(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ワークを切断する方法および加工機ならびに所属のコンピュータプログラム製品
(51)【国際特許分類】
B23K 26/38 20140101AFI20221018BHJP
B23K 10/00 20060101ALI20221018BHJP
B23K 26/14 20140101ALI20221018BHJP
【FI】
B23K26/38 A
B23K10/00 501A
B23K26/14
(21)【出願番号】P 2021519632
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2019071849
(87)【国際公開番号】W WO2020074156
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】102018217200.5
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502300646
【氏名又は名称】トルンプフ ヴェルクツォイクマシーネン エス・エー プルス コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Werkzeugmaschinen SE + Co. KG
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Str. 2, 71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン オッケンフース
(72)【発明者】
【氏名】カール ルーカス ニーリム
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0200051(US,A1)
【文献】特開2015-100840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
B23K 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にプレート状のワーク(6)を、切断ビーム(5)と切断流体(7)とによって切断する方法であって、切り離すべきワークピース(10)を順次に少なくとも2つのより小さい部分片(11,12)に切断し、前記部分片は、各切り離し後に、周囲の残留ワーク(13)から下方に向かって落下する、または沈下する方法において、
前記部分片(11,12)への分割、および第1の部分片(11)を分離するための切断ガイドを、最初に切断される前記第1の部分片(11)の切り離し点(14)が、前記切り離すべきワークピース(10)の外側輪郭(15)の内側に位置するように行
い、
前記部分片(11,12)への分割と、前記第1の部分片(11)の分離のための切断ガイドとを、前記第1の部分片(11)の前記切り離し点(14)が、前記切り離すべきワークピース(10)の重心点(18)に、前記第1の部分片(11)の重心点(16)に、またはこれら両重心点(16,18)の間の領域に、位置するように行うことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記切り離すべきワークピース(10)を、面積がより大きい第1の部分片(11)と、より小さい第2の部分片(12)とに分割する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記切り離すべきワークピース(10)を、第1の部分片(11)と、前記第1の部分片(11)によって3つの側で取り囲まれている第2の部分片(12)とに分割する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記部分片(11,12)への分割と、前記第1の部分片(11)の分離のための切断ガイドとを
、第2の部分片(12)の幅(B)が少なくとも、前記ワーク(6)の厚さ(D)と同じであるように行う、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記部分片(11,12)への分割と、前記第1の部分片(11)の分離のための切断ガイドとを、前記第1の部分片(11)の前記切り離し点(14)が、前記第1の部分片(11)の重心点(16)を中心とする半径(R)内に位置するように行い、前記半径(R)によって画定される円の面積(17)は、前記第1の部分片(11)の全面積の1/3未満である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記部分片(11,12)への分割を
、第2の部分片(12)が、前記ワークピース(10)の前記外側輪郭(15)から、前記第1の部分片(11)の前記切り離し点(14)に向かって互いに近付いていって合流するような2つの側縁(29a,29b)を有するように行う、請求項1から
5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第1の部分片(11)
と第2の部分片(12)との間の分離切断線(23)を、角ばった角を有さないように形成する、請求項1から
6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記第1の部分片(11)
と第2の部分片(12)との間の分離切断線(23)を、前記第1の部分片(11)の下縁部(28a)が、上縁部(28b)よりもさらに前記第2の部分片(12)内に突入するように、斜めに形成する、請求項1から
7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記第1の部分片(11)の切り離しの際に既に
、第2の部分片(12)と前記残留ワーク(13)との間に分離切断線部分(24)を形成する、請求項1から
8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記ワークピース(10)を、順次に切断すべき複数のセグメント(31a~31c)に分割し、少なくとも1つのセグメント(31a)を順次に切断すべき少なくとも2つの部分片(11,12)に分割する、請求項1から
9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
特にプレート状のワーク(6)を少なくとも1つのワークピース(10)と残留ワーク(13)とに分割するための、切断ビーム(5)と切断流体(7)とを含む加工機(1)であって、前記切断ビーム(5)と前記切断流体(7)とが流出する、前記ワーク(6)に対して相対的に移動可能な加工ヘッド(3)と、前記加工ヘッド(3)と前記ワーク(6)との間の相対運動を、請求項1から
10までのいずれか1項記載の方法にしたがって制御するようにプログラミングされている機械制御装置(9)とを有している、加工機(1)。
【請求項12】
加工機(1)の機械制御装置(9)においてプログラムが実行される際に、請求項1から
10までのいずれか1項記載の方法の全てのステップを実施するように適合されているコード手段を有しているコンピュータプログラム製品。
【請求項13】
特にプレート状のワーク(6)を、切断ビーム(5)と切断流体(7)とによって切断する方法であって、切り離すべきワークピース(10)を順次に少なくとも2つのより小さい部分片(11,12)に切断し、前記部分片は、各切り離し後に、周囲の残留ワーク(13)から下方に向かって落下する、または沈下する方法において、
前記部分片(11,12)への分割、および第1の部分片(11)を分離するための切断ガイドを、最初に切断される前記第1の部分片(11)の切り離し点(14)が、前記切り離すべきワークピース(10)の外側輪郭(15)の内側に位置するように行い、
前記切り離すべきワークピース(10)を、面積がより大きい第1の部分片(11)と、より小さい第2の部分片(12)とに分割することを特徴とする、方法。
【請求項14】
特にプレート状のワーク(6)を、切断ビーム(5)と切断流体(7)とによって切断する方法であって、切り離すべきワークピース(10)を順次に少なくとも2つのより小さい部分片(11,12)に切断し、前記部分片は、各切り離し後に、周囲の残留ワーク(13)から下方に向かって落下する、または沈下する方法において、
前記部分片(11,12)への分割、および第1の部分片(11)を分離するための切断ガイドを、最初に切断される前記第1の部分片(11)の切り離し点(14)が、前記切り離すべきワークピース(10)の外側輪郭(15)の内側に位置するように行い、
前記切り離すべきワークピース(10)を、第1の部分片(11)と、前記第1の部分片(11)によって3つの側で取り囲まれている第2の部分片(12)とに分割することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にプレート状のワークを、切断ビームと切断流体とによって切断する方法および加工機であって、切り離すべきワークピースを順次に少なくとも2つのより小さい部分片に切断し、これら部分片は、各切り離し後に、周囲の残留ワークから下方に向かって落下する、または沈下する方法に関し、さらに所属のコンピュータプログラム製品にも関する。部分片の切り離しは、部分片の各分離切断線が、1つの閉じた輪郭を形成する切り離し点でそれぞれ行われる。切断ビームと切断流体とは、例えばウォータービーム切断の場合のように、同一であってよく、すなわち同じ媒体から成っていてよい。
【0002】
特にプレート状かつ金属性のワークを、切断ビーム、すなわち例えば、プラズマビーム、レーザービーム、および/またはウォータージェットビームによって切断する際には、より小さな廃棄部分(スクラップ)が生じ、廃棄部分は通常、切断機の加工領域から自由落下により排出される。しかしながらワークの厚さおよび廃棄部分のジオメトリによっては、このような部分は、切り離しの際に傾き、または残留ワークにひっかかり、またはひっかかって動けなくなるおそれがある。このような部分は、切断ヘッドとの衝突を引き起こすおそれがあり、後に行われる、機械からの残留ワークの自動化された取り出しを困難にするおそれがある。
【0003】
従来技術により、例えば特開平10-244394号公報または国際公開第2015/080179号により、ワークピースを裁断および排出する際のプロセス確実性を改善するために、切り落とした後確実に落下する、より小さい部分片にワークピースを分割することが公知である。特開平10-244394号公報には、U字形のワークピースにおいて、まず、両方の側方脚を切り離し、次いで接続片を切り離すことが公知である。米国特許出願公開第2013/0200051号明細書により、裁断スクラップを螺線状に細かく切ることが公知である。
【0004】
これに対し、本発明の課題は、切り離し後に、切断領域から自由落下により排出されるべきワークピースの、切断ビームによる切断の際のプロセス確実性をさらに改善することである。
【0005】
この課題は、本発明によれば、部分片への分割、および第1の部分片を分離するための切断ガイドを、最初に切断される第1の部分片の切り離し点が、切り離すべきワークピースの外側輪郭の内側に位置するように行うことにより解決される。
【0006】
すなわち、本発明によれば、第1の部分片の切り離し点は、切り離すべきワークピースの外側輪郭上には位置しておらず、したがって、第1のワークピースの重心点の近傍にある。切り離しの瞬間、切断流体圧(ガス圧、水圧)により第1の部分片に加えられる傾動モーメントは、ワークピースの外側輪郭上に位置する切り離し点と比較して減じられている。これにより、第1の部分片の傾動運動は減じられ、または最良の場合には全くなくなり、したがって、第1の部分片は残留ワークから著しくより確実なプロセスで落下することができる。第2の方法ステップで、第2の部分片が残留ワークから切り離され、第2の部分片はもはや材料によってほぼ取り囲まれておらず、残留ワークにおける、第1のステップで形成された開口の内側に自由に位置しているので、確実に残留ワークから下方へと落下する。部分片の分割および切断ガイドにより、第1の部分片は、最適な切り離し点で切り離されることができ、したがって、傾動防止されて残留ワークから落下することができる。
【0007】
好適には、切り離すべきワークピースを、面積がより大きい第1の部分片と、より小さい第2の部分片とに分割する。第1の部分片を大きく選択するほど、第1の部分片の重心点は、ワークピース全体の重心点のより近くに位置し、これによりプロセスの確実性が向上する。例えば、切り離すべきワークピースを、第1の部分片と、第1の部分片によって3つの側で取り囲まれている第2の部分片とに分割することができる。この場合、第2の部分片は、ウェブ状に第1の部分片内に入り込んで延びている。
【0008】
第2の部分片は、第1の部分片の切断の際に第2の部分片に導入される熱が、残留ワークへと流出できるように十分大きく選択されなければならない。熱流方向に対して横方向の第2の部分片の幅が、小さ過ぎるように選択されていると、熱は十分な速さで流出することができず、第2の部分片の熱的な歪みとなるおそれがあり、第1の部分片が第2の部分片にひっかかってしまうおそれがある。したがって好適には、部分片への分割と、第1の部分片の分離のための切断ガイドとは、第2の部分片の幅が少なくとも、ワークの厚さと同じであるように行われる。
【0009】
切り離しの時点で、切断流体圧による可能な限り僅かな傾動モーメントしか第1の部分片へ作用しないように、部分片への分割と、第1の部分片の分離のための切断ガイドとを、特に好適には、第1の部分片の切り離し点が、第1の部分片の重心点を中心とする半径内に位置するように行い、この半径によって画定される円の面積は、第1の部分片の面積の1/3未満であるのが望ましい。好適には、第1の部分片の切り離し点は、切り離すべきワークピースの重心点に、第1の部分片の重心点に、またはこれら両重心点の間の領域に、位置している。
【0010】
第2の部分片のジオメトリは、これが、切り離し後の第1の部分片の傾動にとって可能な限り小さなリスクとなるように規定されている。このために、第2の部分片のジオメトリは、第2の部分片の横断面がもしくは互いに面している側縁の間の間隔が、第1の部分片の切り離し点から第2の部分片の切り離し点まで拡大されるように選択されている。したがって、第2の部分片は、ワークピースの外側輪郭から内側に向かって互いに近付いていって合流するような側縁を有しているので、第2の部分片の円錐状の形状が生じる。さらに好適には、第2の部分領域の形状は対称的であり、特に、第2の部分領域の外側輪郭は、角において直角を有しておらず、角において面取りされているまたは丸み付けられている。
【0011】
第2の部分片における第1の部分片の傾動を効果的に阻止するために、好適には、第1の部分片と第2の部分片との間の分離切断線は、角ばった角なしに、面取りされたまたは丸み付けられた角をもって形成されている。
【0012】
本発明のさらなる構成では、第1の部分片と第2の部分片との間の分離切断線は、第1の部分片の下縁部が、上縁部よりもさらに外側に向かって突出するように、すなわち例えば第2の部分片の互いに対向する側縁が、下方に向かって近付く円錐状の形状を有するように、斜めに形成される。これにより、加工機が加工ヘッドの傾斜位置を許容し、これによりワーク表面に対して相対的に傾けられた切断縁を形成することができる場合に、第1の部分片の下方への落下が容易にされ、可能となる。
【0013】
第2の部分片の切り離しの際の縁部品質を改善するためには、第1の部分片の切り離しの際に既に、第2の部分片と残留ワークとの間に分離切断線部分が形成されてよく、すなわち、第2の部分片と残留ワークとの間の接続輪郭に既に切り込みが入れられていてよい。
【0014】
切り離すべきワークピースの重心点が、ワークピースの外側に位置している場合には特に、ワークピースは、順次に切断すべき複数のセグメントに分割されてよく、この場合、少なくとも1つのセグメントは、上述したように少なくとも2つの部分片に分割されて、これらの部分片は、順次に切断される。この場合、これらのセグメントはそれぞれ、その重心点が、各セグメントの輪郭の内側に位置するように選択される。全てのセグメントが少なくとも2つの部分片に分割されてもよい。
【0015】
本発明はさらに、本発明による方法を実施するために適した、切断ビーム(ビーム状工具)と切断流体とを含む加工機であって、切断ビームと切断流体とが流出する、ワークに対して相対的に移動可能な加工ヘッドと、加工ヘッドとワークとの間の相対運動を、上述した方法にしたがって制御するようにプログラミングされている機械制御装置とを有している、加工機に関する。ウォータービーム切断機では、切断流体は同時に切断ビームを成し、すなわち切断ビームと切断流体とは同じである。
【0016】
最後に本発明は、加工機の機械制御装置においてプログラムが実行される際に、上述した方法の全てのステップを実施するように適合されているコード手段を有しているコンピュータプログラム製品にも関する。
【0017】
本発明の対象のさらなる利点および好適な構成は、詳細な説明、請求項、および図面により明らかである。上述した特徴および以下に説明する特徴は、個別の使用も、任意の複数の組み合わせにおける使用も可能である。図示し、説明した実施形態は、限定的な列記として理解されるものではなく、本発明の説明のために、むしろ一例としての性格を有している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】ワークピースを切り離すための本発明によるレーザー切断法を実施するために適したレーザー加工機を示す図である。
【
図2】本発明によるレーザー切断法で行われる、切り離すべきワークピースの、より小さい2つの部分片への分割を示す図である。
【
図3】第2の部分片および残留ワークから第1の部分片を切り離すための好適な切断ガイドを示す図である。
【
図4】切り離しの瞬間における、
図2のIV-IV線に沿ったワークピースの断面を示す図である。
【
図5】
図2に対して変更された、切り離すべきワークピースの、より小さい2つの部分片への分割を示す図である。
【
図6】切り離すべきワークピースの複数のセグメントへの分割を示す図であり、これらセグメント自体はそれぞれ、順次に切断すべき2つの部分片に分割される。
【
図7】
図6に対して変更された、切り離すべきワークピースのセグメント分割を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、ビーム状工具を備えた加工機が、レーザー加工機1の例で、斜視図で示されている。このような加工機の別の実施例は、複合式打抜き・レーザー切断機、プラズマ切断機、またはウォータービーム切断機である。レーザー加工機1は、レーザービーム発生器2としての例えばCO2レーザー、ダイオードレーザー、または固体レーザーと、移動可能な加工ヘッド3と、ワーク載置部4とを有している。レーザービーム発生器2内で、レーザービーム5が生成されて、レーザービームは、(図示されていない)ライトガイドケーブルまたは(図示されていない)変向ミラーによって、レーザービーム発生器2から加工ヘッド3へとガイドされる。ワーク載置部4には、薄板の形態のワーク6が配置されている。レーザービーム5は、加工ヘッド3内に配置された、集束光学系によって、ワーク6へと向けられる。レーザー加工機1にはさらに、切断ガス7が、例えば酸素と窒素とが供給される。代替的にまたは付加的に圧縮空気または例えば不活性ガスのようなカスタム仕様のガスが設けられてよい。切断ガス7は、加工ヘッド3の切断ガスノズル8に供給され、そこから、レーザービーム5と共にワーク6の方向に流出する。レーザー加工機1は、さらに機械制御装置9を含み、この機械制御装置は、加工ヘッド3を、切断ガスノズル8と共に、切断輪郭に相応に、ワーク6に対して相対的に動かすようにプログラミングされている。
【0020】
加工ヘッド3を定置のワーク6に対して動かす代わりに、ワーク6を定置の加工ヘッド3に対して動かすこともできる。加工ヘッド3の動きとワーク6の動きとを重畳させることもできる。
【0021】
以下に、
図2につき、ワーク6からワークピース10を切り離すためのレーザー切断法を説明する。この場合、切り離すべきワークピース10は、廃棄部分(切断スクラップ)であり、順次に分離切断線23(
図3)に沿って2つのより小さい部分片11,12に裁断され、これらの部分片は、それぞれ切り離された後に、これらを取り囲んでいる残留ワーク13から下方に脱落する。部分片11,12の切り離しは、部分片の切断輪郭が、すなわち各分離切断線23が、1つの閉じた輪郭を形成する切り離し点でそれぞれ行われる。第1の部分片11の切り離し点は、
図2に符号14で示されている。
【0022】
部分片11,12への分割、および第1の部分片11を分離するための切断ガイドは、この場合、最初に切断される第1の部分片11の切り離し点14が、切り離すべきワークピース10の外側輪郭15の内側に位置するように、すなわち外側輪郭15上にはないように、選択される。好適には、第1の部分片11の面積は、第2の部分片12よりも大きく、第2の部分片12を3つの側で取り囲んでいる。
図2に例示したように、第1の部分片11はほぼU字形に、第2の部分片12はほぼ正方形に形成されていてよい。
【0023】
第1の方法ステップでは、第1の部分片11が切り離されて、周囲の残留ワーク12,13から落下する。切り離しの瞬間、すなわち切り離し点14では、切断ガス7の圧力により第1の部分片11に加えられる傾動モーメントは、外側輪郭15上に位置する切り離し点と比較して減じられている。これにより、第1の部分片11の傾動運動は減じられ、または最良の場合には全くなくなり、したがって、第1の部分片は周囲の残留ワーク12,13から著しく確実な方法で、もしくは傾斜することなく落下することができる。第2の部分片(「マクロジョイント」)12は、最初はまだ、周囲の残留ワーク13に接続されたままである。第2の方法ステップで、第2の部分片12も残留ワーク13から切り離され、第2の部分片はもはや材料によってほぼ取り囲まれておらず、残留ワーク13における、第1の方法ステップで形成された開口の内側に自由に位置しているので、より確実な方法でもしくは傾斜することなく残留ワーク13から下方に落下する。
【0024】
切り離しの時点で、作用する切断ガス圧により第1の部分片11に作用する傾動モーメントができるだけ生じないようにもしくはごく僅かにしか生じないように、第1の部分片11の切り離し点14は、可能な限り第1の部分片11の重心点16を中心とする半径R内に位置しており、この場合、半径Rによって画定される円の面積17は、第1の部分片11の全面積の1/3未満であり、好適には1/5未満であるのが望ましい。好適には、第1の部分片11の切り離し点14は、切り離すべきワークピース10の重心点18に、第1の部分片11の重心点16に、またはこれら両重心点16,18の間の領域に、位置している。
【0025】
図2にさらに示されたように、第1の部分片11は好適には、切り離すべきワークピース10の重心点18と第1の部分片11の重心点16とを通って延在する線19に対して鏡像対称的である。
【0026】
第2の部分片12は、第1の部分片11の切断の際に第2の部分片12に導入される熱が、残留ワーク13へと流出できるように十分大きく選択されなければならない。さらに第2の部分片12は、第1の部分片11の完全な切り離しまでに、第2の部分片12が大きく湾曲されることなく、ワークピース10の重量の力と切断ガス圧とを吸収することができるような幅に選択されなければならない。したがって、第2の部分片12の幅Bは、少なくともワーク6の厚さD(
図4)と同じであるのが望ましい。
【0027】
図2では、切断ガスノズル8が使用され、この切断ガスノズルからは、切断ガス7が、レーザービーム5に対して同心的に、ワーク6の方向で流出する、すなわち、第1の部分片11の切り離しの時点で、第1の部分片11への切断ガス7の当接点20は、切り離し点14に位置している。
【0028】
これに対して、切断ガス7が、レーザービーム5に対して偏心的にワーク6に当接すると、第1の部分片11の切り離しの時点では、切断ガス7は、第1の部分片11の外側でワーク6に当接するか、またはこれが不可能であれば、第1の部分片11の切り離し点14は、第1の部分片11の重心点16と当接点20との間の領域にできるだけ位置している。
【0029】
図3には、第1の部分片11を、第2の部分片12および残留ワーク13から切り離すための好適な切断ガイドが示されている。最初の切り込みは、第1の部分片11のための切り離し点14の近くの21で行われ、切断線(切り口)22は、第2の部分片12の先端における切り離し点14へと続いて延在しており、次いで、第1の部分片11の閉じられた分離切断線23が形成されて、これは再び切り離し点14で終端する。切り口のない部分が製作される場合には、最初の切り込み部は、第1の部分片11の閉じられた分離切断線23上に位置している。第2の部分片12の切り離しの際の縁部品質を改善するためには、第1の部分片11の切断の際に既に、第2の部分片12と残留ワーク13との間に分離切断線部分24が形成されてよい。レーザービーム5は、25を始点として、第2の部分片12と残留ワーク13との間の接続輪郭に沿って所定の僅かな距離だけ動き、折り返し点26で停止され、個所25で再び作動されて、第1の部分片11の輪郭を最後まで切断する。第2の部分片12のその後の分離は、切断縁における良好な品質をもって行うことができる。
【0030】
第2の部分片12のジオメトリは、これが、切り離される第1の部分片11の傾動にとって可能な限り小さなリスクとなるように規定されている。
図4に示されたように、第1の部分片11と第2の部分片12との間の分離切断線27は理想的には、第1の部分片11の下縁部28aが、上縁部28bよりもさらに第2の部分片12内に突入するように、斜めに形成されている。これにより、第1の部分片11は、第1の部分片11の落下を妨げない、第2の部分片12向かって傾斜した縁部29を有する。
【0031】
図2および
図3にさらに示されているように、第1の部分片11と第2の部分片12との間の分離切断線23を、角ばった角ではなく、面取りされたまたは丸み付けられた角30をもって形成することができ、これにより第2の部分片における第1の部分片の傾動は効率的に阻止されている。
【0032】
図5に示されたように、傾斜した縁部29に対して代替的にまたは補足的に、第2の部分片12が、ワークピース10の外側輪郭15から、第1の部分片11の切り離し点14に向かって互いに近付いていって合流するような2つの側縁29a,29bを有するように、部分片11,12への分割が行われてもよい。互いに非平行に延在するこれらの側縁29a,29bも、第2の部分片における第1の部分片11の傾動を防止する。
【0033】
図6に示したように、切り離すべきワークピース10の重心点18が、ワークピース10の外側にある場合には特に、ワークピース10は、順次に切断すべき複数のセグメント31a~31cに分割され、これらのセグメント自体は、上述したようにそれぞれ2つの部分片11a,12a,11b,12b、および11c,12cに分割されてよく、これらの部分片は、上述したように順次に切断される。ワークピース10は、この場合、各セグメントにおいて、第1の部分片11a,11b,11cの切り離し点14が、各セグメントの外側輪郭の内側に位置するまで、より小さいセグメントに分割されなければならない。
図5では、まず、セグメント31aが、次いでセグメント31bが、最後にセグメント31cが切断される。
【0034】
図7に示したように、第1のセグメント31aの第2の部分片12aが、同じく下方に落下すべき隣接する第2のセグメント31bに接合されている場合、この第2の部分片12aの個別の分離は省くことができる。第1のセグメント31aの第2の部分片12aは、したがって、第2のセグメント31bの第1の部分片11bの構成部分となる。したがって、切断プロセスの生産性は向上する。