(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 51/44 20060101AFI20221018BHJP
H01L 51/46 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01L31/04 112Z
H01L31/04 164
H01L31/04 162
(21)【出願番号】P 2019543697
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2018034792
(87)【国際公開番号】W WO2019059270
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2017181608
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017188698
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】早川 明伸
(72)【発明者】
【氏名】榑林 哲也
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 尚洋
(72)【発明者】
【氏名】岡本 允子
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0079552(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0084399(US,A1)
【文献】国際公開第2017/121984(WO,A1)
【文献】特開2017-112185(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022687(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42-51/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極、光電変換層及び陽極をこの順に有する太陽電池であって、
前記光電変換層は、一般式R-M-X
3(Rは有機分子、Mは金属原子、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子である。)で表される有機無機ペロブスカイト化合物と、酸解離定数pKaが3以下の重合体とを含有
し、
前記酸解離定数pKaが3以下の重合体は、前記光電変換層中の含有量が0.1重量%以上30重量%以下であり、
下記一般式(X
H
)で表される、ハロゲン原子を含み、ヘテロ原子に電子吸引性基が結合した構造を有するハロゲン含有重合体であることを特徴とする太陽電池。
【化1】
一般式(X
H
)中、R
1
及びR
2
は、電子吸引性基を表し、R
H
は、ハロゲン原子を含む基を表す。R
1
及びR
2
は、同じであっても異なっていてもよい。
【請求項2】
酸解離定数pKaが3以下の重合体は、重量平均分子量が2000以上、100万以下であることを特徴とする請求項1記載の太陽電池。
【請求項3】
酸解離定数pKaが3以下の重合体は、下記一般式(X
F)で表される、フッ素原子を含み、ヘテロ原子に電子吸引性基が結合した構造の構成単位を有するフッ素含有重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽電池。
【化2】
一般式(X
F)中、R
1及びR
2は、電子吸引性基を表し、R
Fは、フッ素原子を含む基を表す。R
1及びR
2は、同じであっても異なっていてもよい。
【請求項4】
陽極側の表面において、以下の(A)~(C)の手順にて算出したα、βがα>0.6かつβ<0.2であることを特徴とする
請求項3記載の太陽電池。
(A)陽極側の表面においてn回(nは0を含む整数)のスパッタリングを行うとともに、各回のスパッタリング毎に飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて該表面におけるフッ素イオンの強度とトータルイオン強度の比(フッ素イオン強度/トータルイオン強度)F(n)と、ヨウ素イオンの強度とトータルイオン強度の比(ヨウ素イオン強度/トータルイオン強度)I(n)を測定する。
(B)前記(A)で得られたnとF(n)及びI(n)との関係をもとに、スパッタリング累積時間Nと、該スパッタリング累積時間Nにおけるフッ素イオンの強度とトータルイオン強度の比(フッ素イオン強度/トータルイオン強度)F(N)と、ヨウ素イオンの強度とトータルイオン強度の比(ヨウ素イオン強度/トータルイオン強度)I(N)を算出する。
(C)前記(B)で得られたスパッタリング累積時間N、F(N)、I(N)をもとに、スパッタリング累積時間Nを横軸に、各々の最大値を1として規格化したF(N)及びI(N)の値を縦軸にプロットしてグラフを作成し、I(N)が最大となるNをNmaxとし、N<Nmaxの領域におけるI(N)とF(N)の交点のうち、Nが最もNmaxに近い交点におけるI(N)、F(N)の値をα、N≧Nmaxの領域におけるI(N)とF(N)の交点のうち、Nが最もNmaxに近い交点におけるI(N)、F(N)の値をβとする。
【請求項5】
酸解離定数pKaが3以下の重合体は
、ポリスチレンスルホニル-トリフルオロメタンスルホンイミドであることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽電池。
【請求項6】
陽極と光電変換層との間にホール輸送層を有することを特徴とする
請求項1、2、3、4、又は5記載の太陽電池。
【請求項7】
ホール輸送層は、酸解離定数pKaが3以下の重合体を含有することを特徴とする
請求項6記載の太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有し、高い光電変換効率と耐熱性とを発揮することができる太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、対向する電極間にN型半導体層とP型半導体層とを配置した積層体(光電変換層)を備えた太陽電池が開発されている。このような太陽電池では、光励起により光キャリア(電子-ホール対)が生成し、電子がN型半導体を、ホールがP型半導体を移動することで、電界が生じる。
【0003】
現在、実用化されている太陽電池の多くは、シリコン等の無機半導体を用いて製造される無機太陽電池である。しかしながら、無機太陽電池は製造にコストがかかるうえ大型化が困難であり、利用範囲が限られてしまうことから、無機半導体の代わりに有機半導体を用いて製造される有機太陽電池や、有機半導体と無機半導体とを組み合わせた有機無機太陽電池が注目されている。
【0004】
なかでも、有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有するペロブスカイト太陽電池は、高い光電変換効率が期待できるうえに、印刷法によって製造できることから製造コストを大幅に削減することができる(例えば、特許文献1、非特許文献1)。
しかしながら、激しい競争のなかで、太陽電池にはより高い光電変換効率が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】M.M.Lee,et al,Science,2012,338,643
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有し、高い光電変換効率と耐熱性とを発揮することができる太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、陰極、光電変換層及び陽極をこの順に有する太陽電池であって、前記光電変換層は、一般式R-M-X3(Rは有機分子、Mは金属原子、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子である。)で表される有機無機ペロブスカイト化合物と、酸解離定数pKaが3以下の重合体とを含有する太陽電池である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の太陽電池は、有機無機ペロブスカイト化合物と酸解離定数pKaが3以下の重合体(以下、「酸性重合体」ともいう。)を含有する。上記有機無機ペロブスカイト化合物と酸性重合体を併用することにより、太陽電池の光電変換効率を向上させることができる。
この理由については明らかではないが、有機無機ペロブスカイト化合物を含有する光電変換層中に酸性重合体を配合することにより、光励起により生じた電子とホールが再接合することなく効率的に移動するようになることにより、太陽電池の光電変換効率が向上するのではないかと考えられる。
上記光電変換層が上記有機無機ペロブスカイト化合物を含む太陽電池は、有機無機ハイブリッド型太陽電池とも呼ばれる。
【0010】
上記有機無機ペロブスカイト化合物は、一般式R-M-X3(Rは有機分子、Mは金属原子、Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子である。)で表される。
上記Rは有機分子であり、ClNmHn(l、m、nはいずれも正の整数)で示されることが好ましい。
上記Rは、具体的には例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、ヘキシルメチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、ホルムアミジン、アセトアミジン、グアニジン、イミダゾール、アゾール、ピロール、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、アゾール、イミダゾリン、カルバゾール及びこれらのイオン(例えば、メチルアンモニウム(CH3NH3)等)やフェネチルアンモニウム等が挙げられる。なかでも、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ホルムアミジン、アセトアミジン及びこれらのイオンやフェネチルアンモニウムが好ましく、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ホルムアミジン及びこれらのイオンがより好ましい。
【0011】
上記Mは金属原子であり、例えば、鉛、スズ、亜鉛、チタン、アンチモン、ビスマス、ニッケル、鉄、コバルト、銀、銅、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、カルシウム、インジウム、アルミニウム、マンガン、クロム、モリブデン、ユーロピウム等が挙げられる。これらの金属原子は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0012】
上記Xはハロゲン原子又はカルコゲン原子であり、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、酸素、硫黄、セレン等が挙げられる。上記Xがハロゲン原子又はカルコゲン原子であることで、上記有機無機ペロブスカイト化合物の吸収波長が広がり、高い光電変換効率を達成することができる。これらのハロゲン原子又はカルコゲン原子は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、構造中にハロゲンを含有することで、上記有機無機ペロブスカイト化合物が有機溶媒に可溶になり、安価な印刷法等への適用が可能になることから、ハロゲン原子が好ましい。更に、上記有機無機ペロブスカイト化合物のエネルギーバンドギャップが狭くなることから、ヨウ素がより好ましい。
【0013】
上記有機無機ペロブスカイト化合物は、体心に金属原子M、各頂点に有機分子R、面心にハロゲン原子又はカルコゲン原子Xが配置された立方晶系の構造を有することが好ましい。
図1は、体心に金属原子M、各頂点に有機分子R、面心にハロゲン原子又はカルコゲン原子Xが配置された立方晶系の構造である、有機無機ペロブスカイト化合物の結晶構造の一例を示す模式図である。詳細は明らかではないが、上記構造を有することにより、結晶格子内の八面体の向きが容易に変わることができるため、上記有機無機ペロブスカイト化合物中の電子の移動度が高くなり、太陽電池の光電変換効率が向上すると推定される。
【0014】
上記有機無機ペロブスカイト化合物は、結晶性半導体であることが好ましい。結晶性半導体とは、X線散乱強度分布を測定し、散乱ピークが検出できる半導体を意味している。上記有機無機ペロブスカイト化合物が結晶性半導体であることにより、上記有機無機ペロブスカイト化合物中の電子の移動度が高くなり、太陽電池の光電変換効率が向上する。
【0015】
結晶化の指標として結晶化度を評価することもできる。結晶化度は、X線散乱強度分布測定により検出された結晶質由来の散乱ピークと非晶質部由来のハローとをフィッティングにより分離し、それぞれの強度積分を求めて、全体のうちの結晶部分の比を算出することにより求めることができる。
上記有機無機ペロブスカイト化合物の結晶化度の好ましい下限は30%である。結晶化度が30%以上であると、上記有機無機ペロブスカイト化合物中の電子の移動度が高くなり、太陽電池の光電変換効率が向上する。結晶化度のより好ましい下限は50%、更に好ましい下限は70%である。
上記有機無機ペロブスカイト化合物の結晶化度を上げる方法として、例えば、熱アニール、レーザー等の強度の強い光の照射、プラズマ照射等が挙げられる。
【0016】
上記酸性重合体は、酸解離定数pKaが3以下である。酸解離定数pKaが3以下である酸性重合体を、有機無機ペロブスカイト化合物を含有する光電変換層に配合することにより、得られる太陽電池は光電変換効率に優れたものとなる。上記酸性重合体の酸解離定数pKaは1以下であることが好ましく、-1以下であることがより好ましく、-2.8以下であることが更に好ましく、-5以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書において酸解離定数pKaとは、酸の強さを定量的に表すための指標であって、水素イオンが放出される解離反応の平衡定数pKaを負の常用対数として表したものである。pKaの値が小さいほど強い酸であることを示す。
pKaの下限値は特に限定されないが、例えば、pKaの下限値は-25が例示できる。
上記酸性重合体は、酸解離定数pKaが3以下であれば、イオンの形態であってもよく、塩の形態であってもよい。
【0017】
上記酸性重合体は、重合体である。重合体であることにより、得られる太陽電池は高い変換効率と耐熱性を両立することができる。これは、上記酸性重合体が重合体であることにより、光電変換層を形成する際に酸性重合体が偏析して、光電変換層のごく表面のみに酸性重合体が偏在するようになることから、光電変換層全体としての耐熱性を損ねることがないためと考えられる。
なお、本明細書において重合体とは、重合体を構成するモノマーの繰り返し単位数が2以上であるものを意味する。
【0018】
上記酸性重合体の重量平均分子量の好ましい下限は2000、好ましい上限は100万である。上記酸性重合体の重量平均分子量がこの範囲であることにより、より高い変換効率と耐熱性を両立することができる。上記酸性重合体の重量平均分子量のより好ましい下限は4000、より好ましい上限は50万であり、更に好ましい下限は5000、更に好ましい上限は10万である。
なお、本明細書において上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、HSPgel RT MB-M(ウォーターズコーポレーション社製)等が挙げられる。GPCで用いる溶媒としては、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0019】
上記酸性重合体としては、例えば、下記一般式(XH)で表される、ハロゲン原子を含み、ヘテロ原子に電子吸引性基が結合した構造を有するハロゲン含有重合体のなかから、酸解離定数pKaが3以下であるものを選択することができる。
【0020】
【0021】
一般式(XH)中、R1及びR2は、電子吸引性基を表し、RHは、ハロゲン原子を含む基を表す。R1及びR2は、同じであっても異なっていてもよい。
【0022】
上記一般式(XH)中、R1及びR2で表される電子吸引性基は特に限定されないが、スルホニル基、スルフィド基、スルフィニル基、チオエステル基、チオケトン基、エステル基、エーテル基、カルボニル基、アミド基、又は、ウレタン基が好ましい。これらの電子吸引性基は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルホニル基がより好ましい。
【0023】
上記一般式(XH)中、RHで表されるハロゲン原子を含む基は特に限定されず、上述したようなハロゲン原子を含んでいればよいが、フッ素原子を含む基が好ましい。フッ素原子を含有することにより、上記ハロゲン含有重合体がより容易に有機溶媒に溶解し易くなり、光電変換層の形成がより容易となる。
上記フッ素原子を含む基は特に限定されないが、一部又は全ての水素がフッ素で置換されたアルキル基又はアリール基が好ましい。
上記一般式(XH)中、RHで表されるハロゲン原子を含む基は、ハロゲン原子、或いは、一部又は全ての水素がハロゲン原子で置換されたアルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0024】
上記ハロゲン含有重合体としては、より具体的には例えば、下記一般式(1H)で表される構成単位を有する重合体等が挙げられる。
【0025】
【0026】
一般式(1H)中、RHは、ハロゲン原子、或いは、一部又は全ての水素がハロゲン原子で置換されたアルキル基又はアリール基を表し、mは、2以上の整数を表す。
【0027】
上記一般式(1H)で表される構成単位を有する重合体は、全ての構成単位が上記一般式(1H)で表される構成単位である必要はなく、上記一般式(1H)で表される構成単位を含んでいれば、他の構成単位を含んでいてもよい。
上記他の構成単位は特に限定されず、例えば、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド等に由来する構成単位が挙げられる。
【0028】
上記酸解離定数pKaが3以下の重合体は、フッ素原子を含み、ヘテロ原子に電子吸引性基が結合した構造の構成単位を有するフッ素含有重合体であることが好ましい。
上記フッ素含有重合体は、フッ素原子を含有することにより容易に有機溶媒に溶解し易くなり、光電変換層への配合が容易である。
【0029】
上記フッ素含有重合体は、フッ素原子を含み、ヘテロ原子に電子吸引性基が結合した構造を有していれば、アニオン若しくはカチオンのイオンの形態、又は、塩の形態をとっていてもよい。
また、上記ヘテロ原子は特に限定されず、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。なかでも、窒素原子、硫黄原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。
【0030】
上記フッ素含有重合体における電子吸引性基は特に限定されず、例えば、スルホニル基、スルフィド基、チオエステル基、チオケトン基、エステル基、エーテル基、カルボニル基、アミド基、ウレタン基、スルフィニル基、ホスホニル基等が挙げられる。これらの電子吸引性基は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、上記電子吸引性基は、上記ヘテロ原子に1つ結合してもよく、2つ以上結合してもよい。
上記フッ素原子の少なくとも1つは、上記電子吸引性基又は上記電子吸引性基のα位に結合していることが好ましい。
【0031】
上記フッ素含有重合体は、上記電子吸引性基を介して共役環式骨格を有していることが好ましい。電子吸引性基を介して共役環式骨格を有することで、ヘテロ原子の酸性度が大きくなり、上記フッ素含有重合体のpKaを3以下とすることができる。
【0032】
上記フッ素含有重合体は、下記一般式(XF)で表される、フッ素原子を含み、ヘテロ原子に電子吸引性基が結合した構造を有することが好ましい。
【0033】
【0034】
一般式(XF)中、R1及びR2は、電子吸引性基を表し、RFは、フッ素原子を含む基を表す。R1及びR2は、同じであっても異なっていてもよい。
【0035】
上記一般式(XF)中、R1及びR2で表される電子吸引性基は特に限定されないが、スルホニル基、スルフィド基、スルフィニル基、チオエステル基、チオケトン基、エステル基、エーテル基、カルボニル基、アミド基、又は、ウレタン基が好ましい。これらの電子吸引性基は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルホニル基がより好ましい。
【0036】
上記一般式(XF)中、RFで表されるフッ素原子を含む基は特に限定されないが、一部又は全ての水素がフッ素で置換されたアルキル基又はアリール基が好ましい。
【0037】
上記フッ素含有重合体としては、具体的には例えば、下記一般式(1F)で表される構成単位を有する重合体等が挙げられる。
【0038】
【0039】
一般式(1F)中、RFは、フッ素原子、或いは、一部又は全ての水素がフッ素で置換されたアルキル基又はアリール基を表し、mは、2以上の整数を表す。
【0040】
なお、上記一般式(1F)で表される構成単位を有する重合体は、全ての構成単位が上記一般式(1F)で表される構成単位である必要はなく、上記一般式(1F)で表される構成単位を含んでいれば、他の構成単位を含んでいてもよい。
上記他の構成単位は特に限定されず、例えば、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸エステル、ビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド等に由来する構成単位が挙げられる。
【0041】
上記フッ素含有重合体を合成する方法としては、例えば、フッ素原子を含み、ヘテロ原子に電子吸引性基が結合した構造を有するモノマーを重合する方法が挙げられる。また、フッ素原子もヘテロ原子に電子吸引性基が結合した構造も有さないモノマーを重合した後に、フッ素原子とヘテロ原子に電子吸引性基が結合した構造とを化学反応により付加させる方法も挙げられる。
【0042】
なお、ホール輸送層中にフッ素含有重合体を配合した場合、高い光電変換効率を達成することができる一方で、得られる太陽電池の耐光性に劣る等の問題もあった。
これに対して、本発明の太陽電池において、上記光電変換層に酸解離定数pKaが3以下の重合体として上記フッ素含有重合体を配合した場合、光電変換層の表面におけるヨウ素元素とフッ素元素の分布が一定となるようにフッ素含有重合体の分布を調整することにより、高い光電変換効率、優れた耐熱性に加えて、優れた耐光性をも発揮することができる。即ち、本発明の太陽電池は、陽極側の表面において、以下の(A)~(C)の手順にて算出したα、βがα>0.6かつβ<0.2であることが好ましい。これにより、本願発明の太陽電池は、優れた耐光性を発揮することができる。
【0043】
手順(A)では、まず、陽極側の表面においてn回(nは0を含む整数)のスパッタリングを行うとともに、各回のスパッタリング毎にTOF-SIMSを用いて該表面におけるフッ素イオンの強度とトータルイオン強度の比F(n)と、ヨウ素イオンの強度とトータルイオン強度の比I(n)を測定する。
【0044】
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)は、固体試料にイオンビーム(一次イオン)を照射し、表面から放出されるイオン(二次イオン)を、その飛行時間差(飛行時間は重さの平方根に比例)を利用して質量分離する方法である。TOF-SIMSでは、試料表面から1nm以下の深さに存在する元素や分子種に関する情報を高い検出感度で得ることができる。
TOF-SIMSに用いる分析装置としては、例えば、アルバック・ファイ社製「PHI nanoTOFII」等の市販品が挙げられる。
市販のTOF-SIMS分析装置を用いて太陽電池の陽極側の表面のフッ素イオン強度、ヨウ素イオン強度及びトータルイオン強度を測定するためには、例えば、Bi3+イオンガンを測定用の一次イオン源とし、30keVの条件にて測定すればよい。
【0045】
スパッタリングは、真空中でアルゴン等の不活性ガスを導入し、ターゲットにマイナスの電圧を印加してグロー放電を発生させ、不活性ガス原子をイオン化し、高速でターゲットの表面にガスイオンを衝突させて激しく叩くものであり、ターゲットの表面をナノメートル~マイクロメートルオーダーの深さで研削していくことができる。
具体的には例えば、O2+を用いてスパッタリングを行うことにより、0.01nm~10nm/回の深さで光電変換層の表面を掘り進んでいくことができる。
【0046】
n回(nは0を含む整数)のスパッタリングを行うとともに、各回のスパッタリング毎にTOF-SIMSを行い、フッ素イオンの強度とトータルイオン強度の比F(n)と、ヨウ素イオンの強度とトータルイオン強度の比I(n)を測定することにより、太陽電池の陽極側の表面から深さ方向のフッ素元素及びヨウ素元素の分布を求めることができる。
【0047】
手順(B)では、上記(A)で得られたnとF(n)及びI(n)との関係をもとに、スパッタリング累積時間Nと、該スパッタリング累積時間Nにおけるフッ素イオンの強度とトータルイオン強度の比(フッ素イオン強度/トータルイオン強度)F(N)と、ヨウ素イオンの強度とトータルイオン強度の比(ヨウ素イオン強度/トータルイオン強度)I(N)を算出する。
スパッタリング累積時間Nが長いほど、太陽電池の陽極側の表面から深い部分の測定が行われる。スパッタリング累積時間Nと、該スパッタリング累積時間Nにおけるフッ素イオンの強度とトータルイオン強度の比F(N)と、ヨウ素イオンの強度とトータルイオン強度の比I(N)を用いることにより、太陽電池の陽極側の表面から深さ方向のフッ素元素及びヨウ素元素の濃度の分布を表現することが可能となる。
【0048】
そして、手順(C)では、上記(B)で得られたスパッタリング累積時間N、F(N)、I(N)をもとに、スパッタリング累積時間Nを横軸に、各々の最大値を1として規格化したF(N)及びI(N)の値を縦軸にプロットしてグラフを作成して、該グラフからα及びβを求める。
図2に、スパッタリング累積時間Nを横軸に、各々の最大値を1として規格化したF(N)及びI(N)の値を縦軸にプロットしてグラフを説明する模式図を示した。
【0049】
図2のグラフでは、横軸をスパッタリング累積時間Nとして、縦軸に各々の最大値を1として規格化したF(N)及びI(N)の値をプロットしている。
図2では、F(N)の推移を点線にて、I(n)の推移を実線にて表している。
図2では、スパッタリング累積時間Nが進むに従って、まず、F(N)の推移を示す点線が立ち上がり、ピークをつけた後、緩やかに減じている。これに遅れてI(N)の推移を示す実線が立ち上がり、ピークをつけた後、緩やかに減じている。
ここで、I(N)が最大となるNをNmaxとする。すると、N<Nmaxの領域と、N≧Nmaxの領域とで、I(N)とF(N)とが交わる交点が観察される。
N<Nmaxの領域におけるI(N)とF(N)の交点のうち、Nが最もNmaxに近い交点におけるI(N)、F(N)の値をαとする。
N≧Nmaxの領域におけるI(N)とF(N)の交点のうち、Nが最もNmaxに近い交点におけるI(N)、F(N)の値をβとする。
【0050】
上記光電変換層が、酸解離定数pKaが3以下の重合体として上記フッ素含有重合体を含有する場合、上記(A)~(C)の手順にて算出したα、βが、α>0.6かつβ<0.2であることにより、高い光電変換効率と優れた耐熱性に加えて、優れた耐光性を発揮することができる。この原理については必ずしも明らかでないが、本発明者らは、以下のように推測している。
即ち、α>0.6であるとは、太陽電池中の光電変換層の陽極側のごく表面においてフッ素元素とヨウ素元素が比較的高濃度で混じり合っている、即ち、フッ素含有重合体が光電変換層の陽極側のごく表面に偏在している状態を示すものと考えられる。このようにフッ素含有重合体が光電変換層中に偏在することにより、光励起により生じた電子とホールが再接合することなく効率的に移動するようになり、太陽電池の光電変換効率が向上すると考えられる。即ち、上記αが0.6を超えることにより、本発明の太陽電池は、高い光電変換効率を発揮することができる。上記αは、0.7以上であることがより好ましく、0.8以上であることが更に好ましい。
一方、β<0.2であるとは、太陽電池中の光電変換層の陰極側にはフッ素元素があまり分布していない、即ち、フッ素含有重合体が光電変換層の陽極側のごく表面に偏在していて、陰極側の大部分にはあまり分布していない状態を示すものと考えられる。このように光電変換層の大部分にフッ素含有重合体が混ざり込んでいないことにより、太陽電池の耐光性が向上すると考えられる。即ち、上記βが0.2未満であることにより、本発明の太陽電池は、高い耐光性を発揮することができる。上記βは、0.15以下であることがより好ましく、0.1以下であることが更に好ましい。
【0051】
上記フッ素含有重合体を光電変換層の陽極側のごく表面のみに偏在させ、α>0.6かつβ<0.2を達成する方法としては、例えば、上記フッ素含有重合体の重量平均分子量と、光電変換層中の含有量とを調整する方法が挙げられる。
即ち、例えば、上記有機無機ペロブスカイト化合物の原料となる化合物を含む溶液に上記フッ素含有重合体を加えて塗工液を調製し、該塗工液を塗工した後、乾燥、焼結して光電変換層を形成する。この際、フッ素含有重合体の重量平均分子量を一定以上とすることにより、光電変換層形成時にフッ素含有重合体を偏析させて、光電変換層の陽極側のごく表面のみに偏在させることができる。
【0052】
上記フッ素含有重合体の重量平均分子量の好ましい下限は2000、好ましい上限は100万である。上記フッ素含有重合体の重量平均分子量がこの範囲であることにより、確実にα>0.6かつβ<0.2を達成することができる。上記フッ素含有重合体の分子量のより好ましい下限は4000、より好ましい上限は50万であり、更に好ましい下限は5000、更に好ましい上限は10万である。
【0053】
上記光電変換層中、上記フッ素含有重合体の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は30重量%である。上記フッ素含有重合体含有量がこの範囲内にある場合に、確実にα>0.6かつβ<0.2を達成することができる。上記フッ素含有重合体の含有量のより好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は20重量%であり、更に好ましい下限は1重量%、更に好ましい上限は15重量%である。
【0054】
上記酸性重合体としては、その他にも例えば、下記式で表されるポリスチレンスルホン酸や、ポリスチレンスルホニル-トリフルオロメタンスルホンイミド等も用いることができる。
【0055】
【0056】
上記光電変換層中、上記酸性重合体の含有量の好ましい下限は0.1重量%、好ましい上限は30重量%である。上記酸性重合体がこの範囲内にある場合に、高い光電変換効率と耐熱性とを両立することができる。上記酸性重合体の含有量のより好ましい下限は0.5重量%、より好ましい上限は20重量%であり、更に好ましい下限は1重量%、更に好ましい上限は15重量%である。
【0057】
上記光電変換層は、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記有機無機ペロブスカイト化合物、酸性重合体に加えて、更に、有機半導体又は無機半導体を含んでいてもよい。ここでいう有機半導体又は無機半導体は、ホール輸送層、又は、電子輸送層としての役割を果たしてもよい。
上記有機半導体として、例えば、ポリ(3-アルキルチオフェン)等のチオフェン骨格を有する化合物等が挙げられる。例えば、ポリパラフェニレンビニレン骨格、ポリビニルカルバゾール骨格、ポリアニリン骨格、ポリアセチレン骨格等を有する導電性高分子等も挙げられる。更に、例えば、フタロシアニン骨格、ナフタロシアニン骨格、ペンタセン骨格、ベンゾポルフィリン骨格等のポルフィリン骨格、スピロビフルオレン骨格等を有する化合物や、表面修飾されていてもよいカーボンナノチューブ、グラフェン、フラーレン等のカーボン含有材料も挙げられる。
【0058】
上記無機半導体として、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化ガリウム、硫化スズ、硫化インジウム、硫化亜鉛、CuSCN、Cu2O、CuI、MoO3、V2O5、WO3、MoS2、MoSe2、Cu2S等が挙げられる。
【0059】
上記光電変換層は、薄膜状の有機半導体又は無機半導体部位と薄膜状の有機無機ペロブスカイト化合物/酸性重合体部位とを積層した積層体であってもよいし、有機半導体又は無機半導体部位と有機無機ペロブスカイト化合物/酸性重合体部位とを複合化した複合膜であってもよい。製法が簡便である点では積層体が好ましく、上記有機半導体又は上記無機半導体中の電荷分離効率を向上させることができる点では複合膜が好ましい。
【0060】
上記薄膜状の有機無機ペロブスカイト化合物/酸性重合体部位の厚みは、好ましい下限が5nm、好ましい上限が5000nmである。上記厚みが5nm以上であれば、充分に光を吸収することができるようになり、光電変換効率が高くなる。上記厚みが5000nm以下であれば、電荷分離できない領域が発生することを抑制できるため、光電変換効率の向上につながる。上記厚みのより好ましい下限は10nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は20nm、更に好ましい上限は500nmである。
【0061】
上記光電変換層が、有機半導体又は無機半導体部位と有機無機ペロブスカイト化合物/酸性重合体部位とを複合化した複合膜である場合、上記複合膜の厚みの好ましい下限は30nm、好ましい上限は3000nmである。上記厚みが30nm以上であれば、充分に光を吸収することができるようになり、光電変換効率が高くなる。上記厚みが3000nm以下であれば、電荷が電極に到達しやすくなるため、光電変換効率が高くなる。上記厚みのより好ましい下限は40nm、より好ましい上限は2000nmであり、更に好ましい下限は50nm、更に好ましい上限は1000nmである。
【0062】
上記光電変換層を形成する方法は特に限定されず、真空蒸着法、スパッタリング法、気相反応法(CVD)、電気化学沈積法、印刷法等が挙げられる。なかでも、印刷法を採用することで、高い光電変換効率を発揮できる太陽電池を大面積で簡易に形成することができる。
具体的には例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)を溶媒としてCH3NH3IとPbI2をモル比1:1で溶かした溶液に、更に予め調製した上記酸性重合体を溶解して塗工液を得て、該塗工液をスピンコート法、キャスト法、ロールtoロール法等により印刷する方法が挙げられる。
【0063】
本発明の太陽電池は、陰極、上記光電変換層及び陽極をこの順に有する。
上記陰極の材料は特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。陰極材料として、例えば、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ナトリウム、ナトリウム-カリウム合金、リチウム、マグネシウム、アルミニウム、マグネシウム-銀混合物、マグネシウム-インジウム混合物、アルミニウム-リチウム合金、Al/Al2O3混合物、Al/LiF混合物等が挙げられる。これらの材料は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0064】
上記陽極の材料は特に限定されず、従来公知の材料を用いることができる。上記陽極は、パターニングされた電極であることが多い。
陽極材料として、例えば、ITO(インジウムスズ酸化物)、SnO2、AZO(アルミニウム亜鉛酸化物)、IZO(インジウム亜鉛酸化物)、GZO(ガリウム亜鉛酸化物)、BZO(ホウ素亜鉛酸化物)等の導電性透明材料、導電性透明ポリマー等が挙げられる。これらの材料は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
本発明の太陽電池は、上記陽極と光電変換層との間に、ホール輸送層を有してもよい。
上記ホール輸送層の材料は特に限定されず、例えば、P型導電性高分子、P型低分子有機半導体、P型金属酸化物、P型金属硫化物、界面活性剤等が挙げられ、具体的には例えば、ポリ(3-アルキルチオフェン)等のチオフェン骨格を有する化合物等が挙げられる。また、例えば、トリフェニルアミン骨格、ポリパラフェニレンビニレン骨格、ポリビニルカルバゾール骨格、ポリアニリン骨格、ポリアセチレン骨格等を有する導電性高分子等も挙げられる。また、例えば、フタロシアニン骨格、ナフタロシアニン骨格、ペンタセン骨格、ベンゾポルフィリン骨格等のポルフィリン骨格、スピロビフルオレン骨格等を有する化合物が挙げられる。また、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化タングステン、酸化ニッケル、酸化銅、酸化スズ、硫化モリブデン、硫化タングステン、硫化銅、硫化スズ等が挙げられる。更に、フルオロ基含有ホスホン酸、カルボニル基含有ホスホン酸、CuSCN、CuI等の銅化合物、カーボンナノチューブ、グラフェン等のカーボン含有材料等が挙げられる。
【0066】
上記ホール輸送層は、上記酸性重合体を含有してもよい。上記ホール輸送層が上記酸性重合体を含有することにより、より高い光電変換効率を達成することができる。
ただし、上記酸性重合体を含有するホール輸送層を上記光電変換層に積層した場合、ホール輸送層中の酸性重合体が光電変換層に移行して、得られる太陽電池の耐熱性を損なうことがある。従って、ホール輸送層中の酸性重合体が光電変換層に移行する可能性も考慮して、太陽電池の構成を設計する必要がある。
ホール輸送層中の酸性重合体の光電変換層への移行の可能性は、以下のようにまとめられる。
(a)酸性重合体の重量平均分子量が小さいほど移行しやすく、大きいほど移行しにくい。
(b)ホール輸送層形成時に焼成を行わない場合には移行しやすく、焼成を行う場合には移行しにくい。焼成を行う場合、前焼成のみを行う場合よりも、前焼成と後焼成とを行う場合の方がより移行しにくい。
【0067】
上記ホール輸送層の厚みは、好ましい下限は1nm、好ましい上限は2000nmである。上記厚みが1nm以上であれば、充分に電子をブロックできるようになる。上記厚みが2000nm以下であれば、ホール輸送の際の抵抗になり難く、光電変換効率が高くなる。上記厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は5nm、更に好ましい上限は500nmである。
【0068】
本発明の太陽電池は、上記陰極と光電変換層との間に、電子輸送層を有してもよい。
上記電子輸送層の材料は特に限定されず、例えば、n型金属酸化物、N型導電性高分子、N型低分子有機半導体、ハロゲン化アルカリ金属、アルカリ金属、界面活性剤等が挙げられる。具体的には例えば、酸化チタン、酸化スズ、シアノ基含有ポリフェニレンビニレン、ホウ素含有ポリマー、バソキュプロイン、バソフェナントレン、ヒドロキシキノリナトアルミニウム、オキサジアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ナフタレンテトラカルボン酸化合物、ペリレン誘導体、ホスフィンオキサイド化合物、ホスフィンスルフィド化合物、フルオロ基含有フタロシアニン等が挙げられる。
なかでも、光電変換層に含まれる有機無機ペロブスカイト化合物から陰極にヨウ素原子が拡散することを抑制する観点から、n型金属酸化物、ハロゲン化アルカリ金属、アルカリ金属が好ましい。これらの材料を用いることにより、電子輸送層の密度を大きくし、光電変換層に含まれる有機無機ペロブスカイト化合物からのヨウ素原子の拡散をより低減できる。更には、ヨウ素原子による電子輸送層の腐食を防ぐ観点から、イオン化傾向の比較的低い金属を含む酸化物(例えば、酸化チタン、酸化スズ)がより好ましい。これらの材料を用いることにより、電子輸送層の安定性を増し、太陽電池の耐久性を向上することができる。
【0069】
上記電子輸送層は、薄膜状の電子輸送層のみからなっていてもよいが、多孔質状の電子輸送層を含むことが好ましい。特に、光電変換層が、有機半導体又は無機半導体部位と有機無機ペロブスカイト化合物/酸性重合体部位とを複合化した複合膜である場合、より複雑な複合膜(より複雑に入り組んだ構造)が得られ、光電変換効率が高くなることから、多孔質状の電子輸送層上に複合膜が製膜されていることが好ましい。
【0070】
上記電子輸送層の厚みは、好ましい下限が1nm、好ましい上限が2000nmである。上記厚みが1nm以上であれば、充分にホールをブロックできるようになる。上記厚みが2000nm以下であれば、電子輸送の際の抵抗になり難く、光電変換効率が高くなる。上記電子輸送層の厚みのより好ましい下限は3nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は5nm、更に好ましい上限は500nmである。
【0071】
本発明の太陽電池は、更に、基板等を有していてもよい。上記基板は特に限定されず、例えば、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等の透明ガラス基板、セラミック基板、プラスチック基板、金属基板等が挙げられる。
【0072】
本発明の太陽電池においては、上述したような陰極、(必要に応じて電子輸送層)、光電変換層、(必要に応じてホール輸送層)及び陽極をこの順に有する積層体が、バリア層で封止されていてもよい。
上記バリア層の材料としてはバリア性を有していれば特に限定されないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又は無機材料等が挙げられる。
上記熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、ブチルゴム、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリブタジエン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリイソブチレン等が挙げられる。
【0073】
上記バリア層の材料が熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂である場合、バリア層(樹脂層)の厚みは、好ましい下限が100nm、好ましい上限が100000nmである。上記厚みのより好ましい下限は500nm、より好ましい上限は50000nmであり、更に好ましい下限は1000nm、更に好ましい上限は20000nmである。
【0074】
上記無機材料としては、Si、Al、Zn、Sn、In、Ti、Mg、Zr、Ni、Ta、W、Cu若しくはこれらを2種以上含む合金の酸化物、窒化物又は酸窒化物が挙げられる。なかでも、上記バリア層に水蒸気バリア性及び柔軟性を付与するために、Zn、Snの両金属元素を含む金属元素の酸化物、窒化物又は酸窒化物が好ましい。
【0075】
上記バリア層の材料が無機材料である場合、バリア層(無機層)の厚みは、好ましい下限が30nm、好ましい上限が3000nmである。上記厚みが30nm以上であれば、上記無機層が充分な水蒸気バリア性を有することができ、太陽電池の耐久性が向上する。上記厚みが3000nm以下であれば、上記無機層の厚みが増した場合であっても、発生する応力が小さいため、上記無機層と上記積層体との剥離を抑制することができる。上記厚みのより好ましい下限は50nm、より好ましい上限は1000nmであり、更に好ましい下限は100nm、更に好ましい上限は500nmである。
上記無機層の厚みは、光学干渉式膜厚測定装置(例えば、大塚電子社製のFE-3000等)を用いて測定することができる。
【0076】
上記バリア層の材料のうち、上記熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂で上記積層体を封止する方法は特に限定されず、例えば、シート状のバリア層の材料を用いて上記積層体をシールする方法、バリア層の材料を有機溶媒に溶解させた溶液を上記積層体に塗布する方法が挙げられる。バリア層となる液状モノマーを上記積層体に塗布した後、熱又はUV等で液状モノマーを架橋又は重合させる方法、バリア層の材料に熱をかけて融解させた後に冷却させる方法等も挙げられる。
【0077】
上記バリア層の材料のうち、上記無機材料で上記積層体を封止する方法として、真空蒸着法、スパッタリング法、気相反応法(CVD)、イオンプレーティング法が好ましい。なかでも、緻密な層を形成するためにはスパッタリング法が好ましく、スパッタリング法のなかでもDCマグネトロンスパッタリング法がより好ましい。
上記スパッタリング法においては、金属ターゲット、及び、酸素ガス又は窒素ガスを原料とし、上記積層体上に原料を堆積して製膜することにより、無機材料からなる無機層を形成することができる。
上記バリア層の材料は、上記熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂と、上記無機材料との組み合わせでもよい。
【0078】
本発明の太陽電池においては、更に、上記バリア層上を、例えば樹脂フィルム、無機材料を被覆した樹脂フィルム等のその他の材料が覆っていてもよい。即ち、本発明の太陽電池は、上記積層体と上記その他の材料との間を、上記バリア層によって封止、充填又は接着している構成であってもよい。これにより、仮に上記バリア層にピンホールがあった場合にも充分に水蒸気をブロックすることができ、太陽電池の耐久性をより向上させることができる。
【0079】
図3は、本発明の太陽電池の一例を模式的に示す断面図である。
図3に示す太陽電池1は、陰極2上に電子輸送層3(薄膜状の電子輸送層31と多孔質状の電子輸送層32)、有機無機ペロブスカイト化合物と酸性重合体を含む光電変換層4、ホール輸送層5及び陽極6がこの順に積層されたものである。
図3に示す太陽電池1において、陽極6はパターニングされた電極である。
【0080】
本発明の太陽電池を製造する方法は特に限定されず、例えば、上記基板上に上記陰極、上記電子輸送層、上記光電変換層、上記ホール輸送層及び上記陽極をこの順で形成する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0081】
本発明によれば、有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有し、高い光電変換効率と耐熱性とを発揮することができる太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【
図1】有機無機ペロブスカイト化合物の結晶構造の一例を示す模式図である。
【
図2】スパッタリング累積時間Nを横軸に、各々の最大値を1として規格化したF(N)及びI(N)の値を縦軸にプロットしてグラフを説明する模式図である。
【
図3】本発明の太陽電池の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0084】
(実施例1)
(1)酸性重合体の合成
p-スチレンスルホン酸15gと、塩化チオニル30mLとをDMF70mL中で3時間反応させ、その後、分液によってスチレンスルホニルクロリドを得た。その後、トリエチルアミン13mLにジメチルアミノピリジン0.23gを添加して得られた溶液の中に、上記で得られたスチレンスルホニルクロリドとトリフルオロメタンスルホンアミド10gとを添加して反応させ、その後、更に酸化銀を17g添加して沈殿物を得ることで、フッ素原子を含むモノマーを得た。
その後、アゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤として、アルゴン雰囲気下、上記で得られたフッ素原子を含むモノマーを65℃で18時間反応させた。これにより、上記一般式(1H)においてRHがCF3である、下記式で表される酸性重合体(式中、mは、2以上の整数を表す)の銀塩、即ちポリ(N-スチレンスルホニル-トリフルオロメタンスルホンイミド)(ポリ-TFSI)の銀塩を得た。
得られた酸性重合体のpKaを、水溶液中における化合物と化合物の共役酸との平衡定数を紫外可視分光法により定めることで求めた。より詳細な方法は、下記文献に記載された方法に順じた。この方法により酸解離定数pKaを測定したところ-5.0であった。
“Steric Effects in Displacement Reactions.III.The Base Strengths of Pyridine,2,6-Lutidine and the Monoalkylpyridines”HERBERT C.BROWN AND XAVIER R.MIHM, J.Am.Chem.Soc.1955,Vol.77,pp1723-1726.
【0085】
得られた酸性重合体について、カラムとしてHSPgel RT MB-M(ウォーターズコーポレーション社製)を、溶媒としてジメチルスルホキシドを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により重量平均分子量を測定したところ50000であった。
【0086】
【0087】
得られた酸性重合体の銀塩にメチルアミンを混合し、精製することにより酸性重合体のメチルアミン塩を得た。同様に、得られた酸性重合体の銀塩にSpiro-OMeTADを混合し、精製することにより酸性重合体のSpiro-OMeTAD塩を得た。
【0088】
(2)太陽電池の作製
ガラス基板上に、陰極として厚み1000nmのFTO膜を形成し、純水、アセトン、メタノールをこの順に用いて各10分間超音波洗浄した後、乾燥させてFTO膜からなる陰極を形成した。
得られた陰極の表面上に、2%に調整したチタンイソプロポキシドエタノール溶液をスピンコート法により塗布した後、400℃で10分間焼成し、厚み20nmの薄膜状の電子輸送層を形成した。更に、薄膜状の電子輸送層上に、有機バインダとしてのポリイソブチルメタクリレートと酸化チタン(平均粒子径10nmと30nmとの混合物)とを含有する酸化チタンペーストをスピンコート法により塗布した後、500℃で10分間焼成し、厚み100nmの多孔質状の電子輸送層を形成した。
【0089】
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)とジメチルスルホキシド(DMSO)の混合溶媒にPbI2を溶解させた溶液を、上記電子輸送層上にスピンコートした。その後CH3NH3Iと酸性重合体のメチルアミン塩を重量比9:1で混合したものをイソプロパノールに溶解させた溶液をスピンコートし、150℃で5分焼成することにより400nmの厚みの光電変換層を形成した。
【0090】
クロロベンゼン1mLに、得られた酸性重合体のSpiro-OMeTAD塩を5mg、t-ブチルピリジン30μL、Spiro-OMeTADを15mg溶解してホール輸送層形成用塗工液を調製した。
上記光電変換層状に、ホール輸送層形成用塗工液をスピンコート法によって50nmの厚みになるように塗工した。ホール輸送層形成直後に100℃10分の条件にて焼成を行い(前焼成)、ホール輸送層を形成した。
【0091】
得られたホール輸送層上に、陽極として真空蒸着により厚み100nmのITO膜を形成し、陰極/電子輸送層/光電変換層/ホール輸送層/陽極が積層された太陽電池を得た。
【0092】
(実施例2)
酸性重合体としてポリスチレンスルホン酸を用いた以外は実施例1と同様にして太陽電池を得た。
用いたポリスチレンスルホン酸の酸解離定数pKaは-2.8、重量平均分子量は50000であった。
【0093】
(比較例1~7)
酸性重合体に代えて、表1に示した酸性重合体以外の重合体又は単量体を用いた以外は実施例1と同様にして太陽電池を得た。
【0094】
<評価>
実施例及び比較例で得られた太陽電池について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0095】
(1)光電変換効率の測定
太陽電池の電極間に電源(KEITHLEY社製、236モデル)を接続し、強度100mW/cm2のソーラーシミュレーション(山下電装社製)を用いて電流-電圧曲線を描画し、光電変換効率を算出した。
得られた光電変換効率が15%以上の場合を「5」、13%以上、15%未満の場合を「4」、11%以上、13%未満の場合を「3」、9%以上、11%未満の場合を「2」、9%未満の場合を「1」と評価した。
【0096】
(2)耐熱性の評価
得られた太陽電池を85℃オーブンに投入し、500時間後の光電変換効率を測定した。
500時間後の変換効率が初期変換効率の90%以上保持している場合を「5」、80%以上、90%未満の場合を「4」、60%以上、80%未満の場合を「3」、40%以上、60%未満の場合を「2」、40%未満の場合を「1」と評価した。
【0097】
【0098】
(実施例3)
(1)フッ素含有重合体の合成
p-スチレンスルホン酸15gと、塩化チオニル30mLとをDMF70mL中で3時間反応させ、その後、分液によってスチレンスルホニルクロリドを得た。その後、トリエチルアミン13mLにジメチルアミノピリジン0.23gを添加して得られた溶液の中に、上記で得られたスチレンスルホニルクロリドとトリフルオロメタンスルホンアミド10gとを添加して反応させ、その後、更に酸化銀を17g添加して沈殿物を得ることで、フッ素原子を含むモノマーを得た。
その後、アゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤として、アルゴン雰囲気下、上記で得られたフッ素原子を含むモノマーを65℃で18時間反応させた。これにより、上記一般式(1F)においてRFがCF3である、下記式で表されるフッ素含有重合体(式中、mは、2以上の整数を表す)の銀塩、即ちポリ(N-スチレンスルホニル-トリフルオロメタンスルホンイミド)(ポリ-TFSI)の銀塩を得た。
得られたフッ素含有重合体のpKaを、水溶液中における化合物と化合物の共役酸との平衡定数を紫外可視分光法により定めることで求めたところ-5.0であった。
【0099】
得られたフッ素含有重合体について、カラムとしてHSPgel RT MB-M(ウォーターズコーポレーション社製)を、溶媒としてジメチルスルホキシドを用い、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により重量平均分子量を測定したところ50000であった。
【0100】
【0101】
得られたフッ素含有重合体の銀塩にメチルアミンを混合し、精製することによりフッ素含有重合体のメチルアミン塩を得た。また、得られたフッ素含有重合体の銀塩に2,2’,7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(Spiro-OMeTAD)を混合し、精製することによりフッ素含有重合体のSpiro-OMeTAD塩を得た。
【0102】
(2)太陽電池の作製
ガラス基板上に、陰極として厚み1000nmのFTO膜を形成し、純水、アセトン、メタノールをこの順に用いて各10分間超音波洗浄した後、乾燥させてFTO膜からなる陰極を形成した。
得られた陰極の表面上に、2%に調整したチタンイソプロポキシドエタノール溶液をスピンコート法により塗布した後、400℃で10分間焼成し、厚み20nmの薄膜状の電子輸送層を形成した。更に、薄膜状の電子輸送層上に、有機バインダとしてのポリイソブチルメタクリレートと酸化チタン(平均粒子径10nmと30nmとの混合物)とを含有する酸化チタンペーストをスピンコート法により塗布した後、500℃で10分間焼成し、厚み100nmの多孔質状の電子輸送層を形成した。
【0103】
N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)とジメチルスルホキシド(DMSO)の混合溶媒にPbI2を溶解させた溶液を、上記電子輸送層上にスピンコートした。その後CH3NH3Iとフッ素含有重合体のメチルアミン塩を重量比9:1で混合したものをイソプロパノールに溶解させた溶液をスピンコートし、150℃で5分焼成することにより400nmの厚みの光電変換層を形成した。
【0104】
クロロベンゼン1mLに、得られたフッ素含有重合体のSpiro-OMeTAD塩を5mg、t-ブチルピリジンを30μL、Spiro-OMeTADを15mg溶解してホール輸送層形成用塗工液を調製した。
上記光電変換層上に、ホール輸送層形成用塗工液をスピンコート法によって50nmの厚みになるように塗工した。ホール輸送層形成直後に100℃、10分の条件にて焼成を行い(前焼成)、ホール輸送層を形成した。
【0105】
得られたホール輸送層上に、陽極として真空蒸着により厚み100nmのITO膜を形成し、陽極形成直後に100℃、10分の条件にて焼成を行い(後焼成)、陰極/電子輸送層/光電変換層/ホール輸送層/陽極が積層された太陽電池を得た。
【0106】
(3)α、βの算出
上記(A)~(C)の手順にて、α、βを算出したところ、αは0.90、βは0.10であった。
【0107】
(実施例4、5)
ホール輸送層の形成方法を表2に示したようにした以外は、実施例3と同様の方法により太陽電池を製造し、上記(A)~(C)の手順にて、α、βを算出した。
【0108】
(実施例6)
ホール輸送層形成用塗工液として、フッ素含有重合体の代わりにフッ素含有モノマーであるトリフルオロメタンスルホニルイミドモノマーを用いた以外は実施例3と同様にして太陽電池を製造し、上記(A)~(C)の手順にて、α、βを算出した。
【0109】
(実施例7)
ホール輸送層の形成方法を表2に示したようにした以外は、実施例3と同様の方法により太陽電池を製造し、上記(A)~(C)の手順にて、α、βを算出した。
【0110】
(比較例8)
光電変換層形成用塗工液として、フッ素含有重合体の代わりにフッ素含有モノマーとしてトリフルオロメタンスルホニルイミドモノマーを用いた以外は実施例3と同様にして太陽電池を製造し、上記(A)~(C)の手順にて、α、βを算出した。
【0111】
(比較例9~11)
ホール輸送層の形成方法を表2に示したようにした以外は、比較例8と同様の方法により太陽電池を製造し、上記(A)~(C)の手順にて、α、βを算出した。
【0112】
(比較例12)
光電変換層形成用塗工液にフッ素含有重合体もしくはフッ素含有モノマーを添加しなかったこと以外は実施例3と同様にして太陽電池を得た。この光電変換層形成用塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして太陽電池を製造し、上記(A)~(C)の手順にて、α、βを算出した。
【0113】
(比較例13~18)
ホール輸送層の形成方法を表2に示したようにした以外は、比較例12と同様の方法により太陽電池を製造し、上記(A)~(C)の手順にて、α、βを算出した。
【0114】
(評価)
実施例及び比較例で得た太陽電池について、以下の方法により評価を行った。
結果を表2に示した。
【0115】
(1)光電変換効率の評価
太陽電池の電極間に電源(KEITHLEY社製、236モデル)を接続し、強度100mW/cm2のソーラーシミュレーション(山下電装社製)を用いて電流-電圧曲線を描画し、光電変換効率を算出した。
得られた光電変換効率が15%以上の場合を「5」と、13%以上、15%未満の場合を「4」と、11%以上、13%未満の場合を「3」と、9%以上、11%未満の場合を「2」と、9%未満の場合を「1」と評価した。
【0116】
(2)耐熱性の評価
得られた太陽電池を85℃オーブンに投入し、500時間後の光電変換効率を測定した。
500時間後の変換効率が初期変換効率の90%以上保持している場合を「5」、80%以上、90%未満の場合を「4」、60%以上、80%未満の場合を「3」、40%以上、60%未満の場合を「2」、40%未満の場合を「1」と評価した。
【0117】
(3)耐光性の評価
太陽電池をサンシャインキセノンウェザーメーター(スガ試験機社製)に投入し、60℃の状態で強度100mW/cm2相当の光を100時間照射した。光照射の前後において、上記と同様の方法にて光電変換効率を算出した。
光照射後の変換効率が光照射前の変換効率(初期変換効率)の90%以上の場合を「5」と、80%以上、90%未満の場合を「4」と、60%以上、80%未満の場合を「3」と、40%以上、60%未満の場合を「2」と、40%未満の場合を「1」と評価した。
【0118】
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明によれば、有機無機ペロブスカイト化合物を含む光電変換層を有し、高い光電変換効率と耐熱性とを発揮することができる太陽電池を提供することができる。
【符号の説明】
【0120】
1 太陽電池
2 陰極
3 電子輸送層
31 薄膜状の電子輸送層
32 多孔質状の電子輸送層
4 有機無機ペロブスカイト化合物と酸性重合体を含む光電変換層
5 ホール輸送層
6 陽極(パターニングされた電極)