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特許7161049制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット
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  • 特許-制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット 図1
  • 特許-制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット 図2
  • 特許-制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット 図3
  • 特許-制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット 図4
  • 特許-制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット 図5
  • 特許-制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット 図6
  • 特許-制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット 図7
  • 特許-制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット 図8
  • 特許-制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット 図9
  • 特許-制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット 図10
  • 特許-制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】制動システム、車両の車軸支持ユニット、そのような車軸支持ユニットを有する車両、および駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
   F16D 55/32 20060101AFI20221018BHJP
   F16D 65/18 20060101ALI20221018BHJP
   B62K 17/00 20060101ALI20221018BHJP
   A63C 17/14 20060101ALI20221018BHJP
   F16D 121/04 20120101ALN20221018BHJP
   F16D 125/06 20120101ALN20221018BHJP
   F16D 121/16 20120101ALN20221018BHJP
【FI】
F16D55/32
F16D65/18
B62K17/00
A63C17/14
F16D121:04
F16D125:06 Z
F16D121:16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021526641
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 DE2019100873
(87)【国際公開番号】W WO2020098859
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】102018128771.2
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン オルトマン
(72)【発明者】
【氏名】マルセル フィリップ マイアー
(72)【発明者】
【氏名】ヤニック ドミニク ヘアベアト アルトヘル
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第02581941(US,A)
【文献】実開平02-036635(JP,U)
【文献】特開平03-219126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 55/32
F16D 65/18
B62K 17/00
A63C 17/14
F16D 121/04
F16D 125/06
F16D 121/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸(D)を中心に回転可能な少なくとも1つの回転要素(5)と、前記回転要素(5)を制動するための制動装置(10)とを有し、前記制動装置(10)が、休止位置と制動位置との間で移動可能であり、前記休止位置および前記制動位置において前記回転要素(5)の前記軸(D)に対して同心円状に配置された環状制動面(13.1)を有する第1の制動要素(13)を有する、制動システム(30)であって、
-前記回転要素(5)に共回転可能に接続され、第1の摩擦面(34.1)と、前記第1の摩擦面(34.1)の反対側の第2の摩擦面(34.2)とを有する制動ディスク(34)であって、前記第1の制動要素(13)の前記環状制動面(13.1)が、前記休止位置において前記制動ディスク(34)から距離を置いて配置され、前記制動位置において前記制動ディスク(34)の前記第1の摩擦面(34.1)と接触している、制動ディスク(34)と、
-第2の制動要素(35)であって、前記第2の制動要素(35)が前記制動位置において前記制動ディスク(34)の前記第2の摩擦面(34.2)と接触するように、前記第1の制動要素(13)が前記制動位置において前記制動ディスク(34)を前記第2の制動要素(35)に向かって押し付けるように配置された、第2の制動要素(35)と、を備え
前記第1の制動要素(13)が、前記休止位置と前記制動位置との間で液圧的に移動可能であり、
前記第1の制動要素(13)が、作動液を受け入れるための中空円筒形内部(15)を有するハウジング(11)内に取り付けられた中空円筒形制動ピストン(12)に接続され、
前記第2の制動要素(35)が、前記軸(D)の周りに同心円状に配置され且つ前記ハウジング(11)によって同心円状に囲まれた中空円筒状のアセンブリ領域(35.2)に一体的に接続されることを特徴とする、制動システム。
【請求項2】
前記制動装置(10)が、それによって前記第1の制動要素(13)が前記制動位置から前記休止位置に戻るように移動されることができる1つ以上の板ばね(42)を有することを特徴とする、請求項1に記載の制動システム(30)。
【請求項3】
前記1つ以上の板ばね(42)が、周方向に前記軸(D)の周りに延在していることを特徴とする、請求項に記載の制動システム。
【請求項4】
前記第2の制動要素(35)が、環状に形成され、前記第2の制動要素(35)が前記軸(D)を中心とする回転に対して固定されるように、前記ハウジング(11)の外側輪郭上の対応する第2の形状嵌合要素(47)と協働する第1の形状嵌合要素(40)、特に複数の歯またはくさびを内側輪郭に有することを特徴とする、請求項からのいずれか一項に記載の制動システム(30)。
【請求項5】
前記制動システムの前記回転要素(5)が車輪として形成されている、請求項1からのいずれか一項に記載の制動システム(30)を有する車両、特にスケートボード、自転車、またはオートバイ用の車軸支持ユニット。
【請求項6】
請求項に記載の車軸支持ユニット(4)を有する車両(1)、特にスケートボード、自転車、またはオートバイ。
【請求項7】
請求項1からのいずれか一項に記載の制動システム(30)を有する駆動ユニットであって、前記制動システム(30)の前記回転要素(5)が、駆動要素、特に駆動輪または駆動ピニオンとして形成されている、駆動ユニット。
【請求項8】
前記回転要素(5)内に少なくとも部分的に配置された駆動モータ(8)、特に電気駆動モータを特徴とする、請求項に記載の駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸を中心に回転可能な少なくとも1つの回転要素と、回転要素を制動するための制動装置とを有する制動システムであって、制動装置が、休止位置と制動位置との間で移動可能であり、休止位置および制動位置において回転要素の軸に対して同心円状に配置された環状制動面を有する第1の制動要素を有する、制動システムに関する。本発明はまた、そのような制動システムを有する車両、特にスケートボード、自転車、またはオートバイ用の車軸支持ユニットに関する。本発明の別の目的は、そのような車軸支持ユニットを有する車両である。本発明はまた、前述の制動システムを有する駆動ユニットであって、制動システムの回転要素が、駆動要素、特に駆動輪または駆動ピニオンとして形成される、駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
スケートボードとして構成された車両は、例えば、米国特許第6 659 480号明細書から公知である。このスケートボードは、車輪を制動するための制動装置が配置されている、後車軸としての2つの車輪を有する車軸支持ユニットを有する。各車輪には、それぞれの車輪の軸に対して同心円状に配置された環状制動面を有する制動要素が配置されている。制動要素は、旋回可能なレバーを介して、それぞれの車輪から離れた休止位置から、それぞれの制動要素が車輪に共回転可能に接続された制動面と接触する制動位置に移動されることができる。
【0003】
そのような制動装置を有する制動システムでは、制動要素によって制動面に加えられる軸方向に作用する制動力が車輪に導入されることが不利であることが分かっている。したがって、制動時には、車輪を支持するローラ軸受に大きな軸力が作用する。これは、そのようなシステム、特にそのようなシステムのローラ軸受の耐用年数を短くする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この背景に対して、耐用年数が延長された上述したタイプの制動システムを特定する目的が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、軸を中心に回転可能な少なくとも1つの回転要素と、回転要素を制動するための制動装置とを有し、制動装置が、休止位置と制動位置との間で移動可能であり、休止位置および制動位置において回転要素の軸と同心に配置された環状制動面を有する第1の制動要素を有する、制動システムであって、回転要素に共回転的に接続され、第1の摩擦面と、第1の摩擦面の反対側の第2の摩擦面とを有する制動ディスクであって、第1の制動要素の環状制動面が、休止位置において制動ディスクから距離を置いて配置され、制動位置において制動ディスクの第1の摩擦面と接触する、制動ディスクを有し、第2の制動要素であって、第2の制動要素が制動位置において制動ディスクの第2の摩擦面と接触するように、第1の制動要素が制動位置において制動ディスクを第2の制動要素に向かって押し付けるように配置された第2の制動要素を有する、制動システムによって達成される。
【0006】
本発明にかかる制動システムでは、回転要素に共回転可能に接続された制動ディスクは、制動位置において第1の制動要素と第2の制動要素との間にクランプ締めされる。これは、軸方向に作用する力が回転要素に導入されることを防止することができる。特に、制動中に軸方向においてころ軸受またはそれらの転動体に作用する力が低減されることができる。これは、制動システムの耐用年数を延ばすことができる。
【0007】
制動ディスクは、好ましくは環状に形成され、回転軸に対して同心円状に配置されている。制動ディスクの第1および第2の摩擦面は、環状に構成されることができる。
【0008】
有利な実施形態によれば、第1の制動要素は、休止位置と制動位置との間で液圧的に移動されることができる。そのような構成では、休止位置と制動位置との間の移動のために第1の制動要素に油圧が加えられ、制動に必要な圧力のより均一な分配を可能にする。これはまた、制動ディスクに導入される力をより均一に分配する。このようにして、制動ディスクの個々の領域に過大な応力がかかるリスクが低減されることができる。これは、車輪軸受の早期故障の可能性を低減し、車両の耐用年数をさらに延ばす。
【0009】
本発明の有利な実施形態によれば、第1の制動要素は、油圧流体を受け入れるための中空円筒形内部を有するハウジング内に取り付けられた中空円筒形制動ピストンに接続されることが提供される。そのような構成は、第1の制動要素を作動させるためのレバーまたはレバー機構を有する制動装置と比較して、必要な設置スペースが少ないという利点を有する。ハウジングは、車輪の軸に対して同心円状に、および/または車軸支持ユニットの車軸部分に対して同心円状に配置されることができる。任意選択的に、第1の制動要素は、制動ピストンと一体的に形成されることができる。
【0010】
それは、ハウジングを車軸部分に接続するために接続要素が必要とされないように、ハウジングが制動システムの車軸部分または車軸支持ユニット上にクランプ締めされる場合に有利である。これは、組み立てに必要な部品の数が低減されることを可能にし、材料コストも削減することができる。好ましくは、ハウジングは、代替的にまたは追加的に、回転要素がそれを介して駆動可能であるモーターの固定子部分にクランプ締めされる。
【0011】
あるいは、第1の制動要素は、好ましくは、電気モーターによって休止位置と制動位置との間で移動されることができる。さらなる代替として、それは、第1の制動要素が休止位置と制動位置との間で機械的に移動されることが提供されることができる。
【0012】
有利な実施形態によれば、制動装置は、1つ以上の板ばねを有し、それによって第1の制動要素が制動位置から休止位置に戻されることが提供される。1つ以上の板ばねは、好ましくは、第1の制動要素および制動装置のハウジングに接続される。
【0013】
これに関連して、1つ以上の板ばねが回転要素の軸の周りに円周方向に延在する場合に有利である。板ばねのこの位置合わせの結果として、1つ以上の板ばねは、制動中に発生するトルクを吸収することができる。したがって、1つ以上の板ばねは、本質的に摩耗のないトルク支持部を形成することができる。
【0014】
1つ以上の板ばねは、好ましくは、リベットによってハウジングおよび第1の制動要素のそれぞれに接続される。それぞれのリベットは、ねじがねじ込まれることができる雌ねじを有することが特に好ましい。これは、リベットによって、感圧ハウジング、例えばプラスチック製のハウジングに板ばねを配置することを可能にする。
【0015】
有利な実施形態によれば、第2の制動要素は、環状であり、内側輪郭上に第1の形状嵌合要素を有し、これは、第2の制動要素が回転軸の周りの回転に対して固定されるように、ハウジングの外側輪郭上の対応する第2の形状嵌合要素と協働する。第1の形状嵌合要素は、歯またはウェッジとして形成されることができる。したがって、第2の形状嵌合要素は、対応する歯またはウェッジとして構成されることができる。
【0016】
別の有利な実施形態によれば、第2の制動要素は、軸の周りに同心円状に配置され且つハウジングによって同心円状に囲まれた中空円筒形アセンブリ領域に一体的に接続されることが提供される。中空円筒形アセンブリ領域は、特に固定リングを介して、ハウジングの第2の制動要素とは反対側においてハウジングに接続されることが特に好ましい。
【0017】
制動ディスクが環状であり、特に歯またはウェッジとして形成された外側輪郭上の第3の形状嵌合要素を有し、これが、制動ディスクが回転軸の周りの回転に対して固定されるように、回転要素の内側輪郭上の対応する第4の形状嵌合要素と相互作用する場合も有利である。
【0018】
本発明の別の主題は、上述した制動システムを有する車両、特にスケートボード、自転車、またはオートバイ用の車軸支持ユニットであり、制動システムの回転要素は、車輪として形成される。
【0019】
車軸支持ユニットは、好ましくは、回転軸を中心に回転可能な2つの車輪と、車輪を制動するための2つの制動装置とを有する。各車輪は、それぞれの車輪を駆動するためのそれ自体のモーターを有することができる。モーターは、好ましくは電気モーターとして形成される。
【0020】
本発明はまた、上述した車軸支持ユニットを有する車両、特にスケートボード、自転車、またはオートバイに関する。
【0021】
車両は、好ましくは、1つ以上の車軸支持ユニットが接続される基体を有する。基体は、例えば、板またはプレートとして形成されることができる。基体は、車両のユーザのための起立面を提供することができる。
【0022】
本発明の別の主題は、上述した制動システムを有する駆動ユニットであり、制動システムの回転要素は、駆動要素、特に駆動輪または駆動ピニオンとして形成される。
【0023】
駆動ユニットについて、制動システムまたは車軸支持ユニットに関連して説明したのと同じ利点が達成されることができる。そのような駆動ユニットは、例えば、生産システム、ロボット、またはコンベアシステムなどの産業システムに使用されることができる。
【0024】
駆動輪または駆動ピニオンは、好ましくは、モーターが制動システムの車軸部分に対して駆動輪または駆動ピニオンを移動させることができるように配置されたモーター、特に電気モーターに接続される。モーターは、例えば、ホイールハブ駆動装置、特に直接駆動装置として形成されることができる。
本発明のさらなる詳細および利点は、図面に示される例示的な実施形態を参照して以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】概略平面図において本発明にかかる車両の例示的な実施形態を示している。
図2】斜視図において2つの制動システムを有する例示的な車軸支持ユニットを示している。
図3図2にかかる第1の制動システムの斜視断面図を示しており、断面は車輪の軸を含む。
図4図2にかかる第2の制動システムの断面図を示しており、断面は車輪の軸を含む。
図5図4にかかる第2の制動システムの詳細な断面図を示している。
図6】車輪として形成された回転要素の斜視図を示している。
図7】第1の例示的な実施形態にかかる制動システムの部品のいくつかの斜視図または断面図を示している。
図8】第1の例示的な実施形態にかかる制動システムの部品のいくつかの斜視図または断面図を示している。
図9】第1の例示的な実施形態にかかる制動システムの部品のいくつかの斜視図または断面図を示している。
図10】第2の例示的な実施形態にかかる制動システムの部品のいくつかの斜視図または断面図を示している。
図11】第2の例示的な実施形態にかかる制動システムの部品のいくつかの斜視図または断面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、スケートボードとして形成された、本発明にかかる車両1の例示的な実施形態の概略平面図を示している。車両1は、板として構成され、上側に車両1のユーザのための起立面3を提供する基体2を有する。上側とは反対側の基体2の下側には、2つのトラックによって形成された正確に2つの車軸支持ユニット4が配置され、すなわち、各車軸支持ユニット4は、車輪5として形成された正確に2つの回転要素を備える。例示的な実施形態では、車輪5は、ローラとして、例えば硬質ゴムローラまたはポリウレタンローラとして形成される。車軸支持ユニット4は、それぞれ、2つの車軸部分6を有し、各車軸部分6は、車輪5の1つを担持している。車軸支持ユニット4は、傾動装置7を介して基体3に接続されている。これらの傾動装置7は、車両1が起立面3上で運転者の体重を移動させることによってコーナリングされることができるように、車軸支持ユニット4が基体2に対して傾動または回動されることを可能にする。
【0027】
図2は、図1にかかる車両1において、例えば後車軸として使用されることができる車軸支持ユニット4の実施形態を示している。代替的または追加的に、そのような車軸支持ユニット4は、車両1の前車軸として使用されることができる。車軸支持ユニット4は、軸Dを中心に回転可能な2つの車輪5を有し、各車輪5を制動するための制動装置10が、2つの車輪5のそれぞれに配置されている。車輪5は、それぞれ、車軸支持ユニット4の2つの車軸部分6の一方に回転可能に配置されている。制動装置10は、図3図4、および図5に示される、第1の制動要素13の環状制動面13.1は、軸Dに対して同心円状に、車輪5から距離を置いて、車輪5から離れて配置された休止位置と、第1の制動要素13の制動面13.1が車輪5に共回転可能に接続された制動ディスク34と接触する制動位置との間で移動されることができる第1の制動要素13を備える。休止位置では、第1の制動要素13の制動面13.1は、第1の制動要素13が車輪5の回転運動を減速させるいかなる効果も生じさせることができないように、制動ディスク34から離間している。一方、第1の制動要素13の制動面13.1が制動ディスク34と接触している場合、車輪5の回転運動は、環状制動面13.1によって減速されることができる。
【0028】
この点において、車軸支持ユニット4は、2つの同一に構成された制動システム30を備え、回転要素は、それぞれ、車輪5として形成される。
【0029】
制動に必要な圧力の可能な限り最も均一な分配を達成するために、第1の制動要素13は、休止位置と制動位置との間で液圧的に移動されることができる。その結果、増加した車両の耐用年数が達成されることができるように、制動ディスク43または車輪軸受の個々の領域に過大な応力がかかるリスクが低減されることができる。制動ディスク34は、第1の摩擦面34.1と、第1の摩擦面34.1に対向する第2の摩擦面34.2とを有する。制動位置では、第1の制動要素13、特に制動面13.1は、制動ディスク34の第1の摩擦面34.1と接触している。さらに、制動システム10は、第2の制動要素35を有し、これは、第1の制動要素13が制動位置にある制動ディスク34を第2の制動要素35に向かって押し付けるように配置され、その結果、第2の制動要素35は、制動位置にある制動ディスク34の第2の摩擦面34.2と接触する。したがって、車輪5に共回転可能に接続された制動ディスク34は、制動位置において第1の制動要素13と第2の制動要素35との間にクランプ締めされる。これは、軸方向、すなわち軸Dの方向に作用する力が車輪5に導入されることを防止することができる。さらにまた、車輪5を支持するローラ軸受20、21に軸方向に作用する制動時の力が低減される。
【0030】
図3および図4の表現から分かるように、制動装置10は、油圧クラッチブレーキのように形成される。制動装置10は、第1の制動要素13に接続され且つ油圧流体を受け入れるための中空円筒形内部15を有するハウジング11内に取り付けられた中空円筒形制動ピストン12を有する。内部15は、制動ピストン12に接続された封止要素12’によって密封されている。ハウジング11は、車軸支持ユニット4の車軸部分6にクランプ締めされ、車輪の軸Dまたは車軸部分6に対して同心円状に配置されている。内部15に存在する油圧流体を介して、制動ピストン12、したがって第1の制動要素13に油圧を加えることができる。ハウジング11は、油圧流体を導入するための図示しない流体接続部を有する。さらに、換気接続部を設けることができる。
【0031】
制動ディスク34は、車輪5に共回転可能に接続されている。車輪5内には、車輪5を駆動するモーター8が配置されている。モーター8は、電気モーターとして形成され、車軸部分6にしっかりと接続された固定子と、固定子に対して回転可能であり且つ制動ディスク34に共回転可能に接続された回転子9とを有する。モーター8の固定子は、ねじ36によって車軸部分6に締結されている。車輪5を回転可能に取り付けるために、車輪5の内側に第1の軸受20が設けられ、車輪5の外側に第2の軸受21が設けられる。第1の軸受20および/または第2の軸受21は、ころ軸受として構成される。制動装置のハウジング11は、ケーブル18が軸Dと平行に案内される、図示されていない開口部を有する(図6も参照)。モーター8は、ケーブル18を介して電気エネルギーが供給され、および/または電気的に制御されることができる。
【0032】
図5は、制動ディスク34の領域の詳細を拡大して示している。第1の制動要素13は、休止位置にあり、第1の制動要素13は、制動ディスク34と接触していない。第1の制動要素13の休止位置では、第2の制動要素35もまた、好ましくは、制動ディスク34と接触しておらず、間隙によって制動ディスクから分離されている。図5は、第1の制動要素13の休止位置を示しているが、この図には、第1の制動要素13の制動位置に存在する力流路Aが描かれている。この制動位置では、第1の制動要素13は、制動ディスク34の第1の摩擦面34.1と接触し、制動ディスク34の第2の摩擦面34.2と接触するように制動ディスク34を第2の制動要素35に押し付ける。力流路Aは、封止要素12’、制動ピストン12、第1の制動要素13、制動ディスク34、第2の制動要素35、内側ころ軸受20の固定軸受リング、固定子8’の領域、ねじ36、車軸部分6、および制動装置のハウジング11を通って延在していることが分かる。内側ローラ軸受20の転動体は、応力を受けていない。
【0033】
図6は、車輪5として形成された制動システム30の回転要素を示している。車輪5に接続されたモーター8の回転子9の内側端面には、いくつかの形状嵌合要素38を有する内側輪郭が設けられている。これらは歯として形成され、膨出部39によって互いに分離されている。
【0034】
図7の表現から分かるように、環状制動ディスク34は、同様に歯として構成される形状嵌合要素41が設けられる外側輪郭を有する。制動ディスク34の外側輪郭上の形状嵌合要素40は、組み立てられた状態で、回転子9の内側輪郭上の形状嵌合要素と相互作用し、制動ディスク34を軸Dの周りの回転に対して固定させる。
【0035】
第2の制動要素35は、環状停止部のように形成され、制動装置10のハウジング11にしっかりと接続されていることも分かる。第2の制動要素35は、ハウジング11の外側輪郭上の対応する形状嵌合要素47と相互作用するいくつかの形状嵌合要素40、ここではいくつかのラグを有する。結果として、第2の制動要素34は、軸Dを中心とした望ましくない回転に対して固定される。
【0036】
図8および図9から分かるように、制動装置10は、いくつかの、ここでは2つの板ばね42を有し、それによって第1の制動要素13が制動位置から休止位置に戻されることができる。板ばね42は、ハウジング11と第1の制動要素13との間に配置されている。この点において、板ばねは、第1の制動要素13の復元機能を果たす。さらに、板ばねはまた、制動中に発生するトルクを支持する機能も有する。板ばね42は、軸Dを中心として円周方向に延在しているため、制動中に発生するトルクを吸収することができる。
【0037】
板ばね42は、それぞれ、第1のリベット44によってハウジング11に、および第2のリベットによって第1の制動要素13に接続されている。第1のリベット44は、ねじ45がねじ込まれる雌ねじを有する。
【0038】
図10および図11は、代替的に図1にかかる車両に使用されることができる制動装置10の第2の例示的な実施形態を示している。第2の例示的な実施形態にかかる制動装置10は、本質的に第1の例示的な実施形態のものに対応しており、したがって、先行する図に関する説明が参照される。第1の例示的な実施形態とは対照的に、第2の制動要素35は、軸Dの周りに同心円状に配置され且つハウジング11によって同心円状に囲まれた中空円筒形アセンブリ領域35.2に一体的に接続されている。環状の第2の制動要素35とアセンブリ領域35.2との間の接続は、いくつかのウェブ35.1を介して確立される。ウェブ35.1は、ここでは、制動中の軸Dを中心とした望ましくない回転を防止するために、ハウジング11上の対応する凹部と相互作用する形状嵌合要素を形成する。しかしながら、アセンブリ領域35.2によって、制動中に力の流れが車軸支持部6を通り過ぎることが達成される。制動中の力の流れは、封止要素12’および制動ピストン12、第1の制動要素13、制動ディスク34、第2の制動要素35、ウェブ35.1、中空円筒形アセンブリ領域35.2、ロックリング46を通ってハウジング11内に導かれることができる。
【0039】
車輪の車軸支持部6またはころ軸受20、21を貫通しない上述した力の流れのために、第2の例示的な実施形態にかかる制動装置10は、車軸支持部6またはころ軸受20、21を補強する必要なしに既存の駆動システムに適合させることができる。
【0040】
上述した車両1は、スケートボードの形態で、軸Dを中心に回転可能な少なくとも1つの回転要素5と、回転要素5を制動するための制動装置10とを有する少なくとも1つの制動システム30を備え、制動装置10は、休止位置と制動位置との間で移動可能であり、休止位置および制動位置において回転要素5の軸Dに対して同心円状に配置された環状制動面13.1を有する第1の制動要素13を有する。さらにまた、制動システム30は、第1の摩擦面34.1と、第1の摩擦面34.1の反対側の第2の摩擦面34.2とを有する、回転要素5に共回転可能に接続された制動ディスク34を備え、第1の制動要素13の環状制動面13.1は、休止位置において制動ディスク34から距離を置いて配置され、制動位置において制動ディスク34の第1の摩擦面34.1と接触し、第2の制動要素35は、第2の制動要素35が制動位置において制動ディスク34の第2の摩擦面34.2と接触するように、第1の制動要素13が制動位置において制動ディスク34を第2の制動要素35に向かって押し付けるように配置されている。
【0041】
図示の例示的な実施形態の変形例によれば、記載された制動システム30は、駆動輪または駆動ピニオンとして形成された回転要素を有する駆動ユニットの一部とすることができる。そのような駆動ユニットは、例えば、産業システム、特に生産システム、生産ロボット、またはコンベアシステムにおいて使用されることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 車両
2 基体
3 起立空間
4 車軸支持ユニット
5 車輪
6 車軸部分
7 傾動装置
8 エンジン
8’ 固定子
9 回転子
10 制動装置
11 ハウジング
12 制動ピストン
12’ 封止要素
13 第1の制動要素
13.1 制動面
15 内部
18 ケーブル
20 軸受
21 軸受
30 制動システム
34 制動ディスク
34.1 摩擦面
43.2 摩擦面
35 第2の制動要素
35.1 ウェブ
35.2 アセンブリ領域
36 ねじ
38 歯
39 膨出部
40 形状嵌合要素
41 形状嵌合要素
42 板ばね
43 リベット
44 リベット
45 ねじ
46 固定リング
47 形状嵌合要素
A 力流路
D 軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11