IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シマノの特許一覧

<>
  • 特許-人力駆動車用制御装置 図1
  • 特許-人力駆動車用制御装置 図2
  • 特許-人力駆動車用制御装置 図3
  • 特許-人力駆動車用制御装置 図4
  • 特許-人力駆動車用制御装置 図5
  • 特許-人力駆動車用制御装置 図6
  • 特許-人力駆動車用制御装置 図7
  • 特許-人力駆動車用制御装置 図8
  • 特許-人力駆動車用制御装置 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】人力駆動車用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20221018BHJP
   B62M 6/55 20100101ALI20221018BHJP
   B62J 45/415 20200101ALI20221018BHJP
   B62J 45/414 20200101ALI20221018BHJP
   B62J 45/413 20200101ALI20221018BHJP
   B62J 45/412 20200101ALI20221018BHJP
   B62J 45/411 20200101ALI20221018BHJP
【FI】
B62M6/45
B62M6/55
B62J45/415
B62J45/414
B62J45/413
B62J45/412
B62J45/411
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021035737
(22)【出願日】2021-03-05
(62)【分割の表示】P 2018065724の分割
【原出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2021079955
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
【審査官】塩澤 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007644(JP,A)
【文献】特開2004-255953(JP,A)
【文献】国際公開第2017/207132(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0334514(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/45
B62M 6/55
B62J 45/415
B62J 45/414
B62J 45/413
B62J 45/412
B62J 45/411
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクおよび駆動輪を備える人力駆動車において、前記クランクの回転速度に対する前記駆動輪の回転速度の比率を変更するための変速機を制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車に入力される人力駆動力のトルク、前記人力駆動車に入力される人力駆動力の仕事率、前記人力駆動車の加速度、および、前記人力駆動車の躍度の少なくとも1つを含む第1パラメータが増加する場合は、前記人力駆動車の走行状態に関する第2パラメータと、前記第2パラメータに対して設定される第1変速閾値と、に応じて前記比率を予め定める第1比率と、予め定める第2比率と、の間で切り替えるように前記変速機を制御し、
前記第1パラメータが減少する場合は、前記第2パラメータと、前記第2パラメータに対して設けられ、かつ、前記第1変速閾値とは異なる第2変速閾値と、に応じて、前記比率を前記予め定める第1比率と、前記予め定める第2比率との間で切り替えるように前記変速機を制御する、人力駆動車用制御装置。
【請求項2】
前記第1変速閾値は、前記第2変速閾値よりも小さい、請求項1に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項3】
クランクおよび駆動輪を備える人力駆動車において、前記クランクの回転速度に対する前記駆動輪の回転速度の比率を変更するための変速機を制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車に入力される人力駆動力のトルク、前記人力駆動車に入力される人力駆動力の仕事率、前記人力駆動車の加速度、前記人力駆動車の躍度、および、前記人力駆動車の傾斜角度の少なくとも1つを含む第1パラメータが増加する場合は、前記人力駆動車の走行状態に関する第2パラメータと、前記第2パラメータに対して設定される第1変速閾値と、に応じて前記比率を予め定める第1比率と、予め定める第2比率と、の間で切り替えるように前記変速機を制御し、
前記第1パラメータが減少する場合は、前記第2パラメータと、前記第2パラメータに対して設けられ、かつ、前記第1変速閾値とは異なる第2変速閾値と、に応じて、前記比率を前記予め定める第1比率と、前記予め定める第2比率との間で切り替えるように前記変速機を制御し、
前記第1変速閾値は、前記第2変速閾値よりも小さい、人力駆動車用制御装置。
【請求項4】
前記第2パラメータは、前記クランクの回転速度、前記人力駆動車のトルク、前記人力駆動車に入力される人力駆動力の仕事率、前記人力駆動車の速度、前記人力駆動車の加速度、前記人力駆動車の躍度、および、前記人力駆動車の傾斜角度の少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項5】
前記第1変速閾値は、第1上限閾値および第1下限閾値を含み、
前記制御部は、
前記第2パラメータが前記第1上限閾値よりも大きくなった場合、前記比率を前記予め定める第1比率から前記予め定める第1比率よりも小さい前記予め定める第2比率に切り替えるように前記変速機を制御し、
前記第2パラメータが前記第1下限閾値よりも小さくなった場合、前記比率を前記予め定める第1比率から前記予め定める第1比率よりも大きい前記予め定める第2比率に切り替えるように前記変速機を制御するように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項6】
クランクおよび駆動輪を備える人力駆動車において、前記クランクの回転速度に対する前記駆動輪の回転速度の比率を変更するための変速機を制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車に入力される人力駆動力のトルク、前記人力駆動車に入力される人力駆動力の仕事率、前記人力駆動車の加速度、前記人力駆動車の躍度、および、前記人力駆動車の傾斜角度の少なくとも1つを含む第1パラメータが増加する場合は、前記人力駆動車の走行状態に関する第2パラメータと、前記第2パラメータに対して設定される第1変速閾値と、に応じて前記比率を予め定める第1比率と、予め定める第2比率と、の間で切り替えるように前記変速機を制御し、
前記第1パラメータが減少する場合は、前記第2パラメータと、前記第2パラメータに対して設けられ、かつ、前記第1変速閾値とは異なる第2変速閾値と、に応じて、前記比率を前記予め定める第1比率と、前記予め定める第2比率との間で切り替えるように前記変速機を制御し、
前記第1変速閾値は、第1上限閾値および第1下限閾値を含み、
前記制御部は、
前記第2パラメータが前記第1上限閾値よりも大きくなった場合、前記比率を前記予め定める第1比率から前記予め定める第1比率よりも小さい前記予め定める第2比率に切り替えるように前記変速機を制御し、
前記第2パラメータが前記第1下限閾値よりも小さくなった場合、前記比率を前記予め定める第1比率から前記予め定める第1比率よりも大きい前記予め定める第2比率に切り替えるように前記変速機を制御するように構成される、人力駆動車用制御装置。
【請求項7】
前記第2変速閾値は、第2上限閾値および第2下限閾値を含み、
前記制御部は、
前記第2パラメータが前記第2上限閾値よりも大きくなった場合、前記比率を前記予め定める第1比率から前記予め定める第1比率よりも小さい前記予め定める第2比率に切り替えるように前記変速機を制御し、
前記第2パラメータが前記第2下限閾値よりも小さくなった場合、前記比率を前記予め定める第1比率から前記予め定める第1比率よりも大きい前記予め定める第2比率に切り替えるように前記変速機を制御するように構成される、請求項1からのいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項8】
クランクおよび駆動輪を備える人力駆動車において、前記クランクの回転速度に対する前記駆動輪の回転速度の比率を変更するための変速機を制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記人力駆動車に入力される人力駆動力のトルク、前記人力駆動車に入力される人力駆動力の仕事率、前記人力駆動車の加速度、前記人力駆動車の躍度、および、前記人力駆動車の傾斜角度の少なくとも1つを含む第1パラメータが増加する場合は、前記人力駆動車の走行状態に関する第2パラメータと、前記第2パラメータに対して設定される第1変速閾値と、に応じて前記比率を予め定める第1比率と、予め定める第2比率と、の間で切り替えるように前記変速機を制御し、
前記第1パラメータが減少する場合は、前記第2パラメータと、前記第2パラメータに対して設けられ、かつ、前記第1変速閾値とは異なる第2変速閾値と、に応じて、前記比率を前記予め定める第1比率と、前記予め定める第2比率との間で切り替えるように前記変速機を制御し、
前記第2変速閾値は、第2上限閾値および第2下限閾値を含み、
前記制御部は、
前記第2パラメータが前記第2上限閾値よりも大きくなった場合、前記比率を前記予め定める第1比率から前記予め定める第1比率よりも小さい前記予め定める第2比率に切り替えるように前記変速機を制御し、
前記第2パラメータが前記第2下限閾値よりも小さくなった場合、前記比率を前記予め定める第1比率から前記予め定める第1比率よりも大きい前記予め定める第2比率に切り替えるように前記変速機を制御するように構成される、人力駆動車用制御装置。
【請求項9】
前記第1パラメータを検出する検出部をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車用制御装置は、人力駆動車の推進をアシストするモータおよび人力駆動車の変速比を変更する変速機などの人力駆動車用コンポーネントを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-110402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、人力駆動車用コンポーネントを好適に制御できる人力駆動車用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う人力駆動車用制御装置は、人力駆動車の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、前記制御部は、前記人力駆動車のクランクの回転速度、前記人力駆動車に入力される人力駆動力の仕事率、前記人力駆動車の加速度、前記人力駆動車の躍度、および、前記人力駆動車の傾斜角度の少なくとも1つを含む第1パラメータが増加する場合は、第1制御状態で前記モータを制御し、前記第1パラメータが減少する場合は、前記第1制御状態とは異なる第2制御状態で前記モータを制御する。
第1側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、人力駆動車のクランクの回転速度、人力駆動車に入力される人力駆動力の仕事率、人力駆動車の加速度、人力駆動車の躍度、および、人力駆動車の傾斜角度の少なくとも1つを含む第1パラメータが増加する場合および減少する場合のそれぞれに適したモータの制御を行える。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御し、前記第1制御状態と前記第2制御状態とにおいて、前記人力駆動力の変化に対する前記モータの出力の応答速度が異なるように前記モータを制御する。
第2側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、第1パラメータが増加する場合および減少する場合のそれぞれに適した応答速度でモータを制御できる。
【0007】
前記第2側面に従う第3側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第1制御状態かつ前記人力駆動力が減少する場合の前記応答速度が、前記第2制御状態かつ前記人力駆動力が減少する場合における前記応答速度よりも遅くなるように前記モータを制御する。
第3側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、第1パラメータが増加しかつ人力駆動力が減少する場合は、第1パラメータが減少しかつ人力駆動力が減少する場合よりもモータの出力が低下しにくくなる。このため、ユーザがモータによるアシスト力の不足感を感じにくい。
【0008】
前記第2または第3側面に従う第4側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第1制御状態かつ前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度が、前記第2制御状態かつ前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度よりも速くなるように前記モータを制御する。
第4側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、第1パラメータが増加しかつ人力駆動力が増加する場合は、第1パラメータが減少しかつ人力駆動力が増加する場合よりもモータの出力が上昇しやすい。このため、ユーザがモータによるアシスト力の不足感を感じにくい。
【0009】
前記第2~第4側面のいずれか1つに従う第5側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第1制御状態および前記第2制御状態のいずれの場合においても、前記人力駆動力が減少する場合の前記応答速度が、前記人力駆動力が増加する場合の前記応答速度よりも遅くなるように前記モータを制御する。
第5側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、第1パラメータが増加する場合および第1パラメータが減少する場合のいずれにおいても、人力駆動力が減少する場合のモータの出力の低下を抑制し、人力駆動力が増加する場合のモータの出力を上昇させやすくできる。
【0010】
前記第1~第5側面のいずれか1つに従う第6側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力に応じて前記モータを制御し、前記第1制御状態と前記第2制御状態とにおいて、前記人力駆動力に対する前記モータによるアシスト力の比率、および、前記モータの出力の最大値の少なくとも一方が異なるように前記モータを制御する。
第6側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、第1パラメータが増加する場合および減少する場合のそれぞれに適したアシスト力の比率およびモータの出力の最大値の少なくとも一方でモータを制御できる。
【0011】
前記第6側面に従う第7側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第1制御状態における前記比率が、前記第2制御状態における前記比率よりも大きくなるように前記モータを制御する。
第7側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、第1パラメータが増加する場合は、第1パラメータが減少する場合よりも比率を大きくできる。このため、ユーザがモータによるアシスト力の不足感を感じにくい。
【0012】
前記第6または第7側面に従う第8側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第1制御状態における前記最大値が、前記第2制御状態における前記最大値よりも大きくなるように、前記モータを制御する。
第8側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、第1パラメータが増加する場合は、第1パラメータが減少する場合よりも最大値を大きくできる。このため、ユーザがモータによるアシスト力の不足感を感じにくい。
【0013】
前記第1~第8側面のいずれか1つに従う第9側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記第1制御状態と前記第2制御状態とを切り替え可能な第1モードと、前記第1制御状態と前記第2制御状態との少なくとも一方への切り替えを禁止する第2モードとで、前記モータを制御するように構成される。
第9側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、第2モードでモータを制御することによって、第1制御状態と第2制御状態との少なくとも一方への切り替えを禁止できる。
【0014】
前記第9側面に従う第10側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、操作部の操作に応じて前記第1モードと前記第2モードと切り替えるように構成される。
第10側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、ユーザが操作部を操作することによって第1モードと第2モードとを切り替えることができる。
【0015】
本発明の第11側面に従う人力駆動車用制御装置は、クランクおよび駆動輪を備える人力駆動車において、前記クランクの回転速度に対する前記駆動輪の回転速度の比率を変更するための変速機を制御する制御部を含み、前記制御部は、前記人力駆動車に入力される人力駆動力のトルク、前記人力駆動車に入力される人力駆動力の仕事率、前記人力駆動車の加速度、前記人力駆動車の躍度、および、前記人力駆動車の傾斜角度の少なくとも1つを含む第1パラメータが増加する場合は、前記人力駆動車の走行状態に関する第2パラメータと、前記第2パラメータに対して設定される第1変速閾値と、に応じて前記比率を予め定める第1比率と、予め定める第2比率と、の間で切り替えるように前記変速機を制御し、前記第1パラメータが減少する場合は、前記第2パラメータと、前記第2パラメータに対して設けられ、かつ、前記第1変速閾値とは異なる第2変速閾値と、に応じて、前記比率を前記予め定める第1比率と、前記予め定める第2比率との間で切り替えるように前記変速機を制御する。
第11側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、第1パラメータが増加する場合と、第2パラメータが減少する場合のそれぞれに適した変速比になるように変速機を制御できる。
【0016】
前記第11側面に従う第12側面の人力駆動車用制御装置において、前記第1変速閾値は、前記第2変速閾値よりも小さい。
第12側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、第1パラメータが増加する場合は、第1パラメータが減少する場合よりも比率が変更されやすい。
【0017】
前記第11または第12側面に従う第13側面の人力駆動車用制御装置において、前記第2パラメータは、前記クランクの回転速度、前記人力駆動車のトルク、前記人力駆動車に入力される人力駆動力の仕事率、前記人力駆動車の速度、前記人力駆動車の加速度、前記人力駆動車の躍度、および、前記人力駆動車の傾斜角度の少なくとも1つを含む。
第13側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、クランクの回転速度、人力駆動車のトルク、人力駆動車に入力される人力駆動力の仕事率、人力駆動車の速度、人力駆動車の加速度、人力駆動車の躍度、および、人力駆動車の傾斜角度の少なくとも1つによって比率を変更することができる。
【0018】
前記第1~第13側面のいずれか1つに従う第14側面の人力駆動車用制御装置において、前記第1パラメータを検出する検出部をさらに含む。
第14側面に従う人力駆動車用制御装置によれば、検出部によって第1パラメータを好適に検出できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の人力駆動車用制御装置は、人力駆動車用コンポーネントを好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の人力駆動車用制御装置を含む人力駆動車の側面図。
図2】第1実施形態の人力駆動車用制御装置の電気的な構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態のクランクの回転速度と時定数との関係の一例を示すグラフ。
図4】第1実施形態のクランクの回転速度と比率との関係の一例を示すグラフ。
図5】第1実施形態のクランクの回転速度とモータの出力の最大値との関係の一例を示すグラフ。
図6図2の制御部によって実行されるモードを切り替える処理のフローチャート。
図7図2の制御部によって実行されるモータを制御する処理のフローチャート。
図8】第2実施形態の制御部によって実行される変速機を制御する処理のフローチャート。
図9】第1実施形態の変形例の制御部によって実行されるモータを制御する処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
図1図7を参照して、第1実施形態の人力駆動車用制御装置40について説明する。以後、人力駆動車用制御装置40を、単に制御装置40と記載する。制御装置40は、人力駆動車10に設けられる。人力駆動車10は、少なくとも人力駆動力によって駆動することができる車両である。人力駆動車10は、例えば、自転車を含む。人力駆動車10は、車輪の数が限定されず、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する車両も含む。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車、ならびに、電動アシスト自転車(E-bike)を含む。以下、実施の形態において、人力駆動車10を、自転車として説明する。
【0022】
図1に示されるとおり人力駆動車10は、クランク12および駆動輪14を備える。人力駆動車10は、フレーム16をさらに備える。クランク12には、人力駆動力Hが入力される。クランク12は、フレーム16に対して回転可能なクランク軸12Aと、クランク軸12Aの軸方向の両端部にそれぞれ設けられるクランクアーム12Bとを含む。各クランクアーム12Bには、ペダル18が連結される。駆動輪14は、クランク12が回転することによって駆動される。駆動輪14は、フレーム16に支持される。クランク12と駆動輪14とは、駆動機構20によって連結される。駆動機構20は、クランク軸12Aに結合される第1回転体22を含む。クランク軸12Aと第1回転体22とは、第1ワンウェイクラッチを介して結合されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク12が前転した場合に、第1回転体22を前転させ、クランク12が後転した場合に、第1回転体22を後転させないように構成される。第1回転体22は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構20は、連結部材26と、第2回転体24とをさらに含む。連結部材26は、第1回転体22の回転力を第2回転体24に伝達する。連結部材26は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0023】
第2回転体24は、駆動輪14に連結される。第2回転体24は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体24と駆動輪14との間には、第2ワンウェイクラッチが設けられていることが好ましい。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体24が前転した場合に、駆動輪14を前転させ、第2回転体24が後転した場合に、駆動輪14を後転させないように構成される。
【0024】
人力駆動車10は、前輪および後輪を含む。フレーム16には、フロントフォーク16Aを介して前輪が取り付けられている。フロントフォーク16Aには、ハンドルバー16Cがステム16Bを介して連結されている。以下の実施形態では、後輪を駆動輪14として説明するが、前輪が駆動輪14であってもよい。
【0025】
図1および図2に示されるとおり、人力駆動車10は、バッテリ28、モータ30、駆動回路32、変速機34、および、アクチュエータ36をさらに含む。
【0026】
バッテリ28は、1または複数のバッテリセルを含む。バッテリセルは、充電池を含む。バッテリ28は、人力駆動車10に設けられ、バッテリ28と有線で電気的に接続されている他の電気部品、例えば、モータ30および制御装置40に電力を供給する。バッテリ28は、制御装置40の制御部42と有線または無線によって通信可能に接続されている。バッテリ28は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)によって制御部42と通信可能である。バッテリ28は、フレーム16の外部に取り付けられてもよく、少なくとも一部がフレーム16の内部に収容されてもよい。
【0027】
モータ30および駆動回路32は、同一のハウジングに設けられることが好ましい。駆動回路32は、バッテリ28からモータ30に供給される電力を制御する。駆動回路32は、制御部42と有線または無線によって通信可能に接続されている。駆動回路32は、例えばシリアル通信によって制御部42と通信可能である。駆動回路32は、制御部42からの制御信号に応じてモータ30を駆動させる。モータ30は、人力駆動車10の推進をアシストする。モータ30は、電気モータを含む。モータ30は、ペダル18から後輪までの人力駆動力Hの動力伝達経路、または、前輪に回転を伝達するように設けられる。モータ30は、人力駆動車10のフレーム16、後輪、または、前輪に設けられる。一例では、モータ30は、クランク軸12Aから第1回転体22までの動力伝達経路に結合される。モータ30とクランク軸12Aとの間の動力伝達経路には、クランク軸12Aを人力駆動車10が前進する方向に回転させた場合にクランク12の回転力によってモータ30が回転しないようにワンウェイクラッチが設けられるのが好ましい。モータ30および駆動回路32が設けられるハウジングには、モータ30および駆動回路32以外の構成が設けられてもよく、例えばモータ30の回転を減速して出力する減速機が設けられてもよい。駆動回路32は、インバータ回路を含む。
【0028】
変速機34は、アクチュエータ36とともに変速装置を構成する。変速機34は、クランク12の回転速度Nに対する駆動輪14の回転速度の比率Rを変更する。変速機34は、比率Rを段階的に変更可能に構成される。変速機34は、比率Rを無段階に変更可能に構成されていてもよい。アクチュエータ36は、変速機34に変速動作を実行させる。変速機34は、制御部42によって制御される。アクチュエータ36は、制御部42と有線または無線によって通信可能に接続されている。アクチュエータ36は、例えば電力線通信(PLC)によって制御部42と通信可能である。アクチュエータ36は、制御部42からの制御信号に応じて変速機34に変速動作を実行させる。変速機34は、内装変速機および外装変速機(ディレイラ)の少なくとも一方を含む。
【0029】
人力駆動車10は、操作部38をさらに含む。操作部38は、例えばハンドルバー16Cに設けられる。操作部38は、ユーザが操作するように構成される操作部材と、操作部材の動きを検出する検出部とを含む。操作部材が操作されると、検出部が操作部材の動きを検出して、操作信号を出力する。操作部材は、レバーおよびボタンなどを含む。検出部は、電気スイッチおよび磁気センサなどを含む。
【0030】
制御装置40は、人力駆動車10の推進をアシストするモータ30を制御する制御部42を含む。制御装置40は、記憶部44をさらに含む。制御装置40は、クランク回転センサ46、車速センサ48、および、トルクセンサ50をさらに含む。
【0031】
クランク回転センサ46は、クランク12の回転速度Nを検出するために用いられる。クランク回転センサ46は、人力駆動車10のフレーム16またはモータ30が設けられるハウジングに取り付けられる。クランク回転センサ46は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、クランク軸12Aまたはクランク軸12Aから第1回転体22までの間の動力伝達経路に設けられる。クランク回転センサ46は、制御部42と有線または無線によって通信可能に接続されている。クランク回転センサ46は、クランク12の回転速度Nに応じた信号を制御装置40の制御部42に出力する。
【0032】
クランク回転センサ46は、クランク軸12Aから第1回転体22までの人力駆動力Hの動力伝達経路において、クランク軸12Aと一体に回転する部材に設けられてもよい。例えば、クランク回転センサ46は、クランク軸12Aと第1回転体22との間にワンウェイクラッチが設けられない場合、第1回転体22に設けられてもよい。
【0033】
車速センサ48は、車輪の回転速度を検出するために用いられる。車速センサ48は、有線または無線によって制御部42と電気的に接続されている。車速センサ48は、制御部42と有線または無線によって通信可能に接続されている。車速センサ48は、車輪の回転速度に応じた信号を制御部42に出力する。制御部42は、車輪の回転速度に基づいて人力駆動車10の速度Vを演算する。制御部42は、速度Vが所定値以上になると、モータ30を停止する。所定値は、例えば時速25Km、または、時速45Kmである。車速センサ48は、リードスイッチを構成する磁性体リード、または、ホール素子を含むことが好ましい。車速センサ48は、フレーム16のチェーンステイに取り付けられ、後輪に取り付けられる磁石を検出する構成としてもよく、フロントフォーク16Aに設けられ、前輪に取り付けられる磁石を検出する構成としてもよい。
【0034】
トルクセンサ50は、モータ30が設けられるハウジングに設けられる。トルクセンサ50は、クランク12に入力される人力駆動力HのトルクTHを検出するために用いられる。トルクセンサ50は、例えば、動力伝達経路に第1ワンウェイクラッチが設けられる場合、第1ワンウェイクラッチよりも上流側に設けられる。トルクセンサ50は、歪センサまたは磁歪センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。トルクセンサ50が歪センサを含む場合、歪センサは、動力伝達経路に含まれる回転体の外周部に設けられる。トルクセンサ50は、無線または有線の通信部を含んでいてもよい。トルクセンサ50の通信部は、制御部42と通信可能に構成される。
【0035】
制御部42は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部42は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。制御部42は、複数の場所に離れて配置される複数の演算処理装置を含んでいてもよい。記憶部44には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部44は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。制御部42および記憶部44は、例えばモータ30が設けられるハウジングに設けられる。
【0036】
制御部42は、人力駆動車10の推進をアシストするモータ30を制御する。制御部42は、クランク12に入力される人力駆動力Hに対するモータ30によるアシスト力Mの比率Aが、予め定める比率になるようにモータ30を制御する。予め定める比率は、一定値であってもよく、人力駆動力Hに応じて変化する値であってもよく、速度Vに応じて変化する値であってもよく、クランク12の回転速度Nによって変化する値であってもよい。人力駆動力Hは、人力駆動力HのトルクTHまたは人力駆動力Hの仕事率(ワット)を含む。人力駆動車10に入力される人力駆動力HのトルクTHに対するモータ30によるアシスト力MのトルクTMの比率ATを、比率Aと記載する場合がある。人力駆動車10に入力される人力駆動力Hの仕事率(ワット)に対するモータ30によるアシスト力Mの仕事率(ワット)の比率AWを、比率Aと記載する場合がある。人力駆動力Hの仕事率は、クランク12に入力される人力駆動力HのトルクTHとクランク12の回転速度Nとの乗算によって算出される。モータ30の出力が減速機を介して人力駆動力Hの動力伝達経路に入力される場合は、減速機の出力を、モータ30によるアシスト力Mとする。制御部42は、人力駆動車10の速度Vが、予め定める速度以上になると、モータ30によるアシストを停止する。予め定める速度は、例えば25km/h、または45km/hである。
【0037】
制御部42は、第1パラメータPに応じてモータ30を制御する。制御部42は、第1パラメータPが増加する場合は、第1制御状態でモータ30を制御し、第1パラメータPが減少する場合は、第1制御状態とは異なる第2制御状態でモータ30を制御する。制御部42は、例えば、第1所定時間における第1パラメータPの増加量が第1所定値を超えた場合、第1パラメータPが増加したと判定し、第1所定時間における第1パラメータPの減少量が第2所定値を超えた場合、第1パラメータPが減少したと判定する。また例えば、制御部42は、第2所定時間にわたって第1パラメータPが増加し続けた場合、第1パラメータPが増加したと判定し、第2所定時間にわたって第1パラメータPが減少し続けた場合、第1パラメータPが減少したと判定する。また例えば、制御部42は、第1パラメータPの増加判定が所定回数以上にわたり連続した場合、第1パラメータPが増加したと判定し、第1パラメータPの減少判定が所定回数以上にわたり連続した場合、第1パラメータPが減少したと判定する。第1パラメータPは、人力駆動車10のクランク12の回転速度N、人力駆動車10に入力される人力駆動力Hの仕事率WH、人力駆動車10の加速度G、人力駆動車10の躍度J、および、人力駆動車10の傾斜角度Dの少なくとも1つを含む。
【0038】
制御装置40は、第1パラメータPを検出する検出部52をさらに含む。検出部52は、センサ52A、センサ52B、センサ52C、および、センサ52Dの少なくとも1つを含む。
【0039】
センサ52Aはクランク12の回転速度Nを検出するために用いられる。センサ52Aは、クランク回転センサ46と同様の構成を有する。クランク回転センサ46をセンサ52Aとして用いることができるが、センサ52Aは、クランク回転センサ46とは別に設けられてもよい。
【0040】
センサ52Bは、人力駆動車10の加速度Gを検出するために用いられる。センサ52Bは、車速センサ48と同様の構成を有する。車速センサ48をセンサ52Bとして用いることができるが、センサ52Bは、車速センサ48とは別に設けられてもよい。第1パラメータPが人力駆動車10の加速度Gを含む場合、制御部42は、センサ52Bによって検出される速度Vを微分することによって人力駆動車10の加速度Gを演算する。第1パラメータPが人力駆動車10の躍度Jを含む場合、制御部42は、速度Vを二回微分することによって人力駆動車10の躍度Jを演算する。人力駆動車10のセンサ52Bは、加速度センサを含んでいてもよい。第1パラメータPが人力駆動車10の躍度Jを含む場合、制御部42は、加速度センサによって検出される人力駆動車10の加速度Gを微分することによって人力駆動車10の躍度Jを演算する。
【0041】
センサ52Cは、人力駆動力HのトルクTHを検出するために用いられる。センサ52Cは、トルクセンサ50と同様の構成を有する。トルクセンサ50をセンサ52Cとして用いることができるが、センサ52Cは、トルクセンサ50とは別に設けられてもよい。第1パラメータPが人力駆動力Hの仕事率WHを含む場合、制御部42は、センサ52Aによって検出されたクランク12の回転速度Nとセンサ52Cによって検出されたトルクTHを乗算することによって、人力駆動力Hの仕事率WHを演算する。
【0042】
センサ52Dは、人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Dを検出するために用いられる。人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Dは、人力駆動車10の進行方向における傾斜角度である。人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Dは、人力駆動車10のピッチ角度と対応する。センサ52Dは、一例では、傾斜センサを含む。傾斜センサの一例は、ジャイロセンサまたは加速度センサである。別の例では、センサ52Dは、GPS(Global positioning system)受信部を含む。制御部42は、GPS受信部によって取得したGPS情報と、制御装置40の記憶部44に予め記録されている地図情報に含まれる路面勾配とに応じて、人力駆動車10の走行する路面の傾斜角度Dを演算する。
【0043】
制御部42は、人力駆動車10に入力される人力駆動力Hに応じてモータ30を制御する。第1の例では、制御部42は、第1制御状態と第2制御状態とにおいて、人力駆動力Hの変化に対するモータ30の出力の応答速度Xが異なるようにモータ30を制御する。制御部42は、フィルタ処理部を含み、フィルタ処理部によって応答速度Xを変更してもよい。具体的には、制御部42は、フィルタ処理部の用いる時定数Kを変化させることによって応答速度Xを変化させる。フィルタ処理部は、例えばローパスフィルタを含む。応答速度Xは、第1制御状態の場合の応答速度X1と第2制御状態の場合の応答速度X2とを含む。応答速度X1は、第1制御状態かつ人力駆動力Hが減少する場合の応答速度X11、および、第1制御状態かつ人力駆動力Hが増加する場合の応答速度X12を含む。応答速度X2は、第2制御状態かつ人力駆動力Hが減少する場合の応答速度X21、および、第2制御状態かつ人力駆動力Hが増加する場合の応答速度X22を含む。
【0044】
制御部42は、好ましくは、第1制御状態および第2制御状態のいずれの場合においても、人力駆動力Hが減少する場合の応答速度X11,X21が、人力駆動力Hが増加する場合の応答速度X12,X22よりも遅くなるようにモータ30を制御する。制御部42は、第1制御状態および第2制御状態のいずれの場合においても、人力駆動力Hが減少する場合の応答速度X11,X21と、人力駆動力Hが増加する場合の応答速度X12,X22と、が同じになるようにモータ30を制御してもよい。
【0045】
制御部42は、好ましくは、第1制御状態かつ人力駆動力Hが減少する場合の応答速度X11が、第2制御状態かつ人力駆動力Hが減少する場合における応答速度X21よりも遅くなるようにモータ30を制御する。制御部42は、第1制御状態かつ人力駆動力Hが減少する場合の応答速度X11と、第2制御状態かつ人力駆動力Hが減少する場合における応答速度X21とが同じになるようにモータ30を制御してもよい。
【0046】
制御部42は、好ましくは、第1制御状態かつ人力駆動力Hが増加する場合の応答速度X12が、第2制御状態かつ人力駆動力Hが増加する場合の応答速度X22よりも速くなるようにモータ30を制御する。制御部42は、第1制御状態かつ人力駆動力Hが増加する場合の応答速度X12と、第2制御状態かつ人力駆動力Hが増加する場合の応答速度X22とが同じになるようにモータ30を制御することがより好ましい。
【0047】
図3は、第1制御状態および第2制御状態におけるクランク12の回転速度Nと時定数Kとの関係の一例を示す。図3の実線L11は、第1制御状態におけるクランク12の回転速度Nと時定数Kとの関係の一例を示す。第1制御状態において、時定数Kは、クランク12の回転速度Nが大きくなるほど速くなる。図3の例では、第1制御状態における時定数Kは、クランク12の回転速度Nが第1速度N1に達すると第1値K1になり、第1速度N1以上では第1値K1に維持される。図3の二点鎖線L12は、第2制御状態におけるクランク12の回転速度Nと時定数Kとの関係の一例を示す。第2制御状態において、時定数Kは、クランク12の回転速度Nが大きくなるほど速くなる。図3の例では、第2制御状態における時定数Kは、クランク12の回転速度Nが第1速度N1よりも大きい第2速度N2になると第1値K1になり、第2速度N2以上では第1値K1に維持される。図3の例では、クランク12の回転速度Nが第2速度N2以上の範囲において、第1制御状態における時定数Kと第2制御状態における時定数Kとは等しくなる。このため、クランク12の回転速度Nが第2速度N2以上の範囲において、応答速度X11と応答速度X21とは等しくなる。制御部42は、第1制御状態および第2制御状態において、クランク12の回転速度Nに代えてトルクTHに応じて時定数Kを決定するようにしてもよい。この場合、図3のクランク12の回転速度NをトルクTHに置き換えた関係を第1制御状態および第2制御状態におけるトルクTHと時定数Kとの関係にしてもよい。
【0048】
第2の例では、制御部42は、第1制御状態と第2制御状態とにおいて、人力駆動力Hに対するモータ30によるアシスト力Mの比率A、および、モータ30の出力の最大値TXの少なくとも一方が異なるようにモータ30を制御する。この場合、制御部42は、比率Aを、クランク12の回転速度Nに応じて変更する。
【0049】
第1制御状態と第2制御状態とにおいて、比率Aが異なるようにモータ30を制御する場合、制御部42は、好ましくは、第1制御状態における比率A1が、第2制御状態における比率A2よりも大きくなるようにモータ30を制御する。
【0050】
図4は、第1制御状態および第2制御状態におけるクランク12の回転速度Nと比率Aとの関係の一例を示す。図4の実線L21は、第1制御状態におけるクランク12の回転速度Nと比率A1との関係の一例を示す。図4の二点鎖線L22は、第2制御状態におけるクランク12の回転速度Nと比率A2との関係の一例を示す。
【0051】
第1制御状態と第2制御状態とにおいて、モータ30の出力の最大値TXの少なくとも一方が異なるようにモータ30を制御する場合、制御部42は、好ましくは、第1制御状態における最大値TX1が、第2制御状態における最大値TX2よりも大きくなるように、モータ30を制御する。
【0052】
図5は、第1制御状態および第2制御状態におけるクランク12の回転速度Nと最大値TXとの関係の一例を示す。図5の実線L31は、第1制御状態におけるクランク12の回転速度Nと最大値TX1との関係の一例を示す。図5の例では、第1制御状態における最大値TX1は、クランク12の回転速度Nが第3速度N3未満の範囲では一定値になり、第3速度N3に達すると、クランク12の回転速度Nが大きくなるにつれて小さくなる。図5の二点鎖線L32は、第2制御状態におけるクランク12の回転速度Nと最大値TX2との関係の一例を示す。図5の例では、第2制御状態における最大値TX2は、クランク12の回転速度Nが第3速度N3よりも大きい第4速度N4未満の範囲では一定値になり、第4速度N4に達すると、クランク12の回転速度Nが大きくなるにつれて小さくなる。図5の例では、クランク12の回転速度Nが第4速度N4以上の範囲において、最大値TX1と最大値TX2とは等しくなる。
【0053】
制御部42は、好ましくは、第1制御状態と第2制御状態とを切り替え可能な第1モードと、第1制御状態と第2制御状態との少なくとも一方への切り替えを禁止する第2モードとで、モータ30を制御するように構成される。一例では、制御部42は、第2モードにおいて、第1制御状態への切り替えを禁止する。この場合、制御部42は、第2モードが選択されている場合、第2制御状態でモータ30を制御する。制御部42は、第1制御状態および第2制御状態と異なる第3制御状態でモータ30を制御するようにしてもよい。この場合、制御部42は、第2モードが選択されている場合、第3制御状態でモータ30を制御するようにしてもよい。第3制御状態において、制御部42は、応答速度X、比率A、および、モータ30のトルクTMの最大値TXの少なくとも1つが、第1制御状態および第2制御状態の少なくとも一方における応答速度X、比率A、および、モータ30のトルクTMの最大値TXの少なくとも1つと異なるようにモータ30を制御する。第3制御状態は、第1制御状態および第2制御状態の一方と同じであってもよい。制御部42は、好ましくは、操作部38の操作に応じて第1モードと第2モードと切り替えるように構成される。制御部42は、操作部38が操作されると、第1モードと第2モードとを切り替える。
【0054】
図6を参照して、第1モードと第2モードとを切り替える処理について説明する。制御部42は、制御部42にバッテリ28から電力が供給されると、処理を開始して図6に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部42は、電力が供給されている限り、所定周期ごとにステップS11からの処理を実行する。
【0055】
制御部42は、ステップS11において、操作部38が操作されたか否かを判定する。制御部42は、操作部38が操作されていない場合、処理を終了する。制御部42は、ステップS11において、操作部38が操作された場合、ステップS12に移行する。
【0056】
制御部42は、ステップS12において、第1モードか否かを判定する。具体的には、制御部42は、第1モードでモータ30を制御しているか否かを判定する。制御部42は、第1モードの場合、ステップS13に移行する。制御部42は、ステップS13において第2モードに切り替え、処理を終了する。
【0057】
制御部42は、ステップS12において、第1モードではないと判定した場合、ステップS14に移行する。具体的には、制御部42は、第2モードでモータ30を制御している場合、ステップS14に移行する。制御部42は、ステップS14において第1モードに切り替え、処理を終了する。
【0058】
図7を参照して、モータ30を制御する処理について説明する。制御部42は、制御部42にバッテリ28から電力が供給されると、処理を開始して図7に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部42は、電力が供給されている限り、所定周期ごとにステップS21からの処理を実行する。
【0059】
制御部42は、ステップS21において、第1パラメータPが増加しているか否かを判定する。制御部42は、第1パラメータPが増加している場合、ステップS22に移行する。制御部42は、ステップS22において、第1モードか否かを判定する。制御部42は、第1モードの場合、ステップS23に移行する。制御部42は、ステップS23において、第1制御状態でモータ30を制御し、処理を終了する。具体的には、制御部42は、応答速度Xを応答速度X1にする設定、比率Aを比率A1にする設定、および、最大値TXを最大値TX1にする設定の少なくとも1つを行う。
【0060】
制御部42は、ステップS21において、第1パラメータPが増加していないと判定した場合、ステップS24に移行する。制御部42は、ステップS24において、第1パラメータPが減少しているか否かを判定する。制御部42は、第1パラメータPが減少している場合、ステップS25に移行する。制御部42は、ステップS25において、第2制御状態でモータ30を制御し、処理を終了する。具体的には、制御部42は、応答速度Xを応答速度X2にする設定、比率Aを比率A2にする設定、および、最大値TXを最大値TX2にする設定の少なくとも1つを行う。
【0061】
制御部42は、ステップS22において、第1モードではないと判定した場合、ステップS24に移行する。制御部42は、第1モードではない場合、第1制御状態への切り替えが禁止される第2モードにおいてモータ30を制御する。制御部42は、ステップS22において、否定判定された場合に、ステップS23の処理を実行しないことによって、第1制御状態への切り替えを行わない。このため、第2モードの場合、制御部42は第1制御状態でモータ30を制御しない。
【0062】
制御部42は、ステップS24において、第1パラメータPが減少していないと判定した場合、処理を終了する。この場合、制御部42は、前回の処理において選択した第1制御状態または第2制御状態によるモータ30の制御を継続してもよく、第3制御状態によってモータ30を制御するようにしてもよい。
【0063】
例えば、搭乗者が人力駆動車10の速度Vを増加またはトルクTHを増加させようとして第1パラメータPが増加するような漕ぎ方をした場合、制御部42は、第1パラメータPが減少する場合よりもモータ30の出力が大きくなるようにモータ30を制御する。このため、制御部42は、搭乗者の意思を反映したモータ30の制御を行える。
【0064】
(第2実施形態)
図2および図8を参照して、第2実施形態の制御装置40について説明する。第2実施形態の制御装置40は、制御部42がモータ30に代えて第1パラメータPに応じて変速機34を制御する点が異なる点以外は、第1実施形態の制御装置40と同様であるので、第1実施形態と共通する構成については、第1実施形態と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0065】
制御装置40は、クランク12および駆動輪14を備える人力駆動車10において、クランク12の回転速度Nに対する駆動輪14の回転速度の比率Rを変更するための変速機34を制御する制御部42を含む。
【0066】
制御部42は、第1パラメータPに応じて変速機34を制御する。制御部42は、第1パラメータPが増加する場合は、人力駆動車10の走行状態に関する第2パラメータQと、第2パラメータQに対して設定される第1変速閾値Q1と、に応じて比率Rを予め定める第1比率R1と、予め定める第2比率R2と、の間で切り替えるように変速機34を制御する。第1パラメータPは、人力駆動車10に入力される人力駆動力HのトルクTH、人力駆動車10に入力される人力駆動力Hの仕事率WH、人力駆動車10の加速度G、人力駆動車10の躍度J、および、人力駆動車10の傾斜角度Dの少なくとも1つを含む。制御部42は、第1パラメータPが減少する場合は、第2パラメータQと、第2パラメータQに対して設けられ、かつ、第1変速閾値Q1とは異なる第2変速閾値Q2と、に応じて、比率Rを予め定める第1比率R1と、予め定める第2比率R2との間で切り替えるように変速機34を制御する。
【0067】
第2パラメータQは、クランク12の回転速度N、人力駆動車10のトルクTH、人力駆動車10に入力される人力駆動力Hの仕事率WH、人力駆動車10の速度V、人力駆動車10の加速度G、人力駆動車10の躍度J、および、人力駆動車10の傾斜角度Dの少なくとも1つを含む。
【0068】
第1変速閾値Q1は、好ましくは、第2変速閾値Q2よりも小さい。一例では、第1変速閾値Q1は、第1上限閾値Q11から第1下限閾値Q12までの範囲を含む。一例では、第2変速閾値Q2は、第2上限閾値Q21から第2下限閾値Q22までの範囲を含む。第1上限閾値Q11は、第2上限閾値Q21よりも小さいことが好ましい。第1下限閾値Q12は、第2下限閾値Q22よりも小さいことが好ましい。第1変速閾値Q1が第1上限閾値Q11のみを含み、かつ、第2変速閾値Q2が第2上限閾値Q21のみを含んでいてもよい。第1変速閾値Q1が第1下限閾値Q12のみを含み、かつ、第2変速閾値Q2が第2下限閾値Q22のみを含んでいてもよい。
【0069】
図8を参照して、変速機34を制御する処理について説明する。制御部42は、制御部42にバッテリ28から電力が供給されると、処理を開始して図8に示すフローチャートのステップS31に移行する。制御部42は、電力が供給されている限り、所定周期ごとにステップS31からの処理を実行する。
【0070】
制御部42は、ステップS31において、第1パラメータPが増加しているか否かを判定する。制御部42は、第1パラメータPが増加している場合、ステップS32に移行する。制御部42は、ステップS32において、第2パラメータQが第1変速閾値Q1の範囲内か否かを判定する。制御部42は、第2パラメータQが第1変速閾値Q1の範囲内の場合、処理を終了する。制御部42は、第2パラメータQが第1変速閾値Q1の範囲内でない場合、ステップS33に移行する。
【0071】
制御部42は、ステップS33において、変速機34を制御して処理を終了する。例えば、制御部42は、第2パラメータQが第1上限閾値Q11よりも大きくなった場合、比率Rを予め定める第1比率R11から予め定める第2比率R12に切り替えるように変速機34を制御する。この場合、予め定める第2比率R12は予め定める第1比率R11よりも小さいことが好ましい。制御部42は、第2パラメータQが第1上限閾値Q11よりも大きくなった場合、かつ、比率Rが最小の比率Rではない場合、比率Rが1段階小さくなるように変速機34を制御してもよい。また、例えば、制御部42は、第2パラメータQが第1下限閾値Q12よりも小さくなった場合、比率Rを予め定める第1比率R11から予め定める第2比率R12に切り替えるように変速機34を制御してもよい。この場合、予め定める第2比率R12は予め定める第1比率R11よりも大きいことが好ましい。制御部42は、第2パラメータQが第1下限閾値Q12よりも小さくなった場合、かつ、比率Rが最大の比率Rではない場合、比率Rが1段階大きくなるように変速機34を制御してもよい。
【0072】
制御部42は、ステップS31において、第1パラメータPが増加していない場合、ステップS34に移行する。制御部42は、ステップS34において、第1パラメータPが減少しているか否かを判定する。制御部42は、第1パラメータPが減少している場合、ステップS35に移行する。制御部42は、ステップS35において、第2パラメータQが第2変速閾値Q2の範囲内か否かを判定する。制御部42は、第2パラメータQが第2変速閾値Q2の範囲内の場合、処理を終了する。制御部42は、第2パラメータQが第2変速閾値Q2の範囲内でない場合、ステップS36に移行する。
【0073】
制御部42は、ステップS36において、変速機34を制御して処理を終了する。例えば、制御部42は、第2パラメータQが第2上限閾値Q21よりも大きくなった場合、比率Rを予め定める第1比率R21から予め定める第2比率R22に切り替えるように変速機34を制御する。この場合、予め定める第2比率R22は予め定める第1比率R21よりも小さいことが好ましい。制御部42は、第2パラメータQが第2上限閾値Q21よりも大きくなった場合、かつ、比率Rが最小の比率Rではない場合、比率Rが1段階小さくなるように変速機34を制御してもよい。また、例えば、制御部42は、第2パラメータQが第2下限閾値Q22よりも小さくなった場合、比率Rを予め定める第1比率R21から予め定める第2比率R22に切り替えるように変速機34を制御してもよい。この場合、予め定める第2比率R22は予め定める第1比率R21よりも大きいことが好ましい。制御部42は、第2パラメータQが第2下限閾値Q22よりも小さくなった場合、かつ、比率Rが最大の比率Rではない場合、比率Rが1段階大きくなるように変速機34を制御してもよい。
【0074】
制御部42は、ステップS34において、第1パラメータPが減少していない場合、処理を終了する。この場合、制御部42は、前回の処理において選択した第1制御状態または第2制御状態によるモータ30の制御を継続してもよく、第1制御状態および第2制御状態とは異なる制御状態によって変速機34を制御するようにしてもよい。
【0075】
例えば、搭乗者が人力駆動車10の速度Vを増加またはトルクTHを増加させようとして第1パラメータPが増加するような漕ぎ方をした場合、第2変速閾値Q2よりも小さい第1変速閾値Q1に応じて比率Rが変更されるようになる。このため、第2パラメータQの増加に対して比率Rが小さくなりやすい。このため、制御部42は、搭乗者の意思を反映した変速機34の制御を行える。
【0076】
(変形例)
各実施形態に関する説明は、本発明に従う人力駆動車用制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う人力駆動車用制御装置は、例えば以下に示される各実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0077】
・第1実施形態の制御部42は、第2モードにおいて、第2制御状態への切り替えを禁止するようにしてもよい。この場合、図7の処理順序を図9に示す処理順序に変更してもよい。なお、図9の各ステップでは、各ステップの処理順序が異なる以外は、図7の対応する各ステップと同様の処理が実行される。制御部42は、ステップS41において、第1パラメータPが増加しているか否かを判定する。制御部42は、第1パラメータPが増加している場合、ステップS42に移行する。制御部42は、ステップS42において、第1制御状態でモータ30を制御し、処理を終了する。制御部42は、ステップS41において、第1パラメータPが増加していないと判定した場合、ステップS43に移行する。制御部42は、ステップS43において、第1モードか否かを判定する。制御部42は、第1モードではない場合、ステップS42に移行する。制御部42は、第1モードの場合、ステップS44に移行する。制御部42は、ステップS44において、第1パラメータPが減少しているか否かを判定する。制御部42は、第1パラメータPが減少している場合、ステップS45に移行する。制御部42は、ステップS45において、第2制御状態でモータ30を制御し、処理を終了する。制御部42は、ステップS44において、第1パラメータPが減少していないと判定した場合、処理を終了する。制御部42は、ステップS43において、第1モードではないと判定した場合、ステップS45の処理を実行しない。このため、第2モードの場合、制御部42は第2制御状態でモータ30を制御しない。
【0078】
・第1実施形態から図6に示す処理を省略してもよい。この場合、制御部42は、第1モードの場合と同様にモータ30を制御する。この場合、制御部42は、図7からステップS22の処理を省略できる。また、この場合、人力駆動車10から操作部38を省略してもよい。
【0079】
・第1実施形態において、制御部42は、操作部38の操作に代えてまたは加えて人力駆動車10の走行状態に応じて第1モードと第2モードとを切り替えるようにしてもよい。
【0080】
・第2実施形態において、制御部42は、第1制御状態と第2制御状態とを切り替え可能な第1モードと、第1制御状態と第2制御状態との少なくとも一方への切り替えを禁止する第2モードとで、変速機34を制御するように構成してもよい。この場合、制御部42は、第1実施形態の図6と同様の処理を実行してもよい。また、この場合、図8の処理において、第2モードの場合に、第1制御状態と第2制御状態との少なくとも一方への切り替えを禁止する処理を追加してもよい。
【符号の説明】
【0081】
10…人力駆動車、12…クランク、14…駆動輪、30…モータ、34…変速機、38…操作部、40…人力駆動車用制御装置、42…制御部、52…検出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9