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特許7160867電子機器、情報処理装置、推定方法、および推定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】電子機器、情報処理装置、推定方法、および推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20221018BHJP
   A61B 5/18 20060101ALI20221018BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G08G1/16 F
A61B5/18
A61B3/113
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020123233
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019416
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2022-02-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(72)【発明者】
【氏名】篠▲崎▼ 教志
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/135318(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/195405(WO,A1)
【文献】特開2020-109709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
A61B 5/18
A61B 3/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記画像および前記視線に基づいて前記対象者の覚醒度を推定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
学習用画像と該学習用画像に対する学習用対象者の視線との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記画像に基づいて該画像を構成する各位置における前記視線の確率を示す視線予測マップを推定可能な第1の推定部と、
前記第1の推定部が前記学習用画像に基づいて推定した学習用視線予測マップと、該学習用画像に対する学習用対象者の視線と、該学習用対象者の覚醒度に関する生体情報との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記視線予測マップと前記対象者の視線とに基づいて該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定部と、として機能する
電子機器。
【請求項2】
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記画像および前記視線に基づいて前記対象者の覚醒度を推定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
学習用画像と該学習用画像に対する学習用対象者の視線との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記画像に基づいて該画像を構成する各位置における前記視線の確率を示す視線予測マップを推定可能な第1の推定部が前記学習用画像に基づいて推定した学習用視線予測マップと、該学習用画像に対する学習用対象者の視線と、該学習用対象者の覚醒度に関する生体情報との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記視線予測マップと前記対象者の視線とに基づいて該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定部と、として機能する
電子機器。
【請求項3】
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記画像および前記視線に基づいて前記対象者の覚醒度を推定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記画像を構成する各位置における前記視線の確率を示す視線予測マップと前記対象者の視線とに基づいて該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定部と、として機能する
電子機器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記制御部は、連続的に撮像される複数の前記画像および該複数の画像毎に対する前記視線に基づいて、前記対象者の覚醒度を推定する
電子機器。
【請求項5】
請求項に記載の電子機器において、
前記制御部は、前記連続的に撮像される複数の前記画像および該画像毎に対する前記視線の中で、前記視線の移動速度が閾値を超える視線および画像の組合せを除外して、前記対象者の覚醒度を推定する
電子機器。
【請求項6】
光景に対応する画像、および前記光景に対する対象者の視線を取得する取得部と、
前記画像および前記視線に基づいて前記対象者の覚醒度を推定する制御部と、
前記覚醒度を出力する出力部と、を備え、
前記制御部は、学習用画像と該学習用画像に対する学習用対象者の視線との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記画像に基づいて該画像における前記視線の頻度を示す視線予測マップを生成可能な第1の推定部と、前記第1の推定部が前記学習用画像に基づいて推定した学習用視線予測マップと、該学習用画像に対する学習用対象者の視線と、該学習用対象者の覚醒度に関する生体情報との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記視線予測マップと前記対象者の視線とに基づいて該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定部と、として機能する
情報処理装置。
【請求項7】
撮像部が、撮像により光景に対応する画像を生成する撮像工程と、
視線検知部が、前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知工程と、
制御部が、前記画像および前記視線に基づいて前記対象者の覚醒度を推定する推定工程と、を備え、
前記推定工程は、
学習用画像と該学習用画像に対する学習用対象者の視線との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記画像に基づいて該画像を構成する各位置における前記視線の確率を示す視線予測マップを推定可能な第1の推定工程と、
前記第1の推定工程が前記学習用画像に基づいて推定した学習用視線予測マップと、該学習用画像に対する学習用対象者の視線と、該学習用対象者の覚醒度に関する生体情報との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記視線予測マップと前記対象者の視線とに基づいて該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定工程と、
を含む
推定方法。
【請求項8】
コンピュータを、
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部、及び、
前記画像および前記視線に基づいて前記対象者の覚醒度を推定する制御部と、して機能させ、
前記制御部は、
学習用画像と該学習用画像に対する学習用対象者の視線との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記画像に基づいて該画像を構成する各位置における前記視線の確率を示す視線予測マップを推定可能な第1の推定部と、
前記第1の推定部が前記学習用画像に基づいて推定した学習用視線予測マップと、該学習用画像に対する学習用対象者の視線と、該学習用対象者の覚醒度に関する生体情報との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記視線予測マップと前記対象者の視線とに基づいて該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定部と、として機能する
推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、情報処理装置、推定方法、および推定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動体の安全な運転には、運転者の注意力が求められる。それゆえ、運転者の注意力を観察して、注意力が低下する場合、運転者への警告を発したり、運転の支援を行うことが検討されている。注意力の観察として、自車の周辺の対向車などの対象物に対する視線の重なり度合いの累積値である累積視認度を算出し、基準値と比較することが提案されている(特許文献1参照)。また、監視対象者が視認すべき対象物を視認しているか否かを推定する注意力推定システムが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2008-029802号
【文献】特開2015-207163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、累積視認度を算出するために、毎時における視認度を、テーブルを用いて算出している。しかし、実環境の多様な運転状況に対して適切なテーブルは異なっており、多様な運転状況において、運転者の注意力を正確に観察することは難しかった。特許文献2においては、監視対象者の状態を推定するためにマイクロサッカードを抽出する必要があり、処理が煩雑であった。
【0005】
従って、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされた本開示の目的は、多様な状況に対して対象者の注意力を正確に推定する電子機器、情報処理装置、推定方法、および推定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した諸課題を解決すべく、第1の観点による電子機器は、
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記画像および前記視線に基づいて前記対象者の覚醒度を推定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
学習用画像と該学習用画像に対する学習用対象者の視線との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記画像に基づいて該画像を構成する各位置における前記視線の確率を示す視線予測マップを推定可能な第1の推定部と、
前記第1の推定部が前記学習用画像に基づいて推定した学習用視線予測マップと、該学習用画像に対する学習用対象者の視線と、該学習用対象者の覚醒度に関する生体情報との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記視線予測マップと前記対象者の視線とに基づいて該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定部と、として機能する。
第1の観点とは別の観点による電子機器は、
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記画像および前記視線に基づいて前記対象者の覚醒度を推定する制御部と、を備え、
前記制御部は、
学習用画像と該学習用画像に対する学習用対象者の視線との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記画像に基づいて該画像を構成する各位置における前記視線の確率を示す視線予測マップを推定可能な第1の推定部が前記学習用画像に基づいて推定した学習用視線予測マップと、該学習用画像に対する学習用対象者の視線と、該学習用対象者の覚醒度に関する生体情報との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記視線予測マップと前記対象者の視線とに基づいて該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定部と、として機能する。
第1の観点とは更に別の観点による電子機器は、
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部と、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部と、
前記画像および前記視線に基づいて前記対象者の覚醒度を推定する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記画像を構成する各位置における前記視線の確率を示す視線予測マップと前記対象者の視線とに基づいて該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定部と、として機能する
【0007】
第2の観点による情報処理装置は、
光景に対応する画像、および前記光景に対する対象者の視線を取得する取得部と、
前記画像および前記視線に基づいて前記対象者の覚醒度を推定する制御部と、
前記覚醒度を出力する出力部と、を備え、
前記制御部は、学習用画像と該学習用画像に対する学習用対象者の視線との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記画像に基づいて該画像における前記視線の頻度を示す視線予測マップを生成可能な第1の推定部と、前記第1の推定部が前記学習用画像に基づいて推定した学習用視線予測マップと、該学習用画像に対する学習用対象者の視線と、該学習用対象者の覚醒度に関する生体情報との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記視線予測マップと前記対象者の視線とに基づいて該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定部と、として機能する。
【0008】
第3の観点による推定方法は、
撮像部が、撮像により光景に対応する画像を生成する撮像工程と、
視線検知部が、前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知工程と、
制御部が、前記画像および前記視線に基づいて前記対象者の覚醒度を推定する推定工程と、を備え、
前記推定工程は、
学習用画像と該学習用画像に対する学習用対象者の視線との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記画像に基づいて該画像を構成する各位置における前記視線の確率を示す視線予測マップを推定可能な第1の推定工程と、
前記第1の推定工程が前記学習用画像に基づいて推定した学習用視線予測マップと、該学習用画像に対する学習用対象者の視線と、該学習用対象者の覚醒度に関する生体情報との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記視線予測マップと前記対象者の視線とに基づいて該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定工程と、を含む。
【0009】
第4の観点による推定プログラムは、
コンピュータを、
撮像により光景に対応する画像を生成する撮像部、
前記光景に対する対象者の視線を検知する視線検知部、及び、
前記画像および前記視線に基づいて前記対象者の覚醒度を推定する制御部と、して機能させ、
前記制御部は、
学習用画像と該学習用画像に対する学習用対象者の視線との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記画像に基づいて該画像を構成する各位置における前記視線の確率を示す視線予測マップを推定可能な第1の推定部と、
前記第1の推定部が前記学習用画像に基づいて推定した学習用視線予測マップと、該学習用画像に対する学習用対象者の視線と、該学習用対象者の覚醒度に関する生体情報との関係が機械学習された学習データによって構築され、前記視線予測マップと前記対象者の視線とに基づいて該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定部と、として機能する。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成された本開示に係る電子機器、情報処理装置、推定方法、および推定プログラムによれば、多様な状況に対して対象者の注意力の推定精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る電子機器の概略構成を示すブロック図である。
図2】視線検知部が検知する視線と画像との関係を説明するための図である。
図3】画像に対して第1の推定部が推定する視線予測マップの具体例を示す図である。
図4図1の制御部が実行する推定処理を説明するためのフローチャートである。
図5】本実施形態の変形例である情報処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示を適用した電子機器の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明は、本開示を適用した情報処理装置、推定方法、および推定プログラムの説明を兼ねる。
【0013】
本開示の一実施形態に係る電子機器は、例えば、移動体に設けられる。移動体は、例えば車両、船舶、および航空機等を含んでよい。車両は、例えば自動車、産業車両、鉄道車両、生活車両、および滑走路を走行する固定翼機等を含んでよい。自動車は、例えば乗用車、トラック、バス、二輪車、およびトロリーバス等を含んでよい。産業車両は、例えば農業および建設向けの産業車両等を含んでよい。産業車両は、例えばフォークリフトおよびゴルフカート等を含んでよい。農業向けの産業車両は、例えばトラクター、耕耘機、移植機、バインダー、コンバイン、および芝刈り機等を含んでよい。建設向けの産業車両は、例えばブルドーザー、スクレーバー、ショベルカー、クレーン車、ダンプカー、およびロードローラ等を含んでよい。車両は、人力で走行するものを含んでよい。車両の分類は、上述した例に限られない。例えば、自動車は、道路を走行可能な産業車両を含んでよい。複数の分類に同じ車両が含まれてよい。船舶は、例えばマリンジェット、ボート、およびタンカー等を含んでよい。航空機は、例えば固定翼機および回転翼機等を含んでよい。
【0014】
図1に示すように、本開示の一実施形態に係る電子機器10は、撮像部11、視線検知部12、メモリ13、および制御部14を含んで構成される。
【0015】
撮像部11は、例えば、移動体の前進方向の光景を撮像可能に、移動体に設けられている。撮像部11は、例えば、30fpsの速度で撮像可能なカメラである。撮像部11は、撮像により光景に対応する画像を生成する。
【0016】
視線検知部12は、例えば、移動体の運転席に着座する対象者の視線を検知可能に、移動体に設けられている。視線検知部12は、例えば、接触型のアイトラッカーおよび非接触型のアイトラッカーのいずれかであり、光景に対する対象者の視線を検知する。図2に示すように、視線LSは、例えば、撮像部11が撮像により生成する画像IMと同じ座標系における位置PEに相当する視線の方向として示される。
【0017】
視線検知部12は、時系列の視線を視線データとして検知してもよい。さらに具体的には、視線検知部12は、時間ごとに視線の位置を画像上に検知して、その一連の時系列の視線の位置を視線データとして出力してもよい。視線検知部12は撮像部11より高速、言換えると高頻度で視線検知してよく検知したその一連の時系列の視線の位置を1つの画像の視線の経路として積算して出力してもよい。
【0018】
メモリ13は、例えば、RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)など、任意の記憶デバイスを含む。メモリ13は、制御部14を機能させる多様なプログラム、および制御部14が用いる多様な情報を記憶する。
【0019】
制御部14は、1以上のプロセッサおよびメモリを含む。プロセッサは、特定のプログラムを読み込ませて特定の機能を実行する汎用のプロセッサ、および特定の処理に特化した専用のプロセッサを含んでよい。専用のプロセッサは、特定用途向けIC(ASIC;Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。プロセッサは、プログラマブルロジックデバイス(PLD;Programmable Logic Device)を含んでよい。PLDは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)を含んでよい。制御部14は、1つまたは複数のプロセッサが協働するSoC(System-on-a-Chip)、およびSiP(System In a Package)のいずれかであってもよい。制御部14は、電子機器10の各構成要素の動作を制御する。
【0020】
制御部14は、通常時に、例えば、30fpsなどの速度で連続的な撮像を撮像部11に実行させ、連続的に画像IMを情報として取得する。制御部14は、撮像部11における撮像の実行時の対象者の視線LSを視線検知部12に検知させ、画像IMの撮像時点と実質的に同じ時期における視線LSを情報として取得する。画像IMの撮像時点と実質的に同じ時期とは、単一の検出時点を含んでよく、画像IMの直近の撮像のひとつ前の撮像時点から直近の撮像時点までの間の複数の検出時点を含んでよい。画像IMの撮像時点と実質的に同じ時期は、視線の単一の検出時点を含む場合、厳密な同時点ではなく、画像撮像と同じ周期の視線検知において、撮像時に最も近い時点における検知時点を含んでよい。制御部14は、画像IMと、当該画像IMの撮像時点と実質的に同じ時期に検知される視線LSとを関連付けてメモリ13に格納する。
【0021】
制御部14は、取得する画像IMに画像処理を施してよい。後述する、推定部の学習を、セマンティックセグメンテーション画像などのように、通常の撮像画像IMに対して所定の画像処理を施した画像で行う構成において、制御部14は取得する画像IMに当該所定の画像処理を施して、視線LSと関連付けてメモリ13に格納する。セマンティックセグメンテーション画像は、画像内の全画素に、ラベルまたはカテゴリを関連付けた画像である。
【0022】
制御部14は、撮像時点と検知時期が実質的に同じである画像IMおよび視線LSに基づいて、対象者の覚醒度を推定する。さらに具体的には、制御部14は、第1の推定部15および第2の推定部16として機能することにより、対象者の覚醒度を推定する。
【0023】
第1の推定部15は、画像IMに基づいて、対象者の視線予測マップを推定する。図3に示すように、視線予測マップMPとは、一般的な対象者が特定の光景に対してそれぞれの位置を注視する、すなわち視線LSと重なる確率を、当該光景に対応する画像IMを構成する各位置において示す二次元マップである。
【0024】
第2の推定部16は、視線予測マップMPおよび対象者の視線LSに基づいて、対象者の覚醒度に関する生体情報を推定する。覚醒度に関する生体情報は、覚醒度そのもの、覚醒度を算出または推定させる生体情報である。覚醒度を算出または推定させる情報は、例えば、心拍、脳波、瞬き回数、PERCLOS(Percent of Eyelid Closure)などの少なくとも1つを含む。したがって、制御部14において、画像IMおよび視線LSに基づいて、第2の推定部16が覚醒度を推定してもよいし、第2の推定部16が覚醒度を算出または推定させる生体情報を推定し、推定された当該生体情報に基づいて覚醒度が算出または推定されてもよい。
【0025】
第1の推定部15および第2の推定部16は、例えば、多層構造のニューラルネットワークにより構成されている。第1の推定部15および第2の推定部16は、後述するように、機械学習を実施することにより構築される。
【0026】
例えば、第1の推定部15は、撮像時点と検知時点とが実質的に同一の画像IMおよび視線LSに基づいて対象者の視線予測マップMPを推定する。第2の推定部16は、単一の視線予測マップMPと当該視線予測マップMPの推定に用いた画像IMの撮像時点と実質的に同じ検出時点である視線LSとに基づいて、覚醒度を推定する。
【0027】
または、例えば、第1の推定部15は、単一の学習用画像に対する視線の経路の関係が学習により構築されている構成において、単一の画像IM、および当該単一の画像IMと実質的に同一の検出時期における視線LSの経路に基づいて、対象者の視線予測マップMPを推定する。第2の推定部16は、単一の視線予測マップMPと当該視線予測マップMPの推定に用いた画像IMの撮像時点と実質的に同一の検出時期における視線LSの経路とに基づいて、覚醒度を推定する。
【0028】
ただし、第1の推定部15は、後述するように、単一の学習用画像内での視線LSの移動速度が閾値未満である部分を含む経路を用いた学習により構築されている構成において、視線LSの経路の中で、視線LSの移動速度が閾値以上である部分を除外して、視線予測マップMPを推定してよい。言換えると、第1の推定部15は、サッカード中の情報を除外してもよい。除外する理由は、サッカードは次の注視点に移っている途中の動作であって、サッカード中の視線の位置は注視点としての意味を持たないためである。第1の推定部15は、サッカード中か否かを視線の位置の移動速度などで判定してもよい。
【0029】
または、例えば、第1の推定部15は、後述するように、連続的に撮像された複数の学習用画像を用いた学習により構築されている構成において、連続的に撮像される複数の画像IM、および当該複数の画像IM毎に対する視線LS、言い換えると、複数の画像IM毎に関連付けられている視線LSに基づいて、単一の視線予測マップMPを推定する。制御部14は、例えば、最新の画像IMから所定の時間間隔で遡った範囲内のフレームの画像IMに基づいて、単一の視線予測マップMPを推定してよい。第2の推定部16は、単一の視線予測マップMPと当該視線予測MPの推定に用いた画像IMの撮像時点と実質的に同一の検出時点である視線LSとに基づいて、対象者の覚醒度を推定する。
【0030】
制御部14は、後述するように、連続的に撮像された複数の学習用画像に対して視線の移動速度が閾値未満である学習用画像を用いた学習により第1の推定部15が構築されている構成において、連続的に撮像される複数の画像IMおよび当該複数の画像IMに対する視線LSの中で、視線LSの移動速度が閾値以上である場合、当該視線LSおよび当該視線LSに関連付けられている画像IMの組合せを除外して、最終的に対象者の覚醒度を推定してよい。例えば、制御部14は、複数の画像IM毎に関連付けられている視線LSに基づいて単一の視線予測マップMPを推定する構成においては、上述の組合せを除外して単一の視線予測マップMPを推定し、当該視線予測マップMPと視線LSとに基づいて覚醒度を算出してよい。
【0031】
より具体的には、制御部14は、任意の検知時における視線LSの、直前の検知時における視線LSからの移動量が閾値を超える場合、当該任意の検知時における視線LS、および当該視線LSの検知時に関連付けられている画像IMの組合せを、除外してよい。言換えると、制御部14は、サッカード中の情報を除外してもよい。除外する理由は、サッカードは次の注視点に移っている途中の動作であって、サッカード中の視線の位置は注視点としての意味を持たないためである。制御部14は、サッカード中か否かを視線の位置の移動速度などで判定してもよい。
【0032】
制御部14は、推定した覚醒度を外部機器17に出力する。外部機器17は、覚醒度に基づいて所定の動作を行う装置である。外部機器17は、例えば、覚醒度に基づいて対象者に警告を発する警告装置、覚醒度に基づいて移動体の運転補助を行う運転補助装置、および覚醒度に基づいて移動体の運転を行う運転装置などである。
【0033】
第1の推定部15は、学習用画像、および学習用画像に相当する光景に対する学習用対象者の実際の視線の複数の組を用いて、学習用画像および実際の視線の関係を機械学習させた学習データにより構築されている。第1の推定部15は、学習用画像および実際の視線の関係に基づいて、任意の画像IMを構成する、画素毎、または複数の画素により構成される領域毎に視線LSに重なる確率を推定する。第1の推定部15は、任意の画像IMを構成する位置毎の当該確率を二次元状に示す視線推定マップを生成する。
【0034】
第1の推定部15は、単一の学習用画像、および当該単一の学習用画像に相当する光景に対する学習用対象者の実際の視線の経路を用いて、学習用画像、および実際の視線の経路の関係を機械学習させた学習データにより構築されていてよい。第1の推定部15は、さらには、単一の学習用画像、および当該単一の学習用画像内での視線の移動速度が閾値未満である部分の機械学習により構築されていてよい。
【0035】
第1の推定部15は、さらには、連続的に撮像された複数の学習用画像、および複数の学習用画像毎に相当する光景に対する学習用対象者の実際の視線の機械学習により構築されていてよい。第1の推定部15は、さらには、連続的に撮像された複数の学習用画像に対する視線の移動速度が閾値未満である学習用画像、および視線により構築されていてよい。
【0036】
第2の推定部16は、第1の推定部15に学習用画像に基づいて推定させた学習用視線予測マップ、当該学習用画像に相当する光景に対する学習用対象者の実際の視線、および当該学習用対象者の覚醒度に関する生体情報の複数の組を用いて、学習用視線予測マップ、実際の視線、および覚醒度に関する生体情報の関係を機械学習させた学習データにより構築されている。
【0037】
第2の推定部16は、第1の推定部15に学習用画像に基づいて推定させた単一の視線予測マップMP、当該学習用画像に相当する光景に対する学習用対象者の実際の視線の経路、および覚醒度に関する生体情報の関係を機械学習させた学習データにより構築されていてよい。
【0038】
次に、本実施形態において制御部14が実行する、推定処理について、図4のフローチャートを用いて説明する。推定処理は、1フレームの画像IMおよび視線LSを制御部14が取得するたびに開始する。
【0039】
ステップS100において、制御部14は、取得した視線LSの移動速度を、直前に取得した視線LSの位置PEとの比較により算出する。算出後、プロセスはステップS101に進む。
【0040】
ステップS101では、制御部14は、ステップS101において算出した移動速度が閾値以上であるか否かを判別する。閾値以上である場合、プロセスはステップS102に進む。閾値以上でない場合、プロセスはステップS103に進む。
【0041】
ステップS102では、制御部14は、推定処理の開始時に取得した画像IMおよび視線LSを廃棄する。廃棄後、プロセスはステップS104に進む。
【0042】
ステップS103では、制御部14は、推定処理の開始時に取得した画像IMおよび視線LSを互いに関連付けてメモリ13に格納する。格納後、プロセスはステップS104に進む。
【0043】
ステップS104では、制御部14は、所定の時間間隔で遡った範囲内に格納された画像IMおよび視線LSの組合せ中の画像IMをメモリ13から読出す。読出し後、プロセスはステップS105に進む。
【0044】
ステップS105では、制御部14は、ステップS104において読出した組合せに含まれる複数の画像IM基づいて、第1の推定部15として機能することにより視線予測マップMPを推定する。推定後、プロセスはステップS106に進む。
【0045】
ステップS106では、制御部14は、第2の推定部16として機能することにより、ステップS105において推定した複数の視線予測マップMPと、ステップS104において読出した組合せに含まれる視線LSとに基づいて、覚醒度を推定する。推定後、プロセスはステップS107に進む。
【0046】
ステップS107では、制御部14は、ステップS106において推定した覚醒度を外部機器17に出力する。出力後、推定処理は終了する。
【0047】
以上のような構成の本実施形態の電子機器10では、制御部14は、画像IMに基づいて当該画像IMを構成する各位置における視線LSの確率を示す視線予測マップMPを推定可能な第1の推定部15と、視線予測マップMPおよび対象者の視線LSに基づいて当該対象者の覚醒度に関する生体情報を推定可能な第2の推定部16と、として機能することにより、画像IMおよび視線LSに基づいて、対象者の覚醒度を推定する。例えば、高速道路、市街地、郊外、住宅地などの多様な光景に対して、注視する対象および方向などは変わることが一般的である。それゆえ、単に視線LSの動きのみの検知では、覚醒度の推定精度を向上させることが難しい。一方で、前述のような構成により、電子機器10は、覚醒度の違いによる多様な光景における人が注視する対象物の傾向を学習済みなので、その時々の光景に対応する画像IMおよび視線LSに基づいて、精度の高い覚醒度を推定し得る。人間の注意力は覚醒度に影響を受けるので、電子機器10は、多様な状況における対象者の注意力の推定精度を向上させ得る。
【0048】
また、本実施形態の電子機器10は、連続的に撮像される複数の画像IMおよび当該複数の画像IM毎に対する視線LSに基づいて、対象者の覚醒度を推定する。このような構成により、電子機器10は、覚醒度の違いによる多様な光景における視線LSの変動を学習済みなので、その時々の光景に対応する画像IMおよび視線LSに基づいて、さらに精度の高い覚醒度を推定し得る。
【0049】
また、本実施形態の電子機器10は、連続的に撮像される複数の画像IMおよび当該複数の画像IM毎に対する視線LSの中で、視線LSの移動速度が閾値を超える視線LSおよび画像IMの組合せを除外して、対象者の覚醒度を推定する。光景の中で対象者が注視している物体が、覚醒度に大きな影響を与える因子であると考えられる。それゆえ、サッカード中のように、任意の物体から他の物体に視線LSが高速で変わる間の、視線LSは覚醒度に与える影響は低いと考えられる。それゆえ、上述の構成の電子機器10は、覚醒度に対する影響が低いと思われる画像IMおよび視線LSの組合せを除外しているので、よりいっそう精度の高い覚醒度を推定し得る。
【0050】
本開示の内容は、当業者であれば本開示に基づき種々の変形および修正を行うことができる。したがって、これらの変形および修正は本開示の範囲に含まれる。例えば、各実施形態において、各機能部、各手段、各ステップなどは論理的に矛盾しないように他の実施形態に追加し、若しくは、他の実施形態の各機能部、各手段、各ステップなどと置き換えることが可能である。また、各実施形態において、複数の各機能部、各手段、各ステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。また、上述した本開示の各実施形態は、それぞれ説明した各実施形態に忠実に実施することに限定されるものではなく、適宜、各特徴を組み合わせたり、一部を省略したりして実施することもできる。
【0051】
例えば、本実施形態において、電子機器10が撮像部11および視線検知部12を備え、覚醒度の推定に用いる画像IMおよび視線LSを制御部14が取得する構成であるが、このような構成に限定されない。図5に示すように、例えば、撮像部11および視線検知部12が移動体18に設けられており、移動体18との通信により画像IMおよび視線LSを取得部19を介して取得するクラウドサーバなどの情報処理装置20が、本実施形態の制御部14と同じ構成の制御部14において画像IMおよび視線LSに基づいて覚醒度を推定して、当該移動体18における外部機器17に出力部21を介して覚醒度を出力する構成であってもよい。また、移動体18の制御部14が第1の推定部および第2の推定部のいずれか一方として機能し、外部機器17の制御部が他方として機能してもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 電子機器
11 撮像部
12 視線検知部
13 メモリ
14 制御部
15 第1の推定部
16 第2の推定部
17 外部機器
18 移動体
19 取得部
20 情報処理装置
21 出力部
IM 画像
LS 視線
MP 視線予測マップ
PE 視線の方向に相当する位置
図1
図2
図3
図4
図5