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  • 特許-NOxトラップ触媒担体物質組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】NOxトラップ触媒担体物質組成物
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/10 20060101AFI20221018BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20221018BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20221018BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20221018BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20221018BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20221018BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20221018BHJP
   C01F 17/00 20200101ALI20221018BHJP
【FI】
B01J23/10 A
B01D53/86 220
B01J32/00
B01J35/10 301F
B01J37/00 F
B01J37/04 102
B01J37/08 ZAB
C01F17/00
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019555186
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018061427
(87)【国際公開番号】W WO2018202815
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】17169828.5
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501186162
【氏名又は名称】サゾル ジャーマニー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショーネボーン,マルコス
(72)【発明者】
【氏名】ニーマイヤー,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ハーメニンク トーマス
(72)【発明者】
【氏名】フィビカー,ザンドラ
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/142058(WO,A1)
【文献】特表2007-530271(JP,A)
【文献】特開2008-100230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
B01J 21/00-38/74
C01F 1/00-17/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体物質組成物を調製する方法であって、前記担体物質組成物は2つの相:
Mg/Al混合酸化物を含む第1の相と、
セリウム系酸化物、および酸化セリウム以外の少なくとも1つの希土類元素系酸化物を含む第2の相と、
から成り、前記第2の相は固溶体であり、前記方法は以下の工程:
i)Mg/Al混合酸化物前駆体の水性懸濁液を調製する工程と、
ii)セリウム塩の水溶液を調製する工程と、
iii)セリウム塩以外の1つ以上の希土類元素の塩の水溶液を調製する工程と、
iv)少なくとも工程i)における前記水性懸濁液を、工程ii)における前記水溶液および工程iii)の前記水溶液と任意の順番で混ぜ合わせて、水性混合物を形成する工程と、
v)前記水性混合物を乾燥させて、乾燥した粒子状物質を形成する工程と、
vi)前記乾燥した粒子状物質をか焼する工程と、を含み、
セリウム以外の前記1つ以上の希土類元素の塩の含有量は、
-工程ii)の前記水溶液由来の前記セリウム塩と、
-工程iii)の前記水溶液由来のセリウム塩以外の前記1つ以上の希土類元素の塩と、の合計に対して5~50重量%の間、好ましくは10重量%~35重量%の間であり、
前記塩のそれぞれはそれらの酸化物として算出される、方法。
【請求項2】
前記Mg/Al混合酸化物前駆体が、ハイドロタルサイト、ベーマイト、および水の混合物を形成する、アルミニウムおよびマグネシウムの対応するアルコキシドの混合物を加水分解することにより調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セリウム塩が、硝酸セリウム、硝酸アンモニウムセリウム、硫酸セリウム、炭酸セリウムおよび酢酸セリウム、好ましくは酢酸セリウムの1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
セリウム塩以外の前記1つ以上の希土類元素の塩が、La、Pr、Nd、Y、Smまたはそれらの混合物の塩を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上の希土類元素の塩が、La、Pr、Nd、Yまたはそれらの混合物の酢酸塩である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程ii)および工程iii)の前記溶液が最初に混ぜ合わされ、次いで工程i)の前記懸濁液と混ぜ合わされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記懸濁液と前記溶液との混合物が噴霧乾燥されて、粒子状物質、好ましくは粉末を形成する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記担体物質組成物を得るために、前記粒子状物質が、500℃~1100℃の間、好ましくは800℃~1000℃の間の温度で、30分~5時間の間にわたってか焼される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
2つの相:
i)Mg/Al混合酸化物を含む第1の相と、
ii)セリウム系酸化物、および酸化セリウム以外の少なくとも1つの希土類元素系酸化物を含む第2の相と、
から成る担体物質組成物であって、前記第2の相は固溶体であり、
前記第1の相の含有量は前記担体物質組成物全体の少なくとも50重量%であり、前記第1の相におけるMgの量は1~40重量%の間であり、前記第1の相の重量を基準にMgOとして算出され、MgOおよびAlとして算出され、
前記第2の相における酸化セリウム以外の前記少なくとも1つの希土類元素酸化物の含有量は5~50重量%の間であり、前記第2の相全体に対してセリウム以外の前記少なくとも1つの希土類元素酸化物として算出される、担体物質組成物。
【請求項10】
50m/g超、およびより好ましくは80m/g超のBET表面積を含む、請求項9に記載の担体物質組成物。
【請求項11】
0.1~1.5ml/gの間、より好ましくは0.4~1.0ml/gの間の細孔容積を含む、請求項9または10に記載の担体物質組成物。
【請求項12】
500ppm未満のNaO、より好ましくは100ppm未満のNaOを含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の担体物質組成物。
【請求項13】
前記第2の相における酸化セリウム以外の前記少なくとも1つの希土類元素酸化物の含有量が10~35重量%の間であり、前記第2の相全体に対してセリウム以外の前記少なくとも1つの希土類元素酸化物として算出される、請求項12のいずれか一項に記載の担体物質組成物。
【請求項14】
NOx含有量を減少させるための排気ガス処理用の触媒内における窒素酸化物貯蔵成分としての、請求項9~13のいずれか一項に記載の担体物質組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばリーンバーンエンジンからの排気ガス処理用の触媒に適用可能な窒素酸化物貯蔵成分としての、担体物質組成物の製造方法、担体物質組成物、および担体物質組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リーンバーンガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンの排気ガス中のNOx含有量を軽減させるために、所定のNOx後処理システムが必要とされている。これは、優位な酸化条件下で作用する三元触媒においては、NOxをNに還元することが不可能だからである。したがって、例えばリーン条件下において、例えば硝酸塩としてNOxを貯蔵することができる物質を含有する、特別な排気ガス後処理触媒が開発されてきた。短時間のストイキまたはリッチな運転条件を適用することにより、貯蔵されたNOxは次いで窒素に変換することが可能となり、貯蔵物質が再生される。この触媒は一般にNOxトラップ触媒と呼ばれ、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1で言及されているように、NOxトラップ触媒は、排気ガスと相互作用する広い面積を生じさせるために、高度に分散された様式で好適な担体物質上に堆積された窒素酸化物貯蔵成分を含有する。硝酸塩の形態で窒素酸化物を貯蔵することができる物質は、例えば、アルカリ土類金属、特にバリウムの酸化物、炭酸塩または水酸化物である。
【0004】
好適な担体物質は、効果的にNOx化合物を貯蔵する能力に加えて、最終触媒の長期耐久性を確実なものとするために、高い比表面積および高い熱的安定性を提供しなければならない。さらにまた、担体物質の化学的組成および特性は、窒素酸化物の変換効率およびNOxトラップ触媒の温度動作ウインドウに影響する。
【0005】
当該技術分野において十分に記載されている、これらの特性を含む担体物質は、酸化物の総重量を基準に1~40重量%の酸化マグネシウム濃度を有する、均質なMg/Al混合酸化物である。
【0006】
Mg/Al混合酸化物という用語は、原子スケールでの2つの酸化物の混合物について記載するものであり、したがって、2つの個々の酸化物の物理的混合物と同様に、酸化アルミニウムの酸化マグネシウム前駆体溶液との含浸によって調製される物質は除外する。この種のMg/Al混合酸化物は、特許文献2で詳細に記載されている、アルコキシドの混合物を加水分解することにより得られたMg/Al混合酸化物前駆体をか焼することによって得ることが好ましい。
【0007】
NOxトラップ触媒の貯蔵容量活性のさらなる改善は、酸化セリウムを添加することにより達成される。これは、酸化セリウムが低温でNOxを貯蔵するための容量を有するからである。
【0008】
しかしながら、酸化セリウムは、例えば触媒または粒子フィルター再生サイクルの間に起こり得る高温条件下で苛酷な焼結を受ける傾向があるため、熱劣化の点で非常に影響されやすいことは公知である。熱焼結は、(シェラーの式による粉末XRDパターンから測定されるように)酸化セリウムの結晶サイズの増大を伴い、これにより比表面積の減少、および最終的には低温NOx貯蔵容量の悪化をもたらす。したがって、酸化セリウムの熱安定化が必要とされている。
【0009】
特許文献3は、Mg/Al混合酸化物に、酸化セリウムと酸化プラセオジムとを組み合わせて添加することを教示している。しかしながら、特許文献3によると、3つの異なる相が形成されるので、希土類元素(プラセオジム)を酸化セリウムの熱安定化に十分に活用することができず、さらに特許文献3は、本発明と異なる、沈殿反応を適用している。
【0010】
したがって、本発明の目的は、特により高温で、向上した熱安定性および向上した窒素酸化物貯蔵容量を有する、NOxトラップ触媒に適用可能な担体物質組成物に加えて、担体物質組成物の新規な製造方法を提供することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許第1317953(B1)号
【文献】独国特許出願公開第19503522(A1)号
【文献】国際公開第2015/100313(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも以下の工程:
i)Mg/Al混合酸化物前駆体の水性懸濁液を調製する工程と、
ii)セリウム塩の水溶液を調製する工程と、
iii)セリウム塩以外の1つ以上の希土類元素の塩(類)の水溶液を調製する工程と、
iv)少なくとも工程i)の水性懸濁液を、工程ii)の水溶液および工程iii)の水溶液と任意の順番で混ぜ合わせて、水性混合物を形成する工程と、
v)水性混合物を乾燥させて、粉末などの乾燥した粒子状物質を形成する工程と、
vi)乾燥した粒子状物質をか焼する工程と、を含み、
セリウム以外の1つ以上の希土類元素の塩(類)の含有量は、
-工程ii)の水溶液由来のセリウム塩と、
-工程iii)の水溶液由来のセリウム塩以外の希土類元素の塩(類)と、の合計に対して5~50重量%の間、好ましくは10重量%~35重量%の間であり、
塩のそれぞれはそれらの酸化物として算出される、担体物質組成物を調製する方法が提供される。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様により得ることができる担体物質組成物が提供される。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、少なくとも2つの相:
i)Mg/Al混合酸化物を含む第1の相と、
ii)セリウム系酸化物、および酸化セリウム以外の少なくとも1つの希土類元素系酸化物を含む第2の相と、を含み、
第1の相の含有量は担体物質組成物全体の少なくとも50重量%であり、第1の相におけるMgの量は1~40重量%の間であり、第1の相の重量を基準にMgOとして算出され、MgOおよびAlとして算出される、担体物質組成物が提供される。第2の相は固溶体であることが好ましい。本発明の第3の態様の担体物質組成物は、例えば本発明の第1の態様により得ることができる。
【0015】
本発明の第4の態様によれば、排気ガス処理用の触媒内における窒素酸化物貯蔵成分として、本発明の第2または第3の態様による担体物質組成物の使用が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
Mg/Al混合酸化物前駆体は、本発明の当該技術分野において周知の方法、例えば、ハイドロタルサイト(本明細書の文脈では、ハイドロタルサイトとはMg/Alの層状複水酸化物を意味する)とベーマイトとの混合物を生じさせる、アルミニウムおよびマグネシウムの対応するアルコキシドの混合物を加水分解することにより調製されてもよい。
【0017】
好ましいMg/Al混合酸化物前駆体の水性懸濁液は、特許文献2(参考として本明細書に組み込まれる)に記載されている方法によって調製される。特許文献2は、アルコールまたはアルコール混合物をマグネシウムおよびアルミニウム金属と反応させ、得られたアルコラート混合物を水で加水分解することにより、高純度のMg/Al混合酸化物前駆体を生成するプロセスを記載している。このプロセスによって得られた混合物は、ハイドロタルサイト、ベーマイトおよび水を含むものであり、本発明の工程i)のMg/Al混合酸化物前駆体の水性懸濁液として、本発明で使用することが好ましい。層状酸化水和物のそばにベーマイトの副生成物を促進するためには、副生成された層状酸化水和物の化学量論に対して、過剰にアルミニウムが使用される(使用され得るマグネシウム/アルミニウム比率に関しては、特許文献2の3頁、16~20行を参照のこと)。
【0018】
Mg/Al混合酸化物前駆体の水性懸濁液中のMgの量は、1~40重量%の間であることが好ましく、添加されるMg/Al混合酸化物の総量を基準にMgOとして算出され、MgOおよびAlとして算出される。
【0019】
セリウム塩は水溶液に可溶であり、硝酸セリウム、硝酸アンモニウムセリウム、硫酸セリウム、炭酸セリウムおよび酢酸セリウムが挙げられる。好ましくは、セリウム塩は酢酸セリウムである。セリウム塩は、水を含む水溶液に添加され、セリウム塩の水溶液を形成する。
【0020】
セリウム塩以外の希土類元素の塩(類)は、La、Pr、Nd、Y、Smまたはそれらの混合物の塩から選択される、水溶液に可溶な塩である。好ましくは、セリウム塩以外の希土類元素の塩(類)は、La、Pr、Nd、Y、Smまたはそれらの混合物の酢酸塩である。セリウム塩以外の希土類元素の塩(類)は、水を含む水溶液に添加され、セリウム塩以外の希土類元素の塩(類)の水溶液を形成する。
【0021】
好ましくは、懸濁液と混ぜ合わせる前に、セリウム塩の水溶液およびセリウム塩以外の1つ以上の希土類元素の塩(類)溶液の水溶液が共に混合される。すなわち、少なくとも工程ii)および工程iii)の溶液が最初に混ぜ合わせられ、セリウム塩とセリウム塩以外の希土類元素の塩(類)との混合水溶液を形成し、次いで工程i)の懸濁液と混ぜ合わせられる。
【0022】
懸濁液と溶液との混合物中のMg/Al混合酸化物前駆体の量は、50~95重量%の間であり、水性混合物の総重量の乾燥重量を基準にMgOとAlとの合計として算出され、それらの一般的な酸化状態でのそれぞれの酸化物として算出される。セリウム塩とセリウム以外の希土類元素の塩(類)とを混ぜ合わせた量は、5~50重量%の間であり、水性混合物の総重量の乾燥重量を基準にそれぞれの酸化物(類)の合計として算出され、それぞれがそれらの一般的な酸化状態にある。
【0023】
水性混合物は次いで、当該技術分野において公知の一般的な方法、例えば粉末を形成するための噴霧乾燥によって乾燥され、粒子状物質を形成する。
【0024】
最終的に、担体物質組成物を得るために、500℃~1100℃の間、好ましくは800℃~1000℃の間の温度で30分~5時間の間にわたって粒子状物質がか焼される。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、本発明の方法によって調製することができる担体物質組成物が提供される。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、少なくとも2つの相:
i)Mg/Al混合酸化物を含む第1の相と、
ii)セリウム系酸化物、および酸化セリウム以外の希土類元素(類)系酸化物を含む第2の相と、を含み、
第1の相の含有量は担体物質組成物全体の少なくとも50重量%であり、第1の相におけるMgの量は1~40重量%の間であり、第1の相の重量を基準にMgOとして算出され、MgOおよびAlとして算出される、担体物質組成物が提供される。Mg/Al混合酸化物は、スピネル(MgAl)、アルミナ、およびMgO、好ましくはスピネル(MgAl)およびアルミナを含み得る。
【0027】
第2の相は、少なくとも酸化セリウム、および酸化セリウム以外の1つ以上の希土類元素(類)酸化物の固溶体であることが好ましい。
【0028】
第2の相の含有量は、担体物質組成物全体の5~50重量%の間である。第2の相における酸化セリウムの含有量以外の希土類元素(類)酸化物の含有量は、5~50重量%の間である。
【0029】
一実施形態によれば、両方の相を合計すると100重量%となる。
【0030】
組成物は、互いに均質に分布した、2つの異なった結晶相を含む。
【0031】
より正確には、第1および第2の相は粉末XRDによって識別可能である。さらに、1つの相のみを含有する、10μmより大きい、好ましくは5μmより大きい凝集粒子は、EDX検出器と組み合わせた走査型電子顕微鏡(SEM)では観察され得ない。
【0032】
第1の相-Mg/Al混合酸化物
担体物質組成物の少なくとも50重量%が、スピネルMgAl、アルミナ、およびMgO、好ましくはスピネル(MgAl)、およびアルミナを含み得る、第1の相からなる。
【0033】
組成物の第1の相は、本発明の当該技術分野において周知の方法によって、すなわちハイドロタルサイトとベーマイトとの混合物を生じさせる、マグネシウムおよびアルミニウムの対応するアルコキシドの混合物を加水分解することにより調製される、好適なMg/Al混合酸化物前駆体をか焼することにより得ることができる。好ましいMg/Al混合酸化物前駆体は、特許文献2(参照することにより本明細書に組み込まれる)に記載されている方法によって調製される。
【0034】
第1の相内のマグネシウムの量は、より好ましくは1~30重量%、好ましくは5~30重量%の範囲であり、第1の相の重量を基準にMgOとして算出される。
【0035】
担体物質組成物の第1の相におけるセリウムおよびセリウム以外の希土類元素(類)の化合物を混ぜ合わせた量は、それらの酸化物として算出され、担体物質に対して(=100重量%)、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、および最も好ましくは約0重量%である。
【0036】
これは、セリウムおよびセリウム以外の希土類元素(類)の酸化物/化合物の残存量はすべて、担体物質の第2の相にあるということを意味している。
【0037】
工程i)の水性懸濁液中に懸濁した金属化合物が、第1の相を形成することが判明した。工程i)の水性懸濁液中におけるセリウムおよびセリウム以外の希土類元素(類)の化合物を混ぜ合わせた量は、それらの酸化物として算出され、水性混合物中のマグネシウムおよびアルミニウムの酸化物に対して(=100重量%)、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、および最も好ましくは約0重量%である。好ましい実施形態では、工程i)の水性懸濁液は、希土類元素の化合物をまったく含まない(セリウム化合物を含まない)。
【0038】
第2の相-セリウム系酸化物および酸化セリウム以外の少なくとも1つの希土類元素(類)酸化物
第2の相は、セリウム以外の1つ以上の希土類元素(類)系酸化物との、セリウム系酸化物の固溶体であることが好ましい。セリウム以外の希土類元素(類)酸化物としては、La、Pr、Nd、Yまたはそれらの組み合わせが挙げられる。第2の相における酸化セリウム以外の希土類元素(類)酸化物の含有量は5~50重量%の間、好ましくは10~35重量%の間であり、第2の相全体に対してセリウム以外の希土類元素(類)酸化物として算出される。
【0039】
担体物質組成物の第2の相におけるマグネシウムおよびアルミニウムの化合物を混ぜ合わせた量は、MgOおよびAlとして算出され、担体物質に対して(=100重量%)、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、および最も好ましくは約0重量%である。これは、マグネシウムおよびアルミニウムの酸化物/化合物の残存量はすべて、担体物質の第1の相にあるということを意味している。
【0040】
工程ii)および工程iii)の水溶液中の金属塩が、(それらの酸化物の形態で)第2の相を形成することが判明した。工程ii)および工程iii)の混ぜ合わされた水溶液中におけるマグネシウムおよびアルミニウムの化合物を混ぜ合わせた量は、水性混合物中のセリウムおよびセリウム以外の希土類元素(類)に対して(=100重量%)、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満、および最も好ましくは約0重量%であり、それぞれがそれらの酸化物として計算される。好ましい実施形態では、工程ii)および工程iii)の水溶液は、マグネシウムもしくはアルミニウム化合物、またはマグネシウムもしくはアルミニウム金属をまったく含まない。
【0041】
結果として、第2の相の単位格子体積は、ヴェガード則に従ってセリウム系酸化物と比較して調節され、XRDパターンにおいてCeO(111)反射のd値のシフトをもたらす。加えて、固溶体は、例えばラマン分光法または関連する分光法によって同定することができる。換言すれば、本発明の担体物質組成物の粉末XRDでは、第2の相と異なる相を含む別個の希土類元素(類)系酸化物は検出され得ない。そのことは、第2の相に含まれる希土類元素(類)系酸化物はすべて、固溶体の一部を形成しているということを意味している。
【0042】
したがって、酸化セリウムの安定化効果は、本発明の担体物質組成物において、固溶体を形成する第2の相のすべての希土類元素(類)系酸化物を組み込むことによって最大化される。この安定化効果は、例えば、立方晶CeO構造の(111)反射を利用したシェラー法によって測定されるように、第2の相の結晶サイズが縮小したことによって明らかとなる。特に、組成物を950℃で3時間熱処理した後の第2の相の結晶サイズは、10nm未満であることが好ましい。
【0043】
さらに、本発明の担体物質組成物は、上記の第2の相を含まない最新材料と比較した場合、950℃で3時間熱処理した後に150℃および200℃で測定された、より高い低温NOx貯蔵容量を有することが示される。これは、本発明の組成物の、低温NOx貯蔵機能の向上した熱安定性を明らかに反映するものである。
【0044】
本発明の第4の態様は、NOx含有量を減少させるための排気ガス処理用の触媒内における窒素酸化物貯蔵成分としての、本発明の第2または第3の態様による担体物質組成物の使用である。
【0045】
本発明の第2、第3および第4の態様による担体物質組成物は、以下のパラメーターによって所望によりさらに特徴づけられる。
【0046】
担体物質組成物は、50m/g超、およびより好ましくは80m/g超の表面積を典型的に有する。
【0047】
担体物質組成物の細孔容積は、0.1ml/g~1.5ml/gの間、より好ましくは0.4~1.0ml/gの間であってよい。細孔容積はN吸着によって測定される。
【0048】
担体物質組成物は、少量のナトリウムおよびイオウ不純物を含む。特に、担体物質組成物は、500ppm未満のNaO、より好ましくは100ppm未満のNaO、および好ましくは100ppm未満のイオウ(イオウを含む化合物を含有する)を含む。
【0049】
本発明は、以下の定義に依拠する:
溶液は、微量成分(溶質)が主要成分(溶媒)内で均一に分布した液体混合物を意味する。溶媒および溶質は、1つの相を形成する。水溶液は、溶媒として水、好ましくは溶液中に含まれるすべての液体成分に対して少なくとも50重量%の水を含む溶液である。
【0050】
懸濁液は、粒子が液体中に分散した液体混合物を意味する。液体および粒子は、2つの相を形成する。水性懸濁液は、液相として水、好ましくは液相に含まれるすべての液体成分に対して少なくとも50重量%の水を含む懸濁液である。
【0051】
本明細書で使用する場合、「粒子状物質」という用語は、粉末、ビーズ、押出品など成形された粒子の形態の粒子を指す。
【0052】
重量%の値を算出するためのMg、Al、Ce、La、Pr、NdおよびYの一般的な酸化状態((金属)酸化物の量を計算するために使用される)は、MgO、Al、CeO、La、Pr11、Nd、SmおよびYである。
【0053】
「固溶体」という用語は、セリウム以外の希土類元素(類)が、立方晶CeO結晶構造内のセリウム原子と、1つの結晶学的位置(ワイコフ位置4a)を共有する状態を指す。
【0054】
表面積および細孔容積は、液体窒素温度で、Quantachrome社製Quadrasorbのような典型的な容積測定装置を使用したN物理吸着によって測定される。表面積はBET理論(DIN ISO 9277:2003-05)を用いて測定され、一方、細孔容積はDIN 66131に従って測定される。細孔サイズの範囲は、細孔半径で0~5000nmの間である。BETという用語は、比表面積を測定するためのブルナウアー-エメット-テラー法を指す。
【0055】
以降、以下の非限定的な図および実施例を参照して、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
図1】MgAl(点線)およびCeO(直線)の理論上のパターンと共に実施例1の担体物質組成物の粉末X線回折パターンを表しており、担体物質組成物の第1および第2の相が識別可能であること、ならびに任意のその他の成分が存在していないことを示している。
【実施例
【0057】
NOx貯蔵容量の測定
NOx貯蔵容量を測定する前に、サンプルを空気雰囲気下950℃で3時間処理した。
【0058】
NOx貯蔵/放出試験を固定床反応器で実施した。ガス流は、マスフローコントローラーによって制御した。ガス成分を、NO、NO、CO、COおよびOに対して特定のNDIR-UVガス分析器によって連続的にモニターし、測定データを10秒ごとに記録する。SiC300mgと混合したサンプル100mgを実験ごとに使用した。上流には、測定温度に応じてNO/NO比率を現実に即した値に調整するために、市販のPt触媒80mgを配置した。窒素下で、室温から150℃または200℃の吸着温度まで、それぞれ10℃/分でサンプルを加熱した。
【0059】
次いで、流出口のNOx濃度が校正の値に近い値に達するまで、窒素ガス流を500ml/分で500ppmのNO+5%のO/Nで置換した。窒素ガス流に変更し、150℃または200℃からそれぞれ700℃まで、5℃/分で加熱することによって、NOx脱離を実施した。放出されたNOxの量を測定し、NOx貯蔵容量として定義する。
【0060】
比較実施例1
混合Mg/Al酸化物前駆体(Pural MG20、MgO含有量20重量%)の水性懸濁液を、酢酸セリウム溶液と混合した。噴霧乾燥後、得られた粉末を950℃で3時間か焼して、酸化セリウムがドープされた均質なMg/Al混合酸化物を得た。
【0061】
実施例1
混合Mg/Al酸化物前駆体(Pural MG20、MgO含有量20重量%)の水性懸濁液を、酢酸セリウムと酢酸ランタンとを予め混合した溶液と混合した。噴霧乾燥後、得られた粉末を950℃で3時間か焼して、酸化セリウム/ランタンがドープされた均質なMg/Al混合酸化物を得た。
【0062】
図1で示される、CeO(直線)およびMgAl(点線)の理論上のパターンとあわせた粉末X線回折は、2つの別個の相、Mg/Al混合酸化物を含む第1の相、ならびに酸化セリウムおよび酸化ランタンを含む第2の相を明らかにしている。
【0063】
実施例2
実施例1と同じ手順を用いたが、酢酸ランタンではなく、酢酸Ndを酢酸セリウムと予め混合した。
【0064】
実施例3
実施例1と同じ手順を用いたが、酢酸ランタンではなく、酢酸Yを酢酸セリウムと予め混合した。
【0065】
200℃でNOx貯蔵を試験した。結果は表1に含まれる。
【0066】
【表1】
【0067】
実施例は、本発明の担体物質組成物が、200℃で比較実施例より高いNOx貯蔵容量を有することを明確に示している。
【0068】
比較実施例2
混合Mg/Al酸化物前駆体(Pural MG20、MgO含有量20重量%)の水性懸濁液を、酢酸セリウム溶液と混合した。噴霧乾燥後、得られた粉末を950℃で3時間か焼した。
【0069】
実施例4
混合Mg/Al酸化物前駆体(Pural MG20、MgO含有量20重量%)の水性懸濁液を、酢酸セリウムと酢酸ランタンとを混合した溶液と混合した。噴霧乾燥後、得られた粉末を950℃で3時間か焼した。
【0070】
実施例5
実施例4と同じ手順を用いたが、酢酸ランタンではなく、酢酸Prを酢酸セリウムと予め混合した。
【0071】
実施例6
実施例4と同じ手順を用いたが、酢酸ランタンではなく、酢酸Prを酢酸セリウムと予め混合した。
【0072】
150℃でNOx貯蔵を試験した。結果は表2に含まれる。
【0073】
【表2】
【0074】
この場合も、実施例は、本発明の担体物質組成物が、150℃で比較実施例より高いNOx貯蔵容量を有することを明確に示している。
図1