スクラレン、(Z)-ビホルメン及び(E)-ビホルメンとして同定された炭化水素のみを示した。コパロールアセテートは検出されなかった。
【0215】
より多い触媒(0.15等量)での他のトライアルは同一の結果を得た。
・ スクラレン:MS: M+ 272 (18); m/e: 257 (100), 149 (15), 105 (15).
・ (Z)-ビホルメン及び(E)-ビホルメン(同一のスペクトル):MS: M+ 272 (29); m/e: 257 (100), 187 (27), 161 (33), 105 (37)。
【0216】
実施例10
前記実施例において得られたマノオールを、次の実験に従ってそのコパリルエステルに変換した(アセテートへの実施例としては以下である):
【化3】
室温でシクロヘキサン100ml中でBF3.AcOH0.474g(0.826mmol、0.27等量)の溶液に、無水酢酸4.4g及び酢酸12.1gを添加した。室温で、シクロヘキサン15ml中で純結晶マノオール10.0g(33mmol)を添加し(わずかに発熱性)、その温度を、水浴を使用して室温で維持した。室温で30分撹拌した後に、GC対照は出発材料を示さなかった。反応混合物を水性飽和NaHCO3 300mlで急冷し、通常の処理をした。粗混合物(9.9g)を、フラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ペンタン/エーテル 95:5)及びバルブツーバルブ蒸留(Eb.=130°、0.1mbar)により精製し、(Z)-コパリルアセテートと(E)-コパリルアセテートの27/73混合物4.34g(37.1%)を得た。
・ (Z)-コパリルアセテート:
MS: M+ 332 (0); m/e: 317 (2), 272 (35)=, 257 (100), 137 (48),95 (68), 81 (70).
1H-NMR (CDCl3): 0.67, 0.80, 0.87 1.76及び2.04 (それぞれ5s, 3H), 4.86 (s, 1H), 5.35 (t: J = 6Hz, 1H).
・ (E)-コパリルアセテート:
MS: M+ 332 (0); m/e: 317 (2), 272 (33)=, 257 (100), 137 (54),95 (67), 81 (74).
1H-NMR (CDCl3): 0.68, 0.80,0.87 1.70及び2.06 (それぞれ5s, 3H), 4.82 (s, 1H), 5.31 (t: J = 6Hz, 1H).
13C-NMR (CDCl3) : ((Z/E)混合物に対して記録されたスペクトル、著しいシグナルのみが得られる): 61.4 (t), 106.2 (t), 117.9 (d), 143.1 (s), 148.6 (s), 171.1 (s).。
【0217】
実施例11
前記実施例において得られたコパリルアセテートを、次の実験に従ってコパロールに変換した:
【化4】
コパリルアセテート(4.17g、12.5mmol)、KOHペレット(3.35g、59.7mmol)、水(1.5g)及びEtOH(9.5ml)を一緒に混合し、そして3時間50℃で撹拌した。通常の後処理後に、粗(Z+E)-コパロール3.7gが得られ、そしてフラッシュクロマトグラフィー(SiO2、ペンタン/エーテル 7:2)により精製した。溶媒を蒸発した後に、バルブツーバルブ蒸留(Eb=170°、0.1mbar)により(Z)-コパロール及び(E)-コパロールの27/73混合物3.25g(92%)を得た。
・ (Z)-コパロール
MS: M+290 (3); m/e: 275 (18), 272 (27), 257 (82), 137 (71), 95 (93), 81 (100), 69 (70).
1H-NMR (CDCl3): 0.67, 0.80, 0.87及び1.74 (それぞれ4s, 3H); 4.06 (m, 2H), 4.55 (s, 1H), 4.86 (s, 1H), 5.42 (t: J = 6Hz, 1H).
・ (E)-コパロール
MS: M+290 (3); m/e: 275 (27), 272 (22), 257 (75), 137 (75), 95 (91), 81 (100), 69 (68).
1H-NMR (CDCl3): 0.68, 0.80, 0.87及び1.67 (それぞれ4s, 3H); 4.15 (m, 2H), 4.51 (s, 1H), 4.83 (s, 1H), 5.39 (t, J = 6Hz, 1H)
13C-NMR (CDCl3): ((Z/E)混合物に対して記録されたスペクトル、著しいシグナルのみが得られる): 59.4 (t), 106.2 (t), 123.0 (d), 140.6 (s), 148.6 (s).。
【0218】
実施例12
CPPシンターゼとスクラレオールシンターゼの異なる組み合わせを使用したサッカロミセス・セレビジエにおけるin vivoでのマノオールの製造
I型ジテルペンシンターゼとII型ジテルペンシンターゼの異なる組み合わせを、S.セレビジエ細胞中でのマノオールの製造について評価した。
【0219】
II型ジテルペンシンターゼについて、5つのCPPシンターゼを選択した:
- サルビア・ミルティオリザからのSmCPS、NCBIアクセッション番号ABV57835.1。
- コレウス・フォルスコリからのCfCPS1、NCBIアクセッション番号AHW04046.1。
- トリチクム・アエスチブムからのTaTps1、NCBIアクセッション番号BAH56559.1。
- マルビウム・ヴルガレからのMvCps3、NCBIアクセッション番号AIE77092.1。
- ロスマリヌス・オフィキナリスからのRoCPS1、NCBIアクセッション番号AHL67261.1。
【0220】
I型について、ニコチアナ・グルチノサから2つの推定スクラレオールシンターゼ及びサルビア・スクラレアから1つを選択した:
- NgSCS-del38(国際公開特許番号第2014/022434号の配列番号40に対応)。
- NgSCS-del29(国際公開特許番号第2014/022434号の配列番号78に対応)。
- サルビア・スクラレアからのSsScS、NCBIアクセッション番号AET21246.1。
【0221】
異なるCPPシンターゼをコードするDNAのコドン使用頻度を、S.セレビジエにおける最適な発現のために改良した。さらに、DNA配列を、予測されるペプチドシグナル(それぞれ、SmCPS、CfCPS1、TaTps1、MvCps3及びRoCPS1について58アミノ酸、63アミノ酸、59アミノ酸、63アミノ酸及び67アミノ酸)の消失を有する組換えCPPシンターゼを発現するように設計した。NgSCS-del38、NgSCS-del29及びSaSCSのDNA配列は、S.セレビジエ発現に最適化されたコドンでもあった。
【0222】
S.セレビジエ中での異なる遺伝子の発現のために、プラスミドのセットを、Kuijpersら(Microb Cell Fact., 2013, 12:47)において以前に記載された酵母の内在性相同組換えを使用してin vivoで構築した。それぞれのプラスミドを、S.セレビジエの同時形質転換のために使用した6つのDNA断片から構成する。断片は以下である:
a)プライマー5’-AGGTGCAGTTCGCGTGCAATTATAACGTCGTGGCAACTGTTATCAGTCGTACCGCGCCATTCGACTACGTCGTAAGGCC-3’(配列番号44)及び5’-TCGTGGTCAAGGCGTGCAATTCTCAACACGAGAGTGATTCTTCGGCGTTGTTGCTGACCATCGACGGTCGAGGAGAACTT-3’(配列番号45)を使用して、鋳型としてプラスミドpESC-LEU(Agilent Technologies、California、USA)と一緒にPCRにより構築させたLEU2酵母マーカー;
b)プライマー5’-TGGTCAGCAACAACGCCGAAGAATCACTCTCGTGTTGAGAATTGCACGCCTTGACCACGACACGTTAAGGGATTTTGGTCATGAG-3’(配列番号37)及び5’-AACGCGTACCCTAAGTACGGCACCACAGTGACTATGCAGTCCGCACTTTGCCAATGCCAAAAATGTGCGCGGAACCCCTA-3’(配列番号38)を使用して、鋳型としてプラスミドpESC-URAと一緒にPCRにより構築されたAmpR E.コリマーカー;
c)プライマー5’-TTGGCATTGGCAAAGTGCGGACTGCATAGTCACTGTGGTGCCGTACTTAGGGTACGCGTTCCTGAACGAAGCATCTGTGCTTCA-3’(配列番号39)及び5’-CCGAGATGCCAAAGGATAGGTGCTATGTTGATGACTACGACACAGAACTGCGGGTGACATAATGATAGCATTGAAGGATGAGACT-3’(配列番号40)を使用して鋳型としてpESC-URAと一緒にPCRにより得られた酵母複製起点;
d)プライマー5’-ATGTCACCCGCAGTTCTGTGTCGTAGTCATCAACATAGCACCTATCCTTTGGCATCTCGGTGAGCAAAAGGCCAGCAAAAGG-3’(配列番号41)及び5’-CTCAGATGTACGGTGATCGCCACCATGTGACGGAAGCTATCCTGACAGTGTAGCAAGTGCTGAGCGTCAGACCCCGTAGAA-3’(配列番号42)を使用して鋳型としてpESC-URAと一緒にPCRにより得られたE.コリ複製起点;
e)断片「d」の少なくとも60ヌクレオチド、酵母遺伝子PGK1の終止コドンの200ヌクレオチド下流、S.セレビジエにおいてその発現をコドン最適化したGGPPシンターゼをコードする配列CrtE(パントエア・アグロメランスから、NCBIアクセッション番号M38424.1)、GAL10/GAL1の双方向性酵母プロモーター、試験したスクラレオールシンターゼをコードする配列の1つ、酵母遺伝子CYC1の終止コドンの200ヌクレオチド下流、及び配列5’-ATTCCTAGTGACGGCCTTGGGAACTCGATACACGATGTTCAGTAGACCGCTCACACATGG-3’(配列番号43)により構成される断片、この断片をDNA合成(DNA 2.0, Menlo Park, CA 94025)により得た、並びに
f)断片「e」の少なくとも60ヌクレオチド、酵母遺伝子CYC1の終止コドンの200ヌクレオチド下流、試験したCPPシンターゼをコードする配列の1つ、GAL10/GAL1の双方向性酵母プロモーター、及び断片「a」の開始に対応する60ヌクレオチドにより構成された断片、この断片をDNA合成(DNA 2.0, Menlo Park, CA 94025)により得た。
【0223】
前記I型及びII型ジテルペンシンターゼの全ての可能な組み合わせを包含する、合計15個のプラスミドを構築した。以下の表は全てのプラスミドを示す。
【表3】
【0224】
S.セレビジエ細胞において内在性ファルネシルジホスフェート(FPP)プールのレベルを増加させるために、アセチル-CoA C-アセチルトランスフェラーゼをコードするERG10からFPPシンテターゼをコードするERG20までのメバロン酸経路に含まれる全ての酵母内在性遺伝子の余分なコピーを、Paddonら(Nature、2013、496:528-532)における記載と同様に、ガラクトース誘発性プロモーターの制御下でS.セレビジエ株CEN.PK2-1C(Euroscarf、Frankfurt、Germany)のゲノム中に組み込んだ。簡単に説明すると、3つのカセットを、それぞれLEU2、TRP1及びURA3の位置で組み込んだ。遺伝子ERG20及び双方向性プロモーターGAL10/GAL1の制御下でDonaldら(Proc Natl Acad Sci USA、1997、109:E111-8)において記載されたように切断したHMG1(tHMG1)及びプロモーターGAL10/GAL1の制御下で遺伝子ERG19及びERG13もを含む第1のカセット、該カセットは、LEU2の上流部位及び下流部位に対応する2つの100ヌクレオチド領域と隣接している。遺伝子IDI1及びtHMG1がプロモーターGAL10/GAL1の制御下にあり、遺伝子ERG13がGAL7のプロモーター領域の制御下にある第2のカセット、該カセットは、TRP1の上流部位及び下流部位に対応する2つの100ヌクレオチド領域と隣接している。全てGAL10/GAL1プロモーターの制御下にある遺伝子ERG10、ERG12、tHMG1及びERG8を有する第3のカセット、該カセットは、URA3の上流部位及び下流部位に対応する2つの100ヌクレオチド領域と隣接している。3つのカセットにおける全ての遺伝子は、それら自体のターミネーター領域の200ヌクレオチドを含んだ。また、Griggs及びJohnston(Proc Natl Acad Sci USA, 1991, 88:8597-8601)において記載されたようにそれ自体のプロモーターの変異型の制御下でGAL4の余分なコピーを、ERG9プロモーター領域の上流で組み込んだ。さらに、ERG9の内在性プロモーターを、株YST035を生じるCTR3の酵母プロモーター領域に置き換えた。最終的に、YST035を、株CEN.PK2-1D(Euroscarf、Frankfurt、Germany)で変異させて、YST045と名付けた二倍体株を得た。
【0225】
YST045を、in vivoでプラスミドアセンブリのために要求された前記断片で形質転換させた。酵母形質転換を、Gietz及びWoods(Methods Enzymol., 2002, 350:87-96)において記載された酢酸リチウムプロトコルにより実施した。形質転換混合物を、アミノ酸不含酵母ニトロゲンベース(BD Difco、New Jersey、USA)6.7g/L、ロイシン不含Dropout supplement(Sigma Aldrich、Missouri、USA)1.6g/L、グルコース20g/L及び寒天20g/Lを含むSmLeu培地に蒔いた。そのプレートを、30℃で3~4日間インキュベートした。単一細胞を使用して、Westfallら(Proc Natl Acad Sci USA, 2012, 109:E111-118)において記載された培養物中でマノオールを製造した。
【0226】
これらの培養条件下で、マノオールを、I型ジテルペンシンターゼ及びII型ジテルペンシンターゼのいくつかの組合せで製造した。マノオールの製造をGC-MS分析を使用して評価し、そして内部標準を使用して定量した。以下の表は、SmCPS/SsScSの組合せと比較した製造されたマノオールの量を示す(これらの実験条件下で、SmCPS及びSsScSを発現する細胞により製造されたマノオールの濃度は100~250mg/Lであり、製造されたマノオールの最も高い量であった)。
【0227】
【表4】
【0228】
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
【数21】
【数22】
【数23】
【数24】
【数25】
【数26】
【数27】
【数28】
【数29】
【数30】
【数31】
【数32】
【数33】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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