(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】アンテナデバイス
(51)【国際特許分類】
G04R 60/12 20130101AFI20221018BHJP
H01Q 1/24 20060101ALI20221018BHJP
H01Q 9/30 20060101ALI20221018BHJP
G04R 60/04 20130101ALI20221018BHJP
G04G 21/04 20130101ALI20221018BHJP
G04R 20/02 20130101ALI20221018BHJP
G04R 20/26 20130101ALI20221018BHJP
G04G 17/00 20130101ALI20221018BHJP
A44C 5/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G04R60/12
H01Q1/24 Z
H01Q9/30
G04R60/04
G04G21/04
G04R20/02
G04R20/26
G04G17/00 E
A44C5/00 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021105339
(22)【出願日】2021-06-25
【審査請求日】2021-06-25
(32)【優先日】2020-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ティエリ・スコルディリ
(72)【発明者】
【氏名】ゾラン・ランジェロビッチ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・ゴリス
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-179928(JP,A)
【文献】特開2010-230374(JP,A)
【文献】特開2020-057931(JP,A)
【文献】特開2012-244454(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111029731(CN,A)
【文献】国際公開第2020/129352(WO,A1)
【文献】特開2001-185927(JP,A)
【文献】特許第7108085(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04R
H01Q
G04G
A44C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製のケースミドル部(40)によって形成されるケースを備える計時器であって、
前記ケース内には、金属製の表盤と、及び前記表盤の上方に配置されるマルチバンドアンテナデバイス(1)を備える遠隔通信システムとが配置され、
前記遠隔通信システムは、前記計時器のブレスレット(49)を備え、このブレスレット(49)は、その両端が前記ケースミドル部に接続され、異なる導電性を有する複数の固定用要素によって形成される本体を備え、
前記ブレスレット(49)の前記本体における前記固定用要素は、前記
マルチバンドアンテナデバイス(1)の放射パターンを大きくするように構成して
おり、
前記マルチバンドアンテナデバイス(1)は、基板(10)と、第1のアンテナ回路(11)と、第2のアンテナ回路(12)と、電気的接合リンク(13)と、及び接続部(100)とを備え、
前記第1のアンテナ回路(11)は、前記基板上に設けられ、近位端と遠位端がありそれらの近位端と遠位端の間で平行に延在している第1及び第2のストランド(110、111)を備え、
前記第1及び第2のストランドは、それらの近位端に接続されておりそれらの遠位端にて絶縁されており、
前記第2のアンテナ回路(12)は、前記基板(10)上に設けられ、近位端と遠位端がありそれらの近位端と遠位端の間で平行に延在している第3及び第4のストランド(120、121)を備え、
前記第3及び第4のストランドは、それらの遠位端にて接続されておりそれらの近位端にて分離されており、
前記電気的接合リンク(13)は、前記第1及び第3のストランドの近位端どうしをつなぎ、
前記接続部(100)は、前記電気的接合リンク(13)に対して曲がっているように構成しており、前記電気的接合リンク(13)に接続される導電性接続体を備え、前記導電性接続体に対する電磁遮蔽体を備える
ことを特徴とする計時器。
【請求項2】
前記固定用要素には、リンクがあり、このリンクはそれぞれ、金属性材料又は誘電体材料によって作られ
得る
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器。
【請求項3】
前記ケースミドル部に接続されるように意図された、前記ブレスレット(49)の前記本体の両端のうちの一方の端における前記リンクは、誘電体材料によって作られている
ことを特徴とする請求項2に記載の計時器。
【請求項4】
前記ブレスレット(49)の前記本体を構成している金属性材料によって作られているいくつかのリンクは、前記
マルチバンドアンテナデバイス(1)の放射パターンを大きくする構成の実現に寄与する
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の計時器。
【請求項5】
前記ストランド(110、111、120、121)は、曲がっている
ことを特徴とする請求項
4に記載の計時器。
【請求項6】
前記基板(10)は、前記
第1及び第2のアンテナ回路
(11、12)が設けられる面がある第1のプレートによって構成しており、
前記接続部(100)は、前記第1のプレートに対して曲がっているように構成している
ことを特徴とする請求項
1~5のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項7】
前記基板の前記第1のプレートは、円弧状のプロファイルを有する
ことを特徴とする請求項
6のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項8】
前記第1及び第2のアンテナ回路(11、12)は、前記電気的接合リンク(13)の両側に配置される
ことを特徴とする請求項
1~7のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項9】
前記遠隔通信システムは、
前記マルチバンドアンテナデバイス(1)と、及び前記接続部(100)の前記導電性接続体を介して前記電気的接
合リンクに接続されるデュプレクサ/ノッチ回路(20)とを備える
ことを特徴とする請求項
1~8のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項10】
前記デュプレクサ/ノッチ回路(20)は、前記第1のアンテナ回路を介してBluetooth
(登録商標)タイプのプロトコルにしたがって通信するように構成している第1の通信回路と、及び前記第2のアンテナ回路を介して衛星測位ネットワークにて通信するように構成している第2の通信回路とを備える
ことを特徴とする請求項
9に記載の計時器。
【請求項11】
コネクテッド携行型時計である
ことを特徴とする請求項1~
10のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項12】
前記
マルチバンドアンテナデバイス(1)は、異なる偏波の信号及び/又は異なる周波数帯の信号を同時に通信することができる
ことを特徴とする請求項1~
11のいずれか一項に記載の計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器のための通信システムに用いられるアンテナデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
数年前から、携行型時計(例、腕時計、懐中時計)は、通信手段を搭載して、様々な通信ネットワークに接続できるようにしている。例えば、移動体端末と接続するためにBluetooth(登録商標)通信ネットワークに接続し、GPS、Glonass、Galileoのような様々な衛星測位システムに接続するために地理位置情報の通信ネットワークに接続している。このために、携行型時計は、1つ又は複数のアンテナを搭載している。
【0003】
アンテナの最適な大きさは、送受信される信号の波長に直接依存することが知られている。アンテナの長さが最適であることによって、フルパワーでフルに信号を送受信することができる。
【0004】
携行型時計においては、利用可能な空間が限られているので、アンテナは、携行型時計のケースミドル部内に収まるような設計でなければならない。
【0005】
また、携行型時計が無線周波数(例、2.4GHz、1.5GHz)で動作する無線通信手段を搭載している場合、波長(120mmや200mm)に対する製品の大きさが決定的に重要になる。
【0006】
また、以下のような他の制約も考慮に入れなければならない。
- 携行型時計には多くの金属部品、特に、ケースミドル部、が用いられており、アンテナは、このような金属部品から離れている必要がある。
- 携行型時計は、上記のように同じケース内に複数の通信デバイスを搭載することができる。
- 携行型時計の体積は、特定の大きさよりも大きいことはできない(原則として最大直径50mm)。
【0007】
したがって、特に従来技術の問題点がないような、手法を開発する必要があることがわかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況で、本発明の目的の1つは、携行型時計のような計時器のための通信システムにおいて用いられることを意図されており、少なくとも2つのアンテナ回路を搭載し、その各アンテナ回路が、フルパワーでフルに信号を送受信し収容空間が限られている携行型時計のケースミドル部に収まるために最適な長さを有するようなアンテナデバイスを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このために、本発明は、金属製のケースミドル部によって形成されるケースを備える計時器に関し、前記ケース内には、金属製の表盤と、及び前記表盤の上方に配置されるマルチバンドアンテナデバイスを備える遠隔通信システムとが配置され、前記遠隔通信システムは、前記計時器のブレスレットを備え、このブレスレットは、その両端が前記ケースミドル部に接続され、異なる導電性を有する複数の固定用要素によって形成される本体を備え、前記ブレスレットの前記本体における前記固定用要素は、前記アンテナデバイスの放射パターンを大きくするように構成している。
【0010】
他の実施形態においては、以下の特徴がある。
- 前記固定用要素には、リンクがあり、このリンクはそれぞれ、金属性材料又は誘電体材料によって作られていることができる。
- 前記ケースミドル部に接続されるように意図された、前記ブレスレットの前記本体の両端のうちの一方の端における前記リンクは、誘電体材料によって作られている。
- 前記ブレスレットの前記本体を構成している金属性材料によって作られているいくつかのリンクは、前記アンテナデバイスの放射パターンを大きくする構成の実現に寄与する。
- 前記アンテナデバイスは、基板と、第1のアンテナ回路及び/又は第2のアンテナ回路と、電気的接合リンクと、及び接続部とを備え、前記第1のアンテナ回路は、前記基板上に設けられ、近位端と遠位端がありそれらの近位端と遠位端の間で平行に延在している第1及び第2のストランドを備え、前記第1及び第2のストランドは、それらの近位端に接続されておりそれらの遠位端にて絶縁されており、前記第2のアンテナ回路は、前記基板上に設けられ、近位端と遠位端がありそれらの近位端と遠位端の間で平行に延在している第3及び第4のストランドを備え、前記第3及び第4のストランドは、それらの遠位端にて接続されておりそれらの近位端にて分離されており、前記電気的接合リンクは、前記第1及び第3のストランドの近位端どうしをつなぎ、前記接続部は、前記電気的接続リンクに対して曲がっているように構成しており、前記電気的接続リンクに接続される導電性接続体を備え、前記導電性接続体に対する電磁遮蔽体を備える。
- 前記ストランドは、曲がっている。
- 前記基板は、前記2つのアンテナ回路が設けられる面がある第1のプレートによって構成している。
- 前記接続部は、前記第1のプレートに対して曲がっているように構成している。
- 前記基板の前記第1のプレートは、円弧状のプロファイル(横から見たときの輪郭の形)を有する。
- 前記第1及び第2のアンテナ回路は、前記電気的接合リンクの両側に配置される。
- 前記遠隔通信システムは、アンテナデバイスと、及び前記接続部の前記導電性接続体を介して前記電気的接続リンクに接続されるデュプレクサ/ノッチ回路とを備える。
- 前記アンテナデバイスは、異なる偏波の信号及び/又は異なる周波数帯の信号を同時に通信することができる。
- 前記デュプレクサ/ノッチ回路は、前記第1のアンテナ回路を介してBluetoothタイプのプロトコルにしたがって通信するように構成している第1の通信回路と、及び前記第2のアンテナ回路を介して衛星測位ネットワークにて通信するように構成している第2の通信回路とを備える。
- 前記計時器は、ネットワークに接続されるコネクテッド携行型時計である。
【0011】
添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むことによって、本発明の他の特徴や利点が明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る、ここではリンクである複数の固定用要素を備えるブレスレットを備える計時器を示している。このリンクは、金属性材料又は誘電体材料によってそれぞれが作られていることができる。
【
図2】本発明に係るアンテナデバイスを示している。
【
図3】本発明に係るアンテナデバイスを組み入れた計時器についての部分断面図である。
【
図4】本発明の通信システムにおいて用いられる各周波数帯におけるゲインを示しているグラフである。
【
図5】本発明のアンテナデバイスが可能にする周波数帯の分離の原理を示しているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この説明において、「上部」、「下部」、「上側」、「下側」、「上方」及び「下方」という用語は、表面上に配置された計時器のケースの水平方向の支持面が水平方向の中央面(P)に平行な状態を考慮に入れて解釈されるべきである。
【0014】
「外側」、「外部」、「内側」及び「内部」という用語は、中央軸(X)が
図3に示している前記中央面に垂直な向きである状態を考慮に入れて理解するべきである。
【0015】
図1において、計時器4は、ケースミドル部40によって形成されるケースを備え、このケース内に、金属製の表盤と、
図2に示しているマルチバンドアンテナデバイス1を備える遠隔通信システムとが配置されている。下記のように、この計時器4は、異なる導電性を有する、ここではリンクである、複数の固定用要素50によって形成される本体を備えるブレスレット49を備え、この本体における固定用要素50の構成は、前記アンテナデバイス1の放射パターンを大きくすることに貢献している。
【0016】
固定用要素50は、伝統的に携行型時計のブレスレットに期待されるように、携行型時計を着用者の手首に固定する機能を実現するために必須な要素である。このような固定用要素50は、ブレスレットの「必須の固定用要素」とも呼ばれる。すなわち、皮革製ストランドの組と、これらの皮革製ストランドの一方又は他方の本体に、又はこれらの皮革製ストランドの一方又は他方の本体の内面又は外面に取り付けられたアンテナ構造とによって形成されるブレスレットの場合、この例ではこれらのストランドのみが必須の固定用要素となる。実際に、これらのストランドがなくアンテナ構造のみを有するブレスレットは、ストランドを備えるブレスレットによって達成されるような、携行型時計の着用者の手首に固定するという機能を果たすことができない。
【0017】
図2を参照すると、計時器4のケースには、ケースミドル部40によって定められる収容空間があり、このケースミドル部40は、一般的には金属性材料によって作られ、前記中央軸のまわりに側壁を形成し、単一の部品として作られ、又は上側のベゼル41とともに2つの部品として作られる。この上側のベゼル41は、例えば、セラミックスやチタンによって作られる。計時器4の収容空間は、風防42によって上方から閉じられ、この風防42は、ケースミドル部40によって支持され、適切な方法でケースミドル部40に密封固定され、例えば、サファイア結晶によって作られている。また、計時器には、さらに、裏壁(図において見えない)があり、この裏壁は、中央面に対して風防42とは反対側に位置し、好ましくはシールによってケースミドル部から絶縁され、収容空間を下方から閉じ、例えば、金属性の裏壁である。
【0018】
本発明の特定の態様において、計時器4は、主に以下を備える通信システムを備える。
- 通信アンテナデバイス1
- 当業者にはこれ自体が知られているデュプレクサ/ノッチタイプのフィルター回路20
【0019】
アンテナデバイス1は、基板10を備え、この基板10は、好ましくは、フレキシブルプリント回路(一般的に「フレックス」と呼ばれる)の形態に作られる。
【0020】
図2を参照すると、アンテナデバイス1には、2つの異なるアンテナ回路を備えるという特徴があり、これによって、計時器を2つの異なるネットワーク、特に、Bluetoothタイプの通信ネットワークと、GPS(Global Positioning System)、Glonass、GalileoのようなGNSS(Geolocation and Navigation Satellite System)衛星測位ネットワーク、に接続することができる。
【0021】
この構成において、このアンテナデバイス1は、異なる偏波の信号、及び/又は異なる周波数帯の信号、を同時に通信することができる。
【0022】
これらの2つのアンテナ回路は、プリント回路の分野において用いられる標準的な方法を用いて、同じ基板上に作られる。
【0023】
本発明の特定の態様には、以下の特徴がある。
【0024】
- 第1のアンテナ回路11には、第1のストランド110と第2のストランド111があり、これらの第1のストランド110と第2のストランド111にはそれぞれ、近位端と遠位端があり、それらの近位端と遠位端の間にて平行に延在し、第1及び第2のストランドは、それらの近位端112においては接続しており、それらの遠位端においては絶縁されている。
【0025】
- 第2のアンテナ回路12には、第3のストランド120と第4のストランド121があり、これらの第3のストランド120と第4のストランド121にはそれぞれ、近位端と遠位端があり、それらの近位端と遠位端の間で平行に延在し、第3のストランドと第4のストランドは、それらの遠位端122においては接続され、それらの近位端においては絶縁されている。
【0026】
電気的接続部13によって、第1、第2及び第3のストランド110、111、120の近位端どうしを接続することができる。この電気的接続部13には、前記フィルタリング回路2が接続される単一の接続点130がある。このようにして、単一の接続点130によって、第1及び第2のアンテナ回路11、12を選択的に用いて通信することができるようになる。
【0027】
このような第1のアンテナ回路11において2つの平行なストランドを用いる設計思想によって、例えば、Bluetoothタイプの通信ネットワーク(2.4GHz)での通信に必要な周波数帯域(100MHz)を広げることができる。
【0028】
第2のアンテナ回路12(例えば、衛星測位回路専用)においては、電流ノード上にアンテナが設けられ、そのアンテナの長さを曲げることで、インピーダンスマッチングを改善させることができる。
【0029】
並列に接続された2つのアンテナ回路11、12のための接続点が単一の接続点130であることによって、アンテナデバイスを計時器4の収容空間内に機械的に組み入れることが容易になり、アンテナ部と電子部の間の設計上の独立性も確保することができる。実際に、この構造において、このようなアンテナ回路の支持プレートの機械的組み入れを調整することで十分であり、アンテナ回路のパターンは、その後に、前記機械的組み入れを妨げない標準的なエッチング方法によって作られる。2つのストランドが直列に接続されたような第2のアンテナ回路12によって、衛星測位ネットワーク(例、GPS)での通信に用いられる、より狭い周波数帯、例えば、1.5GHz、にて通信することが可能になる。なお、このアンテナデバイス1は、異なる偏波及び/又は異なる周波数帯の信号を同時に通信することができる。
【0030】
この構成においては、各アンテナ回路11、12は、円弧状の経路に実質的に沿って延在しており、この経路に沿って基板10上に平行に配置される2つのストランド110、111、120、121を含む。
【0031】
例えば、各アンテナ回路11、12は、このアンテナ回路11、12によって中央の接続リンクの両側に形成された円弧を定める角区画の角度を中心として、70~80°の範囲内の角度範囲にわたって作ることができる。それらの軌跡は、16~22mmの範囲内の半径によって作られた円弧を描くことができる。2つのストランド110、111、120、121は、1mm~2mmの範囲内の距離の分、互いに離れていることができる。
【0032】
基板10は、円弧状、好ましくは半円状、であるように作られるプロファイルを有する第1のプレートの形状をしている。この構成は、特に、衛星アンテナの円偏波を得ることに大きく貢献する。この構成は、さらに、居間のような閉ざされた場所内にて波が伝搬するため、Bluetoothプロトコルの実装に役立つ。2つのアンテナ回路は、上面である、プレートの同じ面に印刷されており、各アンテナ回路は、2つのアンテナ回路11、12をつなぐ電気接続部13を担持している分離部の両側に延在している。この分離部は、好ましくは中央部にあり、基板を分離して、実質的に等しい、又は等しい、又は厳密に等しい、寸法構成の2つの円弧を形成する。
【0033】
アンテナデバイスには、さらに、プレートから突き出る形態である接続部100がある。
【0034】
基板10を計時器4のケースミドル部40に組み入れるときに、基板10の接続部100は、軸(X)に垂直であって平面(P)に平行である軸を中心に、第1のプレートに対して曲げられるように意図されている。
【0035】
この接続部100には、一又は複数の導電性接続体があり、これによって、アンテナ回路11、12を(電気的接続部13において)、デュプレクサ/ノッチタイプのフィルター回路20を担持する電子制御回路2に接続することが可能になる。接続部100には、これらの導電性接続体に対する電磁遮蔽体があり、これによって、外部への放射を防ぎ、接続部100がアンテナ回路11、12のインピーダンスに影響を与えることを防止する。例えば、下側遮蔽層、絶縁層、導電性接続体を含む層、そして、新たな絶縁層と新たな上側遮蔽層であるような、いくつかの層を重ね合わせることによって遮蔽を実現することができる。
【0036】
電子制御回路2を搭載している制御カード(例えば、一又は複数のRF送受信回路を搭載しており、これ自体が知られている設計である制御回路2)を計時器4のケースの底部内に配置することができる。
【0037】
アンテナデバイス1は、接続部100によって、導電性接続体を介して制御カードに接続される。
【0038】
図3を参照すると、計時器4は、その収容空間内に、表盤43を組み入れることができ、これは、好ましくは金属製であり、裏壁の上方に位置する。この表盤には、計時器の風防を通して見える美的表示を設けることができる。この表盤は、好ましくは、ディスクの形状をしている。
【0039】
計時器に、表盤上にウェッジ44を設けることができる。このウェッジ44は、水平方向の支持面を定め、アンテナ回路を搭載した基板10を支持するように意図されている。このウェッジ44は、円形又は半円形の形状をしており、表盤の上方にて所定の一定の厚みを形成する。
【0040】
アンテナデバイス1の基板10は、ウェッジ44上に配置され、その基板10の第1のプレートがこのウェッジ44によって形成される支持面に載るように構成している。このウェッジ44の接続部100は、中央面(P)に交差する平面に沿って、自身を鉛直方向にするように曲がっている。
【0041】
基板と、ケースミドル部上に取り付けられたベゼルとの間に、絶縁性の発泡体などで作られた第1のウェッジ用要素45を配置することができる。
【0042】
第2のウェッジ用要素46は、例えば、絶縁性プラスチックによって作られ、例えば、半環状であり、この第2のウェッジ用要素46には、基板10の上面に支持される高部と、表盤まで下方に延在する鉛直部と、表盤に載る低部がある。
【0043】
前記第2のウェッジ用要素46から空気を介して離間している風防42の表面の大部分にわたって、タッチスクリーン47を風防42の下方に固定することができ、このタッチスクリーン47は、例えば、静電容量タイプのものである。
【0044】
ブレスレット49を固定するために、計時器には、そのケースミドル部の両側に2つのホーン48があり、この2つのホーン48それぞれは、ブレスレット49の別々のストランドを固定するように構成している。
【0045】
アンテナデバイスは、周波数、偏波、ゲイン及びインピーダンスについての特徴が異なる少なくとも2つの通信回路を動作させるようにマルチバンドに対応している。
【0046】
インピーダンスに関連して、電子制御回路2は、無線周波数のデュプレクサ/ノッチフィルター20を備えることができる。
【0047】
ゲインと偏波に関連して、これらのパラメーターを各アンテナ回路11、12のパターンが管理することを可能にする。
【0048】
デュプレクサ/ノッチフィルターを用いることによって、2つの通信回路(例えば、BluetoothとGPS)を分離する。
【0049】
このアンテナデバイスは、異なる偏波の信号を同時に通信することができるように構成している。例えば、Bluetoothタイプの通信回路には線形的な偏波が必要であり、GPSタイプの通信回路には円偏波が必要である。GPSシステムにおいては、特に、左偏波と呼ばれる偏波が発生する。
【0050】
また、本発明の手法によって、計時器4が金属性材料によって作られたケースミドル部40を備えることを活用することができる。
【0051】
本発明の特定の態様において、アンテナデバイス1は、ユーザーから見えないようにされつつ、計時器のケース内におけるできるだけ高い位置に、すなわち、風防にできるだけ近い位置に、配置されるように意図されている。
【0052】
また、計時器のケース内においてアンテナデバイス1を配置することで、計時器の金属製のケースミドル部40の恩恵を享受することができる。金属製のケースミドル部40を通してアンテナデバイス1が電磁波を送信することができるためである。ベゼル41は、セラミックスタイプの材料によって作ることができ、特に横方向にて、放射を妨げないようにするために、高誘電率の材料を加えることで、アンテナの電気長を長くして、物理的な大きさに比べて性能を向上させることができる。
【0053】
アンテナデバイス1は、同じく金属製である表盤43の上方に配置され、このアンテナデバイス1の上方には、主に空気で満たされる空間が設けられる(したがって、アンテナの効率が向上する)。この金属製の表盤43は、スクリーンとしても機能し、これによって、この表盤よりも下方の構成における何らかの変化があったときに、アンテナデバイス1にとって部分的に透過的にする。
【0054】
前述したように、この計時器においては、ブレスレット49が、前記アンテナデバイス1の放射パターンを拡大させるように構成することに貢献する。この構成において、ケースミドル部40を通して放射が行われ、このブレスレット49は、放射に関して注目すべき役割を果たす。このブレスレット49は、実際に、着用者の手首によって減衰される方向への放射パターンを大きくするために、金属性材料によって作られた複数のリンク50を部分的に用いて作ることができる。また、ブレスレット49に非金属性のリンク51を組み入れることで、金属性のブレスレット49を介するケースミドル部の上部と下部の間(ホーンからホーンまで)にて電気的なループが形成されることを避けることができる。このリンクの配置は、期待される仕様に達するように最適化される。
【0055】
図4は、本発明の通信システムを用いる、ISM(Industrial、 Scientific and Medical:Bluetoothのようなネットワークにおいて用いられる周波数帯に相当)帯とGNSS(Geolocation and Navigation by a Satellite System)帯である周波数帯それぞれにおいて見られるゲインの性能を示している。
【0056】
図5は、本発明に係るアンテナデバイスの使用によって可能になる周波数帯の分離を示している2つの曲線を示している。ISM帯がGNSS周波数帯から良好に分離していることがわかる。
【0057】
また、このように、本発明は、周辺材料(金属製のケースミドル部、サファイア製の風防)の性質を利用したミニチュアマルチバンドタイプのユニークな放射構造、特に、これらの固定用要素を用いるブレスレット、を作ることに貢献する。このインテグレーションは、印刷技術(例、PCBフレックス)のおかげで、物理的なインテグレーション(構成)とアンテナの形状を分離することによって可能になる。このマルチバンド構造は、ノッチフィルタータイプの回路を通して電子部分に接続される。
【0058】
なお、本発明は、説明されている実施形態に限定されるものではなく、当業者であれば、添付の請求の範囲にて定められる本発明の範囲を逸脱することなく、様々な変更や単純な変形形態を考えることができることは当然である。
【符号の説明】
【0059】
1 アンテナデバイス
4 計時器
10 基板
11 第1のアンテナ回路
12 第2のアンテナ回路
13 電気的接合リンク
20 デュプレクサ/ノッチ回路
40 ケースミドル部
41 ベゼル
42 風防
43 表盤
44 ウェッジ
48 ホーン
49 ブレスレット
50 リンク
100 接続部
110、111、120、121 ストランド