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特許7161045リチウムイオン電池負極材料およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】リチウムイオン電池負極材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20221018BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20221018BHJP
   H01M 4/1393 20100101ALI20221018BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/133
H01M4/1393
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021522336
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 CN2019107753
(87)【国際公開番号】W WO2020134242
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】201811643308.2
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521148108
【氏名又は名称】フーナン ジンイェ ハイ-テック カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HUNAN JINYE HIGH-TECH CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 14-H063,14th floor,Yannong Complex Building,Luquan Road and Lusong Road Intersection,Changsha High-tech Development Zone,Changsha,Hunan 410000,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ジィェンロン
(72)【発明者】
【氏名】スン,チィァン
(72)【発明者】
【氏名】チン,ユェジュン
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-049288(JP,A)
【文献】特開2016-152223(JP,A)
【文献】特開2011-258348(JP,A)
【文献】国際公開第2012/039477(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/058068(WO,A1)
【文献】特開2017-050184(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022486(WO,A1)
【文献】特開2014-208582(JP,A)
【文献】国際公開第2004/100291(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/587
H01M 4/133
H01M 4/1393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池負極材料であって、
XPSによる測定で、284~290eVのピークの半値幅が0.55~1.5eVであり、C/Oの原子比が(65~75):1であり、sp2Cとsp3Cのスペクトルピーク面積の総和を基準として、sp2Cとsp3Cとのピーク面積比が1:(0.5~5)である、リチウムイオン電池負極材料。
【請求項2】
C/O原子比が(65~70):1であり、sp2Cとsp3Cのスペクトルピーク面積の総和を基準として、sp2Cとsp3Cとのピーク面積比が1:(0.5~2)である、請求項1に記載のリチウムイオン電池負極材料。
【請求項3】
熱重量分析により測定された総炭素量である固定炭素含有量と、XPSにより測定された表面炭素量である表面炭素含有量との比が0.9~1.2である、請求項1又は2に記載のリチウムイオン電池負極材料。
【請求項4】
比表面積が0.6~1.3m2gである、請求項1~3のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池負極材料。
【請求項5】
比表面積が0.6~1.1m 2 /gである、請求項4に記載のリチウムイオン電池負極材料。
【請求項6】
X線回折により測定された層間隔d(002)が0.336nm以下であり、黒鉛化度が85~93%である、請求項1~のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池負極材料。
【請求項7】
粒度分布において、D10が1~5μm、D50が12~18μm、D90が25~35μm、最大粒径が39μmである、請求項1~のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池負極材料。
【請求項8】
タップ密度が0.9~1.2g/cm3である、請求項1~のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池負極材料。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項に記載のリチウムイオン電池負極材料の製造方法であって、炭素源に対して粉砕、精製、炭化及び黒鉛化を順次行い、負極材料を製造することを含む製造方法。
【請求項10】
前記精製の過程は、粉砕した炭素源をHF及び/又はHClで処理することを含む請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記精製の過程において、粉砕した炭素源をHFとHClで処理し、HFとHClとのモル比が1:(1~5)である、請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項12】
HFとHClとのモル比が1:(2~3.5)である、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記炭化の過程は、室温から1500~1600℃まで昇温し、炭化時間は20~90minであり、昇温速度は1~10℃/minであることを含む請求項9または10に記載の製造方法。
【請求項14】
前記炭化の過程は、500~600℃まで昇温し、20~60min保温する第1の昇温段階と、1000~1200℃まで昇温し、20~30min保温する第2の昇温段階と、1500~1600℃まで昇温し、20~30min保温する第3の昇温段階との3つの昇温段階を含む請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記黒鉛化の過程は、室温から2800~3000℃まで昇温する昇温過程を含、請求項14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記黒鉛化の過程は、室温から1350~1450℃まで昇温し、昇温速度r1が3≦r1≦6℃/minを満たす第1の昇温段階と、1980~2020℃まで昇温し、昇温速度r2がr2<3℃/minを満たす第2の昇温段階と、2800~3000℃まで昇温し、昇温速度r3がr3<3℃/minを満たす第3の昇温段階との3つの昇温段階を含み、3つの昇温段階の間に保温段階が設けられている、請求項15に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の負極活性材料に関し、具体的には、リチウムイオン電池負極材料、リチウムイオン電池負極、リチウムイオン電池、電池パック、及び電池動力車両に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、理論比容量が高く、サイクル寿命が長く、安全性が高いなどの利点があり、近年の新エネルギー研究の焦点となっている。リチウムイオン電池充放電の過程で、Li+は正極と負極との間でインターカレーションとデインターカレーションとを往復して繰り返す。したがって、負極材料の選択は、リチウムイオン電池の容量にとって重要な役割を果たす。現在のリチウムイオンの負極材料としては、主に炭素材料、シリコン材料、金属又は合金材料が選択されており、炭素材料は、原料の入手が容易であり、理論容量が高く、十分なリチウム吸蔵空間を提供することができ、現在市販されているリチウムイオン電池は、リチウムイオン電池の負極として炭素材料を採用することが好ましい。
【0003】
リチウムイオン電池負極の炭素材料としては、天然黒鉛と人造黒鉛が一般的に選ばれる。天然黒鉛は、比表面積が大きく、脱リチウム電位が低く、初回不可逆容量が大きい反面、副反応が起こりやすい。人造黒鉛は、一般的に、石油コークスや針状コークスを原料とするので、原料コストが高く、後で被覆や改質処理などの工程を必要とし、プロセスが複雑になる。
【0004】
現在、リチウムイオン電池用の負極材料の改良方向としては、主に、黒鉛粒子の真球度と規則性を高め、クーロン効率を高める。これらの方法で製造された炭素材料は、リチウムイオン電池の充放電初期には容量が向上するが、レートを上げると放電容量が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、電池容量及びレート性能が悪いという従来技術の問題を解決するために、リチウムイオン電池負極に用いることにより、リチウムイオン電池の容量及びレート性能を効果的に向上させることができるリチウムイオン電池負極材料、リチウムイオン電池負極、リチウムイオン電池、電池パック、及び電池動力車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成させるために、本発明の第1の態様は、XPSにより測定した284~290eVのピークの半値幅が0.55~7eVであり、C/O原子比が(65~75):1であり、sp2Cとsp3Cのスペクトルピーク面積の総和を基準として、sp2Cとsp3Cとのスペクトルピーク面積比が1:(0.5~5)であるリチウムイオン電池負極材料を提供する。
【0007】
本発明の第2の態様は、炭素源に対して粉砕、精製、炭化及び黒鉛化を順次行い、負極材料を製造することを含むリチウムイオン電池負極材料の製造方法を提供する。
【0008】
本発明の第3の態様は、本発明に記載のリチウムイオン電池負極材料を含むリチウムイオン電池負極を提供する。
【0009】
本発明の第4の態様は、本発明に記載のリチウムイオン電池負極、正極及び電解液を含み、正極と負極とがセパレータで分離され、正極、負極及びセパレータが電解液に含浸されているリチウムイオン電池を提供する。
【0010】
本発明の第5の態様は、本発明に記載のリチウムイオン電池の1つ又は複数を直列及び/又は並列に接続してなる電池パックを提供する。
【0011】
本発明の第6の態様は、本発明に記載の電池パックを含む電池動力車両を提供する。
【発明の効果】
【0012】
上記技術案によれば、本発明で製造された電池負極材料は、sp2Cとsp3C構造を同時に有し、XPSにより測定したsp2Cとsp3Cとのスペクトルピーク面積比が1:(0.5~5)の範囲であり、C/O原子比が(65~75):1である。上記構造を有する負極材料をリチウムイオン電池の負極に用いることにより、大きなリチウム吸蔵空間を提供し、安定したSEI膜を形成し、サイクル時の電池負極の安定性を向上させ、リチウムイオン電池のレート性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1における負極材料のXPS検出によるC1sスペクトルである。
図2】実施例1における負極材料の熱重量分析における熱減量曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、これらの正確な範囲又は値に限定されるものではなく、これらの範囲又は値は、これらの範囲又は値に近い値を含むものと理解されるべきである。数値範囲については、個々の範囲の端点値の間、個々の範囲の端点値と個別の点値の間、及び個別の点値の間を組み合わせて、1つ又は複数の新たな数値範囲を得ることができ、これらの数値範囲は、本明細書で具体的に開示されていると考えるべきである。
【0015】
本発明の第1の態様は、XPSにより測定した284~290eVのピークの半値幅が0.55~7eVであり、C/Oの原子比が(65~75):1であり、sp2Cとsp3Cのスペクトルピーク面積の総和を基準として、sp2Cとsp3Cとのスペクトルピーク面積比が1:(0.5~5)であるリチウムイオン電池負極材料を提供する。
【0016】
本発明に係る負極材料において、炭素-炭素結合は主にsp2とsp3の形で存在し、この負極材料は、規則的な黒鉛層の構造を有しているとともに、C-O結合、C=O結合から形成された欠陥サイトを有している。sp2Cとsp3Cとのスペクトルピーク面積比が1:(0.5~5)であり、C/O原子比が(65~75):1である場合、製造された負極材料は、大きなリチウム吸蔵空間を有し、リチウムイオンの繰り返したインターカレーション/デインターカレーションを容易にし、リチウムイオンのインターカレーション/デインターカレーションによる負極材料の体積変化を低減させ、リチウムイオン電池に使用することにより、リチウムイオン電池のサイクル安定性及びレート性能を向上させることができる。
【0017】
本発明では、XPSにより測定されたsp2C、sp3Cピークの位置は285eV前後、C-Oピークの位置は286eV前後である。
【0018】
負極材料のリチウム吸蔵効果をさらに向上させ、リチウムイオンのインターカレーション/デインターカレーションによる負極材料の体積変化を低減させ、さらにリチウムイオン電池のレート性能を向上させるために、好ましくは、前記負極材料は、C/O原子比が(65~70):1であり、sp2 Cとsp3スペクトルのピーク面積の総和を基準として、sp2 Cとsp3 Cとのピーク面積比が1:(0.5~2)、より好ましくは1:(0.7~1)である。
【0019】
リチウムイオン電池のサイクル安定性を向上させるために、好ましくは、前記負極材料は、熱重量分析により測定された総炭素量である固定炭素含有量と、XPSにより測定された表面炭素量である表面炭素含有量との比が0.9~1.2、好ましくは1.0~1.1である。
【0020】
図1及び図2に示すように、固定炭素含有量は、熱重量分析により測定された、灰分除去後の負極材料の総炭素量であり、表面炭素含有量は、XPSにより測定された負極材料の炭素原子含有量である。固定炭素含有量と表面炭素含有量とが上記の関係を満たす場合、製造された負極材料は、sp2Cとsp3Cが互いに結合されており、リチウムイオン電池に用いることにより、リチウムイオン電池のサイクル安定性及びレート性能をより効果的に向上させることができる。
【0021】
本発明では、リチウムイオン電池のサイクル安定性をさらに向上させ、バインダーの使用量を低減させるために、前記負極材料の比表面積は、好ましくは、0.6~1.3m2/g、さらに好ましくは0.6~1.1m2/gである。
【0022】
電池負極の安定性をさらに向上させるために、好ましくは、X線回折により測定された層間隔d(002)が0.336nm以下であり、黒鉛化度が85~93%である。
【0023】
以上の特徴を有する電池負極は、構造がより安定的であり、良好な導電性能を有し、リチウムイオン電池のレート性能を効果的に向上させることができる。
【0024】
負極材料の電解液への含浸性をさらに向上させ、リチウムイオン電池のサイクル安定性を向上させるために、好ましくは、前記負極材料の粒度分布において、D10が1~5μm、D50が12~18μm、D90が25~35μm、負極材料の最大粒径が39μmである。
【0025】
好ましくは、前記負極材料のタップ密度が0.9~1.2g/cm3である。
【0026】
本発明で製造された負極材料は、上記の構造的特徴を満足すると、優れた黒鉛化度を有するとともに、sp3ハイブリッド構造を有し、十分なリチウム吸蔵空間を提供することができ、電解液への含浸性に優れており、リチウムイオン電池に用いた場合、リチウムイオン電池のサイクル安定性及びレート性能を効果的に向上させることができる。
【0027】
本発明の第2の態様は、炭素源に対して粉砕、精製、炭化及び黒鉛化を順次行い、負極材料を製造することを含むリチウムイオン電池負極材料の製造方法を提供する。
好ましくは、前記精製の過程は、破砕後の炭素源をHF及び/又はHClで処理することを含む。
【0028】
本発明では、製造された負極材料にsp2Cとsp3C構造の両方を持たせるとともに、後続の炭化及び黒鉛化過程を容易にするために、好ましくは、前記精製の過程では、粉砕後の炭素源をHFとHClで処理し、HFとHClとのモル比を1:(1~5)、好ましくは1:(2~3.5)とする。
【0029】
本発明では、炭素源は、鋳造コークス、冶金コークス、コークス粉末、及び石炭のうちの少なくとも1種であってもよく、好ましくはコークス粉末であり、より低コストであり、上記ステップを経て製造された負極材料をリチウムイオン電池に用いることにより、リチウムイオン電池の容量及びレート性能を効果的に向上させることができることからである。
【0030】
本発明の精製過程は、破砕後の炭素源をHF及び/又はHClで処理し、好ましくは、HFとHClとを上記比率で配合して炭素源を処理し、このように、炭素源を改質処理することができ、後続の炭化及び黒鉛化を経て得た負極材料にsp2Cとsp3C構造の両方を持たせることができる。
【0031】
本発明では、炭素源を精製処理した後、異なる温度で炭化と黒鉛化を段階的に行うことで、sp2Cとsp3Cの両方を持つ負極材料を形成するのに有利であり、このような負極材料をリチウムイオン電池負極に用いると、リチウムイオン電池負極は、優れているサイクル安定性及びレート性能を有する。好ましくは、前記炭化の過程は、室温から1500~1600℃まで昇温し、炭化時間は20~90min、昇温速度は1~10℃/minであることを含み。さらに好ましくは、炭化の過程は、500~600℃まで昇温し、20~60min保温する第1の昇温段階と、1000~1200℃まで昇温し、20~30min保温する第2の昇温段階と、1500~1600℃まで昇温し、20~30min保温する第3の昇温段階との3つの昇温段階を含む。また、第1の昇温段階の昇温速度は5~10℃/min、第2の昇温段階の昇温速度は5~8℃/min、第3の昇温段階の昇温速度は1~4℃/minであることが好ましい。
【0032】
炭素源の黒鉛化度を高め、形成される負極材料の構造をより安定的にするために、好ましくは、前記黒鉛化の過程は、室温から2800~3000℃まで昇温する昇温過程を含み、より好ましくは、前記黒鉛化の過程は、室温から1350~1450℃まで昇温し、昇温速度r1が3≦r1≦6℃/minを満たす第1の昇温段階と、1980~2020℃まで昇温し、昇温速度r2がr2<3℃/minを満たす第2の昇温段階と、2800~3000℃まで昇温し、昇温速度r3がr3<3℃/minを満たす第3の昇温段階との3つの昇温段階を含み、3つの昇温段階の間に保温段階が設けられている。
【0033】
上記炭素源を用いて上記方法で処理して、最終的に製造した負極材料は、適切なC/O原子比を有し、得られた負極材料中、XPS検出によるsp2Cとsp3Cとのスペクトルピーク面積比が1:(0.5~5)である。このような構造を有する負極材料をリチウムイオン電池に用いることにより、リチウムイオン電池のサイクル安定性及びレート性能を効果的に向上させることができる。
【0034】
本発明の第3の態様は、本発明に記載のリチウムイオン電池負極材料を含むリチウムイオン電池負極を提供する。
【0035】
負極材料の構造安定性をさらに向上させるために、好ましくは、本発明の電池負極はバインダーをさらに含む。本発明では、リチウムイオン電池の負極に使用されるバインダーは、該分野で一般的に使用されているバインダーであり、好ましくは、ポリフッ化ビニリデン、カルボキシスチレンブタジエンラテックス、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びポリテトラフルオロエチレンのうちの少なくとも1種である。さらに好ましくは、前記負極材料とバインダーとの重量比が1:(0.01~0.04)である。
また、本発明の好ましい実施方式において、前記負極材料とバインダーとの重量比が1:(0.04~0.09)である。
【0036】
本発明で製造された負極材料を用いることにより、バインダーの使用量を効果的に低減させ、負極材料の安定性を向上させることができる。
【0037】
電池負極の導電性、及び電池負極と電解液との接触効果をさらに向上させるために、好ましくは、電池負極は、導電剤をさらに含み、前記負極材料と導電剤との重量比が1:(0.01~0.1)である。
【0038】
本発明で製造された負極材料をリチウムイオン電池に用いることにより、バインダーの使用量を低減させ、リチウムイオン電池のサイクル安定性及びレート性能を効果的に向上させることができる。
【0039】
本発明の第4の態様は、本発明に記載の前記リチウムイオン電池の負極、正極及び電解液を含み、正極と負極とがセパレータで分離され、正極、負極及びセパレータが電解液に含浸されているリチウムイオン電池を提供する。
【0040】
リチウムイオン電池リチウムに高容量及び優れたサイクル安定性を付与するために、前記正極は、リチウム、ニッケル、ニッケル-コバルト二元系金属、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン複合金属、ニッケル-コバルト-アルミニウム三元系金属、リン酸鉄リチウム、マンガン酸リチウム、及びコバルト酸リチウムから選ばれる少なくとも1種である。
【0041】
リチウムイオン電池の電解液中のイオンが正極と負極との間で速やかに移動することを促進するために、好ましくは、セパレータの材質は、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンから選ばれる。電解液は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ヘキサフルオロリン酸リチウム、及び五フッ化リンから選ばれる少なくとも1種である。
【0042】
本発明で製造されたリチウムイオン電池は、放電比容量が高く、0.5Cレートでの容量維持率が97%以上、1Cレートでの容量維持率が93%以上、4Cレートでの容量維持率が76%以上に達する。
【0043】
本発明の第5の態様は、本発明に記載のリチウムイオン電池の1つ又は複数を直列及び/又は並列に接続してなる電池パックを提供する。
【0044】
本発明の第6の態様は、本発明に記載の電池パックを含む電池動力車両を提供する。
【0045】
本発明のリチウムイオン電池を直列及び/又は並列に接続することにより、より高いクーロン効率及びレート性能を有する電池パックを組み立てることができ、この電池パックは、電池動力車両に適用することができる。
【実施例
【0046】
以下、実施例を通じて本発明を詳細に説明する。以下の実施例及び比較例では、
負極材料のBET比表面積は、V-sorb 2800P比表面積及び孔径分析計を用いてN2吸脱着により測定され、2~200nmの細孔容積の分布はBJHを用いて分析される。
負極材料のXRD結晶面構造はX線回折装置により測定され、d(002)、Lc、黒鉛化度、及び異なるピーク強度比が解析される。X線回折装置モデル:DAVINCI;メーカー:ドイツBRUKER AXS社;規格:3kw;走査范囲:10度から90度;走査速度:12度/分;測定条件:40kV/40mA。ただし、d(002)はλ/(2sinθ)式により算出され、黒鉛化度は、(0.344-d(002))/(0.344-0.3354)×100%により算出される。
負極材料の粒度分布は、粒度分布計(omec)により測定される。
負極材料の熱重量曲線は、熱重量分析計により測定され、測定条件として、N2の導入量が10mL/min、Arの導入量が50mL/minである。
負極材料のタップ密度はタップ密度計により測定され、真密度はUltrapycnometer 1000により測定される。
負極材料の表面についてX線光電子分光分析装置でXPS分析を行い、得られた炭素スペクトル曲線に対してXPSPEAKでピークフィッティング処理を行い、それぞれsp2Cピーク、sp3Cピーク、及びC-Oピークに対応させ、ピーク面積に基づいて負極材料を解析する。
以下の実施例及び比較例における「室温」は、いずれも「25℃」を指す。
【0047】
実施例1
1.リチウム電池負極材料の製造
本実施例では、炭素源としてコークス粉末(宝泰隆新材料有限公司より購入)を選択し、水分が1重量%以下になるまで炭素源をベークした後、D50=10~19μmに粉砕し、その後、モル比1:3のHFとHClを混合して酸洗液とした。粉砕した炭素源と酸洗液とを1:1.5の体積比で撹拌混合し、その後、分離処理して、得られた固体をベークして使用に備えた。
ベークした固体を炭化処理し、炭化過程全体は、窒素ガス保護下で行い、3つの昇温段階を含んだ。第1の昇温段階では、室温から8℃/minの速度で500℃まで昇温し、500℃で60min保温し、第2の昇温段階では、5℃/minの速度で1000℃まで昇温し、1000℃で30min保温し、第3の昇温段階では、3℃/minの速度で1500℃まで昇温し、1500℃で30min保温した後、300~400℃まで冷却した。
炭化された固体を黒鉛化処理し、黒鉛化過程全体は、窒素ガスの保護下で行い、3つの昇温段階を含んだ。第1の昇温段階では、r1=5℃/minの昇温速度で1400℃まで加熱し、1400℃で60min保温し、第2の昇温段階では、r2=2℃/minの昇温速度で1980℃まで加熱し、1980℃で30min保温し、第3の昇温段階では、r3=2℃/minの昇温速度で3000℃まで加熱し、3000℃で60min保温した。その後、降温して炉から取り出し、負極材料S1を得た。S1のXPS検出データを図1、S1の熱減量曲線を図2に示す。
【0048】
2.リチウムイオン電池負極の製造
S1を電池負極材料、アセチレンブラックを導電剤、ポリフッ化ビニリデンをバインダーとした。S1、ポリフッ化ビニリデン及びアセチレンブラックが92:5:3の質量比となるように秤量した。その後、製造した濃度5重量%のN-メチル-2-ピロリドン溶液を加え、1500r/minの速度で30min撹拌してペーストを形成した。銅箔上にこのペーストを均一に塗布し、真空オーブン内において100℃で8hベークし、ペースト中の溶媒を除去して、電池負極を製造した。
【0049】
3.ボタン型電池の組み立て
ステップ2で製造された電極シートをボタン型電池の負極とし、ディスクに打ち抜いて使用に備えた。また、金属リチウムをディスクに打ち抜いて正極とし、正極と負極をポリエチレン製セパレータで分離し、電解液を1mol/Lのヘキサフルオロリン酸リチウムのエチレンカーボネート/メチルエチルカーボネート(エチレンカーボネート/メチルエチルカーボネートの体積比は1:1)溶液とし、電池をグローブボックスにて組み立てて、ボタン型電池を製造した。
LAND CT2001を使用して、ボタン型電池について0.001~2V vs.Li/Li+の電圧範囲で、初回放電比容量、及び初回クーロン効率を測定した。
【0050】
4.筒型電池の組み立て
正極としてコバルト酸リチウム、電解液として体積比95:5のヘキサフルオロリン酸リチウムとエチレンカーボネート、負極材料としてS1を用いて、18650リチウム電池の規格に準拠して組み立てて筒型電池を形成した。筒型電池について2~4.2Vの動作電圧での初回放電容量、及びそれぞれ0.5C、1C、4Cで測定した放電容量を測定し、初回放電容量に対する各放電レートでの放電容量の容量維持率を検出した。
【0051】
実施例2
以下のこと以外、実施例1の方法と同じであった。
リチウム電池負極材料を製造する際に、HFとHClを1:3.5のモル比で混合して酸洗液とした。粉砕した炭素源と酸洗液を1:1.5の体積比で撹拌混合し、その後、分離処理して得られた固体をベークして使用に備えた。
ベークした固体を炭化処理し、炭化過程全体は、窒素ガス保護下で行い、3つの昇温段階を含んだ。第1の昇温段階では、室温から5℃/minの速度で600℃まで昇温し、600℃で60min保温し、第2の昇温段階では、5℃/minの速度で1200℃まで昇温し、1200℃で30min保温し、第3の昇温段階では、1℃/minの速度で1600℃まで昇温し、1600℃で30min保温した後、室温まで冷却した。
炭化された固体を黒鉛化処理し、黒鉛化過程全体は、窒素ガス保護下で行い、3つの昇温段階を含んだ。第1の昇温段階では、r1=3℃/minの昇温速度で1400℃まで加熱し、1400℃で60min保温し、第2の昇温段階では、r2=2℃/minの昇温速度で1980℃まで加熱し、1980℃で30min保温し、第3の昇温段階では、r3=1℃/minの昇温速度で3000℃まで加熱し、3000℃で60min保温した。その後、5℃/minの降温速度で2000℃まで降温した後、室温まで自然冷却して、負極材料S2を得た。
【0052】
実施例3
以下のこと以外、実施例1の方法と同じであった。
リチウム電池負極材料を製造する際に、HFとHClを1:2のモル比で混合して酸洗液とした。粉砕した炭素源と酸洗液を1:1.5の体積比で撹拌混合し、その後、分離処理して得られた固体をベークして使用に備えた。
ベークした固体を炭化処理し、炭化過程全体は、窒素ガス保護下で行い、3つの昇温段階を含んだ。第1の昇温段階では、室温から10℃/minの速度で500℃まで昇温し、500℃で60min保温し、第2の昇温段階では、8℃/minの速度で1000℃まで昇温し、1000℃で60min保温し、第3の昇温段階では、4℃/minの速度で1500℃まで昇温し、1500℃で60min保温した後、室温まで自然冷却した。
炭化された固体を黒鉛化処理し、黒鉛化過程全体は窒素ガスの保護下で行い、3つの昇温段階を含んだ。第1の昇温段階では、r1=6℃/minの昇温速度で1400℃まで加熱し、1400℃で60min保温し、第2の昇温段階では、r2=2℃/minの昇温速度で1980℃まで加熱し、1980℃で60min保温し、第3の昇温段階では、r3=2℃/minの昇温速度で3000℃まで加熱し、3000℃で60min保温した。その後、5℃/minの降温速度で2000℃まで降温した後、室温まで自然冷却して、負極材料S3を得た。
【0053】
実施例4
以下のこと以外、実施例1の方法と同じであった。
ベークした固体を炭化処理し、炭化過程全体は、窒素ガス保護下で行い、室温から5℃/minの速度で1500℃まで昇温し、1500℃で60min保温した後、室温まで自然冷却することを含む。
最終的に製造された負極材料をS4と命名した。
【0054】
実施例5
以下のこと以外、実施例1の方法と同じであった。
炭化された固体を黒鉛化処理し、黒鉛化過程全体は、窒素ガス保護下で行い、2つの昇温段階を含んだ。第1の昇温段階では、r1=5℃/minの昇温速度で2000℃まで加熱し、2000℃で60min保温し、第2の昇温段階では、r2=2℃/minの昇温速度で3000℃まで加熱し、3000℃で60min保温した。その後、降温して炉から取り出し、負極材料S5を得た。
【0055】
実施例6
以下のこと以外、実施例1の方法と同じであった。リチウム電池負極材料を製造する際に、HFとHClを1:5のモル比で混合して酸洗液とした。最終的に製造された負極材料をS6とした。
【0056】
実施例7
以下のこと以外、実施例1の方法と同じであった。前記炭素源として石炭(無煙炭:有煙炭:褐炭=3:6:2で粉砕して配合し製造した)を選択し、水分が1重量%未満になるまで炭素源をベークした後、D50=10~19μmに粉砕し、その後、HFとHClを1:3のモル比で混合して酸洗液とした。粉砕した炭素源と酸洗液を1:1.5の体積比で撹拌混合し、その後、分離処理して得られた固体をベークして使用に備えた。
【0057】
実施例8
以下のこと以外、実施例1の方法と同じであった。前記炭素源として石炭(無煙炭:有煙炭:褐炭=3:6:2で粉砕して配合し製造した)を選択し、水分が1重量%未満になるまで炭素源をベークした後、D50=10~19μmに粉砕し、その後、HFとHClを1:10のモル比で混合して酸洗液とした。粉砕した炭素源と酸洗液を1:1.5の体積比で撹拌混合し、その後、分離処理して得られた固体をベークして使用に備えた。
【0058】
比較例1
以下のこと以外、実施例1の方法と同じであった。リチウム電池負極材料を製造する際に、HFとHClを1:10のモル比で混合して酸洗液とした。最終的に負極材料D1を製造した。
【0059】
測定例
以上の各実施例及び比較例で製造された負極材料の性能測定結果を表1、以上の各実施例及び比較例で製造された負極材料を組み立ててなるリチウムイオン電池の性能測定結果を表2に示す。
【0060】
【表1-1】
【0061】
【表1-2】
【0062】
表1の結果から分かるように、本発明の各実施例で製造された負極材料は、C/O原子比が(65~70):1であり、sp2Cスペクトルとsp3Cスペクトルとのピーク面積比が1:(0.5~2)であり、この負極材料をリチウムイオン電池に用いることにより、電池のサイクル性能及びレート性能を効果的に向上させることができる。
【0063】
【表2-1】
【0064】
【表2-2】
【0065】
表2の結果から分かるように、本発明の各実施例で製造された負極材料を組み立ててなるリチウムイオン電池は、高い放電比容量及び初回クーロン効率を有し、高レートにおいても良好な容量を維持することができる。
【0066】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の技術的構想の範囲内では、個々の技術的特徴を他の任意の適切な方式で組み合わせることを含め、本発明の技術案に対して複数の簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形及び組み合わせは、同様に本発明に開示されたものとみなされ、いずれも本発明の保護範囲に属する。
図1
図2