(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】人工筋肉装置および人工筋肉装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F03G 7/06 20060101AFI20221018BHJP
A61L 27/04 20060101ALI20221018BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20221018BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20221018BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
F03G7/06 Z
A61L27/04
A61L27/18
A61L27/50
A61L27/16
(21)【出願番号】P 2020528054
(86)(22)【出願日】2018-11-21
(86)【国際出願番号】 US2018062242
(87)【国際公開番号】W WO2019104164
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-05-20
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518380665
【氏名又は名称】リンテック・オブ・アメリカ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリル・ゲレーロ
(72)【発明者】
【氏名】セルゲイ・リ
(72)【発明者】
【氏名】ランディー・アレン
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ヒンジェリー
【審査官】井上 能宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-005340(JP,A)
【文献】特許第5679733(JP,B2)
【文献】特許第5838448(JP,B2)
【文献】特開2012-039741(JP,A)
【文献】特開2011-037077(JP,A)
【文献】特表2010-500895(JP,A)
【文献】特開平11-215793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L、D02G、H02N、F03G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー繊維と、
導線とを含み、
前記導線は、前記ポリマー繊維の周囲に巻き付けられ、前記導線の少なくとも一部が前記ポリマー繊維に埋め込まれる、
人工筋肉装置。
【請求項2】
前記導線の直径の少なくとも5%が、前記ポリマー繊維内に埋め込まれる、請求項1に記載の人工筋肉装置。
【請求項3】
前記導線は、ステンレス鋼及びニクロム合金の群から選択された1つを含む、請求項1に記載の人工筋肉装置。
【請求項4】
前記ポリマー繊維は、ナイロン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及び、ポリエーテルエーテルケトンの群から選択された1つを含む、請求項1に記載の人工筋肉装置。
【請求項5】
前記ポリマー繊維はナイロンを含み、前記導線はステンレス鋼を含む、請求項1に記載の人工筋肉装置。
【請求項6】
前記導線は、前記ポリマー繊維の周囲に均一に巻き付けられる、請求項1に記載の人工筋肉装置。
【請求項7】
前記導線は、所望の作動に基づいて、前記ポリマー繊維の周囲に不均一に巻き付けられる、請求項1に記載の人工筋肉装置。
【請求項8】
前記ポリマー繊維の直径の前記導線の直径に対する比が10:1である、請求項1に記載の人工筋肉装置。
【請求項9】
人工筋肉装置の製造方法であって、
設定張力でポリマー繊維の周囲に導線を巻き付けることと、
前記ポリマー繊維と導線とを前記ポリマー繊維のガラス転移温度を超える温度に加熱することと、
前記ポリマー繊維と導線とを前記ガラス転移温度未満に冷却して、前記導線の少なくとも一部が前記ポリマー繊維内に埋め込まれている導線入りポリマー繊維を生じることと
を含む前記方法。
【請求項10】
前記温度は、前記ポリマー繊維の融点より最高で50度低い温度までの温度である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記温度は、前記ポリマー繊維の融点より最高で30度低い温度までの温度である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記導線の直径の少なくとも5%が、前記ポリマー繊維内に埋め込まれる、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記導線は、ステンレス鋼及びニクロム合金の群から選択された1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリマー繊維は、ナイロン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、及びポリエーテルエーテルケトンの群から選択される1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリマー繊維はナイロンを含み、前記導線はステンレス鋼を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記
導線は、前記ポリマー繊維の周囲に均一に巻き付けられる、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記
導線は、所望の作動に基づいて、前記ポリマー繊維の周囲に不均一に巻き付けられる、請求項9に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリマー繊維の直径の前記導線の直径に対する比が10:1である、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に従って、2017年11月22日出願の米国仮出願第62/590,121号の優先権を主張する。当該出願の内容は、参照によりその全体を本明細書に組み込む。
【0002】
さらに、以下の出願の資料は、本明細書に開示の実施形態と共に使用され得る。米国仮出願第62/431,717号「IMPROVEMENTS IN ARTIFICIAL MUSCLE ACTUATORS」、米国仮出願第62/350,113号「POLYMERIC ACTUATOR DEVICE,CONTROLLED MOTION AND METHODS THEREOF」、米国仮出願第62/405,138号「COATING FOR ARTIFICIAL MUSCLES AND ACTUATORS」、2017年4月28日出願のWIPO出願第PCT/US2017/030199号、及び2017年10月26日出願の米国仮出願第62/577,512号。これらの出願も、参照によってその全体を本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0003】
撚られたポリマー繊維及び糸をベースとする熱駆動式ねじりアクチュエータは、幅広い用途を有する。撚られたポリマー及び/またはコイル状のポリマーを含む人工筋肉アクチュエータは、低コスト、高生産量、及び設計の単純性という利点を有する。人工筋肉アクチュエータは、非常に単純化されたエンジニアリング及びより低い製品コストにより、小型モータを上回る利点を有し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様においては、本発明の実施形態は、ポリマー繊維と導線とを含む作動装置に関し、導線は、導線の少なくとも一部がポリマー繊維内に埋め込まれるように、ポリマー繊維の周囲に巻き付けられている。
【0005】
他の態様において、本発明の実施形態は、設定された張力でポリマー繊維の周囲に導線を巻き付けることと、ポリマー繊維及び導線をポリマー繊維のガラス転移温度を超える温度に所定の時間加熱することとを含む作動装置の製造方法に関する。この方法はまた、導線入りポリマー繊維をガラス転移温度未満に冷却して、導線の少なくとも一部がポリマー繊維内に埋め込まれている導線入りポリマー繊維を生じることを含む。
【0006】
特許請求する主題の他の態様及び利点は、以下の記載及び添付の特許請求の範囲から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本明細書に開示した1つまたは複数の実施形態によるフローチャートである。
【
図2】本発明の1つまたは複数の実施形態による概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
開示の実施形態の以下の詳細な記載において、発明の完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細を記載する。しかしながら、本開示は、これらの具体的な詳細無しに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。他の例では、説明を不必要に複雑にすることを避けるために、周知の特徴は詳細には記載されていない。
【0009】
一般に、本発明の実施形態は、人工筋肉装置と人工筋肉装置の製造方法に関する。より具体的には、本明細書に開示された実施形態は、ワイヤ状の導電材料をポリマーベースの繊維に埋め込む方法に関する。
【0010】
本明細書に開示の実施形態によると、熱作動ポリマー人工筋肉を電気的に作動させるために、ヒータの機能を果たす導電性材料をポリマー筋肉に加えることが必要である。例えば、導電体として使用する材料は、銀コーティング、カーボンナノチューブ、及び/または、ポリマーの周囲にらせん状に巻き付けられた金属細線を含む。本明細書に開示した実施形態によると、ポリマー繊維の周囲にらせん状に巻き付けられる金属細線は、比較的低コスト及び耐久性のために好ましいと思われる。金属線を用いることに伴う1つの問題は、金属線がポリマーの表面に沿って滑る場合があるということである。導線同士が、繊維のある領域で近くで一緒に滑る場合、筋肉のその部分で過熱を生じ、過熱によってその部分を損傷する可能性がある。導線が筋肉の長さに沿って等間隔に配置されることを確実にするために、導線を適用した後すぐに、接着剤を使用して導線を適所に固定してよい。
【0011】
しかし、接着剤は、ポリマー繊維表面に沿って導線が滑るのを防止するが、望ましくない場合がある。本明細書に開示した実施形態は、人工筋肉ポリマー内部に導線を埋め込む、または、部分的に埋め込むことにより、接着剤の使用を回避し得る。ポリマー繊維の内部に導線を埋め込むことにより、実施形態は、接着剤の使用を避けることができ、導線とポリマー繊維との間の熱接触を増大させることができる。本明細書に開示の実施形態はまた、以下に説明するように、摩擦による損傷から導線を保護し得る。
【0012】
図1は、本明細書に開示した1つまたは複数の実施形態によるフローチャートである。ST1001では、導線が、ポリマー繊維の周囲にしっかりと巻き付けられる。本明細書に開示した実施形態によると、繊維の直径の導線の直径に対する比は、約10:1である。繊維は、直径50ミクロン~1mmであってよく、導線は、直径5ミクロン~100ミクロンであってよい。巻線する時、5~10MPaの張力を導線に加えてよい。1つまたは複数の実施形態によると、導線に加えられる張力は、導線のポリマー繊維への埋め込み深さの決定を助け得る。
【0013】
本明細書に開示した1つまたは複数の実施形態によると、導線は、部分的または完全に繊維に埋め込まれてよい。1つまたは複数の実施態様において、埋め込み深さは、導線の直径の約5%であってよい。ST1002では、ポリマー繊維及び導線は、繊維のガラス転移温度を超える温度に所定の時間、加熱される。例えば、導線を埋め込み、金属線のポリマー繊維の接着性を向上させるために、温度は、ポリマーの融点より30~50度低くてよい。
【0014】
上記のステップに関連付けられた具体的な温度及び時間は、ポリマー繊維用に選択された材料、導線用に選択された材料、及びこれらの材料の具体的なサイズに応じて変化し得ることを、当業者は理解されよう。さらに、ST1001で加えられる張力は、材料、温度、及び、ポリマー繊維中の導線の所望の埋め込み深さに依存し得ることを当業者は理解されよう。例えば、張力を高くすると、ポリマー繊維への導線の侵入は深くなり得る。
【0015】
ST1003では、ポリマー繊維及び導線は、ガラス転移温度未満に冷却されて、導線を筋肉に付着させる。従って、本明細書に開示した実施形態によると、導線が、ポリマー繊維内に埋め込まれて、導線が繊維の表面に沿って滑るのを防止する。ポリマーの表面に繊維を完全に埋め込むことによって、部分的に埋め込まれる場合よりも導線はさらに保護され得る。換言すれば、より深く埋め込まれるほど、導線は、外部の影響からより保護され得る。
【0016】
図2は、本発明の1つまたは複数の実施形態による概略図である。
図2は、ポリマー繊維202と、らせん状に巻き付けられ部分的に埋め込まれた導線204とを含む導線入りポリマー繊維200を示す。例えば、ナイロンポリマー繊維は、直径300~500ミクロンであってよく、そして、直径76ミクロンのステンレス製導線を使用してよい。ナイロンに加えて、ポリマー繊維用の他の材料としては、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、及びポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が含まれるが、これらに限定されない。ステンレス鋼に加えて、ポリマー繊維用材料としては、ニクロム合金または他の合金材料が含まれるが、これらに限定されない。具体的な寸法は、使用される材料、所望の作動、及び/または、作動装置の具体的用途によって決定され得ることを当業者は理解されよう。
【0017】
上述したように、本発明の1つまたは複数の実施形態によると、アニール温度も、これらの要因に基づいて変化し得る。例えば、ナイロンポリマー繊維は、上述のST1002において、1時間以下の間、200度まで加熱してよい。また、張力は、既知の技術に従って制御されてよい。
【0018】
導線は、ポリマー繊維を均一に加熱するようにポリマー繊維の周囲に巻き付けられてよいことを、当業者は理解されよう。また、導線は、ポリマー繊維の所望の作動に基づいてポリマー繊維の周囲に巻き付けられてよいことを、当業者は理解されよう。上述したように、例えば、導線を埋め込まなければ、導線は、ポリマー繊維に沿って滑ることがあり、ポリマー繊維の特定の領域で導線同士の位置が近付いて、局所的な加熱を増加させる。導線は、ポリマー繊維の所望の作動に基づいて、ポリマー繊維のある領域を他の領域に比べて意図的により多く加熱するようにポリマー繊維の周囲に巻き付けられてよいことを当業者は理解されよう。
【0019】
本明細書に開示した実施形態によると、導線がポリマー繊維中に埋め込まれている時、導線が繊維の外面の周囲に巻き付けられているだけの時と比較して、導線とポリマー繊維との間により大きな表面積の接触を提供する。本明細書に開示した実施形態によると、このより大きな表面接触は、有利なことに、加熱速度を速くし、且つ、得られた作動装置の作動をより迅速にし得る。
【0020】
さらに、導線はポリマー繊維の表面上に載るだけの可能性があるため、導線の破損、破断が容易になり得る。製造中に、人工筋肉作動装置は、相当量の摩擦を受ける場合があり、導線または繊維の破断を生じ得る。実際には、導線のこのような断線は、人工筋肉ポリマー繊維が相当量の摩擦を受ける製造中に頻繁に発生することが知られている。特許請求する本発明の実施形態は、導線をポリマー繊維に埋め込み、製造工程中に人工筋肉繊維を保護し、摩擦に対して損傷を受けにくいようにする。
【0021】
本発明は、限られた数の実施形態に関して記載してきたが、他の実施形態が、本明細書に開示される発明の範囲を逸脱することなく考案できることを、この開示の利益を有する当業者は理解されよう。