(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】二酸化塩素に対する耐性が改善されたポリオレフィン物品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/02 20060101AFI20221018BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C08L23/02
C08K5/13
(21)【出願番号】P 2019547705
(86)(22)【出願日】2018-06-21
(86)【国際出願番号】 IB2018054589
(87)【国際公開番号】W WO2019003065
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-04-23
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516167059
【氏名又は名称】ソンウォン インダストリアル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Songwon Industrial Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】83, Jangsaengpo-ro, Nam-gu, Ulsan, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ケック,クラウス
(72)【発明者】
【氏名】シュムッツ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】キム,スア
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-524049(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102229723(CN,A)
【文献】特開2016-186071(JP,A)
【文献】特開平02-036247(JP,A)
【文献】特表2014-534299(JP,A)
【文献】特表2015-523449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 23/00
C08K 5/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンと、フェノール部分のヒドロキシ基に対して一方のオルト位がアルキル置換され、かつ他方のオルト位が非置換であるフェノール部分を含む第1安定剤と;フェノール部分のヒドロキシ基に対する両方のオルト位がアルキル置換されたフェノール部分を含む第2安定剤と、を含
み、
前記第2安定剤は、下記の構造:
【化1】
の両方を含む、ポリオレフィン組成物。
【請求項2】
前記第1安定剤は、下記部分:
【化2】
ここで、
R
1は
、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル及びt-ブチルであるアルキルであり、R
2~R
4は、独立して、水素又は任意の有機部分のいずれかであり、ただし、R
2~R
4の全てが水素となることはない、
を含む、請求項1に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項3】
前記第1安定剤において、R
3は水素ではなく、R
2及びR
4は水素である、請求項2に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項4】
前記第1安定剤は、下記分子:
【化3】
ここで、
n、m、kは、それぞれ互いに独立して、1~4の整数である、
を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項5】
下記構造:
【化4】
ここで、
R
8、R
9、R
10、R
11及びR
12は、独立して、H、又はヘテロ原子を含んでいてもよい非置換の脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビル
基である、
による酸化防止剤を含んでいない、請求項1~
4のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項6】
ビタミンEを含んでいない、請求項1~
5のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項7】
酸捕捉剤をさらに含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項8】
前記酸捕捉剤は、金属酸化物、金属水酸化物、金属有機塩及び/又は金属炭酸塩を含
む、請求項
7に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項9】
前記酸捕捉剤が、ヒドロキシ炭酸マグネシウム、ヒドロキシ炭酸アルミニウム及び水酸化カルシウムを含む
、請求項
7又は
8に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項10】
アミン系酸化防止剤をさらに含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項11】
フェニレンジアミン類、ジフェニルアミン類、キノリン類、ナフチルアミン類及びそれらの混合物を含む群から選択されるアミン系酸化防止剤をさらに含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載のポリオレフィン組成物。
【請求項12】
ClO
2に対してポリオレフィンを安定化させるための安定剤組成物の使用であって、
前記安定剤組成物は、フェノール部分のヒロドキシ基に対して一方のオルト位がアルキル置換され、かつ他方のオルト位が非置換であるフェノール部分を含む第1安定剤と;フェノール部分のヒドロキシ基に対する両方のオルト位がアルキル置換されたフェノール部分を含む第2安定剤とを含
み、
前記第2安定剤は、下記の構造:
【化5】
の両方を含む、安定剤組成物の使用。
【請求項13】
請求項1~
11のいずれか1項に記載のポリオレフィン
組成物を含む又は請求項
12を利用する製品であって、パイプ
、包装体
、保護ライナー、シール、及びガスケットから選択される、製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定剤を含有するポリオレフィン組成物及びそのポリオレフィン組成物を用いて製造されたパイプ、包装体物品、フィルム及びインライナー等の物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン及びそれから製造された物品は、酸素との反応に対して非常に限られた耐性しか有さず、よってそれ自体は半耐久性及び耐久性用途には適していない。したがって、これらの物品自体は数週間又は数ヶ月の適切な寿命(又は耐用年数)しかない。この時間枠内で一般に機械的、光学的及び官能的特性は物品がもはやその目的には適さない程度まで劣化する。寿命を延ばすために、熱安定剤(酸化防止剤とも呼ばれる)を添加する必要がある。例えば、パイプの場合、必要な耐用年数は数十年である。
【0003】
特にパイプにおいて二酸化塩素(ClO2)は、真菌、バクテリア、ウイルスなどの病原性微生物の除去やバイオフィルムの形成防止に効果が高いため、滅菌に使用されている。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、ClO2は、特に又は部分的にラジカル的性質のために、ポリオレフィン中に存在する安定剤に対して、塩素自体又は他の消毒剤よりも、通常、より攻撃的であることが知られている。それゆえに、二酸化塩素に対して改善された耐性を示すポリオレフィン物品を提供することが一定の目的である。
【0005】
したがって、特にClO2に対して十分な安定性を示すポリマー組成物を提供することが目的である。
【0006】
この目的は、本発明の請求項1に記載のポリマー組成物によって解決される。したがって、ポリオレフィンと、フェノール部分のヒドロキシ基に対して一方のオルト位がアルキル置換され、かつ他方のオルト位は置換されていないフェノール部分を含む第1安定剤と、フェノール部分のヒドロキシ基に対する両方のオルト位がアルキル置換されているフェノール部分を含む第2安定剤とを含むポリオレフィン組成物が提供される。
【0007】
驚くべきことに、そのようなポリオレフィン組成物を使用することによって、二酸化塩素に対して非常に高い耐性を示すことが見出された。
【0008】
本発明はさらに、ClO2に対してポリオレフィンを安定化させるための使用であって、フェノール部分のヒロドキシ基に対して一方のオルト位がアルキル置換され、かつ他方のオルト位が非置換であるフェノール部分を含む第1安定剤と;フェノール部分のヒドロキシ基に対する両方のオルト位がアルキル置換されたフェノール部分を含む第2安定剤とを含む、安定剤組成物の使用に関する。
【0009】
本発明はさらに、フェノール部分のヒロドキシ基に対して一方のオルト位がアルキル置換され、かつ他方のオルト位が非置換であるフェノール部分を含む第1安定剤と;フェノール部分のヒドロキシ基に対する両方のオルト位がアルキル置換されたフェノール部分を含む第2安定剤とをポリオレフィン組成物に添加することにより、ポリオレフィン組成物をClO2に対して安定化させることを含む方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明による用語「ポリオレフィン」は、特に、US 2015/0090671 A1、US 2014/0296398 A1、WO 2006/119935 A1及び/又はUS 2005/0148700 A1に定義されているような全ての基材を意味し、及び/又はそれらを含む。
【0011】
個々の安定剤及びこれらの安定剤のための成分をより詳細に論じることにし、それによって任意の特徴を自由に組み合わせることができる。
【0012】
第1安定剤:
本発明によれば、第1安定剤は、フェノール部分のヒロドキシ基に対して一方のオルト位がアルキル置換され、かつ他方のオルト位が非置換であるフェノール部分、すなわち以下の部分を含む構造を含む:
【0013】
【0014】
ここで、
R1は、好ましくはメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル及びt-ブチルであるアルキルであり、R2~R4は、独立して、水素又は任意の有機部分のいずれかであり、ただし、R2~R4の全てが水素となることはない。
【0015】
本発明の好ましい実施態様によれば、フェノール部分はヒドロキシル基に対してp-位置が置換されている、すなわちR3は水素ではない。より好ましくはR2及びR4は水素であり、そのため、R2からR4のうち、R3のみが置換される。
【0016】
本発明の好ましい実施態様によれば、第1安定剤は、R3においてC1-架橋を介して互いに結合している2つのフェノール部分を含む(もちろん、それは他で置換されていてもよい)。この動機は-もちろん-安定剤中に1回以上存在してもよく、すなわち本発明の好ましい実施態様によれば、第1安定剤は1対以上のフェノール部分を含み、それらはC1-架橋を介して互いに結合している。
【0017】
本発明の好ましい実施態様によれば、第1安定剤は以下の分子を含む:
【0018】
【0019】
ここで、
n、m、kは、それぞれ互いに独立して、1~4の整数でありる。好ましくはn=k=1及びm=2であり、それにより第1安定剤は、以下の構造:
【0020】
【0021】
を含む。
【0022】
第2安定剤:
本発明によれば、第2安定剤は、フェノール部分のヒドロキシ基に対する両方のオルト位がアルキル置換されているフェノール部分、すなわち以下の部分を含む構造を含む:
【0023】
【0024】
ここで、
R1及びR5は、(それぞれ互いに独立して)好ましくはメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチル及びt-ブチルであるアルキルであり、R2~R4は、独立して、水素又は任意の有機部分のいずれかであり、ただし、R2~R4の全てが水素となることはない。
【0025】
好ましい実施形態によれば、R1及びR5の一方はt-ブチルであり、他の好ましい実施形態によれば、両方ともがt-ブチルである。
【0026】
本発明の好ましい実施態様によれば、フェノール部分はヒドロキシ基に対してp-位置が置換されており、すなわちR3は水素ではない。より好ましいR2及びR4は水素であり、そのためR2からR4のうちR3のみが置換される。
【0027】
本発明の好ましい実施態様によれば、R3=-COOR6であり、ここでR6は10~25の炭素原子、好ましくは14~18の炭素原子、最も好ましくは16の炭素原子を有する直鎖アルキルであり、又はR6はアルキル置換されたフェニル基であり、好ましくはtert-ブチル置換されたフェニル基であり、最も好ましくは2,4-ジ-tert-ブチル-フェニル基である。
【0028】
本発明の好ましい実施態様によれば、第2安定剤は、R3において炭素を介して互いに結合している2つのフェノール部分を含む(もちろん、それは他で置換されていてもよい)。この動機は-もちろん-安定剤中に1回以上存在してもよく、すなわち本発明の好ましい実施態様によれば、第1安定剤は1対以上のフェノール部分を含み、それらはC1-架橋を介して互いに結合している。
【0029】
本発明の好ましい実施態様によれば、第2安定剤は、R3においてC1-架橋を介して中心環に結合している3つのフェノール部分を含む。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、第2安定剤は、以下の構造:
【0031】
【0032】
を1以上含む。
【0033】
好ましい実施形態によれば、ポリオレフィン組成物は2以上の第2安定剤を含む。驚くべきことに、これは本発明の範囲内の多くの用途に対して大きな安定化効果を有することが示された。
【0034】
好ましい実施態様によれば、第2安定剤は、3つのフェノール部分が、R3においてC1-架橋を介して中心環に結合している第1構造及びR3=-COOR6(ここで、R6は炭素数10~25の直鎖アルキルであり、好ましくは14~18の炭素原子であり、最も好ましくは16の炭素原子であり、又はR6はアルキル置換フェニル基であり、好ましくはtert-ブチル置換フェニル基であり、最も好ましくは2,4-ジ-tert-ブチル-フェニル基である)である第2構造を含む。
【0035】
好ましい実施形態によれば、第2安定剤は以下の構造:
【0036】
【0037】
の両方を含む。
【0038】
好ましい実施形態によれば、ポリオレフィン組成物は酸捕捉剤をさらに含む。したがって、本発明はまた、酸捕捉剤と共に上記のような安定剤組成物を使用することに関する。
【0039】
本発明による用語「酸捕捉剤」は、特に、ポリオレフィン合成の重合触媒に由来し得る酸度を中和する化合物を意味し、及び/又はそれを含む;通常これは主にチーグラー/ナッタ触媒であろう。ポリオレフィン合成に使用される全ての触媒が酸捕捉剤を必要とするわけではないことが理解される。
【0040】
本発明の好ましい実施形態によれば、酸捕捉剤は、金属酸化物、金属水酸化物、金属有機塩及び/又は金属炭酸塩を含み、好ましくは本質的にそれらからなる。ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、金属脂肪酸、酸化亜鉛及び炭酸カルシウムが特に好ましい。
【0041】
本発明の意味における「から本質的になる」という用語は、特に(重量/重量で)95%以上、より好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上を意味し、及び/又はそれを含む。
【0042】
本発明の好ましい実施形態によれば、金属酸化物は、酸化マグネシウム及び/又は酸化アルミニウムを含み、好ましくは本質的にそれらからなる。
【0043】
本発明の好ましい実施態様によれば、金属水酸化物は水酸化カルシウムを含み、好ましくは本質的にそれからなる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、酸捕捉剤は、ヒドロキシ炭酸マグネシウム、ヒドロキシ炭酸アルミニウム及び水酸化カルシウムを含み、好ましくは本質的にそれらからなる。
【0045】
好ましくは、酸捕捉剤は層状複水酸化物化合物を含む。
【0046】
本発明の意味における層状複水酸化物(LDHs)は、正に帯電した層と、中間層領域に位置する電荷バランスがとれた陰イオンとを有する層状材料として定義される。より多くの種類の材料が負に帯電した層と層間空間に陽イオンとを有するため、これは固相化学においては一般的ではない(例えばカオリナイト、Al2Si2O5(OH)4)。
【0047】
通常、層状複水酸化物(LDHs)は、下記式で表される。
【0048】
【0049】
ここで、
ΜIIは、二価の金属イオンであり、好ましくはMg2+、Ca2+、Mn2+、Fe2+、Zn2+、Cu2+、Ni2+及びCo2+であり;
ΜIIIは、三価の金属イオンであり、好ましくはAl3+、Cr3+、Fe3+、Ga<3+>、及びMn3+であり;
An-は、アニオンであり、好ましくはCl-、CO3
2-、NO3
-、Br-、SO4
2-及びアルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、有機カルボン酸塩、有機リン酸塩又はそれらの混合物であり、より好ましくはCl-、CO32-、NO3-、Br-、SO42-又はそれらの混合物であり、
nは負電荷の数であり、通常1~2の範囲であり、例えば、Cl-の場合にはn=1であり、CO3
2-の場合にはn=2であり;
yは結晶構造を安定化するのに必要な水分子の数であり、通常、yは0.25~4、好ましくは0.5~4、より好ましくは0.5~1.0の範囲内であり;
xは通常0.1~0.5の範囲内であり、好ましくは0.10~0.38の範囲内であり、より好ましくは0.10~0.33の範囲内である。
【0050】
層状複水酸化物(LDHs)は、とりわけ、参照により本明細書に組み込まれるF.Cavani、F.Trifiro、A.Vaccari、Catal.Today 1991、11、173に記載されている。
【0051】
An-がアルキルスルホン酸塩の場合、アルキル基は通常、C1~C20のアルキル基である。
【0052】
An-がアルキルアリ-ルスルホン酸塩の場合、アルキルアリ-ル基は、C6~C20のアルキルアリ-ル基である。
【0053】
An-が有機カルボン酸塩の場合、カルボキシレート基に結合した有機基は、通常、1~20の炭素原子と5までのヘテロ原子とを含み、好ましくは、ヘテロ原子がある場合はヘテロ原子はN、O、P及びSから選択される。通常、有機カルボン酸塩は、1~2のカルボキシレート基、好ましくは1のカルボキシレート基を含む。
【0054】
「カルボキシレート基に結合した有機基」とは、カルボキシレート基が有機基の一部ではないことを意味する。従って、カルボキシレート基中に存在する酸素及び炭素原子は、有機基としてカウントしない。したがって、例えば、酢酸塩の場合、有機基はメチルである。
【0055】
An-が有機リン酸塩である場合、ホスフェート基に結合した有機基は、独立して、通常1~20の炭素原子及び5までのヘテロ原子を含み、好ましくは、ヘテロ原子が存在する場合、ヘテロ原子は、N、O、P及びSから選択される。通常、有機リン酸塩は、1つのリン酸基と1つの有機基とを含む。
【0056】
「ホスフェート基に結合した有機基」という用語は、ホスフェート基が有機基の一部ではないことを意味する。従って、ホスフェート基中に存在する酸素原子及びリン原子は、有機基としてカウントしない。従って、例えば、リン酸メチルの場合、有機基はメチルである。
【0057】
好ましくは、層状複水酸化物(LDHs)は、下記式で表される化合物である。
【0058】
【0059】
ここで、
ΜIIは、Mg2+、Ca2+又はZn2+であり;
ΜIIIは、Al3+であり;
An-は、Cl-、CO3
2-及びNO3
-であり、
yは、0.25~4の範囲内であり、好ましくは0.5~1.0の範囲内であり;
xは、0.10~0.38の範囲内であり、好ましくは0.10~0.33の範囲内である。
【0060】
より好ましくは、層状複水酸化物(LDHs)は、合成ハイドロタルサイト
Mg4.5Al2(OH)13(CO3)3.5・H2O(CAS番号11097-59-9)
又はハイドロタルサイト
Mg6Al2(OH)16(CO3)・4H2O
から選択される。
【0061】
特に好ましいのは、ハイドロタルサイト、ハイドロカルマイト、金属脂肪酸、酸化亜鉛及び炭酸カルシウムである。
【0062】
本発明の好ましい実施態様によれば、ポリオレフィン組成物はさらにアミン系酸化防止剤を含む。
【0063】
好ましくは、アミン系酸化防止剤は芳香族化合物であり、アミンは芳香族コアに結合している。
【0064】
アミン系酸化防止剤は、フェニレンジアミン類、ジフェニルアミン類、キノリン類、ナフチルアミン類及びそれらの混合物を含む群から選択されるのが特に好ましい。
【0065】
より好ましいアミン系酸化防止剤は、N、N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(メチルエチル)、N’-フェニル-1,4-ベンゾールジアミン、N、N’-ジフェニル-1,4-フェニレンジアミン、スチレン化ジフェニルアミン、4,4,ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、重合1,2-ジヒドロ-2,2,4-トリメチルキノリン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、N-フェニルナフタレン-1-アミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン又はそれらの混合物を含む群から選択される。
【0066】
本発明の好ましい実施形態によれば、安定剤組成物は以下の構造による酸化防止剤を含まない:
【0067】
【0068】
ここで、
R8、R9、R10、R11及びR12は、独立して、H、又はヘテロ原子を含んでいてもよい非置換の脂肪族もしくは芳香族ヒドロカルビルラジカルである。
【0069】
本発明の好ましい実施形態によれば、安定剤組成物はビタミンEを含まない。
【0070】
本発明はさらに、本発明のポリオレフィンを含む製品及び/又は本発明の使用を利用する製品に関する。
【0071】
好ましい実施形態によれば、製品は、パイプ、硬い包装体、柔軟な包装体、保護ライナー、シール、及びガスケットを含む群から選択される製品を含む。
【0072】
上記の構成要素、ならびに特許請求の範囲に記載された構成要素及び記載された実施形態において本発明に従って使用される構成要素は、それらのサイズ、形状、材料の選択及び技術的概念に関して特別な例外を受けることはなく、関連分野で知られている基準を制限なしに適用することができる。
【0073】
本発明の目的のさらなる詳細、特徴及び利点は、従属請求項及び以下の各図の説明に開示されており、それらは例示的な様式で、本発明による1つの好ましい実施形態を示している。そのような実施形態は必ずしも本発明の全範囲を表すものではなく、したがって本発明の範囲を解釈するために特許請求の範囲及び本明細書を参照する。前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明は両方とも例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求の範囲に記載の本発明のさらなる説明を提供することを意図していることを理解されたい。
【実施例】
【0074】
実験データの説明
ポリオレフィン:
後述する実験試験は市販のHDPEグレードのポリオレフィンを用いて実施された。それは、メルトフロー指数MFI2.16/190が4.0[g/10分]であり、密度が0.953[g/cm3]であり、チーグラー/ナッタ触媒を用いて製造されたポリエチレンである。
【0075】
試料調製:
HDPEの配合は、窒素下、190℃~215℃の温度分布で、Toshiba TEM 37BS二軸押出機を使用して行われた。1.6mm厚さのプラークの射出成形は、Dongshin D-150インジェクターにおいて220~245℃の温度分布で実施された。その後、試料を貯水装置に収まるように手動で切断した。
【0076】
貯水試験:
試料を、3ppmの二酸化塩素を含有する70℃の水にさらした。二酸化塩素レベルは次のようにして発生させた:3.75gの8%市販二酸化塩素溶液を1000mlビーカーに加えた。996.25gの蒸留水をビーカーに加えた。溶液を混合し、続いて貯蔵試験に使用される水浴に注いだ。上記の手順を繰り返した後、貯水装置を閉じた。二酸化塩素濃度を週に2回測定し、必要に応じて補正した。
【0077】
基準:
OIT(酸素誘導時間)を200℃の温度及び50mL/分の酸素フローで使用した。5~8mgの打ち抜きされた試料に対してOITを実施した。OIT試験は、(非常に)耐久性のあるプラスチック物品の寿命の予測を試みる試験として使用される。
【0078】
配合:
すべての配合は、制酸剤として1200ppmのステアリン酸カルシウム及び加工安定剤として2000ppmのSONGNOX(登録商標)PQを含んでいた。実験1では、以下の配合を試験した。
【0079】
【0080】
実験1は下記結果となった:
【0081】
【0082】
比較例C.1から分かるように、熱安定剤の添加を省略すると、初期のOITが既に非常に低いので、耐久性のある用途(例えばパイプ)に適したポリオレフィンは得られず、それは(たとえ二酸化塩素にさらされる前であっても)プラスチック物品の寿命が非常に短いことを示している。フェノール部分のヒドロキシ基に対する両方のオルト位がアルキル置換されているフェノール部分を含む熱安定剤を添加すると、一定レベルのOITが得られる;しかしながら、比較例C.2で達成されたOITレベルは依然として不十分と考えられている。比較例C.3は、上述の熱安定剤の濃度を著しく増加させることによって、OITをわずかにのみ増加させることができることを教示している。それでも、現在達成されているOITレベルは不十分と考えられている。
【0083】
実施例I.1は、驚くべきことに、フェノール部分のヒドロキシ基に対する両方のオルト位がアルキル置換されたフェノール部分を含む上記の熱安定剤と、フェノール部分のヒドロキシ基に対して一方のオルト位がアルキル置換され、かつ他のオルト位が非置換であるフェノール部分を含む他の安定剤との組合せにより顕著に改善されたOITが得られることが教示された(これはプラスチック物品の耐久性のある用途に適していると考えられる)。
【0084】
第2セットの実験では、以下の3つの配合について、3ppmの二酸化塩素を含有する水に70℃で8ヶ月間さらした後の絶対OIT値を評価した。
【0085】
【0086】
以下の結果が得られた。
【0087】
【0088】
比較例C.2から分かるように、フェノール部分のヒドロキシ基に対する両方のオルト位がアルキル置換されているフェノール部分を含む熱安定剤を添加すると、0[分]のOIT値が得られ、よって、8か月後には熱安定剤が完全に消失することを示している。実施例I.3は、実施例I.1及びI.2よりも33%低い濃度で使用されているが、驚くべきことにはるかに最高のOIT値をもたらす。
【0089】
上記の詳細な実施形態における要素及び特徴の特定の組み合わせは例示に過ぎない。本明細書中のこれらの教示と他の教示との交換及び置換、並びに参照により援用される特許/出願もまた明示的に企図される。当業者が認識するように、特許請求の範囲に記載の本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されたものの変形、修正、及び他の実施が可能である。したがって、前述の説明は例示にすぎず、限定することを意図するものではない。請求項において、単語「有する」は他の要素又はステップを排除するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を排除するものではない。特定の手段が互いに異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物において定義される。さらに、説明及び特許請求の範囲で使用されている参照符号は、請求されている本発明の範囲を限定するものではない。