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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】車両用のセンサ装置
(51)【国際特許分類】
   G08C 25/00 20060101AFI20221018BHJP
   G01D 3/00 20060101ALI20221018BHJP
   G01P 3/44 20060101ALI20221018BHJP
   G01D 5/12 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G08C25/00 E
G01D3/00 B
G01P3/44 Z
G01D5/12 K
G01D5/12 C
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2020551895
(86)(22)【出願日】2019-03-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-15
(86)【国際出願番号】 EP2019057396
(87)【国際公開番号】W WO2019185520
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2020-09-25
(31)【優先権主張番号】102018204615.8
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】イェンス ヴィルト
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ケーゲル
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】独国特許発明第19814097(DE,C1)
【文献】西独国特許出願公開第02642464(DE,A1)
【文献】独国特許出願公開第10041989(DE,A1)
【文献】特許第6176179(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C
G01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサエレメント(WSS)と、それぞれ1つずつ評価制御ユニット(3A,3B)及びエネルギ源(VB1,VB2)を有する少なくとも2つの制御装置(ECU1,ECU2)とを含むセンサ装置(1)であって、
第1の制御装置(ECU1)内で、第1の評価制御ユニット(3A)が第1のエネルギ源(VB1)に接続されており、第2の制御装置(ECU2)内で、第2の評価制御ユニット(3B)が第2のエネルギ源(VB2)に接続されており、
前記少なくとも2つの制御装置(ECU1,ECU2)と前記センサエレメント(WSS)とは、少なくとも1つの別個の接続モジュール(10)を介して相互に接続されており、各前記接続モジュール(10)は、対応する前記センサエレメント(WSS)の第1の端子(WSS1)を前記第1のエネルギ源(VB1)及び前記第2のエネルギ源(VB2)の一方又は両方に接続し、前記センサエレメント(WSS)の第2の端子(WSS2)は、アースに接続されており、
接続された前記第1のエネルギ源(VB1)及び前記第2のエネルギ源(VB2)の一方又は両方と対応する前記センサエレメント(WSS)との間センサ電流(I)を、前記第1の評価制御ユニット(3A)は、第1の測定電流(IM1)として評価し、
前記センサエレメント(WSS)の第2の端子(WSS2)は、前記第2の制御装置(ECU2)内でアースに接続されており、前記第2の評価制御ユニット(3B)は、前記センサエレメント(WSS)とアースとの間で検出された対応する前記センサ電流(I)を第2の測定電流(IM2)として評価し、
前記接続モジュール(10)は、接続された前記第1のエネルギ源(VB1)及び前記第2のエネルギ源(VB2)の一方が故障した場合に、それぞれ、前記センサエレメント(WSS)の前記第1の端子(WSS1)を前記第1のエネルギ源(VB1)及び前記第2のエネルギ源(VB2)の他方に接続する、
センサ装置(1)。
【請求項2】
それぞれ測定位置に配置された複数のセンサエレメント(WSS)が設けられている、
請求項1に記載のセンサ装置(1)。
【請求項3】
前記測定位置は、それぞれ1つの車輪に対応づけられており、対応する前記センサエレメント(WSS)は、少なくとも、対応する前記車輪の回転数及び/又は回転速度を検出する、
請求項2に記載のセンサ装置(1)。
【請求項4】
各前記接続モジュール(10)は、切り替え装置(20A)を有し、前記切り替え装置(20A)は、共通のノード点(K)を有する2つのダイオード(D1,D2)を含み、前記共通のノード点(K)には、前記共通のノード点(K)に接続された前記センサエレメント(WSS)のための給電電圧が印加され、第1のダイオード(D1)は、前記第1のエネルギ源(VB1)を順方向で前記共通のノード点(K)に接続し、第2のダイオード(D2)は、前記第2のエネルギ源(VB2)を順方向で前記共通のノード点(K)に接続し、これにより、前記共通のノード点(K)には、前記第1のエネルギ源(VB1)及び前記第2のエネルギ源(VB2)の一方又は両方から給電される給電電圧が印加されて、前記第1のエネルギ源(VB1)及び前記第2のエネルギ源(VB2)の電圧のうちのより高い電圧が得られ又は両方に等しい電圧が給電される、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のセンサ装置(1)。
【請求項5】
各前記接続モジュール(10)は、切り替え装置(20B)を有し、前記切り替え装置(20B)は、共通のノード点(K)を有する2つのスイッチングエレメント(21,22)を含み、前記共通のノード点(K)には、前記共通のノード点(K)に接続された前記センサエレメント(WSS)のための給電電圧が印加され、第1の駆動制御ユニット(25)が、第1のスイッチングエレメント(21)を駆動して、前記共通のノード点(K)を前記第1のエネルギ源(VB1)に接続させ、第2の駆動制御ユニット(26)が、第2のスイッチングエレメント(22)を駆動して、前記共通のノード点(K)を前記第2のエネルギ源(VB2)に接続させる、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のセンサ装置(1)。
【請求項6】
前記第1のエネルギ源(VB1)が第1の電圧を供給したことを第1の電圧識別部(23)が識別した場合、前記第1の駆動制御ユニット(25)は、前記第1のスイッチングエレメント(21)を駆動して、前記共通のノード点(K)を前記第1のエネルギ源(VB1)に接続させ、
前記第2のエネルギ源(VB2)が第2の電圧を供給し、かつ、優先回路(27)が前記第2のスイッチングエレメント(22)の駆動を許容したことを第2の電圧識別部(24)が識別した場合、前記第2の駆動制御ユニット(26)は、前記第2のスイッチングエレメント(22)を駆動して、前記共通のノード点(K)を前記第2のエネルギ源(VB2)に接続させ、
前記第1のエネルギ源(VB1)が電圧を供給しなかったことを前記第1の電圧識別部(23)が識別した場合、前記優先回路(27)は、前記第2のスイッチングエレメント(22)の駆動を許容する、
請求項5に記載のセンサ装置(1)。
【請求項7】
各前記接続モジュール(10,10A)内に、接続された前記第1のエネルギ源(VB1)及び前記第2のエネルギ源(VB2)の一方又は両方と対応する前記センサエレメント(WSS)との間の前記センサ電流(I)を検出して前記第1の測定電流(IM1)として前記第1の評価制御ユニット(3A)に供給する電流処理部(30)が配置されている、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のセンサ装置(1)。
【請求項8】
前記第2の評価制御ユニット(3B)は、対応するセンサ電流(I)を直接的に第2の測定電流(IM2)として受信して評価する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のセンサ装置(1)。
【請求項9】
各前記センサエレメント(WSS)の第2の端子(WSS2)は、前記接続モジュール(10,10B)内でアースに接続されており、前記第2の評価制御ユニット(3B)は、接続された前記エネルギ源(VB1,VB2)と対応する前記センサエレメント(WSS)との間で検出されるセンサ電流(I)を評価する、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のセンサ装置(1)。
【請求項10】
各前記接続モジュール(10,10B)内に、接続された前記エネルギ源(VB1,VB2)と対応する前記センサエレメント(WSS)との間の前記センサ電流(I)を検出して測定電流(IM1,IM2)として前記第1の評価制御ユニット(3A)及び/又は前記第2の評価制御ユニット(3B)に供給する電流処理部(30)が配置されている、
請求項9に記載のセンサ装置(1)。
【請求項11】
各前記電流処理部(30)は、電流路に挿入された電流センサ(32)を含み、前記電流センサ(32)は、対応する前記センサ電流(I)の一部分(I/n)を分岐させ、前記第1の評価制御ユニット(3A)及び/又は前記第2の評価制御ユニット(3B)に転送する、
請求項7又は10に記載のセンサ装置(1)。
【請求項12】
前記第1の評価制御ユニット(3A)及び/又は前記第2の評価制御ユニット(3B)は、少なくとも接続された各前記センサエレメント(WSS)に対して1つの入力接続部(RMA)を有し、前記入力接続部(RMA)は、各前記センサ電流(I)の一部分(I/n)を各前記センサ電流(I)に対応する測定信号に変換する、
請求項11に記載のセンサ装置(1)。
【請求項13】
各前記電流処理部(30)は、電流調整部(34)を含み、前記電流調整部(34)は、対応する前記電流センサ(32)と前記第1の評価制御ユニット(3A)との間、及び/又は、対応する前記電流センサ(32)と前記第2の評価制御ユニット(3B)との間に配置されており、前記センサ電流(I)の一部分(I/n)を前記センサ電流(I)に対応する測定電流(IM1,IM2)に変換する、
請求項11に記載のセンサ装置(1)。
【請求項14】
前記電流処理部(30)は、エネルギ蓄積器(C)を含む第1の補助電圧形成部(35)を含み、前記エネルギ蓄積器(C)は、加算点(SP)に、前記エネルギ源(VB1,VB2)の給電電圧よりも低い第1の補助電圧(VH1)を送出し、前記加算点(SP)は、各前記接続モジュール(10)に含まれる切り替え装置(20)と前記電流センサ(32)との間の前記エネルギ蓄積器(C)を充電するために、接続された前記センサエレメント(WSS)のセンサ電流路に接続されている、
請求項13に記載のセンサ装置(1)。
【請求項15】
前記加算点(SP)は、それぞれ逆流防止ダイオード(D3)及び電流源(IQ)を介して、接続された前記センサエレメント(WSS)のセンサ電流路に接続されている、
請求項14に記載のセンサ装置(1)。
【請求項16】
前記電流処理部(30)は、直流電圧変換器(DC/DC)として構成されておりかつ前記第1の補助電圧(VH1)をより低い第2の補助電圧(VH2)に変換する第2の補助電圧形成部(36)を含む、
請求項14又は15に記載のセンサ装置(1)。
【請求項17】
前記第2の補助電圧(VH2)は、前記電流調整部(34)に供給される、
請求項16に記載のセンサ装置(1)。
【請求項18】
前記電流処理部(30)は、給電電圧が欠落した場合に、接続された1つのセンサエレメント(WSS)に対し、接続された他のセンサエレメント(WSS)のセンサ電流路から形成される第3の補助電圧(VH3)を供給する非常電圧形成部(37)を含む、
請求項14乃至17のいずれか一項に記載のセンサ装置(1)。
【請求項19】
前記非常電圧形成部(37)は、前記第2の補助電圧(VH2)をより高い第3の補助電圧(VH3)に変換する直流電圧変換器(38)と、スイッチング装置(SW)と、逆流防止ダイオード(D4)とを含み、前記スイッチング装置(SW)は、前記第3の補助電圧(VH3)を該当するセンサ電流路に接続する、
請求項16又は17を引用する請求項18に記載のセンサ装置(1)。
【請求項20】
個々の前記センサエレメント(WSS)は、それぞれ2線線路(L3)を介して、前記接続モジュール(10)に接続されている、
請求項1乃至19のいずれか一項に記載のセンサ装置(1)。
【請求項21】
前記少なくとも2つの制御装置(ECU1,ECU2)は、それぞれ2線線路(L1,L2)を介して個々の前記接続モジュール(10)に接続されている、
請求項1乃至20のいずれか一項に記載のセンサ装置(1)。
【請求項22】
個々の前記接続モジュール(10)は、それぞれASICチップとして構成されている、
請求項1乃至21のいずれか一項に記載のセンサ装置(1)。
【請求項23】
個々の前記接続モジュール(10)は、それぞれ対応する前記センサエレメント(WSS)のコネクタ内及び/又はケーシング内に配置されている、
請求項1乃至22のいずれか一項に記載のセンサ装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1の上位概念に記載の、車両用のセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術から、車輪ごとにそれぞれ、少なくとも1つのセンサエレメントを含む1つの車輪センサを有する、車両用のセンサ装置が公知である。個々の車輪センサは、一般に、2線の撚り線ケーブルを介して、例えば、ABS機能、ESP機能、ASR機能(ABS:アンチロックブレーキシステム、ESP:横滑り防止装置、ASR:アンチスリップレギュレーション)及び/又は坂道発進補助機能を実行する車両制動システム用の制御装置に接続される。通常、少なくとも1つのセンサエレメントの第1の端子は、制御装置を介してエネルギ源に接続されており(ハイサイド路)、少なくとも1つのセンサエレメントの第2の端子は、制御装置を介してアースに接続されている(ローサイド路)。少なくとも1つのセンサエレメントを通って流れるセンサ電流は、対応する車輪の回転数及び/又は回転速度に関する情報によって変調されており、ここで、制御装置の評価制御ユニットが、少なくとも1つのセンサエレメントとアースとの間で検出されるセンサ電流を評価する。
【0003】
独国特許出願公開第102015202335号明細書から、車輪センサ装置用のセンサケーシング、車輪センサ装置、車輪軸受装置、並びに、車両の車輪の回転数及び/又は回転速度の算定に適したセンサ装置を形成する方法が公知である。車輪センサ装置は、車輪の回転数及び/又は回転速度に関する少なくとも1つの第1のセンサ量を車両の少なくとも1つの評価及び/又は制御装置に供給可能である第1のセンサエレメントと、同一の車輪の回転数及び/又は回転速度に関する少なくとも1つの第2のセンサ量を少なくとも1つの評価及び/又は制御装置に供給可能である付加的な第2のセンサエレメントと、を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102015202335号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の開示
独立請求項1の特徴を有する車両用のセンサ装置は、別個の接続モジュールにより、少なくとも2つの制御装置と既存のセンサエレメントとが相互に接続されるという利点を有する。接続モジュールは、接続されたセンサエレメントのセンサ信号を少なくとも2つの制御装置に供給するので、少なくとも2つの制御装置の評価制御ユニットは、接続されたセンサエレメントのセンサ信号を同時に評価することができる。また、個々のセンサエレメントへの給電は、2つのエネルギ源の間で切り換えられ、これにより、第1のエネルギ源が故障した場合、自動的に第2のエネルギ源への切り替えが可能となる。測定位置ごとに、単一の単純なセンサエレメントのみを使用し、そのセンサ信号を2つの制御装置によって冗長的に評価することにより、冗長化によるほぼ同等の評価確実性のもとに、測定位置ごとに2つずつのセンサエレメントを使用する場合に比較して、著しいコスト削減が達成される。なぜなら、総ての測定位置のセンサ信号が2つの制御装置において評価され、個々のセンサエレメントの故障確率が低くなるからである。
【0006】
別個の接続モジュールにより、こうした車両用のセンサ装置のモジュラ状構造が可能となる。また、本発明の実施形態により、制御装置内の従来の評価コンセプトを維持することもできる。
【0007】
本発明の実施形態は、1つのセンサエレメントと、それぞれ1つずつ評価制御ユニット及びエネルギ源を有する少なくとも2つの制御装置とを含む、車両用のセンサ装置を提供する。第1の制御装置内においては、第1の評価制御ユニットが第1のエネルギ源に接続されており、第2の制御装置内においては、第2の評価制御ユニットが第2のエネルギ源に接続されている。この場合、少なくとも2つの制御装置とセンサエレメントとは、少なくとも1つの別個の接続モジュールを介して相互に接続されており、各接続モジュールは、対応するセンサエレメントの第1の端子を第1のエネルギ源及び/又は第2のエネルギ源に接続する。センサエレメントの第2の端子は、アースに接続されている。センサエレメントを通って流れるセンサ電流は、検出される測定量に関する情報によって変調されており、ここで、第1の評価制御ユニット及び/又は第2の評価制御ユニットは、検出されるセンサ電流を評価する。接続されたエネルギ源が故障した場合、接続モジュールが、それぞれ、各センサエレメントの第1の端子を他方のエネルギ源に接続する。
【0008】
一般に、本発明に係るセンサ装置の実施形態は、車両内のそれぞれの測定位置に分散配置された複数のセンサエレメントを含み得る。このように、本明細書におけるセンサ装置の実施形態は、好適には車両制動システム内で使用可能である。こうした制動システムにおいては、測定位置は、例えばそれぞれ1つの車輪に対応づけ可能であり、対応するセンサエレメントが、少なくとも、対応づけられた車輪の回転数及び/又は回転速度を検出可能である。もちろん、こうした測定位置において、他の測定量、例えば温度、圧力などを検出することもできる。
【0009】
評価制御ユニットとは、本明細書においては、検出されたセンサ信号を処理又は評価する電気回路であると理解することができる。評価制御ユニットは、ハードウェア及び/又はソフトウェアによって構成可能な少なくとも1つのインタフェースを有することができる。ハードウェアの構成においては、インタフェースは、例えば、評価制御ユニットの種々の機能を含むいわゆるシステムASICの一部であってよい。ただし、インタフェースは、固有の集積回路であってもよいし、又は、少なくとも部分的に個別の構成素子から成るものであってもよい。ソフトウェアの構成においては、インタフェースは、例えば、マイクロコントローラ上で他のソフトウェアモジュールと並んで設けられたソフトウェアモジュールであってよい。機械可読担体上、例えば半導体メモリ上、ハードディスクメモリ上又は光学メモリ上に記憶されており、評価制御ユニットによるプログラムの実行の際に評価を行うために使用されるプログラムコードを含む、コンピュータプログラム製品も有利である。
【0010】
制御装置とは、本明細書においては、液圧式制動システムに接続されて種々の制動機能、例えば、ABS機能、ESP機能、ASR機能(ABS:アンチロックブレーキシステム、ESP:横滑り防止装置、ASR:アンチスリップレギュレーション)及び/又は坂道発進補助機能を実行可能な電気機器、例えば制動制御装置であると理解することができる。ここで、2つの制御装置は、通常動作中に、種々の制動機能を実行することができる。制御装置のいずれか一方が故障した場合には、他方の制御装置が故障した制御装置の制動機能を担当するように構成可能である。
【0011】
センサエレメントとは、本明細書においては、対応づけられた車輪の領域において物理量又は物理量の変化を直接的に又は間接的に検出し、好適には電気センサ信号に変換する、電気構成素子であると理解される。このことは、例えば、音波及び/又は電磁波の送受信によって、及び/又は、磁界又は磁界の変化によって、行うことができる。受信した波の入射又は強度、波長、周波数、角度などを検出する、例えば光学プレート及び/又は蛍光面及び/又は半導体を含む光学センサエレメント、例えば赤外線センサエレメントも可能である。同様に、音響センサエレメント、例えば超音波センサエレメント、及び/又は、高周波センサエレメント、及び/又は、レーダセンサエレメント、及び/又は、磁界に応答するセンサエレメント、例えばホールセンサエレメント及び/又はMRセンサエレメント、及び/又は、例えば磁気誘導により発生する電圧によって磁界の変化を記録する誘導センサエレメントも考えられる。
【0012】
各従属請求項に記載されている措置及び発展形態により、独立請求項1に記載されている車両用のセンサ装置の有利な改善が可能となる。
【0013】
特に有利には、切り替え装置は、少なくとも接続された各センサエレメントに対して、共通のノード点を有する2つのダイオードを含むことが可能であり、共通のノード点には、当該共通のノード点に接続されたセンサエレメントのための給電電圧が印加可能である。この場合、第1のダイオードは、第1のエネルギ源を順方向で共通のノード点に接続可能であり、第2のダイオードは、第2のエネルギ源を順方向で共通のノード点に接続可能であり、これにより、共通のノード点には、第1のエネルギ源及び/又は第2のエネルギ源から給電される給電電圧が印加可能であって、より高い電圧が得られる。このようにすることによって、より大きい電圧降下と引き換えに、駆動信号なしで自動的に電圧源を切り替え可能な切り替え装置を、簡単かつ低コストに実現することができる。
【0014】
代替的に、切り替え装置は、少なくとも接続された各センサエレメントに対して、共通のノード点を有する2つのスイッチングエレメントを含むことが可能であり、共通のノード点には、当該共通のノード点に接続されたセンサエレメントのための給電電圧を印加することができる。ここでは、第1の駆動制御ユニットが、第1のスイッチングエレメントを駆動して、共通のノード点を第1のエネルギ源に接続させることができ、第2の駆動制御ユニットが、第2のスイッチングエレメントを駆動して、共通のノード点を第2のエネルギ源に接続させることができる。当該実施形態においては、どちらのエネルギ源が、好ましくは接続されたセンサエレメントへの給電に使用されるかを設定することができる。また、スイッチングエレメントとして電界効果トランジスタが使用される場合、センサ電流路における電圧降下を低減することができる。こうして、例えば、第1のエネルギ源が第1の電圧を供給したことを第1の電圧識別部が識別した場合に、第1の駆動制御ユニットにより第1のスイッチングエレメントを駆動して、共通のノード点を第1のエネルギ源に接続させることができる。また、第2のエネルギ源が第2の電圧を供給し、かつ、優先回路が第2のスイッチングエレメントの駆動を許容したことを第2の電圧識別部が識別した場合に、第2の駆動制御ユニットにより第2のスイッチングエレメントを駆動して、共通のノード点を第2のエネルギ源に接続させることができる。優先回路は、第1のエネルギ源が電圧を供給しなかったことを第1の電圧識別部が識別した場合に、第2のスイッチングエレメントの駆動を許容することができる。
【0015】
センサ装置の他の有利な構成においては、第1の評価制御ユニットが、接続されたエネルギ源と各センサエレメントとの間で検出されるセンサ電流を評価することができる。
【0016】
センサ装置の他の有利な構成においては、各センサエレメントの第2の端子は、第2の制御装置内でアースに接続可能である。これにより、第2の評価制御ユニットは、各センサエレメントとアースとの間で検出される各センサ電流を評価することができる。また、各接続モジュール内に電流処理部を配置することができ、当該電流処理部は、接続されたエネルギ源と各センサエレメントとの間の各センサ電流を検出して、これを第1の評価制御ユニットに供給可能である。さらに、第2の評価制御ユニットは、各センサ電流を直接的に第2の測定電流として受信して評価することができる。
【0017】
代替的に、各センサエレメントの第2の端子を、接続モジュール内で、アースに接続してもよい。当該実施形態においては、第1の評価制御ユニットと第2の評価制御ユニットとが、接続されたエネルギ源と各センサエレメントとの間で検出される各センサ電流を評価することができる。
【0018】
センサ装置の他の有利な構成においては、各接続モジュール内に電流処理部を配置することができ、当該電流処理部は、接続されたエネルギ源と対応するセンサエレメントとの間のセンサ電流を検出し、対応する測定電流として第1の評価制御ユニット及び/又は第2の評価制御ユニットに供給することができる。この場合、各電流処理部は、電流路に挿入された電流センサを含むことが可能であり、当該電流センサが、対応するセンサ電流の一部分を分岐させ、第1の評価制御ユニット及び/又は第2の評価制御ユニットに転送することができる。これにより、対応するセンサエレメントの第1の端子に流入するセンサ電流が測定され、等価であるものの格段に小さいセンサ電流の一部分が第1の評価制御ユニット及び/又は第2の評価制御ユニットに転送される。これにより、接続モジュール内の損失電力を低減することができる。
【0019】
センサ装置の他の有利な構成においては、第1の評価制御ユニット及び/又は第2の評価制御ユニットが、少なくとも接続された各センサエレメントに対して1つの入力接続部を有することができ、当該入力接続部は、各センサ電流の一部分を、各センサ電流に対応する測定信号に変換する。測定信号として、例えば、各センサ電流を表す電圧を形成することができる。当該実施形態においては、入力接続部は、例えば、より高い抵抗値を有するオーム抵抗を含むことが可能であり、当該オーム抵抗により、低減された測定電流から、センサ電流を表す電圧値が形成される。これにより、後続の評価回路又は後続の評価方法の変更は必要なくなる。
【0020】
代替的に、各電流処理部は、接続されたセンサエレメントに対して1つの電流調整部を含むものとしてもよく、当該電流調整部は、対応する電流センサと第1の評価制御ユニットとの間、及び/又は、対応する電流センサと第2の評価制御ユニットとの間に配置され、センサ電流の一部分を、センサ電流に対応する付属の測定電流に変換する。当該実施形態においては、評価制御ユニットの変更は必要とされない。
【0021】
センサ装置の他の有利な構成においては、電流処理部は、エネルギ蓄積器を含む第1の補助電圧形成部を含むことが可能であり、エネルギ蓄積器は、加算点に、エネルギ源の給電電圧よりも低い第1の補助電圧を送出する。また、加算点は、各切り替え装置と各電流センサとの間のエネルギ蓄積器を充電するために、接続されたセンサエレメントのセンサ電流路に接続可能である。第1の補助電圧は、例えば、エネルギ源の給電電圧よりも約1V低いものとしてよい。加算点は、例えば、それぞれ逆流防止ダイオード及び電流源を介して、接続されたセンサエレメントのセンサ電流路に接続可能である。さらに、電流処理部は、直流電圧変換器として構成可能でありかつ第1の補助電圧を格段に低い第2の補助電圧に変換可能である第2の補助電圧形成部を含み得る。当該第2の補助電圧は、好適には電流調整部に供給可能である。これにより、電流調整部は、第2の補助電圧源によって給電される耐負荷可能なエネルギ源として機能する。損失電力を全体として低く抑制するために、当該補助電圧源は、約2.5V乃至3Vの電圧を有する。有利には、当該第1の補助電圧源のエネルギは、第1のエネルギ源又は第2のエネルギ源から接続されたセンサエレメントの第1の入力側に印加される給電電圧から形成される。
【0022】
センサ装置の他の有利な構成においては、電流処理部は、給電電圧が欠落した場合に、接続された1つのセンサエレメントに対し、接続された他のセンサエレメントのセンサ電流路から形成された第3の補助電圧を供給可能である非常電圧形成部を含み得る。非常電圧形成部は、1つのセンサエレメントで2つの給電電圧とも故障した場合に介入を行う。非常電圧形成部は、例えば、約2.5V乃至3Vの第2の補助電圧を約8Vのより高い第3の補助電圧に変換する直流電圧変換器と、スイッチング装置と、逆流防止ダイオードとを含むことが可能であり、ここで、スイッチング装置は、第3の補助電圧を該当するセンサ電流路に接続する。
【0023】
センサ装置の他の有利な構成においては、個々のセンサエレメントを、それぞれ2線線路を介して接続モジュールに接続することができる。また、少なくとも2つの制御装置を、それぞれ2線線路を介して、個々の接続モジュールに接続することもできる。
【0024】
センサ装置の他の有利な構成においては、個々の接続モジュールは、それぞれASICチップとして構成可能である。さらに、個々の接続モジュールは、それぞれ対応するセンサエレメントのコネクタ内及び/又はケーシング内に配置可能である。
【0025】
本発明の実施例を図示すると共に、以下の説明において詳細に説明する。図中において、同一の参照番号は、同一の、又は、同等の機能を実行する、要素又はエレメントを表している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る、車両用のセンサ装置の第1の実施例を示す概略的なブロック図である。
図2】本発明に係る、車両用のセンサ装置の第2の実施例を示す概略的なブロック図である。
図3図1又は図2の本発明に係る、車両用のセンサ装置の、切り替え装置の第1の実施例を示す概略的なブロック図である。
図4図1又は図2の本発明に係る、車両用のセンサ装置の、切り替え装置の第2の実施例を示す概略的なブロック図である。
図5図1の本発明に係る、車両用のセンサ装置の、電流処理部の第1の実施例を示す概略的なブロック図である。
図6図1の本発明に係る、車両用のセンサ装置の、電流処理部の第2の実施例を示す概略的なブロック図である。
図7図1の本発明に係る、車両用のセンサ装置の、電流処理部の第3の実施例を示す概略的なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
発明の実施形態
図1及び図2から見て取れるように、本発明に係る、車両用のセンサ装置1,1A,1Bの図示の実施例には、センサエレメントWSSと、それぞれ1つずつ評価制御ユニット3A,3B及びエネルギ源VB1,VB2を有する少なくとも2つの制御装置ECU1,ECU2とが含まれる。図1及び図2からさらに見て取れるように、第1の制御装置ECU1内においては、第1の評価制御ユニット3Aが第1のエネルギ源VB1に接続されている。第2の制御装置ECU2内においては、第2の評価制御ユニット3Bが第2のエネルギ源VB2に接続されている。ここで、少なくとも2つの制御ユニットECU1,ECU2及びセンサエレメントWSSは、少なくとも1つの別個の接続モジュール10を介して相互に接続されている。各接続モジュール10は、対応するセンサエレメントWSSの第1の端子WSS1を第1のエネルギ源VB1及び/又は第2のエネルギ源VB2に接続する。センサ装置WSSの第2の端子WSS2は、アースに接続されている。また、各センサエレメントWSSを通って流れるセンサ電流Iは、検出される測定量に関する情報によって変調されており、ここでは、第1の評価制御ユニット3A及び/又は第2の評価制御ユニット3Bが、検出されるセンサ電流Iを評価する。接続モジュール10は、接続されたエネルギ源VB1,VB2が故障した場合、センサエレメントWSSの第1の端子WSS1を他方のエネルギ源VB2,VB1に接続する。これは、接続された第1のエネルギ源VB1が故障した場合、接続モジュール10が第2のエネルギ源VB2への切り替えを行い、接続された第2のエネルギ源VB2が故障した場合、接続モジュール10が第1のエネルギ源VB1への切り替えを行うことを意味する。
【0028】
一般に、本発明に係る、車両用のセンサ装置1,1A,1Bの実施形態には、それぞれ1つのこうしたセンサエレメントWSSを有する複数の測定位置が含まれる。分かり易くするために、図1及び図2においては、それぞれ単一のセンサエレメントWSSのみを示している。このように、本明細書におけるセンサ装置1,1A,1Bの各実施形態は、好適には、車両制動システムにおいて使用される。こうした制動システムにおいては、測定位置は、例えばそれぞれ1つの車輪に対応づけ可能であり、センサエレメントWSSは、少なくとも、対応する車輪の回転数及び/又は回転速度を検出することができる。従って、通常の四輪乗用車においては、センサ装置1,1A,1Bは4つのこうしたセンサエレメントWSSを有する。もちろん、こうした測定位置において、他の測定量、例えば温度、圧力などを検出することもできる。
【0029】
ここで、センサエレメントWSSの第2の端子WSS2は、直接的に、又は、中間接続された構成素子を介して、アースに接続可能である。
【0030】
図1及び図2からさらに見て取れるように、接続モジュール10は、図示の実施例においては、それぞれ切り替え装置20及び電流処理部30を含む。以下においては、図3及び図4を参照して切り替え装置の実施例を説明し、図5乃至図7を参照して電流処理部30の実施例を説明する。
【0031】
第1の評価制御ユニット3Aは、接続されたエネルギ源VB1,VB2と各センサエレメントWSSとの間で検出される各センサ電流Iを評価する。このために、各接続モジュール10内に電流処理部30が配置されており、当該電流処理部30は、接続されたエネルギ源VB1,VB2と各センサエレメントWSSとの間の各センサ電流Iを検出して、第1の評価制御ユニット3Aに供給する。これは、第1の評価制御ユニット3Aがハイサイド路のセンサ電流Iを評価することを意味する。
【0032】
図1からさらに見て取れるように、各センサエレメントWSSの第2の端子WSS2は、車両用のセンサ装置1Aの図示の第1の実施例においては、第2の制御装置ECU2内で測定抵抗RMBを介してアースに接続されており、第2の評価制御ユニット3Bが、各センサエレメントWSSとアースとの間で検出される各センサ電流Iを直接的に第2の測定電流IM2として受信して評価する。これは、第2の評価制御ユニット3Bがローサイド路で検出されるセンサ電流Iを評価することを意味する。
【0033】
図2からさらに見て取れるように、各センサエレメントWSSの第2の端子WSS2は、車両用のセンサ装置1Bの図示の第2の実施例においては、接続モジュール10B内でアースに接続されており、ここでは、第2の評価制御ユニット3Bが、接続されたエネルギ源VB1,VB2と各センサエレメントWSSとの間で検出されたセンサ電流Iを評価する。これは、第2の評価制御ユニット3Bがハイサイド路で検出されたセンサ電流Iを評価することを意味する。図2からさらに見て取れるように、各接続モジュール10B内に配置された電流処理部30が、接続されたエネルギ源VB1,VB2と各センサエレメントWSSとの間の各センサ電流Iを検出し、図示の第2の実施例においては、当該各センサ電流Iを対応する測定電流IM1,IM2として第1の評価制御ユニット3A及び第2の評価制御ユニット3Bに供給する。
【0034】
図3から見て取れるように、切り替え装置20Aは、図示の第1の実施例においては、共通のノード点Kを有する2つのダイオードD1,D2を含み、共通のノード点Kには、当該共通のノード点Kに接続されたセンサエレメントWSSのための給電電圧が印加される。ここでは、第1のダイオードD1は、第1のエネルギ源VB1を順方向で共通のノード点Kに接続する。第2のダイオードD2は、第2のエネルギ源VB2を順方向で共通のノード点Kに接続する。これにより、共通のノード点Kには、第1のエネルギ源VB1及び/又は第2のエネルギ源VB2から給電される給電電圧が印加され、より高い電圧が得られる。これは、第1のエネルギ源VB1が故障した場合、ノード点Kが第2のエネルギ源VB2から給電され、逆に第2のエネルギ源VB2が故障した場合、ノード点Kが第1のエネルギ源VB1から給電されることを意味する。2つのチャネルが完全に対称であれば、ノード点Kは、2つのエネルギ源VB1,VB2から1/2ずつ給電される。
【0035】
図4からさらに見て取れるように、切り替え装置20Bは、図示の第2の実施例においては、2つのスイッチングエレメント21,22を含み、当該スイッチングエレメント21,22は、好適には、電界効果トランジスタとして構成されておりかつ共通のノード点Kを有し、共通のノード点Kには、当該共通のノード点Kに接続されたセンサエレメントWSSのための給電電圧が印加される。図4からさらに見て取れるように、第1の駆動制御ユニット25は、第1のスイッチングエレメント21を駆動して、共通のノード点Kを第1のエネルギ源VB1に接続させる。第2の駆動制御ユニット26は、第2のスイッチングエレメント22を駆動して、共通のノード点Kを第2のエネルギ源VB2に接続させる。図4からさらに見て取れるように、第1の電圧識別部23は、第1のエネルギ源VB1が第1の電圧を供給したかどうかを識別する。第2の電圧識別部24は、第2のエネルギ源VB2が第2の電圧を供給したかどうかを識別する。また、切り替え装置20Bは、図示の第2の実施例においては、第1のエネルギ源VB1を第2のエネルギ源に優先させる優先回路27を含む。図示していない代替実施例においては、優先回路27は、第2のエネルギ源VB2を第1のエネルギ源VB1に優先させてもよい。第1の駆動制御ユニット25は、第1のエネルギ源VB1が第1の電圧を供給したことを第1の電圧識別部23が識別した場合に、第1のスイッチングエレメント21を駆動して、共通のノード点Kを第1のエネルギ源VB1に接続させる。第2の駆動制御ユニット26は、第2のエネルギ源VB2が第2の電圧を供給し、かつ、優先回路27が第2のスイッチングエレメント22の駆動を許容したことを第2の電圧識別部24が識別した場合に、第2のスイッチングエレメント22を駆動して、共通のノード点Kを第2のエネルギ源VB2に接続させる。図示の第2の実施例においては、優先回路27は、第1のエネルギ源VB1が電圧を供給しなかったことを第1の電圧識別部23が識別した場合に、第2のスイッチングエレメント22の駆動を許容する。優先回路27は、第2の駆動制御回路26が形成した駆動信号を第2のスイッチングエレメント22に導通させるのみであるので、当該優先回路27により、第2のエネルギ源VB2をより迅速に共通のノード点Kに接続することができる。
【0036】
以下においては、図5乃至図7を参照して、図1の第1の実施例の車両用のセンサ装置1Aの電流処理部30の種々の実施例を説明する。図5乃至図7から見て取れるように、電流処理部30は、電流路に挿入された電流センサ32を含み、当該電流センサ32は、各センサ電流Iの一部分I/nを分岐させて、第1の評価制御ユニット3Aへ転送する。また、電流センサ32は、センサ電流Iを、対応するセンサエレメントWSSの第1の端子WSS1へ導通する。
【0037】
図5からさらに見て取れるように、電流センサ32は、図示の実施例においては、2つのオーム抵抗R1,R2、1つのオペアンプOP1及び1つのトランジスタT1を含む。上述した電気構成素子は、図示のように相互に接続されており、このため、電流センサ32は、第1の制御装置ECU1のハイサイド路において、単純なカレントミラー回路とは異なり、小さい電圧降下を生じさせる。電流センサ32により、センサエレメントWSSの第1の端子WSS1に流入するセンサ電流Iが測定され、第1の制御装置ECU1内の損失電力を低減するために、等価であるものの格段に小さい電流I/nが第1の評価制御ユニット3Aに供給される。センサ電流Iの付加的な一部分I/nが分岐されると、エネルギ源VB1,VB2が当該センサ電流Iの付加的な一部分I/nを利用可能になることに注意されたい。ここで、接続されたエネルギ源VB1,VB2から取り出される全電流(I/n+I)は、例えば50mAである設定された最大値を超えてはならない。v-プロトコルにおいては、センサ電流Iは、7mA又は14mA又は28mAの値を有する。当該値は、電流センサ32によって著しく低減可能である。従って、nに対して例えば50である値を選定することができる。評価のための第1の評価制御ユニット3Aに対し、v-プロトコルのための対応する測定信号が形成されるように、第1の評価制御ユニット3Aが少なくとも接続された各センサエレメントWSSに対して有する1つの入力接続部を相応に調整することができ、これにより、各センサ電流Iの一部分I/nが、各センサ電流Iに対応する測定信号に変換される。即ち、例えば約10Ωの第1の測定抵抗RMAは、電流センサ32からの各センサ電流Iの一部分I/nが直接的に処理可能となるように、ここでは50である値に対応する係数nで、約500Ωへ高めることができる。これにより、図5に破線のみで示されているように、第1の測定電流IM1を供給する後続の電流調整部34を省略することができるので、第1の制御装置ECU1を調整するための全体コストを大幅に低減することができる。
【0038】
図6及び図7から見て取れるように、電流処理部30は、図示の実施例においては、電流センサ32と第1の評価制御ユニット3Aとの間に配置された1つの電流調整部34を含む。電流調整部34は、耐負荷可能なエネルギ源として構成されており、各センサ電流Iの一部分I/nを、各センサ電流Iに対応する付属の第1の測定電流IM1に変換する。図6及び図7からさらに見て取れるように、電流処理部30は、加算点SPに第1の補助電圧VH1を送出するエネルギ蓄積器Cを有する第1の補助電圧形成部35を含む。第1の補助電圧VH1は、例えばそれぞれ約12Vの値を有するエネルギ源VB1,VB2の給電電圧よりも、約1V低い。加算点SPは、各切り替え装置20と各電流センサ32との間のエネルギ蓄積器Cを充電するために、接続されたセンサエレメントWSSのセンサ電流路に接続されている。図示の実施例においては、加算点SPは、それぞれ逆流防止ダイオードD3及び電流源IQを介して、接続されたセンサエレメントWSSのセンサ電流路に接続されている。また、電流処理部30は、損失電力を全体として低く抑制するために、直流電圧変換器DC/DCとして構成されておりかつ第1の補助電圧VH1を格段に低い例えば2.5V乃至3Vの第2の補助電圧VH2に変換する第2の補助電圧形成部36を含む。第2の補助電圧形成部36は、電流調整部34に第2の補助電圧VH2を供給する。
【0039】
図7からさらに見て取れるように、電流処理部30は、図示の実施例においては、給電電圧が欠落した場合に、接続された1つのセンサエレメントWSSに対し、接続された他のセンサエレメントWSSのセンサ電流路から形成された約8Vの第3の補助電圧VH3を供給する非常電圧形成部37を含む。非常電圧形成部37は、図示の実施例においては、第2の補助電圧VH2をより高い第3の補助電圧VH3に変換する直流電圧変換器38と、スイッチング装置SWと、逆流防止ダイオードD4とを含む。スイッチング装置SWは、第3の補助電圧VH3を該当する電流路に接続し、これにより、第3の補助電圧VH3が、対応するセンサエレメントWSSに供給される。
【0040】
図2に示した第2の実施例のセンサ装置1Bにおいては、図示していない対応する電流処理部30が、電流路に挿入された2つの電流センサ32を含み、ここでは、2つの電流センサ32によって抵抗R1が利用される。電流センサ32は、それぞれセンサ電流Iの一部分I/nを分岐させる。付加的な2つのセンサ電流Iの一部分I/nを分岐させると、エネルギ源VB1,VB2が、当該付加的な2つのセンサ電流Iの一部分I/nを利用することが可能になることに注意されたい。即ち、接続されたエネルギ源VB1,VB2から取り出された全電流(2(I/n)+I)が、例えば50mAである設定された最大値を超えてはならない。この場合、第1の電流センサ32は、センサ電流Iの分岐された一部分I/nを第1の評価制御ユニット3Aに転送し、第2の電流センサ32は、センサ電流Iの分岐された一部分I/nを第2の評価制御ユニット3Bに転送する。第2の制御装置ECU2の第2の評価制御ユニット3Bへの第2の測定電流IM2の供給は、第1の制御装置ECU1の第1の評価制御ユニット3Aへの第1の測定電流IM1の供給と同様に行われる。
【0041】
好適には、接続モジュール10は、ASICチップとして構成される。ここで、個々の接続モジュール10は、それぞれ対応するセンサエレメントWSSのコネクタ内及び/又はケーシング内に配置可能である。代替的に、接続モジュール10は、車両内の他の適当な組込位置に組み込むこともできる。
【0042】
図1及び図2からさらに見て取れるように、個々のセンサエレメントWSS及び少なくとも2つの制御装置ECU1,ECU2は、図示の実施例においては、それぞれ2線線路L1,L2,L3を介して対応する接続モジュール10に接続されている。これにより、配線コストの簡単化が達成される。
【0043】
本発明の実施形態により、従来技術から公知の単純なセンサエレメントが同時に2つの制御装置によって使用される、車両用のセンサ装置が提供される。各制御装置は、従来技術から公知であって、変更なしの又はわずかな調整のみの評価制御ユニットを有することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7