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特許7160949少なくとも1つの物質を分配するための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】少なくとも1つの物質を分配するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/20 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
A61M5/20 560
A61M5/20 510
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020566639
(86)(22)【出願日】2019-05-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019063710
(87)【国際公開番号】W WO2019229010
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-01-26
(31)【優先権主張番号】18174940.9
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520011887
【氏名又は名称】エスエイチエル・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・エグロフ
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表昭61-502865(JP,A)
【文献】特表平07-501234(JP,A)
【文献】国際公開第2017/085538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの物質を、特に患者に分配するための装置(9)であって、
第1のピストンロッド(31)を有する第1のピストン(3)を備えた、第1の物質(A)を含む第1の容器(1)と、
第2のピストンロッド(41)を有する第2のピストン(4)を備えた、第2の物質(B)を含む第2の容器(2)と、
注射装置と、
前記第2の容器(2)の内容物を前記第1の容器(1)に誘導し、前記第1の容器(1)の内容物を前記注射装置に誘導するための誘導装置(5)と、を含んでおり、
前記第1の容器と前記第2の容器(2)とは、接続要素(51、52)それぞれを介して前記誘導装置(5)と流体接続を形成するために、前記装置(9)内で移動できるように配置されており、
前記第1のピストン(3)と前記第2のピストン(4)とは、それぞれ、予負荷を加えられた少なくとも1つのバネ要素(32、34、42)によって移動可能であり、
前記第1のピストンロッド(31)の自由端(311)と、前記第2のピストンロッド(41)の自由端(411)とは、共通の保持部材(6)によって解除可能に保持されており、
前記共通の保持部材(6)は、前記共通の保持部材(6)の移動によって、後続の前記第1のピストンロッド(31)及び前記第2のピストンロッド(41)が解除されると共に、前記第1のピストンロッド(31)及び前記第2のピストンロッド(41)が前記共通の保持部材(6)の移動方向に対して略垂直に移動されるように構成されている装置(9)。
【請求項2】
プレート状に形成された前記共通の保持部材(6)が、前記第1のピストンロッド(31)と前記第2のピストンロッド(41)とを、予負荷を加えられた前記バネ要素(32、42)それぞれの付勢に抗して保持している、請求項1に記載の装置(9)。
【請求項3】
前記共通の保持部材(6)が、前記第1のピストンロッド(31)の自由端(311)に関する少なくとも1つのリセス(61)と、前記第2のピストンロッド(41)の自由端(411)に関する少なくとも1つのリセス(62)とを有しており、
前記第1のピストンロッド(31)の自由端(311)と、前記第2のピストンロッド(41)の自由端(411)とが、それぞれ窪み(312、412)を有しており、前記窪みは、前記共通の保持部材(6)と解除可能に係合しており、
前記第1のピストンロッド(31)及び前記第2のピストンロッド(41)の自由端(311、411)の大きさと、前記リセス(61、62)それぞれの大きさ及び/又は前記窪み(312、412)それぞれの深さとは、前記第1のピストンロッド(31)及び前記第2のピストンロッド(41)の自由端(311、411)が、異なって、前記共通の保持部材(6)と協働するように選択されている、請求項1又は2に記載の装置(9)。
【請求項4】
前記第1のピストンロッド(31)の自由端(311)に関する前記共通の保持部材(6)における前記リセス(61)が、略三角形の形状を有し、前記第2のピストンロッド(41)の自由端(411)に関する前記共通の保持部材(6)における前記リセス(62)は、概ね半円形の形状を有しており、前記第1のピストンロッド(31)の自由端(311)は、略三角形の形状を有し、前記第2のピストンロッド(41)の自由端(411)は、略半円形の形状を有し、及び/又は、
前記第2のピストンロッド(41)の自由端(411)における前記窪み(412)の深さは、前記第1のピストンロッド(31)の自由端(311)における前記窪み(312)の深さよりも大きい、請求項3に記載の装置(9)。
【請求項5】
前記第1のピストン(3)の予負荷を加えられた少なくとも1つの前記バネ要素(32)が、前記第1のピストンロッド(31)の解除の後、前記第1のピストン(3)を、前記第1の容器(1)と共に、前記装置(9)に対して移動させ、前記第2のピストン(4)の予負荷を加えられた少なくとも1つの前記バネ要素(42)が、前記第2のピストンロッド(41)の解除の後、前記第2のピストン(4)を、前記第2の容器(2)と共に、前記装置(9)に対して移動させ、前記第2の容器(2)の内部に配設されたストッパ(21)に衝突させ、引き続いて、前記第2のピストン(4)を、前記第2の容器(2)に対して移動させる、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置(9)。
【請求項6】
前記第1の物質(A)が、前記第2の物質(B)とは異なる、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置(9)。
【請求項7】
前記第2の物質(B)が液体であり、前記第2のピストン(4)を前記第2の容器(2)の容器端部に対して変位させることによって、前記液体が前記第1の容器(1)に移され、前記液体は前記第1の容器内で前記第1の物質(A)と混合され、溶液を生成し、前記第1の容器(1)内の前記溶液は、前記第1のピストン(3)を前記第1の容器(1)の容器端部に対して変位させることによって、前記注射装置を通じて分配され得る、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置(9)。
【請求項8】
前記第1の物質(A)が固体、特に凍結乾燥物である、請求項7に記載の装置(9)。
【請求項9】
対応する前記バネ要素(32)に基づく前記第1のピストンロッド(31)の自由端(311)の解除によって、前記誘導装置(5)と前記第1の容器(1)との間に流体接続が形成され、対応する前記バネ要素(42)に基づく前記第2のピストンロッド(41)の自由端(411)の後続の解除によって、前記誘導装置(5)と前記第2の容器(2)との間に流体接続が形成され、前記第2の物質(B)が、前記誘導装置(5)を通じて、前記第2の容器(2)から前記第1の容器(1)に移動される、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置(9)。
【請求項10】
前記共通の保持部材(6)の長手軸が、前記第1のピストンロッド(31)及び前記第2のピストンロッド(41)の長手軸に対して略垂直に配置されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置(9)。
【請求項11】
前記装置(9)が、さらに前記共通の保持部材(6)と機械的に作用接続された作動部材(8)を有しており、前記作動部材(8)の移動が、前記共通の保持部材(6)の移動につながり、前記作動部材(8)の長手軸は、前記共通の保持部材(6)の長手軸に対して略垂直に配置されており、前記作動部材(8)の移動方向は、前記共通の保持部材(6)の移動方向に対して、略垂直に延在している、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置(9)。
【請求項12】
前記誘導装置(5)が、前記第1の容器(1)との流体接続のための第1の接続要素(51)と、前記第2の容器(2)との流体接続のための第2の接続要素(52)とを有しており、前記接続要素(51、52)それぞれは、前記第1の容器及び前記第2の容器(1、2)それぞれの隔壁(12、22)を貫通するための針状突起として構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置(9)。
【請求項13】
前記誘導装置(5)が、前記注射装置への流体接続を有しており、及び/又は、前記誘導装置(5)が、弁要素(54)を、さらに一方向弁(54)、特に戻し弁(54)を有している、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置(9)。
【請求項14】
前記第1の容器(1)が、第1の容器端部と第2の容器端部とを有しており、前記第2の容器(2)は、第1の容器端部と第2の容器端部とを有しており、前記第1のピストン(3)と前記第2のピストン(4)とは、前記第1の容器端部それぞれと前記第2の容器端部それぞれとの間で変位可能であり、前記第1のピストン(3)を前記第1の容器(1)の前記第1の容器端部に対して変位させることによって、前記第1の容器(1)の内容物が前記注射装置によって分配され得る、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置(9)。
【請求項15】
前記第1の容器及び前記第2の容器(1、2)それぞれがシリンダ状に形成されており、及び/又は、前記第2の容器(2)が、前記装置(9)内で、前記第1の容器(1)に対して平行に、特に同じ方向において配置されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置(9)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの物質を、特に患者に分配するための装置及び方法に関する。より正確に言うと、本発明は、特に、使用者自身による、すなわち一般的には患者による、少なくとも1つの物質の自動注射のための装置及び方法に関するものであり、本発明に係る装置は自動注射器とも呼ばれ、本発明に係る方法は、本発明に係る装置、すなわち自動注射器を用いた自動注射とも呼ばれ得る。この際、自動注射器は、一般的に、通常は液状の処方/剤形で存在する医療用物質の、非経口注射による投与のために用いられる医療機器に相当する。従来、自動注射器は、医療用物質の注射による治療の際に、医薬品有効成分の注射が、医師又はその他の医療従事者が不在の場合にも望ましい状況において、例えば注射されるべき有効成分が可能な限り迅速に投与されねばならないような緊急事態において、用いられる。自動注射器を使用する場合、注射は、一般的に使用者/患者自身によって行われるが、例えば患者自身がもはや自動注射器を自身で使用できない場合には、第三者によっても行われ得る。
【背景技術】
【0002】
医療用物質又は医薬品有効成分の液剤の投与の際、大抵の場合、明確に定められた量の物質を患者に分配することが必要である。しばしば、これらの物質、一般的には医薬品は、この際に患者の体内に注入されねばならない。一般的に、非経口注射のためには、注射器、医薬品ペン型注入器(いわゆるPens)又は医薬品ポンプが用いられる。しかしながら、患者を液状製剤又は有効成分溶液で治療することが望ましい、多くの緊急事態の状況も存在する。このような状況においては、事情によって、静脈注射を行うことが不可能であるとしても、有効成分溶液を可能な限り迅速に注射によって投与することは、本質的に重要であり得る。しかしながら、この際、緊急事態の種類に応じて注射されるべき様々な物質は、大抵は、互いに大きく異なっている。例えば、市販されているインシュリンは既に、液剤として比較的長い時間にわたって保存され、使用者によって携行され、必要に応じて、特筆すべき準備無しに、直接体内に注入され得るが、これに対して、比較的長い期間にわたっては液状の剤形で保存できない調合薬に対しては、投与の前又は投与の際の要求が増大する。例えば、特にバイオテクノロジーによって製造された有効成分は、しばしば、冷凍乾燥又は凍結乾燥した形状においてのみ、比較的長い期間にわたって保存可能であるが、その大抵は粉末状の固体形状ゆえに、非経口注射によっては投与され得ず、投与の前に、注射可能な液体の形状にされなければならない。このような凍結乾燥物は、その投与の直前に初めて、例えば生理食塩液等の注射液に溶かされ、例えば、注射器に吸い上げられた後、注射される。とは言え、このようなプロセスは、2つの液体の混合を要する調合薬の場合にも必要であり得る。しかしながら、緊急事態に使用する際、大抵は、使用者が既にショック状態にあるのか、又は、有効成分が投与されるために、多くの時間を失ってはならないのかという問題が存在する。対応して、凍結乾燥物を含む注射液の手による調合、続いて行われる注射器での溶液の吸い上げ、及び、後続の溶液の注射は、既に長過ぎる時間を要しているか、又は、複雑すぎる行為を要し得るものであり、最終的には、生命にとって重要な有効成分の注射を妨げる。
【0003】
上述の問題の解決法として、既に長いこと、自動注射装置又は自動注射器が用いられており、自動注射装置又は自動注射器は、通常は、その使用の前に安全に保管され、使用者/患者によって携行可能であり、大抵は安全かつ容易に操作可能であり、一般的には、各緊急事態に関して、又は、使用者の各病像に合わせて、予め設定された正しい投与量の注射されるべき物質を、液剤で含んでいる。例えば、特許文献1は、患者が自身で凍結乾燥物の再構成及び投与を実施できるような、自動注射装置を記載している。特許文献1に記載された注射装置の機能の仕方は、希釈剤が乾燥した医薬品成分と所定の手動の操作手順によって混合された後、第2の手動の操作手順が実行されねばならず、これによって、注射針が患者の筋肉組織に導入され、液化した薬剤が、注射針を通じて、筋肉組織に注入される、というものである。特許文献1に記載された実施例は、特に、それぞれバネで動作するストッパを有する2つのカルプーレの配置を示しており、安全錠の回転と、第1のカルプーレのストッパの第1のピンの付加的な解除とによって、液体が他のカルプーレに移され、当該カルプーレ内で、液体は揺さぶられて、凍結乾燥物と混合される。第2のピンの解除によって、次に、第2のカルプーレのストッパが、バネによって動かされ、これによって、液体と凍結乾燥物との混合物又は溶液は、同じ操作行為によって露出した注射針を通じて分配される。しかしながら、特許文献1に記載された2つの別個のカルプーレを備えた注射装置は、特に、両方のカルプーレが既に互いに概ね接続されており、これによって、注射装置内での凍結乾燥物の無菌輸送がもはや与えられていないという決定的な欠点を有している。加えて、両方のカルプーレは、注射装置の使用前に、各カルプーレの内容物の無菌状態を維持しながら、互いとは別に交換又は代替することができない。記載された注射装置の場合、凍結乾燥物又は希釈剤の品質保証期間の終了は、対応して、注射装置全体の完全な交換という結果をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第1986/006965号
【文献】国際公開第2017/211851号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、先行技術の上述の問題に鑑みて、本発明の課題は、好ましくは操作が容易になり、先行技術の欠点を克服した、少なくとも1つの物質を分配するための装置及び対応する方法を提供することにある。これは特に、2つの異なる容器内でその無菌状態を維持された2つの物質の自動混合に関係する。自明のことながら、構造に応じて、物質の自動注射の際の装置の全体的な操作も単純になるべきであり、様々なピストンバネの始動を組み合わせた自動注射は、より痛みを感じさせない、より体に配慮した、より安全なものになるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
先行技術の上述の問題は、本発明によると、添付された請求項に記載された、物質を分配するための装置と、対応する方法とによって解決される。
【0007】
より正確に言うと、本発明は、少なくとも1つの物質を分配するための装置を提供しており、分配されるべき物質は、2つの異なる物質、すなわち少なくとも1つの医薬品有効成分を含む第1の物質と、液体形状で存在し、第1の物質との混合後に、注射可能な物質を形成する第2の物質との混合物から成るものである。
【0008】
このとき、第1の物質は、純粋な医薬品有効成分であるか、又は、純粋な医薬品有効成分と、1つ若しくは複数のさらなる化学的(特に薬剤として容認できる)化合物との混合物であってよく、第1の物質は、液体の形状又は固体の形状で存在し得る。好ましくは、第1の物質は、固体形状において、特にアモルファス形状で存在する。特に、凍結乾燥物が好ましい。第1の物質は、任意で、1つ又は複数のさらなる医薬品有効成分を含み得る。第1の物質が、さらなる医薬品有効成分を含まないことが好ましい。
【0009】
第2の物質は、1つのみの(特に薬剤として容認できる)化学的化合物から成る液体か、又は、2つ又はより多くの(特に薬剤として容認できる)化学的化合物の混合物から成る液体若しくはエマルションであってよい。特に、例えば生理食塩液等の溶液等である。第2の物質が液体である場合、第2の物質は、溶解用液体とも呼ばれる。特に好ましいのは、凍結乾燥物を溶解するための再構成溶液である。第2の物質は、任意で、1つ又はより多くのさらなる医薬品有効成分を含んでいてよい。第2の物質が、さらなる医薬品有効成分を含んでいないことが好ましい。
【0010】
第1の物質と第2の物質との混合によって生成される、分配されるべき物質は、液体又はエマルションであり、特に溶液であり得る。
【0011】
分配されるべき物質の分配は、好ましくは自動注射器という意味で自動に行われ、特に、例えば本発明に係る装置の使用者等の患者に対して行われる。本発明に係る装置は、このために、第1の容器を有しており、第1の容器は、第1の物質を含んでおり、第1の容器には、いわゆる第1のピストンロッドが接続された第1のピストンが設けられており、第1の容器は、装置内で移動できるように配置されており、すなわち、装置内部で、少なくともその長手方向において、又は、その長手軸に沿って移動することができる。この際、第1のピストンと第1のピストンロッドとは、好ましくは一体的に構成されている。本発明に係る装置は、さらに、第2の容器を有しており、第2の容器は、第2の物質を含んでおり、第2の容器には、いわゆる第2のピストンロッドが接続された第2のピストンが設けられており、第2の容器は、同様に、装置内で移動できるように配置されており、すなわち、同様に、装置内部で、少なくともその長手方向において、又は、その長手軸に沿って移動することができる。第2のピストンと第2のピストンロッドとは、好ましくは一体的に構成されている。好ましくはシリンダ形状の容器は、装置内部で、例えば装置内のガイドレール又はガイド壁を通じて、各容器長手方向において、すなわち各容器の軸方向延在部分に沿って移動できるように誘導されていてよく、装置は、対応して、各容器の軸方向の最大移動を制限する。容器の移動における互いに対する妨害を防止するために、両方の容器は、装置内で、互いに対して略平行に、特に同じ方向に配置されていてよい。この装置の態様によって、第2の容器の種類、及び、その第1の容器に対する位置決めに関して、多様な可能性が生じ、これによって、先行技術に対して、小型かつ人間工学的で、改善された操作性を提供し、患者によってより容易に携行され得る装置が供給され得る。第1の容器及び第2の容器は、標準的なカルプーレ又はバイアルであり得る。このような容器は、先行技術において定着しており、特に一般的に認可及び登録手続きが課せられている医薬品の場合、規制に関する要求を満たしている。
【0012】
本発明に係る装置は、さらに、少なくとも1つの物質、すなわち両方の容器の内容物の患者への最終的な注射に用いられる注射装置と誘導装置とを有しており、誘導装置は、一方では第2の容器の内容物の、第1の容器への又は第1の容器内への誘導のために設けられており、他方では、同様に、第1の容器の内容物の、注射装置への又は注射装置内への誘導のために設けられている。当該注射装置は、皮下への、筋肉内への、静脈内への、動脈内への、関節内への、心腔内への、皮内への、骨内への、腹腔内への、肺内への、クモ膜下への、硝子体内への、又は、体腔内(好ましくは皮下又は筋肉内)への分配に適したものであり得る。特に好ましいのは、皮下への分配である。注射装置は、単純な注射カニューレか、又は、例えば特許文献2から知られているような、複雑な構造であってよい。特許文献2の内容は、本明細書に受容され得る。
【0013】
本発明に係る装置の場合、第1の容器のピストン、すなわちいわゆる第1のピストンと、第2の容器のピストン、すなわちいわゆる第2のピストンとは、それぞれ予負荷を加えられた少なくとも1つのバネ要素を通じて、当該バネ要素の作動後に移動可能であり、すなわち、第1の容器の第1のピストンは、いわゆる第1のバネ要素によって、第2の容器の第2のピストンは、いわゆる第2のバネ要素によって、各バネ要素が解除され、対応して、その予負荷がバネ要素の伸長に変換されると同時に、動かされ得る。この際、予負荷を加えられたバネ要素それぞれは、予負荷を加えられたコイルバネの形状で存在していてよく、その予負荷は、作動の後に、各バネ要素の軸方向の変位に変換される。より正確に言うと、第1のバネ要素は、第1のピストン又は第1の容器と直接、作用接続され、第1のピストンロッドを通じて誘導されており、コイルバネを用いる場合は、例えば第1のピストンロッドが、第1のバネ要素又は第1のコイルバネの内部に配置されていてよく、これによって、第1のコイルバネの予負荷が維持される。類似の構成は、第2のバネ要素においても用いられ得る。このような予負荷を加えられた1つ又は複数のバネ要素を設けることによって、構造的に容易な方法で、別個に駆動部を必要とせずに、各ピストン又は各容器の自力での変位をもたらすことが可能になる。
【0014】
本発明に係る装置において、第1のピストンロッドの自由端と、第2のピストンロッドの自由端とは、共通の保持部材によって解除可能に保持されており、共通の保持部材は、共通の保持部材の移動によって、第1のピストンロッドと第2のピストンロッドとが連続して解除されるように、すなわち、まず第1のピストンロッドが解除され、次に、第2のピストンロッドが解除されるように構成されている。これは、第2のピストンが、第2のピストンロッド及び第2のバネ要素を通じて、その長手方向において、又は、その長手軸に沿って、装置内で動かされる前に、まず第1のピストンが、第1のピストンロッド及び第1のバネ要素を通じて、その長手方向において、又は、その長手軸に沿って、装置内で動かされるという利点を有している。この際、本発明の好ましい態様によると、共通の保持部材の長手軸は、第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドの長手軸に対して略垂直に配置されており、共通の保持部材の移動方向は、両方のピストンロッドの移動方向に対して略垂直に延在し得る。対応して、共通の保持部材と両方のピストンロッドとから成るアセンブリは、本発明に係る装置において、好ましくは、共通の保持部材の、その長手方向における機械的な移動によって、第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドが連続して解除されるように、すなわち、まず第1のピストンロッドが解除された後に、バネによって、第1のピストンロッドがその長手方向において、又は、その長手軸に沿って、すなわち、共通の保持部材の移動に対して略垂直又は略直角に移動し、次に、第2のピストンロッドが解除された後、バネによって、第2のピストンロッドがその長手方向において、又は、その長手軸に沿って、すなわち、共通の保持部材の移動に対して略垂直又は略直角に移動するように構成されている。
【0015】
両方の容器が、上述したように、装置内で移動できるように配置されているという事実に基づいて、第1のバネ要素によって引き起こされる第1のピストンの移動は、装置内での第1の容器の移動を引き起こし、これに続く第2のバネ要素によって引き起こされる第2のピストンの移動は、装置内での第2の容器の移動を引き起こす。対応して、トリガー部材又は作動部材とも呼ばれ得る共通の保持部材の操作を通じて、及び、その結果として連続して生じる第1のピストンロッドの解除と、続く第2のピストンロッドの解除とを通じて、まず、第1のバネ要素の弾力又は弾性による変位に従う第1の容器の移動が、次に、第2のバネ要素の弾力又は弾性による変位に従う第2の容器の移動が、引き起こされ得る。これによって、共通の保持部材は、本発明に係る装置の両方のピストンの時間的に連続する移動を引き起こすことが可能であり、当該移動は、予負荷を加えられた両方のバネ要素によって引き起こされる。
【0016】
対応して、本発明の好ましい態様に係る共通の保持部材は、第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドを、予負荷を加えられた各バネ要素の付勢に抗して保持しており、すなわち、第1のピストンロッドを第1のバネ要素の付勢に抗して、第2のピストンロッドを第2のバネ要素の付勢に抗して保持している。この際、各バネ要素は、共通の保持部材と各ピストンとの間に、予負荷で保たれて配置されていてよく、共通の保持部材によるピストンロッドの各自由端の解除は、バネ要素を解除するであろう。すなわち、バネ要素の予負荷がバネの変位に変換されることが可能になり、これによって、各ピストンの移動が引き起こされ得る。この際、さらなる好ましい態様によると、共通の保持部材は、略プレート状に形成されており、すなわち、好ましくは平板の形状を主に示しており、当該形状は、用途又は付加的な機能に応じて、リセス及び突起等を、特に製造に起因する性質のリセス及び突起等も、有し得る。同様に、代替的に、ピストンロッドの自由端の解除可能な保持機能が実行され得る限りにおいて、共通の保持部材が、ディスク状、半円状等に形成されていてもよいことが考えられ得る。
【0017】
本発明のさらなる好ましい態様によると、共通の保持部材は、第1のピストンロッドの自由端に関する少なくとも1つのリセス、すなわちいわゆる第1のリセスと、第2のピストンロッドの自由端に関する少なくとも1つのリセス、すなわちいわゆる第2のリセスを有している。この際、第1のピストンロッドの自由端は、第1のピストンが固定された第1のピストンロッドの端部とは反対側に配置されており、すなわち、第1の容器から離れて配置されており、当該自由端は、窪み、すなわち、好ましくは溝等の形状における、いわゆる第1の窪みを有している。これに対応して、第2のピストンロッドの自由端は、第2のピストンが固定された第2のピストンロッドの端部とは反対側に配置されており、すなわち、第2の容器から離れて配置されており、当該自由端は同様に、窪み、すなわち、好ましくは溝等の形状における、いわゆる第2の窪みを有している。この際、第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドの両方の窪みは、共通の保持部材と解除可能に係合している。対応して、各窪みの少なくとも1つの部分は、共通の保持部材の1つの部分と重なっており、当該保持部材の部分は、各リセスを取り囲んでいるので、共通の保持部材の対応する部分を各ピストンロッドの窪みから機械的に引き抜くことによって、各ピストンロッドの自由端と共通の保持部材との間の接続が解除され、これによって、各ピストンロッドは、そのバネによる移動のために、上述したように解除される。
【0018】
上述した第1のピストンロッドの解除と、これに続く第2のピストンロッドの解除とを実施するために、第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドの自由端の大きさと、各リセスの大きさ、及び/又は、各窪みの深さとは、第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドの自由端が、共通の保持部材と異なって協働するように選択されている。これは、リセスと窪みとの組み合わせそれぞれが、第1のリセスと第1の窪みとの組み合わせが、第2のリセスと第2の窪みとの組み合わせとは異なる時点で、共通の保持部材がピストンロッド端部の窪みから外へ移動する際に、互いから解除されるように選択されている、ということを意味している。両方のピストンロッドの自由端の解除の時間的な順序は、対応して、各ピストンロッドの自由端のそれぞれの大きさを、各ピストンロッドの自由端と各リセスとの間で異なるカバーが得られるように選択することによって得られるか、又は、ピストンロッド端部における窪みの異なる深さの選択によって得られるか、又は、これらの組み合わせから得られる。ここでは、カバー又はカバー領域は、ピストンロッドの自由端の内の1つが、その窪みを通じて、共通の保持部材が両方のピストンロッド端部を係合させている時点において、対応するリセスの周囲領域と係合する領域を意味している。対応して、ピストンロッドの自由端の下面は、下面に属する窪みにおいて、共通の保持部材内の、付属するリセスの周囲領域の対応する部分を覆っているので、係合領域、カバー領域又はカバー面とも言われる。共通の保持部材を、ピストンロッド端部の窪みから引き抜くことによって、対応するカバー領域は減少し、共通の保持部材は、最終的にカバー領域が残存せず、対応するピストンロッドの自由端がもはや係合せず、対応して、共通の保持部材から分離するまで、連続的に係合を解除されていく。このプロセスは、両方のピストンロッドの自由端において、共通の保持部材を引き抜くことによって、並行して生じ、両方のピストンロッドの自由端の連続する解除の時間的な順序は、ピストンロッドの自由端若しくは対応するリセスの大きさと、従ってそのカバー領域の大きさとを異なるように選択することによって、又は、ピストンロッド端部の窪みの深さを異なるように選択し、これによって、同様に、そのカバー領域が異なるように形成されていることによって、又は、これらの組み合わせによって得られる。
【0019】
この際、ピストンロッドの自由端及び各リセスの、上述したように選択された大きさに関して、好ましくは、第1のピストンロッドの自由端に関する、共通の保持部材の第1のリセスは、略三角形の形状を有しており、第2のピストンロッドの自由端に関する、共通の保持部材の第2のリセスは、略半円形の形状を有しており、第1のピストンロッドの自由端は、同様に、略三角形の形状を有し、第2のピストンロッドの自由端は、同様に、略半円形の形状を有している。これによって、製造の際に、装置の組み立てが容易になり、エラーが減少したことの他に、各リセスを各ピストンロッド端部に、形状ゆえに明確に割り当てることが可能であることによって、さらに、各窪みと対応するリセスの周囲との間の異なるカバーが得られる。これは特に、半円形に形成されたピストンロッド端部及び半円形に形成されたリセス周囲の窪みのカバーが、三角形に形成されたピストンロッド端部及び三角形に形成されたリセス周囲の窪みのカバーよりも大きく、代替的な形状とその効果との組み合わせが、同様に選択され得るということを意味している。付加的又は代替的に、第2のピストンロッドの自由端の窪みの深さが、第1のピストンロッドの自由端の窪みの深さよりも大きくてよく、これによって、同様に、第1のピストンロッドの自由端の解除と、これに続く第2のピストンロッドの自由端の解除との時間的順序が得られる。さらに、第2のピストンロッドの自由端は、その半円形の、従って回転可能な横断面形状ゆえに、例えばスタッド又はノーズの形状で、回転防止装置として突起を有していてよく、これによって、対応部分である窪みと接続されて、第2のピストンロッドの自由端の回転が防止される。これに対して、第1のピストンロッドの自由端の対応する突起は、設けなくてもよい。なぜなら、当該自由端は、その三角形の形状と、対応部分とによって、既に回転から大幅に守られているからである。
【0020】
本発明のさらなる好ましい態様によると、第1のピストンの予負荷を加えられた少なくとも1つのバネ要素、すなわち第1のバネ要素は、共通の保持部材によって第1のピストンロッドが解除された後、第1のピストンを、第1の容器と共に、装置に対して移動させる。さらに、第2のピストンの予負荷を加えられた少なくとも1つのバネ要素、すなわち第2のバネ要素は、第2のピストンロッドの解除の後、まず第2のピストンを、第2の容器と共に、装置に対して移動させ、次に、第2のピストンを第2の容器に対して移動させる。これに関して、本発明のさらなる好ましい態様によると、第1の容器内に存在する第1の物質は、第2の容器内に存在する第2の物質とは異なっている。対応して、既に詳細に記載したように、第1の物質と第2の物質との混合は、両方の物質から成る混合物質をもたらす。両方の容器が互いに流体接続されているという前提で、第2のピストンの、第2の容器の対応する容器端部に対する変位を通じて、液体として存在する第2の物質が、第2の容器から押し出され、第1の容器に移され、第1の容器において、当該液体が、第1の容器内に存在する第1の物質と混合され、対応する溶液が生成され得る。次に、結果として生じた、第1の容器内の第1の物質と溶解用液体とから成る溶液が、第1のピストンの、第1の容器の対応する容器端部に対する変位を通じて、第1の容器と流体接続された注射装置によって分配され得る。
【0021】
この際、第1の物質は、例えば凍結乾燥物等の固体であり得るので、溶解用液体と凍結乾燥物との混合物は、凍結乾燥物の再構成をもたらし、当該混合物は、次に、装置から、注射装置によって、患者に注射され得る。このような使用の場合、第1の容器は、凍結乾燥物容器とも呼ばれ、第2の容器は、液体容器とも呼ばれ得る。この際、凍結乾燥物の再構成は、重力に対する装置の方向付けとは無関係に可能である。総じて、本発明のさらなる好ましい態様に係る、記載されたピストンの移動に関して、第1の容器は、第1の容器端部及び第2の容器端部を有し、第2の容器は、対応する第1の容器端部及び第2の容器端部を有することが可能であり、第1のピストン及び第2のピストンは、各第1の容器端部と各第2の容器端部との間で、軸方向において変位可能である。対応して、第1のピストンの、第1の容器の第1の容器端部に対する変位を通じて、第1の容器の内容物が、第1の容器から分配され、第2のピストンの、第2の容器の第1の容器端部に対する変位を通じて、第2の容器の内容物が、第2の容器から分配されることが可能であり、特に、注射装置と第1の容器との間に流体接続が存在する場合、第1のピストンの、第1の容器の第1の容器端部に対する変位を通じて、第1の容器の内容物が、注射装置によって、外に向かって分配され得る。
【0022】
本発明のさらなる好ましい態様によると、誘導装置は、第1の容器との流体接続のための第1の接続要素と、第2の容器との流体接続のための第2の接続要素とを有することが可能であり、各接続要素は、各容器の隔壁を貫通するための針状の突起として構成されていてよい。隔壁は、特に容器の確実な密閉を可能にする。上記の両方の場合において、針状の突起は、針、特に斜めに研磨した中空カニューレの形状で存在し得る。分配されるべき物質の汚染リスクを減少させるために、特に無菌での使用の際は、上述の針又は中空カニューレ等の使用される貫通手段に、それぞれ、対応する隔壁と共に、同じく貫通され得る柔軟な保護キャップ又は保護スリーブが設けられていると有利である。このような保護キャップ又は保護スリーブの使用によって、特に、無菌ではない条件のもとでの装置の最終組み立てが可能になる。さらに、誘導装置は、注射装置に対する流体接続を有することが可能であり、誘導装置内には弁要素が設けられていてよく、さらに好ましくは、例えばフラップ弁の形状を有する、特に注射装置に対する流体接続において一方向弁として作用する、戻し弁等の一方向弁が設けられていてよい。この際、弁要素は、誘導装置内に設けられていてよく、これによって、第2の容器から第1の容器に液体を移すことが可能になり、その後での第1の容器から第2の容器への液体の移動は防止されるが、第1の容器から注射装置への液体の移動は可能である。この際、好ましくは、第1の容器との接続部及び注射装置との接続部は、一方向弁の同じ側に位置していてよいが、これに対して、第2の容器との接続部は、一方向弁の他方の側に位置している。本発明のさらなる好ましい態様によると、この観点から、第1のピストンロッドの自由端の解除と、解除と共に、第1のバネ要素によって引き起こされる第1のピストンの移動とは、誘導装置と第1の容器との間に流体接続を、例えば誘導装置に付属する第1の容器の隔壁を貫通するための針状の突起を用いて第1の容器を突き刺して開けること、又は、ドッキングによって、形成する。さらに、次の、第2のピストンロッドの自由端の解除と、解除と共に、第2のバネ要素によって引き起こされる第2のピストンの移動とは、誘導装置と第2の容器との間に流体接続を、例えば同じく、誘導装置に付属する第2の容器の隔壁を貫通するための針状の突起を用いて第2の容器を突き刺して開けること、又は、ドッキングによって、形成する。この際、両方の針状突起は、針の形状で存在していてよく、当該針は、誘導装置と流体接続するように誘導装置上に設けられており、各容器、又は、それぞれ隔壁等が存在し得る各第1の容器端部の方向に位置合わせされており、これによって、針と容器の内容物との間の流体接続が可能になる。付加的に、好ましくは構造に起因して第1のバネ要素よりも大きなバネ変位を有する第2のバネ要素は、第2の容器が第2のピストンと共に対応する針状突起に対して押圧されるだけことではなく、さらに第2の容器の針状突起へのドッキングの後、及び、従って第2の容器の軸方向移動の終了後で、第2のピストンが、第2のバネ要素によってさらに動かされ、第2の容器において、第2の容器の容器端部に対して押圧され、これによって、第2の物質が第2の容器から誘導装置を通じて第1の容器に移されることをもたらす。これによって得られる、両方の容器の誘導装置への時間的にずらされたドッキングを通じて、第1の容器が既にドッキングされている場合に初めて、液体が第2の容器から誘導装置に分配されることが保証され得る。
【0023】
第1のピストンの、第1の容器の対応する第1の容器端部に対するさらなる変位に関して、第1の容器の内容物を注射装置に移し、注射装置によって分配させるために、本発明に係る装置の場合、付加的な移動装置が必要であり、当該移動装置は、例えば予負荷を加えられた付加的なバネ要素の形状で設けられていてよく、当該バネ要素は、第1のバネ要素に加えて、同じく第1のピストンに取り付けられており、第1のピストンと作用接続されている。次に行われる付加的なバネ要素の作動によって、対応して、注射装置と第1の容器との間に流体接続が存在する場合に、第1のピストンの、第1の容器の第1の容器端部に対する変位を通じて、第1の容器の内容物が、注射装置によって外に向かって分配され得る。
【0024】
本発明のさらなる好ましい態様によると、当該装置はさらに、作動部材を有することが可能であり、当該作動部材は、共通の保持部材と機械的に作用接続されている。これは、作動部材と共通の保持部材とが機械的に相互作用し得るということを意味しており、特に、作動部材の移動によって、上述した共通の保持部材が、その長手方向において移動される。対応して、第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドの連続する解除を引き起こす、共通の保持部材のその長手方向における移動は、作動部材の移動によって引き起こされ得る。この際、作動部材の長手軸が、共通の保持部材の長手軸に対して略垂直に、すなわち両方のピストンロッドと、従って両方の容器との長手軸に対して略平行に配置されており、作動部材のその長手方向における移動方向が、好ましくは共通の保持部材のその長手方向における移動方向に対して略垂直又は略直角に延在していることは、本発明のさらなる好ましい態様である。好ましくは、作動部材は、カスケード面を有することが可能であり、共通の保持部材は、作動リセスを有することが可能であり、作動部材はカスケード面で、作動リセス内に配置されており、作動部材の作動リセスからの引き抜きは、共通の保持部材の軸方向移動を引き起こす。例えば、ここでは、作動部材の引き抜きは、本発明に係る装置のカバーの除去によって得られる。特に、作動要素は、カバーと接続されていてよく、従って、装置の取り出しと、装置の取り出しの際の作動とによって取り除くことが可能であり、これによって、装置内での凍結乾燥物の再構成のために、さらなる別個のステップ、及び、使用者によるさらなる別個の行動は不要になる。代替的に、第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドの連続する解除を引き起こすための、共通の保持部材のその長手方向における移動による上述の作動は、代替的な作用機構によって得られ、当該作動機構は、以下の図面の説明から正確に導き出されるように、例えば、共通の保持部材に接続されたピン形の操作要素と、カバーの対応する制御溝とから得られる。
【0025】
本発明のさらなる観点によると、さらに、少なくとも1つの物質を特に患者に分配するための方法が提供され、本発明に係る方法に関して、上述したような装置が使用される。対応して、本発明に係る方法は、上述した装置による自動注射であってよく、当該装置に関して既に記載された特徴及びプロセスは、対応して、同様に、本発明に係る方法に適用可能である。
【0026】
本発明に係る方法は、特に、共通の保持部材と作用接続された作動部材を、その長手軸に沿って移動させるステップを含んでおり、これによって、共通の保持部材は、概ねその長手方向において、特に、作動部材の移動方向に対して垂直に移動し、この際、まず共通の保持部材と第1のピストンロッドの自由端との間の係合を、次に、共通の保持部材と第2のピストンロッドの自由端との間の係合を解除する。対応して、第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドの連続する解除を引き起こす、共通の保持部材のその長手方向における移動は、作動部材のその長手方向における、又は、その長手軸に沿った移動によって引き起こされ得る。この際、対応する第1のバネ要素に基づく、第1のピストンロッドの自由端の解除は、誘導装置と第1の容器との間における流体接続をもたらし、これに続く、対応する第2のバネ要素に基づく第2のピストンロッドの自由端の解除は、誘導装置と第2の容器との間における流体接続をもたらし、次に、第2のバネ要素のバネ変位によって、さらに、第2の容器の内容物が、誘導装置を通じて、第1の容器に移される。さらに、当該方法は、第1のピストンを第1の容器の第1の容器端部に対して変位させるという付加的なステップを有していてよく、これによって、第1の容器の内容物が、注射装置によって分配される。これは、両方の容器の内容物を使用者の各行動によって、具体的には作動部材の移動によって混合した後、及び、装置を使用者の体に取り付けた後には、付加的なステップの意味における使用者の第2の操作行為のみが、注射を開始するために必要となるという利点を有している。特に、注射を開始するステップは、キーを押すことであってよい。これによって、予め決定された時間的な順序において、機械力が、装置の構成要素に伝達され得る。つまり、本発明では、使用者側の行動は最小限で事足りるのである。これによって、装置の操作は、より容易に、より快適に、よりエラーを生じにくくなる。各プロセスに関する詳細は、既に本発明に係る装置の上述の説明に関連して記載されているので、ここでは繰り返さない。
【0027】
ここで、及び、添付の請求項において、場合によっては用いられ得るように、単数を示す不定冠詞及び定冠詞は、文脈が明らかに別のことを設定していない限りは、複数も含み得る。同様に、「含む」、「含有する」、「有する」という言葉は、「専ら」とも「専らではない」とも理解されるべきであり、すなわち、「~を含むが、~に限定されるものではない」と理解されるべきである。「複数の」、「何倍もの数」又は「多数の」との概念は、一般的に、2つ又はそれより多く、すなわち2又は>2に関係し、さらに1の整数倍を含んでおり、「各」又は「ただ~のみ」との概念は、1に関係しており、すなわち「=1」である。さらに、「最低限1つ」又は「少なくとも1つ」との表現は、1つ又はそれより多く、すなわち1又は>1であり、同じく整数倍も含まれると理解されるべきである。数の範囲を表すために「間に」という言葉が用いられる場合、挙げられた範囲の境界点は、明確に、当該範囲の一部として有効であるべきである。加えて、「ここに」、「上で」、「既に」、「以下で」又は「後続の」という言葉及び類似する意味を有する言葉は、本明細書において用いられる場合、本明細書全体に関係するものであり、本明細書の特定の部分に関係するものではない。
【0028】
特有の実施形態に関する、本明細書における以下の記載は、委曲を尽くしたものと見なされるべきではなく、本明細書における開示は、正確に開示された形態に限定されるべきではない。ここに記載される特有の実施形態と、開示に関する例とは、具体的に示すために用いられる一方で、本発明の技術領域の当業者によって認識可能であるように、開示の保護範囲内において、様々な等価な変更が可能である。記載された実施形態の特別な技術的要素は、別の実施形態の技術的要素と組み合わされ得るか、又は、別の実施形態の技術的要素によって代替され得る。図面において、繰り返しを避けるために、同じ参照符号は同じ要素を表しており、当業者が特別な知識が無くとも実現できる部材は、見やすくするために省略され得る。開示の特定の実施形態に割り当てられている利点が、当該実施形態に関連して記載されるが、別の実施形態は同様に、これらの利点を正確に引用せずとも、これらの利点を有し得る。
【0029】
後続の例は、本発明の特有の実施形態を、図面を用いて具体的に示すべきものである。以下において同様に議論されるように、特定の変更は全て、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。添付の請求項によって規定されているような、本開示の保護範囲から逸脱することなく、様々な変化形、変更及び修正を行うことが可能であることは、当業者にとって明らかである。本発明のさらなる態様及び利点は、以下の、図面に示された好ましい実施形態の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】好ましい実施形態における本発明に係る装置の概略的な分解斜視図である。
図2図1に示された装置の本体を縦断面において概略的に示す斜視図である。
図3図2に示された図の上面図である。
図4図2に示された図の一部を分解して示した上面図であり、特に共通の保持部材と両方のピストンロッドとの間の協働を示した図である。
図5図4に示した図の斜視図である。
図6a】3つの例示的ステップにおける、共通の保持部材の移動による両方のピストンロッド端部の解除プロセスを示す図である。
図6b】3つの例示的ステップにおける、共通の保持部材の移動による両方のピストンロッド端部の解除プロセスを示す図である。
図6c】3つの例示的ステップにおける、共通の保持部材の移動による両方のピストンロッド端部の解除プロセスを示す図である。
図7】上に挙げた図面で示された、好ましい実施形態の装置の共通の保持部材の、作動部材による作動を示す図である。
図8a】代替的な作用機構によって引き起こされた、3つの例示的ステップにおける、共通の保持部材の代替的な実施形態の移動による両方のピストンロッド端部の解除プロセスを示す図である。
図8b】代替的な作用機構によって引き起こされた、3つの例示的ステップにおける、共通の保持部材の代替的な実施形態の移動による両方のピストンロッド端部の解除プロセスを示す図である。
図8c】代替的な作用機構によって引き起こされた、3つの例示的ステップにおける、共通の保持部材の代替的な実施形態の移動による両方のピストンロッド端部の解除プロセスを示す図である。
図9a】本発明に係る装置のカバーの代替的な実施形態の概略的な斜視図である。
図9b図9aに示されたカバーの下半分の内側を概略的に示す斜視図であって、切断線B-Bに沿って延在する切断面を上から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の好ましい実施形態の以下の説明において、図面は、本発明の対象を概略的にのみ示している。本発明の好ましい実施形態は、図面に示されており、以下において、詳細に記載される。
【0032】
この際、図1は、本発明の好ましい実施形態における本発明に係る装置9の概略的な分解斜視図である。この際、装置9は、2つの分解された主要構成要素で、つまり装置9の本体91とカバー92とで示されており、カバー92は、装置9の組み立てられた状態において、本体91を少なくとも部分的に覆っている。本体91は、本図で示された好ましい実施形態において、角が丸くされた、略長方形の形状を有している。カバー92は、押し込まれるべき本体91の形状に対応して、一方の側面が開放された中空の形状を有しており、このカバーの開放された側面には、両側にリセス921が設けられている。対応する箇所において、本体91に設けられたハンドル911は、組み立てられた状態で、リセス921に押し込まれ、これによって、使用者による、本体91のカバー92からの引き抜き、又は、本体91からのカバー92の取り外しが容易になる。
【0033】
図1に示された本体91は、図2では、その長手軸に沿った線A-Aに沿って切断された図で示されている。本図において認識されるのは、本体91が、組み立てられた状態においてカバー92に押し込まれているべき、本体91の一方の端部において、開口部912を有しているということである。加えて、本体91には、シールによって覆われたさらなる開口部(図示せず)が、例えば本体91の下面に供給されており、その機能は、後段で説明される。他の場合には概ね閉じられている本体91内には、特に、第1の容器1が存在しており、第1の容器1内には、第1の物質Aが、ストッパ11によって栓をされた状態で受容されており、当該実施形態の場合、物質Aは、凍結乾燥物の形状で存在している。第1の容器1の他方の端部、すなわち第1の容器1のストッパ11と反対側の端部であって、第1の容器1の第1の端部とも称され得る端部は、例えば隔壁12によって閉鎖されている。この意味において凍結乾燥物容器1とも称され得る第1の容器1は、この場合、図2内で左側に配置されている。本体91内には、さらに、第2の容器2が存在しており、第2の容器2内には、第2の物質Bが、ストッパ21によって栓をされた状態で受容されており、物質Bは、本実施形態では、凍結乾燥物を再構成するための溶解用液体の形で存在する。第2の容器2の他方の端部、すなわち第2の容器2のストッパ21と反対側の端部であって、第2の容器2の第1の端部とも称され得る端部は、例えば隔壁22によって閉鎖されている。この意味において溶解用液体容器2とも称され得る第2の容器2は、この場合、図2内で右側に配置されている。両方の容器1及び2は、交換可能に、本体91内に配置されている。
【0034】
さらに、図2においても、図2に対応する図3の上面図においても視認されるように、本体91内には、さらに、第1のピストンロッド31を備えた第1のピストン3が配置されており、第1のピストン3又はそのピストン頂部は、容器1内において、概ね、ピストン頂部が、ストッパ11の向かい合う側と接触可能であり、これによって、ストッパ11が、第1の容器1の第1の端部である、第1の容器1の隔壁を支持する端部に対して押し付けられ得るように誘導されている。さらに、本体91内には、いわゆる第2のピストンロッド41を備えた第2のピストン4が配置されており、第2のピストン4又はそのピストン頂部は、第2の容器2内において、概ね、ピストン頂部が、ストッパ21の向かい合う側と接触可能であり、これによって、ストッパ21が、第2の容器2の第1の端部である、第2の容器2の隔壁を支持する端部に対して押し付けられ得るように誘導されている。図2及び図3において示唆されているように、両方の容器1及び2は、本体91内でその長手方向において移動可能に支承又は誘導されているように、本体91内に取り付けられている。容器1及び2の、その隔壁を支持する端部の方向における移動に際して、各隔壁12、22は、それぞれ固く配置された針51、52に押し付けられ、これによって、針51、52が隔壁12、22を刺し通す。このように、隔壁12、22を突き刺し、従って容器1、2を突き刺すことによって、容器1、2の内容物と、図2及び図3において左端に示された、本体91の内側面に固く配置された誘導装置5の誘導管53との間に流体接続が形成される。図2及び図3において示唆されているように、製造上の条件から複数の壁部材から構成され得る誘導装置5は、針51及び針52を、各隔壁12、22に対して位置合わせした場所及び位置に保持するだけではなく、その内部に誘導管53を構成する。誘導管53内には、ここではラバーリップの形状における一方向弁54も設けられており、当該ラバーリップは、フラップのように、片側において、誘導管53の内壁に接しており、従って、当該実施形態では、第2の容器2から第1の容器1への流体の流れを許容するが、第1の容器1から第2の容器2への流体の逆流は防止する。上述の部材の他に、誘導管53内には、さらに、注射装置(図示せず)に接続するための、好ましくは密封された開口部(図示せず)が設けられており、具体的には、誘導管53の、一方向弁54を始点として第1の容器1の側に存在する領域に設けられている。この際、(図示されていない)注射装置は、注射装置が同様に針等によって密封された開口部を突き刺すことができるように、又は、注射装置が密封された開口部と既に接続されているように構成されていてよい。当該注射装置は、誘導管53内及び/又は容器1内に存在する物質を患者に、注射、好ましくは自動注射によって分配するために用いられる。このために、上述した、シールによって覆われた開口部(図示せず)が用いられ、当該開口部は、例えば本体91の下面に設けられており、当該開口部を通じて、注射装置は、刺し通しながら、分配されるべき物質を分配することができる。
【0035】
上述したような針51、52を用いた隔壁12、22の刺し通しによる容器1、2の突き刺しは、記載したように、容器1、2のその軸方向における移動によってもたらされる。このような第1の容器1の移動を引き起こすために、第1の容器1には、図示された好ましい実施形態では、予負荷を加えられた第1のバネ要素32が、ここではコイルバネ32の形状で設けられており、コイルバネ32は、第1の容器1に背向する端部において、案内部材7に当接することによって保持されており、第1の容器1に対向する端部において、中間部材33を介して第1の容器1と作用接続されており、これによって、予負荷を加えられたコイルバネ32の変位は、第1の容器1の針51に向かう方向における長手方向変位をもたらし、結果として、第1の容器1の隔壁12が針51で突き刺される。コイルバネ32は、中間部材33と案内部材7との間のクランプによって、予負荷を加えられており、コイルバネ32は、第1のピストンロッド31の周りに配置されており、第1のピストン3の第1のピストンロッド31の自由端311は、保持部材6によって、場所及び位置に保持される。保持部材6は、共通の保持部材6とも称される。なぜなら、保持部材6は、第1のピストン3の第1のピストンロッド31の自由端311のみではなく、第2のピストン4の第2のピストンロッド41の自由端411も、これらの自由端との係合によって、場所及び位置に保持するからである。本明細書に記載された実施形態において、第1の容器1の第1のピストン3のピストン構造には、さらに、コイルバネ34の形状における、予負荷を加えられたさらなるバネ要素34が配置されており、バネ要素34は、例えば別個の、使用者によって操作されるべき機構による作動の後で解除可能であり、これによって、予負荷を加えられたさらなるコイルバネ34の変位がもたらされ、この変位は、第1のピストンロッド31によって誘導された、予負荷を加えられた第1のバネ要素32によって既に形成された、第1の容器1と誘導管53との間の流体接続に向かう方向における、第1のピストン3の移動をもたらし、これによって、第1の容器1の内容物が、誘導管53内、さらに注射装置(図示せず)を通って、装置9の本体91から押し出され得る。ピストン3、ピストンロッド31、予負荷を加えられた第1のバネ要素32、中間部材33及び予負荷を加えられたさらなるバネ要素34の相互作用の正確な構造は、同じく、図4及び図5から導き出すことが可能であり、図4及び図5には、ピストン3及びピストン4の両方のピストン構造と、そのバネ要素32、34及び42と、共通の保持部材6との間における全体的な協働が、描写を簡略化するために装置9の残りの部材から切り離されて、分解斜視図及び上面図で示されている。
【0036】
対応して、第2の容器2の移動による突き刺しを引き起こすために、第2の容器2には、図示された好ましい実施形態では、予負荷を加えられた第2のバネ要素42が、ここではコイルバネ42の形状で設けられており、コイルバネ42は、第2の容器2に背向する端部において、案内部材7に当接することによって保持されており、第2の容器2に対向する端部において、第2のピストン4を介して第2の容器2と作用接続されており、これによって、予負荷を加えられたコイルバネ42の変位は、第2のピストン4のストッパ21に対する長手方向変位と、従って、第2の容器2の針52に向かう方向における長手方向変位とをもたらし、結果として、第2の容器2の隔壁22が針52で突き刺される。ピストンロッド41の周りに配置されたコイルバネ42は、ピストン4の内側面と案内部材7との間のクランプによって、予負荷を加えられており、第2のピストン4の第2のピストンロッド41の自由端411は、共通の保持部材6によって、場所及び位置に保持されており、共通の保持部材6は、第1のピストン3の第1のピストンロッド31の自由端311も保持している。対応して、予負荷を加えられたコイルバネ42の解除によって、第2のピストン4が動かされ、ストッパ21に衝突し、ストッパ21と共に、容器2内に配置された非圧縮性液体の動圧に基づいて、容器2を軸方向において針52に向かって移動させるので、容器2内の動圧を出口に提供する誘導管53と容器2の内容物との間の流体接続が形成される。コイルバネ42は、ピストン4をストッパ21と共にさらに押圧し、これによって、第2の容器2の内容物が、誘導管53内へ移動し、一方向弁54を通過し、さらに第1の容器1内へと運ばれることをもたらす。対応して、当該実施形態では、第2の容器2、すなわち溶解用液体容器2内の内容物として存在する非圧縮性溶解用液体は、第1の容器1、すなわち凍結乾燥物容器1内に押し込まれ、第1の容器1内で、溶解用液体は凍結乾燥物と混合され、これによって、凍結乾燥物の再構成が引き起こされる。これによって生じる溶液は、分配されるべき(注射されるべき)物質として、次に、さらなるコイルバネ34の作動を通じて、第1の容器1から運び出され、(図示されていない)注射装置を通じて、外に向かって、好ましくは自動注射によって、使用者自身に分配され得る。図2図5の描写から既に認識され得ることに、予負荷を加えられたコイルバネ32は、第1の容器1を突き刺すために、両方のコイルバネ34及び42よりもはるかに小さく寸法設計されており、これによって、コイルバネ32の変位又は伸長は、別の両方のコイルバネ34及び42の場合よりもはるかに短い結果になっている。これは、専らコイルバネ32によって第1の容器1を突き刺すためには、容器1のわずかな軸方向変位のみが必要であることによる。
【0037】
図6a~図6cには、まず予負荷を加えられた第1のコイルバネ32、次に予負荷を加えられた第2のコイルバネ42の、時間的にずらされた解除のプロセスが示されている。図6aには、同じく図2及び図3でも見られるような初期状態が示されている。当該初期状態においては、共通の保持部材6が、両方のピストンロッド31、41の両方の自由端311、411を係合状態で保持しており、これによって、両方のコイルバネ32、42は、その予負荷を加えられた状態に保たれており、ピストン3、4の移動も、容器1、2の移動も生じない。特に図6aから導出され得るように、第1のピストンロッド31の自由端311は、三角形の形状を有している。第1のピストンロッド31の自由端311に対応するリセス61は、第1のピストンロッド31の自由端311の保持のための共通の保持部材6の内に設けられており、当該リセス61は、同様に、三角形の形状を有している。しかしながら、この際、リセス61の三角形の形状は、図6a~図6cそれぞれから導出され得るように、第1のピストンロッド31の自由端311の三角形の形状よりも大きい。さらに、図3も参照すると、第1のピストンロッド31の自由端311には、溝312の形状で、窪みが設けられており、窪みには、三角形のリセス61の周囲領域が、図6aに示された初期状態においては、押し込まれている。これに類似して、第2のピストンロッド41の自由端411は、半円形の形状を有している。第2のピストンロッド41の自由端411に対応するリセス62は、第2のピストンロッド41の自由端411の保持のための共通の保持部材6の内に設けられており、当該リセス62は、同様に半円形の形状を有している。しかしながら、この際、リセス62の半円形状は、やはり、図6a~図6cそれぞれから導出され得るように、第2のピストンロッド41の自由端411の半円形状よりも大きい。図3も参照すると、同様に、第2のピストンロッド41の自由端411には、溝412の形状で、窪みが設けられており、窪みには、半円形のリセス62の周囲領域が、図6aに示された初期状態においては、押し込まれている。リセス61、62と各自由端311、411との間における寸法の差は、すなわち自由端311、411の解除プロセスを確実化するために、自由端311、411は、それぞれの解除の後、傾斜することなく、対応するリセス61、62を自由に通過すべきであるという事情によるものである。
【0038】
当該実施形態においては、第1のピストンロッド31の自由端311の三角形の形状とリセス61の三角形の形状との間の比は、そのカバー領域が、初期状態において、第2のピストンロッド41の自由端411の半円形状とリセス62の半円形状との間におけるカバー領域よりも小さくなるように選択されている。両方のピストンロッド31、41の両方の自由端311、411の解除を引き起こすために、共通の保持部材6を、その長手方向において、及び、従って両方のピストンロッド31、41の長手方向に対して略垂直に動かすことが可能であり、これによって、共通の保持部材6が、溝312、412から引き抜かれる。この引き抜きプロセスは、両方のピストンロッドの自由端311、411において、共通の保持部材6を引き抜くことによって、互いに並行に生じる。第1のピストンロッド31においては、溝312とリセス61の周囲との間のカバー領域が、第2のピストンロッド41における、溝412とリセス62の周囲との間のカバー領域よりも小さいという事実に基づいて、共通の保持部材6の漸進的な引き抜きが、図6bも参照すると、まず第1のピストンロッド31の自由端311の解除につながり、従って、第1の容器1の突き刺しにつながる。その後で初めて、共通の保持部材6のさらなる引き抜きが、図6cに示したように、第2のピストンロッド41の自由端411の解除につながり、従って、第2の容器2の突き刺しと、これに続く第2の容器2の内容物の、誘導管53を通じた、一方向弁54を通過する、流体接続された容器1内への押出しとにつながり、これによって、凍結乾燥物の再構成がもたらされる。この際、容器1の内容物は、対応して、押し込まれた体積の分だけ増加するので、第1の容器1のストッパ11は、後方に向かって、第1のピストン3の方向に押される。このために、図2及び図3に示されているように、初期状態では、ストッパ11とピストン3との間に十分な場所が残されており、従って、ストッパ11は、後方に移動する空間を有している。このためには、特に図3において示されているように、押し戻された空気がピストン3を通過して漏出するのを可能にすることが明らかに必要である。
【0039】
図6a~図6cの描写を厳密に観察すると、共通の保持部材6の上面にはさらに、3つのラッチリセス64の構造体が認識可能であり、ラッチリセス64は、案内部材7に一体的に取り付けられたラッチノーズ71を通じて、好ましくは3つの異なる位置において留められ得る。対応して、ラッチリセス64とラッチノーズ71との組み合わせは、装置9の使用の際の、共通の保持部材6の原則的に水平方向における移動を、図6aに示したような初期状態から、図6bに示したような第1のピストンロッド31の作動のための中間位置へ、第2のピストンロッド41の作動のための最終位置まで、段階的に、すなわち上述の3つの位置においてラッチするように誘導するために用いられる。ここで示されているように、共通の保持部材6の全体的な移動は、案内部材7に取り付けられたガイドレール72によって誘導される。最終的に図7に示されているように、装置9は、特にこの好ましい実施形態においては、カバー92の内側面と、当該内側面に場合によっては接続された作動部材8とを有しており、作動部材8は、装置9が組み立てられた状態では、本体91の開口部912と、リセス63又は共通の保持部材6の作動リセス63を通過する。さらに、案内部材7は、作動リセス63に対応するリセス(図示せず)を有しており、これによって、作動部材8の、開口部912、作動リセス63、及び、(図示せず)案内部材リセスの通過が可能になる。この際、好ましくは2つの縦方向ウェブから構成されている作動部材8は、各ウェブの前面に、カスケード面の形状で張り出し部81を有しており、従って、作動部材8のその軸方向における引き抜きは、共通の保持部材6の、作動部材8の軸方向に対して略垂直な、共通の保持部材6の軸方向における押圧を引き起こし、これによって、共通の保持部材6は、両方のピストンロッド31、41の両方の自由端311、411の解除のために動かされる。対応して、この好ましい実施形態の場合、作動部材8の長手軸は、共通の保持部材6の長手軸に対して略垂直に、すなわち、両方のピストンロッド31、41と、従って両方の容器1、2との長手軸に対して略平行に配置されており、作動部材8のその長手方向における引き抜き方向は、好ましくは、共通の保持部材6のその長手方向における移動方向に対して略垂直又は略直角に延在している。カスケード面と作動リセスとの組み合わせによって、対応して、作動部材8と共通の保持部材6とが機械的に作用接続されており、従って、一方の部材、例えば作動部材8の移動は、他方の部材、この場合は共通の保持部材6の移動をもたらす。
【0040】
図8a~図8cには、案内部材7‘と共通の保持部材6‘との組み合わせの代替的な構成が示されており、図8a~図8cは、図6a~6cに示されたのと同様に、まず予負荷を加えられた第1のコイルバネ32の解除と、次に予負荷を加えられた第2のコイルバネ42の解除という、時間的にずらされた解除プロセスを示している。解除プロセスの基本的な進行は、上述の実施形態と比べて、概ね不変であり、共通の保持部材6‘の操作及び案内部材7‘での共通の保持部材6‘の誘導のみが、以下において詳細に記載するように、異なる方法で行われる。
【0041】
案内部材7‘での共通の保持部材6‘の代替的な誘導に関して、ここに記載する実施形態の場合、共通の保持部材6‘は、外側に配置されたガイドレール72の代わりに、内側に配置された2つのガイドレール72‘によって誘導され、当該ガイドレールは、それぞれさらに内側に配置されたリセス63‘内を、例えば連続的な案内溝の形状で延在している。ガイドレール72‘はそれぞれ、概ねLの文字が逆さまになった形状(=「)を有しており、それぞれ、外側を向いた案内部材7‘の表面から離れて、共通の保持部材6‘に向かう方向において、共通の部材6‘を通過して、より正確に言うと、各リセス63‘を通過して延在している。これに関して、各リセス63‘は、図面では右側に描かれた第1の端部において、各ガイドレール72‘を自由に通すためのいわゆる通過拡大部と、当該通過拡大部に接続され、対応して狭められた案内溝とを示しており、当該案内溝は、軸方向に延在する、各L字形ガイドレール72‘の長い方の部分を受容し、当該部分を誘導する。
【0042】
共通の保持部材6‘の代替的な操作に関しては、図8aに、解除プロセス前の初期状態が示されており、初期状態においては、共通の保持部材6‘が、第1のピストンロッド31の自由端311と、第2のピストンロッド41の自由端411‘の代替的な構成とを係合状態に保っており、これによって、両方のコイルバネ32、42は、予負荷を加えられた状態に保持され、対応して、ピストン3、4の移動も容器1、2の移動も行われ得ない。先に挙げた第2のピストンロッド41の自由端411‘の代替的な構成は、第2のピストンロッド41の自由端411の上述の構成とは、特に自由端411‘が、ウェブ等の形状の、外側に向かって突出した突起4111‘を付加的に有しており、当該突起は、第2のピストンロッド41の自由端411‘の略半円形の形状の丸い部分とは反対に配置されているという点で異なっている。回転防止装置又は回転防止突起とも称される突起4111‘は、対応する溝73‘内に延在しており、当該溝は、案内部材7‘内に設けられており、突起4111‘の形状に適応しており、第2のピストンロッド41の自由端411‘の回転と、従って、第2のピストンロッド41全体の回転とを防止するために用いられ、このような回転は、例えば本発明に係る装置を組み立てる際に、又は、本発明に係る装置の輸送の際の震動に起因する振動を受けて、生じ得る。
【0043】
特に図8aから導出され得るように、第1のピストンロッド31の自由端311は、上述の実施形態と同じように、三角形の形状を有しており、当該三角形形状は、既にそれ自体の形状に起因して、回転防止を提供する。第1のピストンロッド31の自由端311に対応するリセス61‘は、第1のピストンロッド31の自由端311の保持のために、共通の保持部材6‘内に設けられており、リセス61‘は、概ね対応する、三角形の印象を与える形状を有しており、当該形状においては、例えば溝312の半円形状に合わせるために、前方の先端が丸められている。この代替的な実施形態では、第1のピストンロッド31の自由端311の三角形形状と、リセス61‘の略三角形の形状との間の比は、上述した実施形態の場合に類似して、そのカバー領域が初期状態において、第2のピストンロッド41の自由端411‘の半円形状とリセス62‘の半円形状との間のカバー領域よりも小さくなるように選択されている。両方のピストンロッド31、41の両方の自由端311、411‘の解除をもたらすために、共通の保持部材6‘は、その長手方向において、従って、両方のピストンロッド31、41の長手方向に対して略垂直に動かされることが可能であり、これによって、共通の保持部材6‘は、溝312、412から引き抜かれる。この共通の保持部材6‘の、溝312、412からの引き抜きは、解除プロセスとも称される。当該解除プロセスは、両方のピストンロッドの自由端311、411‘において、図8a~図8cに示された、共通の保持部材6‘の、図面において左に向かう方向への引っ張りを通じて行われる。図8b及び図8cに示された矢印も参照のこと。第1のピストンロッド31においては、溝312とリセス61‘の周囲との間のカバー領域が、上述の実施形態の場合と同様に、第2のピストンロッド41の代替的な自由端411‘における、溝412とリセス62‘の周囲との間のカバー領域よりも小さいという事実に基づいて、図示された、共通の保持部材6‘の漸進的な引き抜きは、図8bに示されたように、まず第1のピストンロッド31の自由端311の解除/解放につながり、従って、第1の容器1の突き刺しにつながる。その後で初めて、共通の保持部材6‘のさらなる移動が、図8cに示したように、第2のピストンロッド41の自由端411‘の解除/解放につながり、従って、第2の容器2の突き刺しと、これに続く第2の容器2の内容物の、誘導管53を通じた、一方向弁54を通過する、流体接続された容器1内への押出しとにつながり、これによって、凍結乾燥物の再構成がもたらされる。
【0044】
図8a~図8cの描写を厳密に観察すると、共通の保持部材6‘の下面には、外側に向かって突出したピン又はボルトの形状における操作要素65‘が認識可能であり、当該操作要素は、バネ機構651‘を介して、共通の保持部材6‘に接続されている。ピン形状の操作要素65‘の操作/移動を通じて、共通の保持部材6‘の所望の移動と、従って、上述したピストンロッド31、41の両方の自由端311、411‘の解除プロセスとがもたらされる。操作要素65‘を対応して操作するために、図9a及び図9bに示されているように、カバー92‘の代替的な実施形態の内側面には、いわゆる案内溝又は制御溝922‘が設けられており、当該案内溝又は制御溝は、ここに記載された実施形態では、例えば2つの部分から構成されている。装置9が組み立てられた状態では、対応して、操作要素65‘は、制御溝922‘の第1の部分の内部に配置されている。図8aに示されたような初期状態においては、操作要素65‘は、対応して、図9bにおいて代替的なカバー92‘の下半分の内側面の右側に示されているように、制御溝922‘の長い方の第1の部分の第1の端部9221‘に存在している。装置9の本体91からカバー92‘を取り外す際、操作要素65‘の対応する移動は、第1の端部9221‘から離れて、後続の制御溝922‘の傾斜面又は斜面9222‘に向かって行われる。カバー92‘を本体91からさらに引き離すことによってもたらされる、操作要素65‘の、当該斜面9222‘上の移動によって、操作要素65‘と一体的に接続された保持部材6‘の移動が、図8a~図8cに示されているように行われる。斜面9222‘全体に沿って操作要素65‘が完全に移動した後で、最終的に、図8cに示された、ピストンロッド31、41の両方の自由端311、411‘が本体6‘から解除した状態が到達される。
【0045】
解除運動のある特定の状態以降、より正確に言うと、第1のピストン3の第1のピストンロッド31の自由端311の解除以降、共通の保持部材6‘は、もはやその当初の出発地点には戻ることができず、これによって、既に主な再構成プロセスが行われているにも関わらず、使用者が、装置9が使用されていないという印象を得ることが防止される。この意味において、カバー92‘を誤って、又は、意図的に押し戻すことによって、操作要素65‘と、従って、共通の保持部材6’とが元の位置に戻ることを防止するために、制御溝922‘は、斜面9222‘の反対側に、第1のストッパ9223‘を有しており、操作要素65‘は、カバー92‘が押し戻される場合、第1のストッパ9223‘に付着し、これによって、操作要素65‘がさらに元の位置に動くことが防止される。
【0046】
カバー92‘の本体91からの取り外しプロセスの所望の進行において、操作要素65‘は、斜面9222‘の後ろで、及び、例えば傾斜路等に支援されて、制御溝922‘の第1の部分を離れ、次に、任意で、図9bにおいて左側に示されているように、制御溝922‘のより短い第2の部分に入る。この制御溝922‘のより短い部分は、斜面9222‘を含む、制御溝922‘の第1のより長い部分と同様に、第2のストッパ9224‘を有しており、操作要素65‘は、カバー92‘の本体91からの取り外しプロセスの進行後に、カバー92‘が押し戻される際に、第2のストッパ9224‘に付着することが可能であり、これによって、操作要素65‘が当該点から戻るように移動することが確実に防止される。カバー92‘の本体91からの取り外しプロセスのさらなる実施の際に、操作要素65‘は、例えば傾斜路等に支援されて、制御溝922‘の第2の部分を離れ、次に、本体91が、完全にカバー92‘を離れ、これによって、注射装置のシールによって密封された開口部が開放され、注射装置によって分配されるべき再構成された物質が、分配され得る。
これまで、本発明の好ましい実施形態を記載してきたが、本発明は、上述の好ましい実施形態に限定されるものではない。後続の請求項の範囲で規定されているように、本発明から逸脱することなく、態様において様々な変更を加えることが可能である。
【0047】
本出願は、欧州特許出願EP18174940.9の優先権を主張するものであり、その主張された対象及び方法について、完全を期すために、以下に記載する。
【0048】
[付記項1]少なくとも1つの物質を、特に患者に分配するための装置であって、当該装置は、第1のピストンロッドを有する第1のピストンを備えた、第1の物質を含む第1の容器であって、装置内を移動できるように配置された第1の容器と、第2のピストンロッドを有する第2のピストンを備えた、第2の物質を含む第2の容器であって、装置内を移動できるように配置された第2の容器と、注射装置と、第2の容器の内容物を第1の容器に誘導し、第1の容器の内容物を注射装置に誘導するための誘導装置と、を含んでおり、第1のピストンと第2のピストンとは、それぞれ、予負荷を加えられた少なくとも1つのバネ要素によって移動可能であり、第1のピストンロッドの自由端と、第2のピストンロッドの自由端とは、共通の保持部材によって解除可能に保持されており、共通の保持部材は、共通の保持部材の移動が、後続の第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドの解除につながるように構成されている装置。
【0049】
[付記項2]好ましくは略プレート状に形成された共通の保持部材が、第1のピストンロッドと第2のピストンロッドとを、予負荷を加えられた各バネ要素の付勢に抗して保持している、付記項1に記載の装置。
【0050】
[付記項3]共通の保持部材は、第1のピストンロッドの自由端に関する少なくとも1つのリセスと、第2のピストンロッドの自由端に関する少なくとも1つのリセスとを有しており、第1のピストンロッドの自由端と、第2のピストンロッドの自由端とは、それぞれ窪みを有しており、当該窪みは、共通の保持部材と解除可能に係合しており、第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドの自由端の大きさと、各リセスの大きさ及び/又は各窪みの深さとは、第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドの自由端が、異なって、共通の保持部材と協働するように選択されている、付記項1又は2に記載の装置。
【0051】
[付記項4]第1のピストンロッドの自由端に関する共通の保持部材におけるリセスは、略三角形の形状を有し、第2のピストンロッドの自由端に関する共通の保持部材におけるリセスは、概ね半円形の形状を有しており、第1のピストンロッドの自由端は、略三角形の形状を有し、第2のピストンロッドの自由端は、略半円形の形状を有し、及び/又は、第2のピストンロッドの自由端における窪みの深さは、第1のピストンロッドの自由端における窪みの深さよりも大きい、付記項3に記載の装置。
【0052】
[付記項5]第1のピストンの予負荷を加えられた少なくとも1つのバネ要素が、第1のピストンロッドの解除の後、第1のピストンを、第1の容器と共に、装置に対して移動させ、第2のピストンの予負荷を加えられた少なくとも1つのバネ要素が、第2のピストンロッドの解除の後、第2のピストンを、第2の容器と共に、装置に対して移動させ、引き続いて、第2のピストンを、第2の容器に対して移動させる、付記項1~4に記載の装置。
【0053】
[付記項6]第1の物質が第2の物質とは異なる、付記項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【0054】
[付記項7]第2の物質が液体であり、好ましくは、第2のピストンを第2の容器の容器端部に対して変位させることによって、当該液体が第1の容器に移され、当該液体は第1の容器内で第1の物質と混合され、溶液を生成し、第1の容器内の当該溶液は、第1のピストンを第1の容器の容器端部に対して変位させることによって、注射装置を通じて分配され得る、付記項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【0055】
[付記項8]第1の物質が固体、特に凍結乾燥物である、付記項7に記載の装置。
【0056】
[付記項9]対応するバネ要素に基づく第1のピストンロッドの自由端の解除によって、誘導装置と第1の容器との間の流体接続が形成され、対応するバネ要素に基づく第2のピストンロッドの自由端の後続の解除によって、誘導装置と第2の容器との間の流体接続が形成され、第2の物質が、誘導装置を通じて、第2の容器から第1の容器に移動される、付記項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【0057】
[付記項10]共通の保持部材の長手軸が、第1のピストンロッド及び第2のピストンロッドの長手軸に対して略垂直に配置されており、共通の保持部材の移動方向は、好ましくは、両方のピストンロッドの移動方向に対して略垂直に延在している、付記項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【0058】
[付記項11]前記装置が、さらに共通の保持部材と機械的に作用接続された作動部材を有しており、作動部材の移動が、共通の保持部材の移動につながり、好ましくは、作動部材の長手軸は、共通の保持部材の長手軸に対して略垂直に配置されており、作動部材の移動方向は、共通の保持部材の移動方向に対して、好ましくは略垂直に延在している、付記項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【0059】
[付記項12]誘導装置が、第1の容器との流体接続のための第1の接続要素と、第2の容器との流体接続のための第2の接続要素とを有しており、各接続要素は、好ましくは各容器の隔壁を貫通するための針状突起として構成されている、付記項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【0060】
[付記項13]誘導装置が、注射装置への流体接続を有しており、及び/又は、誘導装置が、好ましくは弁要素を、さらに好ましくは一方向弁、特に戻し弁を有している、付記項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【0061】
[付記項14]第1の容器は、第1の容器端部と第2の容器端部とを有しており、第2の容器は、第1の容器端部と第2の容器端部とを有しており、第1のピストンと第2のピストンとは、各第1の容器端部と各第2の容器端部との間で変位可能であり、第1のピストンを第1の容器の第1の容器端部に対して変位させることによって、第1の容器の内容物が注射装置によって分配され得る、付記項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【0062】
[付記項15]各容器がシリンダ状に形成されており、及び/又は、第2の容器は、装置内で、第1の容器に対して平行に、特に同じ方向において配置されている、付記項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【0063】
[付記項16]少なくとも1つの物質を、特に患者に分配するための方法であって、共通の保持部材と作用接続された作動部材をその長手軸に沿って移動させるステップを含んでおり、これによって、共通の保持部材は、概ねその長手方向において、特に作動部材の移動方向に対して垂直に動かされ、この際、まず共通の保持部材と第1のピストンロッドの自由端との間の係合を解除し、次に、共通の保持部材と第2のピストンロッドの自由端との間の係合を解除し、好ましくは、対応するバネ要素に基づく第1のピストンロッドの自由端の解除が、誘導装置と第1の容器との間の流体接続をもたらし、これに続く、対応するバネ要素に基づく第2のピストンロッドの自由端の解除によって、誘導装置と第2の容器との間に流体接続が形成され、次に、第2の物質が、誘導装置を通じて、第2の容器から第1の容器に移される、付記項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【0064】
[付記項17]第1の物質は固体、特に凍結乾燥物であり、第2の物質は液体であり、第2のピストンを第2の容器の第1の容器端部に対して変位させることによって、液体が第1の容器に移され、液体が第1の容器内で固体と結合し、溶液を生成し、第1の容器内の溶液は、第1のピストンを第1の容器の第1の容器端部に対して変位させることによって、注射装置によって分配される、付記項16に記載の方法。
【符号の説明】
【0065】
A 第1の物質(例えば凍結乾燥物)
B 第2の物質(例えば再構成液体)
1 第1の容器
11 第1の容器のストッパ
12 第1の容器の隔壁
2 第2の容器
21 第2の容器のストッパ
22 第2の容器の隔壁
3 第1のピストン
31 第1のピストンロッド
311 第1のピストンロッドの自由端
312 第1のピストンロッドの自由端の溝
32 第1のピストンロッドに関する予負荷を加えられた第1のバネ要素
33 中間部材
34 さらなるバネ要素
4 第2のピストン
41 第2のピストンロッド
411 第2のピストンロッドの自由端
411‘ 第2のピストンロッドの自由端(代替的な構成)
4111‘ 第2のピストンロッドの自由端の回転防止突起
412 第2のピストンロッドの自由端の溝
42 第2のピストンロッドに関する予負荷を加えられた第2のバネ要素
5 誘導装置
51 第1の針
52 第2の針
53 誘導管
54 一方向弁(例えばラバーリップ-戻し弁)
6 共通の保持部材/トリガー
6‘ 共通の保持部材/トリガー(代替的な構成)
61 第1のピストンロッドの自由端に関する第1のリセス
61‘ 第1のピストンロッドの自由端に関する第1のリセス(代替的な構成)
62 第2のピストンロッドの自由端に関する第2のリセス
62‘ 第2のピストンロッドの自由端に関する第2のリセス(代替的な構成)
63 作動部材に関するリセス
63‘ ガイドレールに関するリセス
64 ラッチリセス
65‘ トリガー操作要素
651‘ バネ機構
7 案内部材
7‘ 案内部材(代替的な構成)
71 ラッチノーズ
72 ガイドレール
72‘ ガイドレール(代替的な構成)
73‘ 回転防止溝
8 作動部材
81 カスケード面の形状における張り出し
9 装置
91 本体
911 ハンドル
912 開口部
92 カバー
92‘ カバー(代替的な構成)
921 カバーのリセス
922‘ 制御溝
9221‘ 制御溝の第1の端部
9222‘ 制御溝の斜面
9223‘ 制御溝の第1のストッパ
9224‘ 制御溝の第2のストッパ
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図6c
図7
図8a
図8b
図8c
図9a
図9b