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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
G03G15/20 555
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021144923
(22)【出願日】2021-09-06
(62)【分割の表示】P 2017097533の分割
【原出願日】2017-05-16
(65)【公開番号】P2021184114
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2016122177
(32)【優先日】2016-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 昌雄
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-097147(JP,A)
【文献】特開2016-006499(JP,A)
【文献】特開平05-029066(JP,A)
【文献】特開平06-250539(JP,A)
【文献】特開2011-221106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の上において前記基材の長手方向に離間して3つ以上配置された電極と、
前記電極のうち前記長手方向に互いに対向する電極対を互いに電気的に接続し、第1の前記電極対に挟まれる領域と第2の前記電極対に挟まれる領域との間で前記基材の短手方向における幅が異なる発熱抵抗体と、
前記基材の上において少なくとも前記発熱抵抗体の表面を覆うように積層され、被加熱体と摺動する際に前記表面を保護する表面保護層と、
前記電極対を互いに異なる極性となるように接続する配線と、
前記配線に接続されて電圧を印加する前記電極を選択するスイッチと
前記スイッチの動作を制御する定着制御部と、
前記配線に接続され、前記電極対のうちの少なくとも1つの電極対に印加される電圧を、制御信号に基づいて変更する電圧調整部と、
前記表面保護層に対して摺動可能に接触し、前記表面保護層を介して伝熱する前記発熱抵抗体の発熱によって加熱される定着ベルトと、
搬送直交方向における複数の位置で前記定着ベルトの温度を検知する温度検知部材と、を有し、
前記定着制御部は、シートサイズに応じて前記長手方向の発熱領域を選択し、前記発熱抵抗体のうち前記発熱領域に対応する発熱抵抗体に通電されるように前記スイッチの動作を制御し、前記発熱領域における温度を検出する前記温度検知部材の検知出力が閾値以下になった場合に、通電された前記発熱抵抗体が接続された前記電極対への印加電圧を前記電圧調整部によって増加させる、
画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ヒータおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置は定着装置を持つ。定着装置はトナーをシートに熱定着する。定着装置は、定着ローラまたは定着ベルトと、熱源とを持つ。
例えば、通紙されるシートのサイズがより大きなサイズに切り換えられると、定着ローラまたは定着ベルト上における温度分布はすぐには解消されない。シートサイズの切り換え後には、温度分布のむらが大きい状態で定着が行われる。
小サイズのシートを連続通紙する場合には、シートが接しない部位において定着ローラまたは定着ベルトが高温になる状態が続く。
このような温度分布のむらは、定着品質を悪化させる。特に、カラー印刷の場合には、定着画像の発色、光沢のむらが発生する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-062024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、省エネルギーが可能であって、定着領域の温度分布のむらを抑制することができるヒータおよび画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の画像形成装置は、基材、発熱抵抗体、表面保護層、配線、スイッチ、定着制御部、電圧調整部、定着ベルトおよび温度検知部材を持つ。電極は、基材の上において基材の長手方向に離間して3つ以上配置される。発熱抵抗体は、電極のうち長手方向に互いに対向する電極対を互いに電気的に接続する。発熱抵抗体は、第1の前記電極対に挟まれる領域と第2の前記電極対に挟まれる領域との間で前記基材の短手方向における幅が異なる。表面保護層は、基材の上において少なくとも発熱抵抗体の表面を覆うように積層され、被加熱体と摺動する際に表面を保護する。配線は、電極対を互いに異なる極性となるように接続する。スイッチは、配線に接続されて電圧を印加する電極を選択する。定着制御部は、スイッチの動作を制御する。電圧調整部は、配線に接続され、電極対のうちの少なくとも1つの電極対に印加される電圧を、制御信号に基づいて変更する。定着ベルトは、表面保護層に対して摺動可能に接触し、表面保護層を介して伝熱する発熱抵抗体の発熱によって加熱される。温度検知部材は、搬送直交方向における複数の位置で定着ベルトの温度を検知する。定着制御部は、シートサイズに応じて長手方向の発熱領域を選択する。定着制御部は、発熱抵抗体のうち発熱領域に対応する発熱抵抗体に通電されるようにスイッチの動作を制御する。定着制御部は、発熱領域における温度を検出する温度検知部材の検知出力が閾値以下になった場合に、通電された発熱抵抗体が接続された電極対への印加電圧を電圧調整部によって増加させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1の実施形態の画像形成装置の構成例を示す断面の模式図。
図2】第1の実施形態における画像形成部の一部を拡大して示す断面の模式図。
図3】第1の実施形態のヒータを含む定着装置の主要部の構成例を示す断面の模式図。
図4】第1の実施形態のヒータの構成例を示す長手方向の模式的な断面図。
図5】第1の実施形態のヒータの構成例を示す平面視の模式図。
図6】第1の実施形態の画像形成装置の制御系の構成例を示すブロック図。
図7】第1の実施形態の画像形成装置の印刷時の動作例を説明するフローチャート。
図8】第1の実施形態の画像形成装置の定着温度制御の動作例を説明するフローチャート。
図9】第1の実施形態のヒータの制御動作例を示す平面視の模式図。
図10】比較例のヒータの制御動作例を示す平面視の模式図。
図11】第2の実施形態の画像形成装置の制御系の構成例を示すブロック図。
図12】第2の実施形態のヒータの構成例を示す長手方向の模式的な断面図。
図13】第2の実施形態のヒータの構成例を示す平面視の模式図。
図14】第2の実施形態の画像形成装置の定着温度制御の動作例を説明するフローチャート。
図15】第3の実施形態のヒータの主要部の構成例を示す断面の模式図。
図16】第4の実施形態のヒータの構成例を示す平面視の模式図。
図17】第5の実施形態のヒータの構成例を示す平面視の模式図。
図18】第6の実施形態のヒータの構成例を示す断面の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のヒータおよび画像形成装置を、図面を参照して説明する。各図において、同一構成については同一の符号を付す。
【0008】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の画像形成装置の構成例を示す断面の模式図である。図1では、見易さのため、各部材の寸法および形状は誇張あるいは簡略化されている(以下の図面も同様)。
【0009】
図1に示す第1の実施形態の画像形成装置10は、例えば複合機であるMFP(Multi-Function Peripherals)、プリンタ、複写機等である。以下の説明ではMFPを例に説明する。
画像形成装置10の本体11の上部には透明ガラスを含む原稿台12が設けられている。原稿台12上には自動原稿搬送部(ADF)13が設けられている。本体11の上部には操作パネル14が設けられている。操作パネル14は、各種のキーを持つオペレーションパネル14aと、タッチパネル式の表示部14bとを持つ。
【0010】
ADF13の下部には、読取装置であるスキャナ部15が設けられている。スキャナ部15は、ADF13によって送られる原稿または原稿台12上に置かれた原稿を読み取る。スキャナ部15は原稿の画像データを生成する。例えば、スキャナ部15は、イメージセンサ16を持つ。例えば、イメージセンサ16は密着型イメージセンサでもよい。イメージセンサ16は、主走査方向(図1では奥行方向)に配置されている。
【0011】
イメージセンサ16は、原稿台12に載置された原稿の画像を読み取る場合、原稿台12に沿って移動する。イメージセンサ16は、原稿画像を1ライン分ずつ1ページ分の原稿を読み取る。
イメージセンサ16は、ADF13によって送られる原稿の画像を読み取る場合、図1に図示された固定位置で送られる原稿を読み取る。
【0012】
画像形成装置10の本体11は、高さ方向の中央部にプリンタ部17を持つ。本体11は、下部に各種サイズのシートP(用紙)を収容する複数の給紙カセット18を持つ。
給紙カセット18は、各種サイズのシートPを中央基準で収容する。各種サイズのシートPは、搬送方向に直交する方向の幅の中心軸線が定位置に位置合わせされる。
以下では、画像形成装置10においてシートPの搬送面に沿って、シートPの搬送方向と直交する方向を「搬送直交方向」と言う。
【0013】
プリンタ部17は、感光体ドラムと露光器19とを持つ。
プリンタ部17は、スキャナ部15で読み取った画像データ、またはパーソナルコンピュータなどで作成された画像データに基づいてシートPに画像を形成する。プリンタ部17は、例えばタンデム方式によるカラープリンタである。
プリンタ部17は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像形成部20Y、20M、20C、20Kを持つ。画像形成部20Y、20M、20C、20Kは、中間転写ベルト21の下側に配置されている。画像形成部20Y、20M、20C、20Kは、中間転写ベルト21の下側の移動方向(図示左側から右側に向かう方向)の上流から下流側に沿って並列に配置されている。
露光器19は、画像形成部20Y、20M、20C、20Kに対応して、露光器19Y、19M、19C、19Kを持つ。
露光器19は、レーザ走査を用いた露光器でもよいし、LEDなどの固体走査素子を用いた露光器でもよい。レーザ走査を用いた露光器の場合、露光器19Y、19M、19C、19Kごとに異なるレーザ光源を持っていれば、偏向器は複数の露光器間で共通使用されてもよい。
【0014】
図2は、画像形成部20Y、20M、20C、20Kのうち、画像形成部20Kの断面を拡大して示す模式図である。
各画像形成部20Y、20M、20C、20Kの構成は、トナーが異なるのみである。以下では、各画像形成部20Y、20M、20C、20Kに共通の構成を、画像形成部20Kの例で説明する。
【0015】
図2に示すように、画像形成部20Kは、像担持体である感光体ドラム22Kを持つ。感光体ドラム22Kの周囲には、回転方向tに沿って帯電器23K、現像器24K、一次転写ローラ25K、クリーナ26K、ブレード27K等が配置されている。
【0016】
画像形成部20Kの帯電器23Kは、感光体ドラム22Kの表面を一様に帯電する。
露光器19Kは、画像データに基づいて変調された光を感光体ドラム22Kの表面に照射する。露光器19Kは、感光体ドラム22K上に静電潜像を形成する。
現像器24Kは、現像バイアスが印加される現像ローラ24aによりブラックのトナーを感光体ドラム22Kに供給する。現像器24Kは、感光体ドラム22K上の静電潜像を現像する。
クリーナ26Kは、感光体ドラム22Kに当接するブレード27Kを持つ。ブレード27Kは、感光体ドラム22Kの表面の残留トナーを除去する。
【0017】
図1に示すように、画像形成部20Y、20M、20C、20Kの上部には、トナーカートリッジ28が配置されている。
トナーカートリッジ28は、現像器24Y、24M、24C、24Kにそれぞれトナーを供給する。トナーカートリッジ28は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)のトナーをそれぞれ収容するトナーカートリッジ28Y、28M、28C、28Kを含む。
【0018】
中間転写ベルト21は、循環的に移動する。中間転写ベルト21は、駆動ローラ31および複数の従動ローラ32に張架される(図1参照)。中間転写ベルト21は、感光体ドラム22Y、22M、22C、22Kに図示上側から接触している。
例えば、図2に示すように、中間転写ベルト21において、感光体ドラム22Kに対向する位置には、中間転写ベルト21の内側に一次転写ローラ25Kが配置されている。
一次転写ローラ25Kは、一次転写電圧が印加されると、感光体ドラム22K上のトナー像を中間転写ベルト21に一次転写する。
【0019】
図1に示すように、駆動ローラ31には、中間転写ベルト21を挟んで二次転写ローラ33が対向している。
二次転写ローラ33には、駆動ローラ31と二次転写ローラ33との間の二次転写位置をシートPが通過する際に、二次転写電圧が印加される。二次転写電圧が印加されると、二次転写ローラ33は、中間転写ベルト21上のトナー像をシートPに二次転写する。
図示左側の従動ローラ32の付近には、ベルトクリーナ34が配置される。ベルトクリーナ34は、中間転写ベルト21上の残留転写トナーを中間転写ベルト21から除去する。
【0020】
図1に示すように、給紙カセット18から二次転写ローラ33に至る間には、給紙ローラ35が設けられている。給紙ローラ35は、給紙カセット18内から取り出したシートPを搬送する。
シートPの搬送方向における二次転写ローラ33の下流(図示上側)には、定着装置36が配置されている。
シートPの搬送方向における定着装置36の下流(図示左上側)には、搬送ローラ37が配置されている。搬送ローラ37はシートPを排紙部38に排出する。
シートPの搬送方向における定着装置36の下流(図示右側)には、反転搬送路39が配置されている。反転搬送路39は、シートPを反転させて二次転写ローラ33の方に導く。反転搬送路39は、両面印刷を行う際に使用される。
【0021】
図3は、定着装置36の主要部の構成例を示す断面の模式図である。
図3に示すように、定着装置36は、定着ベルト363、プレスローラ366、ベルト搬送ローラ364、テンションローラ365、および加熱部材361(ヒータ)、を持つ。
図3には図示されていないが、後述するように、定着装置36は温度検知部材362(図6参照)をさらに持つ。
【0022】
定着ベルト363は無端ベルトである。定着ベルト363は表面に弾性層を持つ。定着ベルト363はプレスローラ366に対向する。
プレスローラ366は表面に弾性層を持つ。プレスローラ366は図示の回転方向tに沿って回転可能に支持される。
定着ベルト363とプレスローラ366とは、画像形成装置10の通紙可能な最大のシート幅(シートPの搬送直交方向の幅)よりも大きな幅を持つ。
定着ベルト363は、プレスローラ366の表面に押圧される。定着ベルト363とプレスローラ366との当接部は定着ニップを形成する。定着ニップは通紙可能な最大のシート幅よりもわずかに長い。シートPの搬送方向Aにおける定着ニップの幅は所定幅に設定される。所定幅は、シートPに転写されたトナー像を熱定着する熱量が供給可能な幅である。
【0023】
定着ベルト363の内部には、テンションローラ365と、2本のベルト搬送ローラ364とが配置される。定着ベルト363は、テンションローラ365と、2本のベルト搬送ローラ364とによって内側から張られる。
テンションローラ365は、定着ベルト363とプレスローラ366との当接部を間に挟む位置において、定着ベルト363の内側を押圧する。テンションローラ365は、定着ベルト363に張力を与える。
ベルト搬送ローラ364は、図示略の駆動モータによって図示反時計回り(矢印s参照)に回転駆動される。ベルト搬送ローラ364が回転すると、定着ベルト363は、矢印Bで表される図示反時計回りに回転駆動される。
【0024】
加熱部材361は、定着ニップにおいて定着ベルト363を通してシートPを加熱する。
加熱部材361の主要部は、板状に形成される。加熱部材361は、板厚方向の一方の表面に発熱部を持つ。加熱部材361の発熱部は、定着ニップの裏側の定着ベルト363の内側に接触する。加熱部材361は、その長手方向が定着ニップの長手方向に沿うように配置されている。
加熱部材361は図示略の押圧部材によってプレスローラ366の方に押圧されている。加熱部材361が定着ベルト363をプレスローラ366に押圧することで、搬送方向における定着ニップの幅が所定幅に保たれる。
加熱部材361の発熱部で発生する熱は、定着ベルト363の厚さ方向に熱伝導する。定着ベルト363に熱伝導する熱は、定着ニップの部位でプレスローラ366にも熱伝導する。シートPが定着ニップを通過する際、定着ニップにおいてシートPが加熱される。
加熱部材361は、定着ベルト363を介する熱伝導によって定着ニップを加熱する。このため、定着装置36において、定着ニップの温度の応答性はハロゲンランプ等の輻射による加熱方式の場合よりも優れている。
【0025】
加熱部材361の構成例について詳しく説明する。
図4は、第1の実施形態の加熱部材361の構成例を示す長手方向の模式的な断面図である。図5は、第1の実施形態の加熱部材361の構成例を示す平面視の模式図である。ただし、図5では、見易さのため、後述する表面保護層361dの図示は省略されている。
【0026】
図4に示すように、加熱部材361は、基材361a、電極361b、発熱抵抗体361c、および表面保護層361dを持つ。図5に示すように、加熱部材361は、さらに、配線361f、361gおよびスイッチ361eを持つ。
図4に示すように、例えば、基材361aはセラミック基板を持つ。セラミック基板の板厚方向の一方の表面(図示上側の表面)には図示略のグレーズ層が積層されている。
セラミック基板の板厚方向の他方の表面には、発熱部の余分な熱を逃がすヒートシンク(図示略)が接着されてもよい。ヒートシンクはアルミニウム合金製でもよい。セラミック基板にヒートシンクが接着される場合、ヒートシンクはセラミック基板の反りを防ぐ作用もある。
【0027】
電極361bは、後述する発熱抵抗体361cに電圧を印加する。用紙搬送が中央基準の場合、電極361bは、基材361aのグレーズ層(不図示)の上に5つ以上設けられる。
図4図5に示す構成例では、電極361bは、電極E0(中央電極)、電極E1L、E2L、E3L、E1R、E2R、E3Rの7つの電極からなる。
図5に示すように、電極E0は、基材361aの長手方向に直交する短手方向に沿って延びる線状に形成される。電極E0の線幅はWeである。線幅Weは細い方が好ましい。例えば、線幅Weは、0.5mm以上3.0mm以下とされてもよい。
電極E0は、基材361aの長手方向の中央部に配置される。定着装置36において、基材361aの長手方向は、搬送直交方向に一致される。基材361aの長手方向における電極E0の位置は、定着装置36における搬送直交方向において、搬送路の中心に一致される。
【0028】
各電極361bは、良好な導電性を持つ金属で構成される。例えば、各電極361bは、アルミニウム、銅などの金属で構成されてもよい。
【0029】
図4に示すように、電極E0の図示左側には、搬送直交方向において中心から図示左端部に向かって、ピッチP0で、電極E1L、E2L、E3Lがこの順に配列されている。
電極E0の図示右側には、搬送直交方向において中心から図示右端部に向かって、ピッチP0で、電極E1R、E2R、E3Rがこの順に配列されている。
このように、本実施形態における7つの電極361bは、電極E0の線幅の中心線を対称軸として、線対称に配置されている。
図5に示すように、電極E1L、E2L、E3L、E1R、E2R、E3Rの平面視の形状は、電極E0と同一である。電極E1L、E2L、E3L、E1R、E2R、E3Rは、いずれも、電極E0と平行に配置される。電極E1L、E2L、E3L、E1R、E2R、E3Rの基材361aの短手方向における位置は、電極E0と異なっていてもよい。ただし、電極E0、E1L、E2L、E3L、E1R、E2R、E3Rは、基材361aの長手方向に延び、短手方向の幅Whの矩形状領域を、その短手方向に横断できる位置および長さに形成されている。
【0030】
配線361fは、電極E2L、E0、E2Rの各長手方向(基材361aの短手方向)の端部を後述する定着電源150aに電気的に接続する。
配線361gは、電極E3L、E1L、E1R、E3Rの長手方向(基材361aの短手方向)の端部を後述する定着電源150aに電気的に接続する。
定着電源150aは交流電源である。定着電源150aでは、端子T1(第1の端子)と端子T2(第2の端子)との間に振幅V、周波数fで振動する交流電圧が印加される。端子T1と端子T2とは、互いに反対の極性を持つ。
定着電源150aは、画像形成装置10においてどの位置に配置されていてもよい。本実施形態では、定着電源150aは、一例として、後述する定着制御回路150の一部として設けられている。
電極E0、E2L、E2Rは、配線361fによって定着電源150aの端子T1に配線されている。電極E1L、E1R、E3L、E3Rは、配線361gによって定着電源150aの端子T2に配線されている。
【0031】
スイッチ361eは、配線361f、361gにおいて、定着電源150aと電極361bとの間に設けられている。スイッチ361eは、定着電源150aによる電圧を印加する電極361bを選択する。
スイッチ361eは、スイッチS2L、S2R、S1、S3L、S3Rを持つ。
【0032】
電極E0は、配線361fによって常に端子T1と電気的に接続されている。
電極E2L、E2Rは、それぞれスイッチS2L、S2Rを介して端子T1と接続されている。スイッチS2L(S2R)は、電極E2L(E2R)と端子T1との電気接続をオン(ON)またはオフ(OFF)することができる。
電極E1L、E1Rは、スイッチS1を介して端子T2と接続されている。スイッチS1は、電極E1L、E1Rと端子T2との電気接続をオンまたはオフすることができる。
電極E3L(E3R)は、それぞれスイッチS3L(S3R)を介して端子T2と接続されている。スイッチS3L(S3R)は、電極E3L(E3R)と端子T2との電気接続をオンまたはオフすることができる。
各スイッチ361eのスイッチング動作は、後述する定着制御回路150によって個別に制御される。
各スイッチ361eの具体例としては、スイッチング素子、FET、トライアック、スイッチングICなどが挙げられる。
【0033】
各スイッチ361eは、上述の電気接続が可能であれば、配線361f、361gのいずれの位置に設けられていてもよい。
例えば、各スイッチ361eは、基材361aなどの定着装置36に配置される部材に一体化されていてもよい。例えば、各スイッチ361eは、定着装置36の外部に延出された配線361f、361g上に設けられてもよい。例えば、各スイッチ361eは、定着電源150aが配置された画像形成装置10の内部に配置されてもよい。
【0034】
このような配線によれば、各スイッチ361eがオンになると、電極E3L、E2L、E1L、E0、E1R、E2R、E3Rは、それぞれ、端子T2、T1、T2、T1、T2、T1、T2に電気的に接続される。基材361aの長手方向に互いに対向する電極対(例えば、電極E3Lおよび電極E2L、電極E2Lおよび電極E1L等)は、互いに反対の極性を持つ端子に接続される。
【0035】
図4に示すように、発熱抵抗体361cは基材361aの表面に積層されている。発熱抵抗体361cは各電極361bを覆っている。本実施形態では、発熱抵抗体361cの層厚は一定である。
図5に示すように、発熱抵抗体361cの平面視形状は基材361aの長手方向に延ばされた帯状である。発熱抵抗体361cの平面視の短手方向の幅はWhである。
平面視では、各電極361bは、発熱抵抗体361cを短手方向に横断している。各電極361bは、長さWhの範囲で発熱抵抗体361cによって覆われている。
発熱抵抗体361cは、各電極361bのうち、基材361aの長手方向に互いに対向する電極対を互いに電気的に接続する。
図4に示すように、例えば、電極E0と電極E1Lとからなる電極対は、長さ約P0で幅Whの発熱抵抗体361cによって、互いに電気的に接続されている。基材361aの長手方向に互いに対向する他の電極対も同様である。
【0036】
発熱抵抗体361cは、交流電圧を印加することによってジュール発熱する材料で形成される。発熱抵抗体361cの材料としては、サーマルヘッドに用いられる周知の材料が用いられてもよい。例えば、発熱抵抗体361cは、TaSiO2などで形成されてもよい。
【0037】
表面保護層361dは、定着ベルト363の内周面と摺動する加熱部材361の表面を保護する。図5に示すように、表面保護層361dは、少なくとも発熱抵抗体361cの表面を覆うように基材361a上に積層される。
例えば、表面保護層361dは、一例として、Si3N4などで形成されてもよい。表面保護層361dの材質は、Si3N4には限定されない。
発熱抵抗体361cおよび表面保護層361dの積層体は、加熱部材361の発熱部を構成する。
【0038】
このような構成により、定着電源150aによって加熱部材361の長手方向に対向する電極対に電圧が印加されると、電圧が印加された電極対の間に交流電流が流れる。電圧が印加された電極対間の発熱抵抗体361cはジュール発熱する。
図4に示すように、加熱部材361は、各電極対に挟まれる発熱抵抗体361cによって形成される6つの発熱領域R23L、R12L、R01L、R01R、R12R、R23Rを持つ。ここで、例えば、発熱領域R23Lは、電極E2L、E3Lによる電極対に挟まれる発熱抵抗体361cの領域である。
各発熱領域の大きさは、各電極対の配列間隔で決まる。本実施形態では、各電極361bは、一定のピッチP0で配列されるため、各発熱領域の大きさは互いに等しい。
ここで、ピッチP0は、画像形成装置10に通紙するシートPのシート幅に対応して決められている。
【0039】
例えば、画像形成装置10の通紙可能なサイズが、ハガキサイズ(100mm×148mm)、CDジャケットサイズ(121mm×121mm)、A5Rサイズ(148mm×210mm)、B5Rサイズ(182mm×257mm)、A4Rサイズ(210mm×297mm)、B5サイズ(257mm×182mm)、A4サイズ(297mm×210mm)、A3Rサイズ(297mm×420mm)であるとする。この場合、各シートPのシート幅は、それぞれ、100mm、121mm、148mm、182mm、210mm、257mm、297mm、297mmである。
例えば、各電極361bの配列ピッチP0を54.5mmとする。このとき、電極E1L、E1Rの配置間隔L1は109mm、電極E2L、E2Rの配置間隔L2は218mm、電極E3L、E3Rの配置間隔L3は327mmである。
この場合、発熱領域R01L、R01Rを発熱させれば、ハガキサイズのシートPの定着が可能である。発熱領域R12L、R01L、R01R、R12Rを発熱させれば、CDジャケットサイズ、A5Rサイズ、B5Rサイズ、およびA4RサイズのシートPの定着が可能である。発熱領域R23L、R12L、R01L、R01R、R12R、R23Rを発熱させれば、B5サイズ、A4サイズ、およびA3RサイズのシートPの定着が可能である。
定着に必要な発熱領域の幅は、シート幅に対して、シートPの搬送精度、スキュー、および非加熱部分への熱の逃げを考慮した余裕を持つように設定する。ただし、シートP上の画像形成幅がシート幅よりも狭い場合には、定着に必要な発熱領域の幅は、画像形成幅に対して同様の余裕を持つように設定されてもよい。
【0040】
次に、画像形成装置10の制御系の構成について説明する。
図6は、第1の実施形態の画像形成装置10の制御系50の構成例を示すブロック図である。
ただし、図6では、見易さのため、添字Y、M、C、Kで区別される部材をこれらの添字を削除した符号でまとめて表している。例えば、感光体ドラム22は、感光体ドラム22Y、22M、22C、22Kを表す。帯電器23、現像器24、一次転写ローラ25、露光器19も同様である。
【0041】
図6に示すように、制御系50は、CPU100、リードオンリーメモリ(ROM)120、ランダムアクセスメモリ(RAM)121、インターフェース(I/F)122、入出力制御回路123、給紙・搬送制御回路130、画像形成制御回路140、および定着制御回路150(定着制御部)を持つ。
【0042】
CPU100は、画像形成装置10の全体を制御する。CPU100は、ROM120あるいはRAM121に記憶されるプログラムを実行することにより画像形成のための処理機能を実現する。
ROM120は、画像形成処理の基本的な動作を司る制御プログラムおよび制御データなどを記憶する。RAM121は、ワーキングメモリである。
ROM120(あるいはRAM121)は、例えば、画像形成部20、定着装置36等を制御する制御プログラムと、制御プログラムが使用する各種の制御データとを記憶する。本実施形態における制御データの具体例としては、シートPのサイズと発熱させる加熱部材361の発熱領域を選択するスイッチとの対応関係などが挙げられる。
【0043】
定着装置36を温度制御する定着温度制御プログラムは、加熱幅判定ロジックと、加熱制御ロジックとを含んでいる。加熱幅判定ロジックは、トナー像が形成されたシートPのサイズを検知して、必要な加熱幅を判定する。加熱制御ロジックは、必要な加熱幅に対応する発熱領域を選択して加熱部材361による加熱を制御する。
【0044】
I/F122は、ユーザ端末やファクシミリ等の各種装置との通信を行う。
入出力制御回路123は、オペレーションパネル14aおよび表示部14bを制御する。
給紙・搬送制御回路130は、本体11に含まれる駆動系を制御する。例えば、駆動系は、給紙ローラ35(図1参照)、搬送路のレジストローラ41(図1参照)を駆動するモータ群130aが含まれる。給紙・搬送制御回路130は、CPU100からの制御信号に基づいて給紙カセット18(図1参照)の近傍あるいは搬送路上の各種のセンサ130bの検知結果に基づいてモータ群130a等の駆動系を制御する。
画像形成制御回路140は、CPU100からの制御信号に基づいて感光体ドラム22、帯電器23、露光器19、現像器24、一次転写ローラ25、二次転写ローラ33をそれぞれ制御する。
定着制御回路150は、CPU100からの制御信号に基づいて定着装置36の駆動モータ360、加熱部材361、および温度検知部材362をそれぞれ制御する。
温度検知部材362は、定着ニップを形成する定着ベルト363(図3参照)の温度を直接的または間接的に検知する。温度検知部材362の具体例としては、サーミスタを挙げることができる。
温度検知部材362は、定着ベルト363の内側あるいは外側に配置されてもよい。温度検知部材362は、定着ベルト363に接触する加熱部材361の発熱部に配置されてもよい。
温度検知部材362の配置個数は限定されない。例えば、温度検知部材362を1つ配置する場合には、加熱部材361における幅L1(図4参照)に対応する範囲に配置する。
例えば、温度検知部材362を複数配置する場合には、温度検知部材362は加熱部材361の各発熱領域に一つずつ配置されてもよい。加熱部材361の発熱部の長手方向の温度分布は、電極E0を中心として略対称になる。そこで、温度検知部材362は発熱領域R01L、R12L、R23Lに対応する範囲にそれぞれ1つずつ、あるいは発熱領域R01R、R12R、R23Rに対応する範囲にそれぞれ1つずつ配置されてもよい。
【0045】
本実施形態では定着装置36の制御プログラムおよび制御データを画像形成装置10の記憶装置内に記憶してCPU100で実行する構成としているが、定着装置36専用に演算処理装置と記憶装置を別途設ける構成にしてもよい。
【0046】
次に、画像形成装置10の印刷時の動作に基づいて説明する。
図7は、第1の実施形態の画像形成装置10の印刷時の動作例を説明するフローチャートである。
【0047】
画像形成装置10は、図7に示すACT1からACT14を図7に示すフローにしたがって実行することによって、シートPに画像を印刷する。
ACT1では、画像形成装置10が画像データを読込む。画像データの読込みは、操作者がスキャナ部15を操作して、スキャナ部15に原稿を読み取らせることによって行ってもよい。あるいは、画像データは、I/F122を介して画像形成装置10に接続された通信回線を通して読込まれてもよい。
【0048】
画像データが読込まれた後、ACT2が実行される。
ACT2では、CPU100が印刷対象の用紙サイズを判定する。CPU100は、オペレーションパネル14aによる設定、スキャナ部15によって検出された原稿サイズ、あるいは外部装置からの制御信号に基づいて、印刷に用いるシートPの用紙サイズを判定する。
これにより、定着装置36を通過するシートPのシート幅が決まる。
以上で、ACT2が終了する。
【0049】
ACT2が終了すると、ACT3が行われる。ACT3では、CPU100は、用紙サイズに対応する発熱領域を選択する。
CPU100は、シート幅と発熱領域との関係に基づいて、発熱させる発熱領域を選択する。
例えば、本実施形態におけるROM120には、用紙サイズと選択すべき発熱領域の対応が以下のように記憶されている。ハガキサイズの場合、発熱領域R01L、R01Rが選択される。CDジャケットサイズ、A5Rサイズ、B5Rサイズ、およびA4Rサイズの場合、発熱領域R12L、R01L、R01R、R12Rが選択される。B5サイズ、A4サイズ、およびA3Rサイズの場合、発熱領域R23L、R12L、R01L、R01R、R12R、R23Rが選択される。
【0050】
例えば、上記ACT2で、印刷に用いるシートPがハガキサイズであると判定されると、CPU100は、発熱領域R01L、R01Rを発熱させることを選択する。
以上で、ACT3が終了する。
【0051】
ACT3の後、ACT4が行われる。ACT4では、CPU100は、定着制御回路150に定着温度制御を開始させる制御信号(定着温度制御開始信号と言う)を送出する。CPU100は、定着温度制御開始信号とともに、選択した発熱領域の情報を定着制御回路150に送出する。
定着制御回路150による定着温度制御は、CPU100が定着温度制御を終了させる制御信号を定着制御回路150に送出するまで継続して行われる。
【0052】
ACT4が終了すると、ACT5が行われる。ACT5では、CPU100は、印刷に用いるシートPを給紙カセット18から給紙する制御信号を給紙・搬送制御回路130に送出する。
給紙・搬送制御回路130は、CPU100からの制御信号に基づいて、印刷に用いるシートPを給紙カセット18から給紙する制御を行う。さらに、給紙・搬送制御回路130は、給紙ローラ35を駆動する。給紙ローラ35は、シートPの先端をレジストローラ41に突き当てた状態で停止する。
以上で、ACT5が終了する。
【0053】
ACT5の後、ACT6が行われる。ACT6について説明する前に、定着制御回路150による定着温度制御について説明する。定着温度制御は、ACT6以降の各動作と並行して行われる。
図8は、第1の実施形態の画像形成装置10の定着温度制御の動作例を説明するフローチャートである。図9は、第1の実施形態の加熱部材361の制御動作例を示す平面視の模式図である。
【0054】
定着制御回路150は、図8に示すACT21からACT29を図8に示すフローにしたがって実行する。
まず、ACT21が行われる。ACT21では、定着制御回路150は、CPU100から送出されたCPU100が選択した発熱領域の情報に基づいて、選択された発熱領域を挟む電極対に接続されたスイッチ361eをオンにする。
例えば、発熱領域R01L、R01Rを発熱させることが選択された場合、定着制御回路150は、スイッチ361eのうちスイッチS1をオンにし、その他をオフにする。
図9に示すように、電極E0は端子T1に導通している。スイッチS1がオンになることにより、電極E1L、E1Rは端子T2に導通する。電極E2L、E2R、および図示しない電極E3L、E3Rは、それぞれ端子T1、T2と非導通である。
電極E0と電極E1Lの間、および電極E0と電極E1Rの間に、それぞれ端子T1と端子T2との間の電位差に一致する電圧が印加される。電極E0と電極E1Lの間、および電極E0と電極E1Rの間には、それぞれ互いに逆方向に電流が流れる。この電流は、幅Wh、長さP0の発熱抵抗体361cの幅方向に略一様な大きさで流れる。
この電流によるジュール発熱によって、発熱領域R01L、R01Rの発熱抵抗体361cが発熱し始める。
本実施形態では、発熱領域の境界である電極E0の上に発熱抵抗体361cが積層されている。電極E0の上の発熱抵抗体361cは、電極E0の側方に比べると電流密度が低いため発熱自体は少なくなる。しかし、電極E0の線幅は、0.5mm以上3.0mm以下程度にすることができる。この結果、電極E0の上の発熱抵抗体361cは、周囲からの熱伝導によってすぐに温度上昇する。
これに対して、電極E0、E1L、および電極E0、電極E1R以外の電極対の間には電圧が印加されない。発熱領域R12L、R12R、R23L、R23Rでは発熱が起こらない。
発熱抵抗体361cは、電極E0を中心とする、幅Wh、長さL1(=2・P0)の矩形状の範囲で略均一に発熱する。
【0055】
同様に、発熱領域R01L、R01R、R12L、R12Rを発熱させることが選択されている場合、定着制御回路150は、スイッチ361eのうちスイッチS1、S2L、S2Rをオン、スイッチS3L、S3Rをオフにする。発熱抵抗体361cは、電極E0を中心とする、幅Wh、長さL2(=4・P0)の矩形状の範囲で略均一に発熱する。
発熱領域R01L、R01R、R12L、R12R、R23L、R23Rを発熱させることが選択されている場合、定着制御回路150は、各スイッチ361eのすべてをオンにする。発熱抵抗体361cは、電極E0を中心とする、幅Wh、長さL3(=6・P0)の矩形状の範囲で略均一に発熱する。
【0056】
ACT21の後、ACT22が行われる。ACT22では、CPU100によって送出される定着温度制御を終了する制御信号(以下、定着温度制御終了信号と言う)を受信したかどうか、定着制御回路150が判定する。
定着制御回路150が定着温度制御終了信号を受信している場合(ACT22:YES、ACT29が行われる。
定着制御回路150が定着温度制御終了信号を受信していない場合(ACT22:NO)、ACT23が行われる。
【0057】
ACT23では、定着制御回路150は、温度検知部材362によって、定着ニップを形成する定着ベルト363の温度を検知する。
温度検知部材362が定着ベルト363の温度を間接的に検知する場合は、定着制御回路150は、検出温度を定着ベルト363の定着ニップの温度に換算する。例えば、温度検知部材362の検出温度と定着ニップの温度との関係は、換算テーブルなどとして、予めROM120に記憶される。
温度検知部材362が複数配置されている場合、ACT23では、定着制御回路150は、選択された発熱領域の温度を検知する温度検知部材362による温度情報に基づいて、以下の動作を実行する。
以上で、ACT23が終了する。
【0058】
ACT23の後、ACT24が行われる。ACT24では、ACT23において検知された温度(以下、検知温度と言う)が所定の温度範囲以内かどうかを、定着制御回路150が判定する。定着制御回路150が複数の温度検知部材362の検知信号に基づいて検知温度を求める場合、選択された発熱領域に対応する範囲における最低の検知温度に基づいて判定する。
所定の温度範囲は、シートPにトナー像を定着するための温度範囲として予め決められている。定着制御回路150の内部またはROM120に記憶されている。例えば、所定の温度範囲は、定着温度が150℃の場合、150℃±10℃の温度範囲とされてもよい。
検知温度が所定の温度範囲内の場合(ACT24:YES)、ACT25が行われる。
検知温度が所定の温度範囲外の場合(ACT24:NO)、ACT26が行われる。
【0059】
ACT25では、定着制御回路150は、搬送許可信号をオンにする。搬送許可信号は、後述するようにCPU100によって画像形成装置10の搬送制御に用いられる。
ACT25の終了後、ACT22が行われる。
【0060】
ACT26では、検知温度が所定の温度範囲の上限値(温度上限)を超えているか否かを判定する。
検知温度が所定の温度範囲の上限値を超えていると判定された場合(ACT26:YES)、ACT27が行われる。
検知温度が所定の温度範囲の上限値以下であると判定された場合(ACT26:NO)、ACT28が行われる。
【0061】
ACT27では、上記ACT22において電圧印加開始された発熱領域への通電をオフにする。その後、ACT22が行われる。
ACT28では、上記ACT22において電圧印加開始された発熱領域への通電をオンにする。その後、ACT22が行われる。
このようにして、ACT22において定着温度制御終了信号が検知されるまでACT22からの動作を繰り返すことによって、定着制御回路150は発熱領域における通電のオンオフ制御を行う。この結果、選択された発熱領域の温度が所定の温度範囲に制御される。
【0062】
ACT29では、定着制御回路150は、スイッチ361eをすべてオフにする。これにより、定着温度制御が終了する。
【0063】
ここで、図7に示すACT6の説明に戻る。
ACT6では、定着制御回路150によって搬送許可信号がオンされたかどうかをCPU100が判定する。
搬送許可信号がオンの場合(ACT6:YES)、CPU100は、画像形成部20を制御する画像形成制御プログラムを実行される。これにより、画像形成制御が開始される。具体的には、まず、ACT7とACT10とが並行して行われる。
搬送許可信号がオフの場合(ACT6:NO)、ACT6が行われる。
このように、本実施形態では、定着ニップが定着温度に達して搬送許可信号がオンになるまでは、画像形成制御は開始されない。
【0064】
画像形成処理が開始されると、CPU100は読込まれた画像データを処理する(ACT7)。その後、CPU100は、画像データと画像形成を開始する制御信号を画像形成制御回路140に送出する。
画像形成制御回路140は、感光体ドラム22の表面に静電潜像を書込み(ACT8)、現像器24で静電潜像を現像する(ACT9)制御を行う。現像されたトナー像は、中間転写ベルト21によって二次転写位置に搬送される。
その後、画像形成制御回路140は、後述するACT11の制御を行う。
【0065】
一方、ACT10では、CPU100は、シートPを転写部に搬送する制御を行う。転写部は、中間転写ベルト21と二次転写ローラ33とが当接する位置である。CPU100は、給紙・搬送制御回路130にシートPを転写部に向けて搬送開始する制御信号を送出する。給紙・搬送制御回路130は、レジストローラ41を駆動する。
シートPの先端は、現像されたトナー像が中間転写ベルト21によって二次転写位置に移動するタイミングに合わせて二次転写位置に到達する。
トナー像およびシートPが転写部に到達するタイミングでACT11が開始される。
【0066】
ACT11では、画像形成制御回路140は、シートPに中間転写ベルト21上のトナー像を転写する制御を行う。画像形成制御回路140は、二次転写ローラ33に二次転写電圧を印加する。二次転写電圧の印加は、シートP全体が二次転写位置を通過し終えるまで行われる。トナー像が転写されたシートPは定着装置36に搬送される。
以上で、ACT11が終了する。
【0067】
シートPが定着装置36に搬送されると、ACT12が行われる。ACT12では、定着装置36によってシートP上のトナー像が定着される。
図3に示すように、シートPは、定着装置36の定着ベルト363とプレスローラ366との間に進入する。定着ニップは、シートPの用紙サイズに対応する発熱領域が所定の温度範囲に温度制御されている。シートPは、定着ニップを通過する間、加熱および加圧を受けることで、シートPにトナー像が定着される。
定着制御回路150による定着温度制御は、シートPが定着装置36を通過する間も、継続されている。この結果、定着ベルト363は、選択された発熱領域に対応する定着ニップにおいて所定の温度範囲を保つことができる。
一方、シートPが通過しない発熱領域では、定着ベルト363が加熱されないため、トナー像の定着に必要のない領域の加熱が抑制される。
シートP全体が定着ニップを通過すると、図示略のセンサ130bによってシートPの通過が検知される。ACT12が終了する。
【0068】
図示略のセンサ130bによって、定着装置36におけるシートPの通過が検知されると、図7に示すACT13が行われる。ACT13では、CPU100は、印刷を終了するか否かを判定する。CPU100は、設定された印刷枚数と、すでに印刷が終了した枚数とを比較して、設定された印刷枚数の印刷が終了したときに印刷を終了すると判定する。
印刷を終了するとCPU100が判定する場合(ACT13:YES)、ACT14が行われる。
印刷を継続するとCPU100が判定する場合(ACT13:NO)、ACT1が行われる。すなわち、印刷対象の画像データが残っている場合には、ACT1へ戻り、すべての印刷が終了するまで同様の処理を繰り返す。
【0069】
ACT14では、定着温度制御を終了する制御をCPU100が行う。具体的には、CPU100は、定着制御回路150に定着温度制御終了信号を送出する。
定着制御回路150が定着温度制御終了信号を受信すると、図8のACT22から分岐してACT29が実行される。この結果、すべての発熱領域の通電がオフされ、定着温度制御が終了する。
ACT14が終了すると、画像形成装置10による印刷が終了する。
【0070】
本実施形態の画像形成装置10では、定着装置36の加熱部材361が複数の発熱領域を持つ。複数の発熱領域は、印刷対象のシートPのシート幅と重なる範囲のみ発熱される。したがって、シートPのシート幅の大きさに応じて、シートPが通過しない発熱領域における発熱抵抗体361cへの通電が停止される。このため、シート幅が小さいシートPを印刷する場合に、省エネルギーが可能である。
加熱部材361では、電極361bが基材361aの長手方向に対向している。基材361aの長手方向に互いに対向する電極361bの電極対は、定着電源150aの異なる極性に接続されている。この結果、各電極361b上に、発熱抵抗体361cを連続して配置することができる。加熱部材361において、隣り合う発熱領域との間にはギャップが不要となる。複数の発熱領域によって略矩形状の連続的な発熱領域が形成されるため、定着領域の温度分布のむらが抑制される。
【0071】
定着領域の温度分布のむらについて、図10に示す比較例を参照して説明する。
図10は、比較例のヒータの制御動作例を示す平面視の模式図である。
本比較例のヒータである加熱部材96では、発熱領域R01L、R01Rに対応する発熱領域r01を加熱するため、基材361a上において電極e01、e02が基材361aの短手方向に対向して配置される。電極e01、e02の間には、発熱抵抗体361cと同じ材料からなる発熱抵抗体H0が配置されている。基材361aの長手方向において電極e01、e02、発熱抵抗体H0の幅は、いずれもD1である。
加熱部材96では、発熱領域R12L(R12R)に対応する発熱領域r12L(r12R)を加熱するため、基材361aの短手方向に電極e11L、e12L(e11R、e12R)が対向して配置される。電極e11L、e12L(e11R、e12R)の間には、発熱抵抗体361cと同じ材料からなる発熱抵抗体H1L(H1R)が配置されている。基材361aの長手方向において電極e11L、e12L(e11R、e12R)、発熱抵抗体H1L(H1R)の幅は、いずれもD2L(D2R)である。
電極e01、e11L、e11Rは、端子T1に電気的に接続される。
電極e02、e12L、e12Rは、それぞれスイッチS1、S2L、S2Rを介して、端子T2に電気的に接続される。
【0072】
本比較例の電極配置では、本実施形態と同様に、スイッチS1をオン、スイッチS2L、S2Rをオフとすることで、発熱領域r01が発熱する。このとき、電極e02は、端子T2と同電位であるのに対して、電極e12L、e12Rは端子T1と同電位である。すなわち、電極e12L(e12R)と電極e02との間には、端子T1、T2間の電位差が発生する。このため、電極e12L(e12R)と電極e02との間は、絶縁距離dだけ離間させる必要がある。例えば、端子T1、T2間の電位差がAC100Vの場合、絶縁距離dは約1.5mmである。例えば、端子T1、T2間の電位差がAC200Vの場合、絶縁距離dは約3.2mmである。
発熱領域r12L(r12R)と発熱領域r01との間には、発熱抵抗体が存在しない幅dのギャップが必要になる。
比較例において、シート幅がD1よりも広いシートPを通紙する場合、少なくともスイッチS1、S2L、S2Rをオンにする必要がある。この場合、発熱領域r12L、r01、r12Rが発熱する。しかし、発熱領域r12L(r12R)と発熱領域r01との間の幅dの領域は発熱しないため、発熱領域r12L(r12R)と発熱領域r01との間の幅dの領域は低温領域になっている。
このような比較例における電極配置では、複数の発熱領域を同時に発熱させる必要があるシートPの定着時に、隣り合う発熱領域の間の低温領域に起因する定着むらが発生する。
これに対して、本実施形態における加熱部材361の電極配置では、このような温度分布のむらに起因する定着むらの発生を防止できる。
【0073】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のヒータおよびそれを用いた定着装置について説明する。
図11は、第2の実施形態の画像形成装置の制御系の構成例を示すブロック図である。図12は、第2の実施形態の加熱部材461の構成例を示す長手方向の模式的な断面図である。図13は、第2の実施形態の加熱部材461の構成例を示す平面視の模式図である。ただし、図13では、見易さのため、表面保護層361dの図示は省略されている。
【0074】
図1に示すように、第2の実施形態の画像形成装置40は、上記第1の実施形態の画像形成装置10の定着装置36に代えて、定着装置46を持つ。図11に示すように、画像形成装置40は、上記第1の実施形態の画像形成装置10の制御系50に代えて、制御系51を持つ。制御系51は、制御系50の定着制御回路150に代えて、定着制御回路151(定着制御部)持つ。
図3に示すように、定着装置46は、上記第1の実施形態における定着装置36の加熱部材361に代えて、加熱部材461(ヒータ)を持つ。
定着装置46では、複数の温度検知部材362(図3では図示略。図11参照)が定着ベルト363の内側、外側、および定着ベルト363に接触する加熱部材461の発熱部のいずれかに配置されている。複数の温度検知部材362は、加熱部材461の後述する各発熱領域に対応する範囲の温度検知が可能位置に、それぞれ1つずつ配置されている。ただし、本実施形態では、発熱領域R0L、R0Rの印加電圧は、後述する電圧調整部V1で制御されるため、発熱領域R0L、R0Rのいずれか一方に対応する範囲のみに、温度検知部材362が設けられている。
各温度検知部材362の検出出力は、定着制御回路151に送出される。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0075】
図12に示すように、加熱部材461は、上記第1の実施形態の加熱部材361の発熱抵抗体361cに代えて、発熱抵抗体461cを持つ。ただし、加熱部材461は、基材361aの長手方向(図12の図示左右方向)における電極E1L、E1R、E2L、E2R、E3L、E3Rの配置位置が、上記第1の実施形態における配置位置と異なる。
定着装置46は、加熱部材461の各電極361bの配置が不等間隔である場合の例になっている。
【0076】
基材361aの長手方向における電極E0と電極E1L(E1R)との配置間隔はP1である。同じく電極E1L(E1R)と電極E2L(E2R)との配置間隔はP2である。同じく電極E2L(E2R)と電極E3L(E3R)との配置間隔はP3である。
本実施形態では、一例として、P1=77.7(mm)、P2=32.6(mm)、P3=45.7(mm)としている。
このような数値例の場合、電極E1L、E1Rの配置間隔L1は155.4mm、電極E2L、E2Rの配置間隔L2は220.6mm、電極E3L、E3Rの配置間隔L3は312mmである。
この数値例では、L1、L2、L3は、それぞれシート幅148mm、210mm、297mmに対して105%の長さになっている。
この場合、発熱領域R01L、R01Rが発熱されると、ハガキサイズ、CDジャケットサイズ、A5RサイズのシートPの定着が可能である。発熱領域R12L、R01L、R01R、R12Rが発熱されると、B5RサイズおよびA4RサイズのシートPの定着が可能である。発熱領域R23L、R12L、R01L、R01R、R12R、R23Rが発熱されると、B5サイズ、A4サイズ、およびA3RサイズのシートPの定着が可能である。
この数値例では、定着に必要な発熱領域の幅は、A5Rサイズ、A4Rサイズ、およびA4サイズ(A3Rサイズ)のシート幅に対して、それぞれ5%の余裕を持つように設定されている。この数値例は、A5Rサイズ、A4Rサイズ、およびA4サイズ(A3Rサイズ)を通紙する際に、より大きなサイズの通紙時に比べて、必要な余裕を含めてもより少ない発熱量で加熱する設定になっている。
以下では、特に断らない限り、電極配置が上記数値例の場合の例で説明する。
【0077】
図13に示すように、発熱抵抗体461cは、基材361aの短手方向における幅が異なる以外は、上記第1の実施形態における発熱抵抗体361cと同様に構成される。以下、誤解のおそれがない限り、発熱抵抗体461cの基材361aの短手方向における幅を、単に、発熱抵抗体461cの幅と言う。
発熱抵抗体461cの幅は、電圧印加時に各発熱領域において必要な発熱量が得られる電気抵抗を持つように設定される。
上記数値例では、P1>P3>P2である。発熱抵抗体461cの電気抵抗率ρが一定、層厚T(図12参照)が一定、かつ各発熱領域R01L(R01R)、R12L(R12R)、R23L(R23R)に印加される電圧vが一定の場合、各発熱領域における電気抵抗rは各発熱領域の長さLに比例し、各発熱領域における発熱抵抗体461cの幅Wに反比例する。
例えば、発熱領域における長手方向における単位長さあたりの発熱量q(以下、「単位長さあたりの発熱量」と称する)は、次式(1)で表される。
【0078】
q=v2/(r・L)=v2・T・W/ρ ・・・(1)
【0079】
例えば、発熱領域R01L(R01R)における発熱抵抗体461cの幅がW1、発熱領域R12L(R12R)における発熱抵抗体461cの幅がW2、発熱領域R23L(R23R)における発熱抵抗体461cの幅がW3とする。
この場合、v、T、ρが一定であれば、各発熱領域における単位長さあたりの発熱量は、各発熱領域における発熱抵抗体461cの幅、W1、W2、W3に比例する。W1=W2=W3であれば、単位長さあたりの発熱量は一定になる。
単位長さあたりの発熱量は、定着装置46における加熱部材461から定着ベルト363への伝熱効率に応じて、定着ニップの温度が必要な定着温度になるように設定されればよい。図13には、W1>W3>W2の場合の例が示されているがこれは一例である。W1、W2、W3の大きさは、適宜に設定可能である。
例えば、W1>W2>W3とされてもよい。この場合、単位長さあたりの発熱量は、発熱領域R01L(R01R)、R02L(R02R))、R03L(R03R)の順に小さくなる。このような設定によれば、加熱部材461の加熱能力は、発熱領域R01L(R01R)において最も高まるため、例えば、小サイズの連続通紙後の定着ベルト363の中心部における温度分布低下が抑制されやすくなる。
例えば、W1<W2<W3とされてもよい。この場合、単位長さあたりの発熱量は、発熱領域R01L(R01R)、R02L(R02R))、R03L(R03R)の順に大きくなる。このような設定によれば、加熱部材461の加熱能力は、発熱領域R03L(R03R)において最も高まるため、例えば、定着ベルト363の搬送直交方向の両端部における温度低下が抑制されやすくなる。
【0080】
図13に示すように、加熱部材461は、さらに電圧調整部461hを持つ。図11に示すように、電圧調整部461hは、定着制御回路151と通信可能に接続されている。
図13に模式的に示すように、電圧調整部461hは、電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rからなる。
電圧調整部V1は、端子T2から電極E1L、E1Rに印加される電圧を調整するために設けられている。電圧調整部V2L(V2R)は、端子T1から電極E2L(E2R)に印加される電圧を調整するために設けられている。電圧調整部V3L(V3R)は、端子T2から電極E3L(E3R)に印加される電圧を調整するために設けられている。
電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rは、電極E1L、E1R、E2L、E2R、E3L、E3Rに印加される電圧を定着制御回路151からの制御信号に基づいて変更する。
電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rは、電極E1L、E1R、E2L、E2R、E3L、E3Rに印加する電圧を連続的に変更してもよいし、段階的に変更してもよい。段階的な変更値は、2以上の適宜の数であってもよい。
【0081】
電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rの構成は、定着制御回路151からの制御信号に基づいて電圧を変更できれば限定されない。例えば、電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rとしては、電気抵抗を変化させることによって電圧降下を発生させる構成が用いられてもよい。例えば、電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rとしては、電子ボリューム、デジタルボリュームなどが用いられてもよい。例えば、電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rとしては、変圧回路が用いられてもよい。
電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rは単一の電子素子には限定されない。電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rは、複数の電気素子が含まれる電気回路によって構成されてもよい。
電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rは、それぞれの構成に応じて、配線361f、361g上の適宜の位置に接続される。図13には、一例として、可変抵抗型の構成を持つ場合の配置例が模式的に示されている。例えば、電圧調整部V1は、定着電源150aと電極E1L、E1Rとの間の配線361gの配線路中に直列に接続されている。電圧調整部V2L(V2R)は、定着電源150aと電極E2L(E2R)との間の配線361fの配線路中に直列に接続されている。電圧調整部V3L(V3R)は、定着電源150aと電極E3L(E3R)との間の配線361gの配線路中に直列に接続されている。例えば、電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rが変圧回路を含む構成であれば、図13と異なる部位に配線されてもよい。
電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rは、電極E1L、E1R、E2L、E2R、E3L、E3Rに印加される電圧を定着制御回路151からの制御信号に基づいて変更する。
【0082】
定着制御回路151は、上記第1の実施形態における定着制御回路150における制御機能の他に、電圧調整部V1、V2L、V2R、V3L、V3Rを制御することで、電極E1L(E1R)、E2L(E2R)、E3L(E3R)への印加電圧を制御する機能を持つ。
定着制御回路151の具体的な制御機能については、後述の動作説明の中で説明される。
【0083】
次に、本実施形態の画像形成装置40の印刷時の動作に基づいて説明する。
図14は、第2の実施形態の画像形成装置の定着温度制御の動作例を説明するフローチャートである。
【0084】
定着装置46に本実施形態の加熱部材461を持つ本実施形態の画像形成装置40は、上記第1の実施形態の画像形成装置10と同様に、図7に示すフローにしたがって、シートPに印刷することができる。
ただし、図7におけるACT3では、CPU100は、本実施形態におけるシート幅と発熱領域との関係に基づいて、発熱させる発熱領域を選択する。
例えば、上述の電極の配置間隔の数値例では、ROM120には、用紙サイズと選択すべき発熱領域の対応が以下のように記憶されている。ハガキサイズ、CDジャケットサイズ、およびA5Rサイズの場合、発熱領域R01L、R01Rが選択される。B5Rサイズ、およびA4Rサイズの場合、発熱領域R12L、R01L、R01R、R12Rが選択される。B5サイズ、A4サイズ、およびA3Rサイズの場合、発熱領域R23L、R12L、R01L、R01R、R12R、R23Rが選択される。
さらに、本実施形態の画像形成装置40では、定着温度制御は、図14に示すフローにしたがって行われる。以下では、本実施形態における定着温度制御について、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0085】
定着制御回路151は、図14に示すACT31からACT41を図14に示すフローにしたがって実行する。
まず、ACT31が行われる。ACT31は、上記第1の実施形態におけるACT21と同様な動作が行われる。本実施形態では、ACT31において電圧調整部461hの電圧設定値は、予め決められたデフォルトの値が用いられる。デフォルト値からの電圧の変化幅は、少なくも電極対への印加電圧を増大できるように設定される。
【0086】
ACT31の後、ACT32が行われる。ACT32では、定着制御回路151によって上記第1の実施形態におけるACT32と同様な動作が行われる。
ただし、定着制御回路151が定着温度制御終了信号を受信している場合(ACT32:YES)、ACT41が行われる。
定着制御回路151が定着温度制御終了信号を受信していない場合(ACT32:NO)、ACT33が行われる。
【0087】
ACT33では、定着制御回路151は、定着ニップを形成する定着ベルト363の温度情報を、各温度検知部材362から発熱領域ごとに取得する。
各温度検知部材362が定着ベルト363の温度を間接的に検知する場合は、定着制御回路151は、検出温度を定着ベルト363の定着ニップの温度に換算する。例えば、各温度検知部材362の検出温度と定着ニップの温度との関係は、換算テーブルなどとして、予めROM120に記憶される。
ただし、定着制御回路151は、選択された発熱領域の温度を検知する温度検知部材362による温度情報に基づいて、以下の動作を実行する。
以上で、ACT33が終了する。
【0088】
ACT33の後、ACT34が行われる。ACT34では、ACT33において検知された各発熱領域の温度(以下、検知温度と言う)が温度差許容範囲内かどうかを、定着制御回路151が判定する。
例えば、定着制御回路151は、検知温度のうちの最高温度と、各検知温度との温度差を算出する。定着制御回路151は、算出した温度差を予めROM120に記憶された温度差許容範囲と比較して、発熱領域ごとの温度差を判定する。
各温度差がすべて温度差許容範囲に入る場合(ACT34:YES)、ACT36が行われる。
各温度差のいずれかが温度差許容範囲に入らない場合(ACT34:NO)、ACT35が行われる。
【0089】
ACT35では、定着制御回路151によって電圧調整が行われる。定着制御回路151は、温度差許容範囲外の温度が検知された発熱領域に対応する電極対に印加する電圧を変更する。具体的には、定着制御回路151は、予めROM120に記憶された、温度差と電圧変更値の対応テーブルに基づいて電圧設定値を変更する制御信号を電圧調整部461hに送出する。
例えば、発熱領域R01L、R01Rの温度が低すぎることによって、温度差が許容範囲に入らなかった場合には、定着制御回路151の制御によって、電極E0、E1L(E1R)の間の印加電圧がより増大される。
このとき、他の電極対への印加電圧を変える必要がない場合には、必要に応じて、他の電極対の印加電圧を保持するように、電圧調整部V2L、V2R、V3L、V3Rによる電圧が変更される。他の電極対への印加電圧を変える必要がある場合には、他の電極対の印加電圧をも変更される。
以上で、ACT35が終了する。ACT35の後は、ACT36が行われる。
【0090】
このようにして、ACT35において電極対への印加電圧が変更された後、通電が開始されると、印加電圧が変更された電極対間の発熱領域における発熱量が変更される。例えば、発熱領域R01L、R01Rへの印加電圧が増大すると、発熱領域R01L、R01Rにおける発熱量が増加する。
【0091】
ACT34では、ACT33において検知された検知温度が所定の温度範囲以内かどうかを、定着制御回路151が判定する。定着制御回路151は、選択された発熱領域に対応する範囲における最低の検知温度(下限検知温度と称する)に基づいて判定する。
所定の温度範囲は、上記第1の実施形態におけるACT24における温度範囲と同様とされる。
下限検知温度が所定の温度範囲内の場合(ACT36:YES)、ACT37が行われる。
下限検知温度が所定の温度範囲外の場合(ACT36:NO)、ACT38が行われる。
【0092】
ACT38、39、40、41は、定着制御回路151によって、それぞれ上記第1の実施形態におけるACT26、27、28、29と同様の動作が行われる。ただし、ACT39、40が終了すると、ACT32が行われる。
【0093】
本実施形態の加熱部材461を持つ本実施形態の画像形成装置40は、上記第1の実施形態の画像形成装置10と同様に、省エネルギーが可能であって、定着領域の温度分布のむらを抑制することができる。
本実施形態では、電極の配置間隔が等間隔に限定されない。例えば、使用頻度が高い用紙サイズなどの特定の用紙サイズを通紙する際に、より大きなサイズの通紙時に比べて、必要な余裕を含めてもより少ない発熱量で加熱する設定が可能になる。この結果、画像形成装置40の平均的な電力使用量がより低減しやすくなる。
【0094】
さらに本実施形態の画像形成装置40では、発熱抵抗体461cの幅を変更することによって、各発熱領域の電気抵抗が適宜に設定される。このため、発熱領域ごとに、単位長さあたりの発熱量が変更できる。
例えば、ハガキなどの厚紙が通紙されることによって、温度低下が起こりやすい発熱領域では、予め単位長さあたりの発熱量を高めておくことで、多数連続通紙しても定着ベルト363の温度低下が起こりにくくなる。この結果、温度低下による光沢ムラなどの画質への影響を低減できる。
例えば、画像形成装置40の内部の温度分布などの影響によって、定着ベルト363の温度低下が起こりやすい発熱領域では、予め単位長さあたりの発熱量を高めておくことで、多数連続通紙しても定着ベルト363の温度低下が起こりにくくなる。この結果、温度低下による光沢ムラなどの画質への影響を低減できる。
【0095】
さらに本実施形態の画像形成装置40では、電圧調整部461hを持つため、加熱部材461における各電極へ印加電圧が変更可能である。
各電極へ印加電圧は、予めデフォルト値の設定することで、発熱領域ごとに変化させることができる。このため、各発熱領域における単位長さあたりの発熱量は、印加電圧の大きさによっても変更可能である。
例えば、各発熱領域における電気抵抗に応じて単位長さあたりの発熱量が異なる場合に、デフォルト値では、各発熱領域における単位長さあたりの発熱量を均一化することができる。
例えば、各発熱領域における電気抵抗に応じて単位長さあたりの発熱量の相違をさらに増大させるように、デフォルト値が設定されることも可能である。
このように、本実施形態の画像形成装置40では、各発熱領域における電気抵抗と印加電圧との組み合わせによって、各発熱領域における単位長さあたりの発熱量の設定自由度が増大される。
【0096】
さらに本実施形態の画像形成装置40では、定着動作中に発熱領域間の温度差が大きくなると、定着制御回路151の制御によって、温度差が低減されるように、温度差が大きくなった発熱領域に対応する電極対への印加電圧が自動的に変更される。
このため、種々のサイズ、厚さのシートPが混在して印刷が行われても、定着に使用される発熱領域における搬送直交方向における温度分布が安定化する。この結果、発熱領域ごとの温度バラツキによる定着ムラ、光沢ムラなどの発生が抑制される。
【0097】
(第3の実施形態)
第3の実施形態のヒータおよびそれを用いた定着装置について説明する。
図15は、第3の実施形態のヒータの主要部の構成例を示す断面の模式図である。
【0098】
図15に示すように、定着装置56は、上記第1の実施形態における定着装置36の定着ベルト363、加熱部材361に代えて、加熱フィルム563、本実施形態のヒータである加熱部材561を持つ。定着装置56において、上記第1の実施形態における定着装置36のベルト搬送ローラ364、テンションローラ365は削除される。
定着装置56は、さらにヒータホルダ562を持つ。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0099】
加熱フィルム563は、プレスローラ366の回転に連動して回転する筒状部材である。加熱フィルム563は、内周面において後述する加熱部材561と摺動可能である。例えば、加熱フィルム563は、加熱部材561の発熱に対する耐熱性を持つ樹脂フィルムで構成される。
加熱フィルム563の外周面には弾性層がプレスローラ366との間に適宜幅の定着ニップを形成する弾性層が形成されてもよい。
【0100】
加熱部材561は、加熱フィルム563の内周面に当接する凸面561aを持つ以外は、上記第1の実施形態の加熱部材361と同様に構成される。凸面561aは、加熱フィルム563との摺動抵抗を低減することによって、加熱フィルム563の円滑な摺動を可能にする。すなわち、加熱フィルム563の内周面と凸面561aとの間の摩擦係数は、加熱フィルム563の外周面とプレスローラ366の表面との摩擦係数よりも小さい。
さらに、加熱フィルム563の内周面と凸面561aとの間の摩擦係数は、トナー像が形成されて加熱フィルム563とプレスローラ366との間に進入するシートPの表面に対する摩擦係数よりも小さい。
【0101】
加熱部材561は、ヒータホルダ562に保持される。ヒータホルダ562は、加熱部材561の凸面561aを加熱フィルム563の内周面に押しつける。凸面561aが押しつけられた加熱フィルム563は、対向するプレスローラ366と当接してプレスローラ366との間に定着ニップを形成する。
さらに、ヒータホルダ562は、加熱部材561と接触する加熱フィルム563の内周面を、加熱部材561の近傍で略円弧状にガイドする。
例えば、ヒータホルダ562は、加熱部材561の発熱に対する耐熱性を持ち、かつ加熱フィルム563の内周面と摺動可能な樹脂材料で構成される。加熱フィルム563の内周面とヒータホルダ562との間の摩擦係数は、加熱フィルム563の外周面とプレスローラ366の表面との摩擦係数よりも小さい。
【0102】
このような構成の定着装置56は、プレスローラ366が図示時計回りに回転することによって、加熱フィルム563が図示反時計回りに回転する。加熱フィルム563の内周面には、加熱部材561からの熱が凸面561aを通して熱伝導する。定着ニップにシートPが進入すると、加熱フィルム563は、シートPを介してプレスローラ366からの回転駆動を受けて、図示反時計回りの回転を続ける。
定着装置56は、定着ベルト363に代えた加熱フィルム563の駆動方式と、加熱部材561の表面に凸面561aが形成されることとが、定着装置36と異なる。しかし、シートPの用紙サイズに応じて、発熱領域を切り換えて定着を行えることは、上記第1の実施形態における定着装置36と同様である。
定着装置56は、上記第1の実施形態の画像形成装置10の定着装置36に代えて用いることができる。
【0103】
定着装置36に代えて本実施形態の加熱部材561を持つ画像形成装置10は、上記第1の実施形態と同様に、省エネルギーが可能であって、定着領域の温度分布のむらを抑制することができる。
【0104】
(第4の実施形態)
第4の実施形態のヒータおよびそれを用いた定着装置について説明する。
図16は、第4の実施形態のヒータの構成例を示す平面視の模式図である。ただし、図16では、見易さのため、表面保護層361dの図示は省略されている。
【0105】
図1に示すように、第4の実施形態の画像形成装置60は、上記第1の実施形態の画像形成装置10の定着装置36に代えて、定着装置66を持つ。図6に示すように、画像形成装置60は、上記第1の実施形態の画像形成装置10の制御系50に代えて、制御系52を持つ。制御系52は、制御系50の定着制御回路150に代えて、定着制御回路152(定着制御部)を持つ。
図3に示すように、定着装置66は、上記第1の実施形態における定着装置36の加熱部材361に代えて、加熱部材661(ヒータ)を持つ。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0106】
加熱部材661は、上記第1の実施形態の加熱部材361において電極E3L、E2L、E1L、E0、E1R、E2R、E3Rの配置を変えて構成される。本実施形態における電極E3L、E2L、E1L、E0、E1R、E2R、E3Rの配置は、上記第2の実施形態の加熱部材461における各電極の配置と同様である。各電極対の間には、上記第2の実施形態におけると同様の発熱領域R23L、R12L、R01L、R01R、R12R、R23Rが形成されている。各発熱領域における本実施形態の発熱抵抗体361cの幅は、上記第1の実施形態と同様、一定である。
定着制御回路152は、各発熱領域の配置に基づいて、上記第2の実施形態の定着制御回路151と同様に発熱領域の発熱の選択が行われる点を除いて、上記第1の実施形態の定着制御回路150と同様に構成されている。
【0107】
本実施形態の画像形成装置60は、上記第1の実施形態におけるACT3(図7参照)における動作が上記第2の実施形態と同様に行われる以外は、上記第1の実施形態と同様にして、シートPに画像を印刷する。
本実施形態では、発熱抵抗体361cの幅が各発熱領域において一定値Whであるため、単位長さあたりの発熱量は、各発熱領域において一定である。
【0108】
本実施形態の加熱部材661を持つ本実施形態の画像形成装置60は、上記第1の実施形態の画像形成装置10と同様に、省エネルギーが可能であって、定着領域の温度分布のむらを抑制することができる。
本実施形態では、電極の配置間隔が等間隔に限定されない。例えば、使用頻度が高い用紙サイズなどの特定の用紙サイズを通紙する際に、より大きなサイズの通紙時に比べて、必要な余裕を含めてもより少ない発熱量で加熱する設定が可能になる。この結果、画像形成装置60の平均的な電力使用量がより低減しやすくなる。
【0109】
さらに、本実施形態の加熱部材661によれば、上記第1の実施形態と同様、各電極対に一定の電圧を印加することによって、単位長さあたりの発熱量が等しい発熱が行われる。このため、選択された複数の発熱領域の間の温度分布が容易に均一化される。
【0110】
(第5の実施形態)
第5の実施形態のヒータおよびそれを用いた定着装置について説明する。
図17は、第5の実施形態のヒータの構成例を示す平面視の模式図である。ただし、図17は、見易さのため、表面保護層361dの図示は省略されている。
【0111】
図1に示すように、第5の実施形態の画像形成装置70は、上記第1の実施形態の画像形成装置10の定着装置36、給紙カセット18に代えて、定着装置76、給紙カセット78を持つ。図6に示すように、画像形成装置70は、上記第1の実施形態の画像形成装置10の制御系50に代えて、制御系53を持つ。制御系53は、制御系50の定着制御回路150に代えて、定着制御回路153(定着制御部)を持つ。
図3に示すように、定着装置76は、上記第1の実施形態における定着装置36の加熱部材361に代えて、加熱部材761(ヒータ)を持つ。
給紙カセット78は、各種サイズのシートPを片側基準で収容する。例えば、各種サイズのシートPは、搬送方向に対して左側のシート端が定位置に位置合わせされる。
上記第1の実施形態の画像形成装置10は、シートPを中央基準で搬送するのに対して、画像形成装置70は、シートPを片側基準で搬送する点が異なる。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0112】
図17に示すように、加熱部材761は、上記第1の実施形態の加熱部材361と同様、電極361bを持つ。ただし、加熱部材361の構成例の電極361bは、電極E3L、E2L、E1L、E0、E1R、E2R、E3Rからなるのに対して、加熱部材761の電極361bは、電極E1(第1の端部電極)、電極E2、E3、電極E4(第2の端部電極)からなる。ただし、本実施形態における電極361bの個数は、一例である。本実施形態における電極361bの個数は、3以上であれば限定されない。
電極E1、E4は、それぞれ、上記第1の実施形態の加熱部材461における電極E3L、E3Rと同様に構成、配置される。例えば、加熱部材661の長手方向における電極E1、E4の配置間隔は、上記第2の実施形態における電極E3L、E3Rの配置間隔と同様のL3(=2・(P1+P2+P3))である。
電極E2は、電極E1、E4の間において、電極E1に対する配置間隔がL2の位置に配置されている。ここで、L2は、上記第2の実施形態における電極E2L、E2Rの配置間隔と同様のL1(=2・P1)である。
電極E3は、電極E1、E4の間において、電極E1に対する配置間隔がL1の位置に配置されている。ここで、L1は、上記第2の実施形態における電極E1L、E1Rの配置間隔と同様のL2(=2・(P1+P2))である。
このような構成により、電極E1、E2の間には、長さL1の発熱領域R12が形成されている。電極E2、E3の間には、長さL2-L1の発熱領域R23が形成されている。電極E3、E4の間には、長さL3-L1の発熱領域R34が形成されている。各発熱領域における本実施形態の発熱抵抗体361cの幅は、上記第1の実施形態と同様、一定値Whである。
【0113】
加熱部材761は、上記第1の実施形態の加熱部材361と同様、スイッチ361eを持つ。ただし、加熱部材361の構成例のスイッチ361eは、スイッチS2L、S2R、S1、S3L、S3Rからなるのに対して、加熱部材761のスイッチ361eは、スイッチS2、S3、S4からなる。ただし、本実施形態におけるスイッチ361eの個数は、一例である。本実施形態におけるスイッチ361eの個数は、電極361bの個数に応じて適宜数設けられる。
【0114】
電極E1は、配線361fによって常に端子T1と電気的に接続されている。
電極E2は、スイッチS2を介して端子T2と接続されている。スイッチS2は、電極E2と端子T2との電気接続をオンまたはオフすることができる。
電極E3は、スイッチS3を介して端子T1と接続されている。スイッチS3は、電極E3と端子T1との電気接続をオンまたはオフすることができる。
電極E4は、スイッチS4を介して端子T2と接続されている。スイッチS4は、電極E4と端子T2との電気接続をオンまたはオフすることができる。
各スイッチ361eのスイッチング動作は、後述する定着制御回路153によって個別に制御される。
【0115】
定着制御回路153は、各発熱領域の配置に基づいて発熱領域の発熱の選択制御が異なる点を除いて、上記第1の実施形態の定着制御回路150と同様に構成されている。
【0116】
本実施形態の画像形成装置70は、上記第1の実施形態におけるACT3(図7参照)における動作が異なる以外は、上記第1の実施形態と同様にして、シートPに画像を印刷する。
具体的には、本実施形態におけるROM120には、用紙サイズと選択すべき発熱領域の対応が以下のように記憶されている。ハガキサイズの場合、発熱領域R12が選択される。CDジャケットサイズ、A5Rサイズ、B5Rサイズ、およびA4Rサイズの場合、発熱領域R12、R23が選択される。B5サイズ、A4サイズ、およびA3Rサイズの場合、発熱領域R12、R23、R34が選択される。
本実施形態におけるACT3では、CPU100は、用紙サイズに対応する発熱領域をROM120に記憶された上記情報に基づいて選択する。
【0117】
本実施形態の加熱部材761を持つ本実施形態の画像形成装置70は、上記第1の実施形態の画像形成装置10と同様に、省エネルギーが可能であって、定着領域の温度分布のむらを抑制することができる。
本実施形態では、片側基準でシートPが搬送される場合に、例えば、使用頻度が高い用紙サイズなどの特定の用紙サイズを通紙する際に、必要な余裕を含めて最小限の発熱量で加熱する設定が可能になる。この結果、画像形成装置70の平均的な電力使用量がより低減しやすくなる。
【0118】
さらに、本実施形態の加熱部材761によれば、上記第1の実施形態と同種のサイズのシートPを定着する場合に、電極361b、スイッチ361eの個数を低減することができる。
【0119】
(第6の実施形態)
第6の実施形態のヒータおよびそれを用いた定着装置について説明する。
図18は、第6の実施形態のヒータの構成例を示す断面の模式図である。
【0120】
図1に示すように、第6の実施形態の画像形成装置80は、上記第1の実施形態の画像形成装置10の定着装置36に代えて、定着装置86を持つ。
図3に示すように、定着装置86は、上記第1の実施形態における定着装置36の加熱部材361に代えて、加熱部材861(ヒータ)を持つ。
以下、上記第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0121】
図18に示すように、加熱部材861は、上記第1の実施形態の加熱部材361における発熱抵抗体361cに代えて、発熱抵抗体861cを持ち、さらに絶縁層861jが追加されて構成される。
【0122】
絶縁層861jは、電極361bが配置された基材361aの表面において、電極361bを除く領域に配置されている。絶縁層861jは、基材361aの長手方向において電極361bに挟まれる部位であって、発熱領域と重なる範囲に少なくとも配置されている。
絶縁層861jの層厚は限定されない。絶縁層861jは、後述する発熱抵抗体861cの厚さを長手方向にわたって変えるために用いることができる。この場合、絶縁層861jの層厚は、発熱抵抗体861cに必要な厚さが形成できるように適宜設定される。
図18に示す構成例では、絶縁層861jは、各電極の間を埋めるように配置されている。図18に示す構成例における絶縁層861jの層厚は、電極361bの厚さと同一である。このため、基材361aの表面には、電極361bと絶縁層861jからなる層厚一定の層状部が形成されている。
【0123】
絶縁層861jの材質は、各電極に印加される電圧に対する耐圧を有していれば、特に限定されない。例えば、絶縁層861jの材質としては、金属酸化物、樹脂、セラミックス材料などが用いられてもよい。
絶縁層861jの製造方法は特に限定されない。例えば、絶縁層861jの製造方法としては、材質に応じて適宜の成膜方法が用いられてもよい。
【0124】
発熱抵抗体861cは、上記第1の実施形態における発熱抵抗体361cと同じ材料によって、発熱抵抗体361cと同じ平面視形状に形成されている。発熱抵抗体361cは、各電極361bおよび絶縁層861jを覆う層状に形成されている。図18に示す構成例では、発熱抵抗体861cの層厚は一定である。
このような発熱抵抗体861cは、基材361a上に電極361bおよび絶縁層861jを形成した後、例えば、適宜の成膜方法によって、容易に製造される。
【0125】
図18に示す構成例のように、電極361bの厚さと絶縁層861jの層厚とが等しい場合には、滑らかな平面上に発熱抵抗体861cが形成されるため、均一厚さの発熱抵抗体861cが容易に製造される。
この場合、発熱抵抗体861cの厚さの変化による発熱量のムラが解消されるため、発熱領域の温度分布のムラが抑制される。
さらに、この場合、発熱抵抗体861cの表面の凹凸が抑制されるため、さらに表面保護層361dが積層された後の表面も平滑に形成される。表面保護層361dの表面の平面度が向上するため、定着ベルト363に対する加熱部材861の押圧力が均一になる。この結果、押圧状態の不均一性に起因する熱伝導のムラが抑制されるため、発熱領域内の温度分布の均一性が向上する。
【0126】
例えば、電極361bの電気抵抗を低減するために、電極361bの厚さを厚くすることが考えられる。
この場合、絶縁層861jがないと電極361bの近傍における発熱抵抗体861cの厚さの変化が大きくなるおそれがある。このような厚さの変化が大きすぎると、不均一な温度分布が形成されるおそれがある。
あるいは、絶縁層861jがないと電極361bの近傍における発熱抵抗体861cの表面が盛り上がるおそれがある。この結果、発熱抵抗体861cの表目の平坦性が低下するおそれがある。
しかし、本実施形態では、電極361bを厚く形成した場合でも、その厚さに応じて絶縁層861jの厚さを変えるとで、発熱抵抗体861cの厚さの変化が抑制され、発熱抵抗体861cの表面の平坦性も確保される。
【0127】
ただし、図18の構成例とは異なり、絶縁層861jの層厚と電極361bの厚さとが異なる状態で、発熱抵抗体861cが積層されてもよい。この場合、絶縁層861jの厚さの変化に応じて、発熱抵抗体861cの厚さを変化させることができる。
この場合、発熱抵抗体861cの幅が一定でも、発熱抵抗体861cの厚さが変化することによって、発熱領域における電気抵抗が変化する。
【0128】
本実施形態の加熱部材861を持つ本実施形態の画像形成装置80は、上記第1の実施形態の画像形成装置10と同様に、省エネルギーが可能であって、定着領域の温度分布のむらを抑制することができる。
【0129】
以上、説明した少なくともひとつの実施形態によれば、基材の上において基材の長手方向に離間して3つ以上配置された電極と、電極のうち長手方向に互いに対向する電極対を互いに電気的に接続する発熱抵抗体と、電極対を互いに異なる極性となるように接続する配線と、配線に接続されて電圧を印加する電極を選択するスイッチと、を持つことにより、省エネルギーが可能であって、定着領域の温度分布のむらを抑制することができるヒータを提供することができる。
【0130】
なお、上述の各実施形態において、スイッチ361eは、加熱部材(ヒータ)361、461、561、661、761、861と一体に形成されてもよいし、別体に形成されてもよい。同様に、定着制御回路(定着制御部)150、151、152、153も、加熱部材361、461、561、661、761、861と一体に形成されてもよいし、別体に形成されてもよい。同様に、電圧調整部461hも、加熱部材461と一体に形成されてもよいし、別体に形成されてもよい。
【0131】
上述の第2の実施形態では、電圧調整部461hによって、電極対に対する印加電圧が変更できる例で説明した。しかし、印加電圧を変更しなくても良好な印刷が行える場合には、電圧調整部461hが削除された構成が用いられてもよい。
上述の第1、第3~6の実施形態では、定着装置が電圧調整部461hを持たない場合の例で説明した。しかし、第1、第3~6の実施形態においても、第2の実施形態と同様に、電圧調整部461h、定着制御回路151を持つことで、印加電圧を変更できる構成が用いられてもよい。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0133】
10、40、60、70、80…画像形成装置,36、46、56、66,76,86…定着装置,50、51、52、53…制御系,140…画像形成制御回路,150、151、152、153…定着制御回路(定着制御部),150a…定着電源,361e、S1、S2L、S2R、S3L、S3R、S2、S3、S4…スイッチ,361f、361g…配線,361、461、561、661、761、861…加熱部材(ヒータ),361a…基材,361b、E1L、E1R、E2L、E2R、E3L、E3R、E1、E2…電極,E0…電極(中央電極),E1…電極(第1の端部電極)、E2…(第2の端部電極)、361c、461c、861c…発熱抵抗体,361d…表面保護層,362…温度検知部材,363…定着ベルト,366…プレスローラ,461h、V1、V2L、V2R、V3L、V3R…電圧調整部,563…加熱フィルム,100…CPU,P…シート,R01L、R01R、R12L、R12R、R23L、R23R、R12、R23、R34…発熱領域,T1…端子(第1の端子),T2…端子(第2の端子)
図1
図2
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