(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】誘導式の回転数センサおよび誘導式の回転数センサを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
G01P 1/02 20060101AFI20221018BHJP
G01P 3/48 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G01P1/02
G01P3/48 Z
(21)【出願番号】P 2021535194
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2019083502
(87)【国際公開番号】W WO2020126479
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】102018132709.9
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597007363
【氏名又は名称】クノル-ブレムゼ ジステーメ フューア ヌッツファールツォイゲ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Knorr-Bremse Systeme fuer Nutzfahrzeuge GmbH
【住所又は居所原語表記】Moosacher Strasse 80, D-80809 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クラウス レヒナー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ クルフティンガー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ フーバー
(72)【発明者】
【氏名】イネス フルーシュトアファー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ビュトナー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン パルツァー
【審査官】森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-327642(JP,A)
【文献】特開2007-170965(JP,A)
【文献】実開平05-030765(JP,U)
【文献】実開昭62-024359(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第10111980(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01P
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導式の回転数センサであって、
コイル(10)を備えるコイル巻枠(100)、およびコイル巻線に対して少なくとも部分的に軸線方向または半径方向に延在する複数の接続線路(30)と、
前記コイル巻枠を少なくとも部分的に取り囲むプラスチック材料製の被覆体(200)と、
前記被覆体(200)の形成を容易にするための位置固定手段(150,160)と
を有し、
前記位置固定手段(150,160)は、
半径方向に延在する電気的な接続線路(30)については、前記被覆体(200)に設けられた材料凹部(160)であって、前記被覆体(200)の形成時に前記接続線路を互いに所定の間隔を置いて位置固定するための材料凹部(160)、または
前記被覆体(200)の形成時に、このために使用される金型に対して相対的な前記コイル巻枠(100)の回動を阻止するための回動防止部(150)であって、部分的に前記被覆体を越えて突出しているかまたは少なくとも前記被覆体の外側の表面にまで延在している回動防止部(150)
を有
し、
前記被覆体(200)を保護するための、トランペット状の縁拡幅部(320)を備える保護スリーブ(300)を有し、
確実な封止を保証するために、前記保護スリーブ(300)と前記被覆体(200)との間にシールOリング(330)が形成されていることを特徴とする、誘導式の回転数センサ。
【請求項2】
前記被覆体(200)は、外側の複数のリブ(230)を有し、該リブ(230)は、外側の表面に形成されていて、外側の保護スリーブのスリーブ緊締に適しており、前記回動防止部(150)は、1つのリブ(230)の一区分の一部であることを特徴とする、請求項1記載の誘導式の回転数センサ。
【請求項3】
前記被覆体(200)は、少なくとも1つの台地状部(240)を有し、該台地状部(240)は、外側の保護スリーブ(300)を加締め加工(310)によって前記被覆体(200)に位置固定するために形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の誘導式のセンサ。
【請求項4】
前記トランペット状の縁拡幅部(320)は、前記保護スリーブ(300)と前記被覆体(200)とを固定するための固定手段を有することを特徴とする、請求項
1から3までのいずれか1項記載の誘導式のセンサ。
【請求項5】
前記固定手段は、係止フックまたはバヨネットクロージャを有することを特徴とする、請求項
4記載の誘導式のセンサ。
【請求項6】
前記接続線路(30)は、軸線方向に延在しており、
前記被覆体(200)の形成中または形成後のハンドリングを容易にすると共に更なる回動防止部を提供するために、前記被覆体(200)は、複数の平坦加工面(250)を有し、該平坦加工面(250)同士の間に前記コイル巻枠(100)に向かって前記接続線路(30)が延在している
ことを特徴とする、請求項1から
5までのいずれか1項記載の誘導式のセンサ。
【請求項7】
前記平坦加工面(250)は、マーキング面を有することを特徴とする、請求項
6記載の誘導式のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導式の回転数センサおよび誘導式の回転数センサを製造するための方法に関する。本発明は、特に、アキシャル型の誘導式の回転数センサにも、ラジアル型の誘導式の回転数センサにも使用可能であるコイル巻枠を、プラスチック材料の射出によりこの材料で取り囲むことに関する。
【0002】
パッシブ回転数センサは、車両技術、特にトラックにおいて、回転可能な構成要素の回転速度を測定するために使用される。アンチロックシステムを適正に機能させるためには、例えば、該当するホイールの回転数が連続して求められなければならない。この回転数センサは、コイルに対して相対的なポールホイールの回転速度を誘導式に測定することをベースにしていることが多い。このことは非接触式に可能であり、さらには、磁場がハーメチックシールを難なく貫通することができるので、このようなセンサは、車両用途において典型的であるような環境影響に対して極めて頑強である。
【0003】
この回転数センサは、ラジアル型のセンサまたはアキシャル型のセンサとして製造することができる。アキシャル型の回転数センサでは、電気的な接続線路が、軸線方向で回転数センサから離れる方向、つまり、延在しているコイルの巻成体の中心となる軸線方向軸線に対して平行な方向に案内される。ラジアル型の回転数センサでは、電気的な接続線路が、(軸線方向の軸線に対して垂直な)半径方向で回転数センサから外向きに延在している。
【0004】
従来の回転数センサでは、ラジアル型の回転数センサもしくはアキシャル型の回転数センサに対して固有のコイル巻枠および/またはバスバーが使用され、射出成形により取り囲まれることによって相応に保護される。このためには、コイル巻枠および/またはバスバーが、例えば射出成形中の回動を阻止するために、相応の射出成形用金型内に位置固定される。この位置固定は、例えば、コイル巻枠のポールコアの固持によって行われる。このポールコアは、射出成形プロセス後に相応に短縮される。このやり方は手間を要し、欠陥を招きやすい。なぜならば、確実な回動防護をポールコアを介して常に保証することができるというわけではないからである。さらに、ポールコアの短縮は付加的な作業ステップである。
【0005】
したがって、簡単に製造することができる誘導式のセンサに対する必要性がある。
【0006】
上述した問題の少なくとも一部は、請求項1記載の誘導式の回転数センサと、請求項9記載の、誘導式の回転数センサを製造するための方法とによって解決される。従属請求項は、独立請求項の対象の更なる有利な実施形態を定義している。
【0007】
本発明は、誘導式の回転数センサに関する。この回転数センサは、コイルを備えたコイル巻枠、およびコイル巻線に対して軸線方向または半径方向でコイル巻枠から離れる方向に延在する複数の接続線路と、コイル巻枠を少なくとも部分的に取り囲むプラスチック材料(例えば射出成形材料または流込み成形材料)製の被覆体とを有している。回転数センサは、さらに、被覆体の形成を容易にするための位置固定手段を有している。この位置固定手段は、半径方向に延在する接続線路については、被覆体に設けられた材料凹部であって、被覆体の形成時に電気的な接続線路を互いに所定の間隔を置いて位置固定するための材料凹部を有していてよい。位置固定手段は、また、被覆体の形成時に、このために使用される金型に対して相対的なコイル巻枠の回動を阻止するための回動防止部であって、部分的に被覆体を越えて(半径方向に)突出しているかまたは少なくとも被覆体の外側の表面にまで延在している回動防止部を有していてもよい。少なくとも一方の形態の位置固定手段または両方の形態の位置固定手段は、誘導式の回転数センサに形成されている。
【0008】
材料凹部は、さらに、被覆体の形成時に迅速な冷却が達成されるという利点を提供する。材料凹部は、例えば、金型に設けられた凸設部または雄型によって得ることができる。回動防止部は、例えば、金型に設けられた1つまたはそれ以上の凹設部/溝内に係合し、これによって、コイル巻枠を金型内に相対回動不能に保持することができる。
【0009】
任意選択的には、被覆体が、外側の複数のリブを有しており、これらのリブが、外側の表面に形成されていて、外側の保護スリーブのスリーブ緊締に適しており、回動防止部が、1つのリブの一区分の一部である。リブは、金型に設けられた溝によって形成されるので、この溝内への回動防止部の係合が、自動的に回動防止に繋がる。ここでは、金型における変更は不要である。
【0010】
任意選択的には、被覆体が、例えば少なくとも1つのリブを終端させることができる少なくとも1つの台地状部を有している。この台地状部は、外側の保護スリーブを加締め加工によって被覆体に位置固定するために形成されていてよい。したがって、台地状部は、特に凸設部を成していて(「隆起」していて)、回動防止部に等しいレベルを有することができる。使用される加締め加工部は、保護スリーブの、被覆体への固定に繋がるあらゆる形態の局所的な塑性変形部であってよい。この箇所では、被覆体も僅かに塑性変形させられてよい。
【0011】
任意選択的には、誘導式の回転数センサが、被覆体を保護するための、トランペット状の縁拡幅部を備えた(例えば金属製の)保護スリーブを有している。この保護スリーブは、被覆体を少なくとも部分的に収容している。トランペット状の縁拡幅部は接続線路に向けられている。任意選択的には、さらに、確実な封止を保証するために、保護スリーブと被覆体との間に(例えば外側の縁領域に)シールOリングが形成されている。トランペット形状によって、Oリングへの保護スリーブの被嵌が容易になる。
【0012】
任意選択的には、トランペット状の縁拡幅部が、保護スリーブと被覆体とを互いにまたは金型に固定するための固定手段を有している。これに相応して、任意選択的には、被覆体が、固定を達成するために、係止フック/バヨネットクロージャに係合する凸設部を有していてよい。固定手段は、例えば係止フックおよび/またはバヨネットクロージャを有していてよく、これによって、保護スリーブが、(例えばリブおよび加締め加工部に対して付加的に)被覆体にさらに保持される。
【0013】
任意選択的には、被覆体の形成中または形成後のハンドリングを容易にすると共に更なる回動防止部を提供するために、被覆体が、複数の平坦加工面を有しており、これらの平坦加工面同士の間にコイル巻枠に向かって接続線路が延在している。任意選択的には、平坦加工面が、(例えばレーザによってマーキングを形成するための)マーキング面を有している。
【0014】
本発明は、例えば上で定義したような誘導式の回転数センサを製造するための方法にも関する。この方法は、
- コイルを備えるコイル巻枠、およびコイル巻線に対して軸線方向または半径方向に延在する複数の接続線路を用意することと、
- コイル巻枠を少なくとも部分的に取り囲むプラスチック材料(射出成形材料、流込み成形材料等)製の被覆体を形成することと、
- 被覆体の形成中にコイル巻枠の少なくとも一部を位置固定することと
を含む。
【0015】
位置固定することは、半径方向に延在する電気的な接続線路については、この接続線路同士を互いに予め規定の間隔を置いて位置固定するために、被覆体の形成中に接続線路同士の間に雄型(または凸設部)を導入することを含んでいてよい。位置固定することは、また、コイル巻枠から半径方向に突出した回動防止部を使用して、被覆体を形成するために使用される金型により保持されるように、この使用される金型内にコイル巻枠を固持することを含んでいてもよい。被覆体の形成時には、回動防止部が部分的に被覆体によって取り囲まれる。
【0016】
任意選択的には、被覆体を形成することが、少なくとも2つの下側の金型部分と1つの上側の金型部分とを備える線形に移動可能なテーブルを有する金型を使用して、線形の移動によってコイル巻枠への装着を可能にすることを含んでいる。「上側」および「下側」という概念は、例えば、被覆体のプラスチック材料の流れ方向が上方から下方に生じる想定によって定義されてよい。
【0017】
コイル巻枠は、コイルとの電気的な接触接続のために、2つのバスバーを有しており、これら両方のバスバーは、コイルの線材接続部と接続線路による電気的な接触接続部用のコンタクト領域との間にそれぞれ1つのバリアを有していてよい。この場合、実施例による方法は、(被覆体を形成することの一部として)任意選択的には、コイル巻枠を、射出成形により取り囲むことを含んでおり、この射出成形時に使用される射出成形材料がバリアによって変向させられるように、射出成形が実施される。変向を生じさせるために、バリアは相応の幾何学形状(幅、高さ等)を有していて、相応に(例えば、コイルの線材接続部の近くで射出成形方向に対して垂直に)配置されている。射出成形時には、高い圧力が使用されることが多いので、バリアは、コイルへの線材接触接続部(例えば相応の溶接シーム)に対する保護を提供する。なぜならば、主圧が、まずは、バリアによって受け止められるからである。
【0018】
本発明の実施例は、上述した技術的な問題の少なくとも一部を、誘導式のセンサの製造を容易にする特有の位置固定手段によって解決している。このために、1つには、例示的な射出成形プロセス中の回動を阻止するために、回動防止部がコイル巻枠の一部として直接形成されてよい。もう1つには、雄型/凸設部により生じた、ラジアル型のバリエーション用の材料凹部によって、射出成形プロセス中の電気的なコンタクトの確実な位置固定が可能となる。射出成形プロセスは、電気的な接触接続部への高い機械的な負荷に繋がるので、欠陥率を少なく保つためには、コンタクトの確実な保護または位置固定が重要となる。
【0019】
この簡単な加工は、必要となる部材の個数を大幅に減じることができるという更なる利点を提供する。そして、このことは、コスト削減に繋がる。
【0020】
本発明の実施例は、種々異なる実施例の以下の詳細な説明および添付の図面から一層理解しやすくなっている。しかしながら、これらの実施例は、開示内容を固有の実施形態に限定するように解釈すべきものではなく、単に説明および理解のために役立つにすぎない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例による誘導式の回転数センサを示す図である。
【
図2A】別の実施例によるコイル巻枠と接続線路との電気的な接触接続部を示す図である。
【
図2B】別の実施例によるコイル巻枠と接続線路との電気的な接触接続部を示す図である。
【
図3A】別の実施例によるアキシャル型の回転数センサに対する射出成形プロセスの結果を示す図である。
【
図3B】別の実施例によるアキシャル型の回転数センサに対する射出成形プロセスの結果を示す図である。
【
図4】回転数センサの保護スリーブに対する実施例を示す図である。
【
図5】アキシャル型の構造実施形態における完成した誘導式の回転数センサの横断面図である。
【0022】
図1には、本発明の一実施例による誘導式の回転数センサが示してある。この回転数センサは、軸線方向の軸線Rを中心としたコイル/コイル巻線10を備えたコイル巻枠100と、コイル巻線10に対して、例えば半径方向に(軸線Rから離れる方向で)延在する接続線路30とを有している。この回転数センサは、接続線路が軸線方向の軸線Rに対して(ほぼ)平行に導出されるアキシャル型の回転数センサと異なり、ラジアル型の回転数センサとも呼ばれる。誘導式の回転数センサは、さらに、プラスチック材料(例えば射出成形材料または流込み成形材料)から成る被覆体200を有している。この被覆体200は、コイル巻枠100を少なくとも部分的に取り囲んでおり、これによって、通電用の線路が、湿分および別の環境影響から防護されている。
【0023】
さらに、誘導式の回転数センサには、被覆体200の形成を容易にするために形成された位置固定手段150,160が設けられている。このために、この位置固定手段150,160は、図示のラジアル型のセンサ用に材料凹部160を有している。この材料凹部160は被覆体に形成されていて、この被覆体200の形成時に複数の電気的な接続線路30を互いに規定の間隔を置いて保持することができる。これによって、被覆体の形成により相応の接触接続部に高い機械的な負荷が加えられる場合でも、両方の接続線路の間の確実な絶縁が保証される。その上、凹部160によって、被覆体200の形成後のより迅速な冷却、ひいては、より迅速な製造が可能となる。
【0024】
位置固定手段は、さらに、被覆体200の形成時に、このために使用される金型に対して相対的なコイル巻枠100の回動を阻止する回動防止部150を有していてよい。この回動防止部150は、例えば部分的に被覆体200を越えて突出しているかまたは少なくとも被覆体200の表面にまで延在しており、これによって、被覆体を形成するために取り囲んでいる金型内での保持が達成される。
【0025】
コイル巻枠100内には、磁石40とポールコア50とが位置している。このポールコア50はその棒状の端部51でもって被覆体200もしくはコイル巻枠を越えて突出しており、これによって、磁力線または磁力線の変化が、コイル10の外側領域から内側スペースへと効率よく案内される。コイル10は、軸線方向で前側区分において、コイル巻枠100のディスク状の端区分115によって画定される。この端区分115は、ポールコア50の棒状の端部51が通過して延在する孔を有している。
【0026】
さらに、コイル巻枠100は、磁石40を軸線方向の軸線Rに対して平行な軸線方向の変位に対して位置固定するように構成された係止フック130を有している。この位置固定は、製造誤差がある場合に後続の射出成形よりも前に磁石20とポールコア50とを取り出すことができるかまたは決して最初に接合させないという利点を提供する。こうして、製造における不良品率が最小限に抑えられる。
【0027】
図2Aおよび
図2Bには、コイル巻枠100と接続線路30もしくは個々の線路31,32との可能な電気的な接触接続部が示してある。
図2Aの実施例では、両方の電気的な線路31,32が、コンタクト区分122を備えた互いに反対側の2つのバスバー120に向かってY字形に案内される。
図2Bには、電気的な線路31,32が、磁石40をU字形に取り囲むように案内され、バスバー120もしくはコンタクト区分122に並列に接続される実施例が示してある。
【0028】
図1に示した材料凹部160は、例えば雄型を介して達成される。この雄型は、例示的な射出成形用金型内で軸線方向R(
図2A、
図2Bでは下向き)に延在しており、これによって、両方の電気的な接続線路31,32もしくは両方の電気的な接続線路31,32に接続されるコンタクト区分122が、互いに確実に分離される。例示的な射出成形のためには大きな圧力が利用されるので、この位置固定は安全性を提供する。なぜならば、射出成形圧によって、射出成形時にバスバー120もしくはコンタクト区分122が互いに押し離されて、電気的な短絡が生じないようになっているからである。
【0029】
図3Aには、(例えば例示的な射出成形プロセス後の)被覆体200を備えたアキシャル型の誘導式の回転数センサに対する実施例の立体図が示してあり、
図3Bには、同実施例の側面図が示してある。形成された被覆体200は、図示の実施例では、多数(例えば3つまたは4つ)のリブ230を有している。これらのリブ230は、次いで、保護スリーブ(例えば金属スリーブ)をコイル巻枠に対して不動に位置固定するために役立つ。被覆体200の下側には、ポールコア50の棒状の端部51(
図1参照)を同じく認めることができる。
【0030】
使用される回動防止部150は、少なくとも部分的に被覆体200を越えて突出しているかまたは少なくとも表面にまで延在している。回動防止部150a,150bは、種々異なる形状の凸設部を有していてよい。例えば、回動防止部150は、矢状の要素150aまたはピン状の要素150bであってよい。回動防止は、使用される例示的な射出成形用金型内での回動防止部150のアンカ固定または保持によって達成される。矢状の要素150aはリブ230の一部になっていてよく(
図3B参照)、射出成形用金型内で、リブ230を成形/注型する溝内に保持される。したがって、この矢状の要素150aは、金型内での挿入されたコイル巻枠の回動を阻止する。また、任意選択的には、被覆体200の一部として台地状部240も形成される。この台地状部240は、例えば、リブ230が終端する端領域を成していてよい。台地状部240は、例えば、後続の方法ステップでスリーブを被覆体200に、例えば加締め加工によって位置固定するために役立つ。
【0031】
凸設部150a,150bは、例えば少なくとも0.1mmだけディスク状の端区分115を半径方向に越えて延在している(
図1参照)。これによって、コイル巻枠100を、例えば射出成形用金型内または被覆のための別の金型内に位置固定することが可能となる。この場合には、回動が阻止されるだけではない。同時に、例えば少なくとも3つの凸設部150a,150bがコイル巻枠100の周方向に沿って形成されている場合には、凸設部150a,150bが、例示的な射出成形用金型内でスペーサとして働くこともできる。また、任意選択的には、
図3Aに示したごとく、被覆体が溝331を形成するように、少なくとも1つの回動防止部150bを形成することも可能である。
【0032】
図3Aおよび
図3Bに示した実施例は、さらに、被覆体200の一部としての平坦加工区分250を有している。この平坦加工区分250は、例えば、被覆体200の形成後のハンドリングのために使用することができる。さらに、平坦加工区分250は、誘導式の回転数センサに(例えばレーザによって)マーキングするためのマーキング範囲として用いられてもよい。このために、平坦加工区分250には、専用のマーキング範囲が設けられていてよい。
【0033】
また、任意選択的には、被覆体200の拡幅された区分の溝内にシールリング330が形成されており、これによって、保護スリーブの装着時に確実な密封が保証される。
【0034】
図4には、使用される保護スリーブ300に対する実施例が示してある。この保護スリーブ300は、トランペット状に拡幅された縁領域320を有している。このトランペット状に拡幅された縁領域320内に、内側領域の密封を確保するために、シールリング330が配置される(
図3b参照)。保護スリーブ300は、例えば加締め加工部310によって、その内側に位置する被覆体200に固定することができる。しかしながら、加締め加工は、例えば
図3Bに認めることができるように、台地状領域240で行われてもよい。
【0035】
トランペット状に拡幅された縁領域320の端領域には、任意選択的に固定手段が設けられていてよい(
図4には認めることができない)。この固定手段は、保護スリーブ300を被覆体200に固定するかまたは射出成形用金型内に固定するために役立つか、もしくは射出成形後に誘導式のセンサを保護スリーブ300と一緒に金型から取り出すために役立つ。このために、トランペット形状の縁部には、例えば別の係止フックまたはバヨネットクロージャが形成されていてよい。
【0036】
図5には、アキシャル型の構造実施形態における完成した誘導式のセンサの横断面図が示してある。電気的な接続線路30は、軸線方向の軸線Rに対して平行にセンサ内に進入していて、バスバー120のコンタクト区分122に接触接続するために、Y字形に拡開されている。電気的な接続線路30とコンタクト区分122との間の電気的な接続は、別の実施形態の場合と同様に、溶接によって行われてもよいし、ろう接によって行われてもよいし、圧着によって行われてもよい。
【0037】
バスバー120は、やはり磁石40の両側に配置されていて、コイル10からのコイル線材用の前側のコンタクト区分12を有している。バスバー120はバリア170を形成している。このバリア170は、例示的な射出成形工程の間に射出成形材料をバスバー120のコンタクト領域122から離れる方向に案内して、コイル10に対する接触接続部を保護している。これによって、コイルに対する電気的なコンタクトの損傷により回転数センサを使用することができなくなってしまう危険が生じることなく、射出成形工程を極めて高い圧力下で実施することが可能となる。
【0038】
コイル10は、コイル巻枠100によって前側の巻付け領域に保持される。コイルホルダ100の内部には、磁石40と、別体のポールコア50とが配置されている。コイル巻枠100は、バスバー120および接続線路30に対する接触接続部と一緒に被覆体200によって保護(例えばハーメチックシール)される。さらに、例えばプラスチック材料を含む被覆体200は、保護スリーブ300を介して保護される。この保護スリーブ300は、機械的な影響に対する確実な防護を提供するために、例えば金属を含んでいてよい。ポールコア50の棒状の端部51は、磁力線の確実な案内または近くで回転するポールホイールによる変化を保証するために、例えば保護スリーブ300に突き当てられている。
【0039】
実施例によれば、コンタクト領域122はフレキシブルに曲げられてよく、これによって、製造を1つの共通のコイル巻枠100をベースにして同じ形式で実施することができる。アキシャル型の回転数センサも、ラジアル型の回転数センサも、同一の構成要素を使用することができる。従来の回転数センサと異なり、アキシャル型の回転数センサとラジアル型の回転数センサとに対して、互いに異なるコイル巻枠またはバスバーは不要となる。これによって、必要となる部材が減じられ、加工と組付けとが簡単になり、ひいては、コストが削減される。
【0040】
被覆体200を形成するために、特に射出成形プロセスを使用することができるにもかかわらず、本発明は、固有の被覆体に限定されるものではない。別種のプラスチック材料または方法が使用されてもよい(例えば流込み成形)。このために使用される金型は、有利には、2つの下側の金型半部と1つの上側の金型半部とを備えた線形に移動可能なテーブルを有している。2つの下側の金型半部は、被覆すべき構成要素(コイルを含めたコイル巻枠、バスバー等)への装着のために用いられ、上側の金型半部は、被覆体への材料供給のために設けられている(例えば射出成形材料)。
【0041】
回転数センサのケーブル長さを車両範囲内で極めて長くすることができる(例えば4m以上)ので、装着のために回動運動を実施する従来の金型に比べて、線形に移動可能なテーブルは、接続線路/接続ケーブルが金型内で捩れることがないかまたは絡まることがないという特別な利点を提供する。このことは、また、全自動の製造が可能になるという利点を有している。なぜならば、部分的に長い接続ケーブルが線形にしか移動させられず、これによって、製造プロセスをほとんど妨害しないかまたは決して妨害しないからである。
【0042】
実施例の利点には、特に以下のことが含まれる。
- 金型内でのコイル巻枠100の回動防止が、コイル巻枠100に設けられた凸設部を介して達成され、これによって、例示的な射出成形プロセス中の回動が確実に阻止される。このために、半径方向で矢状の回動防止部を使用することができる。この回動防止部は、製造プロセス中の回動を阻止すると同時に位置固定を提供する。さらに、回動防止部として、位置固定のほかに、同じく製造プロセス中の回動を保証する軸線方向のキー面が設けられている。
- 被覆体が、台地状面を備えたスリーブ緊締用の複数のリブを有している。これらのリブは、スリーブを加締め加工するために使用することができる。
- さらに、ヘッド領域に、データマトリックスコードを使用することができると共にレーザによってマーキングすることができる面が設けられている。
- 特にラジアル型のバリエーションに対して、射出成形プロセス時に素線を位置固定するために使用されるばね弾性的な材料凹部が使用される。
【0043】
明細書、特許請求の範囲および図面に開示した本発明の特徴は、個別にも、任意に組み合わせても、本発明を実現するために重要となる。
【符号の説明】
【0044】
10 コイル/コイル巻成体
12 コイル線材の線材接触接続部
30 (電気的な)接続線路
31,32 接続線路の導体
40 磁石コア/磁石
50 ポールコア
51 ポールコアの棒状の端部
100 コイル巻枠
115 ディスク状の端区分
120 バスバー
122 コンタクト領域
130 係止フック
150 回動防止部、位置固定手段
150a 矢状の要素
150b ピン要素
160 材料凹部
170 バリア
200 被覆体
230 リブ
240 台地状部
250 平坦加工面
300 保護スリーブ/金属スリーブ
310 加締め加工部
320 トランペット状の縁拡幅部
330 Oリング
R 軸線方向の軸線