(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】感光性ビスマレイミド組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20221018BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20221018BHJP
G03F 7/00 20060101ALI20221018BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20221018BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G03F7/027
G03F7/004 502
G03F7/00 503
G03F7/038 501
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2020204616
(22)【出願日】2020-12-09
【審査請求日】2020-12-09
(32)【優先日】2019-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コーリン・ヘイズ
(72)【発明者】
【氏名】コーリン・カラブレス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ケイ.・ガラゲール
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・ワイ.・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ケイ.・バー
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-036504(JP,A)
【文献】特開2011-027770(JP,A)
【文献】特開2005-196030(JP,A)
【文献】特開2019-085562(JP,A)
【文献】特開2009-192851(JP,A)
【文献】特開2001-033960(JP,A)
【文献】特表2002-502056(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光開始剤とビスマレイミド成分と
アリールシクロブテンモノマーとを含有する感光性組成物であって、前記光開始剤が、前記ビスマレイミド成分の重量を基準として0.5~25重量パーセント存在するオキシムエステル化合物であ
り、
前記ビスマレイミド成分が、ビスマレイミド化合物又はビスマレイミドオリゴマーを含み、
前記ビスマレイミド化合物が一般式(I)により表され、
【化1】
(式中、Rは、アルキレン、アルキレンアリール、シクロアルキレン、シクロアルキレンアリール、シクロアルキルアルキレン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される置換又は無置換の連結基であり;R
1
は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、メチル、ビニル、アリル、イソプレン及びそれらの組み合わせからなる群から選択される)
前記ビスマレイミドオリゴマーが一般式(II)により表され、
【化2】
(式中、R
2
はH又はCH
3
であり;R
3
はC
1
~C
40
アルキル、アルキルポリジメチルシロキサン、又はアルキルアリールであり;R
4
は、
【化3】
、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され;nは1~10の整数である)、並びに、
前記アリールシクロブテンモノマーが、一般式(IV)、(V)、又は(VI)により表される、感光性組成物
【化4】
(式中、
K
1
は、アルキル、アリール、炭素環アリール、多環式アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アリールアルキル、カルボニル、エステル、カルボキシル、エーテル、チオエステル、チオエーテル、及び三級アミンからなる群から選択される二価の基であり;
L
1
は、共有結合、又は多価の連結基であり;
Mは、置換若しくは無置換の二価芳香族若しくは多環芳香族ラジカル基、又は置換若しくは無置換の二価ヘテロ芳香族ラジカル基であり;
R
2
~R
5
は、同じであるか異なり、それぞれ独立に、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換アルキルオキシ、置換又は無置換アリール、置換又は無置換アリールオキシ、置換アルキルアミノ、及び置換アリールアミノからなる群から選択され;
R
6
~R
8
は、同じであるか異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、シアノ、ハロ、メチル、ビニル、アリル及びイソプレンからなる群から選択され;
K
2
は重合性官能基であり;並びに、
x及びyは、同じであるか異なり、1~5の整数であり、L
1
が共有結合の場合にはy=1である)。
【請求項2】
前記光開始剤が、
【化5】
;及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
1に記載の感光性組成物
(式中、R
1は、CO
2Ph、CO
2Me、又はCO
2Etであり;R
2は、ケトン、アリール、アリールエーテル、スルフィドアリールエーテル、又はアルキルであり;R
3は、H、OH、COOH、メチルであり;R
4とR
5のそれぞれは、独立に、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、又はフェニル基であり;R
6とR
7のそれぞれは、独立に、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、又はフェニル基であり;R
8は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり;R
9は、H、メチル、又はアセチルであり;R
10はNO
2又はArCOであり;R
11は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり;R
12とR
13のそれぞれは、独立に、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、又はフェニル基である)。
【請求項3】
熱硬化性ポリマーを更に含有する、請求項
1に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記熱硬化性ポリマーが一般式(III)により表される、請求項
3に記載の感光性組成物
【化6】
(式中、Ar
1は、N、S、O、又はP原子を含むヘテロ環であり;R
2は、H、CH
3、エチル、又はt-ブチルであり;R
3は、H
又はC
1~C
12アルキ
ルであり;R
4は、シクロブテン
、1-オキシ-シクロブテン、α-メチルシクロブテンであり;lは0~10の整数であり;R
6は1~12個の炭素原子のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基であり;nは5~70の整数であり;mは5~50の整数であり;oは5~50の整数であり;pは5~50の整数であり;l+n+m+o+p=100である)。
【請求項5】
前記アリールシクロブテンモノマーが、1-(4-ビニルフェノキシ)-ベンゾシクロブテン、1-(4-ビニルメトキシ)-ベンゾシクロブテン、1-(4-ビニルフェニル)-ベンゾシクロブテン、1-(4-ビニルヒドロキシナフチル)-ベンゾシクロブテン、4-ビニル-1-メチル-ベンゾシクロブテン、4-ビニル-1-メトキシ-ベンゾシクロブテン、及び4-ビニル-1-フェノキシ-ベンゾシクロブテンからなる群から選択される、請求項
1に記載の感光性組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のジエノフィルモノマーを更に含有する、請求項
1に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記ジエノフィルモノマーが一般式(VII)により表される、請求項
6に記載の感光性組成物
【化7】
(式中、Bは、水素、置換若しくは無置換アルキル、置換若しくは無置換芳香族部位、置換若しくは無置換ヘテロ芳香族部位、ヒドロキシ、又は置換若しくは無置換アルキルオキシであり;R
9~R
11は、同じであるか異なり、それぞれ独立に、水素
、ビニル、アリル、イソプレン
、1~100個の炭素原子を有する置換又は無置換アルキル基、ハロゲン、シアノ、6~100個の炭素原子を有する置換又は無置換のアリール基、6~100個の炭素原子を有する置換又は無置換のヘテロアリール基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される)。
【請求項8】
少なくとも1種のジエンモノマーを更に含有する、請求項
1に記載の感光性組成物。
【請求項9】
前記ジエンモノマーが一般式(VIII)により表される、請求項
8に記載の感光性組成物
【化8】
(式中、R
9は、各存在において同じであるか異なり、水素及びメチルから選択され;R
10は、各存在において同じであるか異なり、水素、C
1~5アルキル、C
1~5アルコキシ、C
1~5チオアルキル、及びC
5~12アルケニルから選択される)。
【請求項10】
少なくとも1種の窒素ヘテロ環含有モノマーを更に含有する、請求項
8に記載の感光性組成物。
【請求項11】
抑制剤を更に含有する、請求項
1に記載の感光性組成物。
【請求項12】
前記抑制剤が、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5-トリメチル-1,4-ヒドロキノン、4-メトキシフェノール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、ジベンゾ-1,4-チアジン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート、トリエチレングリコールビス[ β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオネート]、及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-オクタデシルフェノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項
11に記載の感光性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光開始剤とビスマレイミド成分とを含有する感光性組成物、感光性組成物を含むフォトポリマー、及び特に電子デバイスにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロエレクトロニクス産業の急速な発展により、各次世代のマイクロエレクトロニクスデバイスをパッケージングするための改善された電気特性を有する、リソグラフィーに使用される誘電性ポリマー材料に対する大きな需要が生み出された。コンピューターやその他の電子デバイスは、非常に速い速度でより高い周波数に移行している。現在、多くのシステムは1~10GHzの範囲で作動するが、新しいアプリケーションは20GHz、30GHz、又は最大100GHzの周波数で作動する。
【0003】
プラスチックは一般的に絶縁体とみなされるが、これらは高い周波数で若干の電気エネルギーを伝達することができる。絶縁体としての材料の有効性は、通常、誘電定数(Dk)や損失係数(Df)などの量で測定される。Dkは、電気素子を互いに及び接地面から隔離するために絶縁体が電気エネルギーをどれだけよく貯蔵するかを示す。損失係数(Df又はtanδ)は、プラスチックや他の電気絶縁材料の電気的特性である。これは、特定の周波数での絶縁材料の容量リアクタンスとその抵抗(等価直列抵抗又はESR)との比率の逆数として定義される。
【0004】
材料が導電性であるほど、そのDkは大きくなる。優れた誘電体は、低い損失係数(Df)を有する傾向もある。つまり、これらは保持している電荷を簡単に消散させることができず、電界が高周波で急激に反転するため、熱としてエネルギーをほとんど失わない。損失係数が低いことは、高品質で高性能の電気又は電子システムであることを示す。これは、高周波用途のプラスチック絶縁体にとって重要である。したがって、高周波のマイクロエレクトロニクスにおいて使用される、低い損失係数を有する低誘電率リソグラフィー材料を提供することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2017/0003588A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第20190169327A1号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
多くの態様及び実施形態が上に記載されてきたが、例示的であるに過ぎず、限定的ではない。本明細書を読んだ後、当業者は、他の態様及び実施形態が本発明の範囲から逸脱することなく可能であることを理解する。
【0007】
本明細書の全体にわたって用いるところでは、以下の略語は、文脈が特に明確に指示しない限り、以下の意味を有するものとする:℃=摂氏度;g=グラム;nm=ナノメートル、μm=ミクロン=マイクロメートル;mm=ミリメートル;sec.=秒;及びmin.=分。特に明記しない限り、全ての量は、重量パーセント(「重量%」)であり、全ての比は、モル比である。全ての数値範囲は、そのような数値範囲が合計100%になるように制約されることが明らかである場合を除いて、包含的であり、且つ、任意の順で組み合わせ可能である。特に明記しない限り、全てのポリマー及びオリゴマーの分子量は、g/mol又はダルトン単位の重量平均分子量(「Mw」)であり、ポリスチレン標準と比較してゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される。
【0008】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、そうでないと文脈から明確に示されていない限り、単数形及び複数形を意味する。本明細書で用いるところでは、用語「及び/又は」は、関連項目の1つ以上のいずれかの及び全ての組み合わせを包含する。用語「硬化性」は、使用条件下で硬くなり、溶媒に溶けにくくなる材料を指す。
【0009】
用語「膜」及び「層」は、本明細書の全体にわたって同じ意味で使用される。用語「モノマー」は、重合又は共重合することにより高分子(ポリマー)の本質的な構造に構成単位を与えることができる分子を指す。用語「オリゴマー」は、有限且つ中程度の数の繰り返しモノマー構造単位を有するポリマーを指す。本開示のオリゴマーは、典型的には、2~約100個の繰り返しモノマー単位、又は2~約30個の繰り返しモノマー単位、又は2~約10個の繰り返しモノマー単位を有する。用語「ポリマー」は、繰り返しモノマー単位から構成される分子を指す。本明細書で使用される「ポリマー」という用語は、1種のモノマー単位から構成されるホモポリマー、及び/又は重合単位としての2種以上の異なるモノマーから構成されるコポリマーを指す。本開示のポリマーは、有機及び/又は無機添加剤を含んでいてもよい。
【0010】
用語「アルコキシ」はRがアルキル基である基RO-を指す。用語「アルキル」は、脂肪族炭化水素に由来する基を指し、直鎖、分岐、又は環状の基を含む。化合物「に由来する」基は、1つ以上の水素又は重水素の除去によって形成されるラジカルを示す。いくつかの実施形態では、アルキルは1~20個の炭素原子を有する。
【0011】
用語「芳香族化合物」は、4n+2の非局在化π電子を有する少なくとも1つの不飽和環状基を含む有機化合物を指す。用語「アリール」は、1つ以上の結合点を有する芳香族化合物に由来する基を指す。この用語は、単環を有する基、及び単結合によって接合されるか又は一緒に縮合され得る複数環を有する基を包含する。炭素環アリール基は、環構造中に炭素のみ有する。ヘテロアリール基は、環構造中に少なくとも1個のヘテロ原子を有する。用語「アルキルアリール」は、1つ以上のアルキル置換基を有するアリール基を指す。用語「アリールオキシ」は、Rがアリール基である基RO-を指す。
【0012】
置換基を指すときの用語「隣接した」は、単結合又は多重結合によって一緒に接合している炭素に結合している基を指す。典型的な隣接したR基は、以下に示される:
【化1】
【0013】
用語「液体組成物」は、材料が溶解して溶液を形成している液体媒体、材料が分散されて分散液を形成している液体媒体、又は材料が懸濁されて懸濁液若しくはエマルションを形成している液体媒体を指す。用語「溶媒」は、室温(20~25℃)で液体である有機化合物を指す。この用語は、単一の有機化合物又は2種以上の有機化合物の混合物を包含することが意図されている。
【0014】
特に定義しない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載するものと同様の又は均等な方法及び材料を本発明の実施形態の実施又は試験において使用することができるが、適切な方法及び材料について以下に記載する。更に、材料、方法及び実施例は、例示のためのものに過ぎず、限定することを意図されていない。
【0015】
本明細書では、特に明示的に述べられるか、又は使用に関連して反対のことが示されない限り、本明細書の主題の実施形態が特定の特徴又は要素を含むか、包含するか、含有するか、有するか、それらからなるか、又はそれらによって若しくはそれらから構成されると述べられるか又は記載される場合、明示的に述べられた又は記載されたものに加えて1つ以上の特徴又は要素が実施形態で存在し得る。本明細書の開示された主題の代わりの実施形態は、特定の特徴又は要素から本質的になると記載されるが、その実施形態では、操作の原理又は実施形態の際立った特性を実質的に変更する特徴又は要素は、その中に存在しない。本明細書の記載された主題の更なる代わりの実施形態は、特定の特徴又は要素からなると記載されるが、その実施形態又はその実態のない変形形態では、具体的に述べられた又は記載された特徴又は要素のみが存在する。
【0016】
本明細書に記載されていない範囲まで、特定の材料、処理動作及び回路に関する多くの詳細は、従来のものであり、フォトレジスト、有機発光ダイオードディスプレイ、光検出器、光起電力セル及び半導体部材技術のテキスト及び他の情報源に見出すことができる。
【0017】
光開始剤とビスマレイミド(BMI)成分とを含有する感光性組成物が提供され、光開始剤は、ビスマレイミド成分の重量を基準として0.5~25重量パーセント存在するオキシムエステル化合物である。
【0018】
一態様では、ビスマレイミド成分はビスマレイミド化合物である。ビスマレイミド化合物は、以下に示される一般式(I)で表すことができる:
【化2】
(式中、Rは、アルキレン、アルキレンアリール、シクロアルキレン、シクロアルキレンアリール、シクロアルキルアルキレン、ジアルキルシロキサン、ジアリールシロキサン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される置換又は無置換の連結基であり;R
1は、水素、重水素、ハロゲン、シアノ、メチル、ビニル、アリル、イソプレン、1~100個の炭素原子を有する置換又は無置換イソプレン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される)。一実施形態では、Rは、1~100個の炭素原子、又は2~50個の炭素原子、又は5~20個の炭素原子を有するアルキレン基であってもよい。
【0019】
別の態様では、ビスマレイミド化合物は、ビスマレイミドオリゴマーであってもよい。ビスマレイミドオリゴマーは、以下に示される一般式(II)で表すことができる:
【化3】
(式中、R
2はH又はCH
3であり;R
3はC
1~C
40アルキル、アルキルポリジメチルシロキサン、又はアルキルアリールであり;R
4は、
【化4】
、及びこれらの組み合わせからなる群から選択され;
nは1~10の整数である)。
【0020】
ビスマレイミド成分の例としては、限定するものではないが、1,1’-((4-ヘキシル-3-オクチルシクロヘキサン-1,2-ジイル)ビス(オクタン-8,1-ジイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(BMI-689、Designer Molecules Inc.から市販)、1,6’-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン(TMH-BMI、大和化成工業株式会社から市販)、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン(APB-BMI、Hampford Research,Inc.から市販)、1,1’-[2,2’-ビス(トリフルオロメチル)[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル]ビス[1H-ピロール-2,5-ジオン](MA-TFMB)、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(BMP3 CF3)、及び1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン(1,3 Bis 4-PhoBMI)、1-(3-(5-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)フェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン、1,1’-(スルホニルビス(4,1-フェニレン)))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)、1,1’-(スルホニルビス(3,1-フェニレン))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)、1,1’-((1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン-1,3-ジイル)ビス(プロパン-3,1-ジイル))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)、1,1’-(メチレンビス(2-エチル-6-メチル-4,1-フェニレン))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(BMI5100、大和化成工業株式会社から市販)、1,1’-(1,3-フェニレン)ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)(BMI3000H、大和化成工業株式会社から市販)、1,1’-(デカン-1,10-ジイル)ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)、1,1’-(1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル)ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)、1,1’-((パーフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(4,1-フェニレン))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)、1,1’-((9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(4,1-フェニレン))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)、及び1,1’-(メチレンビス(4,1-フェニレン))ビス(1H-ピロール-2,5-ジオン)などのC36アルキレンジアミンイミドを挙げることができる。追加の市販のビスマレイミド成分としては、限定するものではないが、BMI1400、BMI1500、BMI1700、BMI4000、及びBMI5000を挙げることができ、これらはDesigner Molecules Inc.から市販されている。
【0021】
オキシムエステル化合物は、ビスマレイミド成分の重量を基準として、0.5~25重量パーセント、又は1~25重量パーセント、又は2~10重量パーセント、又は5~15重量パーセントで存在することができる。オキシムエステル化合物の例としては、限定するものではないが、以下に示す化合物及びそれらの組み合わせを挙げることができる:
【化5】
(式中、R
1は、CO
2Ph、CO
2Me、又はCO
2Etであり;R
2は、ケトン、アリール、アリールエーテル、スルフィドアリールエーテル、又はアルキルであり;R
3は、H、OH、COOH、又はメチルであり;R
4とR
5のそれぞれは、独立に、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、又はフェニル基であり;R
6とR
7のそれぞれは、独立に、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、又はフェニル基であり;R
8は1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり;R
9は、H、メチル、又はアセチルであり;R
10はNO
2又はArCOであり;R
11は1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり;R
12とR
13のそれぞれは、独立に、1~10個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、又はフェニル基である)。Arはフェニル基やトリル基などのアリール基である。
【0022】
オキシムエステル化合物の市販製品の例としては、限定するものではないが、BASFから市販されているIRGACURE OXE 01(1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)])及びIRGACURE OXE 02(エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム));ADEKA CORPORATIONから市販されているADEKA ARKLSNCI-930及びADEKA Optomer N-1919;並びにダイトーケミックス株式会社から市販されているDFI-091を挙げることができる。オキシムエステル化合物の詳細な記述は、(特許文献1)の中で見ることができ、その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
一実施形態では、オキシムエステル化合物は、
【化6】
であってもよい。
【0024】
一態様では、感光性組成物は、熱硬化性ポリマーを更に含有していてもよい。熱硬化性ポリマーは、その後、照射下で架橋することができる。一実施形態では、熱硬化性ポリマーは、以下で示される一般式(III)で表すことができる:
【化7】
(式中、Ar
1は、N、S、O、又はP原子を含むヘテロ環であり;R
2は、H、CH
3、エチル、又はt-ブチルであり;R
3は、H、CH
3、C
1~C
12アルキル、又はC
1~C
12アルキルであり;R
4は、シクロブテン、1-シクロブテン、1-オキシ-シクロブテン、又はα-メチルシクロブテンであり;lは0~10の整数であり;R
6は1~12個の炭素原子のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基であり;nは5~70の整数であり;mは5~50の整数であり;oは5~50の整数であり;pは5~50の整数であり;l+n+m+o+p=100である)。
【0025】
別の態様では、感光性組成物は、少なくとも1種の重合性モノマーを更に含有していてもよい。重合性モノマーは、アリールシクロブテンモノマーであってもよい。一実施形態では、アリールシクロブテンモノマーは、以下に示す式(IV)、(V)、又は(VI):
【化8】
を有し、これらの式において、
K
1は、アルキル、アリール、炭素環アリール、多環式アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アリールアルキル、カルボニル、エステル、カルボキシル、エーテル、チオエステル、チオエーテル、及び三級アミンからなる群から選択される二価の基であり;
L
1は、共有結合、又は多価の連結基であり;
Mは、置換若しくは無置換の二価芳香族若しくは多環芳香族ラジカル基、又は置換若しくは無置換の二価ヘテロ芳香族ラジカル基であり;
R
2~R
5は、同じであるか異なり、それぞれ独立に、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換アルキルオキシ、置換又は無置換アリール、置換又は無置換アリールオキシ
、置換アルキルアミノ、及び置換アリールアミノからなる群から選択され;
R
6~R
8は、同じであるか異なり、それぞれ独立に、水素、重水素、シアノ、ハロ、メチル、ビニル、アリル、イソプレン、及び1~100個の炭素原子を有する置換又は無置換のイソプレンからなる群から選択され;
K
2は重合性官能基であり;
x及びyは、同じであるか異なり、1~5の整数であり、L
1が共有結合の場合にはy=1である。
【0026】
アリールシクロブテンモノマーの例としては、限定するものではないが、1-(4-ビニルフェノキシ)-ベンゾシクロブテン、1-(4-ビニルメトキシ)-ベンゾシクロブテン、1-(4-ビニルフェニル)-ベンゾシクロブテン、1-(4-ビニルヒドロキシナフチル)-ベンゾシクロブテン、4-ビニル-1-メチル-ベンゾシクロブテン、4-ビニル-1-メトキシ-ベンゾシクロブテン、及び4-ビニル-1-フェノキシ-ベンゾシクロブテンを挙げることができる。
【0027】
上述した感光性組成物中の重合性モノマーは、一般式(VII)に示されるような少なくとも1種のジエノフィルモノマーを更に含むことができる:
【化9】
(式中、Bは、水素、置換若しくは無置換アルキル、置換若しくは無置換芳香族部位、置換若しくは無置換ヘテロ芳香族部位、ヒドロキシ、又は置換若しくは無置換アルキルオキシであり;R
9~R
11は、同じであるか異なり、それぞれ独立に、水素、メチル、ビニル、アリル、イソプレン、1~100個の炭素原子を有する置換又は無置換イソプレン、1~100個の炭素原子を有する置換又は無置換アルキル基、ハロゲン、シアノ、6~100個の炭素原子を有する置換又は無置換のアリール基、6~100個の炭素原子を有する置換又は無置換のヘテロアリール基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される)。
【0028】
一実施形態では、ジエノフィルモノマーは、式(VIII)を有する芳香族ビニルモノマーであってもよい:
【化10】
(式中、
R
12~R
14は、各存在において同じであるか異なり、水素及びC
1~5アルキルからなる群から選択され;
R
15は、各存在において同じであるか異なり、水素及びC
1~5アルキルからなる群から選択され、隣接するR
15基は連結して縮合6員芳香環を形成していてもよい)。
【0029】
芳香族ビニルモノマーの例としては、限定するものではないが、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、1-ビニルナフタレン、及び2-ビニルナフタレンを挙げることができる。
【0030】
上述した感光性組成物中の重合性モノマーは、少なくとも1種のジエンモノマーを更に含むことができる。ジエンモノマーは、以下に示す一般式(IX)を有し得る:
【化11】
(式中、R
9は、各存在において同じであるか異なり、水素及びメチルから選択され;R
10は、各存在において同じであるか異なり、水素、C
1~5アルキル、C
1~5アルコキシ、C
1~5チオアルキル、及びC
5~12アルケニルから選択される)。
【0031】
ジエンモノマーの例としては、限定するものではないが、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、シクロペンタジエン、β-ミルセン、オシメン、シクロオクタジエン、ファルネセン、及び重合性テルペンを挙げることができる。
【0032】
上述した感光性組成物中の重合性モノマーは、少なくとも1種のヘテロ環含有モノマーを更に含むことができる。ヘテロ環含有モノマーは、ビニル置換C3~12ヘテロ環、又はビニル置換C3~5ヘテロ環であってもよい。一実施形態では、ヘテロ環は、1つ以上のC1~6アルキル、C6~12炭素環アリール、又はC3~12ヘテロアリールで更に置換されていてもよい。
【0033】
ヘテロ環含有モノマーは、窒素ヘテロ環、硫黄ヘテロ環、窒素-硫黄ヘテロ環、及びそれらの置換誘導体からなる群から選択される。
【0034】
一実施形態では、ヘテロ環含有モノマーは、窒素ヘテロ環含有モノマーであってもよい。窒素ヘテロ環含有モノマーは、少なくとも1つの環窒素を含むことができる。窒素ヘテロ環含有コモノマーの例としては、限定するものではないが、ピロール、ピリジン、ジアジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、及びキノロンを挙げることができる。
【0035】
窒素ヘテロ環含有モノマーは、以下に示す一般式(X)を有し得る:
【化12】
(式中、Z
1及びZ
2は、同じであるか異なり、N又はCR
15aであり;R
12~R
14及びR
15aは、各存在において同じであるか異なり、水素及びC
1~5アルキルからなる群から選択される)。
【0036】
そのような窒素ヘテロ環含有モノマーの例としては、限定するものではないが、4-ビニルピリジン、4-ビニル-1,3-ジアジン、2-ビニル-1,3,5-トリアジン、及び4-メチル-5-ビニル-1,3-チアゾールを挙げることができる。
【0037】
別の実施形態では、ヘテロ環含有モノマーは、硫黄ヘテロ環含有モノマーであってもよい。硫黄ヘテロ環含有モノマーは、少なくとも1つの環硫黄を含むことができる。硫黄ヘテロ環含有モノマーの例としては、限定するものではないが、チオフェン、ベンゾチオフェン、及びジベンゾチオフェンを挙げることができる。
【0038】
また別の実施形態では、ヘテロ環含有モノマーは、窒素-硫黄ヘテロ環含有モノマーであってもよい。窒素-硫黄ヘテロ環含有モノマーは、少なくとも1つの環窒素及び1つの環硫黄を含むことができる。窒素-硫黄ヘテロ環含有モノマーの例としては、限定するものではないが、チアゾール、チアジアゾール、及びチアジアジンを挙げることができる。
【0039】
上述したように、少なくとも1種の溶媒が感光性組成物中に存在していてもよい。溶媒の例としては、限定するものではないが、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ガンマ-ブチロラクトン、3-メトキシプロピオネート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシブチルアセテート、アニソール、メシチレン、2-ヘプタノン、シレン、2-ブタノン、乳酸エチル、酢酸アミル、酢酸n-ブチル、n-メチル-2-ピロリドン、N-ブチル-2-ピロリドン、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0040】
ポリマーは、感光性組成物中の上述した重合性モノマーを重合することにより形成することができ、形成されたポリマーは、その後照射下で架橋することができる。ポリマーは、ラジカル開始剤又は他の光活性化合物の存在下で形成することができる。一実施形態では、重合プロセスは、50~150℃の温度で5~50時間かけて行うことができる。
【0041】
ラジカル開始剤は、通常アゾ化合物又は有機過酸化物である。一実施形態では、ラジカル開始剤は油溶性アゾ化合物である。そのような開始剤としては、例えば、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を挙げることができる。添加される合計の開始剤は、出発反応混合物の重量を基準として1~5重量%の範囲とすることができる。
【0042】
上述した感光性組成物の中には、1種以上の追加の抑制剤が存在していてもよい。いくつかの実施形態では、抑制剤は、ヒンダードフェノール又はピペリジン-N-オキシドである。抑制剤は、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-tert-ブチル-1,4-ベンゾヒドロキノン、2-t-ブチルヒドロキノン、2,3,5-トリメチル-1,4-ヒドロキノン、4-メトキシフェノール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシ、ジベンゾ-1,4-チアジン、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート、トリエチレングリコールビス[β-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロピオネート]、及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-オクタデシルフェノール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0043】
抑制剤の例としては、限定するものではないが、以下に示す次の化学構造を挙げることができる:
【化13】
【0044】
上述した感光性組成物の中に、1種以上の非イオン性界面活性剤が添加されてもよい。非イオン性界面活性剤の例としては、限定するものではないが、以下のものを挙げることができる:
【化14】
(これらの式において、Rは、CH
2CF
3又はCH
2CF
2CF
3であり、nは3~20の整数であり、xは5~20の整数であり、yは10~30の整数であり、zは5~20の整数である)。そのような界面活性剤は、0~40g/L、又は0~25g/Lの量で存在していてもよい。
【0045】
上述した感光性組成物は、少なくとも1種の接着促進剤を更に含んでいてもよい。接着促進剤は、酸素、硫黄、又は窒素で官能化されたシランカップリング剤であってもよい。
【0046】
一実施形態では、接着促進剤は、メタクリルオキシ-3-プロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトトリアルコキシシラン、4-ビニルフェニルエチルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、4-ビニルフェニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、N-2-[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリアミン、3-ウレイドプロピル-トリアルコキシシラン、ビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]フマレート、N-[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]マレアミド酸、ビス[3-(トリアルコキシシリル)プロピル]マレエート、トリアルコキシシリルプロピルコハク酸無水物からなる群から選択することができる。アルコキシは、メトキシ、エトキシ、又はイソプロポキシであってもよい。接着促進剤は、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール、5-カルボキシベンゾトリアゾール、1,3,5-トリアジン-2,4,6-トリチオール、1,3,4-チアジアゾール-2,5-ジチオール、及びそれらの組み合わせなどの、2つ以上の窒素原子を含む1種以上の芳香族ヘテロ環であってもよい。
【0047】
接着促進剤の例としては、限定するものではないが、以下に示す次の化学構造を挙げることができる:
【化15】
【0048】
加えて、基板表面への本開示のポリマーの接着性を高めるために、プラズマ処理などの当該技術分野で公知の様々な蒸気処理が使用されてもよい。特定の用途では、本発明の組成物で表面をコーティングする前に、接着促進剤を使用して基板表面を処理することが好ましい場合がある。
【0049】
本開示の感光性組成物において有用な可能性がある、適した添加剤としては、限定するものではないが、無機フィラー、有機フィラー、可塑剤、金属不動態化剤、及び前述したものの任意の組み合わせのうちの1つ以上が挙げられる。本発明の組成物において任意の適切な無機フィラーが任意選択的に使用されてもよく、それらは当業者に周知である。例示的な無機フィラーとしては、限定するものではないが、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、ジルコニアなど、及びそれらの混合物が挙げられる。無機フィラーは、粉末、棒状、球形、又はその他の任意の適切な形状の形態であってもよい。そのような無機フィラーは、任意の適切な寸法を有していてもよい。そのような無機フィラーは、シラン又はチタン酸塩などのカップリング剤を従来の量で含んでいてもよい。
【0050】
無機フィラーは、組成物の総重量を基準として、固形分として0~80重量%、又は40~80重量%の量で使用することができる。いくつかの実施形態では、無機フィラーは存在しない。
【0051】
一実施形態では、金属不動態化材料は、銅不動態化剤である。適切な銅不動態化剤は当該技術分野で周知であり、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、エチレンジアミン又はその塩若しくは酸エステル、及びイミノ二酢酸又はそれらの塩が挙げられる。
【0052】
本開示は、感光性誘電体膜にも関する。感光性誘電体膜は、上述した感光性組成物から作製することができる。感光性組成物は、任意の公知の技術及び装置を使用して、基板の表面に塗布又は堆積することができる。組成物は、実質的に連続的な膜として、又は不連続なパターンで塗布されてから、溶媒を除去するために加熱されてもよい。堆積された組成物の厚さは、得られる硬化した生成物に望まれる厚さに応じて様々であってもよい。本開示の組成物は、誘電体層、永久結合接着剤、応力緩衝層などとしての使用に適した層又は膜を形成するために使用することができる。基板上に形成された誘電体膜は、直接使用されてもよく、或いは剥離されてから電子デバイスの様々な基板上で使用されてもよい。
【0053】
当該技術分野で公知の任意の基板を本開示で使用することができる。基板の例としては、限定するものではないが、シリコン、銅、銀、インジウムスズ酸化物、二酸化ケイ素、ガラス、窒化ケイ素、アルミニウム、金、ポリイミド、及びエポキシモールドコンパウンドを挙げることができる。
【0054】
本開示の感光性組成物は、任意の適切な方法によって基板上に堆積又はコーティングすることができる。本組成物を堆積させるための適切な方法としては、数ある方法中でも特に、スピンコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ディップコーティング、蒸着、及び真空ラミネートなどのラミネートが挙げられるが、これらに限定されない。半導体製造業界では、スピンコーティングが既存の機器やプロセスを活用する好ましい方法である。スピンコーティングでは、塗布される表面上で組成物を望まれる厚さにするために、組成物の固形分をスピン速度と共に調整することができる。堆積又はコーティングされた基板は、本開示の感光性誘電体膜を形成するために、適切な照射下で硬化することができる。これに続いて、必要に応じて膜を更に硬化させるための追加の加熱工程が行われてもよい。
【0055】
照射は、通常150nm~600nm、又は190nm~600nm(UVから可視光の範囲)に及び得る。適切な放射は、例えば、太陽光又は人工光源からの光に存在する。光源は、特に限定されず、目的に応じて適切に選択することができる。点光源とアレイ(「ランプカーペット」)は共に適している。その例としては、カーボンアークランプ、キセノンアークランプ、金属ハロゲン化物がドープされている場合がある低圧、中圧、高圧、及び超高圧の水銀ランプ(金属-ハロゲンランプ)、マイクロ波励起金属蒸気ランプ、エキシマーランプ、超化学線蛍光管、蛍光灯、アルゴン白熱灯、電子閃光、写真用投光ランプ、発光ダイオード(LED)、電子ビーム、及びX線が挙げられる。ランプと露光される本開示の感光性組成物を含むベース材料との間の距離は、意図される用途やランプのタイプ及び出力に応じて様々であってもよく、例えば20μm~150cmであってもよい。レーザー光源、例えば、157mm露光のFエキシマーレーザー、248nmでの露光用のKrFエキシマーレーザー、及び193nmでの露光用のArFエキシマーレーザーなどのエキシマーレーザーも適している。可視領域のレーザーも使用することができる。任意選択的には、レンズなどの解像度を向上させるその他の特徴が使用されてもよい。レンズが使用される場合、0.05~0.6又は0.1~0.3の開口数を使用することができる。
【0056】
本実施形態の感光性誘電体膜において、感光性樹脂層の248nm~436nmの波長帯域における最小光透過率は、両方の層の合計膜厚が1~80μmに設定される場合、80%以上、又は85%以上であってもよい。
【0057】
一実施形態では、本明細書に記載の感光性組成物は、望まれる基板上にスピンキャストすることができる。組成物は、電子用途に望ましい乾燥膜を形成するために、スロットダイコーターや他の適切な装置によりキャストすることができる。キャスト膜は、70~150℃又は90~120℃の温度で30秒から10分間、残留溶媒を除去するためにソフトベークすることができる。
【0058】
その後、ソフトベークされた膜は、上述した通りに照射下の硬化条件にさらされる。膜は、必要に応じて150~250℃で30分~4時間更に硬化させることができる。得られた硬化膜は、優れた引張強さ、引張伸び、銅やシリコンウエハーなど望まれる基板への優れた接着性、及び高周波での低い誘電損失を有する。本明細書に開示の感光性組成物は、いかなる種類の無機フィラーの助けもなしにこれらの優れた特性を達成することができる。
【0059】
別の実施形態では、本開示の感光性組成物の層は、乾燥膜として形成されてからラミネートによって基板の表面上に配置されてもよい。真空ラミネート技術などの様々な適切なラミネート技術を使用することができ、これらは当業者に周知である。乾燥膜の形成においては、本発明の組成物は、最初に、スロットダイコーティング、グラビア印刷、又は別の適切な方法を使用して、ポリエステルシート、好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)シートなどの適切な膜支持シート、又はKAPTON(商標)ポリイミド(DuPont,Wilmington,DE)などのポリイミドシートの前面に、コーティングなどで配置される。その後、組成物は、溶媒を除去するために、90~140℃などの適切な温度で、1~30分などの適切な時間ソフトベークされる。その後、保管及び取り扱い中に組成物を保護するために、乾燥した組成物上にポリエチレンなどのポリマー膜カバーシートが室温(20~25℃)でロールラミネートされる。乾燥した組成物を基板上に配置するために、最初にカバーシートが取り除かれる。次いで、支持シート上の乾燥した組成物が、ロールラミネート又は真空ラミネートを使用して基板表面にラミネートされる。ラミネート温度は20~120℃の範囲であってもよい。その後、支持シートが除去(剥離)され、表面上に乾燥した組成物が残される。
【0060】
本明細書に記載の感光性組成物は、高周波(20~40GHz)で、2.5未満又は2.4未満のDk値と、0.006未満、又は0.005未満、又は0.004未満、又は0.0035未満のDf値とを有する誘電体膜を形成するために使用することができる。一実施形態では、誘電体膜は、20GHzの周波数でDk≦2.5又は≦2.4であり、Df≦0.004又は≦0.035である。別の実施形態では、誘電体膜は、30GHzの周波数でDk≦2.35且つDf≦0.004である。また別の実施形態では、誘電体膜は、40GHzの周波数でDk≦2.35且つDf≦0.006である。
【0061】
本開示は、電気基板上に本出願の誘電体膜の少なくとも1つの層を含む、様々な電子デバイスにも関する。本開示では、多岐にわたる電子デバイス基板を使用することができる。電子デバイス基板は、任意の電子デバイスの製造において使用するための任意の基板である。例示的な電子デバイス基板としては、限定するものではないが、半導体ウエハー、ガラス、サファイア、ケイ酸塩系材料、窒化ケイ素系材料、炭化ケイ素系材料、ディスプレイデバイス基板、エポキシモールドコンパウンドウエハー、回路基板、及び熱的に安定なポリマーが挙げられる。本明細書で使用される用語「半導体ウエハー」は、シングルチップウエハー、マルチプルチップウエハー、様々なレベルのためのパッケージ、発光ダイオード(LED)用基板、又ははんだ接続を必要とする他の組立体などの、半導体基板、半導体デバイス、及び様々なレベルの相互接続のための様々なパッケージを包含することが意図されている。シリコンウエハー、ガリウムヒ素ウエハー、及びシリコンゲルマニウムウエハーなどの半導体ウエハーは、パターン化されていても、パターン化されていなくてもよい。本明細書で使用される用語「半導体基板」には、半導体デバイスの有効部分又は動作可能部分を含む1つ以上の半導体層又は構造を有する任意の基板が含まれる。用語「半導体基板」は、半導体デバイスなどの半導体材料を含む任意の構造を意味すると定義される。「半導体デバイス」は、少なくとも1つのマイクロ電子デバイスがその上に製造されているか又は製造されることになる半導体基板を意味する。熱的に安定なポリマーとしては、限定するものではないが、例えばKAPTON(商標)ポリイミド(DuPont,Wilmington,DE)のようなポリイミド、例えばVECSTAR(商標)LCP膜(株式会社クラレ、東京、日本)のような液晶ポリマー、及びビスマレイミド-トリアジン(BT)樹脂(MGC、東京、日本)などの、アリールシクロブテン系材料を硬化するために使用される温度に安定な任意のポリマーが挙げられる。
【0062】
本開示は、親水性支持体と感光性組成物を含む画像形成層とを含むPSリソグラフィー印刷版、及びPSリソグラフィー印刷版を製造するためのリソグラフィープロセスにも関する。リソグラフィープロセスは、(a)親水性支持体と、感光性組成物を含む画像形成層とを含むPSリソグラフィー印刷版を、像様に加熱する工程;(b)版を紫外(UV)光に当てる工程;及び(c)非画像形成領域を溶液で溶解させて除去する工程;を含む。感光性組成物は、前述したものと同じである。
【0063】
親水性支持体は、金属、プラスチック、又は紙から製造されたものであってもよい。支持体は、表面処理されたアルミニウム板、親水性処理されたプラスチックフィルム、又は防水紙であってもよい。具体的には、支持体は、陽極酸化されたアルミニウム板、親水性層を備えたポリエチレンテレフタレートフィルム、又はポリエチレンフィルムでラミネートされた紙であってもよい。
【0064】
一実施形態では、陽極酸化されたアルミニウム板を使用することができる。アルミニウム板は、純粋なアルミニウム板であってもよく、或いは主成分のアルミニウムと少量の他の金属とを含む合金板であってもよい。アルミニウム以外の金属の例としては、Si、Fe、Mn、Co、Mg、Cr、Zn、Bi、Ni、及びTiが挙げられる。他の金属の量は10重量%以下であってもよい。アルミニウム板は、0.05~0.6mm、又は0.1~0.4mm、又は0.15~0.3mmの範囲の厚さを有する。
【0065】
アルミニウム板の表面は、粗面化処理を受けていてもよい。粗面化処理は、機械的、電気化学的、又は化学的に行うことができる。機械的粗面化処理の例としては、ボール研削処理、ブラシ研削処理、ブラスト研削処理、及びバフ研削処理が挙げられる。電気化学的粗面化処理は、塩酸又は硝酸などの酸を含む電解液中で、直流又は交流を板に印加するプロセスによって行うことができる。電解粗面化処理は、2種以上の酸の混合物の中で行うことができる。化学的粗面化処理は、鉱酸を含むアルミニウム塩の飽和水溶液の中にアルミニウム板を浸漬するプロセスによって行うことができる。粗面化処理後、0.2~1.0μmの範囲のRa(中心線に沿った平均)の表面粗さを有し得る。
【0066】
粗面化処理後、アルミニウム板に対してアルカリエッチング処理が行われてもよい。アルカリエッチング液は、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウムの水溶液であってもよい。アルカリエッチング処理後、中和処理が行われてもよい。
【0067】
その後、支持体の耐摩耗性を改善するためにアルミニウム板に対して陽極酸化処理が行われてもよい。陽極酸化処理では、多孔質酸化皮膜を形成するために様々な電解質を使用することができる。電解質の例としては、硫酸、塩酸、シュウ酸、クロム酸、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0068】
陽極酸化処理は、通常、電解液の濃度が1~80重量%の範囲であり、溶液の温度が5~70℃の範囲であり、電流密度が5~60A/dm2の範囲であり、電圧が1~100Vの範囲であり、電気分解時間が10秒~5分の範囲であるような条件下で行われる。陽極酸化により形成された酸化皮膜は、1.0~5.0g/m2、又は1.5~4.0g/m2の範囲の厚さを有する。
【0069】
更に、親油性物質に起因する汚れから画像形成層の表面を保護するために、画像形成層上に水溶性オーバーコート層が設けられてもよい。水溶性オーバーコート層は、例えば水溶性有機ポリマーなどの、印刷中に容易に除去できる物質から作られる。水溶性有機ポリマーの例としては、限定するものではないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸、それらのアルカリ金属及びアミンとの塩、ポリメタクリル酸、それらのアルカリ金属及びアミンとの塩、ポリアクリルアミド、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ポリ-2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、それらのアルカリ金属及びアミンとの塩、アラビアガム、セルロースエーテル(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース)、デキストリン及びその誘導体(例えば白色デキストリン、酵素で分解されたデキストリン、エーテル化デキストリン、プルラン)を挙げることができる。
【0070】
水溶性有機ポリマーは、コポリマーであってもよい。コポリマーの例としては、限定するものではないが、ビニルアルコール-酢酸ビニルコポリマー(部分的に鹸化されたポリ酢酸ビニル)及びビニルメチルエーテル-無水マレイン酸コポリマーを挙げることができる。ビニルアルコール-酢酸ビニルコポリマーがポリ酢酸ビニルを部分的に鹸化することにより調製される場合、鹸化度は65%以上であってもよい。2種以上の水溶性有機ポリマーが組み合わせて使用されてもよい。水溶性オーバーコート層の量は、0.1~2.0g/m2の範囲であってもよい。
【0071】
PSリソグラフィー印刷版は、像様に加熱されて画像を形成することができる。一実施形態では、PS版は、熱記録ヘッドで像様に加熱することができる。サーマルヘッドを使用した画像形成は、光を熱に変換可能な薬剤を必要としない。熱記録ヘッドは通常低解像度の画像を与えるため、光を熱に変換できる薬剤を使用することができる。像様露光は、一般的により高い解像度の画像を与える。
【0072】
PS版は、元の画像(アナログデータ)を通して像様露光することができる。PS版は、元の画像データ(通常はデジタルデータ)に対応する光で走査することもできる。アナログ露光では、光源はキセノン放電ランプ又は赤外線ランプであってもよい。キセノンランプなどの高出力ランプを光源として使用する短時間のフラッシュ露光が行われてもよい。
【0073】
後者の走査露光では、レーザー、特に赤外線レーザーを通常使用することができる。赤外線レーザーは、700~1,200nmの波長領域の光線を放出することができる。レーザーは、高出力固体赤外線レーザー(例えば半導体レーザー、YAGレーザー)であってもよい。
【0074】
光を熱に変換できる薬剤を含む画像形成層に走査レーザービームを当てると、ビームの光エネルギーが熱エネルギーに変換される。PS版の加熱領域(画像形成領域)にある本開示の感光性組成物は、重合及び/又は架橋されて加熱領域を硬化させる。化合物又はポリマーが粒子中に含まれている場合、加熱された領域の粒子は溶融及び融合して、親水性支持体上に疎水性領域を形成する。他方で、非加熱領域(非画像形成領域)の化合物又はポリマーは、版の中で変化しない。上述したリソグラフィープロセスの工程(b)と(c)との間に加熱工程が付加されてもよい。
【0075】
粒子が画像形成層中で使用されない場合(画像形成層が均質である場合)、アルカリ現像液で版を洗浄することにより非加熱領域(非画像形成領域)を除去するために、画像形成層のポリマーに酸性基が導入されてもよい。
【0076】
粒子が画像形成層に含まれる場合、非加熱領域(非画像形成領域)の粒子は、水又は水溶液で除去することができる。粒子を除去する工程(現像工程)は、プレス現像に置き換えることができる。プレス現像では、像様に加熱された版をプリンターに取り付け、通常の印刷処理が行われる。版は湿し水とインクとを用いた印刷処理で現像することができ、続いて版と湿し水とインクとを用いて印刷プロセスが行われる。画像形成層の非加熱領域(非画像形成領域)は、プリンターの作動時に、湿し水、インク、又は印刷処理の摩擦力によって除去される。
【0077】
一実施形態では、リソグラフィープロセスは、(a)親水性支持体と、本開示の感光性組成物を含む画像形成層とを含むPSリソグラフィー版を、プリンターのシリンダー上に設置する工程;(b)版をレーザー(プリンターに取り付けられた光源から放出される)露光し、版を湿し水及びインクを用いてプレス現像する工程;を含み得る。連続して印刷するために、レーザー露光装置を備えたプリンターを使用して露光工程が行われてもよい。
【0078】
現像後、未反応の化合物又はポリマー(画像形成領域に残っているもの)の反応を生じさせるために印刷版を加熱することで、印刷版の耐久性(版の摩耗)を更に改善することができる。
【実施例】
【0079】
本明細書に記載する概念は、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲を限定するものではない以下の実施例において更に例示される。
【0080】
材料:
ベータ-ミルセンはVigon International Inc.から購入した。スチレンはSigma-Aldrich Corporationから購入した。ビニルトルエンはDeltech Corporationから受け取った。Vazo 65 Azo Initiator(V-65)及びV-601は、FUJIFILM Wako Chemicals U.S.A. Corporationから購入した。4-ビニルピリジンはVertellusから入手し、受け取ったままの状態で使用した。Polyfox PF656はOmnova Solutionsから受け取った。7-オクテニルトリメトキシシラン(KBM-1083)と二官能性アミノシロキサン(PAM-E)は信越化学工業から入手した。ビスマレイミドBMI-689及びBMI-1400はDesigner Moleculesから入手した。4-Hydroxy TEMPO、Irgacure OXE01(OXE01)、及びIrgacure OXE02(OXE02)は、BASFから入手し、受け取ったままの状態で使用した。Omnirad819はIGM Resinから受け取った。ビスマレイミドBMI-4000、BMI-TMH、及びBMI-5100は、大和化成工業株式会社から受け取った。3a,4,7,7a-テトラヒドロ-4,7-エポキシイソベンゾフラン-1,3-ジオンはOakwood Chemicalから入手した。1-(4-ビニルフェノキシ)ベンゾシクロブテン(BCB)は、(特許文献2)(その内容全体は参照により本明細書に組み込まれる)に従って調製した。他の全ての溶媒及び化学物質は、the Dow Chemical Companyから受け取り、更に精製することなく受け取ったままの状態で使用した。
【0081】
化合物の合成
実施例1-S1
窒素ブランケット下、撹拌子との還流冷却器とを備えた250mlの丸底フラスコに、10gのPAM-Eを入れ、114gのテトラヒドロフランに溶解させた。溶解が完了した際に、3a,4,7,7a-テトラヒドロ-4,7-エポキシイソベンゾフラン-1,3-ジオン(12.78g)を固体として添加し、溶液を10時間還流させた。続いて、溶液を約25℃まで冷却し、テトラヒドロフランをロータリーエバポレーターにより除去した。114gのトルエンを添加した。溶液をもう一度6時間還流させ、次いでトルエンを蒸留により除去した。目的生成物を94%含む、14.77gの淡黄色のわずかに粘稠な液体を得た。
【0082】
実施例2-S2
以下のモノマー及び溶媒を、オーバーヘッド撹拌しながら5Lのジャケット付き反応器に入れ、窒素ブランケット下で80℃まで加熱した:1044.59gの1-(4-ビニルフェノキシ)ベンゾシクロブテン、778.34gのビニルトルエン、80.18gの4-ビニルピリジン、447.67gのベータ-ミルセン、及び997.04gのシクロヘキサノン。71.67gのV-65及び888.21gのシクロヘキサノンの開始剤供給流を一定の速度で反応器に20時間添加し、温度を80℃で更に2時間保持した後、25℃に下げた。この溶液は、以下の重合性配合物を調製するために直接使用した。
【0083】
実施例3-S3
代わりに100mlのEasyMax(商標)反応器の中で以下の量の材料を使用して、実施例2と同一の手順を使用した:11.77gの1-(4-ビニルフェノキシ)ベンゾシクロブテン、8.83gのビニルトルエン、0.6gのビニルピリジン、6.33gのベータ-ミルセン、及び11.79gアニソール。0.41gのV-601の光開始剤供給流を反応器に添加して15時間反応させた後、10.71gアニソール中のV-65の供給流0.41gを一定速度で更に15時間反応器に供給した。温度を80℃で更に2時間保持した後、25℃に下げた。以下の重合性配合物を調製するために溶液を直接使用した。
【0084】
重合性配合物
実施例4
20mlのガラスバイアルに、実施例3から調製したS3を添加して、固形分含有率を75.1重量%にした;BMI-689は、固形分の20重量%にするように添加し;OXE01は、固形分の2.5重量%を占めるように添加し;2部の7-オクテニルトリメトキシシラン(KBM-1083)、0.2部の4-ヒドロキシTEMPO、及び0.2部のPolyfox PF-656のブレンドは、固形分の2.4重量%を占めるように添加した。その後、溶液全体の固形分が51%、総質量が15グラムになるようにシクロペンタノンを添加した。バイアルを密封し、一晩転動させて均質化した。その後、バイアルの中身を5ミクロンのナイロン(商標)フィルターを通して濾過した。コーティングの前に、溶液を周囲条件で3時間脱気させた。
【0085】
実施例5
S3を実施例2で調製したS2に置き換えたことを除いては実施例4と同じ方法で配合物を調製した。
【0086】
実施例6
S3を実施例2で調製したS2に置き換えこれを70.1%の固形分を構成するために使用し、25%の固形分を構成するためにBMI-689を使用したことを除いては実施例4と同じ方法で配合物を調製した。
【0087】
実施例7
S3を実施例2で調製したS2に置き換えこれを80.1%の固形分を構成するために使用し、15%の固形分を構成するためにBMI-689を使用したことを除いては実施例4と同じ方法で配合物を調製した。
【0088】
実施例8
S3を実施例2で調製したS2に置き換え、OXE01をOXE02に置き換えたことを除いては実施例4と同じ方法で配合物を調製した。
【0089】
実施例9
S3を実施例2で調製したS2に置き換え、BMI-689をBMI-1400に置き換えたことを除いては実施例4と同じ方法で配合物を調製した。
【0090】
実施例10
S3を実施例2で調製したS2に置き換え、BMI-698をBMI-TMHに置き換えたことを除いては実施例4と同じ方法で配合物を調製した。
【0091】
実施例11
S3を実施例2で調製したS2に置き換え、BMI-689を実施例1で調製したS1に置き換えたことを除いては実施例4と同じ方法で配合物を調製した。
【0092】
実施例12
92.6重量%の固形分を構成するためにBMI-689を使用し、S3を除去したことを除いては実施例4と同じ方法で配合物を調製した。
【0093】
比較例1
S3を実施例2で調製したS2に置き換え、OXE01をOmnirad 819に置き換えたことを除いては実施例4と同じ方法で配合物を調製した。
【0094】
比較例2
77.6%の固形分を構成するためにS3を使用し、OXE01を除去したことを除いて、配合物を実施例4と同じ方法で調製した。
【0095】
比較例3
S3を実施例2で調製したS2に置き換え、BMI-689をBMI-5100に置き換えたことを除いては実施例4と同じ方法で配合物を調製した。
【0096】
比較例4
S3を実施例2で調製したS2に置き換え、BMI-689をBMI-4000に置き換えたことを除いては実施例4と同じ方法で配合物を調製した。
【0097】
ポリマー膜の作製
ポリマー配合物を、リソグラフィー評価用のシリコン基板又は銅ウエハー基板上にスピンコーティングにより堆積し、直径200mmの分析用自立膜を得てからこれを120℃で3分間ソフトベークした。
【0098】
膜からの照射距離及び供給される全体のエネルギーを決定するために、Karl Suess Mask Alignerを使用した。20μmの露光及びアライメントギャップを使用した。マスクアライナーは、出力が30Wであると測定された広帯域UV光源を使用した。600mj/cm2の光エネルギーを膜に供給するために、20秒の時間を使用した。膜は、光の速度を決定するために可変の光強度を通過させることができる多重透過マスクを通して露光した。
【0099】
膜を65℃で90秒間露光後ベークした。プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)中で膜を2×30秒間パドル現像し、次いで回転乾燥し、PGMEAですすぎ洗いし、120℃で1分間の現像後ベークを使用した。
【0100】
自立膜サンプルについては、ポリマー膜を、酸素が100ppm未満の窒素下、200℃で1時間、Blue Mオーブン内でその後硬化させた。得られた基板を適切なサイズに切断し、膜を水浴中の5%硫酸アンモニウムの中で持ち上げ、すすぎ洗いし、乾燥することで、分析用の自立膜を得た。膜厚は、光学式Filmetrics F50及び対応するソフトウェアツールを使用して測定した。
【0101】
ポリマー膜の特性評価
試験方法
(1)誘電特性:
それぞれ20、30、及び40GHzの空洞周波数を有するように機械加工された銅スプリット円筒共振器とKeysight N5224APNAネットワークアナライザーとを使用し、IPC試験方法TM-650 2.5.5.1を使用して、自立膜の誘電特性を決定した。
【0102】
膜形状は、基板が2つの円筒空洞断面の直径を超えて延びていた。誘電体基板の厚さは0.05mm~5.0mmまで変更し得るが、0.02mmの基板厚さを使用した。
【0103】
自立膜をスプリット円筒共振器の空洞に配置し、TE011共振モードの共振周波数及び品質係数をネットワークアナライザーを使用して測定した。膜の比誘電率(Dk)と損失正接(Df)は、Keysightから提供されたソフトウェアを使用してTE011共振モードから計算した。
【0104】
(2)リソグラフィーデータ
現像後の膜厚の減少は、上述したFilmetrics F50ツールを用いて測定した。ゲル化点(Egel)までのエネルギーは、エネルギーに関して20秒間の露光全体(この場合は1平方センチメートルあたり358ミリジュール)で膜厚が膜厚の8%以上になったときに決定した。解像度は、光学顕微鏡により解像されたことが判明した円型のビアの光学検査により決定した。
【0105】
(3)動的機械分析
自立膜を10mm×25mmの形状に切断し、0.06%のひずみ速度、1ニュートンの予圧荷重、及び1ヘルツの周波数でTA Instruments動的機械分析計Q800装置に取り付けた。温度を50℃で平衡化し、その後、毎分5℃の速度で200℃まで上昇させた。tanδの曲線の最大値をガラス転移温度値とした。
【0106】
試験結果
比較例1~4では、材料がUV硬化できず、現像液中に完全に溶解し、きれいな基板を残し、液体配合物から膜が形成されなかったため、Dk、Df、及びTgなどの材料特性データを得ることができなかった。
【0107】
表1に実施例4~12からの試験結果が記載されている。
【0108】
一般的な説明又は実施例において上述した作業の全てが必要であるわけではなく、特定の作業の一部は、必要でない場合があり、1つ以上の更なる作業は、記載されている作業に加えて行われ得ることに留意されたい。更にまた、作業を列挙した順序は、必ずしも作業が行われる順序ではない。
【0109】