(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】素子保護機能を有するコンタクトレンズ
(51)【国際特許分類】
G02C 7/04 20060101AFI20221018BHJP
G02C 11/00 20060101ALI20221018BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20221018BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20221018BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20221018BHJP
A61L 27/40 20060101ALI20221018BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20221018BHJP
C08L 71/00 20060101ALI20221018BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20221018BHJP
C08L 33/02 20060101ALI20221018BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20221018BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20221018BHJP
C08L 39/06 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G02C7/04
G02C11/00
A61L27/16
A61L27/20
A61L27/18
A61L27/40
A61L27/50
A61L27/50 200
C08L71/00
C08L67/00
C08L33/02
C08L29/04 B
C08L1/00
C08L39/06
(21)【出願番号】P 2020087964
(22)【出願日】2020-05-20
(62)【分割の表示】P 2017233973の分割
【原出願日】2017-12-06
【審査請求日】2020-05-20
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】517115363
【氏名又は名称】ペガビジョン コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】PEGAVISION CORPORATION
【住所又は居所原語表記】2F.-1, NO.5, XINGYE ST., GUISHAN TOWNSHIP, TAOYUAN COUNTY, TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】丁 偉家
(72)【発明者】
【氏名】彭 志宏
(72)【発明者】
【氏名】チャン ハンイー
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-531810(JP,A)
【文献】特開2016-046258(JP,A)
【文献】国際公開第2013/024799(WO,A1)
【文献】特表2017-505922(JP,A)
【文献】特表平06-508645(JP,A)
【文献】特表2011-519431(JP,A)
【文献】特開平04-334539(JP,A)
【文献】特開2009-008848(JP,A)
【文献】特表2005-538767(JP,A)
【文献】特開2016-046250(JP,A)
【文献】特表2012-502823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0066917(US,A1)
【文献】国際公開第2006/055707(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第106999295(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0107201(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/04
G02C 11/00
A61L 27/16
A61L 27/20
A61L 27/18
A61L 27/40
A61L 27/50
C08L 71/00
C08L 67/00
C08L 33/02
C08L 29/04
C08L 1/00
C08L 39/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性本体と、
前記透光性本体に設けられる機能性素子と、
前記透光性本体に設けられるとともに前記機能性素子を覆う保護層とを備える素子保護機能を有するコンタクトレンズであって、
前記機能性素子は、前記透光性本体と前記保護層によって被覆され外部と隔離され、前記保護層の材料としては、膜形成性高分子と、親水性高分子と、溶剤とを備え、
前記膜形成性高分子はポリエーテルポリオールであり、前記親水性高分子はポリビニルピロリドンであり、前記溶剤は水及びアルコール類からな
り、
前記保護層の総重量に対して、前記親水性高分子の含有量は15%であり、前記溶剤の含有量は61%であり、前記膜形成性高分子の含有量は24%であることを特徴とする、素子保護機能を有するコンタクトレンズ。
【請求項2】
前記保護層の厚さは、2μmから30μmであることを特徴とする、請求項
1に記載の素子保護機能を有するコンタクトレンズ。
【請求項3】
前記機能性素子は、パターン層と電気素子の両者中の少なくとも一種を備えることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の素子保護機能を有するコンタクトレンズ。
【請求項4】
前記機能性素子は、少なくともパターン層を含み、
前記パターン層は、コロイドの形の接着剤及び色材を含み、前記色材が前記接着剤に分散され、前記接着剤の分子と前記保護層の分子との間に働くファンデルワールス力又は結合を介して、前記機能性素子が前記保護層に固定されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の素子保護機能を有するコンタクトレンズ。
【請求項5】
前記機能性素子は、少なくとも電気素子を含み、
前記電気素子は、装着者の目から観察される物品までの距離を測定するための、発信器及び受信器を備える距離センサであることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の素子保護機能を有するコンタクトレンズ。
【請求項6】
前記保護層の幅は前記機能性素子の幅よりも大きく設けられていることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか1項に記載の素子保護機能を有するコンタクトレンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクトレンズに関し、特に素子保護機能を有するコンタクトレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のコンタクトレンズは、視力矯正、眼科疾患治療及び化粧等の機能を提供するほかに、さらに電気素子と組み合わせて多機能性のコンタクトレンズ製品を形成することができる。具体的には、設計された屈折特性を有するレンズを用いることで、装着者の視力(例えば近視、遠視、乱視等)を効果的に矯正することができ、医薬品をレンズに付け加えることで、眼科疾患を治療することができる。美観という要求を達成するために、色材模様をコンタクトレンズのレンズに設けることにより、瞳孔の色を変えたり、又は瞳孔に文字やパターンを表示したりすることができる。また現在でも、コンタクトレンズのレンズを電気素子、例えば電極、センサ又は発光素子等と互いに組合せ、装着者に異なる視覚効果を提供するように進展している。換言すれば、コンタクトレンズ本体に色材又は電気素子等の機能性素子を添加することにより、コンタクトレンズに各種の機能性を付与することができる。
【0003】
しかし、従来技術では、機能性を有するコンタクトレンズ製品にとって、相変わらず機能性素子のキャリアとして、補助する支持体又はインサータを用いる必要があり、これらのキャリアの構造及び材料については、まだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術問題は、従来技術の不足に対して、所定の組成を有する保護層を備えることで、機能性素子の支持及び保護を提供し、製造過程の効率アップにも寄与する素子保護機能を有するコンタクトレンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術問題を解決するために、本発明で用いられる技術方案は、透光性本体と、機能性素子と、保護層とを備える素子保護機能を有するコンタクトレンズを提供する。前記機能性素子は前記透光性本体に設けられる。前記保護層は前記透光性本体に設けられるとともに前記機能性素子を覆う。前記機能性素子は、前記透光性本体と前記保護層によって被覆され外部と隔離され、前記保護層は、膜形成性高分子と、親水性高分子と、溶剤とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズは、「前記機能性素子は、前記透光性本体と前記保護層によって被覆され外部と隔離される」及び「前記保護層は、膜形成性高分子と、親水性高分子と、溶剤とを備える」という技術方案を介して、機能性素子の支持及び保護という効果を果たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は本発明の実施例が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズの断面模式図である。
【
図3】
図3は本発明の実施例が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズの製造方法の第1工程の模式図である。
【
図4】
図4は本発明の実施例が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズの製造方法の第2工程の模式図である。
【
図5】
図5は本発明の実施例が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズの製造方法の第3工程の模式図である。
【
図6】
図6は本発明の実施例が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズの製造方法の第4工程の模式図である。
【
図7】
図7は本発明の実施例が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズの製造方法の第5工程の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下本発明に関する詳しい説明と添付図面を参照するが、提供される添付図面は、参考と説明を提供するためのものに過ぎず、本発明を制限するためのものではない。
【0009】
以下に所定の具体的実施例により、本発明に開示される「素子保護機能を有するコンタクトレンズ」に関する実施の態様を説明するが、当業者は、本明細書に開示される内容から本発明のメリットと効果が分かる。本発明は他の異なる具体的実施例により実施または応用されてもよく、本明細書中のそれぞれの詳細は、異なる観点と応用に基づき、本発明の趣旨を逸脱することなく各種の変形と変更を行ってもよい。また、本発明の添付図面は簡単な模式的説明に過ぎず、実際の寸法に従い示されるものではないことをまず明らかにしておく。以下の実施の態様は、本発明の関連技術内容をより詳しく説明するが、開示される内容は本発明の保護範囲を制限するためのものではない。
【0010】
図1及び
図2を参照する。
図1は本発明の実施例が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズの断面模式図であり、
図2は
図1におけるII部分の拡大模式図である。
【0011】
図1に示すように、本発明が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズLは、透光性本体1と、機能性素子2と、保護層3とを少なくとも備える。機能性素子2及び保護層3は全て透光性本体1に設けられる。なお、本発明において、「…(の上)に設けられる」とは、物品の真上に設けられることに制限されず、物品の内部に設けられることを指してもよい。換言すれば、機能性素子2及び保護層3は、全て透光性本体1の内部に設けられてもよい。
【0012】
具体的には、透光性本体1はコンタクトレンズLの主体を構成し、普通のヒドロゲル材料(メタクリル酸ヒドロキシエチルを主とするヒドロゲル材料)又はシリコーンヒドロゲル材料で形成されてもよい。シリコーンヒドロゲル材料は、シリコーンハイドロゲルとも言える。透光性本体1は半浸透性の性質を有してもよく、ヒドロゲル材料又はシリコーンヒドロゲル材料以外の他の添加剤を含んでもよい。透光性本体1の材料は、本発明では制限されない。
【0013】
これに加えて、透光性本体1は、外面11と、外面11に対向する内面12とを有する。例えば、透光性本体1の内面12は、コンタクトレンズLがユーザによって装着される場合、ユーザの眼球の表面に接触し、透光性本体1の外面は、ユーザの眼球の外側の表面に向かう。
【0014】
本発明が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズLにおいて、透光性本体1の外面11に凹んだ窪み空間を有し、保護層3と機能性素子2が全て窪み空間に収容される。
【0015】
次に、機能性素子2が透光性本体1内に設けられる。機能性素子2は、パターン層又は電気素子の少なくとも一種を備える。例えば、機能性素子2は装着者の虹彩の色を変えるためのパターン層であってもよい。パターン層は、透光性本体1の内部における装着者の瞳孔及び虹彩を覆う部分に対応する部分に設けられてもよい。換言すれば、機能性素子2はパターン層である場合、取り囲んでコンタクトレンズ内に設けられてもよい。このようにして、パターン層は装着者の瞳孔及び虹彩を覆うことで、完全又は部分的に装着者の瞳孔及び虹彩の自然な色を遮蔽することができる。これにより、コンタクトレンズLに化粧効果を付与する。
【0016】
本発明の別の実施例において、機能性素子2は電気素子である。電気素子は、電極、信号送受信器、発光素子又はセンサ等であってもよい。本発明において、電気素子の種類は制限されるものではない。例えば、電気素子は、発信器及び受信器を備える距離センサであり、装着者の目から観察される物品までの距離を測定するためのものである。
【0017】
本発明が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズLは保護層3をさらに備える。保護層3は2μmと30μmの間にある厚さを有してもよい。上述したように、機能性素子2のように、保護層3も透光性本体1の内部に設けられる。本発明において、保護層3は機能性素子2を覆うことができる。具体的には、機能性素子2はパターン層であり、パターン層は取り囲んでコンタクトレンズLの透光性本体1内に設けられ、機能性素子2を覆う保護層3は同様に取り囲んで透光性本体1内に設けられてもよい。なお、本発明の一つの実施例において、機能性素子2への保護効果を確保する目的で、保護層3の幅は機能性素子2(パターン層)の幅よりも大きく設けられている。
【0018】
本発明の一実施例において、機能性素子2は、保護層3に固定又は接続されることで、保護層3によって支持される。例えば、機能性素子2は、コロイドの形の接着剤及び色材を含み、色材が接着剤に分散され、接着剤の分子と保護層3の分子はファンデルワールス力又は結合を介して、機能性素子2が保護層3に固定される。
【0019】
機能性素子2及び保護層3は、透光性本体1における外面11に近接する位置に設けられる。換言すれば、コンタクトレンズLがユーザによって装着される場合、機能性素子2及び保護層3は透光性本体1における外側に近接する位置に位置する。また、本発明の実施例において、機能性素子2は外面11と保護層3との間に設けられる。このようにして、機能性素子2が色材を含むパターン層である場合、保護層3は、機能性素子2の色材(又はインク)分子がコンタクトレンズLの外側へ拡散して外部環境と接触することを回避できる。
【0020】
換言すれば、機能性素子2がパターン層である場合、保護層3は機能性素子2を支持することができるだけでなく、機能性素子2中の材料分子(例えば色材又はインク)が外へ拡散することによる問題を予防することもできる。例えば、材料分子が外へ拡散すると、元々パターン層に示したパターン又は色は影響され所定の化粧効果を果たすことができない可能性があり、コンタクトレンズLの透光性本体1外に拡散される材料分子は装着者の眼球と接触し眼球の健康に影響する可能性がある。
【0021】
保護層3が機能性素子2を支持するとともに、透光性本体1及び機能性素子2と良い相溶性を有することが可能であるように、保護層3の組成及びそれらの割合は適当に選択されなければならない。これに加えて、コンタクトレンズLの製造過程において、異なるキャリアでコンタクトレンズLの異なる材料を移動させる必要があり、保護層3は同様に製造過程における機械と道具又は金型に合わせて選択する必要がある。これにより、保護層3はコンタクトレンズLの透光性本体1の内部に円滑に形成され得る。
【0022】
具体的には、保護層3は、適切な粘度及び親和力を有しなければならず、保護層3の粘度及び親和力は、含有量の割合が適当である異なる成分を選択することにより制御される。例えば、保護層3が所望の粘度を有する場合、保護層の材料が機械と道具間を相互に移動する場合に滑り落ちることや、円滑に付着できないことを回避できる。
【0023】
本発明の実施例において、保護層3は、膜形成性高分子と、親水性高分子と、溶剤とを備える。膜形成性高分子はポリエーテルポリオール(polyether polyol)、ポリエーテル(polyether)、ポリエステルポリオール(polyester polyols)、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)及びその誘導体、スチレンとアクリル酸の共重合体(styrene-acrylic acid copolymer)、及びそれらの組合せからなる群より選ばれる。
【0024】
例えば、ポリエーテルポリオールは5000と50万の間にある分子量を有してもよく、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、グリセリン、カプロラクトン(caprolactone)又はそれらの任意の組合せであってもよい。ポリエーテルは5000と50万の間にある分子量を有してもよく、エチレンオキシド、プロピレンオキサイド、グリセリン又はそれらの任意の組合せであってもよい。ポリエステルポリオールは、シュウ酸、マロン酸、グリセリン又はそれらの任意の組合せであってもよい。ポリアクリル酸は5000と150万の間にある分子量を有してもよい。ポリアクリル酸誘導体は、ポリアクリル酸塩、例えばアクリル酸のカリウム塩及びナトリウム塩であってもよい。ポリメチルメタクリレートは、5000と50万の間にある分子量を有してもよい。スチレンとアクリル酸の共重合体は、10%~90%のスチレン単量体と90%~10%のアクリル酸で形成されてもよい。
【0025】
保護層3の総重量に対して、以上のような膜形成性高分子の含有量は1%~60%の間にある。具体的には、膜形成性高分子の含有量が1%よりも小さいと、保護層3の粘度特性が悪影響を受けて透光性本体1における所定の位置に固定され得ない。膜形成性高分子の含有量が60%よりも大きいと、保護層3の粘度が高過ぎてコンタクトレンズLの製造過程に不利である。本発明の一実施例において、保護層3の総重量に対して、膜形成性高分子の含有量は15%~50%の間にある。
【0026】
次に、親水性高分子はポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol)、セルロース及びその誘導体(cellulose and its derivatives)、ポリエチレングリコール(polyethylene alcohol)、ポリエチレンピロリドン及びその共重合体(polyvinylpyrrolidone and its copolymer)、及びそれらの組合せからなる群より選ばれる。例えば、ポリビニルアルコールは、重合度が500と10000の間にある重合体であってもよい。セルロースは、5000と50万の間にある分子量を有してもよい。ポリエチレングリコールは、500と50万の間にある分子量を有してもよい。ポリエチレンピロリドンは、5000と150万の間にある分子量を有してもよい。
【0027】
保護層3の総重量に対して、以上のような親水性高分子の含有量は0.1%~45%の間にある。本発明の一実施例において、保護層3の総重量に対して、親水性高分子の含有量は5%~40%の間にある。具体的には、親水性高分子の含有量が1%よりも小さいと、保護層3の粘度特性が悪影響を受けて透光性本体1における所定の位置に固定され得ない。親水性高分子の含有量が45%よりも大きいと、保護層3の粘度が高過ぎてコンタクトレンズLの製造過程に不利である。これに加えて、親水性高分子の含有量はコンタクトレンズLを装着する場合の快適性にも影響する。
【0028】
本発明の実施例のコンタクトレンズLの保護層3において、溶剤は水、アルコール類、アミド類及びそれらの組合せの群より選ばれる。例えば、溶剤は、エタノール、プロパノール、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミド等であってもよい。保護層3の総重量に対して、溶剤の含有量は30%~90%の間にある。
【0029】
保護層3の成分組成及びその関連割合に対して、以下の表1には、異なる含有量を有する異なる膜形成性高分子、親水性高分子及び溶剤で保護層3を形成する実施例を列記している。異なる実施例及び比較例を評価した評価結果も表にまとめられている。評価結果について、◎は成膜/相転移の効果がよいことを、△は成膜/相転移の効果が概ね良いことを、×は成膜/相転移の効果がよくないことを表す。表1から分かるように、本発明が提供する所定の成分組成及びその関連割合を有する保護層3を用いることで、許容できる成膜/相転移効果が得られる。
【0030】
具体的には、比較例1において、溶剤の含有量が30%よりも少なく、比較例2の膜形成性高分子の含有量が60%よりも大きく、比較例3の親水性高分子の含有量が45%よりも大きい。このような比較例1~3は全て良い成膜/相転移効果が得られない。
【0031】
【0032】
次に、
図3乃至
図7を参照する。
図3乃至
図7はそれぞれ本発明の実施例が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズの製造方法の第1工程、第2工程、第3工程、第4工程及び第5工程の模式図である。具体的には、本発明が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズLは、少なくとも下型M1及び上型M2を備える1組の成形金型で製造しなければならない。
【0033】
まず、
図3を参照する。
図3に示すように、第1工程では、下型M1を提供する。下型は金属又は非金属材料から製造されてもよい。例えば、下型M1は鋼板から成型されてもよく、凹んだ表面を有し、凹んだ表面は取り囲んで材料を収容するための溝を形成する。下型M1はコンタクトレンズLを形成するための材料を載置するためのものである。
【0034】
次に、
図4を参照する。第2工程では、下型M1に保護層3及び機能性素子2が設けられる。
図3乃至
図6に示す実施例において、機能性素子2は、色材のパターン層を備える。
図4に示すように、保護層3及びパターン層はパッド印刷の方式により下型M1に設けられてもよい。具体的には、保護層3はまず下型M1の内面に設けられてもよく、機能性素子2は直接に保護層3に設けられる。例えば、パッドにより保護層3の材料を付着させてから、保護層3の材料を下型M1の溝の表面に移動させて保護層を形成することができる。機能性素子2は同じ方法で保護層3に形成されてもよい。
【0035】
次に、
図5を参照する。
図5に示す第3工程では、下型M1の溝に透光性本体1のゲル材料1’を注入し、上型M2を下型M1に圧着することにより、透光性本体1の材料が下型M1と上型M2との間の収容空間に充填される。収容空間の形状はコンタクトレンズLの形状に対応する。例えば、第3工程では、収容空間にシリコーンヒドロゲルを主とするゲル材料1’を注入することで、保護層3と機能性素子2がシリコーンヒドロゲルを主とするゲル材料1’によって被覆される。
【0036】
次に、
図6に示すように、第4工程では、上型M2及び下型M1を光硬化又は加熱硬化する。光硬化又は加熱硬化は、上型M2と下型M1で形成される収容空間に設けられる透光性本体1の材料(シリコーンヒドロゲルを主とする材料)を硬化成形させることが可能である。例えば、紫外光(UV light)により硬化工程を行ってもよい。最後に、
図7に示すように、第5工程では、上型M2及び下型M1を取り除き、素子保護機能を有するコンタクトレンズLを得る。
[実施例の効果]
【0037】
本発明の有益な効果は、本発明が提供する素子保護機能を有するコンタクトレンズLは、「機能性素子2は、透光性本体1と保護層3によって被覆され外部と隔離される」及び「保護層3は、膜形成性高分子と、親水性高分子と、溶剤とを備える」という技術方案を介して、機能性素子2の支持及び保護の効果を果たすことができることである。
【0038】
具体的には、本発明が提供するコンタクトレンズLに備える保護層3は所定の組成を有し、この組成はコンタクトレンズLにおける他の材料(例えば透光性本体1のヒドロゲル材料又はシリコーンヒドロゲル材料)と良い相溶性を有するだけでなく、この組成による特性でコンタクトレンズLを製造する過程において材料の異なる機械と道具間における移動も効率的に行える。これにより、製造効率が大幅に改善される。
【0039】
これに加えて、保護層3の所定の組成は機能性素子2(例えばパターン層又は電気素子)を支持するという効果を達成できるだけでなく、流動性を有する機能性素子2の材料(例えばパターン層中の接着剤及び顔料分子)がコンタクトレンズLを流れ、予め設定されていない位置に拡散することを効果的に回避する。さらに、コンタクトレンズLは予め設定された化粧効果がなくなるか、又は装着者の健康を損なうことを予防することができる。
【0040】
以上に開示されている内容は本発明の好ましい実施可能な実施例に過ぎず、これにより本発明の特許請求の範囲を制限するものではないので、本発明の明細書及び添付図面の内容に基づき為された同等の技術変形は、何れも本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0041】
L コンタクトレンズ
1 透光性本体
1’ ゲル材料
11 外面
12 内面
2 機能性素子
3 保護層
M1 下型
M2 上型