(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】試料及び試薬貯槽キット及び真空防止構成を備えるライナ
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20221018BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G01N35/02 A
G01N35/10 H
(21)【出願番号】P 2019565517
(86)(22)【出願日】2018-06-07
(86)【国際出願番号】 US2018036461
(87)【国際公開番号】W WO2018226956
(87)【国際公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-06-04
(32)【優先日】2017-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514114770
【氏名又は名称】インテグラ バイオサイエンシーズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ケリー,テレンス
(72)【発明者】
【氏名】ハーキンズ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】カルマキス,ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,ゲイリー
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-107570(JP,A)
【文献】特表2016-518588(JP,A)
【文献】特開2008-076274(JP,A)
【文献】特開2016-136969(JP,A)
【文献】特開2005-010179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0187079(US,A1)
【文献】特表2010-532478(JP,A)
【文献】特開2007-089530(JP,A)
【文献】特開2004-170090(JP,A)
【文献】特表2013-531553(JP,A)
【文献】特開昭52-156980(JP,A)
【文献】特開2010-230566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/02
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窪み部を含む使い捨て可能な貯槽ライナであって、
前記
窪み部は、一対の端壁と、該端壁の間に延びる一対の長手方向の側壁と、前記端壁の下端と前記側壁の下端との間に亘る平坦な底壁とを含み、該平坦な底壁は、液体試料又は液体試薬を保持する容積に向かって上向きに露出させられる複数のグループの相互接続された真空防止チャネルを備える上面を有し、当該使い捨て可能な貯槽ライナの前記底壁は、前記
真空防止チャネルを除いて平坦であり、
行列アレイのピペット先
端が前記
窪み部から同時的に液体を吸引することを可能にするように構成される概ね四角形の形状を更に有する、
使い捨て可能な貯槽ライナ。
【請求項2】
当該貯槽ライナの前記底壁は、各グループの中心点が隣接するグループの中心点から9mm離間する、96個のグループの相互接続された
行列アレイの真空防止チャネ
ルを含むか、或いは、
当該貯槽ライナの前記底壁は、各グループの中心点が隣接するグループの中心点から4.5mm離間する、384個のグループの相互接続された
行列アレイの真空防止チャネ
ルを含む、
請求項1に記載の使い捨て可能な貯槽ライナ。
【請求項3】
当該貯槽ライナの前記底壁は、各グループの中心点が隣接する96フォーマットのグループの中心点から9mm離間する、96個のグループの相互接続された
行列アレイの真空防止チャネ
ルを含み、
当該貯槽ライナの前記底壁は、各グループの中心点が隣接する384フォーマットのグループの中心点から4.5mm離間する、384個のグループの相互接続された
行列アレイの真空防止チャネ
ルも含み、相互接続された真空防止チャネルの各96フォーマットのグループは、相互接続された真空防止チャネルの4つの384フォーマットのグループと1つ又はそれよりも多くのチャネルを共有する、請求項1に記載の使い捨て可能な貯槽ライナ。
【請求項4】
前記
真空防止チャネルは、0.50mm±0.1mmの幅と、0.3mm±0.1mmの深さとを有する、請求項1に記載の使い捨て可能な貯槽ライナ。
【請求項5】
当該貯槽ライナの前記底壁は、相互接続された真空防止チャネルのグループを含み、各グループは、第1の対の垂直な交差するチャネルであって、チャネルの交差部が前記グループについての中心点を定める、第1の対の垂直な交差するチャネルと、該第1の対の垂直な交差するチャネルから45°回転させられた、第2の対の垂直なチャネルとを含み、該第2の対のチャネルは、前記中心点で交差するように整列させられるが、前記中心点の近傍で中断され
る、請求項1に記載の使い捨て可能な貯槽ライナ。
【請求項6】
前記使い捨て可能ライナは、透明である、請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の使い捨て可能な貯槽ライナ。
【請求項7】
当該貯槽ライナは、成形ポリスチレン及びポリプロピレンのうちの1つで作られ、
当該貯槽ライナは、
当該貯槽ライナの前記底壁が、処理前の
当該貯槽ライナの前記底壁と比較して、増大した湿潤性を有するように、コロナ処理され或いは他の方法で処理され
、前記ライナの前記底壁の測定される表面張力が天然水の表面張力であ
る72ダイン/センチメートル以上であるように処理される、請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の使い捨て可能な貯槽ライナ。
【請求項8】
液体試料又は液体試薬を保持する実験室貯槽キットであって、
請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の使い捨て可能な
貯槽ライナと、
該使い捨て可能な
貯槽ライナを保持する再使用可能な貯槽ベースとを含み、
該再使用可能な貯槽ベースは、
前記貯槽ライナが所定のプラットフォームに入れ子式に嵌入するような寸法にされる外壁フランジを有する、
実験室貯槽キット。
【請求項9】
前記再使用可能な貯槽ベースは、一対の端壁と、該端壁の間の一対の長手方向の側壁と、前記端壁と前記長手方向の側壁との間に亘る一対の底壁とを有し、
前記貯槽ライナが前記貯槽ベース内に嵌入されるときに、前記貯槽ベースの前記底壁は、前記貯槽ベース上に位置する前記
貯槽ライナの前記底
壁のための安定した支持を提供するよ
うに構成され、
前記使い捨て可能な
貯槽ライナは、前記
貯槽ライナの
窪み部の頂部から外向きに延びる周縁フランジを更に含み、当該実験室貯槽キットは、取り外し可能な蓋、好ましくは、透明な蓋と、前記再使用可能な貯槽ベース上のロック機構とを更に含み、該ロック機構は、それらの間で前記
貯槽ライナの前記周縁フランジを用いて前記蓋を前記
貯槽ベースにロックする、
請求項8に記載の実験室貯槽キット。
【請求項10】
前記再使用可能な貯槽ベースの
側壁のうちの少なくとも1
つは、
前記貯槽ライナが前記貯槽ベース内に嵌入されるときに見える明確な液体容積目盛りマークを有し、
前記使い捨て可能な
貯槽ライナは、透明なプラスチック材料で作られ、前記再使用可能な
貯槽ベースの前記
窪み部の輪郭に密接に従う形状を有し、
前記
窪み部の前記側壁にある前記液体容積目盛りマークは、前記使い捨て可能な
貯槽ライナに収容される液体試料の容積を測定するよう較正され、前記使い捨て可能な
貯槽ライナが前記再使用可能な
貯槽ベース内の所定の場所に設置されるときに観察可能である、
請求項8又は9に記載の実験室貯槽キット。
【請求項11】
各グループについての前記真空防止チャネルは、前記第1の対のチャネル及び前記第2の対のチャネルのそれぞれのチャネルと交差する円形チャネルを更に含む、請求項5に記載の使い捨て可能な貯槽ライナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臨床及び研究用の実験室製品(laboratory products)に関し、特に、実験室貯槽キット(laboratory reservoir kits)及び液体試料及び試薬用のライナ(liners)に関する。
【背景技術】
【0002】
自動化及び半自動化された液体処理システム(liquid handling systems)は、しばしば、96個又は384個の使い捨て可能なピペット先端(pipette tips)用のピペット操作ヘッド(pipetting heads)を含む。96個のピペット操作ヘッドは、8×12個の先端取付けシャフトのアレイを有し、隣接するシャフト間の中心線の間隔は9mmである。384個のピペット操作ヘッドは、16×24個の取付けシャフトのアレイを有し、隣接するシャフト間の中心線の間隔は4.5mmである。間隔は(以前はSBSフォーマットとして知られていた)ANSI/SLASマイクロプレート規格によって設定される。米国規格協会/実験室自動化及びスクリーニング協会(ANSI/SLAS)は、マイクロプレート(microplates)についての規格寸法を採用している。
ANSI/SLAS1-2004:マイクロプレート-フットプリント寸法
ANSI/SLAS2-2004:マイクロプレート-高さ寸法
ANSI/SLAS3-2004:マイクロプレート-底外側フランジ寸法
ANSI/SLAS4-2004:マイクロプレート-ウェル位置
ANSI/SLAS6-2012:マイクロプレート-ウェル底高さ
【0003】
これらの規格は、異なる製造業者からのプラスチック消耗製品を備える自動化された液体処理機器の使用を容易にするために開発された。24個のピペット操作ヘッドのようなより少ない取付けシャフト又は1536個のピペット操作ヘッドのようなより多くの取付けシャフトのマトリックス(matrix)を有する自動化又は半自動化された液体処理システムも現場で使用されるが、最も一般的なものは96個及び384個のヘッドである。これらの自動化又は半自動化された液体処理システムは、典型的には、ピペット操作ヘッドの下に配置されるプラットフォームを用いて設計され、プラットフォームは、マイクロプレート、マイクロチューブ(microtubes)のラック、又は試料若しくは試薬を保持する貯槽のための1つ又はそれよりも多くのネスティング場所(nesting locations)を含む。当技術分野において、マイクロプレートは、ウェルプレート(well plates)と呼ばれることがあり、マイクロチューブは、試料チューブと呼ばれることがある。ネストは、96個又は384個のピペット先端のそれぞれをプラットフォーム上のマイクロプレート内のそれぞれのウェル(井戸部)(wells)の中心点と整列させるために、SBS規格(現在はANSI/SLAS)用のマイクロプレートの外形寸法に従ったサイズにされる。
【0004】
上述のように、試料又は試薬を保持するための実験室貯槽をネスト内のプラットフォーム上に配置することもできる。貯槽は、典型的には、個々のウェルの代わりに共通のバシン(窪地部)(basin)を有し、液体中断(液体ハングアップ)(liquid hang-up)を減少させるために平坦な底又はパターン化された底のいずれかを有することが知られている。新しい処置を開始する前に貯槽を洗浄及び/又は滅菌する必要を回避するために使い捨て可能な貯槽ライナを使用することも知られている。多くの貯槽及びライナは、天然に疎水性であるポリスチレンで作られる。疎水性表面は、最終吸引中に液体をビーズ状にさせ(bead up)、それは液体ピックアップを容易にして、残留容積を減少させると概ね考えられている。
【0005】
自動化又は半自動化された96個又は384個のヘッドシステム上の使い捨て可能な貯槽ライナの使用に伴って生じることが見出された1つの問題は、ピペットヘッドが下げられるときに、取り付けられるピペット先端の1つ又はそれよりも多くがライナ底の表面と係合する場合があることである。ヘッドがライナを吸引し、ライナを先端の底にあるオリフィスに対して緊密に引くとき、ライナ底の表面と係合させられるピペット先端は、残念ながら、先端内に真空を作り得る。先端内の真空は、吸引が継続するにつれて増加し、オリフィスは、最終的に閉鎖される。この状況は、不正確なピペット操作につながり得るが、深刻な問題であるピペット操作ヘッドの汚染にもつながり得る。ライナ底と真空係合されるピペット先端が解放すると、有意な圧力差によって今や駆動される試薬又は試料は、しばしば、ピペット先端及び取付けシャフトを越えてそれぞれのピストンシリンダ内に上向きに噴霧する。これが起こるならば、ピペットヘッド全体を分解、洗浄、減菌することが必要な場合がある。
【0006】
ライナからの全ての液体を完全に吸引しようとするときには、ライナ内の残留容積又は液体中断を減少させることがしばしば望ましい。この目的を達成するために、ピペット先端は、典型的には、吸引し得ない液体の残留容積を減少させるために、可能な限り合理的に底壁に接触することなくライナの底壁に近接して下げられる。マルチチャネルピペット操作システムでは、ピペット操作ヘッドの高さを精密に制御し得る自動化されたマルチチャネルシステムでさえも、1つ又はそれよりも多くのピペット先端オリフィスが、他の先端オリフィスと整列させられなくなり得る。何故ならば、例えば、ピペット先端は、誤って取り付けられたり、変形させられたりするからである。先端の不整列は、底壁に係合して真空を形成する先端につながり得る。たとえ全てのピペット先端が適切に整列させられるとしても、ピペット先端の場所に対応するライナの底壁の部分が、ピペット先端オリフィスと平面レベルで精密に整列されないことが可能である。この種の不均一性は、例えば、ライナが貯槽ベース内に完全に位置しないか或いは僅かに変形させられるときに起こり得るし、容器から最終容積を吸引しようとするときに底壁と係合する1つ又はそれよりも多くのピペット先端にもつながり得る。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、主として、実験室貯槽キット(laboratory reservoir kits)において使用される使い捨て可能な貯槽ライナ(reservoir liner)の底壁への真空防止チャネル(anti-vacuum
channels)の配置に関する。
【0008】
1つの態様において、本発明は、使い捨て可能なライナの構成に向けられている。別の態様において、本発明は、再使用可能な貯槽ベース内に保持される使い捨て可能なライナを含むキットの構成に向けられている。使い捨て型ライナ及び再使用可能な貯槽ベースは、ライナがベースに嵌入して、貯槽ベース上に位置するライナの底壁でライナのための安定に支持を提供するように設計される。使い捨て可能なライナは、特に、ピペット先端がライナバシン(窪地部)(basin)の底壁と真空係合するのを防止するように構成される。これを行うために、ライナバシンの底壁の上面は、液体試料又は液体試薬が保持される容積に向かって上向きに面する複数の真空防止チャネルを含む。底壁は、ピペット先端のマトリックスがライナバシンの容積から液体を吸引するのを可能にするように構成された、概ね四角形の形状を有する。真空防止チャネルの目的は、たとえピペット先端がライナの底壁の上面に押し付けられるとしても、ピペット先端のオリフィスの下に流体アクセス可能な空隙を提供することである。真空防止チャネルを使用すること及びライナの底壁を直線又は平坦に維持することも、真空チャネルのないライナと比較して、96個又は384個の先端ピペット操作ヘッドを用いてライナから液体を完全に吸引しようとするときにライナ内に残存する液体の残留容積を概ね減少させることが見出された。
【0009】
1つの実施形態において、ライナは、上記で議論したように疎水性であると一般的に考えられる成形ポリスチレンで作られる。しかしながら、底壁をより親水性にするために、ポリスチレンライナを真空防止チャネルでコロナ処理することは、96個又は384個の先端ピペット操作ヘッドで液体を完全に吸引しようとするときにライナ内に残存する残留容量を更に減少させることが見出された。コロナ処理は、ライナの底壁の測定される表面張力を、天然水の表面張力である約72ダイン以上にするのに十分であることが好ましい。別の実施形態において、ライナは、成形ポリプロピレンで作られる。この実施形態は、耐薬品性がより重要である用途に特に有用である。しかしながら、ポリスチレンは、ポリプロピレンよりも剛的(stiffer)であるが、それはしばしば実験室において有益である。
【0010】
望ましくは、再使用可能な貯槽ベースは、SBSフォーマットされたウェルプレート(井戸部プレート)(well plates)及び貯槽を保持するように構成されたネストと適合する外側フランジ寸法(outside flange dimensions)(即ち、ANSI/SLAS 3-2004:マイクロプレート-底部外側フランジ寸法(Bottom Outside Flange Dimensions))を有する。貯槽が96個のピペット操作ヘッドと共に使用されるように作られるならば、使い捨て可能なライナは、SBS(ANSI/SLAS)フォーマットと一致して、隣接するグループの中心点から9mm離間する各グループについて中心点を備える真空防止チャネルの96個のグループのマトリックス(matrix)を含む。使い捨て可能なライナが384個のピペット操作ヘッドと共に使用されるように設計されるならば、ライナは、望ましくは、やはりSBSフォーマットと一致して、隣接するグループ分けの中心点から4.5mm離間する各グループについての中心点を備える真空防止チャネルの384個のグループのマトリックスを含む。ライナの意図される用途に依存して、使い捨て可能なライナをより多くの又はより少ないグループで作ることもできる。しかしながら、いずれの場合においても、グループは、ピペットヘッド上のピペット先端が配置されることが予期される中心点に中心化されなければならない。幾つかの実施態様において、ライナは、9mm離間する隣接する中心点を備える真空防止チャネルの96個のグループのマトリックスと、4.5mm離間する中心点を備える真空防止チャネルの384個のグループのマトリックスとを含む。このようにして、ライナは、96個のピペット操作ヘッド又は384個のピペット操作ヘッドの両方と共に使用されるように構成される。
【0011】
真空防止チャネルのグループは、本発明に従った様々な構成を取ることができる。目標は、ピペット先端が中心から幾分外れるとしても、それぞれのピペット先端のオリフィスの下に流体アクセス可能な空隙を提供するチャネル構成を提供することであり、ピペット先端が中心から幾分外れることは、例えば、ピペット先端が直線的に取り付けられないとき又は先端が僅かに変形させられるときに、自動ピペット操作システムにおいて起こり得る。1つの所望のグループ構成は、垂直な交差するチャネルの第1のペアであって、チャネルの交差がグループについての中心点を定める垂直な交差するチャネルの第1のペアと、第1のペアから45°回転された垂直なチャネルの第2のペアとを含み、チャネルの第2のペアは、中心点で交差するように整列させられるが、中心点の近傍で中断される。チャネルは、一定の幅(確実な成形のために要求される所要のドラフト角を除く)及び一定の深さを有することが望ましく、チャネルの幅は、交差部を横切る距離が、そのライナと共に使用される可能性が高い最小サイズのピペット先端の外側オリフィス直径よりも小さくなるように、選択されることが望ましい。例えば、12.5μlのピペット先端が0.61mmの外側オリフィス直径を有するならば、ピペット先端の遠位端が交差部でチャネルに嵌入し得ないことを確実にするために、チャネルの幅は、約0.50mm以下でなければならない。384個の用途について、上述のグループ構成を使用する所望のチャネル幅は、0.50mm±0.10mmである。96個のヘッド用途について、所望の幅は、同様に0.50mm±0.10mmである。ピペット先端がどのように取り付けられるか或いはどのように構成されるかの故にピペット先端オリフィスが中心から外れている事態において又はそれが手持ち式のピペットと共に使用される事態において、真空防止空隙によって覆われるより大きな領域を提供するために、グループは、グループの周縁に向かって中心点から離れて配置される他のチャネルを有してもよい。底壁上のチャネルによるより大きな被覆範囲を提供することも、液体がピペット先端によって吸引されるときに、周縁液体がグループのチャネル内に引き込まれる、より高い可能性を生み、それは、ひいては、死容積又は残留容積を減少させる傾向を有し、他の要因は等しい。1つの実施形態では、円形チャネルが、第1及び第2のペアのチャネルのそれぞれと交差する。
【0012】
幾つかの実施形態では、追加的なチャネルが、隣接するグループの間に配置されて、真空防止チャネルの隣接するグループを流体動力学的に接続する。図に示す実施形態のような他の実施形態では、真空防止チャネルの隣接するグループの間にチャネルが延在しない。
【0013】
開示の実施形態において、使い捨て可能なライナの底壁は、他の場合には平坦であり、真空防止チャネルのグループは、96個のピペット操作ヘッド若しくは384個のピペット操作ヘッド構成のいずれか又は両方のために中心点に配置される。使い捨て可能なライナは、望ましくは、上述のような透明な成形ポリスチレン又はポリプロピレンのような、透明なプラスチック材料で作られ、部分的には、ベースの側壁にある液体容積目盛りマークを見るのを容易にするために、再使用可能なベースのバシンの輪郭に密接に従う形状を有する。また、望ましくは、再使用可能な貯槽ベースの側壁は、バシンの一部を形成する側壁の表面に明確な液体容積目盛りマークを有する。これらの液体容積目盛りマークは、透明な使い捨て可能なライナに含まれる液体サンプルの容積を測定するために較正され、使い捨て可能なライナが再使用可能なベース内に配置されたときに観察可能である。更に、ユーザが使い捨て可能なライナに含まれる液体の量を容易に見ることができるように、再使用可能なベースの1つ又はそれよりも多くの側面は、1つ又はそれよりも多くの視認窓(viewing windows)を含んでよい。視認窓は、狭い窓であることができ、或いは、視認窓は、ベースが使い捨て可能なライナのための十分な支持を依然として有する限り、比較的広くあることができる。
【0014】
幾つかの実施形態において、実験室貯槽キットは、再使用可能なベース内に配置されるライナに収容される液体を覆う蓋を含む。蓋が所定の場所に掛けられるときに、収容される液体又は試薬の視認を容易にするために、蓋が透明であることが好ましい。任意的に、蓋の上にガスケットを設け、貯槽ベース上のロック機構を使用して、蓋を所定の場所にロックし、ライナを蓋の上のガスケットとベースとの間に固定して、収容される液体を封止する。蓋は、好ましくは、取り付けられる蓋とのキットの積重ねを容易にするようにも構成される。ロック機構を使用して、蓋が取り外されるときに使用中にライナを所定の場所に保持することもできる。
【0015】
有利には、使い捨て可能なライナの底壁上の真空防止チャネルの使用は、たとえピペット先端がライナの底壁と係合するとしても、流体アクセス可能な空隙を提供する。これは、ピペットが吸引されている間、ピペット先端が先端内で真空を引き起こさないことを意味する。また、それは、実際問題として、先端部がライナの底壁により近接して配置されることができ、且つ/或いはライナの底壁に係合することができ、反真空機構なしにそのように行うときに、より真空係合を引き起こす可能性がより高いことを意味する。ひいては、ピペット先端オリフィスをライナの底壁に極めて近く移動させる或いは係合させる能力を用いて、ピペット操作システムは容器から液体を引き出すことができ、残留容積は有意により少ない。加えて、動作の理論に制約されないで、コロナ処理される表面の親水性は、表面上の液体を自己レベルにさせる一方で、チャネルは、表面上に液体を蓄積させる表面張力構成を提供すると考えられる。その結果、液体は、チャネルのグループの間で表面から自然に引き出され、液体レベルが引き下げられるにつれて、チャネルのグループ内及び上に隔離されたプールを形成する。この現象は、信頼性の高いピペット操作のための最小作動容積を効果的に下げる。これは、高価な、希少な又は小さな試料又は試薬にとって特に重要である。
【0016】
本発明の他の構成及び利点は、図面及びそれらの以下の記述を検討した後に当業者に明らかになることがある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】384個のピペット操作ヘッド用に構成された本発明の第1の例示的な実施形態に従って構築された実験室貯槽キットである。
【0018】
【0019】
【
図3】
図2に示す実験室貯槽キットの平面図である。
図1乃至3のチャネルグループの配置は、384個のピペット操作ヘッド用に構成された貯槽内のチャネルグループの配置の例示であるが、グループ内のチャネルの構成については
図4が参照されるべきである。
【0020】
【
図4】384個のピペット操作ヘッド用に構成された貯槽のチャネルグループにおけるチャネルの構成を示す詳細図である。
【0021】
【
図5】先端オリフィスの下にチャネルを備える貯槽の底壁と係合するピペット先端を示す概略的な断面図である。
【0022】
【
図6】
図5の線6-6によって示す領域の詳細図である。
【0023】
【0024】
【0025】
【
図9】96個のピペット操作ヘッド又は384個のピペット操作ヘッドのいずれかと共に使用されるように構成され、キットに固定された蓋と組み立てられたキットを示す、本発明の別の例示的な実施形態に従って構築された実験室貯槽キットである。
【0026】
【
図10】
図9に示す実験室貯槽キットの斜視図であり、蓋はキットの残余の構成要素から分解されている。
【0027】
【
図11】キットに蓋を取り付けるロック機構の相互作用を示す、
図9の線11-11に沿って取られた詳細な断面図である。
【0028】
【
図12】周縁シーリングガスケットを示す、
図9及び
図10に示す蓋の底面図である。
【0029】
【
図13】ピペット先端との使用を示す蓋が外されたキットの斜視図である。
【0030】
【
図14】ライナ及びライナの底壁上の真空防止チャネルを示すために蓋が取り外された、
図9乃至
図21に示す実験室貯槽キットの頂面図である。
【0031】
【
図15】
図14中の線15-15によって描写する領域の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1乃至
図8は、本発明の第1の実施形態に従って構築された液体試料及び試薬用の実験室貯槽キット10(laboratory reservoir kit)を例示している。キット10は、貯槽ベース12と、使い捨て可能なライナ14とを含む。
図1乃至
図8は、例示的なピペット先端16(pipette tip)も示している。キット10は、使い捨て可能なライナ14が、例えば、
図2に示すように、再使用可能な貯槽ベース12内に配置されるときに、液体試料又は液体試薬を使い捨て可能なライナ14内に保持するように設計される。キット10は、100mlまでの液体試料又は試薬を保持するように設計されるが、使い捨て可能なライナ14の容量は、実質的な過充填を処理するのに十分である。前述のように、低保持ピペット先端16の使用は、希少な又は高価な液体試料又は試薬の浪費を最小限に抑えるために貯槽キット10を使用するときに特に効果的なことがある。
【0033】
貯槽ベース12は、使い捨て可能なライナ14が配置されるバシン18(窪地部)(basin)を含む。使い捨て可能なライナ14の輪郭は、再使用可能なベース12のバシン18の形状及び輪郭に密接に従う。再使用可能なベース12上の外側壁22及び端壁20は、実験室ベンチトップのような平坦な表面上の貯槽ベース12及びそのバシン18のための支持を提供する。貯槽ベース12を様々な材料で作ることができるが、ベース12を白色ABSのような不透明色を有する比較的剛性の射出成形プラスチックで作ることが好ましい。バシン18の表面は、サテン仕上げを有することが好ましい。他方、上述のように、使い捨て可能なライナ14は、透明なプラスチックで作られ、約0.51mmの厚さを有する透明な射出成形ポリスチレン又はポリプロピレンのような研磨された表面(少なくとも側壁及び周縁フランジ)を有することが好ましい。ベース12内の不透明色のバシン18上のサテン仕上げとは対照的に、透明なライナの研磨された又は光沢のある表面は、透明なライナ14を、透明なライナが貯槽ベース12内に存在するか否かを決定しようとする実験室作業者にとってより目立つものにする。射出成形は、使い捨て可能なライナ14を製造する好ましい方法である。何故ならば、ライナの厚さがライナを通じて一定であることが望ましいからである。しかしながら、使い捨て可能なライナ14及び再使用可能なベース12の両方について他の製造方法及び厚さ仕様が可能な場合があることが認識されるべきである。
【0034】
使い捨て可能なライナ14が、例えば、成形ポリスチレン又はポリプロピレンで作られるときには、プラスチック表面をより親水性にするために、成形後にライナをコロナ処理又は他の方法で処理することが望ましく、それはライナ内に残留する少量の液体が底壁の表面でビーズ状になる(bead up)よりもむしろ平坦になる傾向を有することを意味する。しかしながら、チャネルの毛細管作用は、液体が引き下げられるときに、チャネルグループ(channel groupings)より上方のプール内に液体を引き込む傾向を有する。少量の液体がビーズ状になる傾向を有するように疎水性表面を提供することは、通常は貯槽又は貯槽ライナからのピペット操作後の残留容積の量を減少させる最良の方法であると当技術分野において一般的に考えられている。本明細書中に記載するような真空防止チャネル(anti-vacuum channels)の使用するとき、本発明者は、表面をコロナ処理して、表面をより湿潤可能にし且つより親水性にすることにより、液体が均一に広がる傾向を有する表面を提供することが有利であり、チャネルの毛細管作用は、最終ドローダウン(final draw down)で効果的なピペット操作に適した液体のプール又はビーズを作るのに関与することを見出した。ピペット先端オリフィスの下方の流体アクセス可能な空隙及び真空防止チャネルを用いるならば、たとえ先端がライナの底面と係合しているとしても、親水性表面は、複数のピペット先端からの吸引のために利用可能なより一層均一な流体分布及び容器からの液体の完全な吸引後のより少ない残留容積を促進する。上述のように、その表面張力が天然水の表面張力である72ダイン以上になるよう表面を処理することが望ましい。
【0035】
耐薬品性が望ましい用途のために、使い捨て可能なライナ14をポリプロピレンで作ることができる。ポリプロピレンライナも、その表面張力が水の表面張力である72ダイン以上であるよう、同様にコロナ処理されるか或いはその他の方法で処理されるべきである。
【0036】
再使用可能なベース12内のバシン18は、四角形であり、端壁20の底と側壁22との間に延在する。四角形のバシン18は、SBSフォーマットと互換性があり、384個のピペット操作ヘッド又は96個のピペット操作ヘッドのためのサイズにされる。
図1乃至
図8に示す使い捨て可能なライナ14は、384個のピペット操作ヘッド用に設計されているが、再使用可能なベース12内のバシン18の四角形フットプリントは、使い捨て可能なライナ14が384個のピペット操作ヘッド用に設計されていようが96個のピペット操作ヘッド用に設計されていようが、同じでなければならない。再使用可能なベース12内のバシン18の底壁24は平坦である。
図5を参照すると、使い捨て可能なライナ14は、ライナ14の底壁26が貯槽ベース12の底壁24上に位置した状態で、本実施形態における使い捨てライナ14のベース12の底壁24、端壁20及び長手側壁22(
図1を参照)が使い捨て可能なライナ14を支持するように、ベース12内に嵌入するように構成される。
図5並びに他の図面に見ることができるように、この実施態様において、使い捨て可能なライナ14の底壁26は平坦である。
【0037】
図2乃至
図4を参照すると、使い捨て可能なライナ14の底壁26は、真空防止チャネル28の384個のグループのマトリックス(matrix)を含む。真空防止チャネル28は、液体試料又は液体試薬が使い捨て可能なライナ14内に保持される容積30に向かって上方に露出される。ライナ14の底壁26は、SBSフォーマットで配置された384個のピペット先端のマトリックス全体が使い捨て可能なライナ14から液体試料又は液体試薬を吸引するのを可能にするように構成された概ね四角形の形状を有する。使い捨て可能なライナ14は、ライナ側壁34及び端壁36の上端から外向きに延びる周縁フランジ32を含む。使い捨て可能なライナ14上の周縁フランジ32は、使い捨て可能なライナ14がベース内に配置されるときに、ベース12の上方リム40(
図1を参照)上に位置するか或いは上方リム40に僅かに接触してよい。しかしながら、使い捨て可能なライナ14の底壁26は、再使用可能なベース12の底壁24上に位置しなければならない。周縁フランジ32は、使い捨て可能なライナ14をベース12内に固定するのに役立ち、また、実験室作業者による使い捨て可能なライナ14の持上げも容易にする。ユーザは、ライナ14から液体を注ぐ前に、使い捨て可能なライナ14を再使用可能なベース12から、例えば、
図1に示す位置まで持ち上げることが推奨される。このような注入を容易にするために、使い捨て可能なライナ14は、各隅に注ぎ口60を含む。ベース12の前側壁22は、ライナ14がベース12内に位置するときにユーザがライナ14を容易に見ることができるように、窓として機能する切欠き領域69を含む。必ずしも好ましいわけではないが、透明なインサートを窓69に亘って配置することができる。
【0038】
液体容積目盛りマーク(62)が、再使用可能なベース12の側壁22に成形又は印刷される。
図2、
図5及び
図7を参照のこと。液体容積目盛りマーク(62)は、好ましくは、パッド印刷又は任意の他の適切なプロセスを用いて側壁22に印刷される。ユーザは、ライナ14がベース12内に配置されるときに、透き通った透明なライナ14を通じて側壁上の液体容積目盛りマーク(62)を見ることができる。
図2、
図5及び
図7は、ベース12内に配置されたライナ14を示しており、透明な使い捨て可能なライナ14を通じてベース12の側壁22上の液体容積目盛りマーク(62)を見ることができることを例示している。
図2、
図5及び
図7において、ベース12の不透明な表面上のマークが透き通った透明なライナ14の下に位置することを示すために、液体目盛りマークの参照番号(62)は、括弧内に置かれている。同様に、参照番号(22)も、ベース12の側壁がこれらの図においても透明なライナ14の下に位置することを示すために括弧内に置かれている。容積インジケータも、ベース12の側壁(22)に印刷されてよい。容積インジケータについての値自体は、図面に例示されていないが、100mlキット10は、典型的には、関連する容積液体目盛りマークに隣接する20、40、60、80及び100の値を含む。キット10は、ベース12内の所定の場所に設置される使い捨て可能なライナ14と共に使用されるように意図されているので、目盛りマーク(62)の場所は、ベース12のバシン18の容積に対してではなく、使い捨て可能なライナが所定の場所にあるときに使い捨て可能なライナ14内に含まれる液体の容積に対して較正される。ライナ内の液体がそれぞれの容積インジケータの読取りを妨げないように、ベース12のバシン側壁(22)上の容積インジケータは、それらが関連付けられる較正された液体容積目盛りマーク(62)に又は液体容積目盛りマーク上に印刷されることが望ましい。
【0039】
再び
図1を参照すると、ベース12の底フランジ64は、SBS規格(即ち、ANSI/SLAS 3-2004:マイクロプレート-底フランジ外形寸法)に適合する外壁寸法を有する。SBS適合性の外壁寸法を有することは、ベース12が、96個又は384個のピペット操作ヘッドを有する液体処理システム用のプラットフォームネスト内に嵌合し、ピペット先端の各々が少なくとも一般的に真空防止チャネル28のグループのうちの1つと整列するように整列させられることを意味する。次に、
図4を参照すると、真空防止チャネル28の各グループは、所与のライナに対して類似の構成を有することが望ましい。しかしながら、真空防止チャネルのグループのうちの1つ又はそれよりも多くのグループは、ライナ上の真空防止チャネルの他のグループとは異なる構成を有することが可能である。
図4において参照番号28によって特定されるグループを参照すると、真空防止チャネルの各グループは、中心点66を有し、
図1乃至
図8に示すライナ14は、384個のピペット操作ヘッドのためのものであるので、隣接する中心点66の間の間隔は、SBS規格に従った4.5mmである。一例として、
図4は、真空防止チャネルのグループのうちの1つのグループの中心点66と整列させられたピペット先端16を示している。各グループ28は、グループ28のための中心点を定める交差部66を有する第1のペアの垂直に交差するチャネル68を含む。
図4において、第1のペアの垂直に交差するチャネル68は、(
図4に見られるように)垂直チャネル68及び水平チャネル68である。グループ28は、第1のペアのチャネル68から45°回転された第2のペアの垂直チャネル70を含む。第2のペア内のチャネル70は、中心点66で交差するように整列されるが、中心点66の近傍で中断されている。従って、底壁26の上面の高さにある不規則な形状のペデスタル72(pedestal)が、チャネル68とチャネル70との間に形成されている。第2のペアのチャネル70が中心点66を通じて続くことを許容することは、使い捨て可能なライナ14が一緒に使用されるように設計された最小サイズのピペット先端の下方遠位端の継続的な下向きの移動を妨げるには大きすぎる直径を有する中心点66の周りの空隙を作り出す。例えば、12.5μlのピペット先端は、0.61mmの外径及び0.30mmの内径を有する下方オリフィスを有してよい。チャネル68、70の幅及び構成は、0.61mmのオリフィスが適合するチャネル領域がないように選択されなければならない。チャネル構成も、たとえ先端が中心点66で又はその付近でライナ14に対して押し下げられるとしても、0.30mmの内径を有するオリフィス開口の少なくとも一部分が開放チャネルに亘って架かる(spans)ように、設計されなければならない。例示的な実施形態では、384個のピペット操作ヘッドのための
図4及び
図5に示すチャネルグループ28について、チャネル68、70は、0.50mm±0.10mmの概ね一定の幅を有するが、成形のための抜き勾配(draft
angle)が考慮されなければならない。チャネル68、70の深さが一定であること、例えば、0.30mm±0.10mmであることも望ましい。
図4において、チャネルグループ28は、第1のペア68と第2のペア70との間に架かる円形チャネル72も含む。この円形チャネル72は、ピペット先端の誤配置についてより大きな許容度を提供する。
【0040】
図5及び
図6は、ピペット先端16が真空防止チャネル28のグループと整列させられた状態でライナ12の底壁26を圧迫する例示的なピペット先端16と共に使用するキット10を示している。ピペット先端16の底は、グループ28の中心点66で交差するチャネルと第3のペアのチャネル74との間でペデスタル72に押し付けられている。
図4参照のこと。ピペット先端16の内側オリフィスは、ピペット先端16がライナ12の底床26に押し付けられているときでさえも、中心点66で交差するチャネルの真上に存在する。このようにして、ピペットを操作してピペット先端16内に液体を吸引するときに、真空は作られない。
【0041】
図9乃至
図15は、本発明の別の実施形態に従って構築された液体試薬貯槽キット310を例示している。貯槽キット310は、
図1乃至
図8に示す使い捨て可能なライナ14と多くの点で類似する使い捨て可能なライナ314を含む。しかしながら、使い捨て可能なライン314は、96個のピペット操作ヘッド及び384個のピペット操作ヘッドの両方と共に使用されるように設計される。再び、図面に明らかなように、ライナ314の底壁は、真空防止チャネルを除いて平坦である。貯槽キット310は、多くの点で
図1乃至
図8に示す再使用可能なベース12と類似する再使用可能な貯槽ベース312を有する。貯槽キット310は、最大150mLの液体を保持するように設計されるが、ベース312及びライナ314の側壁の高さを増大又は減少させることによって300mLのような他のサイズを作ることができる。キット310は、ユーザがライナ314に収容される液体を見るのを可能にするように好ましくは透明な蓋315も含む。ベース312に配置されるロック機構317は、ライナ314及び任意の収容される液体又は試薬の上の所定の場所に蓋315をロックするために使用される。
図9乃至
図15は、キット10の一方の側にある1つのロック機構を概ね例示しているが、別のロック機構がキット10の他方の側に配置されることが理解されるべきである。ロック機構317は、指グリップ319と、ベース312の側壁にある細長いスロット323を通じて取り付けられるラッチアーム321とを含む。摺動取付けアーム325が、
図11に示すように、細長いスロット323内にロック機構317を保持する。ロック機構317を、
図10の細長いスロット323の右側に配置されるロック解除位置から、ラッチアーム321上の
図10に示す矢印によって描写するような細長いスロット323の最左側位置に配置されるロック位置にスライドさせることができる。
図9において、ロック機構317は、ロック解除位置とロック位置の中間に示されている。
【0042】
図12は、蓋315の下面を示している。ガスケット337又はシールが、蓋315の周縁に配置されている。ガスケット337は、任意的な構成である。
図11を参照すると、ガスケット337は、蓋315が所定の場所にロックされると、ライナ314の周縁フランジ332を圧迫し、それにより、ライナ314の頂部の周囲に円周方向シールを提供する。図面に示すガスケット337は、平坦な断面を有する。しかしながら、他のタイプのガスケットが適切なことがある。例えば、段付き断面を有するガスケットを使用するは、より堅牢なシールを提供することができる。階段状断面は、蓋315が所定の場所でロックされるときに、ガスケットがライナ314の周縁フランジ332に圧迫することを可能にするだけでなく、ライナの側壁と周縁フランジ332との間の交差部でライナを圧迫することも可能にする。ガスケットが使用されるとき、蓋はポリプロピレンで成形されるのが好ましい。しかしながら、貯槽がロボット式に取り外されることが意図されるならば、ガスケットの使用は望ましくない。ロボット用途において、蓋は、ポリプロピレンよりも剛性のあるポリスチレンで作られ、ガスケットがないことが望ましい。依然として
図11を参照すると、ラッチアーム321は上向きに延び、次に、内向きに延びて、蓋315の上方リム333と係合する。リム333は、ロック機構317がロック位置に係合されるときにベース312への蓋315の確実な取付けを容易にする上向きに延びる締付けリップ335を含む。例えば、
図10を参照すると、蓋315の周縁リム333は、ロック機構317のロック解除位置に対応する切欠き338を有する。ベース312は、他の端壁に第2の摺動ロック機構を有する。図に示すように4つの切欠き338を含むことは、蓋が両方向に配置されることを可能にする。蓋315は、例えば、液体がライナ314に貯蔵され、蓋315が所定の場所にロックされるときに、キット310の安定した積重ねを容易にするように、蓋315の上面にガイド隆起部339(guide ridges)も含む。ガイド隆起部は、ベース312の下方外壁フランジ339内に嵌入するような寸法にされる。前述の実施形態に関して議論したように、ベース312の下方外壁フランジ339は、自動化又は半自動化されたピペット操作機器との使用を容易にするために、SBSフォーマットされたネスト内に嵌入する外形寸法を有する。
【0043】
ライナ214の周縁フランジ332は、蓋315の切欠き338に対応する形状及び場所を有する切欠きも含む。ライナ214の周縁フランジ332にある切欠きは、ライナのフランジが再使用可能なベース312の壁の上部に平坦に配置されることを可能にする。ライナ214を再使用可能なベース312内で平らに保持するために、蓋315が所定の場所にないときに、ロック機構317をロック位置にスライドさせることができる。ライナ214の底を平坦に維持することは、96個又は384個のピペット操作ヘッドを用いてライナ214から全ての液体を完全に吸引しようとした後に、保持される液体の容積を減少させる。
【0044】
次に、
図13乃至
図15を参照すると、ライナ314は、96個のピペット操作ヘッド及び384個のピペット操作ヘッドの両方を収容するように設計された真空防止チャネルのグループ328を含む。
図13及び
図15は、例示的なピペット先端316A、316B、316C、316Dを示している。ピペット先端316A及び316Bは、384個のヘッド上の先端を表し、4.5mmの中心線間隔で離間させられる。ピペット先端316C及び316Dは、96個のヘッド上の先端を表し、9mmの中心線間隔で離間させられる。
【0045】
この実施形態において、真空防止チャネルの一部は、96個のピペット操作ヘッドのためのグループ329と384個のピペット操作ヘッドのためのグループ429との間で共有される。
図15は、グループ329、429を詳細に示している。96個のヘッドについてラベル329付けされたグループは、交差する線形チャネル370を含む。真空防止チャネル370は、それらが96個のヘッド上のピペット先端のために使用されると予想される領域を越えて延び、384個のヘッドのために使用される真空防止チャネルのグループ429の一部である。384個のヘッドのグループ429は、円形チャネルに加えて、水平及び垂直チャネル470と、対角チャネル472とを含む。384個のヘッドのグループの中心点は、参照番号466によって指し示されており、384個のヘッドのグループについての隣接する中心点の間の距離は、
図3に示すように、4.5mmである。96個のヘッドのグループについての中心点は、参照番号366によって指し示されており、隣接する96個のヘッドのグループ329についての中心点366の間の距離は、同様に
図15に示されているように、9mmである。この実施形態において、全てのチャネルは、0.50mm±0.10mmの幅(ドラフト角を考慮する一定の幅が望ましい)及び0.3mm±0.1mmの一定の深さを有する。
【0046】
図示の実施形態には例示していないが、隣接するグループの間に追加的なチャネルを任意的に配置して、真空防止チャネルの隣接するグループを流体力学的に(fluid dynamically)接続することができる。このようにして、グループの一部又は全部を直接的又は間接的に流体力学的に接続することができる。毛細管作用は、連結されるチャネル間の流体分布を均一にする傾向を有し、それは、ひいては、複数のピペット先端を用いた信頼性の高いピペット操作のための最小作動容積を減少させることができる。
【0047】
上述のように、部分的には、
図1乃至
図8に開示した実施形態に関して記載したように、ユーザがベース314の側壁の内面にある目盛りマーク(図示せず)を読み取ることができるように、ライナ314は、成形された透明プラスチックで作られるのが望ましい。1つの望ましい実施形態において、ライナ314は、成形されたポリスチレン又はポリプロピレンから作られ、プラスチックライナの底壁が、コロナ処理前のポリスチレンライナの底壁と比較して増大された湿潤性を有するように、そして、望ましくは、ライナの底壁の表面張力が天然水の表面張力である約72ダイン
/センチメートル以上であるように、コロナ処理されるか或いは他の方法で処理される。この処理は、
図9~15に示すように、上記で例示した貯槽キット310における使用と共に、死容積(dead volume)又は残留容積を最小限に抑えるのに特に有効であることが見出された。死容積は、ピペット操作される液体のタイプを含む多くの要因によって変化し得る。コロナ処理されたポリスチレンライナ314を有する
図9乃至
図15に示す実施形態のために384個の12.5mlの先端を使用する水の測定された死容積は、3ml未満であり得る。これは、先端の1つが空気を吸引するや否やマルチチャネルピペットにおける吸引サイクルを停止させる一般慣行に従って測定される。次に、各先端に等量の液体があるように、先端吸引空気を含めて、全ての先端から液体が計量分配(ディスペンス)されるまで、ピペットの方向を逆にする。また、あらゆる追加的な液体を放出するために、先端は、発射させられる(touched off)。もちろん、死容積又は所要最小作動容積を最小限に抑えることは、特定の用途において二次的な目標であることがあるが、本発明は、ライナの底壁に係合するピペット先端の真空の可能性を排除するために依然として有用である。
【0048】
本発明は、以下の特許請求の範囲の主題によってカバーされる限り、上述の例示的な実施形態に限定されない。