(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】コーティングされた鋼に対するプレス方法及び鋼の使用法
(51)【国際特許分類】
B21D 22/20 20060101AFI20221018BHJP
B21D 24/00 20060101ALI20221018BHJP
C21D 9/00 20060101ALI20221018BHJP
C21D 1/18 20060101ALI20221018BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20221018BHJP
C22C 38/04 20060101ALI20221018BHJP
C22C 38/32 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B21D22/20 H
B21D22/20 Z
B21D22/20 E
B21D24/00 M
C21D9/00 A
C21D1/18 C
C22C38/00 301T
C22C38/04
C22C38/32
(21)【出願番号】P 2020528510
(86)(22)【出願日】2018-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2018071064
(87)【国際公開番号】W WO2019025569
(87)【国際公開日】2019-02-07
【審査請求日】2021-07-27
(32)【優先日】2017-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517098527
【氏名又は名称】オートテック・エンジニアリング・ソシエダッド・リミターダ
【氏名又は名称原語表記】Autotech Engineering, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ポール・ジョセフ・ベランガー
(72)【発明者】
【氏名】イグナシオ・マルティン・ゴンサレス
(72)【発明者】
【氏名】マヌエル・ロペス・ラヘ
【審査官】堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-185565(JP,A)
【文献】特開2013-123722(JP,A)
【文献】国際公開第2017/103127(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/20
B21D 24/00
C21D 9/00
C21D 1/18
C22C 38/00
C22C 38/04
C22C 38/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多段階装置において構造部品システムを熱間成形するための方法であって、
前記多段階装置は、
下部ボディと、
可動する上部ボディと、
前記下部ボディに関して、可動する前記上部ボディの上方及び下方プレス進行をもたらすように構成されている機構と、
ブランクを絞り加工するように構成されているプレスツールと
、
前記プレスツールよりも上流の冷却ツールと、を備えており、
前記プレスツールは、対となる上部プレス型と下部プレス型を備えており、
それぞれの前記プレス型は、使用時、前記ブランクに対向する1つ以上のワーク面を備えており、
前記上部プレス型は前記上部ボディに接続しており、
前記下部プレス型は前記下部ボディに接続しており
、
前記冷却ツールは、使用時、前記ブランクに対向する1つ以上のワーク面を有する上部冷却型と下部冷却型とを備えており、
前記下部冷却型は前記下部ボディに接続しており、
前記上部冷却型は前記上部ボディに接続しており、
前記方法は、
アルミニウム‐シリコンコーティングで覆われている超高強度鋼(UHSS)から形成されるブランクを供給するステップと、
前記ブランクを供給するステップの後、オーステナイト化温度よりも前記ブランクを加熱するステップと、
前記ブランクを加熱するステップの後、完全に加熱された前記ブランクを前記冷却ツールで冷却するステップと、
完全に加熱された前記ブランクを冷却するステップの後、前記冷却ツールから前記プレスツールに向けて前記ブランクを移送して、前記プレスツールで前記ブランクを絞り加工するステップと、を備えており、
前記オーステナイト化温度はAc3温度であり、
完全に加熱された前記ブランクを冷却するステップは、600~800℃、特に650~700℃の温度まで前記ブランクを冷却することを備えており、
前記ブランクは50~300℃/秒の速度で冷却されて、
絞り加工する前の前記プレスツール内の前記ブランクの温度は550~650℃の範囲である、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記冷却ツールの前記上部冷却型と前記下部冷却型は、冷却水を伝える導管を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記UHSSは、0.21~0.25%のC、1.05~1.33%のSi、及び2.06~2.34%のMnの重量割合を備える、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記UHSSは、0.17~0.23%のC、最大0.5%のSi、最大2.5%のMn、最大0.05%のCr、及び0.002~0.005%のBの重量割合を備える、
請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記UHSSは気硬性UHSSである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記UHSSは、0.20~0.5%のC、好ましくは0.30~0.40%のC、0.10~0.70%のSi、0.65~1.60%のMn、及び0.001~0.005%のBの重量割合を備える、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記UHSSは非気硬性UHSSである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記多段階装置は前記プレスツールより下流の第1後工程ツールを備えており、
前記第1後工程ツールは、使用時、前記ブランクに対向する1つ以上のワーク面を有する上部第1後工程型と下部第1後工程型を備えており、
前記下部第1後工程型は前記下部ボディに接続しており、
前記上部第1後工程型は前記上部ボディに接続している、
請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1後工程ツールは、第1後工程の間、前記ブランクの温度を制御するための温度制御システムを備えており、
前記温度制御システムは、前記上部第1後工程型と前記下部第1後工程型内に熱電対を任意で含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1後工程ツールの前記上部第1後工程型と前記下部第1後工程型は、冷却水又は冷却用空気を伝える導管を備える、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1後工程ツールの前記上部第1後工程型と前記下部第1後工程型は、1つ以上の加熱器又は温液を伝える導管を備える、
請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記ブランクを加熱することは、860~910℃のオーステナイト化温度まで加熱することを備える、
請求項1~11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
絞り加工中、前記ブランクを冷却するステップを備える、
請求項1~12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記ブランクは、成形中、320~280℃の温度まで冷却される、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記多段階装置から前記ブランクを出すステップを備えており、
前記多段階装置から出るときの前記ブランクの温度は200℃未満である、
請求項1~14のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2017年8月2日に提出された欧州特許出願17382531.6号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、熱間成形構造部品を製造するための方法、及び熱間成形工程における超高強度鋼の使用法に関する。
【背景技術】
【0003】
車両構造の分野において、軽量な材料又は構成部品の開発と実現は、軽量な構造に対する基準を満足するため、ますます重要になる。重量低減に対する要求はCO2排出の削減目標により特に決められる。また、乗員安全性に対する関心の高まりにより、衝突中の車両の完全性を向上させる一方、エネルギー吸収を向上させる材料の選択をもたらす。
【0004】
熱間成形ダイクエンチ(HFDQ)として知られている(また熱間鍛造又はプレス硬化として知られている)工程は、例えば1500MPa又は2000MPa以上までの引張強度を有する超高強度鋼(UHSS)の特性を備える鍛造構成部品を形成するため、例えばボロン鋼のシートを使用する。他の材料に比べて強度が増加することにより、より薄いゲージの材料が用いられ得る。これにより、従来通りに冷間鍛造された軟鋼構成部品以上に重量低減される。
【0005】
熱間鍛造工程の前、実施時、又は後の腐食保護を向上させるため、コーティングが適用され得る。例えば、Al-Siコーティング又はZnコーティングを用いることが知られている。
【0006】
鋼基材の組成に応じて、ブランクは、大きな引張強度を得るため、焼き入れされる(すなわち急冷される)必要があってもよい。また、相対的に遅い冷却速度を有する空冷によって室温まで冷却するように放置することにより硬化し得る鋼材料の例が知られている。これらの鋼は「気硬性」鋼と呼称され得る。
【0007】
熱間鍛造工程は、熱間成形されるためのブランクが、ブランクの強度を減少させる、すなわち熱間鍛造工程を助けるように、例えば炉のシステムにより、予め決められた温度まで、例えばオーステナイト化温度まで、又はオーステナイト化温度よりも加熱されるような方法で行われ得る。加熱されたブランクは、例えば(例えば室温の)ブランクと温度制御に比べて低温を有するプレスシステムにより成形され得る。したがって、成形工程と熱処理が温度差を用いて行われ得る。
【0008】
熱間鍛造工程はコンベヤ又は移送装置を含み得る。このコンベヤ又は移送装置は、加熱されたブランクを炉からプレスツールに移送する。このプレスツールはブランクをプレスするように構成されている。炉のシステムよりも上流において、鋼のコイルからブランクを直接切り取るための切断システムが設けられ得る。
【0009】
熱間成形された要素を製造するため、多段階プレス装置を用いることが知られている。多段階プレス装置は、異なるブランクに異なる工程を同時に行うために構成されている複数のツールを備えてもよい。そのような構成により、複数のブランクは、プレス装置のそれぞれのストロークの間、異なる製造ステップを同時に受け得る。多段階装置の効率と性能は、レーザートリミング又は硬度切削のような異なる製造ステップに対して複数の異なる機械又は装置を用いるシステムよりも高い。
【0010】
亜鉛コーティングされた鋼のブランクが用いられるとき、ブランクは、微小亀裂のような問題を低減又は最小化するため、熱間成形工程の前に所定温度まで冷却される必要がある。ブランクは、冷却されると、外部の事前冷却ツールから多段階プレス装置に移送される。
【0011】
欧州公開特許3067129号は、熱間成形構造部品を製造するためのプレスシステムを開示している。このシステムは、固定された下部ボディ、可動する上部ボディ、及び固定された下部ボディに関して、可動する上部ボディの上方及び下方プレス進行をもたらすように構成されている機構を備える。このシステムはまた、局所的に異なる微細構造と機械的特性を有する、予め加熱されたブランクを冷却及び/又は加熱するように構成されている冷却/加熱ツールを備える。このシステムはさらに、対となる上部型と下部型、及びブランクを絞り加工するために構成されているプレスツールを備える。上部型と下部型は、局所的に異なる微細構造と機械的特性を有するブランクの範囲に応じて、異なる温度で動作するために構成されている2つ以上の型ブロックを備える。プレスツールは冷却/加熱ツールより下流に配置されている。このシステムは、Usibor(登録商標)(22MnB5)から形成される構成要素の特定の領域において延性とエネルギー吸収を向上させるため、「軟らかい範囲」を形成することを特に目的としている。この22MnB5ボロン鋼を用いることにより、異なる微細構造及び対応する異なる特性を得るため、冷却/加熱ツール及び下流の後工程ツールの異なる型ブロックの間の所定温度の制御を要求する。
【0012】
欧州公開特許3067128号は、熱間成形構造部品を製造するための多段階プレスシステムを開示している。このシステムは、固定された下部ボディ、可動する上部ボディ、及び固定された下部ボディに関して、可動する上部ボディの上方及び下方プレス進行をもたらすように構成されている機構を備える。このシステムはまた、予め加熱されたブランクを冷却するように構成されている冷却ツールを備える。このシステムはさらに、対となる上部型と下部型を備える。下部型は、1つ以上の下部バイアス用要素を有する下部ボディに接続されている。また/もしくは、上部型は、1つ以上の上部バイアス用要素を有する上部ボディに接続されている。このシステムはさらに、ブランクを絞り加工するために構成されているプレスツールを備える。このプレスツールは冷却ツールより下流に配置されている。このシステムは、亜鉛コーティングされた超高強度鋼を用いることを特に目的としている。
【0013】
亜鉛コーティングされた鋼を用いることに関する不利な点の1つは、亜鉛酸化物の層がブランク上に形成され得ることである。多くの適用において、亜鉛酸化物の層は、製造工程の後、取り除かれる、又は削減されることを必要とする。例えば、ショットブラストが、亜鉛酸化物の層を部分的に、又は完全に取り除くため、用いられ得る。AlSiコーティングされた構成要素は、一般的に、Znコーティングを有する構成要素よりも良好に溶接され得る。
【0014】
本発明は、多段階工程及び装置における改善をもたらすことを試みる。
【発明の概要】
【0015】
第1の態様において、多段階装置において構造部品システムを熱間成形するための方法が提供されている。多段階装置は、下部ボディと、可動する上部ボディと、下部ボディに関して、可動する上部ボディの上方及び下方プレス進行をもたらすように構成されている機構と、ブランクを絞り加工するように構成されているプレスツールとを備える。プレスツールは、対となる上部プレス型と下部プレス型を備える。それぞれのプレス型は、使用時、ブランクに対向する1つ以上のワーク面を備える。上部プレス型は上部ボディに接続している。下部プレス型は下部ボディに接続している。多段階装置はまた、使用時、ブランクに対向する1つ以上のワーク面を有する上部型と下部型とを含む追加ツールを備える。追加ツールの下部型は下部ボディに接続している。追加ツールの上部型は上部ボディに接続している。上記方法は、アルミニウム‐シリコンコーティングで覆われている超高強度鋼(UHSS)から形成されるブランクを供給するステップと、オーステナイト化温度よりもブランクを加熱するステップと、加熱されたブランクをプレスツールで絞り加工して、プレスツールと追加ツールの間でブランクを移送するステップとを備える。
【0016】
この態様によれば、アルミニウム‐シリコンコーティングを有するUHSSブランクが用いられるため、亜鉛酸化物の層を部分的に、又は完全に取り除くためのショットブラストが必要でない。多段階装置を用いることにより、スループットを向上させ得る。
【0017】
プレスツールと追加ツールの上部型を可動する上部ボディに接続することにより同じ装置内でツールを統合すると、プレスツールと追加ツールの間の移送時間が減少し得る。したがって、工程が最適化され得る。また、生産性が向上し得る。さらに、工程の異なるステップの間、ブランクの温度が改善し得る。
【0018】
一部の実施例において、追加ツールは、成形ツールよりも上流に配置されている冷却ツールである。また、上記方法は、完全に加熱されたブランクを冷却するステップを備える。
【0019】
一部の実施例において、冷却ツールの上部型と下部型は、冷却水を伝える導管を備えてもよい。代替として、又は追加として、冷却ツールの上部型と下部型は、空気を伝える導管を備えてもよい。
【0020】
一部の実施例において、ブランクはオーステナイト化温度まで加熱される一方、このオーステナイト化温度はAc3温度であってもよい。完全に加熱されたブランクを冷却するステップは、600~800℃、特に650~700℃の温度までブランクを冷却することを備える。
【0021】
一部の実施例において、ブランクは50~300℃/秒の速度で冷却され得る。
【0022】
一部の実施例において、絞り加工前の成形ツール内のブランクの温度は550~650℃の範囲であってもよい。
【0023】
一部の実施例において、追加ツールは、成形ツールよりも上流に配置されている加熱ツールである。オーステナイト化温度よりもブランクを加熱するステップは、炉内でブランクを第1温度まで加熱すること、及び加熱ツール内でブランクを第1温度から第2温度まで加熱することを備える。
【0024】
一部の実施例において、ブランクは、0.15~0.25%のC、最大0.5%のSi、最大2.5%のMn、0.002~0.005%のB、及び最大0.05%のCrの重量割合を備えるUHSSから形成され得る。一部の実施例において、UHSSはまた、Al、Ti、P、及びMoを備える。
【0025】
一部の実施例において、ブランクは、0.15~0.25%のC、最大1%のSi、最大2.5%のMn、0.002~0.005%のB、及び0.5~0.7%のCrの重量割合を備えるUHSSから形成され得る。
【0026】
代替例において、UHSS材料は、0.15~0.25%のC、最大0.5%のSi、最大2.5%のMn、0.002~0.005%のB、及び最大0.5%、好ましくは約0.3%のCrの重量割合を備える。一部の実施例において、UHSSはまた、Al、Ti、P、及びMoを備える。
【0027】
一部の実施例において、多段階装置はまた、プレスツールより下流の第1後工程ツールを備えてもよい。第1後工程ツールは、使用時、ブランクに対向する1つ以上のワーク面を有する上部第1後工程型と下部第1後工程型を備える。下部第1後工程型は下部ボディに接続している。上部第1後工程型は上部ボディに接続している。
【0028】
一部の実施例において、第1後工程ツールは、第1後工程の間、ブランクの温度を制御するための温度制御システムを備えてもよい。温度制御システムは、上部第1後工程型と下部第1後工程型内に熱電対を任意で含む。
【0029】
一部の実施例において、第1後工程ツールの上部第1後工程型と下部第1後工程型は、冷却水又は冷却用空気を伝える導管を備えてもよい。
【0030】
一部の実施例において、第1後工程ツールの上部第1後工程型と下部第1後工程型は、1つ以上の加熱器、又は温液若しくは伝導加温を伝える導管を備えてもよい。
【0031】
一部の実施例において、多段階装置はまた、第1後工程ツールより下流の第2後工程ツールを備えてもよい。第2後工程ツールは、使用時、ブランクに対向する1つ以上のワーク面を有する上部第2後工程型と下部第2後工程型を備える。下部第2後工程型は下部ボディに接続している。上部第2後工程型は上部ボディに接続している。
【0032】
一部の実施例において、第2後工程ツールは、第2後工程の間、ブランクの温度を制御するための温度制御システムを備えてもよい。温度制御システムは、上部第2後工程型と下部第2後工程型内に熱電対を任意で含む。
【0033】
一部の実施例において、第2後工程ツールの上部第2後工程型と下部第2後工程型は、冷却水又は冷却用空気を伝える導管、及び/又は1つ以上の加熱器若しくは温液を伝える導管を備えてもよい。
【0034】
多段階装置内の後工程ツールを含む複数のツールを統合することにより、独立したレーザー切断システム及び工程が要求されない。
【0035】
一部の実施例において、プレスツールの上部プレス型と下部プレス型は、冷却水を伝える導管、及び/又は空気を伝える導管を備えてもよい。
【0036】
一部の実施例において、ブランクは、860~910℃のオーステナイト化温度まで加熱され得る。
【0037】
一部の実施例において、上記方法はまた、成形中、ブランクを冷却するステップを備えてもよい。ブランクは、成形中、選択的に、450~250℃、好ましくは320~280℃の温度まで冷却され得る。
【0038】
一部の実施例において、多段階装置から出るときのブランクの温度は200℃未満であってもよい。
【0039】
第2の態様において、熱間成形工程において、アルミニウム‐シリコンコーティングを有する超高強度鋼(UHSS)を用いることが提供されている。熱間成形工程は、アルミニウム‐シリコンコーティングを有するUHSSから形成されるブランクをオーステナイト化温度よりも加熱するステップ、及び加熱されたブランクを多段階装置内で成形するステップを含む。多段階装置は、多段階装置内で統合されている冷却ツールと成形ツールを備える。冷却ツールは成形ツールよりも上流に配置されている。
【0040】
成形ステップより前に冷却ステップを統合することにより、成形ステップのサイクルタイムは減少し得る。切断工程のように、多段階装置内に統合されている他のステップは成形ステップと同期され得る。また、サイクルタイムは、それに応じて削減され得る。
【0041】
一部の実施例において、多段階装置は冷却ツールと成形ツールを単に組み合わせる。この冷却ツールは成形ツールよりも上流に配置される。この場合、装置内の事前冷却ステップを統合することの利点は、減少したサイクルタイムでも、成形の終了時に得られるブランク/製品に対して、十分低い温度に到達し得ることである。したがって、歪みのように生じる変形は防がれ得る。
【0042】
別の態様において、熱間成形工程において、アルミニウム‐シリコンコーティングを有する超高強度鋼(UHSS)を用いることが提供されている。熱間成形工程は、アルミニウム‐シリコンコーティングを有するUHSSから形成されるブランクをオーステナイト化温度よりも加熱するステップ、及び多段階装置内で統合されている複数のツールを含む多段階装置内で加熱されたブランクを成形するステップを含む。このUHSSは、0.20~0.25%のC、0.75~1.5%のSi、及び1.50~2.50%のMnの重量割合を備える。好ましくは、UHSSは、0.21~0.25%のC、1.05~1.33%のSi、及び2.06~2.34%のMnの重量割合を備える。
【0043】
そのようなUHSSは、超高強度特性を有するマルテンサイト微細構造を得るため、成形ステップの間、大きな冷却を要求しない。代替として、少なくとも一部の場合、そのようなUHSSは、外気により単に硬化され得る。したがって、冷却ツール内の広範な冷却が要求されないとき、多段階工程のサイクルタイムは小さくなり得る。したがって、工程の出力は、それに応じて増加し得る。
【0044】
一部の実施例において、UHSSは、約0.22%のC、1.2%のSi、及び2.2%のMnの重量割合を備えてもよい。
【0045】
一部の実施例において、UHSSはさらに、Mn、Al、Ti、B、P、S、Nを備える。残りは鉄(及び不純物)から形成される。
【0046】
別の態様において、熱間成形工程において、アルミニウム‐シリコンコーティングを有する超高強度鋼(UHSS)を用いることが提供されている。熱間成形工程は、アルミニウム‐シリコンコーティングを有するUHSSから形成されるブランクをオーステナイト化温度よりも加熱するステップ、及び多段階装置内で加熱されたブランクを成形するステップを含む。このUHSSは気硬性鋼である。
【0047】
一部の実施例において、UHSSは非気硬性鋼であってもよい。非気硬性鋼は、オーステナイトをマルテンサイトに変えるため、急冷される必要がある。これらの鋼は、非強制空冷によって室温まで冷却するように放置することにより、完全に硬まることができない。オーステナイトをマルテンサイトに変えるため、空冷速度よりも大きな冷却速度が要求され得る。例えば、非気硬性鋼は、オーステナイトをマルテンサイトに完全に変えるため、25℃/秒よりも大きな臨界冷却速度を要求する。本明細書において、臨界冷却速度は、最も遅い冷却速度として理解される。この最も遅い冷却速度で、完全なマルテンサイト構造が形成される。
【0048】
一部の実施例において、非気硬性鋼は22MnB5鋼であってもよい。Usibor(登録商標)1500Pは22MnB5鋼の例である。Usibor(登録商標)の組成は以下の重量割合でまとめられる。(残りは鉄(Fe)と不可避の不純物である。)
【0049】
【0050】
熱間鍛造ダイクエンチ工程の後、Usibor(登録商標)1500Pは、例えば1100MPaの降伏強度、及び1500MPaの最大引張強度を有してもよい。
【0051】
Usibor(登録商標)2000は、より大きな強度を有する別のボロン鋼である。熱間鍛造ダイクエンチ工程の後、Usibor(登録商標)2000の降伏強度は1400MPaでもよい。また、最大引張強度は1800MPaより大きくてもよい。Usibor(登録商標)2000の組成は、重量に対して最大0.37%の炭素、最大1.4%のマンガン、最大0.7%のシリコン、及び最大0.005%のホウ素を含む。
【0052】
別の態様において、熱間成形工程は、アルミニウム‐シリコンコーティングを有するUHSSから形成されるブランクをオーステナイト化温度よりも加熱するステップ、及び多段階装置内で加熱されたブランクを成形するステップを含む。このUHSSは非気硬性鋼である。ブランクは、すべての量のオーステナイトをマルテンサイトに完全に変えるために十分でない冷却速度で冷却され得る。すなわち、この冷却速度は、少なくとも工程の一部の間、鋼の臨界冷却速度よりも小さい。非気硬性鋼を用いることにより、成形工程の終了時、鋼の微細構造は完全にマルテンサイトにならない。したがって、この鋼は、ベイナイトの大きな割合を有する。それに応じて、この工程を用いることで熱間成形されたブランクにより得られる強度、例えば引張強度及び/又は降伏強度は、熱間成形されたブランクが完全に硬くなる場合よりも小さくなる。これらの製品の強度は、冷却速度が臨界冷却速度より大きい工程よりも少し小さい。これらの製品のサイクルタイムは削減され得る。また、所望の強度と剛性の要求を有する構成要素が得られてもよい。
【0053】
別の態様において、構造部品を熱間成形するための方法が提供されている。この方法は、アルミニウム‐シリコンコーティングで覆われている超高強度鋼(UHSS)から形成されるブランクを供給するステップと、オーステナイト化温度よりもブランクを加熱するステップと、冷却ツールでブランクを冷却するステップと、ブランクを冷却ツールからプレスツールに移送して、プレスツールでブランクを絞り加工するステップとを備える。この態様において、冷却ツールとプレスツールは多段階装置に統合されている。
【0054】
一部の実施例において、UHSSが非気硬性鋼であるとき、多段階装置における熱間成形の後、非気硬性鋼の降伏強度は500~1600MPaの範囲であってもよい。また、非気硬性鋼の最大引張強度は1000~2000MPaの範囲であってもよい。一部の実施例において、多段階装置における熱間成形の後、非気硬性鋼の降伏強度は700~1400MPaの範囲であってもよい。また、非気硬性鋼の最大引張強度は1200~1800MPaの範囲であってもよい。有利な実施例において、多段階装置における熱間成形の後、非気硬性鋼の降伏強度は900~1100MPaの範囲であってもよい。また、非気硬性鋼の最大引張強度は1400~1600MPaの範囲であってもよい。
【0055】
一部の実施例において、非気硬性鋼のUHSSは、0.20~0.50%、好ましくは0.30~0.40%のC、0.10~0.70%のSi、0.65~1.60%のMn、0.001~0.005%のBの重量割合を備えてもよい。また、非気硬性鋼のUHSSは、最大0.025%のP、最大0.01%のS、最大0.80%、好ましくは最大0.35%のCr、及び最大0.040%のTiの重量割合を備えてもよい。
【0056】
別の態様において、本発明に開示されているいずれかの方法又は使用法により得られる構成要素が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
本発明の非限定的な実施例が、添付された図面を参照して以下に説明される。
【
図1】
図1は、1つの実施例に係る多段階プレスシステムを示す。
【
図2a】
図2aは、多段階工程の実施例を実行する間に起こる状況の順序を示す。
【
図2b】
図2bは、多段階工程の実施例を実行する間に起こる状況の順序を示す。
【
図2c】
図2cは、多段階工程の実施例を実行する間に起こる状況の順序を示す。
【
図2d】
図2dは、多段階工程の実施例を実行する間に起こる状況の順序を示す。
【
図2e】
図2eは、多段階工程の実施例を実行する間に起こる状況の順序を示す。
【
図2f】
図2fは、多段階工程の実施例を実行する間に起こる状況の順序を示す。
【
図2g】
図2gは、多段階工程の実施例を実行する間に起こる状況の順序を示す。
【
図2h】
図2hは、多段階工程の実施例を実行する間に起こる状況の順序を示す。
【
図2i】
図2iは、多段階工程の実施例を実行する間に起こる状況の順序を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
図1は、1つの実施例に係る多段階プレスシステムを示す。システム1は、固定された下部ボディ2、可動する上部ボディ3、及び固定された下部ボディ2に関して可動する上部ボディ3の上方及び下方プレス進行をもたらすように構成されている機構(図示せず)を備える。
【0059】
固定された下部ボディ2は大きな金属のブロックであってもよい。この所定の実施例において、固定された下部ボディ2は静止していてもよい。一部の実施例において、固定された下部ボディ2に統合された型のクッション(図示せず)が設けられてもよい。このクッションは、ブランクホルダの力を受け、且つ制御するように構成されてもよい。また、可動する上部ボディ3は、金属の固体片であってもよく、ストロークサイクル(上昇と下降)をもたらし得る。
【0060】
プレスシステムは、例えば1分間に約30ストロークを行うように構成されてもよい。したがって、そのようなストロークサイクルは約2秒となってもよい。別の実施例において、ストロークサイクルは異なってもよい。多段階プレスシステムにおいて、ブランクに成形されるすべての工程は同じサイクルタイムを有する必要がある。
【0061】
プレスの機構は、機械式、液圧式、又はサーボ機構式に動作され得る。固定された下部ボディ2に関して可動する上部ボディ3の進行は、機構によって決まり得る。この所定の実施例において、プレスはサーボ機構式プレスであってもよい。したがって、ストロークの間、一定のプレス力が与えられ得る。サーボ機構式プレスは無限スライド(ラム)速度と位置の制御を備えてもよい。サーボ機構式プレスはまた、いずれかのスライド位置において、プレス力の有効性の良好な範囲を備えてもよい。したがって、プレスの大きな適用性が得られてもよい。サーボ駆動プレスは、金属成形において、作業条件と生産性を向上させるための機能を有する。プレスは、例えば2000Tnのプレス力を有してもよい。
【0062】
一部の実施例において、プレスは機械式プレスであってもよい。したがって、固定された下部ボディ2に向かうプレス力の進行は、駆動システムとヒンジシステムに応じ得る。機械式プレスは、単位時間当たりのより大きなサイクルに到達し得る。代替として、液圧式プレスも用いられ得る。
【0063】
図1において、予め加熱されたブランクを予め冷却するために構成されている冷却ツール10を示す。冷却ツール10は、対となる上部型11と下部型12を備えてもよい。それぞれの型は、使用時、熱間成形されるブランク(図示せず)に対向する上部ワーク面15と下部ワーク面16を備える。
【0064】
この実施例において、下部型12は、下部ボディ2から予め決められた第1距離にある位置に下部型12を偏らせるために構成されている第1下部バイアス用要素13と第2下部バイアス用要素14を有する下部ボディ2に接続している。一部の実施例において、単一の下部バイアス用要素が設けられてもよい。または、複数の下部バイアス用要素が設けられてもよい。このバイアス用要素は、例としてばね、例えば機械式ばね又はガススプリングを備えてもよい。一方、他の一部のバイアス用要素は、例えば液圧式機構であってもよい。
【0065】
他の一部の実施例において、上部型11はまた、上部ボディから予め決められた第2距離にある位置に上部型を偏らせるために構成されている1つ以上の上部バイアス用要素を有する上部ボディ3に接続されてもよい。
【0066】
上部バイアス用要素及び/又は下部バイアス用要素を挿入することにより、上部型11と下部型12の間の接触時間は、ストロークサイクル(下部ボディ2に関して可動する上部ボディ3の上昇と下降)の間、調整され、増加し得る。
【0067】
冷却ツール内のバイアス用要素により、上部冷却型と下部冷却型の間の接触は、成形ツール(及び下流に配置されている別のツール)のプレス型の接触の前に生じ得る。したがって、ストロークサイクルの間、冷却型の間の接触時間は、増加又は減少して、より大きな又は小さな冷却を可能にする。
【0068】
そのようなバイアス用要素を用いることにより、冷却ツールは、同じ装置に統合された他のツールと異なるサイクルタイムを有してもよい。これは、欧州登録特許3067128号に詳細に説明されている。一方、本発明の範囲において、バイアス用要素を用いることは単に選択的である。ブランクの鋼とブランクのコーティングに応じて、バイアス用要素は不要でもよい。
【0069】
対となる上部型11と下部型12は、導管(図示せず)を備えてもよい。冷却流体、例えば水及び/又は冷却圧縮空気が、型内に設けられているこの導管を通る。
【0070】
また、冷却ツール10は、型の温度を制御するため、1つ以上の電気加熱器又は温液を伝える導管、及び温度センサを備えてもよい。高温で動作するように型を構成するための他の代替も、例えば組み込み式カートリッジ加熱器が見込まれ得る。これにより、異なる厚み、すなわち非常に薄いブランクを用いて行うことができる。非常に薄いブランクは著しく速く冷却され得る。したがって、冷却ツールの適用性は向上し得る。センサは熱電対であってもよい。
【0071】
さらに、対となる上部型11及び/又は下部型12は冷却プレート(図示せず)を備えてもよい。この冷却プレートは、上部ワーク面15及び/又は下部ワーク面16と反対側の表面に配置され、それぞれの型に対応して配置されている冷却システムを備えてもよい。冷却システムは、冷却ツールの加熱を防ぐ、又は少なくとも減少させる、若しくは冷却ツールに追加の冷却を与えるため、冷却水又は他の冷却流体の循環に対する冷却導管を備えてもよい。
【0072】
実施例において、冷却ツールは、センタリング要素、例えばピン及び/又はガイド装置を備えてもよい。
【0073】
ブランクを成形又は絞り加工するように構成されているプレスツール20はまた、同じプレス装置に統合されている。プレスツール20は、冷却ツール10より下流に配置されている。プレスツール20は、対となる上部型21と下部型22を備える。
【0074】
上部型21は、使用時、熱間成形されるブランクに対向する上部ワーク面23を備えてもよい。下部型22は、使用時、熱間成形されるブランクに対向する下部ワーク面24を備えてもよい。上部ワーク面23と反対側の上部型の側面は上部ボディ3に取り付けられ得る。また、下部ワーク面22と反対側の下部型の側面は下部ボディ2に取り付けられ得る。
【0075】
対となる上部型21と下部型22は、導管を備えてもよい。冷却流体、例えば水及び/又は冷却空気が、型内に設けられているこの導管を通る。水の導管において、導管における水の循環速度は大きくてもよい。したがって、水の蒸発が防がれ得る。また、温度測定に基づいて流体温度及び流速を制御し得る制御システムが設けられてもよい。したがって、型の温度は制御され得る。
【0076】
実施例において、プレスシステム20は、ブランクを保持して、下部型22に配置するように構成されているブランクホルダ25を備えてもよい。ブランクホルダはまた、例えば、下部型22から予め決められた距離にある位置にブランクホルダを偏らせるばねを備えてもよい。
【0077】
この実施例において、トリミング及び/又は貫通工程を行うように構成されている第1後工程ツール30が多段プレス装置に設けられている。他の実施例において、後工程ツールが多段プレス装置に統合されないことは明らかである。
【0078】
第1後工程ツール30はプレスツール20の下流に配置されている。第1後工程ツール30は、対となる上部型32と下部型31を備える。対となる上部型32は上部ワーク面33を備えてもよい。対となる下部型31は下部ワーク面34を備えてもよい。両方のワーク面が、使用時、ブランクに対向する。
【0079】
上部ワーク面33と反対側の上部型32の側面は上部ボディ3に取り付けられ得る。また、下部ワーク面34と反対側の下部型31の側面は下部ボディ2に取り付けられ得る。型は、ワーク面に配置されている1つ以上の刃又は切刃(図示せず)を備えてもよい。
【0080】
また、第1後工程ツール30は、型の温度を制御するため、1つ以上の電気加熱器又は温液を伝える導管、及び温度センサを備えてもよい。センサは熱電対であってもよい。一部の実施例において、使用時、上部型と下部型の間に配置されているブランクの温度を好ましい温度に、又はその温度の近傍に、例えば200℃以上に保つことが好ましい。好ましい温度は、使用される鋼に応じ得る。一般的に、ツールを損傷することなく、後工程が行われ得る最小温度が決まり得る。
【0081】
一部の実施例において、対となる上部型32と下部型31は、導管を備えてもよい。冷却流体、例えば水及び/又は冷却空気が、型内に設けられているこの導管を通る。
【0082】
実施例において、第1後工程ツール30は、ブランクを保持して、下部型31に配置するように構成されているブランクホルダ(図示せず)を備えてもよい。ブランクホルダはまた、例えば、下部型から予め決められた距離にある位置にブランクホルダを偏らせるように構成されている1つ以上のバイアス用要素を備えてもよい。
【0083】
この実施例において、第2後工程ツール40が設けられてもよい。第2後工程ツール40は、トリミング及び/又は貫通工程を行うように構成され得る。この実施例において、第2後工程ツールはまた、ブランクのキャリブレーションのために構成されている。第2後工程ツール40は第1後工程ツール30より下流に配置されている。第2後工程ツール40は上部型42と下部型41を備える。上部型42は上部ワーク面43を備えてもよい。また、下部型41は下部ワーク面44を備えてもよい。両方のワーク面が、使用時、熱間成形されるブランクに対向し得る。ワーク面は一様でなくてもよい。例えば、ワーク面は、隆起部又は凹部を備えてもよい。
【0084】
プレスツール40の型は、熱間成形されるブランクと異なる温度を有してもよい。したがって、熱膨張が考慮され得る。例えば、型は、バランスを保つため、熱間成形されるブランクよりも2%長く、及び/又は広くてもよい。
【0085】
ワーク面43と反対側の上部型42の側面は上部ボディ3に取り付けられ得る。ワーク面44と反対側の下部型41の側面は下部ボディ2に取り付けられる。
【0086】
型は、ワーク面に配置されている1つ以上の刃又は切刃を備えてもよい。
【0087】
一部の実施例において、上部型42と下部型41の間の距離を調整するために構成されている調整装置が設けられ得る。このように、上部型42と下部型41の間に配置されているブランクは、使用時、上部型と下部型のそれぞれのワーク面に沿って変形し得る。
【0088】
変形(及びブランクのキャリブレーション)のため、上部型42と下部型41の間の距離の調整が行われると、熱間成形されたブランクの公差が改善され得る。一部の実施例において、熱間成形されるブランクは、最適化されていない厚み、例えばブランクの一部における他の部分よりも大きな厚みを含む領域を有してもよい。したがって、この厚みは最適化される必要がある。
【0089】
一様でないワーク面のこの構成のため、ワーク面の選択された部分における距離(例えばブランクにおける半径の近傍)が、最適化されていない厚みを含む領域で、又はこの領域の近傍で調整され得る。したがって、材料は変形され得る、すなわち最適化されていない厚みを含む領域に隣接する範囲に導かれる。したがって、ブランクに沿った一定の厚みが得られてもよい。
【0090】
実施例において、調整装置は、ブランクの厚みを検出するために構成されているセンサシステムに基づいて制御され得る。
【0091】
一部の実施例において、第2後工程ツール40は、ブランクを保持して、下部型41に配置するように構成されているブランクホルダ(図示せず)を備えてもよい。
【0092】
別の実施例において、より高温又はより低温で動作するようにツールの型を構成する他の方法も見込まれ得る。
【0093】
図が、実質的に正方形又は長方形を有する型を示す一方、ブロックは他の形状を有してもよく、また部分的に円形状を有してもよいことが分かる。
【0094】
また、自動移送装置(図示せず)、例えば複数の工業ロボット又はコンベヤが、ツールの間でブランクの移送を行うため、設けられ得る。
【0095】
すべての実施例において、温度センサと制御システムが、温度を制御するため、いずれかのツール又は移送システムに設けられ得る。ツールはまた、別の冷却システム、又はブランクホルダなどを備えてもよい。
【0096】
図2a~2iは、
図1に示す多段階装置に基づいて、多段階工程の実施例を実行する間に起こる状況の順序を示す。
【0097】
簡単のため、角度の参照は、
図2a(及び別の図)に関する記述に含まれることがある。角度の参照は、下部ボディに関する上部ボディの近似位置を示すため、用いられ得る。したがって、例えば、上部ボディが、下部ボディに関して最も高い位置にあることを示す0°の位置にあること、及び下部ボディに関して最も低い位置(完全接触位置)にあることを示す180°の位置にあることが参照され得る。360°は、上部ボディが最も高い位置にあることを再び示す。
【0098】
図2aにおいて、AlSi(アルミニウム‐シリコン)コーティングを有する超高強度鋼(UHSS)から形成されて、熱間成形されるブランク100が供給され得る。AlSiコーティングは、特にブランクの加熱中、腐食を防ぐ。一部の実施例において、気硬性鋼が用いられ得る。一部の実施例において、UHSSは、0.20~0.25%のC、0.75~1.5%のSi、及び1.50~2.50%のMnを含んでもよい。この割合は重量により表される。好ましい実施形態において、UHSSは、0.21~0.25%のC、1.05~1.33%のSi、及び2.06~2.34%のMnを含んでもよい。さらに好ましくは、UHSSは、例えば約0.22%のC、1.2%のSi、及び2.2%のMnを含んでもよい。SiとMnの量により、室温における空気でブランクを硬くすることができる。したがって、焼き入れが避けられる。(また、ブランク製造プレス時間も減少し得る。)さらに、焼き入れ段階のための追加冷却の型が、冷却中、閉じたままでないため、プレスのストロークサイクルも減少し得る。材料はまた、Mn、Al、Ti、B、P、S、Nを異なる割合で備えてもよい。
【0099】
異なる鋼の組成が用いられてもよい。特に、欧州公開特許2735620号に記載されている鋼の組成が適切であるとみなされてもよい。特に、欧州公開特許2735620号の表1、及び段落0016~0021が参照される。また、段落0067~0079も考慮される。代替として、非気硬性鋼が用いられ得る。
【0100】
超高強度鋼(UHSS)は、Ac3変態点(「Ac3点」と後述されるオーステナイト変態点)を850~900℃の間に有してもよい。例えば、上記鋼の組成に対して、Ac3は860℃の範囲にあってもよい。Ms変態点(「Ms点」と後述されるマルテンサイト開始温度)は380~390℃の範囲にあってもよい。上記鋼の組成に対して、Msは約386℃であってもよい。Mf変態点(「Mf点」と後述されるマルテンサイト終了温度)は270℃又は270℃の近傍である。
【0101】
ブランク100は、少なくともオーステナイト化温度に到達するため、加熱され得る。加熱は、加熱装置(図示せず)、例えば炉内で行われ得る。到達する最大温度は、コーティングが蒸発しないことを確実にするため、コーティングにより決まり得る。したがって、加熱はAc3と最大許容温度の間で行われ得る。加熱されるための時間は、数分でもよい一方、例えばブランクの厚みに応じる。
【0102】
ブランク100は、所望の温度まで加熱されると、冷却ツール10に移送され得る。これは、自動移送装置(図示せず)、例えば複数の工業ロボット又はコンベヤにより行われ得る。炉(図示せず)と冷却ツール10の間でブランクを移送するための時間は2~3秒であってもよい。
【0103】
一部の実施例において、センタリング要素、例えばピン及び/又はガイド装置は、冷却ツールの上流に設けられてもよい。したがって、ブランクは適切に中心に置かれ得る。
【0104】
プレス上部ボディ3は、プレス機構を用いて、開放位置(0°の位置)に配置され得る。ブランク100は上部型11と下部型12の間に配置され得る。一部の実施例において、ブランクはブランクホルダに配置され得る。下部型12は、第1下部バイアス用要素13と第2下部バイアス用要素14を用いて、下部ボディ2に関して、予め決められた距離を移動され得る。
【0105】
上述のように、このバイアス用要素は、例としてばね、例えば機械式ばね又はガススプリングを備えてもよい。一方、他の一部のバイアス用要素は、例えば液圧式機構であってもよい。液圧式機構は受動機構又は能動機構でもよい。
【0106】
このように、下部型12(及び下部型12に配置されるブランク100)は、下部ボディ2から第1の予め決められた位置(下部型が90~150°の間で上部型に触れる位置)に配置され得る。
【0107】
図2bにおいて、プレスが、固定された下部ボディに関して可動する上部ボディの下方プレス進行を行う状況を示す。したがって、上部型11は下部型12(及び下部型に配置されているブランク)に向けて動く。冷却ツールの型はブランクを押し付けて冷却する。
【0108】
最終的な所望の位置(180°の位置)に達すると、プレス機構により、上部ボディの上方プレス進行が行われ得る。第1下部バイアス用要素13と第2下部バイアス用要素14は、初期位置に戻る、すなわち伸び得る。
【0109】
ブランク100が例えば870~910℃に予め加熱され得ることが上述されている。ブランクは冷却ツール10に移送され得る。したがって、移送時間中、温度は750~850℃に減少され得る。この構成のため、ブランク100は750~850℃の温度で冷却ツール10に配置され得る。この実施例のブランクは、冷却ツール内で、650~700℃の温度まで冷却され得る。したがって、マルテンサイト微細構造を得るために必要な冷却の一部は、ブランクの実際の絞り加工の間よりも冷却ツール内で既に行われてもよい。したがって、この工程における次のステップ、すなわち絞り加工は、一部の場合、短縮され、より短縮されたサイクルタイムと増加した出力をもたらす。
【0110】
多段プレス装置1に統合された冷却ツール10により、ブランクを冷却するための時間が最適化され得る。外部冷却ツールからブランクを移送するための追加の動きが避けられ得る。これはまた、時間の節約になり得る。また、ツールの間のブランクの動きが制限され得る。したがって、冷却速度は容易に制御される。
【0111】
図2cにおいて、ブランク100は冷却工程を既に受けている。したがって、ブランク100は、冷却ツール10からプレスツール20に移送される状態にあってもよい。移送は、自動移送装置(図示せず)、例えば複数の工業ロボット又はコンベヤにより行われ得る。上述のように、ブランクは、650~700℃の温度、又はその近傍の温度で移送され得る。移送時間により、ブランク100は、絞り加工が始まる前、550~650℃まで冷却され得る。ブランク100は、移送装置により、ブランクホルダを用いる下部型22に配置され得る。
【0112】
移送装置が同じプレスシステムに統合されているため、移送時間は小さい。また、温度制御がより好ましい。
【0113】
ブランク100が移送されて、下部型22に位置する間、自動移送システムは、ブランク200を冷却ツール10に供給するように動作され得る。結果として、冷却ツール10は、ブランクを冷却するため、動作を開始し得る。この動作は、上述のように行われ得る。また、この動作は、プレスツール20の動作と同時に行われ得る。
【0114】
このように、プレス上部ボディ3は、プレス機構を用いて、開放位置(0°の位置)に配置され得る。ブランク100はプレスツール上部型21とプレスツール下部型22の間に配置され得る。
【0115】
図2dにおいて、下方プレス進行が完了する。また、ブランク100の絞り加工及びブランク200の冷却が行われる。上方プレス進行が与えられ得る。成形ツールの上部型のワーク面とブランクの最後の完全な接触(及び絞り加工の動作の最後)は例えば180~210°の位置であってもよい。
【0116】
ブランク100の温度は、用いられた鋼の種類に応じて、Ms又はMf未満の温度に達するまで減少し得る。例えば、欧州公開特許2735620号に開示されているUHSSの構成に対して、適切な温度は約300℃であってもよい。プレスツールは冷却システムを備えてもよい。冷却システムはコントローラにより制御され得る。したがって、ブランク100の温度は、減少し、所望の温度に保たれ得る。
【0117】
図2eにおいて、ブランク100はまた、既に絞り加工されていてもよい。したがって、ブランク100は、プレスツール20から第1後工程ツール30、例えば貫通又はトリミング工程ツールに移送される状態にある。移送は、自動移送装置(図示せず)、例えば複数の工業ロボット又はコンベヤにより行われ得る。上述のように、ブランク100は、プレスツール20から離れ、300℃の温度、又はその近傍の温度で移送され得る。移送時間により、ブランク100は、280℃の温度、又はその近傍の温度まで冷却され、この温度で、第1後工程ツールに配置され得る。ブランク100は、下部型31と上部型32の間で下部型31に配置され得る。
【0118】
図2eにおいて、ブランク100が移送され、下部型31に配置されるとき、自動移送システムは、ブランク200をプレスツール20に配置するように、またブランク300を冷却ツール10に配置するように作動され得る。結果として、冷却ツール10は、上述のようにブランク300をプレスし、冷却するため、動作を開始し得る。同時に、プレスツール20は、上述のようにブランク300を絞り加工し、冷却するため、動作を開始し得る。
【0119】
このように、プレス上部ボディ32は、プレス機構を用いて、開放位置(0°の位置)に配置され得る。プレス1は、固定された下部ボディ2に関して可動する上部ボディ3の下方プレス進行を備えてもよい。したがって、上部型32は下部型31に向けて動き得る。
【0120】
図2fにおいて、上部型32は、下方プレス進行の間、プレスツール上部型32とプレスツール下部型31の間に配置されているブランク100に接触し得る。
【0121】
プレスがブランク100と接触する間、貫通工程が切刃又は他の一部の切断要素を用いて行われ得る。貫通工程が終了すると、トリミング工程が行われ得る。代替の実施例において、トリミング工程が初めに行われてもよい。また、このトリミング工程が終了すると、貫通工程が行われ得る。
【0122】
ブランク100は、後工程を受ける間、上記加熱装置を用いることにより加熱され得る。ツールを損傷させることがないように、鋼は硬すぎてはならない。したがって、最小温度が配慮されなければならない。
【0123】
180°の位置に到達した後、上方プレス進行が与えられ得る。上部型32のワーク面とブランク100の最後の完全な接触(及び後工程の最後)は例えば180~210°の位置であってもよい。
【0124】
図2g~2hは、次のステップを示す。図において、ブランク100は第2後工程ツールに配置される。また、別のブランク400が冷却ツールに配置される。
【0125】
図2gにおいて、ブランク100は、第1後工程ツール30から第2後工程ツール40、例えば貫通、トリミング、及びキャリブレーションツールに移送され得る。移送は、自動移送装置(図示せず)、例えば複数の工業ロボット又はコンベヤにより行われ得る。上述のように、ブランク100は、第1後工程ツール30から離れ、200℃の温度、又はその近傍の温度で移送され得る。
【0126】
プレスがブランク100と接触する間、貫通工程、又はトリミング工程、及び/又はキャリブレーション工程が行われ得る。キャリブレーションが、ブランクの公差を改善するため、行われ得る。
【0127】
この場合、上部型42と下部型41の間の距離は、調整装置を用いて調整され得る。調整装置は、ブランク100の厚みを検出するために構成されているセンサシステム(図示せず)に基づいて制御され得る。実施例の後、ブランクは、上部型42と下部型41によりプレスされ得る。したがって、ブランクの一定の厚みが得られてもよい。
【0128】
第2後工程ツールの動作が終わると、ブランク100が移送されて、室温まで冷却されるように放置される。
【0129】
上方の動作を与えることにより、プレスが開放位置(0°の位置)に達すると、ブランク100は移送され、室温で硬くなり得る。同時に、自動移送システムは、新しいブランクを冷却ツール10に、ブランク200を第2後工程ツール40に、ブランク300を第1後工程ツール30に、及びブランク400をプレスツール20に供給するように作動され得る。
図2iに示すように、結果として、すべてのツールは、上述のように、工程を開始し得る。
【0130】
一部の実施例において、ブランク100の形状に応じて、別の絞り加工及び他の工程、例えば貫通及び/又はトリミングが設けられ得る。別の実施例において、後工程の順序(例えば、第1の切断、キャリブレーション、又はその逆)が交換され得る。
【0131】
他の実施例において、多段階装置は、上述の実施例の内の2つツールだけを有してもよい。例えば、多段階装置は冷却ツールと成形ツールを有してもよい。冷却ツールと成形ツールは、上述の実施例と実質的に類似し得る。他の実施例において、多段階装置は、成形ツールと切断ツールを有してもよい。さらに別の実施例において、多段階装置は、冷却ツール、成形ツール、及び後工程ツールを有してもよい。
【0132】
これらすべての実施例において、(Znコーティングではなく、)AlSiコーティングを有するUHSS鋼基板の使用は、亜鉛酸化物を取り除くためのショットブラスト又は同様の工程が避けられるため、工程のステップの数が減少し得ることを示す。これにより、効率とコスト削減をもたらし得る。
【0133】
多段階装置に統合される事前冷却ツールは、温度制御が向上し得ること、及びステップのサイクルタイムが減少し得ることを示す。
【0134】
完全性のため、本発明の様々な態様を以下の番号付きの条項に示す。
【0135】
[第1項]
多段階装置において構造部品システムを熱間成形するための方法であって、
前記多段階装置は、
下部ボディと、
可動する上部ボディと、
前記下部ボディに関して、可動する前記上部ボディの上方及び下方プレス進行をもたらすように構成されている機構と、
ブランクを絞り加工するように構成されているプレスツールとを備えており、
前記プレスツールは、対となる上部プレス型と下部プレス型を備えており、
それぞれの前記プレス型は、使用時、前記ブランクに対向する1つ以上のワーク面を備えており、
前記上部プレス型は前記上部ボディに接続しており、
前記下部プレス型は前記下部ボディに接続しており、
前記多段階装置は、使用時、前記ブランクに対向する1つ以上のワーク面を有する上部型と下部型とを含む追加ツールを備えており、
前記追加ツールの前記下部型は前記下部ボディに接続しており、
前記追加ツールの前記上部型は前記上部ボディに接続しており、
前記方法は、
アルミニウム‐シリコンコーティングで覆われている超高強度鋼(UHSS)から形成されるブランクを供給するステップと、
オーステナイト化温度よりも前記ブランクを加熱するステップと、
加熱された前記ブランクを前記プレスツールで絞り加工して、前記プレスツールと前記追加ツールの間で前記ブランクを移送するステップとを備える、ことを特徴とする方法。
【0136】
[第2項]
前記追加ツールは、成形ツールよりも上流に配置されている冷却ツールであり、
前記方法は、完全に加熱された前記ブランクを冷却するステップを備える、第1項に記載の方法。
【0137】
[第3項]
前記冷却ツールの前記上部型と前記下部型は、冷却水を伝える導管を備える、第2項に記載の方法。
【0138】
[第4項]
前記冷却ツールの前記上部型と前記下部型は、空気を伝える導管を備える、第2項に記載の方法。
【0139】
[第5項]
前記オーステナイト化温度はAc3温度であり、
完全に加熱された前記ブランクを冷却するステップは、600~800℃、特に650~700℃の温度まで前記ブランクを冷却することを備える、第2項から第4項のいずれかに記載の方法。
【0140】
[第6項]
前記ブランクは50~300℃/秒の速度で冷却される、第5項に記載の方法。
【0141】
[第7項]
絞り加工前の前記成形ツール内の前記ブランクの温度は550~650℃の範囲である、第5項又は第6項に記載の方法。
【0142】
[第8項]
前記追加ツールは、成形ツールよりも上流に配置されている加熱ツールであり、
前記オーステナイト化温度よりも前記ブランクを加熱するステップは、炉内で前記ブランクを第1温度まで加熱すること、及び前記加熱ツール内で前記ブランクを前記第1温度から第2温度まで加熱することを備える、第1項に記載の方法。
【0143】
[第9項]
前記UHSSは、0.20~0.25%のC、0.75~1.5%のSi、及び1.50~2.50%のMn、好ましくは0.21~0.25%のC、1.05~1.33%のSi、及び2.06~2.34%のMnの重量割合を備える、第1項から第8項のいずれかに記載の方法。
【0144】
[第10項]
前記UHSSは、約0.22%のC、1.2%のSi、2.2%のMnを備える、第9項に記載の方法。
【0145】
[第11項]
前記UHSSはまた、Mn、Al、Ti、B、P、S、Nを備える、第9項又は第10項に記載の方法。
【0146】
[第12項]
前記UHSSは、0.17~0.23%のC、最大0.5%のSi、最大2.5%のMn、最大0.05%のCr、及び0.002~0.005%のBの重量割合を備える、第1項から第8項のいずれかに記載の方法。
【0147】
[第13項]
前記UHSSはまた、Al、Ti、P、及びMoを備える、第12項に記載の方法。
【0148】
[第14項]
前記UHSSは気硬性UHSSである、第1項から第8項のいずれかに記載の方法。
【0149】
[第15項]
前記UHSSは、0.20~0.5%のC、好ましくは0.30~0.40%のC、0.10~0.70%のSi、0.65~1.60%のMn、及び0.001~0.005%のBの重量割合を備える、第1項から第8項のいずれかに記載の方法。
【0150】
[第16項]
前記UHSSは非気硬性UHSSである、第1項から第8項のいずれかに記載の方法。
【0151】
[第17項]
前記多段階装置は前記プレスツールより下流の第1後工程ツールを備えており、
前記第1後工程ツールは、使用時、前記ブランクに対向する1つ以上のワーク面を有する上部第1後工程型と下部第1後工程型を備えており、
前記下部第1後工程型は前記下部ボディに接続しており、
前記上部第1後工程型は前記上部ボディに接続している、第1項から第16項のいずれかに記載の方法。
【0152】
[第18項]
前記第1後工程ツールは、第1後工程の間、前記ブランクの温度を制御するための温度制御システムを備えており、
前記温度制御システムは、前記上部第1後工程型と前記下部第1後工程型内に熱電対を任意で含む、第17項に記載の方法。
【0153】
[第19項]
前記第1後工程ツールの前記上部第1後工程型と前記下部第1後工程型は、冷却水又は冷却用空気を伝える導管を備える、第18項に記載の方法。
【0154】
[第20項]
前記第1後工程ツールの前記上部第1後工程型と前記下部第1後工程型は、1つ以上の加熱器又は温液を伝える導管を備える、第18項又は第19項に記載の方法。
【0155】
[第21項]
前記多段階装置はまた、前記第1後工程ツールより下流の第2後工程ツールを備えており、
前記第2後工程ツールは、使用時、前記ブランクに対向する1つ以上のワーク面を有する上部第2後工程型と下部第2後工程型を備えており、
前記下部第2後工程型は前記下部ボディに接続しており、
前記上部第2後工程型は前記上部ボディに接続している、第17項から第20項のいずれかに記載の方法。
【0156】
[第22項]
前記第2後工程ツールは、第2後工程の間、前記ブランクの温度を制御するための温度制御システムを備えており、
前記温度制御システムは、前記上部第2後工程型と前記下部第2後工程型内に熱電対を任意で含む、第21項に記載の方法。
【0157】
[第23項]
前記第2後工程ツールの前記上部第2後工程型と前記下部第2後工程型は、冷却水又は冷却用空気を伝える導管、及び/又は1つ以上の加熱器若しくは温液を伝える導管を備える、第22項に記載の方法。
【0158】
[第24項]
前記プレスツールの前記上部プレス型と前記下部プレス型は、冷却水を伝える導管、及び/又は空気を伝える導管を備える、第1項から第23項のいずれかに記載の方法。
【0159】
[第25項]
前記ブランクは、860~910℃のオーステナイト化温度まで加熱される、第1項から第24項のいずれかに記載の方法。
【0160】
[第26項]
成形中、前記ブランクを冷却するステップを備える、第1項から第25項のいずれかに記載の方法。
【0161】
[第27項]
前記ブランクは、成形中、320~280℃の温度まで冷却される、第26項に記載の方法。
【0162】
[第28項]
前記多段階装置から出るときの前記ブランクの温度は200℃未満である、第1項から第27項のいずれかに記載の方法。
【0163】
[第29項]
熱間成形工程における、アルミニウム‐シリコンコーティングを有する超高強度鋼(UHSS)の使用法であって、
前記熱間成形工程は、
アルミニウム‐シリコンコーティングを有するUHSSから形成されるブランクをオーステナイト化温度よりも加熱するステップと、
加熱された前記ブランクを多段階装置内で成形するステップとを含んでおり、
前記多段階装置は、前記多段階装置内で統合されている冷却ツールと成形ツールを備えており、
前記冷却ツールは前記成形ツールよりも上流に配置されている、ことを特徴とする使用法。
【0164】
[第30項]
前記UHSSは気硬性鋼である、第29項に記載の使用法。
【0165】
[第31項]
前記UHSSは、0.21~0.25%のC、1.05~1.33%のSi、及び2.06~2.34%のMnの重量割合を備える、第29項又は第30項に記載の使用法。
【0166】
[第32項]
前記UHSSは、約0.22%のC、1.2%のSi、2.2%のMnを備える、第31項に記載の使用法。
【0167】
[第33項]
前記UHSSはまた、Mn、Al、Ti、B、P、S、Nを備える、第31項又は第32項に記載の使用法。
【0168】
[第34項]
前記UHSSは非気硬性鋼である、第29項に記載の使用法。
【0169】
[第35項]
前記UHSSは、0.20~0.5%のC、好ましくは0.30~0.40%のC、0.10~0.70%のSi、0.65~1.60%のMn、及び0.001~0.005%のBの重量割合を備える、第29項又は第34項に記載の使用法。
【0170】
[第36項]
前記オーステナイト化温度はAc3温度であり、
完全に加熱された前記ブランクは、前記冷却ツール内で、600~800℃、特に650~700℃の温度まで冷却する、第29項から第35項のいずれかに記載の使用法。
【0171】
[第37項]
成形前の前記成形ツール内の前記ブランクの温度は550~650℃の範囲である、第36項に記載の使用法。
【0172】
[第38項]
熱間成形工程における、アルミニウム‐シリコンコーティングを有する超高強度鋼(UHSS)の使用法であって、
前記熱間成形工程は、
アルミニウム‐シリコンコーティングを有するUHSSから形成されるブランクをオーステナイト化温度よりも加熱するステップと、
加熱された前記ブランクを多段階装置内で成形するステップとを含んでおり、
前記多段階装置は、前記多段階装置内で統合されている多段ツールを含んでおり、
前記UHSSは、0.21~0.25%のC、1.05~1.33%のSi、及び2.06~2.34%のMnの重量割合を備える、ことを特徴とする使用法。
【0173】
[第39項]
前記UHSSは、約0.22%のC、1.2%のSi、2.2%のMnを備える、第38項に記載の使用法。
【0174】
[第40項]
前記UHSSはまた、Mn、Al、Ti、B、P、S、Nを備える、第38項又は第39項に記載の使用法。
【0175】
[第41項]
熱間成形工程における、アルミニウム‐シリコンコーティングを有する超高強度鋼(UHSS)の使用法であって、
前記熱間成形工程は、
アルミニウム‐シリコンコーティングを有するUHSSから形成されるブランクをオーステナイト化温度よりも加熱するステップと、
加熱された前記ブランクを多段階装置内で成形するステップとを含んでおり、
前記多段階装置は、前記多段階装置内で統合されている多段ツールを含んでおり、
前記UHSSは、0.20~0.5%のC、好ましくは0.30~0.40%のC、0.10~0.70%のSi、0.65~1.60%のMn、及び0.001~0.005%のBの重量割合を備える、ことを特徴とする使用法。
【0176】
[第42項]
前記多段階装置は、
成形ツールと、
前記成形ツールよりも下流に配置されている1つ以上の後工程ツールとを備える、第38項から第41項のいずれかに記載の使用法。
【0177】
[第43項]
前記多段階装置は、前記成形ツールより上流に配置されている冷却ツールを備える、第42項に記載の使用法。
【0178】
[第44項]
熱間成形工程における、アルミニウム‐シリコンコーティングを有する超高強度鋼(UHSS)の使用法であって、
前記熱間成形工程は、
アルミニウム‐シリコンコーティングを有するUHSSから形成されるブランクをオーステナイト化温度よりも加熱するステップと、
多段階装置内で加熱された前記ブランクを成形するステップとを含んでおり、
前記UHSSは気硬性鋼である、ことを特徴とする使用法。
【0179】
[第45項]
熱間成形工程における、アルミニウム‐シリコンコーティングを有する超高強度鋼(UHSS)の使用法であって、
前記熱間成形工程は、
アルミニウム‐シリコンコーティングを有するUHSSから形成されるブランクをオーステナイト化温度よりも加熱するステップと、
多段階装置内で加熱された前記ブランクを成形するステップとを含んでおり、
前記UHSSは非気硬性鋼である、ことを特徴とする使用法。
【0180】
[第46項]
構造部品を熱間成形するための方法であって、
前記方法は、
アルミニウム‐シリコンコーティングで覆われている超高強度鋼(UHSS)から形成されるブランクを供給するステップと、
オーステナイト化温度よりも前記ブランクを加熱するステップと、
冷却ツールで前記ブランクを冷却するステップと、
前記ブランクを前記冷却ツールからプレスツールに移送するステップと、
前記プレスツールで前記ブランクを絞り加工するステップとを備えており、
前記冷却ツールと前記プレスツールは多段階装置に統合されている、ことを特徴とする方法。
【0181】
[第47項]
第1項から第46項のいずれかに記載の方法又は使用法により得られる構成要素。
【0182】
本明細書において、多くの実施例が開示されている一方、他の代替、修正、使用法、及び/又はこれらの実施例と同等のものでもよい。また、記載されている実施例のすべての可能な組み合わせも適用を受ける。したがって、本発明の範囲は、特定の実施例に限定されるべきではない一方、以下の請求項の公正な解釈により定められるべきである。