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特許7160920強化されたレベルの難消化性デンプンを含むペットフード組成物、およびペットフード組成物を作製する方法
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  • 特許-強化されたレベルの難消化性デンプンを含むペットフード組成物、およびペットフード組成物を作製する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】強化されたレベルの難消化性デンプンを含むペットフード組成物、およびペットフード組成物を作製する方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/30 20160101AFI20221018BHJP
   A23K 40/25 20160101ALI20221018BHJP
   A23K 20/137 20160101ALI20221018BHJP
   A23K 20/111 20160101ALI20221018BHJP
   A23K 50/40 20160101ALI20221018BHJP
【FI】
A23K10/30
A23K40/25
A23K20/137
A23K20/111
A23K50/40
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020530686
(86)(22)【出願日】2017-12-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 US2017064677
(87)【国際公開番号】W WO2019112562
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】502329223
【氏名又は名称】ヒルズ・ペット・ニュートリシャン・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(74)【代理人】
【識別番号】100118647
【弁理士】
【氏名又は名称】赤松 利昭
(74)【代理人】
【識別番号】100123892
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 忠雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169993
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 千裕
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン、マシュー
(72)【発明者】
【氏名】ウォルディー、クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ジュエル、デニス
(72)【発明者】
【氏名】エフライム、エデン
【審査官】赤坂 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-534576(JP,A)
【文献】特開2013-135690(JP,A)
【文献】特表2013-500010(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0275038(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形されたペットフード組成物であって、前記押出成形されたペットフード組成物の総重量に基づいて、約15重量%~約30重量%の量の難消化性デンプンを含み、前記押出成形されたペットフード組成物は、キブルであり、前記難消化性デンプンの供給源が、全粒トウモロコシおよび酒米のうちの少なくとも一つである、押出成形されたペットフード組成物。
【請求項2】
前記難消化性デンプンの量が、前記押出成形されたペットフード組成物の総重量に基づいて、約20重量%~約30重量%の範囲である、請求項1に記載の押出成形されたペットフード組成物。
【請求項3】
前記ペットフード組成物がドッグフードである、請求項1または2に記載の押出成形されたペットフード組成物。
【請求項4】
押出装置を使用して押出成形されたペットフード組成物を作製する方法であって、
押出成形のためのペットフード原材料を提供する工程と、
前記押出装置を使用して前記ペットフード原材料を押し出す工程と、を含み、
前記押出装置の比機械的エネルギーが約25W・h/kg未満であり、および、
前記押出成形されたペットフード組成物が、前記押出成形されたペットフード組成物の総重量に基づいて、15重量%~30重量%の量の難消化性デンプンを含み、前記押出成形されたペットフード組成物は、キブルであり、前記難消化性デンプンの供給源が、全粒トウモロコシおよび酒米のうちの少なくとも一つである、方法。
【請求項5】
前記押出装置の比熱エネルギーが、前記押出装置の比機械的エネルギーよりも大きい、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記押出装置の比機械的エネルギーと前記押出装置の比熱エネルギーとの合計が、60W・h/kg未満であり、
比機械的エネルギーの比熱エネルギーに対する比率が、0.5未満である、請求項またはに記載の方法。
【請求項7】
前記押出装置の比熱エネルギーは、前記押出装置の比機械的エネルギーよりも約四倍大きい、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
動物における心血管疾患、糖尿病性合併症、腎不全、およびガンからなる群から選択される慢性的な変性疾患または腎臓疾患を緩和するための、請求項1~のいずれか一項に記載の押出成形されたペットフード組成物。
【請求項9】
前記押出成形されたペットフード組成物は、前記動物においてN6-カルボキシメチルリシン、N6-カルボキシエチルリシン、およびピラリンのうちの少なくとも一つの量を減少させる、請求項に記載の押出成形されたペットフード組成物。
【請求項10】
前記押出成形されたペットフード組成物は、前記動物においてカルノシンの量を増加させる、請求項またはに記載の押出成形されたペットフード組成物。
【請求項11】
前記押出成形されたペットフード組成物は、前記動物において3-メチルカテコール硫酸の量を減少させる、請求項~1のいずれか一項に記載の押出成形されたペットフード組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ドッグフード組成物およびキャットフード組成物などのペットフード組成物は、それらを摂取するコンパニオンアニマルに健康利益および栄養利益を提供しうる。多くの場合、ペットフード組成物は押出プロセスによって形成され、ここで原材料成分は、望ましい形態を得るための熱および圧力の様々な条件下で押出装置内で押出される。押出プロセスの間、原材料成分は一般に高せん断混合力に晒され、この結果、原材料中のデンプンの分解が生じる。デンプンが分解すると、摂取する動物によってより容易に消化されやすい。
【0002】
デンプンが胃または小腸で吸収または消化されない場合、そのデンプンは難消化性デンプンとして知られている。次に、難消化性デンプンは、大腸内に存在する微生物叢によって消化されうる動物の下部胃腸管に入る。難消化性デンプンは、動物の胃腸管における有害細菌に対する有益細菌の割合の維持または改善など、いくつかの健康利益を有する。したがって、強化されたレベルの難消化性デンプンを含むペットフード組成物、および強化されたレベルの難消化性デンプンを含むペットフード組成物を作製する方法は、コンパニオンアニマルおよびその世話人にとって有益であろう。
【0003】
さらに、動物における老化の一つの主要特徴は、腸内毒素症、有益細菌の割合の低下と胃腸管中の有害細菌の増加、である。この細菌不均衡は、動物の体内での有毒微生物代謝産物の蓄積を引き起こす可能性がある。これは次に、炎症、酸化的ストレス、および様々な疾患につながりうる。したがって、動物の胃腸管における有害細菌に対する有益細菌の割合を維持または改善するペットフード組成物、および有害細菌に対する有益細菌の割合の維持または改善する方法は、老齢または年長動物などの動物にとって有利であろう。
【発明の概要】
【0004】
さらに、押出成形されたペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも約7重量%、例えば約7重量%~約30重量%、少なくとも約10重量%、約7重量%~約20重量%、約9重量%~約13重量%、または約20重量%~約30重量%の量の難消化性デンプンを含む押出成形されたペットフード組成物が本明細書に開示される。特定の実施形態では、押出成形されたペットフード組成物中の難消化性デンプンの供給源は、全粒トウモロコシなどのトウモロコシ、および酒米などのコメのうちの少なくとも一つである。特定の他の実施形態では、押出成形されたペットフード組成物中の難消化性デンプンの単一の供給源は、全粒トウモロコシなどのトウモロコシ、および酒米などのコメのうちの少なくとも一つである。
【0005】
本明細書に開示される特定の実施形態では、押出成形されたペットフード組成物はキブルの形態であってもよく、特定の実施形態では、押出成形されたペットフード組成物は、おやつまたは軽食の形態であってもよい。特定の実施形態によると、押出成形されたペットフード組成物はドッグフードであってもよい。
【0006】
押出成形のためのペットフード原材料を提供すること、および前述のペットフード原材料を押出装置を用いて押し出すことを含む方法によって作製されたペットフード組成物もまた本明細書に開示され、押出装置の比機械的エネルギーおよび比熱エネルギーの合計が、約60未満W・h/kgであり、比機械的エネルギーの比熱エネルギーに対する比率が0.5未満であり、また押出成形されたペットフード組成物が、ペットフード組成物の総重量に基づいて少なくとも約7重量%の量の難消化性デンプンを含む。本明細書に開示される特定の実施形態では、本明細書に開示される方法によって作製されたペットフード組成物は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、約7重量%~約30重量%の範囲、または少なくとも約10重量%、あるいは、ある実施形態では、約7重量%~約20重量%、例えば約9重量%~約13重量%の範囲の量の難消化性デンプンを含む。
【0007】
本明細書に開示される特定の実施形態では、本明細書に開示される方法によって作製されたペットフード組成物は、キブルの形態であってもよく、ある実施形態では、おやつまたは軽食の形態であってもよい。特定の実施形態によれば、本明細書に開示される方法によって作製されたペットフード組成物は、ドッグフードであってもよい。
【0008】
押出成形のためのペットフード原材料を提供すること、およびペットフード原材料を押出装置を用いて押し出すことを含む方法によって作製されたペットフード組成物もまた本明細書に開示され、押出装置の比機械的エネルギーが、約25未満W・h/kgであり、押出成形されたペットフード組成物が、ペットフード組成物の総重量に基づいて少なくとも約7重量%の量の難消化性デンプンを含み、またペットフード組成物を摂取する動物において、N6-カルボキシ 3-メチルリシン、N6-カルボキシ3-エチルリシン、またはピラリンのうちの少なくとも一つの量が減少する。本明細書に開示される方法によって作製されたペットフード組成物の特定の実施形態によれば、カルノシンの量は、ペットフード組成物を摂取する動物において増加し、特定の実施形態では、ペットフード組成物を摂取する動物におけるドーパミン硫酸のレベルが増加する。本明細書に開示される方法によって作製されたペットフード組成物の特定の実施形態によれば、3-メチルカテコール硫酸の量は、ペットフード組成物を摂取する動物で減少する。
【0009】
さらに、ペットフード組成物を動物に投与することを含む、動物の胃腸管でラクトバチルス およびビフィドバクテリウムのうちの少なくとも一つの割合を増加させる方法が、本明細書に開示され、ペットフード組成物が、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも約7重量%、例えば約7重量%~約30重量%、少なくとも約10重量%、約9重量%~約13重量%、または約7重量%~約20重量%の量で難消化性デンプンを含む。特定の実施形態では、ペットフード組成物は、押出成形のためのペットフード原材料を提供すること、および押出装置を使用して前述のペットフード原材料を押出すことを含む方法によって作製され、押出装置の合計比機械的エネルギーが25W・h/kg未満であり、また押出成形されたペットフード組成物は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも約7重量%の量で難消化性デンプンを含み、また動物が1日当たり動物の1kg当たり、少なくとも約2.5gの難消化性デンプンを摂取する。
【0010】
特定の実施形態では、ラクトバチルスおよびビフィドバクテリウムのうちの少なくとも一つの割合を増加させる方法がさらに、動物の胃腸管において、メガモナスの割合を減少させることを含む。特定の実施形態では、動物は年長動物であり、特定の実施形態では動物はイヌである。
【0011】
押出成形のためのペットフード原材料を提供すること、およびペットフード原材料を押出装置を用いて押し出すことを含む、ペットフード組成物を作製する方法もまた本明細書に開示され、押出装置の比機械的エネルギーが、約25W・h/kg未満であり、また押出成形されたペットフード組成物が、ペットフード組成物の総重量に基づいて少なくとも約7重量%の量の難消化性デンプンを含む。
【0012】
本明細書で開示した方法の特定の実施形態によると、難消化性デンプンの量は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、約9重量%~約13重量%の範囲である。特定の開示された実施形態では、押出装置の比熱エネルギーは、押出装置の比機械的エネルギーよりも大きい。特定の実施形態では、押出装置の比熱エネルギーは、押出装置の比機械的エネルギーよりも約四倍大きい。
【0013】
本発明が適用可能であるさらなる領域は、以下に提供される発明を実施するための形態から明らかになるであろう。発明を実施するための形態及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しているものの、例示の目的のみを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、詳細な説明および添付図面からより完全に理解されるであろう。
【0015】
図1】難消化性デンプンの量を増加させて有する低せん断押出条件下で調製された試験食餌のサンプル、および対高せん断押出条件下で調製された対照食餌の相対粘度解析を示すグラフである。試験食餌の難消化性デンプンピークが矢印で記載されている。
【0016】
図2】低せん断押出条件下で調整された試験食餌を摂取したイヌ対高せん断押出条件下で調整された対照食餌を摂取したイヌにおける最小二乗群平均の観点から、以下の分析物の糞便レベルを示すグラフである:乳酸塩、ピルビン酸塩、フェニル乳酸、フェニルプリベート(phenylpryuvate)、4-ヒドロキシフェニル乳酸、および4-ヒドロキシフェニルピルビン酸。
【0017】
図3】試験食餌を提供されたイヌの対象、および対照食餌を提供されたイヌの対象から返されたキブルの重量グラムを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適な実施形態の以下の説明は、性質において単に例示的であり、かつ、いかなる点においても本発明、その用途、または使用を制限することは意図されていない。
【0019】
明細書および特許請求の範囲全体を通して、以下の用語は、文脈が別様を明確に規定しない限り、本明細書に明示的に関連する意味を取る。本明細書で使用される場合、「一部の実施形態では」および「実施形態では」という語句は、同じ実施形態を指してもよいが、必ずしも同じ実施形態を指す必要はない。さらに、本明細書で使用される場合、「別の実施形態では」および「一部の他の実施形態では」という語句は、異なる実施形態を指してもよいが、必ずしも異なる実施形態を指す必要はない。以下に説明するように、本開示の範囲または趣旨から逸脱することなく、様々な実施形態を容易に組み合わせることができる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「または」という用語は、包括的演算子であり、文脈が別様を明確に規定しない限り、「および/または」と同等である。「に基づく」という用語は、文脈が別様を明確に規定しない限り、排他的ではなく、記述されていない追加的な要因に基づくことを許す。本明細書では、「A、B、およびCのうちの少なくとも一つ」の列挙は、A、B、またはC、A、B、またはCの複数の実施例、あるいはA/B、A/C、B/C、A/B/B/ B/B/C、A/B/C、などの組み合わせ、を含有する実施形態を含む。さらに、本明細書全体では、「a」、「an」、および「the」の意味は複数の参照を含む。「in」の意味は、「の中に(in)」および「の上に(on)」を含む。
【0021】
第一、第二などの用語は、本明細書では様々な要素を記述するために使用されてもよいが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないこともまた、理解されるであろう。これらの用語は、一つの要素を別の要素と区別するためにのみ使用される。例えば、第一のオブジェクト、構成成分、または工程を第二のオブジェクト、構成成分、または工程と呼ぶことができ、同様に、第二のオブジェクト、構成成分、または工程は、本発明の範囲を逸脱することなく、第一のオブジェクト、構成成分、または工程と呼ぶことができる。第一のオブジェクト、構成成分、または工程、および第二のオブジェクト、構成成分、または工程は共に、それぞれオブジェクト、構成成分、または工程であるが、同じオブジェクト、構成成分、または工程とみなされるべきではない。本明細書で使用される場合、「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(comprises)」および/または「含む(comprising)」という用語は、記述された特徴、工程、作業、要素、および/または構成成分の存在を指定するが、一つ以上のその他の特徴、工程、作業、要素、構成成分、および/またはその群の、存在または付加を除外しないことをさらに理解されたい。さらに、本明細書で使用される場合、「if」という用語は、文脈に応じて「時に(when)」または「と同時に(upon)」または「判定に応答して」または「検出に応答して」を意味すると解釈されうる。
【0022】
以下に定義されるすべての物理的特性は、別段の指定がない限り、20°~25°Cで測定される。
【0023】
本明細書の値の数値範囲を参照する時、このような範囲は、それぞれおよびすべての数、および/または表記した範囲の最小と最大との間の画分および端点を含むことが理解される。例えば、0.5~6%の範囲は、多くの中から、例えば、0.6%、0.7%、および0.9%など、5.95%、5.97%、および5.99%を含む上限値までなど、すべての中間値を明示的に含むことになる。文脈が別様を明確に規定しない限り、本明細書に記載される他の数値特性および/または要素的範囲の各々に同じものが適用される。
【0024】
さらに、数値は、示された値の「約」または「およそ」であり、当業者によって予想される実験誤差および変形を考慮に入れる。本明細書に開示されているすべての数値および範囲は、「約」がそれと併せて使用されるかどうかおおよその値および範囲であることを理解されるべきである。
【0025】
特に断らない限り、本明細書内及び本明細書の他の箇所で表現される割合及び量はすべて、重量パーセントを指すものと理解されるべきである。与えられている量は材料の活性重量に基づく。別途指定されない限り、すべての構成成分または組成物の量は、その構成成分または組成物の活性量に関連しているが、市販されているソースに存在する場合がある不純物または副産物を除外する。
【0026】
さらに、本明細書内で引用される参照文献は全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本開示における定義と、引用された参照文献における定義に矛盾がある場合、本開示が支配する。
【0027】
本明細書において、増加された量の難消化性デンプンを含むペットフード組成物、およびペットフード組成物を作製するための方法が開示されている。さらに、本明細書に開示されるペットフード組成物をコンパニオンアニマルに供給することにより、イヌなどのコンパニオンアニマルの胃腸の健康を維持する方法が本明細書に開示される。本明細書に開示される組成物および方法は、部分的に、強化されたレベルの難消化性デンプンを含む組成物の投与が、コンパニオンアニマルなどの哺乳動物の胃腸の健康を改善できるという発見に基づく。コンパニオンアニマルには、例えば、イヌ、ネコ、ウサギ、及びウマが含まれる。
【0028】
本明細書で使用される場合、「難消化性デンプン」という用語は、哺乳動物の胃や小腸には吸収されないが、消化のために大腸に入るようなデンプン、およびデンプン消化の生成物を指す。難消化性デンプンは大腸内にいると、例えばプロバイオティクスの形態など、自然に常在するか、または食餌によって導入されて常在するミクロフローラによって発酵され得る。難消化性デンプンは、RSIからRSVの範囲の少なくとも五つの異なる群に分類されうる。難消化性デンプンのカテゴリーには、(1)例えば、完全な全粒穀物など、完全なまたは部分的に粉砕された穀物および種子を含む、物理的に入手しにくいデンプン(RSI)、(2)例えば、生のジャガイモ、グリーンバナナ、特定のマメ科植物、および高アミローストウモロコシを含む、難消化性原生デンプン(RSII)、(3)例えば、再結晶されたトウモロコシ、またはタピオカデンプンなど、調理された、および冷やされたデンプン食物を含む、老化デンプン(RSIII)、(4)例えば、トリメタリン酸ナトリウム(STMP)/ポリリン酸ナトリウム(STPP)架橋小麦デンプンなど、デンプンエーテルおよびエステル交差結合デンプンを含む、化学修飾デンプン(RSIV)、ならびに(5)例えば、極性脂質を含む脂質の存在下で、調理された、ゲル化された、押出成形されたデンプンを含む、デンプン‐脂質包接複合体(RSV)、が含まれる。
【0029】
難消化性デンプンは、天然および非天然源に由来するものを含むすべての難消化性デンプンを包含する。本明細書に開示される組成物中の難消化性デンプンは、様々な異なるデンプン源から生じうる。例えば、特定の実施形態では、難消化性デンプンは、コア全体などのトウモロコシ、酒米などのコメ、小麦、大麦、大豆、およびオーツ麦、ならびにそれらの粉末のうちの少なくとも一つから生じうる。本明細書に開示される特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物のための難消化性デンプンの単一の供給源は、少なくとも一つの、全粒トウモロコシなどのトウモロコシ、および酒米などのコメである。
【0030】
難消化性デンプンが胃または小腸によって消化されない場合、それらは動物の胃腸管の大腸内に通過し、ここで難消化性デンプンは様々な微生物叢種によって発酵または消化されうる。胃腸管中に常在する細菌のコミュニティは、有益、有害、および重要度の低い細菌タイプまたは種を含む。特定の状況における動物の健康に、消化管フローラの特定のメンバーが有益であるか、有害であるか、または重要度が低いかどうかは、多くの因子に依存する可能性がある。消化管フローラの有益なメンバーの例には、ビフィドバクテリア、ビフィドバクテリウム属の種、および乳酸細菌、ラクトバチルス属の種が含まれる。有害細菌としては、メガモナス、クロストリジウム、デスルホビブリオ、ヘリコバクター、および大腸菌の病原性形態などの病原性細菌が挙げられる。胃腸の健康は典型的には、有益細菌および有害細菌の適切なバランスの維持に依存する。したがって、有益細菌の集団の増加、および/または有害細菌の集団の減少は、胃腸の健康の改善と関連付けられうる。
【0031】
ペットフード組成物の総重量に基づいて、難消化性デンプンを少なくとも約7重量%の量で含むペットフード組成物など、強化されたレベルの難消化性デンプンを含むペットフード組成物が本明細書に開示されている。特定の実施形態では、本明細書に開示されたペットフード組成物は、例えば、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも約9重量%の難消化性デンプン、少なくとも約10重量%の難消化性デンプン、少なくとも約15重量%の難消化性デンプン、少なくとも約20重量%の難消化性デンプン、少なくとも約25重量%の難消化性デンプン、または少なくとも約30重量%の難消化性デンプンを含みうる。特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、約7重量%~約30重量%、例えば、約7重量%~約20重量%、または約9重量%~約13重量%の範囲の量の難消化性デンプンを含みうる。
【0032】
強化されたレベルの難消化性デンプンは、動物において、大腸における有益な胃腸管細菌の増加、および年長動物の年齢関連代謝産物など、代謝産物の改善されたレベルを導きうる。本明細書で使用される場合、「年長動物」という用語は、高齢である動物を指し、これは動物の血統および種に依存しうる。例えば、特定のイヌについては、年長とは少なくとも約7歳と定義されうる。本明細書に開示されるペットフード組成物は、イヌなどの動物において、胃腸管内でビフィドバクテリウムおよびラクトバチルス細菌属の割合の増加を誘発することができ、一方で、大部分の疾患を引き起こす細菌を成す属であるメガモナスの相対的存在量を減少させる。さらに、1日当たり動物の1kg当たり少なくとも約2.5gの難消化性デンプンを含む、本明細書に開示されるペットフード組成物を動物に与えることを含む、動物の胃腸管において、ラクトバチルスおよびビフィドバクテリウムのうちの少なくとも一つの割合を増加させる方法が、本明細書に開示される。特定の実施形態では、1日当たり動物の1kg当たり少なくとも約2.5gの難消化性デンプンを含む、本明細書に開示されるペットフード組成物を動物に与えることを含む、動物の胃腸管において、メガモナスの割合を減少させる方法が、本明細書に開示される。
【0033】
胃腸管微生物叢のこの変化には、年齢関連の健康問題に関連する改善されたレベルの代謝産物が付随しうる。これらには、例えば、ピラリン、N6-カルボキシメチルリシン、およびN6-カルボキシエチルリシンなどの終末糖化産物(AGE)、ならびに尿毒素3-メチルカテコール硫酸の低下が含まれる。さらに、胃腸管微生物叢の変化は、年長イヌなどの動物の血液中の、より高いレベルのドーパミン硫酸をさらに伴う場合がある。
【0034】
AGEは、体内の、または食物などの外因性供給の、タンパク質、脂質、および核酸の非酵素的糖化に由来する化合物の複合群である。AGEは、炎症および酸化的ストレスを引き起こし、心血管疾患、糖尿病性合併症、腎不全、およびガンなどのいくつかの慢性的な変性疾患の病因に関与する。特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、ペットフード組成物を摂取する動物中のピラリン、N6-カルボキシメチリン(carboxymethylline)、およびN6-カルボキシエチルリシンのうちの少なくとも一つの量を減少させる。特定の実施形態では、ピラリン、N6-カルボキシメチリン、およびN6-カルボキシエチルリシンのうちの少なくとも一つの量は、動物の糞便で測定されてもよく、特定の実施形態では、血清などの動物の血液中で測定されてもよい。したがって、本明細書に開示されるペットフード組成物を動物に与えることを含む、動物におけるピラリン、N6-カルボキシメチリン、およびN6-カルボキシエチルリシンのうちの少なくとも一つの量を減少させる方法が、本明細書に開示され、動物に与えられるペットフード組成物は、1日当たり動物の1kg当たり少なくとも約2.5gの難消化性デンプンを含む。本明細書に開示されるペットフード組成物の有効量を動物に与えることを含む、それを必要とする動物において、少なくとも部部的にAGEによって引き起こされるような慢性的な変性疾患を緩和する方法が、さらに本明細書に開示される。
【0035】
さらに、本明細書に開示されるペットフード組成物を摂取する動物で、尿毒素レベルが減少する。尿毒素は、老化の様々な疾患につながる主な毒性代謝産物の仲間である。尿毒素の大部分は宿主代謝から内因的に発生するが、一部はタンパク質分解細菌による結腸内でのタンパク質の発酵を起源とする。腐敗プロセスの産物は吸収され、毒性誘導体に変換され、これは腎機能の負担になる可能性がある。このような代謝産物の一例は3-メチルカテコール硫酸である。特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、3-メチルカテコール硫酸の量を、ペットフード組成物を摂取する動物で減少させる。特定の実施形態では、3-メチルカテコール硫酸の量は、動物の糞便で測定されてもよく、特定の実施形態では、血清などの動物の血液中で測定されてもよい。本明細書に開示されるペットフード組成物の有効量を動物に与えることを含む、それを必要とする動物において、少なくとも部分的に尿毒素によって引き起こされる腎臓病などの腎臓疾患を緩和する方法が、さらに本明細書に開示される。
【0036】
食餌AGEへの曝露によって最も影響を受ける臓器系の一つは、近接および露出した表面積のため、胃腸管である。乳酸塩/ピルビン酸塩レベルで示されるように、より低減された全体的なレドックス状態を促進するための難消化性デンプンの保存に加えて、本明細書に開示されるペットフード組成物はさらに、生物活性ジペプチドカルノシンを保存する(β-ALA-HIS)。カルノシンは生物活性を持ち、AGEスカベンジャーとして作用し、AGEの曝露の負の健康結果を減少させる。特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、カルノシンの量を、ペットフード組成物を摂取する動物で増加させる。特定の実施形態では、カルノシンの量は、動物の糞便で測定されてもよく、特定の実施形態では、血清などの動物の血液中で測定されてもよい。
【0037】
例えば、少なくとも部分的にAGEに起因する慢性的な変性疾患を緩和すること、および少なくとも部分的に尿毒素に起因する腎臓病を緩和することにおいて、胃腸管の健康は、動物の身体的幸福のために重要であるだけでなく、起因する慢性的な変性疾患の改善において、胃腸の健康は動物の精神的幸福にも重要である。腸脳軸のクロストークからの最近の洞察は、胃腸管微生物叢の変化が健康な精神状態を促進または低減しうることを示している。ヒトでは、循環ドーパミン硫酸のレベルはドーパミンのそれと相関することが示されている。(Claustre et al.、Conjugation and deamination of circulating dopamine:relationship between sulfated and free dopamine in man、J.Autonomic Nervous Sys.29(2):175-181(1990))。ドーパミンは認知のための主要なニューロトランスミッタであり、年齢とともに減少することが知られており、認知機能および運動神経の障害を引き起こす。
【0038】
特定の食物および成分は、循環ドーパミンおよびドーパミン硫酸の産生を増加させることが知られている。本明細書に開示されるように、本明細書に開示されるペットフード組成物を摂取する年長イヌは、それらの血液中のドーパミン硫酸レベルの増加を示し、このドーパミン硫酸レベルの増加は、本明細書に開示されるペットフード組成物が陽性のサイコバイオティク効果を有することを示唆しうる。サイコバイオティクスは、心理的効果を持つ代謝産物の微生物叢媒介性産生を行う物質である。(Sarkar et al.、Psychobiotics and the manipulation of bacteria gut-brain signals、Trends in Neuroscience39(11):763-781(2016)。しばしば、サイコバイオティク由来ニューロトランスミッタの作用の基本的なメカニズムは間接的である。例えば、胃腸管における迷走神経の局所刺激は、距離を置いた脳での作用を可能にする。特定の胃腸管細菌が報告され、非消化性繊維の代謝産物を通して、ドーパミンを含む多様なニューロトランスミッタを産生する。(Sarkar et al.,2016)。したがって、本明細書に開示されるペットフード組成物は、ペットフード組成物を摂取する動物の胃腸管のラクトバチルスおよびビフィドバクテリアの割合を増加させることによってドーパミンのレベルを増加させることがあり、それによって迷走神経刺激はドーパミン硫酸の血中レベルを増加させることによって精神状態の改善機会を提供すると考えられている。したがって、特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、ドーパミン硫酸の量を、ペットフード組成物を摂取する動物で増加させる。特定の実施形態では、ドーパミン硫酸の量は、血清などの動物の血液中で測定されうる。
【0039】
本明細書に開示されたペットフード組成物および方法の特定の実施形態では、ペットフード組成物を摂取する動物は、1日当たり動物の1kg当たり少なくとも約2.5gの難消化性デンプン、例えば、1日当たり動物の1kg当たり約2.5g~約4.7gの難消化性デンプンを摂取する。
【0040】
難消化性デンプンに加えて、本明細書に開示されるペットフード組成物は、脂肪、炭水化物、タンパク質、繊維、および栄養バランス剤などの追加的な成分をさらに含みうる。特定の実施形態では、追加的な脂肪および炭水化物成分は、例えば、動物脂肪、魚油、植物油、肉、肉副産物、穀粒、その他の動物または植物源などのうちの少なくとも一つなど、様々な供給源から得られうる。
【0041】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、少なくとも一つのタンパク質源をさらに含みうる。適切なタンパク質源は、任意の適切な動物性または植物性源から選択されうる。例えば、適切なタンパク質源は、家禽ミール、家禽副産物ミール、鶏肉粉、鶏肉副産物ミール、ラムミール、肉および肉骨、魚粉、大豆ミール、大豆タンパク質濃縮物、牛乳タンパク質、コーングルテンミール、小麦グルテン、およびグルテンのうちの少なくとも一つを含んでもよい。デンプン源もまたタンパク質の供給源でもよい。
【0042】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、少なくとも一つの繊維源をさらに含み得る。繊維源は、例えば、セルロース、ビートパルプ、落花生殻、および大豆繊維などの少なくとも一つの野菜繊維源から選択されうる。
【0043】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、栄養バランス剤をさらに含み得る。栄養バランス剤は、当業者に知られている様々な供給源、例えば、ビタミンおよびミネラルサプリメントおよび食物成分から取得されうる。ビタミンおよびミネラルは、栄養素欠乏を回避し、健康を維持するために必要な量で含めることができる。これらの量は当該技術分野で容易に利用可能である。アメリカ飼養検査官協会(AAFCO)は、イヌおよびネコのためのかかる栄養素の推奨量を提供する。ビタミンは一般的に食品添加物として有用であり、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンD、ビオチン、ビタミンK、葉酸、イノシトール、ナイアシン、およびパントテン酸を含む。食品添加物として有用なミネラルおよび微量要素には、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、銅、亜鉛、塩化物、鉄、セレン、ヨウ素、および鉄が含まれる。
【0044】
特定の実施形態では、本明細書に開示されるペットフード組成物は、充填剤、嗜好性エンハンサー、結合剤、風味剤、安定剤、乳化剤、甘味料、着色剤、緩衝剤、塩、コーティング材等の追加的成分を含みうる。安定剤には、防腐剤、協力剤および捕捉剤、包装ガス、乳化剤、増粘剤、ゲル化剤、および湿潤剤などの組成物の貯蔵寿命を増加させる傾向がある物質が含まれる。乳化剤および/または増粘剤の例としては、ゼラチン、セルロースエーテル、デンプン、デンプンエステル、デンプンエーテル、および加工デンプンが挙げられる。各組成物構成成分に対する特定の量は、組成物に含まれる特定の構成成分、動物の種、動物の年齢、体重、全体的な健康状態、性別、および食餌、動物の消費速度、治療される疾患または状態のタイプなど、様々な因子に依存する。
【0045】
本明細書に開示されるペットフード組成物は、増加された量の難消化性デンプンを含むペットフード組成物を製造するための最適化された押出成形方法によって作製されうる。本明細書に開示される押出成形方法により、難消化性デンプンのレベルが強化されたために、レドックスバランスが改善されたことによって結腸乳酸塩のレベルが増加したペットフード組成物にもたらされ、その一方で、同時に、有害な健康結果と関連するAGEと尿毒素とを減少させ、ドーパミンのレベルを増加させて、その結果、潜在的に有益なサイコバイオティク効果が得られる。
【0046】
本明細書に開示される押出成形方法は、難消化性デンプンおよび植物体植物成分の破壊を最小限にして、イヌなどの動物の下部腸管へのエネルギー基質の送達を可能にし、共生胃腸微生物叢による有益な乳酸塩への代謝を可能にする。本明細書に開示される新規押出成形方法はまた、とりわけ、カルノシンの保持を増加させ、製造に関連するAGE形成を減少させうる食品組成物を製造する。理論に束縛されるものではないが、小腸における消化性デンプンの消化からの高血糖レベルは、AGE生成物の内因的形成を促進しうると考えられている。したがって、難消化性デンプンのレベルが強化されたペットフード組成物をもたらす本明細書に開示される押出成形方法はまた、ペットフード組成物を摂取する動物によって生成されるAGE生成物のレベルも低下させる。
【0047】
キブルなどのペットフード組成物などの食品組成物の押出成形は、当該技術分野で周知である。食物押出装置は、プレコンディショナを備えてもよく、このプレコンディショナは、プレコンディショナの反対側の端に金型を含む出力を有する、単一の細長い管状押出機バレルに相互接続されうる。押出機バレルの出力端と結合された金型は、押出機バレルから現れる際に、キブルなどの最終製品食品の形状を形成するように機能する。押出機バレルの内側は、せん断力を適用し、食品組成物を出力に向かって、かつ金型を通して押出機バレルを通して前方に運ぶ機能を果たす、単軸または二軸のスクリューである。蒸気は、処理中にプレコンディショナおよび/または押出機バレルに注入されてもよい。
【0048】
本明細書に開示される特定の実施形態では、ペットフード原材料はプレコンディショナ内に供給され、液体、例えば水、油、および蒸気を含みうるが、これが加えられる。特定の実施形態では、前処理された原材料は部分的に調理されうる。プレコンディショナでは、原材料は混合され、前処理されて生地を形成する。原材料は、例えば、脂肪、炭水化物、タンパク質、繊維、および栄養バランス剤など、難消化性デンプンの供給源に加えて、上に開示された任意の原料を含むことができ、および難消化性デンプンの供給源を含むことができる。前処理後、生地は押出機バレルに向けられる。特定の実施形態では、生地が押出機バレル内に向かっている時に、追加的な蒸気が追加されない。
【0049】
押出機バレルでは、生地は回転する単軸または二軸のスクリューを受ける。押出機バレル内部では、生地は様々なレベルの温度、圧力、およびせん断を受けることができ、そのすべてが結果として生じる食品製品に影響を与えうる。特定の実施形態では、スクリューは、約500RPM未満、約400RPM未満、約300RPM未満、約270RPM、または約250RPM~約300RPMの範囲のRPMで動作してもよい。特定の実施形態では、押出機バレルは、約1,500kg/hを超える、約1,800kg/hを超える、または約1,500 kg/h~約2,000kg/hの範囲など、約1,000kg/hを超える流量を持つように動作されうる。
【0050】
生地が金型から押出機バレルから出ると、キブルまたはその他の望ましい形状など、最終ペットフード組成物製品に形成されうる。最終ペットフード組成物はまた、ある程度まで膨張する可能性があり、これは押出機バレルの食品組成物に与えられるエネルギーの量、食品組成物中の水分量、および金型の形状を含む多くの要因に依存しうる。
【0051】
押出プロセス中、例えば、せん断混合の形態で、比機械的エネルギーが適用される。本明細書で使用される場合、「比機械的エネルギー」(SME)という用語は、押出装置内の押出成形物にかけられた機械的エネルギー、例えば押出機のモーターからのもの、の測定値を意味する。SMEは、単位質量当たりの押出成形システムへのエネルギーの測定であり、例えば、W・h/kgに関して測定されうる。高せん断混合が関与する典型的な食物押出プロセスでは、SMEは約40W・h/kg~約50W・h/kgの範囲であってよく、例えば、約48W・h/kg以上、または例えば、約40W・h/kg超、または約45W・h/kg超であってもよい。
【0052】
しかし、本明細書に開示された押出成形方法では、低せん断混合が使用されうる。本明細書に開示される方法による低せん断混合については、SMEは約40W・h/kg未満であってもよく、例えば、約30W・h/kg未満、約25W・h/kg未満、約20W・h/kg未満、約15W・h/kg未満、または約10W・h/kgであってもよい。特定の実施形態では、低せん断混合については、SMEは約10W・h/kg~約40W・h/kgの範囲であってもよく、例えば、約10W・h/kg~約15W・h/kgであってもよい。本明細書に開示された低せん断混合条件下では、ペットフード組成物は、例えば、ペットフード組成物の総量に基づいて、少なくとも約7%の難消化性デンプンなどの強化されたレベルの難消化性デンプンを保持する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「比熱エネルギー」(STE)という用語は、押出装置内の押出成形物にかけられる、蒸気からなどの熱の形態のエネルギーを意味する。SMEと同様に、STEは、単位質量当たりの押出成形システムへのエネルギーの測定であり、例えば、W・h/kgに関して測定されうる。高せん断混合が関与する典型的な押出プロセスでは、STEは約40W・h/kg~約50W・h/kgの範囲であってよく、例えば、約40W・h/kg~約45W・h/kgであってもよい、または一般的な押出プロセスの特定の実施形態では、STEは少なくとも約40W・h/kgでありうる。高せん断混合が関与する特定の食物押出プロセスでは、STEに対するSMEの比率はおよそ1である場合があり、また高せん断混合が関与する特定の食物押出プロセスでは、STEに対するSMEの比率が1より大きくてもよい。
【0054】
しかしながら、本明細書に開示された押出成形方法において、特定の実施形態による低せん断混合を含む場合、STEは約40W・h/kg~約50W・h/kgの範囲であってもよく、例えば、約40Wh/kg~約45Wh/kg、または約42Wh/kgであってもよく、あるいは特定の実施形態では、約45Wh/kg未満であってもよい。低せん断混合が関与する本明細書に開示される押出成形方法の特定の実施形態では、STEに対するSMEの比率は、約0.5未満、約0.33未満、または約0.25未満など、1未満である。
【0055】
本明細書に開示される方法の特定の実施形態では、押出装置の比機械的エネルギーと比熱エネルギーの合計は、約100Wh/kg未満であってもよく、例えば、約75Wh/kg未満、約60Wh/kg未満、約50Wh/kg未満、または約60Wh/kg未満であってもよい。
【0056】
低せん断混合を含む本明細書で開示されている方法の特定の実施形態では、押出機バレルのバレル温度は約70℃~約125℃の範囲であり得る。押出装置は、特定の実施形態では、0%開放(完全閉鎖)~100%開放(完全開放)の範囲であり得る押出機バレルに動作可能に接続された背圧弁をさらに備えうる。本明細書に開示される特定の実施形態では、背圧弁は閉じている。
【0057】
本明細書では、押出成形のためのペットフード原材料を提供すること、および押出装置を使用して原材料を押し出すことを含む、低せん断押出成形パラメータを使用してペットフード組成物を作製する方法が開示されている。特定の実施形態では、原材料は最初に生地に前処理される。本明細書に開示される方法の特定の実施形態では、押出装置の比機械的エネルギーは約25W・h/kg未満であり、押出成形方法によって製造されたペットフード組成物は、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも約7重量%の難消化性デンプンを含むペットフード組成物をもたらす。
【0058】
さらに、ペットフード組成物の総重量に基づいて、少なくとも約7重量%、例えば約7重量%~約30重量%、少なくとも約10重量%、約9重量%~約13重量%、または約7重量%~約20重量%の量の難消化性デンプンを含む押出成形されたペットフード組成物が本明細書に開示される。本明細書で使用される場合、「押出成形されたペットフード組成物」という用語は、比機械的エネルギーおよび熱エネルギーを使用して押出装置で処理されたペットフード原材料から処方されたペットフード組成物を意味する。
【0059】
本明細書に開示された方法の特定の実施形態では、本明細書に開示されるように、ペットフード組成物を摂取する動物は、1日当たり動物の1kg当たり、少なくとも約2.5gの難消化性デンプン、例えば、少なくとも約3g、少なくとも約3.5g、少なくとも約4g、少なくとも約4.5g、または少なくとも約5gの難消化性デンプンの量で、ペットフード組成物を摂取しうる。
【0060】
さらに、1日当たり動物の1kg当たり、少なくとも約2.5gの難消化性デンプン、例えば、少なくとも約3g、少なくとも約3.5g、少なくとも約4g、または少なくとも約4.5gの難消化性デンプンの量で、本明細書に開示されるペットフード組成物を動物に与えることを含む、例えば血中など、動物においてドーパミン硫酸を増加させる方法が本明細書に開示される。さらに、1日当たり動物の1kg当たり、少なくとも約2.5gの難消化性デンプン、例えば、少なくとも約3g、少なくとも約3.5g、少なくとも約4g、少なくとも約4.5g、少なくとも約5g、少なくとも約5.5g、少なくとも約6g、または少なくとも約7gの難消化性デンプンの量で、本明細書に開示されるペットフード組成物を動物に与えることを含む、動物においてカルノシンのレベルを増加させる方法が本明細書に開示される。
【0061】
本明細書に開示されるペットフード組成物は、例えば、キブル、ビスケット、およびスナック製品を含む、望ましい任意の形態に製作されうる。
【0062】
特に断らない限り、本明細書内及び本明細書の他の箇所で表現される割合及び量はすべて、重量パーセントを指すものと理解されるべきである。与えられている量は材料の活性重量に基づく。
【実施例
【0063】
実施例1、パートA-対照および試験食餌の調製
試験食餌、および対照食餌は、アメリカ飼料検査官協会(AAFCO)の栄養勧告に従って処方された。処方物は、押出成形で製造され、乾燥され、美味剤でコーティングされた。試験食餌および対照食餌は両方とも、単純なイヌのメンテナンス処方物であり、以下の表1に示すとおり、同一処方であった。
表1-試験食餌および対照食餌処方の比較
【表1】
【0064】
対照食餌については、キブルを高せん断押出成形パラメータ下で調製した。原料成分は、プレコンディショナ内に供給され、ここで73.2kg/時間および11%蒸気圧(SP)で蒸気を加え、プレコンディショナの最後に98.8℃の温度を達成した。含水量は、プレコンディショナ処理速度858.4kg/時間で27.5%であった。前処理した生地は次に、押出機バレルに供給され、ここでスクリューが55%負荷で500RPMで操作された。押出機バレル内の温度は、69.4℃~142.8℃まで変化した。押出機バレルに蒸気を添加しなかった。その結果、水分含量が27.5%HOのバレルで858.4kg/時間の流量をもたらした。背圧弁は閉じ(0%開放)、金型出力での温度は131.6℃であった。結果として、-44.2kg/時間の蒸気蒸発および23.5%HOのキブル製品をもたらした。89W・h/kgの総エネルギーに対して、高せん断パラメータのための比機械的エネルギー(SME)は、48W・h/kgに計算され、比熱エネルギー(STE)は41W・h/kgに計算された。
【0065】
試験食餌については、キブルを低せん断押出成形パラメータ下で調製した。原料成分は、プレコンディショナ内に供給され、ここで138.8kg/時間および10%のSPで蒸気を加え、101.3℃の温度を達成した。含水量は、1,827.5kg/時間の速度で25.0%であった。前処理した生地は次に、押出機バレルに供給され、ここでスクリューが24%負荷で270RPMで操作された。押出機バレル内の温度は、71.7℃~123.7℃まで変化した。押出機バレルに蒸気を添加しなかった。その結果、水分含量が25.0%HOのバレルで1,827.5kg/時間の流量をもたらした。背圧弁は閉じ(100%開放)、金型出力での温度は110.5℃であった。結果として、-50.0kg/時間の蒸気蒸発および22.9% HOのキブル製品をもたらした。51W・h/kgの総エネルギーに対して、低せん断パラメータのためのSMEは、10Wh/kgに計算され、STEは42Wh/kgに計算された。したがって、対照食餌の高せん断パラメータと比較して、試験食餌の低せん断パラメータ下では機械的せん断エネルギー(MSE)が約4分の1に減少した。
【0066】
MSEの減少により、高いMSE条件下で製造された対照食餌に対する試験食餌中の難消化性デンプンの強化されたレベルによって示されるように、原料成分の高分子構造が著しく保持された。図1に示されるグラフの相対粘度解析では、試験食餌が、対照食餌が示していないところでピークを示したことで、試験食餌中の難消化性デンプンの存在を示していた。曲線の始めで低温での低粘度は、試験食餌の非分解デンプンの高い含有量を示す。温度が上昇すると、試験食餌における高粘度のピークは、より高い含有量の難消化性デンプンが放出されたことを示す。最後に、後のより低い温度での試験食餌の粘度のより高いピークは、より粘性を残すことができる、より高い難消化性デンプン含有量を示す。
【0067】
対照食餌を製造するために使用される高せん断押出成形パラメータに基づいて、対照食餌は、約2重量%の難消化性デンプンを含むと推定される。試験食餌を製造するために使用される低せん断押出成形パラメータに基づいて、試験食餌は、約28重量%の難消化性デンプンを含むと推定される。
実施例1、パートB-対照食餌および試験食餌の供給
【0068】
既存のパネル上の健康なイヌを使用して、施設内動物配慮利用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)(IACUC)承認の消化率評価プロトコルを実施した。便の評価を含む消化率パネルが実施された。
【0069】
消化率パネルに加えて、年齢、体重、性別に基づき、二つの群にランダム化された健康なイヌの対象を登録するIACUC承認臨床的食餌介入プロトコルが実施された。イヌの生化学的および臨床的健康状態は、血液および糞便マーカーにより評価された。試験はケアテイカーブラインデッドの、縦断的研究であった。
【0070】
対照および試験食餌を6週間摂取した後、便を採取した。便は、ヒルの視覚的便スケール(Hill’s Visual Stool Scale)によって評価された、これは本質的に液体(スコア1)から例示的に硬い(スコア5)まで、便の主観的な望ましさをランク付けするもである。スコアリング後、排便の30分以内に、便を広範囲に均質化し、次いで一部分は代謝エンドポイント(例えば、乳酸塩、ピルビン酸塩、AGE、カルノシン)のために液体窒素で瞬間凍結される前に冷凍容器に等分された。
【0071】
上述のように、試験食餌は、機械的せん断エネルギーが4分の1に減少することによって対照食餌とは異なり、これは難消化性デンプンの劇的な保存をもたらした。図1の相対粘度解析を参照のこと。食物を分析し、タンパク質、脂肪、繊維、水分、灰分、およびエネルギー密度の観点から同等のものとして見いだされた。以下の表2を参照のこと。
表2-対照食餌および試験食餌の供給分析結果
【表2】
【0072】
以下の表3に示すように、試験食餌の消化率は、タンパク質消化率における約2%減少を除くと、対照食餌と本質的に同等であった。さらに、試験食餌における繊維の消化率は、対照食餌における繊維の消化率に対して増加した。この増加は、試験食餌を処理するために使用されるプロセスにより、腸細菌によって発酵性が増加した繊維を生じたことを示し得る。
表3-対照食餌および試験食餌の消化率比較
【表3】
【0073】
表3に示すように、対照食餌と試験食餌との間の主な違いは、対照食餌よりも試験食餌に対してより低かった代謝可能なエネルギー、および対照食餌よりも試験食餌に対してより高かった食物摂取量にあった。
【0074】
糞便乳酸値は、6週間にわたって試験食餌を摂取したイヌと、6週間にわたって対照食餌を摂取したイヌとの両方に対して測定された。糞便乳酸値を以下の表4にまとめ、正規化相対的レベルで表現し、中央値を有するサンプルを1に設定し、残りのサンプルは平均値サンプルに対する比率である。
表4-試験食餌および対照食餌を摂取するイヌの糞便乳酸値
【表4】
【0075】
試験食餌の有意な効果が共生微生物叢による結腸乳酸産生に見られ、本明細書に開示された低せん断押出成形方法によって製造されなかった対照食餌を摂取したイヌの糞便からの乳酸値に対して、試験食餌を摂取したイヌの糞便で測定された乳酸では、最大で40倍の増加であった。本明細書に開示される低せん断方法のこの効果は、乳酸塩に限定されず、NADH:ヒドロキシル-ケトレドックス結合に対するグローバル的な効果であると思われる。図2は、測定されたすべての例で、試験食餌でヒドロキシル同族体が増加した一方で、ケト同族体が減少したことを示す。乳酸塩(ケト)を減少させ、ピルビン酸塩(ヒドロキシル)を酸化した。正規化相対的レベルで表される、以下の表5および表6を参照のこと。
表5-試験食餌および対照食餌を摂取するイヌの糞便代謝産物レベル
【表5】
表6-試験食餌および対照食餌を摂取するイヌの糞便代謝産物レベル
【表6】
【0076】
以下の表7に示すように、本明細書に開示されるペットフード組成物を供給されたイヌの糞便および血清におけるカルノシン、AGEスカベンジャーの正規化相対的レベルもまた、対照食物を供給されたイヌにおいてより、有意に高かった。
表7-試験食餌および対照食餌を摂取するイヌの糞便および血清カルノシンレベル
【表7】
【0077】
カルノシンレベルの増加は、試験食餌を摂取するイヌでのAGE化合物がそれに比例して減少するであろうことを理論化することにつながるであろう。実際に、試験食餌はまたイヌにおいて、以下の表8に示す通り、カルボキシメチルリシン、カルボキシエチルリシン、およびピラリンを含む三つの一般的なAGE化合物について、AGE化合物への胃腸管曝露を、対照食餌と比較して減少させ、正規化相対的レベルを表した。
表8-試験および対照食餌を摂取するイヌの糞便AGEレベル
【表8】
【0078】
AGEの暴露は健康に有害である一方で、それらは風味分子である。したがって、食餌のAGEを減少させると味が落ちると考えられる場合がある。したがって、イヌの対象に対して、試験食餌がキブル拒絶の増加およびエネルギー摂取の減少に悩まされるという仮説があり得る。実際、データは、食物受容に対して、AGEの減少の有害な影響がないことを示した。図3に示すように、試験食餌を摂食するイヌによって拒絶されたキブルの量は、対照食餌を摂取するイヌによって拒絶された量よりも低かった。さらに、対象の体重は、試験の開始から終了まで有意には異なっていなかった(p>0.05、図示せず)。
【0079】
したがって、単一の処方の使用した、難消化性デンプンおよびジペプチドカルノシンの保持の押出成形に基づく最適化は、イヌの結腸環境の酸化還元バランスを改善することができると結論付けている。さらに、試験食餌を摂取した後にAGEレベルが低下したが、これは健康を改善する可能性を示している。最後に、風味分子として作用することができるAGEが減少するにも関わらず、本明細書に開示される試験食餌は嗜好性およびキブル受容を保持した。
実施例2
【0080】
試験は、8~13歳の年齢の間の36匹の年長イヌを使用して完了した。試験食餌には、約1:5の比率で唯一の穀物供給源としての酒米およびトウモロコシが含まれた。対照食餌には、モロコシ、小麦、大麦、およびオート麦などの様々な穀物、ならびに試験食品中のトウモロコシの20%が含まれた。二つの食餌は、以下の表9に示すように、穀物を除く類似の栄養プロファイルを有していた。
表9-試験食餌および対照食餌の比較
【表9】
*炭水化物 (無窒素抽出物) = 100% - (%タンパク質 + %脂肪 + %繊維 + %灰分 + %水分)
【0081】
すべてのイヌに30日間試験食餌が提供され、次いで二つの群に分割された。二つの群のうちの一つが、今後30日間対照食餌を受けている一方、同じ期間中に、もう一方の群は別の処方を持つ別の食品を供給された。この期間の終わりに、両群に30日間試験食餌を与え、さらに30日間、対照食餌または別の処方を用いた食品を与えるクロスオーバーを行った。最後に、両群は試験食餌を30日間受けた。特定の代謝産物および腸内微生物集団を分析するために、各30日間の終わりに血液および糞便サンプルを採取した。本明細書では、対照食餌を摂食した後の結果と試験食餌を摂食した後の結果の差異が報告されている。
【0082】
表10に示されるように、年長イヌにおいて、試験食餌は、有益な細菌属ラクトバチルス(P<0.0001)およびビフィドバクテリウム(P=0.0168)の糞便比率の著しい増加を誘発した。さらに、試験食餌は主に疾患を引き起こす細菌から成る、メガモナスの相対的存在量の著しい低下を誘発した(P=0.0004)。
表10-試験食餌および対照食餌を摂取した後の糞便細菌の比較
【表10】
【0083】
腸内微生物叢の変化は、年齢関連の健康問題に関連する代謝産物のレベルを改善することによって、年長イヌにおける著しい健康利益を伴った。表11に示すように、これらの代謝産物は、ピラリン(P=0.0002)およびN6-カルボキシメチルリシン(P=0.0038)を含むAGEの低下を含み、試験食餌はさらに、年長イヌの血漿中の尿毒素3-メチルカテコール硫酸(P<0.0001)の低下につながった。
表11-試験食餌および対照食餌を摂取した後の代謝産物の比較
【表11】
【0084】
最後に、下記の表12に示すように、試験食餌は、年長イヌにおけるドーパミン硫酸の血中レベルにおける有意な増加(P<0.0001)につながった。
表12-試験食餌および対照食餌を摂取した後のドーパミン硫酸レベルの比較
【表12】
【0085】
試験食餌および対照食餌の両方の総炭水化物(無窒素抽出物)含有量は、約0.54であった(表9)。したがって、平均して、1日に300グラムの食物を摂取する一般的な犬は、約162グラムの総炭水化物を摂取した(300×0.54=162グラム)。試験食餌の調理パーセントは約80%であることが示され、残りの20%は未調理であり、難消化性デンプンである。対照食餌の調理パーセントは約90%であることが示され、残りの10%は未調理であり、難消化性デンプンである。したがって、試験食餌および対照食餌の調理された割合はそれぞれ、約0.8および0.9であった。これにより、試験食餌および対照食餌中の難消化性デンプンの割合がそれぞれ約0.2、および0.1であることを示す。したがって、162グラムの総炭水化物を摂取した試験食餌を与えられたイヌは、約32グラムの難消化性デンプンを摂取することになり(162×0.2=32.4グラム)、一方で対照食餌を与えられたイヌは、1日あたり半分の量の難消化性デンプンを摂取する(162×0.1=16グラム)。
図1
図2
図3