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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ECGモニター接続用ECGケーブル
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/271 20210101AFI20221018BHJP
【FI】
A61B5/271
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019548286
(86)(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 EP2018055702
(87)【国際公開番号】W WO2018162616
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】17159884.0
(32)【優先日】2017-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】フェルバーケル,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ランベルト,ニコラース
(72)【発明者】
【氏名】カールマン,ヨゼフュス アルノルデュス ヘンリキュス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ウールレー,ピエール ヘルマニュス
(72)【発明者】
【氏名】デ サンベル,マルク アンドレ
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073233(JP,A)
【文献】特開2012-236007(JP,A)
【文献】特開2002-125943(JP,A)
【文献】特開平08-017249(JP,A)
【文献】特開昭56-008034(JP,A)
【文献】特開平04-071536(JP,A)
【文献】実開昭58-157111(JP,U)
【文献】特表2014-509900(JP,A)
【文献】特開2006-127866(JP,A)
【文献】特開2002-246204(JP,A)
【文献】特開平05-111152(JP,A)
【文献】特開平08-078212(JP,A)
【文献】特開2003-174952(JP,A)
【文献】実開昭48-054030(JP,U)
【文献】特開2005-340615(JP,A)
【文献】中国実用新案第203953644(CN,U)
【文献】米国特許第6032063(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/271-5/274
H01C 3/00-3/20
H01B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ECGモニターに接続するECGケーブルであって、
コアと、
前記コアの周囲に巻かれ、互いに絶縁された複数の抵抗ワイヤを含む抵抗ワイヤケーブルであって、各抵抗ワイヤの抵抗は、少なくとも1kΩであり、前記抵抗ワイヤは、抵抗率が1.35~1.45μΩ*mである材料よりなる、抵抗ワイヤケーブルと、
各々が一端で各抵抗ワイヤに接続され、他端で電極に接続された、2以上の可撓性リードワイヤとを有する、
ECGケーブル。
【請求項2】
前記抵抗ワイヤケーブルは、前記コアの少なくとも一部に螺旋状に巻かれている、
請求項1に記載のECGケーブル。
【請求項3】
前記抵抗ワイヤケーブルは、実質的にFeCrAl合金で作られている、
請求項1に記載のECGケーブル。
【請求項4】
前記抵抗ワイヤの直径は、50ないし500μmの範囲にある、
請求項1に記載のECGケーブル。
【請求項5】
前記抵抗ワイヤは、複数の抵抗ワイヤの束を含む、
請求項1に記載のECGケーブル。
【請求項6】
前記抵抗ワイヤケーブルは、反対の電流を流す2本のバイファイラ巻き抵抗ワイヤを含む、
請求項1に記載のECGケーブル。
【請求項7】
前記抵抗ワイヤケーブルは、前記コアの周囲に反対方向に巻かれた並列抵抗ワイヤを含む、
請求項1に記載のECGケーブル。
【請求項8】
前記抵抗ワイヤケーブルは、絶縁されていないワイヤの織り込まれたシールドを含む、
請求項1に記載のECGケーブル。
【請求項9】
2本以上の抵抗ワイヤケーブルが前記コアに並列に巻かれている、
請求項1に記載のECGケーブル。
【請求項10】
前記コアは、プラスチック、フェライト、または透磁率が10より高い材料よりなる、
請求項1に記載のECGケーブル。
【請求項11】
前記抵抗ワイヤケーブルの巻線のピッチは、前記抵抗ワイヤケーブルの長さにわたって変化する、
請求項2に記載のECGケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ECGモニターに接続するECGケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルスケアおよび/またはライフスタイルにおいては、ウェアラブルデバイスに向けた強いトレンドがある。これは、なかんずく、使いやすさ、患者の快適さ、ワークフロー管理などの移動式モニタリングに対する需要の増加に関連している。このようなウェアラブルデバイスの主要な特徴および要件の一つは、その具体的なフォームファクターであり、ECGがこれを満たすことは最も困難である。例えば、最大10個の電極およびワイヤ(「リード」または「リードワイヤ」と呼ばれることが多い)を使用して、モニター上にいわゆる12リードECG表示を生成することができる。
【0003】
トランクケーブルを、3、4、5、または6個の電極を含むリードセットとECGモニターとの間のインターフェースとして使用する。モニタリング装置を保護し、除細動パルスの場合には、(心臓をリセットするために必要に応じて)最低でも90%のエネルギーが患者に確実に供給されるようにするため、高エネルギー吸収が可能な直列保護抵抗器が、ワイヤ毎に必要となる。前記抵抗器(一般的には、呼吸に対する1kオームとECG関連リードワイヤに対する3.3kΩ)は、トランクケーブルコネクタに配置され、約15J(1kΩの場合)を最小限吸収することができ、これは、かなり大きいトランクケーブルコネクタを必要とする。
【0004】
標準的なICU ECG患者リードセットは、48kHzにおける生体インピーダンス呼吸測定を可能にするため、低いインダクタンスを有するべきである。
【0005】
手術室(OR)専用のOR ECG患者用リードセットには、焼灼器および電気ナイフの使用によるRF信号を抑制するために、6.8mHのインダクタおよび9kOhmの低電力抵抗器を直列に備える。高い(10kOhm)抵抗のため、バイオインピーダンス(呼吸)測定は不可能であり、換気およびカプノグラフィー信号が代替として利用可能であるOR用途に許容可能である。ECGモニターが10kΩ(9+1kΩ)の直列抵抗を検出すると、バイオインピーダンスが自動的に非作動(disabled)となる。
【0006】
ECGモニターと接続する従来のECGケーブルが、例えば特許文献1と特許文献2に開示されている。
【0007】
現在、開発は、(本明細書に理解されるECGモニターの一実施形態として)小型のウェアラブル測定モジュール、非ガルバノ式(誘導)電力供給およびワイヤレス無線通信の組み合わせを、高度で高品質のウェアラブル患者モニタリングのためのイネーブラ(enabler)として目指している。しかし、現在のところ、ECGトランクケーブルコネクタの寸法(例えば、約8×4×1.8cm)は大き過ぎて、対象とする小型測定モジュールと互換性がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】中国特許第203953644号
【文献】中国特許第201918188号
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、対象とする小型測定モジュールとより互換性のある、ECGモニターと接続するECGケーブルを提供することである。
【0010】
本発明によれば、ECGモニターと接続する心電図ケーブルが提供される。該ECGケーブルは、
- コアと、
- 前記コアの周囲に巻かれ、互いに絶縁された複数の抵抗ワイヤを含む抵抗ワイヤケーブルであって、各抵抗ワイヤの抵抗は、少なくとも500Ωであり、前記抵抗ワイヤは、抵抗率が少なくとも0.135μΩ*mである材料よりなる、抵抗ワイヤケーブルと、
- 各々が一端で各抵抗ワイヤに接続され、他端で電極に接続された、2以上の可撓性リードワイヤとを有する。
【0011】
本発明の好ましい実施形態は従属項に規定した。
【0012】
本発明は、従来使用されていたトランクケーブルと従来使用されていた大きなトランクケーブルコネクタを、新しいケーブルで置き換えるという考え方に基づいている。新しいケーブルは、電極への(コアと抵抗ワイヤケーブルで形成された)(細い)トランクケーブルと、(少なくとも部分的に)可撓性リードワイヤとを含む。特に、好ましくは抵抗ワイヤおよび任意的に高透磁率(例えば、フェライト)材料を使用する巻線技術に基づいて、リードセットおよび/またはトランクケーブルに分布インピーダンス(抵抗、インダクタ)を有する小型化されたECGケーブルセットを作成することを提案する。これにより、別個の大型トランクケーブルコネクタ(現在は抵抗器の通常のホルダ)の必要性がなくなり、ケーブルセットのサイズが大幅に小さくなる。これにより、ワークフローと患者の親しみやすさが大幅に改善される。広範囲のワイヤ直径および巻線形状が可能であり、低インダクタンスおよび高インダクタンスケーブルの両方を可能にする。
【0013】
従って、本発明によれば、多重抵抗ワイヤケーブルを用いて、ワイヤ巻き抵抗器を形成する。このような抵抗ワイヤケーブルは、複数の抵抗ワイヤ(「コア」とも呼ばれる;一般に「抵抗ワイヤ」とも呼ばれている)を使用するため、マルチコアケーブルとも呼ばれる。この状況において、リードワイヤがそれぞれの抵抗ワイヤに接続されているということは、リードワイヤがそれぞれの抵抗ワイヤに直接接続されているか、またはコネクタを介して接続されていることを意味する。
【0014】
好ましい一実施形態において、前記抵抗ワイヤケーブルは、前記コアの少なくとも一部に螺旋状に巻かれている。これにより、抵抗ワイヤケーブルの所望の抵抗率を容易に設計することができる。
【0015】
有利な材料として、ワイヤケーブルの抵抗ワイヤは、所望の抵抗率を達成することができる商標Kanthalの下に頒布される材料のようなFeCrAl合金で実質的に作製される。
【0016】
好ましい一実施形態において、抵抗ワイヤの直径は、50~500μmの範囲、特に100~200μmの範囲であり、これにより所望の小型化可撓性が確保される。
【0017】
抵抗ワイヤを実装する様々な実施形態が存在する。好ましい実施形態では、抵抗ワイヤは、複数のワイヤの束を備える。これにより可撓性が高まり、繰り返される応力破壊の可能性が低下する。
【0018】
一実施形態では、抵抗ワイヤケーブルは、反対の電流を流す2本のバイファイラ巻線を備えていてもよい。これにより自己インダクタンスが低減される。
【0019】
さらに別の実施形態では、抵抗ワイヤケーブルは、コアの周囲に反対方向に巻かれた並列抵抗ワイヤを含んでもよく、これによっても所望の可撓性および小型化を達成することができる。
【0020】
抵抗ワイヤケーブルは、非絶縁ワイヤの織り込みシールド(woven shield)を含む。これによっても自己インダクタンスを大きく低減することができる。
【0021】
他の一実施形態では、抵抗ワイヤケーブルは、複数の抵抗ワイヤを備え、各抵抗ワイヤは、リードワイヤに接続され、前記複数の抵抗ワイヤは、コアの周囲に並列に巻かれる。利点は、長さがわずかに増加するだけで、同じワイヤ内に2つ以上の抵抗器を設けることができることである。
【0022】
ECGのコアは、プラスチック、フェライト、または透磁率が高い材料よりなり、特に、透磁率が10より高い、好ましくは100より高い材料により作成されてもよい。これにより、所望であれば、さらに誘導率が増加する。
【0023】
他の一実施形態において、前記抵抗ワイヤの巻線のピッチは、前記抵抗ワイヤケーブルの長さにわたって変化する。このようにして、抵抗の高い領域と低い領域を作り出すことができ、異なる長さのケーブルを容易に得ることができる。
【0024】
好ましくは、各抵抗ワイヤの抵抗は少なくとも1kΩである。したがって、直径、長さ、および材料は、所望の抵抗値を達成するように選択される。
【0025】
一実施形態では、抵抗ワイヤは、抵抗率が1.35ないし1.45μΩ*mの範囲である材料よりなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の上記その他の態様を、以下に説明する実施形態を参照して明らかにし、説明する。
【0027】
以下の図面において、
図1】本発明によるECGケーブルの概略レイアウトを示す概略図である。
図2】複数の並列ワイヤを有する、本発明によるECGケーブルの概略レイアウトを示す概略図である。
図3】螺旋状に巻かれた並列ワイヤを有する、本発明によるECGケーブルの一実施形態を示す概略図である。
図4】逆並行方向に螺旋状に巻かれたワイヤを有する、本発明によるECGケーブルの一実施形態を示す概略図である。
図5】織りワイヤを有する、本発明によるECGケーブルの一実施形態を示す概略図である。
図6A】異なるピッチを有する螺旋状に巻かれたワイヤを有する、本発明によるECGケーブルの一実施形態を示す概略図である。
図6B】異なるピッチを有する螺旋状に巻かれたワイヤを有する、本発明によるECGケーブルの一実施形態を示す概略図である。
図7A】異なるコアを有する、本発明によるECGケーブルの一実施形態を示す概略図である。
図7B】異なるコアを有する、本発明によるECGケーブルの一実施形態を示す概略図である。
図8】可変ピッチを有する螺旋状に巻かれたワイヤを有する、本発明によるECGケーブルの一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明によるECGケーブル1の概略レイアウトを示す概略図である。これは、コア2と、コアの周囲に例えば螺旋状に巻かれ、抵抗ワイヤ31によって形成される抵抗ワイヤケーブル3aと、それぞれが一端40では対応する抵抗ワイヤ31に、他端41では電極5に接続される2つ以上の可撓性リードワイヤ4とを有する。以下に説明するように、抵抗ワイヤケーブルを配置し、抵抗ワイヤによって抵抗ワイヤケーブルを形成する様々な実施形態がある。
【0029】
例えば抵抗値、抵抗の温度係数(TCR)、機械的性質など、提案された解決策の要件の全部または一部を満たすことのできる潜在的に有用な金属材料は多数存在する。好ましい材料はFeCrAlである。広範囲の抵抗および高温用途に使用される鉄-クロム-アルミニウム(FeCrAl)合金のファミリーは、例えば、Kanthalの商品名で入手可能である。Kanthal FeCrAl合金は主に鉄、クロム(20~30%)およびアルミニウム(4~7.5%)からなり、例えば、Kanthal A‐1、Kanthal D、Kanthal AFは1.35~1.45μΩ*mの抵抗率を有する。例えば、この材料は、このワイヤをプラスチックコアに巻き付けることにより、1kΩの所望の抵抗を有する抵抗器を設計することを可能にする。しかし、同様のまたはより低い抵抗率を有するいくつかの他の安定な抵抗金属合金があり、これを代替的に適用してもよい。
【0030】
(除細動パルスのエネルギーによる)50Kの温度上昇を目安に、直径0.16mmの抵抗ワイヤの必要長さの約13mを用いて、1kOhmにすることができる。リードワイヤの長さを想定0.5mとして13mの抵抗ワイヤを埋め込むには、0.25mmの螺旋ピッチが必要である。4倍大きい温度上昇(200K)が許容されるならば、直径0.11mmの抵抗ワイヤを用いて、ECGワイヤ長を6.5mに短縮することができるだろう。3.3kΩの抵抗では、直径は同じ長さでsqrt(3.3)=1.8の係数だけ小さくすることができる(高抵抗での除細動パルスによる吸収エネルギーが小さくなるため、ワイヤの熱質量は小さくできる)。これにより、非巻線のソリューションを使用することも、より緩やかな巻線技術を使用することも可能になる。
【0031】
算出値を下表に示す(除細動のための抵抗熱パルスが40Jであると仮定すると、一般的に除細動パルスは約360Jであるが、1kΩのときは、リードワイヤでは約40Jのみである):
【表1】
呼吸測定には低誘導性のリードワイヤが必要となる。長さ0.5mの螺旋に巻かれた長さ13mの抵抗ワイヤの自己インダクタンスは32μHである。多くのECG応用において、呼吸も、典型的には48kHzのキャリア周波数において、バイオインピーダンスを使用することによって測定される。48kHzにおける螺旋のリアクタンスは、約10オームであり、長さ6.5mのワイヤの場合、約2.5オームである。
【0032】
ECGケーブルは、金属ロッドに抵抗ワイヤケーブルを巻き付けることによって製造することができ、金属ロッドを取り外した後、絶縁を螺旋の外側に適用する。最後に、内部は高い柔軟性を有するシリコーンゴムで満たされてもよい。可能性があり将来性のあるリール・ツー・リール製造法では、螺旋をプラスチックコアの周りに連続的に巻き付け、押出しプロセスを介して直ちに絶縁体で覆うことができる。
【0033】
提案されたアイデアを実装するための多くの実施形態があり、以下でさらに説明する。
【0034】
図2は、複数の並列ワイヤ320を有する、本発明による抵抗ワイヤ32の一実施形態を示す概略図である。リードワイヤは図示していない。電気ワイヤと同様に、図1に示す単一の抵抗ワイヤ31は、複数の細いワイヤ320を含むワイヤ32で置き換えることができる。これにより、柔軟性が高まり、繰り返される応力破壊の可能性が低下する。抵抗ワイヤ32の全体積は、熱エネルギーがまだ吸収され得ることを確実にするために一定に維持されるべきである。ワイヤ32の全直径は、細いワイヤ320間の小さい空気ギャップのため、わずかに増加する。したがって、直径150μmの単一のワイヤを、例えば、直径25μmの36本のワイヤまたは直径50μmの9本のワイヤに置き換えることができる。
【0035】
図3は、本発明によるECGケーブルの一実施形態を示す概略図であり、螺旋状に巻いたワイヤ33、34が抵抗ワイヤケーブル3bを形成する。リードワイヤは図示していない。(例えば、呼吸測定の)バイオインピーダンス測定には、低自己インダクタンスリードセットを必要とし、これは、可能な限り浮遊磁場(magnetic stray field)の低減を必要とする。これは、隣接するワイヤ33、34に反対の電流が流れるバイファイラ巻線33、34によって達成することができる。この場合、追加の(通常の)ワイヤを使用することができ、この巻線を使えば、始端と終端が同じ位置になる。あるいは、リードワイヤの反対側の端部に、通常の巻線を追加してもよい。
【0036】
別の一実施形態を図4に示す。図4は、逆並行方向にスパイラル状に巻かれたワイヤを有する、本発明によるECGケーブルの一実施形態を示す概略図を示している。この抵抗ワイヤケーブル3cは、(DNA分子の二重螺旋構造のような)逆の回転方向を有する螺旋に巻かれた平行(抵抗)ワイヤ35,36を使用する。
【0037】
図5は、織りワイヤを有する、本発明によるECGケーブルの一実施形態を示す概略図である。この実施形態では、抵抗ワイヤケーブル3dは、非絶縁ワイヤ37の織り込みシールドによって形成される。ここでも、(例えば、0.225μmのピッチを有する)直径150μmの単一のワイヤの代わりに、同じピッチを有する直径50μmの10本のワイヤの同軸織り構造を使用することができる。偶数のワイヤがこの構造と組み合わされて使用される場合、単一のワイヤの自己インダクタンスは相殺され、自己インダクタンスは非常に低いレベルに低下する。これにより、ノイズが減少し、呼吸検出が可能になる。一実施形態では、編組角度(braiding angle)は、例えば、図1に示されるように、螺旋巻きワイヤにおける角度と同じであるべきである。すなわち、実際には、図5に示される角度とは全く異なる角度が使用される。
【0038】
別の、従って解決すべき妨害効果は、摩擦電気効果またはハンドリングノイズであり、これは、ケーブルが機械的剛性部分にぶつかったり、使用中に踏みつけられたりしたときに、衝撃に関連した「スラッピング」ノイズを引き起こす。これは、キャパシタンス、具体的には、絶縁体または誘電体が変形するときに生じるキャパシタンスの変化に関係する。最良の回避策は、柔らかく、衝撃吸収性のある絶縁体とジャケット材を充分な充填材を備えた非常に堅固な構造で使用して、ケーブルの形状を確実に保持することである。
【0039】
図6A及び図6Bは、1つの螺旋状に巻かれたワイヤケーブル3a(図6A)及び2つの螺旋状(平行)に巻かれたワイヤケーブル3f、3gを有するワイヤケーブル配置3e(図6B)を有する、本発明によるECGケーブルの2つの実施形態を示す概略図である。巻線抵抗器付きの5本または10本の別々のリードワイヤを有する代わりに、巻線ピッチを大きくして、例えば、約2mで直径2mm(ピッチ5×0.175mm=約0.9mm)の単一のコア上に5本または10本の並列ワイヤ抵抗器(すなわち、ワイヤケーブル)を保持することもでき、または5mの単一コア上に10本を保持することもできる。コアの直径を約8mmに増やした場合、再び5リードECGケーブルのピッチを0.5mに下げることができる。しかし、これらは、単に、例示的な実施のための例示的な数字であることに留意されたい。
【0040】
図7A図7Bは、異なるコアを有する、本発明によるECGケーブルの2つの実施形態を示す概略図である。図7Aに示されるように、電磁的に不活性な(例えば、プラスチック)コア2a上に抵抗ワイヤを巻く代わりに、図7Bに示すように、高μ(すなわち、高透過性の、例えば、フェライト)コア2bを使用してインダクタンスを大きくしてもよい。インダクタンスは、異なる位置に低抵抗ワイヤ巻線を使うことによって、抵抗から物理的に分離することができる。これにより、6.8mHおよび9kOhmのリードセットコネクタを省略することにより、OR ECGケーブルセットをさらに小型化することができる。
【0041】
このインダクタンスは、例えば、磁気不活性(例えば、プラスチック)コアを、長さ0.5m、ワイヤ13mの螺旋、μr(相対透磁率)が約200の材料で置き換えることによって実現することができる。しかし、ECGケーブルは、より低い抵抗で機能するように再設計または最適化することもできる。一般に、全抵抗は、例えば1kOhm以上にするべきであるが、ワイヤ抵抗は変更可能であり、この多少の長さが必要とされる場合がある。
【0042】
図8は、可変ピッチを有する螺旋状に巻かれたワイヤケーブル3hを有する、本発明によるECGケーブルの一実施形態を示す概略図である。巻線ピッチ領域を変化させることにより、同じ抵抗ワイヤを使用して、抵抗がより高い領域(保護用)とより低い領域とを作ることができる。このようにして、同じ(標準化された)ケーブル技術を適用して、異なる長さのケーブルを作ることができる。この領域は、視覚的に示されてもよく、ケーブルを所望の長さに切断するために使用されてもよい。さらなる利点として、低インピーダンス領域の長さが全インピーダンスにあまり影響し過ぎないため、異なるケーブル長が実現可能である。
【0043】
従って、本発明により、従来使用されていたトランクケーブル(trunk cable)及びトランクケーブルコネクタを交換することができ、ECGケーブルは、よりコンパクトで、軽量で、可撓性を有するようになる。
【0044】
本発明を、図面と上記の説明に詳しく示し説明したが、かかる例示と説明は例であり限定ではなく、本発明は開示した実施形態には限定されない。 請求項に記載した発明を実施する際、図面、本開示、及び添付した特許請求の範囲を研究して、開示した実施形態のその他のバリエーションを、当業者は理解して実施することができるであろう。
【0045】
請求項において、「有する(comprising)」という用語は他の要素やステップを排除するものではなく、「1つの(「a」又は「an」)」という表現は複数ある場合を排除するものではない。単一の要素又はその他のアイテムが請求項に記載した複数のユニットの機能を満たすこともできる。相異なる従属クレームに手段が記載されているからといって、その手段を組み合わせて有利に使用することができないということではない。
【0046】
請求項に含まれる参照符号は、その請求項の範囲を限定するものと解してはならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8