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特許7160990自動車において音をシミュレーションする方法
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  • 特許-自動車において音をシミュレーションする方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】自動車において音をシミュレーションする方法
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20221018BHJP
   G10K 15/04 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H04S7/00 300
G10K15/04 302A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021070271
(22)【出願日】2021-04-19
(65)【公開番号】P2021175188
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2021-04-20
(31)【優先権主張番号】10 2020 110 974.1
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】ベンヤミン ベルナード
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-35550(JP,A)
【文献】特開2014-21770(JP,A)
【文献】特開2016-20203(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168602(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 7/00
G10K 15/04
H04R 3/00
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(100)において、音をシミュレーションする方法であって、
前記自動車(100)の外の位置で仮想音源(101、101’)を定義するステップと、
前記仮想音源(101、101’)からの音をシミュレーションするステップであって、前記シミュレーションが、前記自動車(100)内の実音源を用いて行われる、ステップと、
前記自動車(100)の速度に応じて、前記自動車(100)に対する、前記仮想音源(101、101’)の前記位置を変更するステップと、
を含み、
複数の仮想音源(101、101’)が定義され、前記複数の仮想音源(101、101’)が、前記自動車(100)が走行している方向において、互いから等距離にあることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記自動車(100)の周辺エリアに対する前記仮想音源(101、101’)の前記位置が不変であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の仮想音源(101、101’)の互いからの距離が、前記自動車(100)の前記速度、及び/又は前記自動車(100)の駆動部のトルク要求によって決まることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記複数の仮想音源(101、101’)が、前記自動車(100)に対して側方にずれて配置されることを特徴とする、請求項1~の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
複数の実音源と、制御装置とを有し、前記制御装置が、前記複数の実音源を起動して音を発生させるように設計されている自動車(100)であって、前記制御装置が、請求項1~の何れか一項に記載の方法を実行するように設計されていることを特徴とする、自動車(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1で請求される、自動車において音をシミュレーションする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車における仮想音源の定義が知られている。この場合、仮想音源に由来する音が、実音源を用いてシミュレーションされる。ユーザには、あたかもこの音が仮想音源から生じたように聞こえる。特許文献1は、加速操作及びブレーキ操作やコーナリングに応じて、仮想音源の位置を調節することも開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2016/0016513A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、本発明は、電気駆動部を備えた自動車のドライバーのドライビング体験を向上させるという目的に基づくものである。
【0005】
この目的は、請求項1で請求される方法によって、及び請求項6で請求される自動車によって達成される。本発明の実施形態は従属項に規定される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1で請求される通り、仮想音源は自動車の外の位置に定義される。特に、仮想音源を自動車に対して側方にずらして定義することが可能である。本明細書では、これは特に仮想音源が自動車に対して横方向にずれて定義されることを意味すると理解されるものである。本明細書では、横方向とは、特に車輪が操舵されていない状態の自動車の移動方向に対して垂直な水平方向に伸びる方向を意味すると理解されるものである。側方にずれていることに加えて、仮想音源は自動車の後方又は前方に配置されてもよい。この場合、仮想音源は例えば空間に自由に浮かんでもよい。
【0007】
仮想音源からの音がシミュレーションされる。このシミュレーションは、自動車内の実音源を用いて行われる。実音源は、特に、物理的構成要素として存在することができる。実音源は、例えば、自動車で他の音を発生させるためにも使用されるスピーカーであってもよい。例えば、実音源により音楽を再生することができる。
【0008】
仮想音源の位置は、自動車の速度に応じて、自動車に対して変化する。例えば、自動車に対する仮想音源の位置は、自動車が移動している自動車の走行方向とは逆にシフトされてもよい。この場合、自動車の移動速度が増すにつれて、前記位置がシフトされる速度が増し得る。
【0009】
仮想音源のおかげで、ドライバーは、自動車が達した速度に関して、より優れた感覚を得られる。このことは、電気駆動部を備えた自動車の場合に特に有利であり、その理由は、電気駆動部を備えた自動車の場合には、ドライバーの多くが聞き慣れた内燃機関の音がないからである。自動車の速度が増すにつれて、仮想音源がドライバーから後方へと遠ざかる速度が増す。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、自動車の周辺エリアに対する仮想音源の位置は不変であってもよい。この場合、ドライバーにとって特に本物そっくりの体験が生み出される。ドライバーが、静止している実音源を車で通過しているかのように聞こえる。このように、ドライバーは自身の体験に基づいて、速度を現実的に推定することができる。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、複数の仮想音源を定義することができる。これらの仮想音源は、自動車が移動している方向において、互いから等距離に置かれてもよい。例えば、複数の仮想音源は、幾何学的な直線に沿って上記距離を置いて定義されてもよい。この場合、幾何学的な直線は、自動車の走行方向と平行に配置されてもよい。ここでは、幾何学的な直線は構成要素として存在するのではなく、単なる仮想直線として存在し、仮想音源の位置を定義する役割を果たす点が重要である。
【0012】
ドライバーのドライビング体験は、互いから等距離に置かれた複数の仮想音源によってさらに向上する。前記ドライバーが速度を変えると、これらの仮想音源を通過する頻度も変化する。したがって、加速操作及びブレーキ操作が、聴覚的に本物そっくりに示される。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、複数の仮想音源の互いからの距離は、自動車の速度及び/又はトルク要求によって決まってもよい。この実施形態では、複数の仮想音源の互いからの距離が必ずしも同じである必要がない点が重要である。本明細書においては、トルク要求とは、特に、あるトルクを生じさせるために自動車の駆動をもたらす、ユーザによる行為を意味すると理解されるものである。例えば、この行為は、自動車の速度を上げるためのペダル操作の場合がある。
【0014】
複数の仮想音源の互いからの距離が速度及び/又はトルク要求に依存するおかげで、速度及び/又はトルク要求が、複数の仮想音源が互いから一定の距離を置いて配置される場合よりも聴覚的により強く強調されるため、ドライビング体験をドライバーにとってさらに面白いものにすることができる。
【0015】
本発明の一実施形態によれば、仮想音源は、自動車に対して側方にずれていてもよい。
【0016】
請求項6で請求される自動車は、複数の実音源と、制御装置とを含む。この制御装置は、複数の実音源を起動して音を発生させるように設計される。この制御装置は、本発明の一実施形態による方法を実行するようにも設計されている。
【0017】
本発明のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照する、好ましい実施形態例の以下の説明に基づいて、明らかとなるだろう。本明細書では、同じ参照符号は、同一又は類似の構成要素に、及び同一又は類似の機能を持つ構成要素に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態による自動車及び仮想音源の概略平面図である。
図2図1よりも後の時点の図1の自動車及び仮想音源の概略平面図である。
図3図2よりも後の時点の図1の自動車及び仮想音源、並びに別の仮想音源の概略平面図である。
図4図3よりも後の時点の図3の自動車及び別の仮想音源の概略平面図である。
図5図4よりも後の時点の図3の自動車及び別の仮想音源の概略平面図である。
図6】仮想音源間の距離が自動車の速度及び/又はトルク要求によって決まることを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
自動車100は道路を走行している。自動車に配置された音源(図面には示されない)が、仮想音源101及び101’をシミュレーションするために使用される。ここでは、仮想音源101及び101’は、自動車に対して側方にずれて配置される。仮想音源101及び101’は、図1~5において、周辺エリアに対して静止状態にある。したがって、自動車100は、仮想音源101及び101’に対して移動している。
【0020】
最初に(図1に示される)、仮想音源101は、自動車100の側方に隣接して配置される。後に(図2に示される)、仮想音源101は、自動車100の後方で、側方にずれて配置される。この配置により、ドライバーは、周辺エリアに対して静止した態様で自動車100の外に配置された音源を車で通過したという音の感覚が得られる。ドライバーによって知覚される音は、自動車100の速度によって異なる。したがって、自動車100が達した速度に関するドライバーの感覚は、聴覚的に助けられる。
【0021】
図3は、図2よりも後の時点で、どのように自動車100が、仮想音源101と、別の仮想音源101’との間に位置するかを示している。したがって、仮想音源101はドライバーの後方へと遠ざかり、一方、仮想音源101’は前方から近づいてくる。この過程も、ドライバーが自動車100の速度を知覚することを聴覚的に助ける。
【0022】
図4は、図3よりも後の時点で、どのように自動車100が別の仮想音源101’の側方に隣接して位置するかを示している。ここでは状況が仮想音源101に関する図1と類似している。図5では、この別の仮想音源101’が、図2の仮想音源101と同様に、自動車の後方で側方にずれて位置している。
【0023】
自動車100のドライバーは、仮想音源101及び101’を車で通過することにより、周辺エリアに静止した態様で配置された複数の音源を通過しているという音の印象を得る。自動車が仮想音源101及び101’を通過する頻度は、速度によって変化する。したがってドライバーは、自動車100の速度の感覚を聴覚的に得る。
【0024】
図6の図では、X軸上に位置がプロットされる。本発明の実施形態に応じて、自動車100の速度、トルク要求、又は速度及びトルク要求の組み合わせが、Y軸上にプロットされ得る。簡潔にするために、Y軸上にプロットされる情報は、以下で全ての実施形態について、まとめて「パラメータ」と呼ぶ。このパラメータの値は、Y軸上で下から上に向かって増加する。これは例えば、より速い速度、より高いトルク要求、又は速度及びトルク要求の組み合わせに関するより高い値が、下部よりも上部においてさらにプロットされることを意味する。
【0025】
ここでは、複数の仮想音源101の互いからの距離は、比較的小さなパラメータの場合に比較的大きい。簡潔さのために、ここでは全ての仮想音源101が参照符号を付されているわけではない。だがそれでも、図6の各長方形は仮想音源を表す。複数の仮想音源101の互いからの距離は、パラメータが大きくなるにつれて小さくなる。したがって、例えば自動車100が加速される場合、及び/又はより高いトルクが要求される場合には、複数の仮想音源101の互いからの距離は減少する。要求されるトルク及び/又は自動車100の速度が低下すると、仮想音源101間の距離は増加する。
【0026】
このようにして、ドライバーに対して聴覚的に与えられる速度及び/又はトルク要求の感覚は、速度及び/又はトルク要求の変化が強調されるため、さらに高めることができる。例えば、仮想音源101間の距離が同じままであっても、自動車100の速度が上がると、自動車100が仮想音源101を通過する頻度が増加する。この効果は、速度が上昇した場合、及び/又はトルク要求が増大した場合に、距離の減少によってさらに増幅される。
【符号の説明】
【0027】
100 自動車
101、101’ 仮想音源
図1
図2
図3
図4
図5
図6