(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ガス発生器
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
B60R21/264
(21)【出願番号】P 2021048400
(22)【出願日】2021-03-23
(62)【分割の表示】P 2017563800の分割
【原出願日】2017-01-13
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2016012366
(32)【優先日】2016-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】猪妻 利広
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-092853(JP,A)
【文献】特開2014-046704(JP,A)
【文献】特開2002-370607(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 7/00
B60R 21/264
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板、底板および前記天板と前記底板の間の周壁を有しており、前記底板が、前記底板の一部が開口され、前記開口部から前記天板方向に延ばされた筒状壁部を有しており、前記周壁がガス排出口を有しているハウジングと、
前記ハウジング内において、
前記ハウジング周壁のガス排出口と間隔をおいて配置され、上端面側が前記天板に当接され、下端面側が前記底板に当接されている筒状フィルタと、
前記ハウジング底板の筒状壁部に外側から嵌め込まれたカップ形状の点火手段室ハウジング内に形成され、点火器を含む点火手段が収容されている点火手段室と、
前記筒状フィルタと前記カップ形状の点火手段室ハウジングにより半径方向両側から挟まれた、ガス発生剤が充填されている燃焼室を有しているガス発生器であって、
前記カップ形状の点火手段室ハウジングが、開口部側にフランジ部を有しており、前記フランジ部が前記底板に当接されるまで前記ハウジング底板の筒状壁部に外側から嵌め込まれているものであり、
さらに前記筒状フィルタと前記カップ形状の点火手段室ハウジングの間に配置された環状リテーナを有しており、
前記環状リテーナが、環状ベース部と、前記環状ベース部の外周縁から前記天板に延ばされた環状壁部を有しているものであり、
前記環状リテーナが、前記環状壁部が前記筒状フィルタの内周面に当接され、前記環状ベース部が前記ハウジング底板に当接されており、前記環状ベース部が、前記カップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部と厚さ方向に重ねられておらず、
前記環状リテーナの環状ベース部と前記点火手段室ハウジングのフランジ部の間の環状境界部分を覆う位置に環状プレートが配置されている、ガス発生器。
【請求項2】
天板、底板および前記天板と前記底板の間の周壁を有しており、前記底板が、前記底板の一部が開口され、前記開口部から前記天板方向に延ばされた筒状壁部を有しており、前記周壁がガス排出口を有しているハウジングと、
前記ハウジング内において、
前記ハウジング周壁のガス排出口と間隔をおいて配置され、上端面側が前記天板に当接され、下端面側が前記底板に当接されている筒状フィルタと、
前記ハウジング底板の筒状壁部に外側から嵌め込まれたカップ形状の点火手段室ハウジング内に形成され、点火器を含む点火手段が収容されている点火手段室と、
前記筒状フィルタと前記カップ形状の点火手段室ハウジングにより半径方向両側から挟まれた、ガス発生剤が充填されている燃焼室を有しているガス発生器であって、
前記カップ形状の点火手段室ハウジングが、開口部側にフランジ部を有しており、前記フランジ部が前記底板に当接されるまで前記ハウジング底板の筒状壁部に外側から
、固定されずに嵌め込まれているものであり、
さらに前記筒状フィルタと前記カップ形状の点火手段室ハウジングの間に配置された環状リテーナを有しており、
前記環状リテーナが、環状ベース部と、前記環状ベース部の外周縁から前記天板に延ばされた環状壁部を有しているものであり、
前記ハウジング底板が、前記筒状フィルタの内周面から前記筒状壁部の間において、前記筒状フィルタの内周面側に環状凹部を有しており、前記筒状壁部側に前記環状凹部との高低差からなる環状凸部を有しているものであり、
前記環状凹部内に前記環状リテーナの環状ベース部と前記環状壁部と前記環状ベース部の境界部分が嵌め込まれており、前記環状凸部上にカップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部が当接されていることで、前記環状ベース部が、前記カップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部と厚さ方向に重ねられて
おらず、前記点火手段室の圧力が上昇して前記点火手段室ハウジングが移動しても前記環状ベース部が持ち上げられることがない、ガス発生器。
【請求項3】
天板、底板および前記天板と前記底板の間の周壁を有しており、前記底板が、前記底板の一部が開口され、前記開口部から前記天板方向に延ばされた筒状壁部を有しており、前記周壁がガス排出口を有しているハウジングと、
前記ハウジング内において、
前記ハウジング周壁のガス排出口と間隔をおいて配置され、上端面側が前記天板に当接され、下端面側が前記底板に当接されている筒状フィルタと、
前記ハウジング底板の筒状壁部に外側から嵌め込まれたカップ形状の点火手段室ハウジング内に形成され、点火器を含む点火手段が収容されている点火手段室と、
前記筒状フィルタと前記カップ形状の点火手段室ハウジングにより半径方向両側から挟まれた、ガス発生剤が充填されている燃焼室を有しているガス発生器であって、
前記カップ形状の点火手段室ハウジングが、開口部側にフランジ部を有しており、前記フランジ部が前記底板に当接されるまで前記ハウジング底板の筒状壁部に外側から
、固定されずに嵌め込まれているものであり、
さらに前記筒状フィルタと前記カップ形状の点火手段室ハウジングの間に配置された環状リテーナを有しており、
前記環状リテーナが、環状ベース部と、前記環状ベース部の外周縁から前記天板に延ばされた環状壁部を有しているものであり、
前記環状リテーナが、前記環状壁部が前記筒状フィルタの内周面に当接され、前記環状ベース部が前記ハウジング底板に当接されており、前記環状ベース部が、前記カップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部と厚さ方向に重ねられておらず、
前記ハウジング底板が、前記筒状フィルタから半径方向内側の位置に環状凸部を有しており、
前記環状リテーナが、前記環状壁部が前記筒状フィルタの内周面に当接され、前記環状ベース部が前記ハウジング底板に当接され、前記環状ベース部の内周縁部が前記環状凸部に当接されており、
前記カップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部が前記環状凸部から半径方向内側に位置していることで、前記環状ベース部が、前記カップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部と厚さ方向に重ねられて
おらず、前記点火手段室の圧力が上昇して前記点火手段室ハウジングが移動しても前記環状ベース部が持ち上げられることがない、ガス発生器。
【請求項4】
前記環状リテーナが、環状ベース部の長さW1と環状壁部の高さH1がW1>H1の関係を有しており、
前記ハウジング底板の筒状壁部の外周面から前記筒状フィルタの内周面までの長さWと前記W1が、W1/W=0.1~0.7の関係を有しているものである、請求項1~3のいずれか1項に記載のガス発生器。
【請求項5】
天板、底板、および前記天板と前記底板の間の周壁を有しており、前記底板が、前記底板の一部が開口され、前記開口部から前記天板方向に延ばされた筒状壁部を有しており、前記周壁がガス排出口を有しているハウジングと、
前記ハウジング内において、
前記ハウジング周壁のガス排出口と間隔をおいて配置され、上端面側が前記天板に当接され、下端面側が前記底板に当接されている筒状フィルタと、
前記ハウジング底板の筒状壁部に外側から嵌め込まれたカップ形状の点火手段室ハウジング内に形成され、点火器を含む点火手段が収容されている点火手段室と、
前記筒状フィルタと前記点火手段室ハウジングにより半径方向両側から挟まれた、ガス発生剤が充填されている燃焼室を有しているガス発生器であって、
前記カップ形状の点火手段室ハウジングが、開口部側にフランジ部を有しており、前記フランジ部が前記底板に当接されるまで前記ハウジング底板の筒状壁部に外側から嵌め込まれているものであり、
さらに前記筒状フィルタと前記カップ形状の点火手段室ハウジングの間に配置された環状リテーナを有しており、
前記環状リテーナが、環状ベース部と、前記環状ベース部の外周縁から前記天板に延ばされた環状壁部を有しているものであり、
前記環状リテーナが、前記環状壁部が前記筒状フィルタの内周面に当接され、前記環状ベース部が前記ハウジング底板に当接されており、
前記環状ベース部と前記カップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部が、前記環状ベース部が前記底板側になり、前記フランジ部が前記天板側になるように重ねられている、ガス発生器。
【請求項6】
前記環状リテーナが、環状ベース部の長さW1と環状壁部の高さH1がW1>H1の関係を有しており、
前記ハウジング底板の筒状壁部の外周面から前記筒状フィルタの内周面までの長さWと前記W1が、W1/W=0.1~0.7の関係を有しているものである、請求項5記載のガス発生器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに搭載するエアバッグ装置などのガスを利用する各種目的に使用できるガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2014-46704号公報)には、エアバッグ装置用のガス発生器の発明が記載されている。
図1のガス発生器1Aは、燃焼室60内において、伝火薬56を収容したカップ状部材50と第1宛がい部材70が配置されている。
図7には、カップ状部材50の第1延設部53の先端部54上に第1宛がい部材70の第2延設部71が配置されることになり、当該第1延設部53の先端部54が、ハウジングの軸方向に沿って第2延設部71と底板部11とによって挟まれた状態となっていることが記載されている。(段落番号92)
図8には、先端曲成部74は、底板部11の突状筒部13の軸方向端部近傍の位置にまで達しており、当該部分においても、カップ状部材50の第1延設部53が、ハウジングの軸方向に沿って底板部11と第2延設部71とによって挟まれた状態となっていることが記載されている。(段落番号112)
【0003】
特許文献1(特開2014-46704号公報)の
図7、
図8に示すガス発生器では、作動したときにカップ状部材50内部での圧力が上昇すると、その圧力でカップ状部材50が変形や破壊をするが、その後、ガス発生剤が燃焼したときに外殻ハウジングも軸方向上下に変形しやすくなる。
図7および
図8では、カップ状部材50の先端部54が第1宛がい部材70の第2延設部71よりも底板部11側にあるため、カップ状部材50内部で発生した圧力で先端部54が変形して第1宛がい部材70が持ち上げられると、フィルタ90と第2延設部71との間に隙間が形成されやすくなる。
そのように形成された隙間を燃焼生成物が通過すると、フィルタ90を通過せずに燃焼ガスが排出されるショートパスが生じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、作動時にガス発生剤が燃焼したことによる圧力によってハウジングが変形した場合でも、ショートパスが生じることがないガス発生器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様(以下「第1の態様」という)は、天板、底板および前記天板と前記底板の間の周壁を有しており、前記底板が、前記底板の一部が開口され、前記開口部から前記天板方向に延ばされた筒状壁部を有しており、前記周壁がガス排出口を有しているハウジングと、
前記ハウジング内において、
前記ハウジング周壁のガス排出口と間隔をおいて配置され、上端面側が前記天板に当接され、下端面側が前記底板に当接されている筒状フィルタと、
前記ハウジング底板の筒状壁部に外側から嵌め込まれたカップ形状の点火手段室ハウジング内に形成され、点火器を含む点火手段が収容されている点火手段室と、
前記筒状フィルタと前記カップ形状の点火手段室ハウジングにより半径方向両側から挟まれた、ガス発生剤が充填されている燃焼室を有しているガス発生器であって、
前記カップ形状の点火手段室ハウジングが、開口部側にフランジ部を有しており、前記フランジ部が前記底板に当接されるまで前記ハウジング底板の筒状壁部に外側から嵌め込まれているものであり、
さらに前記筒状フィルタと前記カップ形状の点火手段室ハウジングの間に配置された環状リテーナを有しており、
前記環状リテーナが、環状ベース部と、前記環状ベース部の外周縁から前記天板に延ばされた環状壁部を有しているものであり、
前記環状リテーナが、前記環状壁部が前記筒状フィルタの内周面に当接され、前記環状ベース部が前記ハウジング底板に当接されており、前記環状ベース部が、前記カップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部と厚さ方向に重ねられていない、ガス発生器を提供する。
【0007】
ハウジングは、天板、底板および前記天板と前記底板の間の周壁を有しており、周壁は複数のガス排出口を有している。
ハウジングは、鉄、ステンレスなどの金属からなるものである。
ハウジングの底板は、前記底板の一部が開口され、前記開口部から前記天板方向に延ばされた筒状壁部を有している。前記開口部は、前記底板の中心を含んでいることが好ましいが、中心から外れた位置にあってもよい。
筒状壁部は、前記天板側の開口部において半径方向内側に突き出された環状面部を有しているものも使用することができる。
ハウジングは、天板と上部周壁部を有し、前記上部周壁部にガス排出口を有しているディフューザシェルと、底板と下部周壁部を有し、前記筒状壁部を有しているクロージャシェルの組み合わせを使用することができる。
ハウジングは、前記上部周壁部と前記下部周壁部の接触部分が溶接などの公知の方法で固定されることで形成される。
【0008】
点火手段室ハウジングは、ハウジングと同様の金属製のカップ形状のものであり、周面部には、作動時に開裂する脆弱部、貫通孔がシールテープなどで閉塞されたものなどを有している。
点火手段室内の点火手段は、点火器と公知の伝火薬または伝火薬として機能するガス発生剤を含むものが好ましい。
点火器は、前記筒状壁部に対して樹脂を介して固定されていることが好ましい。
【0009】
点火手段室ハウジングはカップ形状であることから、底面部と周面部を有し、底面部の反対端部が開口されたものであり、開口部側には半径方向外側に延びたフランジ部を有している。
点火手段室ハウジングは、フランジ部がハウジング底板に当接されるまでハウジング底板の筒状壁部に外側から嵌め込まれている。
点火手段室ハウジングは、作動したときに軸方向に移動してもよいが、筒状壁部から外れないようにすることが必要であり、嵌め込み方法として圧入方法などを使用することができるが、溶接は使用しない。
点火手段室ハウジングの底面部はハウジングの天板に単に当接していてもよいし、天板から間隔を置くように配置されていてもよい。間隔をあけて配置する場合は、その間隔が少なくともハウジングの底板の筒状壁部の長さよりも短くなるようにする。
点火手段室ハウジングの開口部とフランジ部の境界部分の形状は、ハウジング底板と筒状壁部の境界部分の形状と一致していると、隙間なく嵌め込むことができるため好ましい。
【0010】
燃焼室内のガス発生剤は公知のものであり、円柱形状、ディスク形状などの所望形状のものである。
【0011】
環状リテーナは、環状ベース部と、前記環状ベース部の外周縁から天板に延ばされた環状壁部を有している。
環状リテーナは、環状壁部が筒状フィルタの内周面に当接され、環状ベース部がハウジング底板に当接されている。
環状壁部と環状ベース部の境界部分が、筒状フィルタの下端面とハウジング底板の当接部分に面している。
環状リテーナの環状ベース部と点火手段室ハウジングのフランジ部は、前記環状ベース部の内周縁部と前記フランジ部の外周縁が互いに接触していないか、または少なくとも一部で互いに接触していてもよいが、厚さ方向には重ねられていない。
【0012】
ガス発生器の作動時、まず点火手段室内の圧力が上昇するので、点火手段ハウジングが天板に向かって移動しようとする。次に燃焼室内のガス発生剤の燃焼に伴う内圧の上昇によって、ハウジング天板とハウジング底板は外側に向かってそれぞれ反対方向に変形する。このとき、底板は下方向に変形する。
このため、点火手段室ハウジングのフランジ部が環状リテーナの環状ベース部の下側(底板側)にあると、点火手段が作動したときにフランジ部により環状ベース部が持ち上げられるような状態になる。さらに底板が変形するとハウジング底板と筒状フィルタの下端面の境界部分と環状リテーナの間で隙間が生じてしまい、ショートパスが起こるおそれもある。
本発明のガス発生器では、環状リテーナの環状ベース部と点火手段室ハウジングのフランジ部は、厚さ方向には重ねられていないため、上記した変形が生じたときでも、前記フランジ部が前記環状ベース部を持ち上げることがないため、ハウジング底板と筒状フィルタの下端面の境界部分に対して環状リテーナが当接された状態が維持されている。
このため、燃焼ガスは筒状フィルタを経由してガス排出口から排出されるようになり、燃焼ガスが筒状フィルタを経由しないで排出されるショートパスが起こることはない。
なお、カップ形状の点火手段室ハウジングの底面部が天板に当接するまで移動した長さ以上に、筒状壁部の長さを長くする。このようにすることで、作動による点火手段室内の圧力上昇時に点火手段ハウジングが天板に向かって移動しようとしたときでも、点火手段室ハウジングが筒状壁部から完全に外れない構造となる。またフランジ部は、燃焼室での圧力を受ける受圧面として機能し、カップ形状の点火手段室ハウジングを底板へ押し下げる機能がある。そのためフランジ部は、ハウジング底板に沿った方向(ハウジング中心軸に対しての放射方向)に延びる部分を有するようにする。この部分の長さは筒状フィルタの内周面とカップ形状の点火手段室ハウジングの周面部の距離の1/3から4/5の長さにすることが出来る。
【0013】
第1の態様のガス発生器は、前記ハウジング底板が、前記筒状フィルタの内周面から前記筒状壁部の間において、前記筒状フィルタの内周面側は環状凹部を有しており、前記筒状壁部側は前記環状凹部との高低差からなる環状凸部を有しているものであり、
前記環状凹部内に前記環状リテーナの環状ベース部と前記環状壁部と前記環状ベース部の境界部分が嵌め込まれており、前記環状凸部上にカップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部が当接されていることで、前記環状ベース部が、前記カップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部と厚さ方向に重ねられていないものが好ましい。
【0014】
前記環状ベース部と点火手段室ハウジングのフランジ部が、高さの異なる環状凹部と環状凸部に位置しているため、前記環状ベース部の内周縁部と前記点火手段室ハウジングのフランジ部は厚さ方向に重ねられることがない。
【0015】
第1の態様のガス発生器は、前記ハウジング底板が、前記筒状フィルタから半径方向内側の位置に環状凸部を有しており、
前記環状リテーナが、前記環状壁部が前記筒状フィルタの内周面に当接され、前記環状ベース部が前記ハウジング底板に当接され、前記環状ベース部の内周縁部が前記環状凸部に当接されており、
前記カップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部が前記環状凸部から半径方向内側に位置していることで、前記環状ベース部が、前記カップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部と厚さ方向に重ねられていないものであることが好ましい。
【0016】
ハウジング底板が有している環状凸部によって、前記環状ベース部の内周縁部と前記点火手段室ハウジングのフランジ部は厚さ方向に重ねられることがない。
【0017】
第1の態様のガス発生器は、前記環状リテーナが、環状ベース部の長さW1と環状壁部の高さH1がW1>H1の関係を有しており、
前記ハウジング底板の筒状壁部の外周面から前記筒状フィルタの内周面までの長さWと前記W1が、W1/W=0.1~0.7の関係を有しているものであることが好ましい。
【0018】
このような形状および寸法比の環状リテーナを使用すると、作動時における圧力を受けて底板が変形した場合でも、底板と同様に圧力を受けることで、底板の変形に追随して環状ベース部が変形しやすくなるため、ハウジング底板と筒状フィルタの下端面の境界部分に対して環状リテーナが当接された状態が維持されている。
このため、燃焼ガスは筒状フィルタを経由してガス排出口から排出されるようになるため、燃焼ガスが筒状フィルタを経由しないで排出されるショートパスが防止される。
【0019】
第1の態様のガス発生器は、前記環状リテーナの環状ベース部と前記点火手段室ハウジングのフランジ部の間の環状境界部分を覆う位置に環状プレートが配置されており、
前記環状プレートの外周部が前記環状リテーナの環状壁部に当接されているか、または前記環状プレートの内周部が前記点火手段室ハウジングの周壁面とフランジ部の境界部分に当接されていることが好ましい。
【0020】
このような環状プレートを使用すると、前記環状ベース部の内周縁部と前記点火手段室ハウジングのフランジ部との間の環状境界部分に隙間ができたときに、その隙間(環状の隙間)をカバーしてガス発生剤が入り込むことを防ぐ(燃焼室の底面を平らにする)。また作動前の環状リテーナの環状ベース部と点火手段ハウジングのフランジ部を押さえる固定の機能を果たす。
【0021】
本発明の第2の態様(以下「第2の態様」という)は、天板、底板、および前記天板と前記底板の間の周壁を有しており、前記底板が、前記底板の一部が開口され、前記開口部から前記天板方向に延ばされた筒状壁部を有しており、前記周壁がガス排出口を有しているハウジングと、
前記ハウジング内において、
前記ハウジング周壁のガス排出口と間隔をおいて配置され、上端面側が前記天板に当接され、下端面側が前記底板に当接されている筒状フィルタと、
前記ハウジング底板の筒状壁部に外側から嵌め込まれたカップ形状の点火手段室ハウジング内に形成され、点火器を含む点火手段が収容されている点火手段室と、
前記筒状フィルタと前記カップ形状の点火手段室ハウジングにより半径方向両側から挟まれた、ガス発生剤が充填されている燃焼室を有しているガス発生器であって、
前記カップ形状の点火手段室ハウジングが、開口部側にフランジ部を有しており、前記フランジ部が前記底板に当接されるまで前記ハウジング底板の筒状壁部に外側から嵌め込まれているものであり、
さらに前記筒状フィルタと前記カップ形状の点火手段室ハウジングの間に配置された環状リテーナを有しており、
前記環状リテーナが、環状ベース部と、前記環状ベース部の外周縁から前記天板に延ばされた環状壁部を有しているものであり、
前記環状リテーナが、前記環状壁部が前記筒状フィルタの内周面に当接され、前記環状ベース部が前記ハウジング底板に当接されており、
前記環状ベース部と前記カップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部が、前記環状ベース部が前記底板側になり、前記フランジ部が前記天板側になるように重ねられている、ガス発生器を提供する。
【0022】
第2の態様のガス発生器は、前記環状ベース部と前記カップ形状の点火手段室ハウジングのフランジ部が、前記環状ベース部が前記底板側になり、前記フランジ部が前記天板側になるように重ねられている、という構成要件が第1の態様のガス発生器と異なっているものである。
よって、作動時において底板は下方向に変形しても、フランジ部により環状ベース部が持ち上げられるような事態が生じることは全くなく、ショートパスが生じることもない。第2の態様のガス発生器においても第1の態様のガス発生器と同様に、カップ形状の点火手段室ハウジングの底面部が天板に当接するまで移動した長さ以上に、筒状壁部の長さを長くすることが出来る。またフランジ部は、燃焼室での圧力を受ける受圧面として機能し、カップ形状の点火手段室ハウジングを底板へ押し下げる機能がある。そのためフランジ部は、ハウジング底板に沿った方向(ハウジング中心軸に対しての放射方向)に延びる部分を有するようにする。この部分の長さは筒状フィルタの内周面とカップ形状の点火手段室ハウジングの周面部の距離の1/3から4/5の長さにすることが出来る。
【0023】
第2の態様のガス発生器は、前記環状リテーナが、環状ベース部の長さW1と環状壁部の高さH1がW1>H1の関係を有しており、
前記ハウジング底板の筒状壁部の外周面から前記筒状フィルタの内周面までの長さWと前記W1が、W1/W=0.1~0.7の関係を有しているものであることが好ましい。
【0024】
このような形状および寸法比の環状リテーナを使用すると、作動時における圧力を受けて底板が変形した場合でも、底板と同様に圧力を受けることで、底板の変形に追随して環状ベース部が変形しやすくなるため、ハウジング底板と筒状フィルタの下端面の境界部分に対して環状リテーナが当接された状態が維持されている。
このため、燃焼ガスは筒状フィルタを経由してガス排出口から排出されるようになるため、燃焼ガスが筒状フィルタを経由しないで排出されるショートパスが防止される。
本発明のガス発生器は、自動車のエアバッグ装置で使用するガス発生器として使用することができるほか、瞬間的にガスを供給することが求められる用途にも使用することができる。
本発明は、以下の詳細な説明と添付された図面により、さらに完全に理解されるものであるが、これらはただ説明のため付されるものであり、本発明を制限するものではない。
【発明の効果】
【0025】
本発明のガス発生器は、作動時における筒状フィルタの下端面とハウジング底板の間から燃焼ガスがショートパスすることが防止されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、(a)において本発明のガス発生器の軸X方向の断面図、(b)において(a)の環状リテーナの断面図である。
【
図2】
図2は、
図1のガス発生器の作動時の状態を示す部分断面図である。
【
図3】
図3は、(a)において
図1と別実施形態であるガス発生器の部分断面図、(b)において(a)の作動時の状態を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1とさらに別実施形態であるガス発生器の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(1)
図1のガス発生器
ガス発生器1は、外殻容器となるハウジング10を有している。
ハウジング10は、天板12と天板12から一方向側に垂設された上部周壁部13からなり、開口部にフランジ部14を有しているディフューザシェル11と、底板22と底板22から一方向側に垂設された下部周壁部23からなるクロージャシェル21の組み合わせからなるものである。
ディフューザシェル11とクロージャシェル21は、ディフューザシェル11の上部周壁部13の開口部側の内周面とクロージャシェル21の下部周壁部23の外周面との接触部分24において溶接一体化されている。
【0028】
ディフューザシェル11は、上部周壁部13において周方向に均等間隔をおいて形成された複数のガス排出口15を有している。
複数のガス排出口15は、アルミニウム製などの粘着テープ16で内側から閉塞されている。
【0029】
クロージャシェル21の底板22は、中心部分が開口され、開口部25から前記天板12方向に延ばされた筒状壁部26を有している。
筒状壁部26は、開口部25から天板12方向に延ばされた筒状部26aと、筒状部26aから半径方向内側に延ばされた環状面部26bからなっている。
筒状壁部26には、樹脂部27を介して点火器30が取り付けられている。点火器30は、着火部31と導電ピン32を有している。
筒状壁部26の外径と樹脂部27の外径は同一であり、筒状壁部26と樹脂部27は全体として一つの円柱形状になっている。
【0030】
ハウジング10内には、上部周壁部13のガス排出口15と空間17をおいて筒状フィルタ35が配置されている。
筒状フィルタ35は、上端面35aが天板12に当接され、下端面35bが底板22に当接されている。
【0031】
筒状壁部26と樹脂部27には、外側からカップ形状の点火手段室ハウジング40が嵌め込まれている。点火手段室ハウジング40は、筒状壁部26(筒状部26a)に圧入されている。なお、樹脂部27を筒状部26aよりもわずかに外側に突出させて、点火手段室ハウジングをその突出した部分と圧入させてもよい。
点火手段室ハウジング40はカップ形状のものであり、底面部41と周面部(点火手段室周面部)42を有しており、開口部側にフランジ部43を有している。
周面部42には、周方向に等間隔をおいて貫通孔42aが形成されている。貫通孔42aはアルミニウム製などのシールテープで閉塞されていることが好ましい。
点火手段室ハウジング40は、底面部41が周面部42とは別部材の蓋で閉塞された構造のものでもよい。
点火手段室ハウジング40の空間内が点火手段室44となり、内部には、伝火薬として機能する第1ガス発生剤45が充填されている。
フランジ部43(周面部42とフランジ部43の境界部も含む)は、筒状壁部26(筒状部26a)と底板22の両方に当接されている。フランジ部43はハウジング底板22に沿った方向(放射方向)に延びている。フランジ部43放射方向への長さは、筒状フィルタ35の内周面35cとカップ形状の点火手段室ハウジング40の周面部42間の距離の1/3から4/5の長さにするが、
図1では1/3の長さになっている。
【0032】
筒状フィルタ35と点火手段室ハウジング40により半径方向両側から挟まれた空間が燃焼室50となり、公知の第2ガス発生剤51が充填されている。
【0033】
筒状フィルタ35と点火手段室ハウジング40の間には、さらに環状リテーナ55が配置されている。
環状リテーナ55は、環状ベース部56と、環状ベース部56の外周縁から天板12側に向かって延在する環状壁部57を有している。
環状リテーナ55は、
図1(b)に示す環状ベース部56の幅W1(環状ベース部56の内周縁部56aから環状壁部57の外周面までの距離)と環状壁部57の高さH1(環状壁部57の上端部から、環状ベース部56の下面までの距離)がW1>H1の関係を有している。
底板22の筒状壁部26(筒状部26a)の外周面から筒状フィルタ35の内周面35cまでの幅Wと前記W1が、W1/W=0.1~0.7の関係を有しているものが好ましい。筒状部26aの軸X方向の高さは、カップ形状の点火手段室ハウジング40の底面部41とリテーナ60(リテーナ60が存在しない場合は、ハウジング天板12)との間の距離よりも十分に長くなっている。またこの距離はカップ形状の点火手段室ハウジング40の底面部41とリテーナ60(リテーナ60が存在しない場合は、ハウジング天板12)との間にガス発生剤51が入り込まない程度とすることが出来る。
環状リテーナ55は、環状壁部57が筒状フィルタ35の内周面35cに当接され、環状ベース部56がハウジング底板22に当接されており、環状ベース部56の内周縁部56aと点火手段室ハウジング40のフランジ部43の先端周縁部(フランジ部外周縁)43aは、厚さ方向に重ねられていない。環状ベース部56の内周縁部56aと点火手段室ハウジング40のフランジ部43の先端周縁部43aの間には、隙間があることが好ましい。
環状リテーナ55は、ハウジング底板22と筒状フィルタの下端面35bとの間から燃焼ガスがショートパスすることを防止するためのものである。
なお、ハウジング天板12と筒状フィルタの上端面35aとの間から燃焼ガスがショートパスすることを防止するため、天板12側にもリテーナ60を配置することができる。
【0034】
次に、
図1に示すガス発生器1の動作を説明する。
点火器30が作動すると、点火手段室44内の第1ガス発生剤45が着火燃焼され、燃焼ガスを発生させる。
点火手段室44内の燃焼ガスは複数の貫通孔42aから燃焼室50内に放出され、第2ガス発生剤51を着火燃焼させて燃焼ガスを発生させる。
燃焼室50内の燃焼ガスは筒状フィルタ35を通って空間17に入ったあと、シールテープ16を開裂させてガス排出口15から排出される。
【0035】
上記の動作過程において、先に点火手段室44の圧力が上昇する。点火手段室ハウジング40は、筒状壁部26に対して嵌め込まれており、溶接固定されていないため、天板12方向にスライドしようとする。また貫通孔42aから燃焼生成物が燃焼室50に流れてガス発生剤51が燃焼し、燃焼室50内の圧力が上昇したとき、天板12と底板22のそれぞれが軸Xの反対側方向に変形する。
このとき、
図2に示すように点火手段室ハウジング40も天板12方向に移動することになる。ただし、筒状部26の長さは点火手段室ハウジング40の移動距離よりも長くなるように形成されており、点火手段室ハウジング40が筒状壁部26から外れることはない。
作動前においてフランジ部43の上に環状リテーナ55(環状ベース部56)が重ねられた状態であるとき、
図2の状態になると、フランジ部43によって環状ベース部56が持ち上げられてしまい、ハウジング底板22と筒状フィルタの下端面35bとの間から燃焼ガスがショートパスするおそれがある。
しかし、
図1に示すガス発生器1は、環状ベース部56とフランジ部43が厚さ方向に重ねられていないため、
図2に示す状態になることから、ハウジング底板22と筒状フィルタの下端面35bとの間から燃焼ガスがショートパスすることが防止できる。また燃焼室で発生した圧力は点火手段室ハウジングの底面部41にもはたらくので、フランジ部43が燃焼室で発生する圧力に対しての受圧面となる。とくにフランジ部43は受圧面として十分な面積を有しており、燃焼室50で発生した圧力がフランジ部43に作用して、点火手段室ハウジング40を底板22方向に押し戻そうとする機構がはたらく。よって相対的に点火手段室ハウジング40の変位を抑制することが出来る。
【0036】
環状リテーナ55が上記したW1>H1の関係を有しており、さらにW1/W=0.1~0.7の関係を有しているものであると、燃焼室50内の圧力が上昇したとき、環状ベース部56が底板22に押しつけられ易くなるため、環状ベース部56が底板22の変形に追随して変形し易くなっている。
このため、上記したショートパス防止効果がより高められるので好ましい。
【0037】
(2)
図3のガス発生器
図3(a)に示すガス発生器1は、
図1(a)に示すガス発生器1において環状プレート65を追加したもので、他は
図1(a)に示すガス発生器1と同一のものである。
環状リテーナ55の環状ベース部56と点火手段室ハウジング40のフランジ部43の間の環状境界部分を覆う位置に環状プレート65が配置されている。
環状プレート65は、環状ベース部56とフランジ部43の両方に当接されている。
環状プレート65の外周部66は、環状リテーナ55の環状壁部57に当接されているか、または近接された位置にある。
【0038】
環状プレート65は、組み立て時には環状ベース部56を固定するように機能すると共に、組み立て後は、燃焼室50の底板22側を平らにするようにも機能する。
また作動時には
図1(a)のガス発生器1と同様に動作するが、
図2に対応する
図3(b)の状態のとき、燃焼室50内の圧力上昇を受けて環状プレート65が環状リテーナ55を押しつけるように変形することから、ショートパス防止効果が高められる。
【0039】
(3)
図4のガス発生器
図4のガス発生器1Aは、
図1(a)のガス発生器1とは一部が異なるだけである。以下においては、
図1(a)のガス発生器1と異なる部分を説明する。
【0040】
ハウジング底板22は、筒状フィルタ35の内周面35cから筒状壁部26(筒状部26a)の間において、筒状フィルタ35の内周面35c側に環状凹部70を有しており、筒状壁部26(筒状部26a)側は、環状凹部70との高低差から形成された環状凸部71を有している。
環状凹部70と環状凸部71は、底板22の厚さを異ならせることにより形成されたものであるが、本来の底板22の厚さを薄くすることで環状凹部70が形成されたものが好ましい。
環状凹部70と環状凸部71の段差寸法は、環状ベース部56の厚さと同等であればよい。
【0041】
環状凹部70内には、環状リテーナ55の環状ベース部56と、環状壁部57と環状ベース部56の境界部分が嵌め込まれている。
環状凸部71上には、点火手段室ハウジング40のフランジ部43が当接されている。フランジ部43の幅は、環状凸部71の幅以下である。
図4(a)のガス発生器1Aは、環状凹部70と環状凸部71を有しているため、環状ベース部56の内周縁部56aとフランジ部43の先端周縁部43aが厚さ方向に重ねられていない。
このため、
図1(a)のガス発生器1と同様に動作することができる。
【0042】
(4)
図5のガス発生器
図5のガス発生器1Bは、
図1(a)のガス発生器1とは一部が異なるだけである。以下においては、
図1(a)のガス発生器1と異なる部分を説明する。
【0043】
底板22は、筒状フィルタ35から半径方向内側の位置に環状凸部75を有している。
環状リテーナ55は、環状壁部57が筒状フィルタ35の内周面35cに当接され、環状ベース部56がハウジング底板22に当接され、環状ベース部56の内周縁部56aが環状凸部75に当接されている。
点火手段室ハウジング40のフランジ部43は、環状凸部75から半径方向内側に位置している。フランジ部43の先端周縁部43aは、環状凸部75に当接されていない。
環状凸部75の底板22からの高さは、環状ベース部56とフランジ部43の厚さと同等の高さである。
図5のガス発生器1Bは、環状凸部75を有しているため、環状ベース部56の内周縁部56aとフランジ部43の先端周縁部43aが厚さ方向に重ねられていない。
このため、
図1(a)のガス発生器1と同様に動作することができる。
【0044】
(5)
図6のガス発生器
図6のガス発生器1Cは、
図1(a)のガス発生器1とは一部が異なるだけである。以下においては、
図1(a)のガス発生器1と異なる部分を説明する。
【0045】
フランジ部43は、筒状壁部26(筒状部26a)に当接されている。
環状リテーナ55は、環状壁部57が筒状フィルタ35の内周面35cに当接され、環状ベース部56が底板22に当接されている。
図1(a)とは異なり、フランジ部43と環状ベース部56は、それぞれの幅の一方または両方の寸法を調節することで、環状ベース部56(内周縁部56a)が底板22側になり、フランジ部43(先端周縁部43a)が天板12側になるように重ねられている。
フランジ部43と環状ベース部56の上下の位置関係が維持されていれば、前記の重なり部分の長さは特に制限されない。
図6に示すガス発生器1Cが
図1(a)に示すガス発生器1と同様に動作して
図2の状態になったときでも、フランジ部43によって環状ベース部56が持ち上げられることはなく、ハウジング底板12と筒状フィルタの下端面35bとの間から燃焼ガスがショートパスすることが防止される。
【0046】
環状リテーナ55が上記したW1>H1の関係を有しており、さらにW1/W=0.1~0.7の関係を有しているものであると、燃焼室50内の圧力が上昇したとき、環状ベース部56が底板22に押しつけられ易くなるため、環状ベース部56が底板22の変形に追随して変形し易くなっている。
このため、上記したショートパス防止効果がより高められるので好ましい。
また図の6の実施例でも、点火手段室ハウジング40のフランジ部43はハウジング底板22(
図6では環状ベース部56)に沿った方向(放射方向)に延びる。フランジ部43の放射方向への長さは、筒状フィルタ35の内周面35cとカップ形状の点火手段室ハウジング40の周面部42間の距離の1/3から4/5の長さにするが、
図3では1/3の長さである。燃焼室で発生した圧力が受圧面となるフランジ部43に作用して、点火手段室ハウジング40を底板22方向に押し戻そうとする。
【0047】
本発明を以上のように記載した。当然、本発明は様々な形の変形をその範囲に含み、これら変形は本発明の範囲からの逸脱ではない。また当該技術分野における通常の知識を有する者が明らかに本発明の変形とみなすであろうすべては、以下に記載する請求項の範囲にある。