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特許7160893トランスファー成形インダクタンス素子及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】トランスファー成形インダクタンス素子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20221018BHJP
   H01F 1/147 20060101ALI20221018BHJP
   H01F 1/26 20060101ALI20221018BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20221018BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20221018BHJP
   H01F 41/10 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01F27/29 U
H01F27/29 125
H01F1/147 158
H01F1/147 166
H01F1/147 191
H01F1/26
H01F17/04 F
H01F41/02 D
H01F41/10 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020500795
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 CN2018105406
(87)【国際公開番号】W WO2018219367
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-01-08
【審判番号】
【審判請求日】2021-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】510248062
【氏名又は名称】深▲セン▼順絡電子股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Shenzhen Sunlord Electronics Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Sunlord Guanlan Industrial Park, Dafuyuan Industrial Zone, Guanlan Street, Longhua District, Shenzhen, Guangdong 518110 CN
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】余 ▲シン▼樹
(72)【発明者】
【氏名】夏 勝程
【合議体】
【審判長】清水 稔
【審判官】須原 宏光
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-88545(JP,A)
【文献】特開2007-227426(JP,A)
【文献】特開2015-53407(JP,A)
【文献】特開2006-332294(JP,A)
【文献】特開昭62-31103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01F 17/04
H01F 41/10
H01F 41/02
H01F 1/26
H01F 1/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め製作された空芯コイルと電極板とを溶接させてコイルアセンブリーを形成し、予め製作された金型のキャビティに配置する工程S1と、
ゲル状の軟磁性のゴム成分を含有する磁性体を利用して、前記空芯コイルの全体がゲル状の軟磁性のゴム成分を含有する磁性体に被覆され、空芯コイルの2つの端部の電極板は少なくとも一部がインダクタンス素子の端部電極として軟磁性のゴム成分を含有する磁性体の外部に露出するように、トランスファー成形を行う工程S2と、
金型内の軟磁性のゴム成分を含有する磁性体が硬化して磁性体が形成されると離型し、端部電極を整理して、トランスファー成形インダクタンス素子を得る工程S3とを含み、
工程S2において、
軟磁性のゴム成分を含有する磁性体は、軟磁性の磁粉粒子、有機接着剤、潤滑剤、硬化剤を含み、
その軟磁性の磁粉粒子の固形分含有量は、95wt%以上であり、
軟磁性のゴム成分を含有する磁性体は、常温では固体の状態であり、150~200℃に加熱されるとゲル状になるものであり、
また、前記軟磁性のゴム成分を含有する磁性体はゲル状である時、粘度は10000~20000cpsであり、また、トランスファー成形を行う時、成形圧力は10~20MPaである
ことを特徴とするトランスファー成形インダクタンス素子の製造方法。
【請求項2】
前記軟磁性の磁粉粒子はFe-Ni系、Fe-Si-Al系、Fe-Si系、Fe-Si-Cr系、Fe系の少なくとも一つを含み、粒径は5~50μmである
請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスファー成形インダクタンス素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学技術が目覚ましい発展を遂げている今、電子製品は頻繁にアップグレードされ、使用者はこれまで以上に電子製品に高い性能と信頼性を求めている。ゆえに、電子製品に使用された電子素子にもアップグレードする必要がある。例えば、インダクタの場合、その使用時の電圧、電流、周波数などに関する基準はますます厳しくなる。従来のプレス成形インダクタに多くの欠点が存在し、プレス成形により生産した製品はもはや使用者のニーズに対応できない。また、従来の一体成形インダクタは、その製造プロセスに制限要因があり、更なる技術向上は難しい。
【0003】
従来の乾式プレス一体成形インダクタは、大きい成形圧力を必要とするため銅線に大きな歪みが生じてしまうだけでなく、プレス成形する過程で開路、短絡などの問題が発生しやすい。また、成形設備に高い技術レベルが求められるが、プレス機に重量制限があるため、製品の生産効率に影響が出ている。
【0004】
背景技術として記載された上記の内容は、本出願に係る発明の趣旨の理解向上を図るためのものであり、したがって本特許出願の従来技術として見なされるべきではない。たとえ上記の内容は本特許出願の出願日以前にすでに開示されていることを証明できる証拠がなくても、背景技術として記載された上記の内容は本出願の新規性と進歩性の評価に用いることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来技術の欠点を解消するために、トランスファー成形を利用したインダクタンス素子及びその製造方法を提供することを目的とする。小さい圧力において金型を用いる1回の成形だけで済むため、大きい成形圧力を用いる必要があり、成形設備に高い技術レベルが求められ、成形圧力が大きいため銅線が損傷して短絡、開路又は漏洩電流が発生してしまうという従来技術に存在する技術的課題を解決することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の技術的課題を解決するための一つの態様として下記の発明を提供する。
【0007】
トランスファー成形インダクタンス素子であって、磁性体と、予め製作されたコイルアセンブリーとを含む。
【0008】
前記磁性体は、トランスファー成形を利用して軟磁性の磁性ゴムで形成される。
【0009】
前記予め製作されたコイルアセンブリーは、予め製作された空芯コイルと、前記空芯コイルの2つの端部に接続された電極板とを含み、前記コイルアセンブリーは前記トランスファー成形の過程で前記軟磁性の磁性ゴムによって被覆され、これによって前記空芯コイルの全体は前記磁性体の内部に位置し、前記空芯コイルの2つの端部に接続された電極板は少なくとも一部が前記磁性体の外部に露出してインダクタンス素子の端部電極が形成される。
【0010】
さらに、前記空芯コイルと前記電極板が接続した部分は前記磁性体の内部に位置する。
【0011】
さらに、前記電極板の磁性体内に位置する部分は、前記空芯コイルに溶接された溶接部と、前記空芯コイルに溶接されていない固定部とを含む。
【0012】
本発明の上記の実施形態に係るトランスファー成形インダクタンス素子は、トランスファー成形プロセスを利用して軟磁性の磁性ゴムと予め製作されたコイルアセンブリーとを一体成形させて製造されるものであり、成形圧力が小さいため、得られたインダクタンス素子は銅線の歪みが小さく、製品の信頼性に影響はないだけでなく、製品の寸法精度が高く、安定性に優れる。
【0013】
本発明は、上記の技術的課題を解決するためのもう一つの実施形態として下記の発明を提供する。
【0014】
トランスファー成形インダクタンス素子の製造方法であって、下記の工程S1~S3を含む。
【0015】
S1において、予め製作された空芯コイルと電極板とを溶接させてコイルアセンブリーを形成し、予め製作された金型のキャビティに配置する。
【0016】
S2において、ゲル状の軟磁性の磁性ゴムを利用して、前記空芯コイルの全体がゲル状の軟磁性の磁性ゴムに被覆され、空芯コイルの2つの端部の電極板は少なくとも一部がインダクタンス素子の端部電極として軟磁性の磁性ゴムの外部に露出するように、トランスファー成形を行う。
【0017】
S3において、金型内の軟磁性の磁性ゴムが硬化して磁性体が形成されると離型し、端部電極を整理して、トランスファー成形インダクタンス素子を得る。
【0018】
さらに、前記軟磁性の磁性ゴムは常温で固体の状態であり、所定の温度に加熱されるとゲル状になる。
【0019】
さらに、前記軟磁性の磁性ゴムには軟磁性の磁粉粒子、有機接着剤、潤滑剤、硬化剤が含まれており、前記所定の温度は150~200℃である。
【0020】
さらに、前記軟磁性の磁粉粒子はFe-Ni系、Fe-Si-Al系、Fe-Si系、Fe-Si-Cr系、Fe系の少なくとも一つを含み、粒径は5~50μmである。
【0021】
さらに、前記軟磁性の磁性ゴムで、前記軟磁性の磁粉粒子の固形分含有量は95wt%以上である。この好ましい実施形態において、軟磁性の磁粉を高い含有量で加えると、製品の導磁率が高くなる。これによって常温でゲル状の磁性ゴムは導磁率が低いという問題が解決され、製品の性能が大幅に向上する。
【0022】
さらに、前記軟磁性の磁性ゴムはゲル状である時、粘度は10000~20000cpsである。
【0023】
さらに、トランスファー成形を行う時、成形圧力は10~20MPaである。
【0024】
本発明の上記の実施形態に係る製造方法は、トランスファー成形プロセスを利用して、小さい成形圧力においてゲル状の軟磁性の磁性ゴムと予め製作されたコイルアセンブリーとを一体成形させてインダクタンス素子を製造できる。成形圧力が小さいため製品の内部応力が大幅に低減され、コイルの損傷が避けられ、これによって成形圧力が大きすぎるためコイルに深刻な歪みが生じてしまう、ひいてはコイルが損傷されて製品の信頼性に影響が出るような状況は避けられる。また、磁性ゴムが加熱されると流動性に優れるゲル状になるため、成形の際、粉末同士間にほぼ隙間が入らず、より堅牢に結合され、密度が高くなり、製品の強度が向上する。このような成形方式は結合の時、互いに摩擦することで粉末の表面の絶縁層が破壊されることを防ぐとともに、製品の絶縁電圧及び防錆能力などを大幅に向上させ、製品の電気特性及び信頼性はいずれも大幅に向上する。また、本発明の製造方法で必要とされる成形圧力が小さいため、設備の設定圧力は成形工程を妨げる要因でなくなり、複数の設備を配置して大量生産を行うことができる。これによって生産効率が大幅に向上し、生産コストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例のトランスファー成形インダクタンス素子に係る予め製作された空芯コイルを概略的に示す説明図
図2】予め製作された空芯コイルと電極板とを溶接して形成されたコイルアセンブリーを概略的に示す説明図
図3】一つの具体的な実施例で、トランスファー成形して離型後に得た半製品を概略的に示す説明図
図4】本発明一つの具体的な実施例に係るトランスファー成形プロセスを概略的に示す説明図
図5】本発明で製造されたトランスファー成形インダクタンス素子を概略的に示す説明図
図6a】一種のプロセスで製造されたインダクタの断面図
図6b図6aとは異なるプロセスで製造されたインダクタの断面図
図6c図6a、6bとは異なるプロセスで製造されたインダクタの断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面及び具体的な実施形態を用いて本発明をさらに説明する。
【0027】
本発明の一つの具体的な実施形態は、トランスファー成形インダクタンス素子の製造方法を提供し、当該製造方法は、トランスファー成形プロセスを利用してインダクタンス素子の一体成形を行うものであり、下記の工程S1~S3を含む。
【0028】
S1において、予め製作された空芯コイルと電極板とを溶接させてコイルアセンブリーを形成し、予め製作された金型のキャビティに配置する。図1には一例として、予め製作された空芯コイル10を示す。これはエナメル線を繰り返し捲回して形成されたものであり、中空であって2つ端部を有する。エナメル線としては、断面が円形のものであってもよいし扁平状であってもよく、捲回して形成されたコイルの形状としては、図1に示す円形であってもよいし楕円形、コースの形であってもよく、本発明はこれについて限定しない。
【0029】
一つの実施例において、電極板には、互いに分離している2つの同一の電極板を使用し、それぞれが空芯コイルの2つの端部に溶接されて前記コイルアセンブリーが形成される。もう一つの実施例として、図3に示すような一体式の電極板としてもよく、当該一体式の電極板は、空芯コイルの2つの端部とそれぞれ接続して、別の形態の前記コイルアセンブリーを形成するための2つの対称な接続部を有する。
【0030】
S2において、ゲル状の軟磁性の磁性ゴムを利用して、前記空芯コイルの全体がゲル状の軟磁性の磁性ゴムに被覆され、空芯コイルの2つの端部の電極板は少なくとも一部がインダクタンス素子の端部電極として軟磁性の磁性ゴムの外部に露出するように、トランスファー成形を行う。図4に示すように、予め製作された前記コイルアセンブリーを金型100のキャビティ101に配置して金型を合わせ、素材30’(固体の状態を呈する軟磁性の磁性ゴム)を金型に入れて、金型を介して素材を(150~200℃に)加熱してゲル状に変える。ゲル状の軟磁性の磁性ゴムは流動性を有するため、小さい圧力を加えるだけで移動してキャビティ101に流入し、そして前記コイルアセンブリーの空芯コイルの全体及び電極板の一部を被覆する。本発明に係るトランスファー成形の過程において、必要とされる成形圧力は10~20MPaだけである。
【0031】
S3において、金型内の軟磁性の磁性ゴムが硬化して磁性体が形成されると離型して、トランスファー成形インダクタンス素子を得る。図4に示すように、充填の完了後、数分間してゲル状の軟磁性の磁性ゴムが硬化して磁性体が形成されると、離型して半製品40を取り出す。一体式の電極板を用いる実施例で得られた半製品の一例として、図3に示す。この場合には、最終的な端部電極20’を形成するために、外部に露出した電極板に対し切り抜き、折って丸めるなどの整理工程をするだけでよく、図5に示すトランスファー成形インダクタンス素子を得る。図5に示すように、当該トランスファー成形インダクタンス素子は、磁性体30と、一部が磁性体30の内部に位置する前記コイルアセンブリーとを含み、当該コイルアセンブリーの空芯コイルの全体は磁性体の内部に位置し、電極板の一部が磁性体の内部に位置し、もう一部が端部電極として磁性体の外部に露出する。
【0032】
前記空芯コイル10の2つの端部はそれぞれ電極板に溶接され(例えば、レーザー溶接)、溶接された部分は磁性体30の内部に位置する。図2に示すように、一つの好ましい実施例として、電極板の磁性体の内部に位置する部分は前記空芯コイル10に溶接された溶接部21と、前記空芯コイルに溶接されていない固定部22とを含む。コイルの端部の面積が小さく、電極板に溶接された部分も狭いことを考慮して、磁性体の全体に接続された電極板の安定性を向上させるために、電極板の磁性体の内部に位置する部分を、図2に示すように一側が溶接部21で、他側が固定部22である「Y」字状として設計することができる。
【0033】
上記の軟磁性の磁性ゴムは、常温で固体の状態であり、所定の温度に加熱されるとゲル状になる。本発明の一つの具体的な実施例において、前記軟磁性の磁性ゴムには、軟磁性の磁粉粒子、有機接着剤、潤滑剤、硬化剤が含まれており、150~200℃に加熱されてゲル状に変わり始めると、トランスファー成形プロセスを行うことができ、数分間後に迅速に硬化する。
【0034】
一つの好ましい実施例として、前記軟磁性の磁粉粒子はFe-Ni系、Fe-Si-Al系、Fe-Si系、Fe-Si-Cr系、Fe系の少なくとも一つを含み、粒径は5~50μmである。さらに、より高い導磁率を得るために、前記軟磁性の磁性ゴムで軟磁性の磁粉粒子の固形分含有量は95wt%以上としてもよく、ゲル状である時、当該軟磁性の磁性ゴムの粘度は10000~20000cpsである。
【0035】
以下、一つの具体的な例を用いて、本願に係る上記の発明の実施の詳細及びその有益な効果を説明する。
【0036】
エナメル線を使用して、時計回り方向で捲回して空芯コイルを形成し、剥離機械を用いてコイルの2つの端部の被覆層を去除し、図1に示す空芯コイル10を得る。空芯コイルと電極板とをレーザー溶接して図2に示すコイルアセンブリーを形成する(ここで、破線は磁性体によって包み込まれる範囲を示す)。好ましくは、電極板には銅板を使用し、所定の形状にした後、無光沢錫めっきプロセスを行って得る。次に、前記コイルアセンブリーを予め設計した金型に配置する。
【0037】
次に、調製しておいたゲル状の軟磁性の磁性ゴムを金型に注入し、図4に示すように、トランスファー成形プロセスを実行する。なお、軟磁性の磁性ゴム中の磁粉としてはFeSiCrを使用し、磁粉は鈍化・絶縁の処理を経て、粒径が約D50=20μmであり、磁粉の固形分含有量は95wt%より大きい。軟磁性の磁性ゴム中の有機接着剤としては、含有量5wt%未満でシリコーン樹脂、エポキシ樹脂を使用するのが好ましく、調製しておいた軟磁性の磁性ゴムは、170℃における粘度が15000cpsであり、図4に示すように、トランスファー成形プロセスを行う過程で、20MPaの成形圧力を用いて、トランスファー成形インダクタンス素子のサンプルを得る。上記の方法に従って複数のサンプルを得て、成形圧力はいずれも10~20MPaである。
【0038】
同様にして調製した磁粉を使用して、従来の乾式プレス成形及びプレス成形を行ってインダクタンス素子を製造し、得られた製品と上記のように得た本発明のサンプルとを比較して、結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
表1
【0040】
また、従来の乾式プレス製品と比べると、下記の表2に示すように、一部の電気的特性及び機械的特性は大きく向上している。
【0041】
【表2】
表2
【0042】
上記の表から分かるように、本発明に係るトランスファー成形を利用してインダクタンス素子を製造する方法は、従来の乾式プレスと比べると、ほぼ同一の材料を使用している場合には、非常に小さい成形圧力でも導磁率がより高いインダクタンス素子を得ることができ、一部の電気的特性及び機械的特性は大きく向上している。また、従来の乾式プレスでは、銅線に顕著な歪みが生じてしまい(図6a参照)、銅線の損傷、開路、短絡などの問題が発生しやすいのに対し、本発明を利用する場合、銅線には製品の信頼性に影響が出る程度の顕著な歪みが生じていない。プレス成形と比べると、プレス成形プロセスに用いる成形圧力は従来の乾式プレスよりわずかに低減しているため、成形の際に、プレス機の重量には依然として厳しい制限がある。
【0043】
以上から分かるように、本発明に係るトランスファー成形インダクタンス素子及びその製造方法は、必要とされる成形圧力が大幅に低減していて銅線の深刻な歪みが避けられるだけでなく、高い導磁率を得ることができ、使用される成形設備に関する要件が緩和されているので、プロセスの条件改善と製品の信頼性の向上が図られ、生産コストが低減されるだけでなく、大量生産が可能であるため、生産効率が向上する。
【0044】
上記の内容は、好ましい実施形態を用いて本発明を詳細に説明するものであり、本発明の実施に係る内容はこれらの説明に限定されるものではない。本発明の属する技術分野の技術者にとって、本発明の趣旨を逸脱することなく、性能または用途を変えずに種々の同等な置き換えや変形を行うことができ、これらはいずれも本発明の保護範囲に入る。

図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c