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特許7160825クライオポンプ及び他の大容量構造用の窒化ホウ素ナノチューブ材料の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】クライオポンプ及び他の大容量構造用の窒化ホウ素ナノチューブ材料の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/064 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
C01B21/064 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019548542
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-16
(86)【国際出願番号】 US2017063752
(87)【国際公開番号】W WO2018102437
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】62/427,583
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516318891
【氏名又は名称】ビイエヌエヌティ・エルエルシイ
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】ドゥシャティンスキ,トーマス・ジイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン,ケヴィン・シイ
(72)【発明者】
【氏名】スミス,マイケル・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴンス,ジョナサン・シイ
(72)【発明者】
【氏名】ホイットニー,アール・ロイ
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/100715(WO,A1)
【文献】KIM, Keun Su et al.,Polymer nanocomposites from free-standing, macroscopic boron nitride nanotube assemblies,RSC Advances,2012年,Vol.5/No.51,pp.1-8, ESI pp.1-9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 21/064
B82Y 30/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化ホウ素ナノチューブ(BNNT)構造の形成方法であって、前記方法は、
足場支持構造を熱可塑性プラスチック、インジウム、スズ、スズ合金、はんだ、及び低温溶融性ガラスのうち1つでコーティングすることと、
分散剤にBNNTを分散させることと、
分散した前記BNNTを前記足場支持構造に適用して、前記足場支持構造内に前記BNNTを分散させ、前記足場支持構造により支持されるようにすることと、
前記分散剤を取り除き、前記足場支持構造上に前記BNNTを残して、前記BNNT構造を提供することと、
を含み
前記分散したBNNTを適用することは、前記分散したBNNTを前記支持構造にスプレーコーティングすることと、前記支持構造上の前記分散したBNNTを凍結乾燥することと、前記分散したBNNTを、前記支持構造及び第2の支持構造上に拡散することと、のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記足場支持構造は、BNNT繊維、ステンレス鋼、ポリマー繊維、炭素繊維、及びガラス繊維のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記BNNTは、部分的に精製したBNNT材料、及び精製BNNT材料のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記BNNTをコーティングした支持構造をベークすることを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ベークすることは、約60~140℃のベーク温度で実施されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記分散剤は、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、エチルアルコール、及びアセトンのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
複数の分散したBNNTの層を前記足場支持構造に適用すること
を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記BNNTをコーティングした支持構造を圧縮することを更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記BNNTをコーティングした支持構造を真空でベークすることは、約200℃のベーク温度で実施され、かつ/又は、前記BNNTをコーティングした支持構造を空気中でベークすることは、約450℃のベーク温度で実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分散したBNNTを適用することは、前記分散したBNNTを前記足場支持構造上で凍結することと、前記分散剤を蒸発させることと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記分散剤を蒸発させることは、前記分散したBNNT材料を真空に配置することと、前記分散剤の温度を前記分散剤の凝固点未満まで下げることと、を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記分散剤は、蒸留水と、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及びアセトンのうち少なくとも1つと、を含むことを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記支持構造はバッキ-ペーパー/マットを含み、前記バッキ-ペーパー/マットを所望の形状に形状化することと、前記形状化したバッキ-ペーパー/マット及びフィルターに前記分散したBNNTを注入し、BNNTでコーティングしたバッキ-ペーパー/マット及びフィルターを形成することと、前記BNNTでコーティングしたバッキ-ペーパー/マット及びフィルターを乾燥させることと、を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記分散剤は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及びアセトンのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記分散したBNNTは、分散剤1mL当たり、約0.1~3mgのBNNT材料を有するBNNT糊を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記BNNT糊を前記支持構造及び第2の支持構造上に拡散させることと、前記支持構造及び前記第2の支持構造を結合することと、前記結合した支持構造及び前記第2の支持構造を圧縮することと、前記結合した支持構造及び第2の支持構造を加熱して分散剤を蒸発させることと、を更に含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2016年11月29日に出願された、米国特許仮出願第62/427,583号に対する優先権の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本開示は、クライオポンプ、高表面積フィルター、コーティング用足場、遷移放射検出器、中性子検出器、及び、材料が十分な体積で、かつ十分な構造的硬さを有して存在する場合に、窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)の性質から利益を受け得る同様のシステムで使用され得るなどの、大容量構造へのBNNTの配置方法に関する。
【背景技術】
【0003】
BNNTは様々な技術により製造されることができる。例えば、高温法又は高温高圧法により作製されるBNNTは典型的には、高品質なBNNTであり、即ち、壁の数が1~10個の範囲となり(大部分は二重壁及び三重壁である)、長さと直径の比が、典型的には10,000:1又はそれ以上であり、BNNTは触媒非含有であり、BNNTは、非常に高い結晶性である(長さ100直径当たり、欠陥は1個未満)。しかし、使用する方法(プロセス)、及び合成条件に応じて、ホウ素、非晶質窒化ホウ素(a-BN)、六方晶系窒化ホウ素(h-BN)ナノケージ、及びh-BNナノシートの小粒子が存在する場合がある。これらの粒子は典型的には、スケールが数十ナノメートルであるが、より小さくても、又は大きくてもよい。また、製造工程、供給原料、及び操作パラメーターに応じて、これらの小粒子はどこにおいても、合成後そのままの材料の質量の5質量%未満~95質量超を占め得る。
【0004】
BNNT材料は、いくつかの貴重な性質を有している。合成後そのままの高温法BNNT材料の密度は、典型的には1リットル当たり約0.5グラム(0.5g/L)であるが、容易に±50%は変化する。合成後そのままの材料を圧縮して、1立方センチメートル当たり0.5グラムに近づく密度にすることができる。圧縮すると、合成後そのままの材料は典型的には、圧縮された形状及び密度に近いまま保持される。ホウ素粒子、a-BN粒子、h-BNナノケージ、及びh-BNナノシートの大部分を取り除いた精製BNNT材料は、合成後そのままの材料同様の密度を有するが、最大密度は典型的には小さい。合成後そのままの高品質BNNT材料の表面積は、合成パラメーターの選択に応じて、典型的には100~200m2/g又はそれ以上の範囲である。
【0005】
所与の用途に対して、BNNT材料の密度を制御するのが望ましい場合がある。カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、及び窒化ホウ素ナノシート(BNNS)の特定の用途は、安定した密度に左右される。これらの材料の安定密度を達成するための一般的な技術は、糊として作用する少量のポリマー、シリコーン、又は他の同様の材料を添加することである。いくつかの用途に関して、二酸化炭素ガスなどの様々な発泡剤を使用して、材料を分散する。他の用途では、凍結乾燥技術を使用して材料を分散させる、及び、場合によってはエアロゲルを形成する。これら添加剤の大部分により、得られるCNT、グラフェン、及びBNNS構造は、極高真空(XHV)クライオポンプでのベークアウトサイクルなどの、対象の様々な環境における高温での残存ができなくなる。更に、いくつかのフィルターの化学的環境は、多くの添加剤には許容されるものではない。したがって、これらの材料の密度を安定化させるための現代のアプローチは、BNNTには有用ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
合成後そのままのBNNT材料を、少数の支持ワイヤと共に大容量に単純に詰め込むことにより最初の試験が実施されたものの、これは実行可能な商業的解決策ではない。大容量BNNT材料の用途は一般的に、ホウ素粒子を非含有でなければならず、輸送可能でなければならず、製造及び操作に関して十分効果的でなければならず、振動を含む環境において耐久可能でなければならず、かつ、BNNT材料を取り除くことができるガス及び/又は液体流を残留させなければならない。したがって、大容量構造で使用するためのBNNTの構築方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書にて開示するように、BNNTを、様々な用途に対して好適な、安定した密度及び構造強度を備えた大容量構造で調製することができる。例えば、このようなBNNT材料は、クライオポンプ、高表面積フィルター、コーティング用足場、遷移放射検出器、中性子検出器、及び、材料が十分な体積で存在する場合に、BNNT特有の性質を利用する同様のシステムにおいて貴重な用途を有する。
【0008】
大容量構造にBNNTを配置する方法としては、足場材料を配置すること、及びBNNT材料をその足場上に適用することが挙げられる。BNNT材料は、BNNTスプレー、BNNTバッキ-ペーパー/マットによるコーティング、凍結乾燥、濾過、及びBNNTグルーイングを含む1つ以上の方法により適用することができる。いくつかの実施形態において、足場としては、BNNT繊維、ステンレス鋼、Kevlar(登録商標)、ポリマー繊維、炭素繊維、及びガラスファイバーが挙げられる。いくつかの実施形態において、足場の間隔は約0.3~10mmである。いくつかの実施形態において、BNNT材料は部分的に、又は完全に精製されている。
【0009】
BNNTスプレーを用いて足場をコーティングする方法は、BNNT材料を分散させてBNNTスプレーを形成することと、BNNTスプレーを用いて足場をコーティングすることと、BNNTをコーティングした足場をベークすることと、を含む。いくつかの実施形態において、ベーク温度は約60~140℃であってよいが、ベーク温度及び期間は特定の実施形態に対して最適化してよい。例えば、10cm×10cm未満の小面積では1分以下しか必要とされ得ないが、1平方メートルの面積には、大型オーブンを使用しない限り数十分が必要とされ得る。いくつかの実施形態において、分散剤はイソプロピルアルコールを含むことができる、又はイソプロピルアルコールであることができる。いくつかの実施形態において、方法は、熱性プラスチック、インジウム、スズ、スズ合金又は他のはんだ、及び低温溶融性ガラスのうち少なくとも1つを用いて、足場を事前清掃すること、及び/又は足場をプレコートすることを更に含む。いくつかの実施形態において、方法は、スプレーコーティングを足場上で圧縮すること、及び/又はBNNTをコーティングした足場をベークして揮発性有機化合物を取り除くことを更に含む。いくつかの実施形態において、BNNTをコーティングした足場を約200℃で空気中でベーク、若しくは真空ベークすることができる、又は代替的には、残留炭素が存在する場合、典型的には30分~2時間、約450℃で空気中でベークすることができる。その温度において、残留炭素は二酸化炭素に転換される。当業者は、特定の実施形態に関する、最適なベーク温度及び期間を決定することができる。
【0010】
BNNTバッキ-ペーパー/マットを用いて足場をコーティングする方法は、BNNTバッキ-ペーパー/マットを足場上に重ねることと、BNNTをコーティングした足場を、約60~140℃の温度でベークすることと、を含む。いくつかの実施形態において、方法は、熱性プラスチック、インジウム、スズ、スズ合金又は他のはんだ、及び低温溶融性ガラスのうち少なくとも1つを用いて、足場を事前清掃すること、及び/又は足場をプレコートすることを更に含む。いくつかの実施形態において、方法は、バッキ-ペーパー/マットを足場上で圧縮して、共形付着を向上させる、若しくは提供すること、及び/又はBNNTをコーティングした足場をベークして揮発性有機化合物を取り除くことを更に含む。いくつかの実施形態において、BNNTをコーティングした足場は約200℃で真空ベーク、又は450℃で空気中でベークすることができる。
【0011】
BNNT材料を足場上に凍結乾燥する方法を本明細書で開示する。方法は、BNNT材料を分散させることと、分散BNNT材料を容器中で凍結することと、分散BNNT材料を真空に配置し、分散剤の凝固点未満まで温度を下げることと、分散BNNT材料を標準温度及び圧力まで戻すことと、を含む。いくつかの実施形態において、分散剤は、蒸留水中のメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及び揮発性有機化合物のうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、分散剤は約1~10重量%である。いくつかの実施形態において、温度は約-5℃~-80℃まで低下する。いくつかの実施形態において、温度は約-40℃まで低下する。
【0012】
BNNTバッキ-ペーパー/マットの作製方法は、BNNT材料を分散剤中に分散させることと、バッキ-ペーパー/マットを所望の形状に形状化することと、フィルター及び/又は剥離紙を所望の形状の底部に配置することと、分散BNNT材料をバッキ-ペーパー/マット上に注入することと、コーティングされたバッキ-ペーパー/マットを乾燥させることと、を含む。いくつかの実施形態において、分散剤は、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及び揮発性有機化合物のうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、バッキ-ペーパー/マットは、編み込みステンレス鋼グリッド、ポリマー繊維、ガラス繊維、及びBNNT繊維のうち少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態は、所望の形態のために、1つ以上の追加の支持体を位置決めすることを更に含む。
【0013】
BNNT糊、BNNT糊の作製方法、及びBNNT糊の使用方法を本明細書で開示する。いくつかの実施形態において、BNNT糊はBNNT材料及びアルコールを含み、BNNT材料の密度は約0.1~3mg/mLである。いくつかの実施形態において、BNNT材料は部分的に精製されている、又は完全に精製されている。いくつかの実施形態において、アルコールは、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、及びエチルアルコールのうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、組成物は水を更に含み、約100:0~50:50の、アルコール:水の比を有し得る。BNNT糊の作製方法は、BNNT材料を、アルコールを含む分散剤に分散させることを含み、分散BNNT材料は、約0.1~3mg/mLの密度を有する。いくつかの実施形態において、BNNT材料は、撹拌又は音波処理により分散される。いくつかの実施形態において、アルコールは、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、及びエチルアルコールのうち少なくとも1つである。いくつかの実施形態において、方法は水を含み、アルコール:水の比は100:0~50:50である。BNNT糊の使用方法は、BNNT材料を、アルコールを含む分散剤に分散させることと、分散BNNT材料を、少なくとも2つのBNNTバッキ-ペーパー/マット上で拡散させることと、少なくとも2つのBNNTバッキ-ペーパー/マットを圧縮することと、少なくとも2つのBNNTバッキ-ペーパー/マットを約80~120℃まで加熱して、あらゆる液体を蒸発させることと、を含む。いくつかの実施形態において、分散BNNT材料は、約0.1~1mL/cm2の密度で拡散される。いくつかの実施形態において、方法は、少なくとも2つのBNNTバッキ-ペーパー/マットをベークして揮発性有機化合物を取り除くことを更に含む。いくつかの実施形態において、少なくとも2つのBNNTバッキ-ペーパー/マットは、約200℃にて真空でベークされる、又は、約450℃で空気中でベークされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】イソプロピルアルコールに分散した、部分的に精製したBNNT材料(左)、及び、精製BNNT材料(右)を示す。
図2】本アプローチの一実施形態に従った、BNNTスプレー及びバッキ-ペーパー/マットコーティングの作製方法(プロセス)を示す。
図3】本アプローチの一実施形態に従った、部分的に精製したBNNT材料を、ウィーブの底半分にスプレーした、ガラス繊維ウィ-ブを示す。
図4】本アプローチの一実施形態に従った、部分的に精製したBNNT材料をスプレーした80メッシュ316ステンレス鋼メッシュを示す。
図5】本アプローチに従った、凍結乾燥方法(プロセス)の一実施形態を示す。
図6】本アプローチの一実施形態に従った、粉末としての、部分的に精製した凍結乾燥BNNT材料を示す。
図7】本アプローチの一実施形態に従った、BNNTバッキ-ペーパー/マットの作製方法(プロセス)を示す。
図8】本アプローチの一実施形態に従った、濾過膜上でBNNTバッキ-ペーパー/マットとして回収した、部分的に精製したBNNT材料を示す。
図9】本アプローチにて、BNNT「糊」を作製し適用する方法(プロセス)の、一実施形態を示す。
図10】本アプローチの一実施形態に従った、BNNT「糊」により結合された、バッキ-ペーパーとしての、2つの部分的に精製したBNNT材料を示す。
図11】本アプローチの一実施形態に従った、階層状ワイヤーフレームに、BNNT「糊」により共に結合したBNNTバッキ-ペーパー/マットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
大容量構造のBNNTは、クライオポンプ、高表面積フィルター、コーティング用足場、遷移放射検出器、中性子検出器、及び同様のシステムにおける用途を有する。大容量構造は、立方ミリメートルのBNNT材料から、立方メートルを超えるBNNT材料までの範囲になり得る。大容量構造でBNNTを支持することには、階層状のワイヤー足場、メッシュ、及び同様の支持体の組み合わせを伴い得る。本出願には参照により、国際出願第PCT/US16/32385号(2016年5月13日出願)、同第PCT/US17/50287号(2017年9月6日出願)、米国特許仮出願第62/383,853号(2016年9月6日出願)、同第62/397,050号(2016年9月20日出願)、及び同第62/398,941号(2016年9月23日出願)の全体が組み込まれている。
【0016】
足場を用いる実施形態において、足場の組成は、大容量が低温及び/若しくは高温、及び/若しくはこれら両方(即ち、約0K~800K超)のサイクルに通されるか、又は室温付近で維持されるか;BNNT材料体積で用いられ得る、又はBNNT材料体積と接触し得る化学物質;並びに、BNNT材料体積を通る材料のあらゆる流れ;を含む因子に左右される。いくつかの実施形態において、足場は、BNNT繊維、ステンレス鋼、Kevlar(登録商標)及び他のポリマー繊維、炭素繊維、ガラス繊維、並びに、BNNT、及び体積を通過するあらゆる組成物と十分に反応する任意の他の繊維のうち1つ以上から形成することができる。足場の形状は、用途に基づいて決定することができる。足場材料の中には、足場を形成する支持体間に空間を含み得るものもある。いくつかの実施形態において、足場の支持体間の間隔は、約0.3~10mmであり得る。
【0017】
足場の構築後、足場は容器内に配置され得る。容器の形状は、BNNTの大容量材料が用途で占める形状に一致するのが好ましい。例えば、BNNTの大容量材料が、クライオポンプの薄型円筒体積を占める場合、足場は薄型ウエハの形状であり得、容器は、BNNTコーティングの後、コーティング足場が、クライオポンプの空間に対応する薄型円筒形状を有するようなサイズ及び形状となり得る。いくつかの実施形態において、用途そのものが、BNNT大容量材料用の容器を形成してよい。例えば、クライオポンプの1つ以上のセクションを使用して、足場を受けるための容器の1つ以上の壁を形成することができる。クライオポンプ装置の、任意の非クライオポンプ部分などの、BNNTコーティングを受けることを意図しない用途における表面は、BNNT材料が速やかに、テフロン(登録商標)などに接着しない材料から形成されてよい、又はこれでコーティングされてよい。
【0018】
いくつかの実施形態において、BNNT材料に存在するホウ素粒子、及び/又は他の不純物を取り除くために、BNNT材料は部分的に、又は完全に精製することができる。好適な精製方法としては、国際特許出願第PCT/US2017/063729号(2017年11月29日出願)に記載されているものが挙げられ、その全体が参照により組み込まれている。いくつかの実施形態において、部分的に精製したBNNT材料(例えば、ホウ素除去工程後のBNNT材料)は、1つ以上の追加の精製方法(プロセス)により取り除かれた、a-BN、h-BNナノケージ、h-BNナノシート、及びBNNTの小粒子を有してよい。いくつかの実施形態において、精製BNNT材料は、ほとんど大部分のh-BNナノケージ及びh-BNナノシートが取り除かれてよい。精製範囲及び精製度合いを最適化して、所与の用途に関する所与の実施形態のために調整された使用可能な材料の収率を最大化することができるということが、当業者により理解されなければならない。ホウ素粒子は、BNNTで比較的大きい重量で作用し得、BNNT材料が振動したとき、圧縮力の望ましくない増加がもたらされる。ホウ素粒子は、BN材料、例えばBNNT、a-BN、h-BNナノケージ、及びh-BNナノシートと比較して、他の材料と異なる化学反応を有し得る。高温高圧法により作製した合成後そのままのBNNT材料は、例えば、1グラム当たり約100~200m2の表面積を有し得、精製BNNT材料は、1グラム当たり約350~550m2の表面積を有し得る。部分的に精製したBNNT材料は、1グラム当たり約300m2の表面積を有し得る。多くの用途は、大きい表面積により恩恵を受け、精製及び部分精製は、BNNT材料の表面積を増加させることができる。BNNTに最適な分散剤は、ホウ素粒子に最適な分散剤とは同一ではないため、本明細書に記載した凍結乾燥及び濾過技術は、少なくとも部分的に精製したBNNT材料とより良く作用することができる。
【0019】
図1は、部分的に精製したBNNT材料11(左)、及び、精製BNNT材料12(右)を示す。両方とも、激しく撹拌することによりイソプロピルアルコール中に分散する。いくつかの実施形態において、軽度の音波処理、即ち、BNNTの塊を解体するが、BNNTは破壊しない音波処理もまた、使用することができる。部分的に精製したBNNT材料11は僅かに沈殿し得るが、精製BNNT材料12は分散したままである。用途に応じて、図1に示す両方のBNNT材料が有用であり得る。
【0020】
部分的に精製したBNNT材料、及び精製BNNT材料は、プラスチック、ガラス、及び金属を含む多くの材料の表面に、弱く結合し得る。5~10mg/cm2の部分的に精製したBNNT材料、及び精製BNNT材料のコーティングを、本明細書で開示する。部分的に精製したBNNT材料については、5mg/cm2のカバー面積、及び300m2/gの表面積を有するため、1m2のスプレーコート面積は、15,000m2の効果的な表面積を有する。いくつかの実施形態において、BNNT材料をバッキ-ペーパー、即ち、カーボンナノチューブ及び/若しくはカーボンナノチューブ格子紙、並びに/又はBNNTから作製した、1つ以上の薄いシートに適用してよい。本明細書で記載される例示的なBNNTバッキ-ペーパーは、約20~500マイクロメートル厚であり、1~25mg/cm2の、対応する空気表面密度を有する。本明細書で使用する用語「マット」は、約500マイクロメートル以上の厚さを有するBNNT材料を意味し、複数のBNNTバッキ-ペーパー、又は共に結合したマットを含み得る。本明細書で使用する場合、用語「バッキ-ペーパー/マット」は、バッキ-ペーパー及び/又はマットを意味し、これらを指す。
【0021】
図2は、本アプローチに従った、スプレーコーティング及び/又はバッキ-ペーパー/マットを作製及び適用するための方法(プロセス)の、一実施形態のフローチャートを示す。このような方法(プロセス)において、BNNTは、コーティングした材料に共形的に結合している。いくつかの実施形態において、方法(プロセス)は、例えばイソプロピルアルコール(IPA)、メチルアルコール、エチルアルコール、アセトン、他の揮発性有機化合物などの分散剤に、部分的に精製した、又は完全に精製したBNNT材料であり得る、BNNT材料を分散させること(S201)を含む。その他のアルコール及び分散剤も、同様に等しく作用することが理解されなければならない。いくつかの実施形態において、分散剤は、最大でイソプロピルアルコールと蒸留水の50:50混合物であることができる。いくつかの実施形態において、部分的に精製した、又は完全に精製したBNNT材料の密度は、分散剤10mL当たり、約1~5mgのBNNT材料である。いくつかの実施形態において、BNNT材料でコーティングされる材料を清掃して(S202)、あらゆる脂、微粒子などを取り除いてよい。実施形態に応じて、清掃S202は任意であってよい。コーティングされる材料は、当該技術分野において既知の方法、及び/又は、国際特許出願第PCT/US2017/063729号(2017年11月29日出願・その全体が参照により組み込まれている)に説明されている方法を使用して、あらゆる炭化水素を清掃してよい。場合により、BNNT材料でコーティングされる材料は、約1~50マイクロメートルの熱性プラスチック、インジウム、スズ、スズ合金若しくは他のはんだ、又は低温溶融性ガラスでプレコートされてよい(S203)。プレコーティングの選択は、最終用途の化学的及び熱的必要条件に一致するように、用途により決定される。プレコーティングは、最終用途の接着必要条件により決定される。用途によっては、プレコーティングS203は必要ないことが理解されなければならない。
【0022】
いくつかの実施形態において、アトマイザーを使用して、分散BNNT材料を、コーティングされる材料上にスプレーしてよい(S204)。あるいは、BNNTバッキ-ペーパー/マットを、コーティングされる材料の表面上に、表面の形状に共形的に一致するなどのように、層状にしてよい(S205)。いくつかの実施形態において、BNNTコーティング材料をベークして、BNNTコーティング材料から揮発性有機化合物を取り除いてよい(S206)。例えば、BNNTコーティング材料を、約60~140℃の温度まで加熱し、揮発性有機化合物を追い出すことができる。いくつかの実施形態において、材料をヒートガンで加熱することができる、又は、ベーク期間中に、1つ以上のベーク温度に維持したオーブンに配置することができる。当業者は、ベーク時間及び温度は、BNNTコーティング材料中に存在することが予想される、又は存在することが知られている揮発性有機化合物の種類に応じて変化し得ることを理解しているはずである。
【0023】
いくつかの実施形態において、スプレーコーティング又はBNNTバッキ-ペーパー/マットは、圧縮されてよい(S207)。特にベーク中での、又は高温での圧縮には、コーティング及びBNNTの結合を伴う。例えば、コーティングがBNNTに、共形的に接続又は結合するように、温度をコーティングの融点又はガラス転移温度まで上げてよい。
【0024】
場合により、アルコール又はその他の揮発性有機化合物が存在しており、取り除く必要がある場合、BNNTコーティング材料を真空ベークしてよい(S208)。例えば、BNNTコーティング材料を真空に配置して、約200℃でベーク期間、加熱することができる。あるいは、好ましくは高いベーク温度で、及びより好ましくは約450℃で、BNNTコーティング材料を空気中で真空ベークしてよい。いくつかの実施形態において、より低温のガラス転移温度を有する、低温コーティング、例えば熱可塑性プラスチック又はインジウムを使用する場合、ベーク温度を下げてよい。
【0025】
図3は、シート32の底半分に、8mg/cm2の、部分的に精製したBNNT材料を有する、ガラス繊維ウィ-ブ31の一実施形態を示す。部分的に精製したBNNTは、数センチメートルの曲率を有する局所半径で屈曲される、又は折り畳まれる場合でさえも、ウィ-ブ上にとどまる。
【0026】
図4は、80メッシュ316ステンレス鋼を、5mg/cm2の部分的に精製したBNNT材料41にスプレーコーティングした、本アプローチに従った一実施形態を示す。メッシュは約81%が開口している(例えば、面積の81%がBNNT材料41を非含有である)。この開口空間により、材料がメッシュを流れることができる。本実施形態において、メッシュ内の316ステンレス鋼ワイヤーは、0.315mmの幅で離間されている。BNNT材料は、ガラス繊維及びステンレス鋼メッシュなどの表面に弱く結合し得るものの、機械的摩擦、振動、又はアルコールなどの溶媒/分散剤が存在しない限り、BNNT材料は、図3及び4に示すように、表面に十分に結合され、多くの用途で有用な大容量を形成することができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、凍結乾燥を利用して、足場又は他の構造上にBNNT材料を配置することができる。いくつかの実施形態において、エポキシなどの結合剤を使用して、BNNT材料の足場への結合を補助することができる。結合剤の添加は、用途に左右される。例えば、結合剤は高温で分解し得、クライオポンプは多くの場合、およそ10K及び少なくとも500Kの間で、そして場合によっては800Kを超えて回転するため、結合剤は典型的には、クライオポンプ用途には使用されない。更に、結合剤はBNNT表面の、ポンプ注入されているガスの効率的なクライオポンピングを提供する能力と干渉し得る。しかし、例えば、クライオポンプがおよそ400Kの熱回転のみを必要とする場合、インジウムは429.7Kにて溶融するため、インジウムをBNNT材料の結合剤として使用することができる。インジウムは、クライオポンプで使用する金属のいくつかをはんだ付けすることができ、図2に記載する、BNNT材料の後続の加熱及び圧縮により、インジウムはBNNT材料を表面に、共形的に保持することができる。熱可塑性プラスチック及びガラスコーティングはまた、それぞれの表面に、BNNT材料の共形的結合を形成することができる。いくつかの実施形態において、BNNT材料の、ワイヤー及び表面への共形的結合を行うための結合剤は、約1~50マイクロメートルの厚さであるが、所望の結果に応じて、この範囲を超えて拡大することができる。
【0028】
図5は、本アプローチに従った、凍結乾燥の一実施形態のフローチャートを示す。いくつかの実施形態において、部分的に精製したBNNT材料、及び精製BNNT材料は、1種以上の分散剤に分散することができる(S501)。例えば、分散剤としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、及び揮発性有機化合物のうち1つ以上を挙げることができる。BNNT材料を、既知の方法、例えば、激しい撹拌、又は軽度の音波処理などにより分散剤に導入することができる。当業者は、アルコールの適切な重量%を決定することができる。例えば、いくつかの実施形態において、アルコールの重量%は、約1~10重量%であり得る。いくつかの実施形態において、アルコールの重量%は、1重量%未満であることができる。いくつかの実施形態において、メチルアルコール及び蒸留水を使用してよい。分散後、いくらかの分散BNNTは、引き続き撹拌をして、分散させたままにする必要があり得る。精製BNNTは、撹拌後に大部分が分散したままであり得る。部分的に精製したBNNT材料、例えば、ホウ素除去工程を通ったBNNT材料は、数時間分散したままであり得るが、合成後そのままの材料は、典型的にはホウ素粒子の存在により決定され得、分散したままでない場合がある(分散液がホウ素粒子をベースにする場合を除いて)。一般的に、必要とされる質量の、合成後そのままのBNNT、部分的に精製したBNNT、又は精製BNNT材料は、容器の容積に一致する分散剤の体積に分散し得る。
【0029】
次に、分散したBNNTを、足場、又はコーティングされる同様の構造を含有する容器に導入してよい(S502)。例えば、分散したBNNTを容器に注入してよい。次に、BNNTを装填した分散剤を含有する容器をチャンバに配置し、凍結してよい(S503)。凍結を素早く行い、分散液からあらゆるBNNT材料が出るのを減少させるのが好ましい。いくつかの実施形態においては、チャンバ圧を、ほぼ真空まで低下させてよい。いくつかの実施形態において、アルコール含量に応じて温度を凝固点未満、即ち-5℃~-80℃に調整して、蒸発を誘発してよい。いくつかの実施形態において、温度を-40℃に調整してよい。分散剤を蒸発させてよく、層状の足場、又は他の構造中に分散し、これらにより支持されているBNNT材料を残す。当業者は既知の方法を使用して、分散剤を取り除くことができる。分散剤が取り除かれると、容器を室温、又は、特定の用途に必要な後続の加工及び操作のための、任意の他の条件に戻し、圧力をかけてよい(S504)。例えば、用途がクライオポンプであれば、容器内のあらゆる非クライオポンプ部分を、標準温度及び圧力で取り除いてよい。図6は、ふわふわした粉末に見える、部分的に精製した凍結乾燥BNNT材料61のサンプルを示す。図6に示すBNNT材料61を、本アプローチの一実施形態で、ただし、コーティングされる足場又は同様の構造の不存在下で、調製した。
【0030】
濾過技術もまた使用して、BNNTを含むバッキ-ペーパー/マットをコーティングしてよい。いくつかの実施形態において、複数のバッキ-ペーパー/マットを共に結合してよく、これにより、BNNTの体積が増加し、最終用途の任意の所望の体積、及び/又は形状が達成される。図7は、本アプローチに従った、濾過方法(プロセス)の一実施形態を示す。いくつかの実施形態において、部分的に精製した、又は完全に精製したBNNT材料を分散剤に分散させる(S701)。分散は、例えば、激しい撹拌及び/又は軽度の音波処理を含む、既知の方法により達成することができる。分散したBNNTの密度は、最終用途に従って決定することができる。いくつかの実施形態において、密度は約0.1~5g/Lであってよい。いくつかの実施形態において、分散剤は、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、エチルアルコール、揮発性有機化合物、又は他の既知の分散剤のうち1つ以上であることができる。分散溶液は、蒸留水を含んでよい。アルコール:水の比は、約100:0(アルコールのみ)、100:0~50:50、又は50:50未満であってよい。当業者は、最終用途に応じて最適な比を決定することができる。好ましくは、所望の形状のバッキ-ペーパー/マットを有する鋳型を準備してよい(S702)。いくつかの実施形態において、鋳型は金属、例えばアルミニウム、又はプラスチックであることができる。分散したBNNTを受けるために、足場材料を配置してよい(S703)。いくつかの実施形態において、各バッキ-ペーパー/マットは、層状足場として使用される、織り込まれたステンレス鋼格子又は他の金属の層を含んでよい。ポリマー繊維、ガラス繊維、及び更にはBNNT繊維などのその他の材料を使用して、足場を形成することができる。いくつかの実施形態において、足場格子は、ステンレス鋼メッシュ又はウールによりカバーされてよい。格子は底部層を形成することができ、濾過膜及び/又は剥離紙の頂部に配置されることができる。いくつかの実施形態において、織り込まれた格子の直径は約50~200マイクロメートルであり得るが、いくつかの実施形態では、この範囲を超えてもよい。ステンレス鋼ワイヤー格子間の容積を、上述した80メッシュ316ステンレス鋼、又はステンレススチールウールなどのステンレス鋼メッシュで充填してよく、ワイヤー間の平均間隔は約0.3~5mmであるが、いくつかの実施形態では、間隔はこの範囲を超えてもよい。ウールを形成するステンレス鋼ワイヤーの直径は、約10~50マイクロメートルであり得るが、いくつかの実施形態では、この範囲を超えてもよい。非常に大型のクライオポンプに関して、一連の編み込まれたステンレス鋼ワイヤー格子の追加の層は、大型構造を支持する必要があり得る。所望の結果及び最終用途に応じて、足場構造は変化し得ることが理解されなければならない。いくつかの実施形態において、鋳型は、構造に剛性を付与する(S704)ための、1つ以上の追加の支持体を含んでよい。次に、従来技術を使用して、分散BNNT材料をバッキ-ペーパー/マットに注入し(S705)、次に、スプレーコーティングからアルコールを蒸発させることに関して上述したような従来技術を使用して、乾燥させることができる(S706)。
【0031】
図8は、本アプローチの一実施形態に従った、濾過膜82の上に回収された、部分的に精製したBNNT材料81を示す。層状足場はこの図には現れないが、上述のように、BNNT材料81内に組み込まれることができる。いくつかの実施形態において、層状構造をまず、インジウム、スズ、インジウム若しくはスズ合金、熱性プラスチック、又は低転移温度を有するガラスなどのはんだでコーティングしてよい。次に、層状構造に使用した、部分的に精製したBNNT材料、又は精製BNNT材料を、対応するコーティングの融点まで加熱して、BNNT材料の小片の、表面への共形結合を補助してよく、これにより、最終アセンブリの機械的安定性が向上する。凍結乾燥及び濾過システムの当業者により理解されるべきであるように、技術間の選択は、最終システムにおけるBNNT材料の所望の密度、容器の形状、所要時間、並びに材料及び方法(プロセス)のコストに依存し得る。
【0032】
最終用途が、足場又は他の支持構造を形成するために使用した材料を決定し得ることが理解されなければならない。例えば、クライオポンプにより必要とされる極端な温度範囲が、BNNT材料を支持する足場用のステンレス鋼の選択に影響を与え得る。いくつかの実施形態において、室温での実施のみが必要とされ、最終システムの環境に存在する化学物質が足場材料に対して反応性ではない場合、ワイヤー及び支持体は、Kevlar(登録商標)、炭素繊維、又はガラス繊維などの材料で構成されてよい。いくつかの実施形態において、追加の糊又はフィラーを、BNNT材料に添加してよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、BNNT「糊」を使用して、BNNTバッキ-ペーパー/マット及び表面のスプレーコーティングを結合することができる(存在するのであれば)。図9は、本アプローチに従った、BNNT糊の方法(プロセス)の一実施形態を示す。いくつかの実施形態において、部分的に精製した、又は完全に精製したBNNT材料を、S901で上述したように、アルコール又はアルコール-水混合物に分散させ、BNNT「糊」材料を形成することができる。BNNT「糊」は、後述するBNNT材料密度の必要条件を有する、スプレー及びバッキ-ペーパーを形成する材料と同一であることができる。処理中にどのように適用されるかが、BNNT「糊」をBNNT「糊」たらしめることである。いくつかの実施形態において、部分的に精製した、又は完全に精製したBNNT材料を、激しい撹拌及び/又は軽度の音波処理により分散剤に分散させて、約0.1~3mg/mLの最終密度のBNNT材料を得ることができる。いくつかの実施形態において、分散剤は、イソプロピルアルコール、メチルアルコール、エチルアルコール、揮発性有機化合物、又は同様の分散剤の1つ以上であることができ、蒸留水を含むことができる。いくつかの実施形態において、アルコール:水の比は、約100:0(アルコールのみ)~最低で50:50であることができるが、当業者は、比がより小さいいくつかの実施形態に最適であることを決定することができる。次に、BNNT「糊」を、BNNTバッキ-ペーパー/マットの個別の片の上に拡散する(S902)。使用するBNNT「糊」の量は、特定の実施形態に左右される。いくつかの実施形態において、例えば、糊は約0.1~1mL/cm2の密度で拡散される。次に、2つのBNNTバッキ-ペーパー/マットを、共に圧縮してよい(S903)。圧縮片はまた、加熱して液体を蒸発させてよい。いくつかの実施形態に関しては、BNNT「糊」材料から液体を取り除くには、10分~2時間、約80~120℃に加熱することが十分である。場合により、あらゆるアルコールを取り除く必要がある場合、BNNTバッキ-ペーパー/マットをベークしてよい(S904)。例えば、糊付けした片を、当業者により決定可能なベーク期間、約200℃で真空に配置してよい、又は約450℃で空気中にてベークしてよい。
【0034】
BNNT「糊」法は、例外的な面内結合を生み出すことが示されている。例えば、重ね剪断試験で観察されるように、G2C亀裂試験の面内結合は、バッキ-ペーパー/マットそれ自体より強力である場合がある。G1C亀裂剥離試験は、G1C平面方向への、非常に弱い結合を示す。図10は、本アプローチの一実施形態で作製したBNNT「糊」により結合した、プロトタイプのBNNTバッキ-ペーパー/マット101を示す。図10は、本アプローチに従ったBNNT「糊」を使用して形成した繋ぎ目を有するセクション103ではなく、元のBNNTバッキ-ペーパーマット片102の1つで生じる重ね剪断試験での破壊を示す。
【0035】
本アプローチにより、多種多様な構造が可能となることが理解されなければならない。一例として、図11は、BNNT「糊」112により結合した、複数のBNNTバッキ-ペーパー/マット111の配置を示す。本実施形態は、微細メッシュ113のワイヤー層状構造、及び一連のウィ-ブ114を含む。BNNT「糊」112は横方面への接着性を付与する一方、ワイヤー層状構造113及び114は、アセンブリ全体に垂直の安定性を付与する。この構造を用いると、大きな表面積及び機械的安定性を有するBNNT材料を、大容量に満たすことができる。
【0036】
本明細書で使用する用語は、特定の実施形態を説明する目的のものだけであり、アプローチを制限することを意図するものではない。文脈上別途明記しない限り、本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数形も同様に含むことを意図する。本明細書中で使用する場合、用語「を含む(comprises)」及び/又は「を含む(comprising)」は、言及した特徴、整数、工程、操作、元素、及び/又は構成成分の存在を明記するものの、1つ以上の他の特徴、整数、工程、操作、元素、構成成分、及び/又はこれらの群の存在又は追加を除外するものではないことが更に理解されよう。
【0037】
本アプローチは、本アプローチの精神又は本質的特徴を逸脱することなく、他の特定の形態で実施可能である。開示された実施形態はそれ故、全ての点を、限定的なものではなく例示的なものとして考慮することができ、本アプローチの範囲は、前述の説明ではなく出願における特許請求の範囲により示されており、特許請求の範囲における意味及び等価な範囲内に収まる全ての変化はそれ故、特許請求の範囲に包含されることを意図する。様々な可能性が利用可能であり、本アプローチの範囲は本明細書で記載される実施形態に限定されないことを、当業者は理解すべきである。
図1
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