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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
B23Q11/08 A
B23Q11/08 B
B23Q11/08 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021556097
(86)(22)【出願日】2020-11-10
(86)【国際出願番号】 JP2020041863
(87)【国際公開番号】W WO2021095714
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2019204137
(32)【優先日】2019-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 達裕
(72)【発明者】
【氏名】栗谷 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】酒井 茂次
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-057649(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0112913(KR,A)
【文献】実開昭58-093437(JP,U)
【文献】特開2002-233926(JP,A)
【文献】特開平02-269508(JP,A)
【文献】特開平11-291141(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0047077(KR,A)
【文献】特開平07-214455(JP,A)
【文献】特開平11-070438(JP,A)
【文献】特開2006-123053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
案内部を具備するベッドと、
前記ベッドにそれぞれ搭載された第1構造体および第2構造体と、
前記第1構造体を前記案内部に沿って移動させる第1駆動部と、
前記第1駆動部の少なくとも一部を覆うプロテクタと、を具備し、
前記プロテクタは、前記第1構造体の移動に伴って伸縮可能であり、
前記第1構造体および前記第2構造体の少なくとも一方が、前記プロテクタの少なくとも一部を収容するプロテクタ収容部を有し、
前記プロテクタ収容部が、前記第1構造体および前記第2構造体の少なくとも一方の台部に設けられ、前記第1構造体の移動方向のみに向かって開口する空間である、工作機械。
【請求項2】
前記プロテクタの伸縮方向において離間して設けられた第1接続箇所および第2接続箇所が、それぞれ前記第1構造体および前記第2構造体に取り付けられている、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記プロテクタが、相対移動可能に、かつ隣接する一対の少なくとも一部が重なり合うように組み合わされた複数のカバー体を有する、請求項1または2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記空間が前記第1構造体の台部に設けられる場合、前記第1構造体の前記空間は、前記第2構造体に向かって開口しており、
前記空間が前記第2構造体の台部に設けられる場合、前記第2構造体の前記空間は、前記第1構造体に向かって開口している、請求項1~3のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記プロテクタが、前記第1構造体の移動方向に沿って架設された長尺部材により支持されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記プロテクタが、伸縮の際に前記長尺部材に沿って走行する回転体を具備する、請求項5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記第1構造体および前記第2構造体の少なくとも一方が、前記長尺部材を支持する少なくとも1つの支持部材を有する、請求項5または6に記載の工作機械。
【請求項8】
前記長尺部材が、ワイヤーロープまたはロッド部材である、請求項5~7のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項9】
前記第2構造体を前記案内部に沿って移動させる第2駆動部を更に具備し、
前記第2駆動部の少なくとも一部も前記プロテクタで覆われている、請求項1~8のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項10】
前記第1構造体が、刃物台または振れ止めであり、
前記第2構造体が、主軸台または心押し台である、請求項1~9のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項11】
前記第1構造体が、テーブルであり、
前記第2構造体が、主軸を装着するコラムである、請求項1~9のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項12】
前記プロテクタ収容部が、前記第1構造体の移動方向に沿って延びるように前記台部に設けられた穴である、請求項1~11のいずれか1項に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械では、刃物台、主軸台などの構造体がX、Y、Z方向に独立に駆動され、例えば刃物台に装着された切削工具により主軸に装着されたワークに切削加工が施される。
【0003】
工作機械のベッドに装着された構造体は、通常、ベッドに設けられたガイドレールに沿って移動する。その際、ボールねじを利用して構造体の移動が行われる。ワークの切削加工による切削屑がボールねじに付着すると、ボールねじが損傷するおそれがある。ボールねじを切削屑から保護するには、ボールねじを覆うプロテクタが必要である。
【0004】
例えば、特許文献1は、相対移動可能に内外に重なり合い且つ相対移動により伸縮し得るように組み合わされた複数のカバー体を備えた工作機械のテレスコピックカバーにおいて、内外に隣接する各組のカバー体において、外側カバー体の両側壁部に伸縮方向と平行に延びる1対の案内部材を設けると共に、内側カバー体の側壁部の外側カバー体側基端部から外側カバー体の方へ伸縮方向と平行に突出して前記1対の案内部材に摺動自在に夫々係合された1対の被案内部材を設けたことを特徴とする工作機械のテレスコピックカバーを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-50501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ベッドに複数の構造体が装着される場合、構造体間にプロテクタを配置すると、プロテクタが障害となり、構造体同士の距離を近づけることが困難になる。例えば、構造体として第1主軸台、第2主軸台および1つ以上の刃物台を具備する工作機械の場合、工作機械によるワークの加工の利便性を考慮すると、刃物台と第1主軸台または第2主軸台との距離を自在に制御できることが望ましい。しかし、第1主軸台もしくは第2主軸台と刃物台との間にプロテクタが介在すると、刃物台を第1主軸台または第2主軸台に十分に接近させることが困難になる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑み、本発明の一側面は、案内部を具備するベッドと、前記ベッドにそれぞれ搭載された第1構造体および第2構造体と、前記第1構造体を前記案内部に沿って移動させる第1駆動部と、前記第1駆動部の少なくとも一部を覆うプロテクタと、を具備し、前記プロテクタは、前記第1構造体の移動に伴って伸縮可能であり、前記第1構造体および前記第2構造体の少なくとも一方が、前記プロテクタの少なくとも一部を収容するプロテクタ収容部を有し、前記プロテクタ収容部が、前記第1構造体および前記第2構造体の少なくとも一方の台部に設けられ、前記第1構造体の移動方向に向かって開口する空間である、工作機械に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る上記側面によれば、構造体を移動させる駆動部を切削屑から保護するプロテクタが構造体同士の接近を大きく制限することがない。よって、工作機械によるワークの加工の利便性が向上する。
【0009】
本発明の新規な特徴を添付の請求の範囲に記述するが、本発明は、構成および内容の両方に関し、本願の他の目的および特徴と併せ、図面を照合した以下の詳細な説明によりさらによく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る工作機械の一例の構成を示す正面図である。
図2】同工作機械の一例の構成を示す斜視図である。
図3A図2の領域Aの拡大図である。
図3B図2の領域Bの拡大図である。
図4】第2主軸台のプロテクタ収容部を斜め下方から見た斜視図である。
図5】第2主軸台のプロテクタ収容部を斜め上方から見た斜視図である。
図6】第2主軸台のプロテクタ収容部側の側面図である。
図7】プロテクタに固定された回転体とワイヤーロープとの関係を示す図である。
図8】第2主軸台の後部側面に設けられた支持部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態に係る工作機械は、案内部を具備するベッドと、ベッドにそれぞれ搭載された第1構造体および第2構造体と、第1構造体を案内部に沿って移動させる第1駆動部と、第1駆動部の少なくとも一部を覆うプロテクタとを具備する。プロテクタは、第1構造体の移動に伴って伸縮可能である。
【0012】
第1構造体および第2構造体の少なくとも一方は、プロテクタの少なくとも一部を収容可能なプロテクタ収容部を有している。例えば、プロテクタ収容部に縮んだ状態のプロテクタの少なくとも一部を収容する場合、収容しない場合よりも、第1構造体と第2構造体との距離を短くすることが可能である。すなわち、プロテクタが構造体同士の接近を大きく制限することがなく、工作機械によるワークの加工の利便性が向上する。なお、第1駆動部は、その全体が切削屑から遮蔽されるように、プロテクタ、もしくはプロテクタと他の部材との組み合わせにより覆われることが望ましい。
【0013】
ベッドとは、フロアに据え置かれる工作機械の下方部位であり、第1構造体および第2構造体が相対移動可能に搭載される上面を有する。ベッドは上面が傾斜したスラント型であってもよい。当該上面には、第1構造体(もしくは第1構造体と第2構造体の両方)を移動させる案内部が配置されている。
【0014】
案内部は、ガイドレールであってもよく、レール状の構成を有さない摺動面であってもよい。ガイドレールは、ベッドと一体に形成されるか、またはベッドと別体に形成されてベッドに固定される。ガイドレール、摺動面などの案内部は、ベッドの上面に直線状に延在するように設けられる。案内部もしくはガイドレールの数は、特に限定されない。ガイドレールの構成も特に限定されないが、例えば、ローラガイドを用い得る。ローラガイドはランナーブロックを具備し、ランナーブロックが転動体(ボール)を介してガイドレール上をスライドすることにより、第1構造体の直線運動が案内される。
【0015】
第1駆動部の構造は、特に限定されないが、第1駆動部として、例えばボールネジが用いられる。ボールネジは、シャフト状のネジ軸と、ネジ軸を回転させるモータと、ネジ軸を支持する軸受けと、ネジ軸の回転に伴ってネジ軸上を移動するナットとを具備する。ボールネジにより第1構造体の高精度の位置制御が可能である。
【0016】
プロテクタは、少なくとも第1構造体と第2構造体との間に、第1駆動部の少なくとも一部を覆うように配置される。プロテクタは、第1構造体の移動に伴って伸縮可能な構造であればよい。工作機械が具備するプロテクタの数は、特に限定されない。例えば、第1構造体を挟むように2つの第2構造体を具備する工作機械は、2つのプロテクタを有してもよい。また、第1構造体と第2構造体との間以外の箇所に、別のプロテクタを設けてもよい。
【0017】
プロテクタは、例えば、相対移動可能に、かつ隣接する一対の少なくとも一部が重なり合うように組み合わされた複数のカバー体を具備する。このようなプロテクタとしてテレスコピックカバーを例示できる。テレスコピックカバーは多段式の金属製カバーであり、例えば、パンタグラフ、ばね等によって複数のカバー体同士の重なりを制御することにより伸縮する。
【0018】
第2構造体も、第1構造体と同様に、ガイドレールなどの案内部上を移動可能であってもよい。第2構造体を案内部に沿って移動させる第2駆動部にも、ボールネジを用い得る。この場合、第2駆動部の少なくとも一部もプロテクタで覆われる。第2駆動部も、その全体が切削屑から遮蔽されることが望ましい。第1構造体と第2構造体とは、それぞれ別の案内部に沿って移動するように構成されていてもよく、同じ案内部に沿って移動するように構成されていてもよい。
【0019】
工作機械とは、例えば、旋盤、マシニングセンタ、固定工具を用いた旋削機能と、回転工具を用いたミーリング機能とを有する複合加工機、金属付加加工が可能なAdditive Manufacturing(AM)機などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。第1構造体と第2構造体との組み合わせは、特に限定されない。例えば、第1構造体が、刃物台または振れ止めであり、第2構造体が、主軸台または心押し台であってもよい。また、第1構造体が、テーブルであり、第2構造体が、主軸(主軸頭)を装着するコラムであってもよい。
【0020】
例えば、旋盤の一態様は、少なくとも1つの刃物台(第1構造体)と、第1主軸台および第2主軸台(いずれも第2構造体)とを具備する。この場合、刃物台(第1構造体)に加え、第2主軸台(第2構造体)も第1主軸台(第2構造体)に対して移動可能に構成してもよい。また、例えば、マシニングセンタは、少なくとも、ワークを支持するテーブル(第1構造体)と、主軸(主軸頭)を装着するコラム(第2構造体)とを具備する。
【0021】
ここで、主軸もしくは主軸台とは、ワークに回転を与える軸、モータ、変速機などを具備する構造体である。刃物台とは、切削工具(バイト)を取り付ける構造体であり、フラット型、櫛刃型、タレット型などがある。振れ止めとは、研削盤、旋盤などに固定されたワークを半径方向に支持する構造体である。心押し台とは、ワークを安定させるためにワークに押しつける部材を具備する構造体である。テーブルとは、工作物を直接または各種取り付け装置を用いて間接的に固定し、一般には送り運動または切削運動を与える台をいう。
【0022】
プロテクタの少なくとも一部を収容するプロテクタ収容部は、第1構造体および第2構造体の少なくとも一方に設ければよい。例えば、刃物台(第1構造体)と第1主軸台および第2主軸台(いずれも第2構造体)とを具備する旋盤の場合、第1主軸台および第2主軸台にプロテクタ収容部を設けることが容易である。
【0023】
伸縮方向において離間して設けられたプロテクタの第1接続箇所および第2接続箇所を、それぞれ第1構造体および第2構造体に取り付けてもよい。例えば、第1構造体と第2構造体との間に配置されているプロテクタは、その伸縮方向における一方の端部および他方の端部を、それぞれ第1構造体および第2構造体に取り付けてもよい。これにより、第1構造体(および第2構造体が移動可能な場合は第2構造体)の移動に伴うプロテクタの伸縮が容易になる。
【0024】
プロテクタ収容部は、第1構造体および第2構造体の少なくとも一方の台部に設けられ、第1構造体の移動方向(あるいは、プロテクタの伸縮方向)に向かって開口する空間である。ここで、第1構造体の移動方向に向かって開口するとは、当該開口を塞ぐ仮想的な平面を考えたとき、この平面と第1構造体の移動方向とが交差するように当該空間が開口していることをいう。この空間は、第1構造体の移動方向に沿って、当該空間が設けられる第1構造体および/または第2構造体を貫通していてもよいし、貫通していなくてもよい。
【0025】
プロテクタ収容部は、例えば、第1構造体および第2構造体の少なくとも一方の台部に設けられた空間であり、トンネル状空間であってもよい。台部とは、各構造体の下方部位である。このような空間は、各構造体の台部が鋳物である場合は、鋳抜き穴として形成してもよい。
【0026】
プロテクタ収容部は、例えば、第1構造体の台部に設けられ、第2構造体に向かって開口する空間であってもよい。この空間は、第1構造体の移動方向に沿って、第1構造体を貫通していてもよいし、貫通していなくてもよい。
【0027】
プロテクタ収容部は、例えば、第2構造体の台部に設けられ、第1構造体に向かって開口する空間であってもよい。この空間は、第1構造体の移動方向に沿って、第2構造体を貫通していてもよいし、貫通していなくてもよい。
【0028】
プロテクタ収容部は、例えば、第1構造体および第2構造体の少なくとも一方の台部に設けられ、第1構造体の移動方向に沿って延びる空間であってもよい。この空間は、第1構造体の移動方向に沿って、当該空間が設けられる第1構造体および/または第2構造体を貫通していてもよいし、貫通していなくてもよい。
【0029】
プロテクタは、例えば、第1構造体の移動方向に沿って架設された長尺部材により支持してもよい。長尺部材には、ロープ、丸棒などのロッド部材を用い得る。架設された長尺部材でプロテクタを支持する場合、プロテクタをベッドの上面で支持する必要がなくなり、プロテクタの移動の自由度が大きくなる。プロテクタおよびプロテクタ収容部は、プロテクタがプロテクタ収容部を通過し得るように構成してもよい。
【0030】
長尺部材は、ベッドの上面においてベッドの一端から他端までのほぼ全領域にわたって架設してもよい。長尺部材は、例えば、ベッドの最大長をXとするとき、Xの70%以上の距離、もしくはXの80%以上の距離にわたって架設される。長尺部材の一方および他方の端部は、それぞれベッドの一端および他端において、所定の固定部材により支持すればよい。
【0031】
プロテクタが長尺部材で支持されるとき、プロテクタの伸縮の際の移動を容易にする観点から、プロテクタに長尺部材に沿って走行する回転体を設けてもよい。回転体としては、例えば長尺部材に沿って走行する滑車、カムフォロア等が好ましい。
【0032】
第1構造体および第2構造体の少なくとも一方が、長尺部材を支持する少なくとも1つの支持部材を有してもよい。この場合、ベッド両端の所定の固定部材と支持部材とを含む複数の支点で長尺部材を支持することができるため、長尺部材の弛みが抑制され、プロテクタの伸縮や移動に対する抵抗が小さくなる。
【0033】
以下、添付図面を参照しながら、本発明に係る工作機械の実施形態について更に具体的に説明する。実施形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(例えば「水平方向」、「長手方向」等)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本発明を限定するものでない。なお、各図面において、工作機械の各構成部品の形状または特徴を明確にするため、これらの寸法を相対的なものとして図示するが、必ずしも同一の縮尺比で表したものではない。また、各図面において同一の構成部品には同一の符号を用いて示す。
【0034】
図1は、本実施形態に係る工作機械の一例の構成を示す正面図であり、図2は、同工作機械の構成を示す斜視図である。また、図3Aは、図2の領域Aの拡大図であり、図3Bは、図2の領域Bの拡大図である。図4および図5は、それぞれ第2主軸台のプロテクタ収容部を斜め下方および斜め上方から見た斜視図である。図6は、第2主軸台のプロテクタ収容部側の側面図である。
【0035】
図1、2に示されるように、工作機械100は、フロアに水平方向に設置された長尺のスラント型のベッド110、ベッドの上面110Pに水平移動可能に搭載された刃物台120(第1構造体)、刃物台120の一方側に配置された第1主軸台130、および、刃物台120の他方側に水平移動可能に配置された第2主軸台140を具備する。第1主軸台130は、ベッド110の一方の端部に固定されている。工作機械100は、旋盤の一態様である。
【0036】
なお、各図において、第1主軸台、第2主軸台、刃物台、ガイドレールを支持する支持部などは、細部を省略して描かれている。また、図1では、プロテクタの一部が省略されている。
【0037】
図4~6に示されるように、ベッド110には、その長手方向に沿って水平方向に延在する複数のガイドレールLと、刃物台120および第2主軸台140をそれぞれ一対のガイドレールLに沿って移動させる第1ボールネジ112Aおよび第2ボールネジ112Bとが設けられている。刃物台120および第2主軸台140は、いずれも同じガイドレールに沿って水平移動可能である。
【0038】
図2、3に示されるように、ベッド110の上面110Pは、第1プロテクタ210、第2プロテクタ220および第3プロテクタ230の組み合わせによって覆われている。また、刃物台120と第2主軸台140との間に設けられた第2プロテクタ220は、第1ボールネジおよび第2ボールネジの少なくとも一部をそれぞれ覆っている。各プロテクタは、いずれも複数のカバー体を具備するテレスコピックカバーの形態を有する。
【0039】
第1プロテクタ210の一端および他端は、それぞれ第1主軸台130および刃物台120に接続され、刃物台120の移動に伴って伸縮する。第2プロテクタ220の一端および他端は、それぞれ刃物台120および第2主軸台140に接続され、刃物台120および第2主軸台140の移動に伴って伸縮する。第3プロテクタ230の一端および他端は、それぞれ第2主軸台140およびベッド110の端部に接続され、第2主軸台140の移動に伴って伸縮する。
【0040】
図4~6に示されるように、第2主軸台140には、第2プロテクタ220を収容し得るプロテクタ収容部141Sが設けられている。図示しないが、同様に、第1主軸台130には、第1プロテクタを収容し得るプロテクタ収容部が設けられている。なお、プロテクタ収容部を更に刃物台120にも設けてもよい。プロテクタ収容部141Sは、第2主軸台140の台部に設けられたトンネル状の空間であり、台部は鋳物で構成されている。トンネル状の空間は、台部を形成する際に鋳抜き穴として形成される。
【0041】
第2主軸台140のプロテクタ収容部141Sは、刃物台120の移動方向に向かって開口している。第2主軸台140のプロテクタ収容部141Sは、刃物台120に向かって開口している。第2主軸台140のプロテクタ収容部141Sは、刃物台120の移動方向に沿って延びている。
【0042】
第1主軸台130のプロテクタ収容部は、刃物台120の移動方向に向かって開口している。第1主軸台130のプロテクタ収容部は、刃物台120に向かって開口している。第1主軸台130のプロテクタ収容部は、刃物台120の移動方向に沿って延びている。
【0043】
図1では、刃物台120と第2主軸台140とが十分に接近した状態が示されている。このような接近は、第2主軸台140の台部に設けられたプロテクタ収容部141Sに第2プロテクタ220を収容することで可能となる。同様に、第1プロテクタ210は、第1主軸台130の台部に設けられたプロテクタ収容部に収容される。
【0044】
第1プロテクタ210と第2プロテクタ220は、それぞれ、ベッド110の長手方向における一端から他端にわたって平行に架設された一対の長尺部材(丸棒300)により支持されている。図2では、丸棒300は破線で概念的に示されている。丸棒300は、刃物台120および第2主軸台140の移動方向と平行に架設されている。具体的には、図3Aに示されるように、ベッド110の一端には、一対の丸棒300の一端をそれぞれ固定するための環状の留め具113Aが一対設けられている。一対の丸棒300の一端は、それぞれ留め具113Aの環に係合されて固定されている。また、図3Bに示されるように、ベッド110の他端には、上記と同様の環状の留め具113Bが一対設けられている。一対の丸棒300の他端は、それぞれターンバックル310に接続されており、ターンバックル310は留め具113Bと接続されている。よって、丸棒300の長さはベッド110の最大長Xとほぼ同じである。
【0045】
一対の丸棒300で第1プロテクタ210および第2プロテクタ220を支持し、丸棒300上を各プロテクタが走行するように構成することで、各プロテクタを支持するための部材をベッド110の上面110PもしくはガイドレールL上に設置する必要がなくなる。すなわち、各プロテクタは、丸棒300上を水平方向に走行し、第2主軸台140の台部に設けられているトンネル状のプロテクタ収容部141Sおよび第1主軸台130に設けられている図示しない別のプロテクタ収容部内に収容される。なお、刃物台120にも更に別のプロテクタ収容部を形成し、当該プロテクタ収容部内を各プロテクタが通過し得るようにしてもよい。
【0046】
各プロテクタの丸棒300との接触位置には、図7に示すように、滑車320が固定されている。滑車320の回転方向は丸棒300と平行であり、滑車320が丸棒300上を走行することで各プロテクタの伸縮および移動が容易になる。滑車320は、各プロテクタにそれぞれ1個または2個以上固定してもよい。
【0047】
一対の丸棒300だけで各プロテクタを支持してもよいが、さらに、刃物台120(第1構造体)および第2主軸台140(第2構造体)の少なくとも一方に、各プロテクタを支持するための支持部材を設けてもよい。これにより、より多くの支点で丸棒300を支持することができるため、丸棒300の弛みが抑制される。
【0048】
図8に支持部材の一例を示す。図8では、第2主軸台140の後部側面に支持部材330が設けられている。図示例の支持部材330は、丸棒300との抵抗を低減するなどの観点から、丸棒300と平行に回転する滑車332を有しているが、支持部材330の構造は特に限定されない。なお、図8では、第2主軸台140は簡略化して描かれ、プロテクタのカバー部材は省略されている。
【0049】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形および変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【0050】
本発明を現時点での好ましい実施態様に関して説明したが、そのような開示を限定的に解釈してはならない。種々の変形および改変は、上記開示を読むことによって本発明に属する技術分野における当業者には間違いなく明らかになるであろう。したがって、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、すべての変形および改変を包含する、と解釈されるべきものである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る工作機械によれば、主軸台、刃物台などの構造体同士の接近が容易であり、工作機械によるワークの加工の利便性が向上する。
【符号の説明】
【0052】
100:工作機械、110:ベッド、110P:上面、112A:第1ボールネジ、112B:第2ボールネジ、113A,113B:環状の留め具、120(第1構造体):刃物台、130:第1主軸台、140:第2主軸台、141S:プロテクタ収容部、210:第1プロテクタ、220:第2プロテクタ、230:第3プロテクタ、300:丸棒、310:ターンバックル、320:滑車、330:支持部材、L:ガイドレール
図1
図2
図3A
図3B
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図8