(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】薬物送達システムおよび薬物送達システムを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20221018BHJP
A61M 5/172 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61M5/168 516
A61M5/172 500
(21)【出願番号】P 2021209394
(22)【出願日】2021-12-23
(62)【分割の表示】P 2020530636の分割
【原出願日】2018-12-06
【審査請求日】2021-12-23
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【氏名又は名称】鳥居 健一
(72)【発明者】
【氏名】クーン-ウルリヒ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】リヒト,アレクサンダー
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0221965(US,A1)
【文献】特表2012-522583(JP,A)
【文献】特表2013-514834(JP,A)
【文献】特表2016-517601(JP,A)
【文献】特表2016-512144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
A61M 5/172
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬物送達システム(100)であって、
投与される薬物を含むリザーバ(101)と、
前記薬物の注射または注入に適合された薬物適用装置(103)と、
前記リザーバ(101)から前記薬物適用装置(103)への前記薬物の流れを生成するように構成されたポンプ装置(102)と、
前記薬物の流れに対する抵抗を示す圧力信号を測定するように構成された圧力センサ(105)と、前記圧力センサ(105)に機能的に接続された処理装置(106)とを備える制御システム(104)とを備え、
前記制御システム(104)が、
一連の連続した日において、前記薬物が投与されている間、前記薬物の流れに対する組織抵抗を示す圧力信号を前記圧力センサ(105)によって検出し、
前記圧力信号から組織抵抗値を決定し、
前記組織抵抗値を基準組織抵抗値と比較するように構成され、
前記制御システム(104)が、
一連の組織抵抗値が毎日上昇した後に組織抵抗値が低下し且つ測定された組織抵抗値が前記基準組織抵抗値を下回る場合に、漏れを検出するようにさらに構成され、前記基準組織抵抗値は、前日の組織抵抗値から許容組織抵抗値を差し引くことにより日々計算される、薬物送達システム。
【請求項2】
前記制御システム(104)が、さらに、前記薬物送達システム(100)における現在の使用情報を提供するように構成され、前記現在の使用情報が、薬物適用装置(103)の現在の使用期間を示す、請求項1に記載のシステム(100)。
【請求項3】
前記制御システム(104)が、さらに、前記測定された組織抵抗値が前記基準組織抵抗値を上回る場合、使用情報について表示データを生成し、前記表示データを前記薬物送達システム(100)の出力装置(107)に提供するように構成される、請求項1または2に記載のシステム(100)。
【請求項4】
前記制御システム(104)が、さらに、
グルコースレベル試験イベントについて試験リマインダをスケジューリングすることであって、前記グルコースレベル試験イベントが試験イベント時間にスケジューリングされる、スケジューリングすることと、
前記試験リマインダを示す表示データを生成することと、
前記試験イベント時間に前記薬物送達システム(100)の前記出力装置(107)に表示データを提供することと
を含む表示データの生成を行うように構成される、請求項1または2に記載のシステム(100)。
【請求項5】
前記制御システム(104)が、さらに、
前記薬物送達システム(100)における前記薬物適用装置(103)の第1の基準使用期間を示す基準使用情報を提供し、
前記現在の使用期間を前記薬物適用装置(103)の前記第1の基準使用期間と比較し、
前記現在の使用期間が前記第1の基準使用期間よりも短い場合、前記試験リマインダをスケジューリングするように構成されている、請求項4に記載のシステム(100)。
【請求項6】
前記制御システム(104)が、さらに、
前記測定された圧力信号が前記基準値を超えていることを示す第1のユーザ情報表示データを生成し、
前記薬物送達システム(100)の出力装置(107)に前記第1のユーザ情報表示データを提供するように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項7】
前記制御システム(104)が、さらに、
患者の測定されたグルコースレベルを示すグルコースレベルデータを提供し、
前記患者のグルコース基準レベルを示すグルコースレベル基準データを提供し、
前記グルコースレベルデータを前記グルコースレベル基準データと比較し、
前記測定されたグルコースレベルが前記グルコース基準レベルを超える場合、ユーザ警告信号を示す第2のユーザ情報表示データを生成し、
前記薬物送達システム(100)の出力装置(107)に前記第2のユーザ情報表示データを提供するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項8】
前記制御システム(104)が、さらに、
前記薬物送達システム(100)における前記薬物適用装置(103)の第2の基準使用期間を示す基準使用情報を提供し、
前記現在の使用期間を前記薬物適用装置(103)の前記第2の基準使用期間と比較し、
前記現在の使用期間が前記第2の基準使用期間以上である場合、前記第1のユーザ情報表示データおよび前記第2のユーザ情報表示データのうちの少なくとも1つを生成するように構成されている、請求項6または7および請求項2のうちいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項9】
前記制御システム(104)が、連続的なグルコースモニタリングおよび非連続的なグルコースモニタリングのうちの少なくとも一方によって測定された前記患者のグルコースレベルを示すグルコースレベルデータを提供するように構成されている、請求項7または請求項7に従属するのであれば請求項8に記載のシステム(100)。
【請求項10】
少なくとも前記リザーバ(101)、前記薬物適用装置(103)、および前記ポンプ装置(102)が、ペンおよび注入ポンプシステムのうちの1つを備えている、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム(100)。
【請求項11】
薬物送達システム(100)を提供する方法であって、
送達される薬物の流れに対する抵抗を示す圧力信号を測定するように構成された圧力センサ(105)と、前記圧力センサに機能的に接続された処理装置(106)とを備える制御システム(104)を有する薬物送達システム(100)を提供するステップを含み、
前記制御システム(104)は、
一連の連続した日において、前記圧力センサ(105)によって前記薬物の流れに対する前記抵抗を示す圧力信号を検出し、
前記圧力信号から組織抵抗値を決定し、
前記組織抵抗値を基準組織抵抗値と比較し、
一連の組織抵抗値が毎日上昇した後に組織抵抗値が低下し且つ測定された組織抵抗値が前記基準組織抵抗値を下回る場合に、前記薬物送達システム(100)における漏れを検出し、前記基準組織抵抗値は、前日の組織抵抗値から許容組織抵抗値を差し引くことにより日々計算される
ように構成される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬物送達システムおよび薬物送達システムを動作させる方法に言及する。
【背景技術】
【0002】
薬物を人に投与するために、薬物送達システムが提供されることができる。例えば、血糖値を正常範囲内に保つために、糖尿病患者にインスリンを投与することは周知である。インスリンは、単回注射またはインスリンポンプを介して投与されることができる。インスリンを正しく投与することにより、血糖値を迅速に且つ効果的に下げることができる。血糖値の上昇(高血糖)が治療されない場合、急性および慢性の合併症が生じる可能性がある。したがって、糖尿病患者に十分な量のインスリンを投与し、潜在的な不足をできるだけ早く判定することが不可欠である。あるいは、グルカゴンを投与して血糖値を上昇させることができる。
【0003】
患者の身体に薬物を投与するとき、インスリンなどの薬物を含む流体の流れに対する組織抵抗に起因して、薬物の投与に使用される送達システム内の圧力が上昇する可能性がある。結果として生じる圧力は、組織抵抗圧力(TRP)と呼ばれることがある。
【0004】
米国特許出願公開第2014/0221965号明細書は、所定量の物質を生物に投与する構成を開示している。その構成は、組織への投与時に物質を含む流体の流れに対する組織抵抗を示す情報を提供するように適合された部材と、物質の意図された吸収率を達成するためなどの情報に基づいて流体の投与特性を調整するように適合されたコントローラとを含む。
【0005】
米国特許第6,656,148号明細書は、ピストン式注入ポンプおよび閉塞検出方法に関する。注入ポンプは、シリンジプランジャの位置を追跡するセンサを含む、患者に薬物を注入するために駆動機構を制御する処理回路を含み、それにより患者に分配される薬物の量を測定する。処理回路はまた、注入経路に沿った閉塞の存在を示す信号を提供する力センサを含む。駆動機構の動作は、患者への薬物の送達を引き起こす。力センサは、薬物の送達を開始する前に送りネジにかかる力を検知するために使用される。
【0006】
米国特許出願公開第2010/0262078号明細書は、注入セットチューブに沿った気泡の少なくとも1つの位置および長さを入力することを含む、注入セットチューブ内の空気に基づいてインスリン注入量を調整するシステムおよび方法に関する。気泡量は、注入セットチューブにおいて判定される。インスリン注入量は、所望のインスリン注入に基づいて判定される。次に、入力された気泡の位置および長さに基づいて、所望のインスリン注入が気泡量を含むかどうかの判定が行われる。インスリン注入量が気泡を含む場合、インスリン注入量に気泡量が追加されて、調整されたインスリン注入量を構成する。
【0007】
米国特許出願公開第2017/0232204号明細書は、薬物送達のための改善されたシステムおよび方法に言及しており、特に、改善されたインスリンペン針および関連装置が提供される。スマート注入装置は、薬物レベル、送達される投与量、投与量の確認、および投与日時を含むデータを記録して転送する。捕捉された追加のデータは、グルコース濃度、インスリンレベル、摂取した炭水化物、ストレスレベル、運動、血圧、およびグルコースの高低の変動イベントを含むことができる。データ収集および分析の様々な手段が提供され、システムは、介入を必要とする患者を識別してフラグを立てることができる。スマートスリーブおよび標準インスリンペンに検知機能を追加する。ペン針は、インスリンペンによって送達された投与量を確認および測定するための検知機能を備えている。2つの部分からなるペンキャップは、インスリンペンに接続するプライマリスリーブと、投与量の送達時間を捕捉してプランジャ移動後の投与量送達の保持時間をモニタリングするエンドキャップとを含む。
【0008】
米国特許出願公開第2014/0378943号明細書は、薬物注入および薬物容器を保管する方法および装置を開示している。方法および装置は、携帯型注入システムおよび投与ユニットを含むことができる。投与ユニットは、外部の液体薬物容器に取り付けるための入口ポート、出口ポート、ポンプカーネル、および制御弁を有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許出願公開第2014/0221965号明細書
【文献】米国特許第6,656,148号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0262078号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0232204号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/0378943号明細書
【発明の概要】
【0010】
本開示の目的は、エラー状態の検出を含む向上した動作の安全性および機能性を提供する、薬物送達システムおよび動作方法を提供することである。
この問題を解決するために、独立請求項1に記載の薬物送達システムが提案される。さらに、独立請求項10に記載の薬物送達システムを動作させる方法が提供される。さらなる実施形態は、従属請求項の主題である。
【0011】
以下の態様は、単独で、または他の態様と組み合わせて、そのような実施形態のために構成されたシステムを有することによって、例えば、それに応じて構成された制御システムを有することによって、薬物送達システム、および薬物送達システムを動作させる方法のうちの少なくとも1つに適用されることができる。
【0012】
送達される薬物は、インスリンおよび/またはグルカゴンとすることができる。例えば、薬物送達システムは、インスリン注入システムとすることができる。薬物送達システムは、皮下および/または腹腔内薬物投与に適合させることができる。あるいは、薬物送達システムは、他の薬物投与方法、例えば静脈内薬物投与に適合させることができる。薬物送達システムのユーザは、糖尿病治療のために薬物送達システムを使用している患者、および/または例えば糖尿病管理によって患者を支援することによって糖尿病患者を治療する医療専門家とすることができる。あるいは、異なる薬物が送達されることができ、ユーザは、糖尿病以外の疾患の治療のために薬物送達システムを使用する患者および/または医療専門家とすることができる。
【0013】
薬物の流れに対する抵抗は、薬物の流れに対する組織抵抗とすることができる。あるいは、薬物の流れに対する抵抗は、組織抵抗ではなくてもよい。例えば、漏れが発生すると、薬物は、組織抵抗に遭遇することなくシステムを離れることがある。そのような場合、薬物の流れに対する抵抗は、漏れ抵抗と呼ばれることがある。さらなる代替として、薬物の流れに対する抵抗は、組織抵抗および漏れ抵抗の組み合わせなど、異なる種類の抵抗の組み合わせであってもよい。
【0014】
現在の使用情報は、薬物送達システムにおいて提供されてもよく、現在の使用情報は、薬物適用装置の現在の使用期間を示す。薬物適用装置は、薬物適用装置を介して投与される、投与されるべき薬物を含むリザーバに接続されることができる。薬物適用装置は、カニューレまたは中空針を含むことができる。所定の寿命が薬物適用装置に提供されること
ができる。例えば、所定の寿命は、血液への薬物の無効な輸送の確率、例えば皮下組織などの投与部位における薬物の無効な吸収、および/またはカニューレまたは中空針の閉塞の確率がその後に所望の最大値を超えて上昇する使用時間に基づいて提供されてもよい。
【0015】
表示データの生成は、グルコースレベル試験イベントについて試験リマインダをスケジューリングすることであって、グルコースレベル試験イベントが試験イベント時間にスケジューリングされる、スケジューリングすることと、試験リマインダを示す表示データを生成することと、試験イベント時間に薬物送達システムの出力装置に表示データを提供することとを備えることができる。例えば、薬物送達システムのユーザは、試験リマインダを示す表示データによって、グルコースレベル測定を実行するようにディスプレイを介して促されることができる。
【0016】
試験イベント時間は、測定された圧力信号の値および/または測定された圧力信号と基準値との間の差に応じた所定の試験イベント時間とすることができる。試験イベント時間は、測定された圧力信号の値および/または測定された間の差に応じて、例えば制御システムに提供されることができる複数の所定の試験イベント時間から選択されてもよい。
【0017】
以下が提供されてもよい:薬物送達システムにおける薬物適用装置の第1の基準使用期間を示す基準使用情報を提供すること、現在の使用期間を薬物適用装置の第1の基準使用期間と比較すること、および、現在の使用期間が第1の基準使用期間よりも短い場合、試験リマインダをスケジューリングすること。例えば、第1の基準期間は、薬物適用装置の所定の寿命に基づくことができる。実施形態では、第1の基準期間は、薬物適用装置の所定の寿命に等しくすることができる。代替の実施形態では、第1の基準期間は、薬物適用装置の所定の寿命からのオフセットによって定義されてもよい。例えば、第1の基準期間は、薬物適用装置の所定の寿命よりもオフセットだけ短くすることができる。
【0018】
表示データを生成することは、基準値を超える測定された圧力信号を示す第1のユーザ情報表示データを生成することと、第1のユーザ情報表示データを薬物送達システムの出力装置に提供することとを備えることができる。例えば、第1のユーザ情報表示データに基づいて、警告信号が出力装置を介してユーザに提供されることができる。警告信号は、例えば、ディスプレイ上のシンボルまたは点滅ライトなどの視覚的警告信号、音響警告信号および/または振動警告信号とすることができる。追加的にまたは代替的に、第1のユーザ情報表示データは、測定された圧力信号、基準値、および/または測定された圧力信号と基準値との間の差を含むことができる。
【0019】
本方法は、患者の測定されたグルコースレベルを示すグルコースレベルデータを提供することと、患者のグルコース基準レベルを示すグルコースレベル基準データを提供することと、グルコースレベルデータをグルコースレベル基準データと比較することと、測定されたグルコースレベルがグルコース基準レベルを超える場合、ユーザ警告信号を示す第2のユーザ情報表示データを生成することと、薬物送達システムの出力装置に第2のユーザ情報表示データを提供することとを備えることができる。あるいは、測定されたグルコースレベルがグルコース基準レベルを下回る場合、第2のユーザ情報表示データが生成されてもよい。第2のユーザ情報表示データに基づいて、ユーザに薬物適用装置を確認および/または交換するように促す警告が表示されることができる。例えば、薬物適用装置が正しく配置されているかどうかを確認するようにユーザに促すことができる。これは、例えば、カニューレまたは中空針が皮下に正しく配置されているかどうかを確認することを備えることができる。代替的にまたは追加的に、薬物適用装置を異なる場所に配置するようにユーザに促してもよい。
【0020】
例えば、投与される薬物がインスリンである例では、測定されたグルコースレベルがグ
ルコース基準レベルを上回り、患者のグルコース基準レベルが、インスリンが正しく投与されているかどうか、および/またはインスリンが望ましい効果を発揮しているかどうかを示すことができる場合、第2のユーザ情報表示データが生成される。例えば、グルコース基準レベルは、インスリンを投与する前に測定された患者のグルコースレベルからグルコースレベルの最小の所望の変化を差し引くことによって計算されることができる。グルコースレベルの最小の所望の変化は、例えば、投与されるべきインスリンの量に基づいて決定されることができる。
【0021】
投与される薬物がグルカゴンである他の実施形態では、測定されたグルコースレベルがグルコース基準レベルを下回り、患者のグルコース基準レベルが、グルカゴンが正しく投与されているかどうか、および/またはグルカゴンが望ましい効果を発揮しているかどうかを示すことができる場合、第2のユーザ情報表示データが生成される。例えば、グルコース基準レベルは、グルカゴンを投与する前に測定された患者のグルコースレベルにグルコースレベルの最小の所望の変化を加えることによって計算されることができる。グルコースレベルの最小の所望の変化は、例えば、投与されるべきグルカゴンの量に基づいて決定されることができる。
【0022】
他の実施形態では、グルコース以外のパラメータの測定レベルを示すパラメータレベルデータが提供されることができ、パラメータレベルは、投与されたまたは投与される予定の薬物の必要性および/または有効性を示す。パラメータレベルデータは、パラメータレベル基準データと比較されることができ、測定されたパラメータレベルがパラメータ基準レベルを上回るまたは下回る場合、第2のユーザ情報表示データが生成されることができる。
【0023】
以下が提供されてもよい:薬物送達システムにおける薬物適用装置の第2の基準使用期間を示す基準使用情報を提供すること、現在の使用期間を薬物適用装置の第2の基準使用期間と比較すること、および、現在の使用期間が第2の基準使用期間以上である場合、第1のユーザ情報表示データおよび第2のユーザ情報表示データのうちの少なくとも一方を生成すること。
【0024】
例えば、第2の基準期間は、薬物適用装置の所定の寿命に基づくことができる。実施形態では、第2の基準期間は、薬物適用装置の所定の寿命に等しくすることができる。代替の実施形態では、第2の基準期間は、薬物適用装置の所定の寿命からのオフセットによって定義されてもよい。例えば、第2の基準期間は、薬物適用装置の所定の寿命よりもオフセットだけ短くすることができる。異なる実施形態では、第2の基準期間は、薬物適用装置の所定の寿命よりもオフセットだけ長くてもよい。第2の基準期間は、第1の基準期間と同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
さらに、薬物適用装置の第3の基準使用期間を示す基準使用情報が、薬物送達システムに提供されることができる。現在の期間は、薬物適用装置の第2の基準使用期間および薬物適用装置の第3の基準使用期間と比較されることができる。現在の期間が第2の基準期間以上である場合、第1のユーザ情報表示データが生成されてもよく、現在の期間が第3の基準期間以上である場合、第2のユーザ情報表示データが生成されてもよい。第3の基準期間は、第1の基準期間および/または第2の基準期間と等しくてもよい。
【0026】
第1の基準期間、第2の基準期間および/または第3の基準期間は、測定された圧力信号が基準値を超える原因の可能性を示すことができる。ユーザ情報の表示データを生成および提供することは、測定された圧力信号が基準値を超える可能性のある原因に関する表示データを生成および提供することを備えることができる。
【0027】
グルコースレベルデータを提供することは、連続的なグルコースモニタリングおよび非連続的なグルコースモニタリングのうちの少なくとも一方によって測定された患者のグルコースレベルを示すグルコースレベルデータを提供することを備えることができる。グルコースレベルデータは、例えば、薬物送達システムに設けられたキーパッドを介するなどの薬物送達システムにおける直接入力によって、または有線および/または無線接続を介した薬物送達システムへのデータ転送によって、ユーザによって手動で提供されることができる。代替的にまたは追加的に、グルコースレベルデータは、例えば、グルコースモニタリング装置から薬物送達システムへの連続的なモニタリングデータおよび非連続なモニタリングデータのうちの少なくとも一方のデータ転送のために提供される有線接続および無線接続のうちの少なくとも一方を介して、少なくとも部分的に自動的に提供されてもよい。
【0028】
連続的なモニタリングデータは、連続的なグルコースモニタリング(CGM)のための完全にまたは部分的に埋め込まれたセンサであるセンサによって提供されることができる。一般に、CGMの文脈では、血液中のグルコース値またはレベルを示す検体値またはレベルが判定されることができる。検体値は、間質液中で測定されることができる。測定は、皮下または生体内で行うことができる。CGMは、ユーザの介入なしに検体値を頻繁にまたは自動的に提供/更新するほぼリアルタイムまたは準連続的なモニタリング手順として実装されることができる。代替の実施形態では、検体は、眼の流体を介したコンタクトレンズ内のバイオセンサによって、または皮膚内の経皮測定を介した皮膚上のバイオセンサによって測定されることができる。CGMセンサは、数日から数週間は適所にとどまることができ、その後に交換される必要がある。
【0029】
提供することは、注入ペンおよび注入ポンプのうちの少なくとも一方を有する薬物送達システムを提供することを備えることができる。
1つ以上の圧力信号が検出されることができる。例えば、圧力センサは、薬物が投与されている間の異なる時間にいくつかの圧力信号を検出することができる。代替的にまたは追加的に、例えば、異なる場所に複数の圧力センサが設けられてもよく、各圧力センサは、1つ以上の圧力信号を検出する。複数の圧力信号が検出される実施形態では、基準値と比較される測定された圧力信号は、例えば平均値を計算することにより、検出された圧力信号を組み合わせることによって判定されることができる。
【0030】
処理装置は、信号および/またはデータ処理に適合されることができる。処理装置は、ソフトウェア構成によるおよび/またはハードウェア構成による、信号および/またはデータ処理に適合されることができる。例えば、処理装置は、測定された圧力信号を基準値と比較するために圧力センサによって提供される生の測定データを処理するように適合されることができる。代替的にまたは追加的に、処理装置は、表示データを生成するように適合されてもよい。処理装置は、1つの処理ユニットを備えることができる。あるいは、処理装置は、複数の処理ユニットを備えてもよい。処理ユニットは、例えば、無線および/または有線接続を介したデータおよび/または信号送信のために機能的に接続されることができる。処理ユニットは、単一の統合処理装置を形成することができる。あるいは、処理装置は、少なくとも1つのさらなる処理ユニットとは別個に設けられる少なくとも1つの処理ユニットを備えてもよい。
【0031】
薬物送達システムの構成要素は、具体的に単方向または双方向のデータおよび/または信号伝送のために、機能的に接続されることができる。例えば、圧力センサは、測定データおよびステータス情報を圧力センサから処理装置に送信し、制御信号を処理装置から圧力センサに送信するために処理装置に接続されることができる。代替的にまたは追加的に、処理装置は、ステータス情報を示すステータスデータをポンプ装置から処理装置に送信し、制御信号を処理装置からポンプ装置に送信するために、ポンプ装置に接続されてもよい。薬物送達システムは、具体的に単方向または双方向のデータおよび/または信号伝送のために、他の装置に機能的に接続されることができる。薬物送達システムは、例えば糖尿病管理装置を介して、血中グルコースモニタリングシステムに接続されることができる。薬物送達システムは、無線接続および有線接続のうちの少なくとも一方を介して他の装置に機能的に接続されることができる。
【0032】
出力装置は、表示データが表示されることができるディスプレイを備えることができる。代替的にまたは追加的に、出力装置は、データ送信用のインターフェースを備えてもよい。データ送信用のインターフェースは、他の装置への無線接続および有線接続のうちの少なくとも一方に適合されることができる。表示データは、出力装置から他の装置に送信されてもよい。他の装置は、表示データが表示されることができるディスプレイを備えることができる。例えば、他の装置は、ユーザのモバイル糖尿病管理システムとすることができる。
【0033】
表示データは、視覚表示データの代替または追加として、例えばオーディオデータなどの他の種類のシグナリングデータを含むことができる。ディスプレイは、視覚的表示のための手段の代替または追加として、スピーカおよび/または振動手段などのシグナリングのための他の手段を備えてもよい。
【0034】
基準値は、薬物送達システムにおける漏れの検出のためと、ユーザ情報の表示データの生成および薬物送達システムの出力装置への表示データの提供のためとでは異なることができる。あるいは、基準値は、漏れを検出するためと、表示データを生成および提供するためとで同じであってもよい。代替的にまたは追加的に、測定された圧力信号は、複数の基準値と比較されることができ、制御システムは、測定された圧力信号が第1の基準値を下回る場合に薬物送達システムの漏れを検出し、測定された圧力信号が第2の基準値を上回る場合にユーザ情報の表示データを生成して薬物送達システムの出力装置に表示データを提供するように適合されることができる。
【0035】
基準値は、少なくとも1つの全身値と少なくとも1つの生理学的値との組み合わせに基づいて判定されることができ、全身値は、薬物送達システムの少なくとも1つのパラメータを示し、生理学的値は、薬物が投与される患者の少なくとも1つの個々の生理学的パラメータを示す。さらに、基準値は、例えば、投与される薬物の量(例えば、ボーラスサイズ)および/または投与速度、すなわち、投与される薬物の時間あたりの量などの手順値など、さらなる値に基づいて提供されることができる。
【0036】
基準値が基づくことができる例示的な全身値は、リザーバのサイズ、リザーバの形状、および適用装置の長さおよび/または直径を含む。例えば、全身値は、1U(国際単位)の薬物(例えば、インスリン)ボーラスについて2kPaおよび0.2U/秒の投与速度において25Uのボーラスについて2.4kPaの薬物送達システムの正常動作を示す圧力を示すことができる。基準値が基づくことができる例示的な生理学的値は、薬物が投与される患者の個々の基準吸収と比較して、薬物吸収が特定の割合だけ減少する圧力値である。
【0037】
基準値は、少なくとも部分的に、実験結果に基づいて判定されることができる。
薬物送達システムにおける漏れの検出は、検出された漏れを示す漏れ表示データを生成することと、漏れ表示データを薬物送達システムの出力装置に提供することとを備えることができる。
【0038】
圧力センサおよび処理装置は、1つの統合されたコンポーネントとして提供されることができる。代替として、圧力センサおよび処理装置は、別個に提供されてもよい。
薬物送達システムに関して、上述した実施形態は、準用することができる。
【0039】
薬物送達システムにおいて、少なくともリザーバ、薬物適用装置、およびポンプ装置は、ペンおよび注入ポンプシステムのうちの1つを備えることができる。
他の例では、薬物送達システムを動作させる方法が提供される。本方法は、送達される薬物の流れに対する抵抗を示す圧力信号を測定するように適合された圧力センサと、圧力センサに機能的に接続された処理装置とを備える制御システムを有する薬物送達システムを提供することと、薬物が投与されている間、薬物の流れに対する抵抗を示す圧力信号を圧力センサによって検出することと、測定された圧力信号を基準値と比較することとを含む。制御システムは、測定された圧力信号が基準値を下回る場合に、薬物送達システムにおける漏れを検出すること、測定された圧力信号が基準値を上回る場合に、ユーザ情報の表示データを生成すること、および薬物送達システムの出力装置に表示データを提供することのうちの少なくとも一方に適合される。
【0040】
他の例によれば、薬物送達システムが提供される。薬物送達システムは、投与される薬物を含むリザーバと、薬物の注射または注入に適合された薬物適用装置と、リザーバから薬物適用装置への薬物の流れを生成するように適合されたポンプ装置と、薬物の流れに対する抵抗を示す圧力信号を測定するように適合された圧力センサおよび圧力センサに機能的に接続された処理装置を備える制御システムとを備える。制御システムは、圧力センサによって、薬物が投与されている間、薬物の流れに対する抵抗を示す圧力信号を検出し、測定された圧力信号を基準値と比較し、測定された圧力信号が基準値を下回る場合に、薬物送達システムにおける漏れを検出することと、測定された圧力信号が基準値を上回る場合に、ユーザ情報の表示データを生成することおよび薬物送達システムの出力装置に表示データを提供することとのうちの少なくとも一方を実行するように構成されている。
【0041】
さらなる例によれば、投与される薬物を含むリザーバと、薬物の注射または注入に適合された薬物適用装置と、リザーバから薬物適用装置への薬物の流れを生成するように適合されたポンプ装置と、薬物の流れに対する抵抗を示す圧力信号を測定するように適合された圧力センサおよび圧力センサに機能的に接続された処理装置を備える制御システムとを備える、薬物送達システムが提供される。制御システムは、圧力センサによって、薬物が投与されている間、薬物の流れに対する組織抵抗を示す圧力信号を検出し、圧力信号から組織抵抗値を判定し、組織抵抗値を基準組織抵抗値と比較し、測定された組織抵抗値が基準組織抵抗値を下回る場合に漏れを検出するように構成されている。
【0042】
他の例では、薬物送達システムを動作させる方法が提供され、本方法は、送達される薬物の流れに対する抵抗を示す圧力信号を測定するように適合された圧力センサおよび圧力センサに機能的に接続された処理装置を備える制御システムを有する薬物送達システムを提供することとと、圧力センサによって薬物の流れに対する抵抗を示す圧力信号を検出することと、圧力信号から組織抵抗値を判定することと、組織抵抗値を基準組織抵抗値と比較することと、測定された組織抵抗値が基準組織抵抗値を下回る場合に薬物送達システムにおける漏れを検出することとを備える。
【0043】
上記で開示された薬物送達システムおよび薬物送達システムを動作させる方法のうちの少なくとも一方について、上記で開示された構成または実施形態は、準用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
以下、図を参照してさらなる実施形態を説明する。図では、以下を示す:
【
図2】糖尿病管理装置に接続された薬物送達システムの概略図。
【
図3】薬物送達システムを動作させる方法のステップのフロー図。
【
図4】異なる日におけるインスリン投与中の組織抵抗圧力(TRP)の図。
【
図5】連続する2日間における同じ患者への一連のインスリンのボーラス投与中のTRPの図。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、患者に投与される薬物を含むリザーバ101、ポンプ装置102および薬物適用装置103を備える薬物送達システム100の概略図を示している。示されている実施形態では、薬物送達システム100は、インスリンを含むリザーバ101と、インスリン適用装置である薬物適用装置103とを有するインスリン注入システムである。代替の実施形態では、薬物送達システム100は、インスリン以外の薬物、例えばグルカゴンを送達するように適合されてもよい。
【0046】
ポンプ装置102は、ポンプ装置102によって加えられるポンプ圧力がリザーバ101からのインスリンの流れを生成するように、リザーバ101に機能的に接続される。ポンプ装置102は、ポンプと、ポンプの機能を制御するためのポンプ制御装置とを備えることができる。あるいは、ポンプ装置102は、ポンプを備えるが、ポンプ制御装置を備えなくてもよい。この場合、ポンプは、ポンプ装置102の外部のポンプ制御装置によって制御されることができる。ポンプは、2つ以上のポンプ制御装置によって制御されてもよく、ポンプ制御装置は、ポンプ装置102内に、ポンプ装置102の外部に、またはそれらの組み合わせで提供される。
【0047】
リザーバ101は、ポンプ装置102によって生成されたリザーバ101からのインスリンの流れがインスリン適用装置103を介してインスリン注入システム100から出るように、インスリン適用装置103に機能的に接続される。示される実施形態では、インスリン適用装置103は、カニューレを備える。カニューレは、インスリン適用装置103を介してインスリン注入システム100から出るインスリンが患者の皮下に投与されるように、患者の身体内に皮下挿入されることができる。ポンプ装置102のポンプは、例えば、投与されるインスリンの量、皮下組織に加えられる圧力、および/またはインスリンの流量に関して、患者へのインスリンの所望の投与特性を達成するように制御されることができる。
【0048】
インスリン注入装置100は、さらに、制御システム104を備える。制御システム104は、圧力センサ105と、圧力センサ105に機能的に接続された処理装置106とを備える。圧力センサ105は、リザーバ101内の圧力信号を検出するように構成され、圧力信号は、インスリンが投与されている間のインスリンの流れに対する組織抵抗を示すTRP信号である。漏れが発生した場合、TRP信号は、インスリンの流れに対する組織抵抗と、インスリンの流れに対する漏れ抵抗との組み合わせを示すことができ、または、漏れが、インスリンが組織に投与されないようなものである場合、TRP信号は、インスリンのみの流れに対する漏れ抵抗を示すことができる。異なる実施形態では、圧力センサ105は、インスリン適用装置103におけるTRP信号を検出するように構成されている。あるいは、制御システム104は、2つ以上の圧力センサ105を備えてもよく、圧力センサ105は、リザーバ101における異なる場所、インスリン適用装置103、および/またはインスリン注入システム100におけるさらなる場所においてTRP信号を検出するように構成されている。例えば、第1の圧力センサ105は、ポンプ装置102に近接するリザーバ101内のTRP信号を検出するように構成されることができ、第2の圧力センサ105は、インスリン適用装置103に近接するリザーバ101内のTRP信号を検出するように構成されることができる。
【0049】
処理装置106は、圧力センサ105からTRP信号を受信し、
図3を参照して以下に
より詳細に説明される制御動作を実行するように構成されている。処理装置106は、さらに、排他的にまたは他のポンプ制御装置に加えて、ポンプ装置102におけるポンプを制御するためにポンプ制御装置の機能を実行するように構成されることができる。
【0050】
インスリン注入システム100は、さらに、処理装置106に機能的に接続された出力装置107を備える。処理装置106は、表示データを生成し、表示データを出力装置107に提供するように構成されている。示される実施形態では、出力装置は、グラフィックディスプレイ(図示せず)を備える。代替的にまたは追加的に、出力装置107は、例えば、スピーカおよび/または振動手段などの信号を出力する他の手段を備えてもよい。
【0051】
さらなる代替としてまたは追加的に、出力装置107は、糖尿病管理装置または連続的グルコースモニタリングシステムなどの外部装置108との無線接続および有線接続のうちの少なくとも一方を介したデータ送信のためのインターフェースを備えてもよい。出力装置は、外部装置108との単方向または双方向のデータ送信のために構成されることができる。
図2は、示される実施形態では糖尿病管理装置である外部装置108に無線で接続されたインスリン注入システム100の概略図を示している。
【0052】
図1および
図2に示される実施形態では、インスリン注入システム100は、注入ポンプシステムを備えている。代替の実施形態では、インスリン注入システム100は、注入ペンを備えている。
【0053】
図3は、インスリン注入システム100を動作させる方法のステップのフロー図を示している。ステップ300において、インスリン適用装置103を介してリザーバ101から注入されるインスリンの流れは、ポンプ装置102によって生成される。インスリンが投与されている間、ステップ301において、インスリンの流れに対する抵抗を示す圧力信号が圧力センサ105によって検出され、TRP信号とも呼ばれることができる圧力信号は、制御装置104における処理装置106に送信される。さらに、インスリン適用装置103の現在の使用期間、すなわち、インスリン適用装置103が使用されていた期間を示す現在の使用情報が、処理装置106に提供されることができる。続いて、ステップ302において、TRP信号は、処理装置106において提供される基準値と比較される。
【0054】
TRP信号が基準値を下回る場合、ステップ303において漏れが検出される。示される実施形態では、漏れ表示データが処理装置106によって生成され、出力装置107に提供され、その結果、漏れ警告が出力装置107のディスプレイに表示される。代替的にまたは追加的に、漏れ表示データは、出力装置107によって糖尿病管理システムなどの外部装置108に送信されてもよく、外部装置108が漏れ警告を表示してもよい。
【0055】
TRP信号が基準値を超える場合、ステップ304において表示データが処理装置106によって生成され、表示データは、出力装置107に提供される。実施形態では、処理装置による表示データの生成および提供は、ステップ305を備える。ステップ305において、グルコースレベル試験イベントが処理装置106によって試験イベント時間にスケジューリングされる。さらに、グルコースレベル試験イベントの試験リマインダがスケジューリングされ、試験リマインダを示す表示データが処理装置106によって生成される。続いて、試験時間において、表示データは、処理装置106によって出力装置107に提供される。試験イベント時間は、測定されたTRP値、特に測定されたTRP値と基準値との差に依存することができる。例えば、試験イベント時間は、測定されたTRPと基準値との間の差に基づいて、複数の所定の時間間隔からTRP測定と試験イベント時間との間の時間間隔を選択することによって決定されることができる。
【0056】
実施形態では、インスリン適用装置103の第1の基準使用期間を示す基準使用情報が、処理装置106にさらに提供される。現在の期間は、第1の基準期間と比較され、現在の期間が第1の基準期間よりも短い場合にのみ試験リマインダがスケジューリングされる。
【0057】
他の実施形態では、処理装置による表示データの生成および提供は、ステップ305に加えてまたはその代替として、ステップ306を備えることができる。ステップ306では、第1のユーザ情報表示データが作成され、出力装置107に提供される。第1のユーザ情報表示データは、ステップ302において判定されたように、測定された圧力信号が基準値を超えていることを示す。例えば、出力装置107のディスプレイおよびインスリン注入システム100に接続された糖尿病管理システムのディスプレイのうちの少なくとも1つは、「最新のボーラスにおいてTRPが高い」という警告メッセージを示すことができる。
【0058】
さらなる実施形態では、ステップ305およびステップ306のうちの少なくとも一方に加えてまたはその代替として、処理装置による表示データの生成および提供は、ステップ307を備えることができる。ステップ307では、患者の測定されたグルコースレベルを示すグルコースレベルデータが提供される。患者のグルコースレベルは、単一の血中グルコース測定を実行することによって測定されることができる。代替的にまたは追加的に、患者のグルコースレベルを測定するために、連続的なグルコースモニタリングが使用されてもよい。グルコースレベルデータは、インスリン注入システム100のユーザによる測定されたグルコースレベルの手動入力によって提供されることができる。データ入力のために、インスリン注入システム100は、例えばキーパッドまたはタッチスクリーンなどの入力装置(図示せず)を備えることができる。代替的にまたは追加的に、グルコースレベルデータは、インスリン注入システム100にデータを自動的に転送することによって提供されてもよい。自動データ転送の場合、インスリン注入システム100は、有線または無線を介して、外部装置108、この場合には例えば連続的グルコースモニタリング装置に接続されることができる。
【0059】
さらに、ステップ307においてグルコースレベル基準データが提供される。グルコースレベル基準データは、患者のグルコースレベル基準を示す。グルコースレベル基準は、ステップ300において投与されたインスリン投与量、および、インスリンの投与と患者の血糖値の測定との間の経過時間を考慮に入れて、患者に望まれる最大グルコースレベルとすることができる。グルコースレベルデータは、グルコースレベル基準データと比較される。この比較に基づいて、測定された血中グルコースがグルコース基準レベルを超えると判定された場合、第2のユーザ情報表示データが生成され、インスリン注入システム100の出力装置107に提供される。第2のユーザ情報表示データは、ユーザ警告信号を示す。例えば、出力装置107のディスプレイおよびインスリン注入システム100に接続された糖尿病管理システムのディスプレイのうちの少なくとも1つは、「BGが高い」という警告メッセージを示すことができる。実施形態では、警告として、オーディオ信号が生成される。他の実施形態では、ユーザ警告信号は、インスリンを投与している間にTRPが高かったと判定された場合、インスリン適用装置103を確認および/または交換するように、および測定された血中グルコースがグルコース基準レベルを超えていることに基づいて、投与されたインスリンが望ましい効果を有していなかった旨をユーザに促す。
【0060】
代替の実施形態では、グルコースレベル基準は、望まれる最小グルコースレベルとすることができる。例えば、薬物送達システム100がグルカゴン送達システムである実施形態では、グルコースレベル基準は、ステップ300において投与されたグルカゴン投与量、および、グルカゴンの投与と患者の血糖値の測定との間の経過時間を考慮に入れて、患者に望まれる最小グルコースレベルとすることができる。測定された血中グルコースがグルコース基準レベルを下回ると判定された場合、第2のユーザ情報表示データが生成され、インスリン注入システム100の出力装置107に提供されることができる。
【0061】
インスリン注入システム100を動作させる方法の実施形態では、インスリン適用装置103の第2の基準使用期間を示す基準使用情報が、ステップ306における第1のユーザ情報表示データの生成およびステップ307における第2のユーザ情報表示データの生成のうちの少なくとも一方の前に実行されるさらなるステップ(図示せず)において提供される。現在の期間は、インスリン適用装置103の第2の基準使用期間と比較される。第1のユーザ情報表示データ、第2のユーザ情報表示データ、またはその双方は、現在の期間が第2の基準期間以上である場合に生成される。例えば、第2の基準期間は、インスリン適用装置103のそのような使用期間の後、上昇したTRPが患者によるインスリンの不十分な吸収と相関する可能性が高いようなものとすることができる。不十分なインスリン吸収は、患者の組織におけるインスリンの血液への輸送の減少およびカニューレの詰まりなど、複数の原因に起因することができる。
【0062】
さらなる実施形態では、現在の期間は、さらに、インスリン適用装置の第3の基準使用期間と比較されてもよい。そのような実施形態では、現在の期間が第2の基準期間以上である場合、第1のユーザ情報表示データが生成され、現在の期間が第3の基準期間以上である場合、第2のユーザ情報表示データが生成される。
【0063】
代替の実施形態では、TRP信号は、ステップ302において第1および第2の基準値と比較される。TRP信号が第1の基準値を下回る場合、ステップ303において漏れが検出される。TRP信号が第2の基準値を上回る場合、ステップ304において、表示データが処理装置106によって生成されて出力装置107に提供される。実施形態では、ステップ305、306および307のうちの任意のステップまたは組み合わせがその後に実行されてもよい。
【0064】
図4は、示される実施形態ではインスリン注入システムであり、連続する8日間におけるインスリン投与中に行われる、薬物送達システム100を動作させる方法の一実施形態にかかるTRP測定の例示的な結果を示している。
図4からわかるように、TRPは、1日目から7日目まで毎日上昇している。8日目には、7日目に比べてTRPの大幅な低下がみられる。一連のTRP値が毎日上昇した後のTRPのそのような低下は、インスリン注入システム100における漏れを示している可能性があり、通常の条件下では、TRPのさらなる上昇が8日目に予想される。この実施形態では、測定された圧力信号が基準値を下回るため、前日のTRP値から許容TRP値を差し引くことによって毎日計算された基準値に基づいて、
図4に示されるTRP測定の結果に基づいて漏れが検出される。
【0065】
図5は、示される実施形態ではインスリン注入システムである薬物送達システム100を動作させる方法のさらなる実施形態にかかるTRP測定の例示的な結果を示している。一連のボーラス注入が、一連の連続した日の各日に患者に投与される。
図5は、一連の日のうちの7日目のボーラス投与中に測定されたTRPを白抜き棒として示し、一連の日のうちの8日目のボーラス投与中に測定されたTRPを塗りつぶし棒として示している。8日目に測定されたTRP値は、7日目に測定された値よりも一般的に低いことがわかる。さらに、8日目の最後の測定では、直前に行われた測定と比較して、TRPの大幅な低下が観察されることができる。
図5に示される実施形態では、これらのTRP値は、その日の最後から2番目の測定と最後の測定との間のインスリン適用装置の完全な転置による8日目のインスリン適用装置103の緩みを示している。示される実施形態では、測定された圧力信号が前日の測定に基づいて決定された基準値を下回ると判定することによって漏れが検出される。
【0066】
図5に示される実施形態などの実施形態では、TRPは、送達イベントごとに送達されるインスリンの容量に依存することができる。したがって、TRP信号を基準値または他のTRP値と比較するときに、関連する送達容量が考慮されることができる。例として、特定の送達容量について複数の基準値が定義されることができ、または特定の送達容量について測定されたTRPが正規化され、標準的な送達容量の基準値と比較されることができる。基準値は、予め決定されて例えば薬物送達システム100および/または薬物適用装置103(すなわち、全体として送達システム)に基づくことができ、または所定の「ランタイム」、例えば患者が薬物送達システム100の使用を開始してから最初の0.5、1、2、3、4、5または6時間後、もしくは特定の患者における例えばペンを使用した所定の回数の注射後に確立されることができる。
【0067】
インスリン以外の薬物を送達するように適合された薬物送達システム100について、上述した実施形態は、準用することができる。