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特許7161072光ファイバピッチ変換治具、光コネクタ、ピッチ変換コード、光変換箱、および光ファイバのピッチ変換方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】光ファイバピッチ変換治具、光コネクタ、ピッチ変換コード、光変換箱、および光ファイバのピッチ変換方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/36 20060101AFI20221018BHJP
   G02B 6/40 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
G02B6/36
G02B6/40
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021575617
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2020041720
(87)【国際公開番号】W WO2021157150
(87)【国際公開日】2021-08-12
【審査請求日】2021-12-22
(31)【優先権主張番号】P 2020019960
(32)【優先日】2020-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】篠田 智之
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 真幸
(72)【発明者】
【氏名】石川 隆朗
(72)【発明者】
【氏名】高橋 茂雄
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-309259(JP,A)
【文献】特開平07-270639(JP,A)
【文献】実開昭63-041105(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0063766(US,A1)
【文献】特開2019-159057(JP,A)
【文献】特開2007-041222(JP,A)
【文献】米国特許第06295400(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/36-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端側から挿入した複数の光ファイバのピッチを変換して第二端から突出させる光ファイバピッチ変換治具であって、
前記第一端から前記第二端まで延びる複数の溝が並べて形成された溝部を備え、
前記複数の溝は、
前記第一端側に設けられ、前記複数の溝間のピッチが第一のピッチである直線部と、 前記直線部に連なり、前記ピッチが前記第一のピッチよりも大きい第二のピッチまで広がるピッチ変化部と、を有し、
前記ピッチ変化部において、
前記複数の溝の曲率半径は、前記複数の溝の整列方向の中央部から両端に向かってそれぞれ減少し、
前記曲率半径が小さいほど、前記複数の溝の溝幅が大きい、光ファイバピッチ変換治具。
【請求項2】
前記複数の溝は、前記ピッチ変化部に連なって前記第二端まで延び、前記ピッチが前記第二のピッチである第二直線部を有する、
請求項1に記載の光ファイバピッチ変換治具。
【請求項3】
前記直線部は、前記光ファイバピッチ変換治具の総長に対して三分の一以上の長さを有する、
請求項1または2に記載の光ファイバピッチ変換治具。
【請求項4】
前記ピッチ変化部における湾曲の最小曲率半径は、前記光ファイバの許容曲げ半径以上である、
請求項1からのいずれか一項に記載の光ファイバピッチ変換治具。
【請求項5】
前記溝部が形成された第一部材と、
前記第一部材と嵌合されて前記溝部を覆う第二部材と、
を有する、
請求項1からのいずれか一項に記載の光ファイバピッチ変換治具。
【請求項6】
前記第一部材と前記第二部材とが嵌合した状態において前記直線部の一部が露出している、
請求項に記載の光ファイバピッチ変換治具。
【請求項7】
前記直線部の一部を覆う第一被覆部と、
前記第二直線部の一部を覆う第二被覆部と、
を有する、
請求項2に記載の光ファイバピッチ変換治具。
【請求項8】
請求項1からのいずれか一項に記載の光ファイバピッチ変換治具を備える、
光コネクタ。
【請求項9】
請求項1からのいずれか一項に記載の光ファイバピッチ変換治具を備える、
ピッチ変換コード。
【請求項10】
請求項に記載のピッチ変換コードを備える、
光変換箱。
【請求項11】
請求項に記載の光ファイバピッチ変換治具を用いた光ファイバのピッチ変換方法であって、
前記第一のピッチで並ぶ前記複数の光ファイバを、露出した前記直線部に沿わせて前記第一端側から前記溝部内に挿入し、
前記複数の光ファイバを押し込んで前記ピッチ変化部を通過させることにより、前記第一のピッチを前記第二のピッチに変換する、
光ファイバのピッチ変換方法。
【請求項12】
請求項に記載の光ファイバピッチ変換治具を用いた光ファイバのピッチ変換方法であって、
前記第一被覆部と前記第二被覆部との間に位置する前記複数の溝を蓋部材で覆い、
前記第一のピッチで並ぶ前記複数の光ファイバを、前記第一端側から前記溝部内に挿入し、
前記複数の光ファイバを押し込んで前記ピッチ変化部を通過させることにより、前記第一のピッチを前記第二のピッチに変換する、
光ファイバのピッチ変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバピッチ変換治具に関する。さらに、この光ファイバピッチ変換治具を備えた光コネクタ等についても言及する。
本願は、2020年2月7日に日本に出願された特願2020-019960号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバを用いたネットワークが、広く使用されている。
ネットワークの規模は増大し続けており、光ファイバを用いたケーブルやコードにおける多心化(高密度化)に関する要請が高まっている。
【0003】
多心化の手段の一つとして、複数並べて配置される光ファイバの間隔(ピッチ)を小さくすることが考えられるが、既存のネットワークとの接続を考慮すると、異なるピッチで配置された同数の光ファイバを接続するためのピッチ変換技術が必要になる場合がある。
【0004】
この点に関して、特許文献1には、所定のピッチで複数の光ファイバが整列する光ファイバ集合体を製造する方法が開示されている。この方法では、複数の貫通孔が並んで形成された整列部材に複数の光ファイバを通すことにより、複数の光ファイバのピッチを所定の値に整える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2019-113730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された整列部材の貫通孔は直線状であり、貫通孔の入口のピッチが既に所定値になっている。そのため、互いに接続されていない複数の光ファイバを用いて光ファイバ集合体を製造する際には好適であるが、例えば所定値と異なるピッチで複数の光ファイバが接続されたリボン状のケーブルのピッチを所定値に変換する等の場合に用いると、作業が煩雑となる。
【0007】
上記事情を踏まえ、本発明は、接続された複数の光ファイバのピッチを簡便に変換できる光ファイバピッチ変換治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様に係る光ファイバピッチ変換治具は、複数の光ファイバのピッチを変換する光ファイバピッチ変換治具であり、前記光ファイバピッチ変換治具の第一端から前記光ファイバピッチ変換治具の第二端まで延びる複数の溝が並べて形成された溝部を備え、前記複数の溝は、前記第一端側に設けられ、前記複数の溝間のピッチが第一のピッチである直線部と、前記直線部に連なり、前記ピッチが前記第一のピッチよりも大きい第二のピッチまで広がるピッチ変化部と、を有し、前記ピッチ変化部において、前記複数の溝のうち少なくとも一つの溝が湾曲し、前記複数の光ファイバを前記第一端から挿入し、前記第二端から突出させることで、前記複数の光ファイバのピッチを変換する。
【0009】
本発明の第二の態様に係る光コネクタは、第一の態様に係る光ファイバピッチ変換治具を備える。
本発明の第三の態様に係るピッチ変換コードは、第一の態様に係る光ファイバピッチ変換治具を備える。
本発明の第四の態様に係る光変換箱は、第三の態様に係るピッチ変換コードを備える。
【0010】
本発明の第五の態様に係る光ファイバのピッチ変換方法は、上記の光ファイバピッチ変換治具を用い、第一のピッチで並ぶ複数の光ファイバを、露出した直線部に沿わせて第一端側から溝部内に挿入し、複数の光ファイバを押し込んでピッチ変化部を通過させることにより、第一のピッチを第二のピッチに変換する。
上記のピッチ変換方法の他の一つにおいては、第一被覆部と第二被覆部との間に位置する複数の溝を蓋部材で覆い、第一のピッチで並ぶ複数の光ファイバを、第一端側から溝部内に挿入し、複数の光ファイバを押し込んでピッチ変化部を通過させることにより、第一のピッチを第二のピッチに変換する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記態様によれば、接続された複数の光ファイバのピッチを簡便に変換できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第一実施形態に係る光コネクタを示す斜視図である。
図2】同光コネクタを分解して示す図である。
図3】同光コネクタの断面図である。
図4】同光コネクタ内に配置された光ファイバピッチ変換治具の平面図である。
図5】同光ファイバピッチ変換治具の正面図である。
図6】同光ファイバピッチ変換治具の右側面図である。
図7】同光ファイバピッチ変換治具の第一部材を示す図である。
図8】同光ファイバピッチ変換治具の変形例を示す図である。
図9】本発明の第二実施形態に係る光コネクタを示す斜視図である。
図10】同光コネクタの断面図である。
図11】同光コネクタに係る光ファイバピッチ変換治具を示す図である。
図12】同光ファイバピッチを用いたピッチ変換の一過程を示す図である。
図13】本発明の第三実施形態に係るピッチ変換コードを示す模式図である。
図14】同ピッチ変換コードを用いた光変換箱を示す模式図である。
図15】同光変換箱を用いた光変換架を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態について、図1から図8を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る光コネクタ1を示す斜視図である。光コネクタ1は、本実施形態に係る光ファイバピッチ変換治具(以下、単に「治具」と称する。)を備えている。
【0014】
図2は、光コネクタ1を分解して示す図である。光コネクタ1は、MT(Mechanically Transferrable)タイプの多心コネクタであり、MPO(Multi-fiber Push-On)コネクタとも呼ばれる。その基本構造は公知であるため、公知の構成については簡潔に説明する。
光コネクタ1は、引き抜き部材10と、ハウジング20と、フェルール30と、ピンクランプ40と、第一スプリング50と、支持部60と、2本の第二スプリング70と、治具100とを備えている。フェルール30、ピンクランプ40、および第一スプリング50は、ハウジング20内に配置される。引き抜き部材10および第二スプリング70は、ハウジング20の外側に配置される。
【0015】
(方向定義)
本実施形態では、XYZ直交座標系を設定して各構成の位置関係を説明する。X軸方向は、光コネクタ1の内部において、複数の光ファイバが並べられた方向である。Y軸方向は、光コネクタ1の内部において光ファイバが延びる方向である。Z軸方向は、X軸方向およびY軸方向の双方に直交する方向である。以下、X軸方向を並列方向Xといい、Y軸方向を長手方向Yといい、Z軸方向を上下方向Zという。長手方向Yにおいて、フェルール30が位置する側を前方といい、支持部60が位置する側を後方という。
【0016】
ファイバリボンFLは、支持部60側からハウジング20の内部に進入している。ファイバリボンFLは、第一のピッチP1で並んだ複数の光ファイバを有する。各光ファイバは、ベアファイバ、およびベアファイバを覆う被覆を有する。ファイバリボンFLは、複数の光ファイバの被覆が互いに接続された構成を有する。例えば、複数の光ファイバの被覆同士は、樹脂により接続されていてもよい。また、ベアファイバを覆う被覆(第1被覆とも呼ぶ)と、複数の光ファイバを接続するための被覆(第2被覆とも呼ぶ)は、互いに剥離可能であるように別々に形成されていてもよいし、一体に形成されていてもよい。
詳細は後述するが、フェルール30に形成された挿通穴は、ファイバリボンFLが備える光ファイバの数と同数であり、挿通穴の並列方向Xのピッチは第一のピッチP1よりも大きい第二のピッチP2である。
【0017】
図3に、光コネクタ1の断面図を示す。治具100は、ハウジング20の内部に配置される。治具100は、光コネクタ1の後方側に位置する第一端100a、および光コネクタ1の前方側に位置する第二端100bを有する。第二端100bがフェルール30内に進入している。
ファイバリボンFLは、複数の光ファイバ同士の先端部の接続が解除された状態で、第一端100a側から治具100を貫通するように配置されている。第一端100a側では、各光ファイバのピッチは、第一のピッチP1となっている。ファイバリボンFLは、各光ファイバのピッチが第二のピッチP2となった状態で第二端側100b側に突出している。すなわち、ファイバリボンの光ファイバは、治具100内を通ることにより、光ファイバの並列方向Xのピッチが第一のピッチP1から第二のピッチP2に変換されている。
治具100から突出した各光ファイバは、被覆(第1被覆)が除去されたベアファイバの状態でフェルール30の挿通穴に進入している。
【0018】
図4は、治具100の平面図である。図5および図6は、それぞれ治具100の正面図および右側面図である。治具100は、複数の溝Gが形成された溝部を有する。治具100は、下側に配置される第一部材110と、上側に配置される第二部材120とを有する。第一部材110および第二部材120は、それぞれ溝部115および溝部125を有している。また、溝Gは第一部材110および第二部材120に分かれるように形成されていてもよい。
【0019】
図7は、上側から見た第一部材110を示す図である。第一部材110の上面には、複数の溝Gを有する溝部115が形成されている。12本の溝Gは、整列方向D1に沿って並んでいる。それぞれの溝Gは、挿入方向D2に、延びている。光コネクタ1の内部に治具100を配置する際には、第二端100b側を光コネクタ1の前方側に配置し、また、整列方向D1と並列方向Xとが同じ方向になり、挿入方向D2と長手方向Yとが同じ方向になるように、配置されてもよい。溝部115の各溝Gは、第一部材110の第一端110aから第二端110bまで延びている。
【0020】
溝部115において、第一端110aにおける各溝Gのピッチは第一のピッチP1であり、第二端110bにおける各溝Gのピッチは第二のピッチP2である。
溝部115の各溝Gは、第一端110aから挿入方向D2の所定の長さ範囲において、第一のピッチP1を保持して直線状に延びている。その後、各溝Gがそれぞれ湾曲することによりピッチが徐々に広くなり第二のピッチP2となる。その後、各溝Gは、第二のピッチP2を保持して第二端110bまで直線状に延びている。
各溝Gの上記態様により、溝部115は、挿入方向D2に沿って、第一端110a側から、第一直線部115a、ピッチ変化部115b、および第二直線部115cの三つの領域を有している。
【0021】
溝部115における溝Gの数は適宜決定できる。本実施形態において、溝部115は12本の溝Gを有する。
上下方向から見て、ピッチ変化部115bにおける各溝Gの湾曲は、整列方向D1の中央部に位置する溝G6およびG7において最も小さく(曲率半径が大きく)、整列方向D1の両端に位置する溝G1およびG12において最も大きく(曲率半径が小さく)なっている。すなわち、ピッチ変化部115bにおける各溝Gの曲率半径は、整列方向D1の中央部から整列方向D1の両端に向かって徐々に減少している。
溝Gの数が奇数の場合、整列方向D1の中央の溝Gは、ピッチ変化部115bを含む挿入方向D2の全長にわたり直線状であってもよい。
第一直線部115aの挿入方向D2における長さは、第一直線部115a、ピッチ変化部115b、および第二直線部115cの三つの領域の挿入方向D2における長さの和に比して、三分の一以上が望ましい。すなわち、第一直線部115aの長手方向Yの長さは、治具100の長手方向Yの長さに対して三分の一以上であってもよい。
【0022】
ピッチ変化部115bにおける最も小さい曲率半径は、適用される光ファイバの許容曲げ半径以上の値に設定されることが好ましい。許容曲げ半径は、光ファイバの仕様としてカタログ等において開示されているほか、光ファイバの構造パラメータに基づき計算することもできる。例えば、コアとクラッドとの屈折率差Δnが1.9%、クラッド径80μmの光ファイバでは、許容曲げ半径は3mm~5mm程度である。第一端110aと第二端110bとを結ぶ挿入方向D2におけるピッチ変化部115bの長さは、上述した曲率半径を実現すること等を考慮して、適宜設定できる。
第二直線部115cは、ピッチ変化部115bにてピッチが変換されたファイバリボンFLの各光ファイバを直線形状に保つ部分である。これにより、治具100の挿通穴101(図5参照)から各光ファイバが突き出された際にも、その先端が互いのピッチを維持しやすい状態となり、フェルール30に対するファイバの挿入および固定がしやすくなる。
【0023】
第二部材120の下面(第一部材110の対向面)には、溝部115と同様の態様の溝が形成された溝部125(図5参照)が形成されている。第二部材120の溝部125はピッチ変化部および第二直線部のみを有し、第一直線部を有さない。
図6に示すように、第二部材120は、下方に延びる嵌合突起121を有する。第一部材110に設けられた嵌合穴111に嵌合突起を進入させると、第一部材110と第二部材120とが位置決めされつつ嵌合し、図4に示すように、溝部115と溝部125が正対し、治具100となる。
第一部材110と第二部材120とが嵌合した治具100において、溝部115の第一直線部115aは、第二部材120に覆われずに露出している(図4参照)。治具100の第二端100bは、図5に示すように、第二のピッチP2で並ぶ複数の挿通穴101を有する。図5では、各溝G(挿通穴101)の断面形状が矩形となっているが、他の形状でもよい。例えば、各溝Gの断面形状は円形となっていてもよい。また、長手方向Yから見て、当該複数の溝Gの上下方向Zの深さよりも浅い溝連結部が、それぞれの溝G同士の間に形成されていてもよい。
【0024】
光コネクタ1の製造過程においては、支持部60に通されたファイバリボンFLの先端部が、第一端100a側から治具100に挿入される。
ファイバリボンFLを治具100に挿入する際は、ファイバリボンFLの先端部において、一定の長さ範囲にわたり被覆の接続(第2被覆による接続)を解除し、各光ファイバが他の光ファイバに拘束されない状態とする。その後、ファイバリボンFLの先端部を溝部115の第一直線部115aに接触させ、第一直線部115aに沿わせて第二端100bに向かって前進させると、各光ファイバは、第一直線部115aに沿って前進する。
【0025】
さらにファイバリボンFLを押し込んで前進させると、各光ファイバは、第二部材120の第一端120aから治具100内の溝部115に進入する。各光ファイバは、ピッチ変化部115bに沿って溝部115内を前進することにより徐々にピッチを広くさせ、第二直線部115cにおいて各光ファイバのピッチが第二のピッチP2になる。さらにファイバリボンFLを前進させると、第二のピッチP2で整列した各光ファイバが、治具100の第二端100bにおいて、挿通穴101から突出する。
その後、各光ファイバの先端部をベアファイバにしてベアファイバおよび治具100をフェルール30内に挿入し、ベアファイバをフェルール30の挿通穴に挿入する。その後、フェルール30内に接着剤等を供給して光ファイバおよび治具100を固定する。
その後、各部を組み立てると、光コネクタ1が完成する。
【0026】
以上説明したように、本実施形態に係る治具100は、先端部の相互接続を解除したファイバリボンFLを第一端100a側から挿入するだけで、極めて簡便に光ファイバの整列ピッチを第二のピッチP2に変換して第二端100b側から突出させることができる。したがって、治具100を光コネクタ1の内部に配置することにより、コネクタ内部で容易に光ファイバのピッチ変換を行うことができる。
【0027】
溝部115は、複数の溝Gが第一のピッチP1で並ぶ第一直線部115aを有するため、治具に挿入する前のファイバリボンFLの複数の光ファイバと第一直線部115aとはピッチが概ね同一である。その結果、相互接続を解除したファイバリボンFLを、光ファイバ間のピッチを調節せずに治具100に挿入でき、挿入操作が簡便である。
さらに、挿入した光ファイバが第一直線部115aを経てピッチ変化部115bに進入するため、溝部内に進入後すぐに湾曲部位がある場合に比べて、細径(例えばクラッド径(ベアファイバの径)100μm以下)の柔らかい光ファイバであってもスムーズに溝内を進むことができる。
特に、第一直線部115aの長手方向Yの長さは、治具100の長手方向Yの長さ(挿入方向D2における寸法)に対して三分の一以上の長さを有することが好ましい。これにより、ファイバ挿入に掛かる力を第一直線部115aにて一方向に集中させた状態で、ピッチ変化部115bに光ファイバを進入させることから、挿入ベクトルが各溝Gの延びる方向以外の方向に分散することを最小限に抑えられ、挿入がよりスムーズになる。
【0028】
さらに、第一直線部115aの上部が開放されているため、ファイバリボンFLの先端部を第一直線部115aの上方から溝部115に接近させることができ、各光ファイバを容易に溝部115に沿わせることができる。これにより、ファイバリボンFLの先端部を、治具100に対して容易に設置することが可能となる。さらに、ファイバリボンFLの先端部を、溝部115に当てつけて沿わせることで、細い挿通穴101に直接挿入することに比べ、挿通穴101にスムーズに挿入することが可能となる。
【0029】
加えて、ピッチ変化部115bの溝Gの湾曲の最小曲率半径が、挿入される光ファイバの許容曲げ半径以上であるため、治具100内に位置する光ファイバにおいて、光伝送の損失がほとんど生じないか、無視できる程度に小さくすることができる。したがって、伝送損失を生じずにピッチを変換できる。さらに、ピッチ変化部115bの溝Gの湾曲が緩やかであるため、光ファイバがピッチ変化部115bにおいて引っ掛かったり、破断したりすることを好適に抑制できる。
【0030】
本実施形態において、第二部材120の溝部125は、第一直線部を有してもよい。この場合、溝部125の第一直線部の長手方向Yの長さを、第一直線部115aの長手方向Yの長さよりも短くすることで、上述の例と同様に、第一直線部115aの一部を露出させることができる。
また、第二部材120の下面は平坦であってもよい。すなわち、第一部材110のみに複数の溝Gが形成されていてもよい。
【0031】
本実施形態において、治具が第一部材と第二部材とで構成されることは必須ではなく、図8に示す変形例の治具100Aのように、単一の部材として形成されてもよい。
【0032】
<第二実施形態>
本発明の第二実施形態について、図9から図12を参照して説明する。以降の説明において、既に説明したものと共通する構成については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0033】
図9は、本実施形態の光コネクタ201を示す斜視図である。光コネクタ201は、ユーザが準備したファイバリボンFLを取り付けて使用する融着コネクタである。融着コネクタの基本構造は公知であるため、公知の構成については一部説明を省略する。
【0034】
図10は、光コネクタ201の断面図である。ユーザが準備した光ファイバと融着される融着ファイバFmは、第一のピッチP1で整列している。融着ファイバの一方の端部(フェルール側端部)は、光ファイバピッチ変換治具150の第一端150aに挿入され、整列ピッチが第二のピッチP2に変換されて第二端150bから突出している。第二端150bから突出した融着ファイバは、さらに直線状の挿通穴が第二のピッチP2で複数並ぶ補助ブーツ210に進入し、補助ブーツ210から突出した融着ファイバがフェルール220の挿通穴に進入している。
第二端150bから突出した融着ファイバFmの被覆(第1被覆)は、補助ブーツ210に進入する前に除去されてもよいし、フェルール220に進入する前に除去されてもよい。
融着ファイバFmの他方の端部(融着側端部)は、ユーザが準備した光ファイバと融着された後に、メカニカルクランプ230に挟まれてハウジング240内に支持される。
【0035】
図11に、本実施形態の治具150を示す。治具150は、単一の部材であり、上面に複数の溝Gが形成された溝部155を有する。溝部155における溝Gの態様は概ね第一実施形態の溝部115と同様であり、第一直線部155a、ピッチ変化部155b、及び第二直線部155cを有する。
溝部155の各溝Gにおいて、第一直線部155aおよび第二直線部155cの一部は、上側が覆われてトンネル状となっている。これにより、溝部155は、第一直線部155aに第一被覆部156を、第二直線部155cに第二被覆部157を、それぞれ有している。
【0036】
長手方向Yおいて、第一被覆部156は、治具150の第一端150aから離れた位置にある。これにより、各溝Gの第一直線部155aは、第一端150aから一定の範囲において上側が開放した状態が保たれている。
第二被覆部157は、治具150の第二端150bに達しており、治具150の第二端の端面の一部を構成している。
【0037】
治具150に融着ファイバFmを通してピッチ変換をする際は、図12に示すように、第一被覆部156と第二被覆部157との間に蓋部材160を配置して、溝部155の上側を覆う。この状態で、第一実施形態の説明と同様に融着ファイバFmを第一端150a側から治具150に挿入すると、第二端150b側からピッチ変換された融着ファイバFmが突出する。蓋部材160を配置することにより、第一被覆部156を通過した融着ファイバFmが溝部155から離れる等の事態が発生しにくく、円滑に溝部155内を前進させて第二被覆部157のトンネル内に導入することができる。
蓋部材160の下面には、対向する溝の形状が形成されていることが好ましいが、下面が平坦であってもよい。
【0038】
本実施形態の光コネクタ201においては、光ファイバの融着点を補強するメカニカルクランプ230等をハウジング内に収めつつコネクタの外形寸法の増大を抑えるため、光ファイバが挿入される挿入方向における寸法が第一実施形態のフェルール30よりも短いフェルール220を用いている。光コネクタ201においては、治具150でピッチ変換された融着ファイバFmを補助ブーツ210に通してからフェルール220に導入することにより、フェルール220との接続の安定性を高めている。
【0039】
本実施形態の治具150は、単一の部材で構成されているため、治具150の製造及び治具150を用いたコネクタの製造を簡便にできる。治具150を用いたコネクタの組み立て時には、上述のように蓋部材160があることが好ましいが、蓋部材160は、コネクタの組み立て工程でのみ使用するため、その製造数は治具150自体よりもはるかに少なくて済む。
【0040】
本実施形態においては、治具150に代えて第一実施形態の治具100が用いられてもよい。同様に、治具150が第一実施形態の光コネクタ1に用いられてもよい。
【0041】
<第三実施形態>
本発明の第三実施形態について、図13から図15を参照して説明する。この実施形態では、光ファイバピッチ変換治具を用いたピッチ変換コード等について説明する。
【0042】
図13に、本実施形態に係るピッチ変換コード301の模式図を示す。ピッチ変換コード301は、コード本体302と、コード本体302の両端に配置された第一ピッチ端303および第二ピッチ端304とを備えている。
【0043】
コード本体302内には、複数の光ファイバfが通されている。第一ピッチ端303は、第一のピッチP1で並ぶ複数の挿入穴を有する第一フェルール303aを有し、他の光コネクタ等と連結可能に構成されている。第二ピッチ端304は、第二のピッチP2で並ぶ複数の挿入穴を有する第二フェルール304aを有し、他の光コネクタ等と連結可能に構成されている。
各光ファイバfの第一の端部は、第一フェルール303a内に挿入および固定されている。各光ファイバfの第二の端部は、光ファイバピッチ変換治具Aを通り、第二のピッチP2に変換された状態で第二フェルール304a内に挿入および固定されている。光ファイバピッチ変換治具Aとして、上述した治具100および150のいずれも使用できる。
【0044】
本実施形態のピッチ変換コード301は、第一ピッチ端303に第一のピッチP1を有するファイバケーブル等を接続し、第二ピッチ端304に第二のピッチP2を有するファイバケーブル等を接続することにより、ピッチの異なる2つのファイバケーブル等を、簡便に光接続することができる。
【0045】
ピッチ変換コード301において、コード本体302内に配置される複数の光ファイバfは、必ずしも整列した状態で接続されていなくてもよいが、第一のピッチP1で互いの被覆が接続されたファイバリボンを使用することにより、ピッチ変換コード301を効率よく製造することができる。
【0046】
図14に、ピッチ変換コード301を備えた光変換箱310を、図15に、光変換箱310を複数備えた光変換架320を、それぞれ模式図で示す。
光変換箱310は、筐体311を有する。ピッチ変換コード301の第一ピッチ端303および第二ピッチ端304は筐体311の外面に固定されており、コード本体302は筐体311内に配置されている。光変換箱310においては、第一ピッチ端303および第二ピッチ端304の位置が安定し、接続作業が簡便になる。
【0047】
図14では、コード本体302の長さが筐体311の寸法よりも長い例を示している。コード本体302が筐体311の寸法よりも長いと光変換箱310のメンテナンス性が向上する利点があるが、これは必須ではない。コード本体302は、第一ピッチ端303および第二ピッチ端304との間にたるみなく配置される程度の長さであってもよい。
【0048】
図15に示すように、光変換架320は架台321を有し、複数の光変換箱310が架台321に配置された構造を有する。光変換架320を用いることで、第一のピッチP1のケーブルC1等と第二のピッチP2のケーブルC2との接続を多数組まとめて行うことができ、データセンター等に適用する際に好ましい。
【0049】
以上、本発明の各実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られず、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせなども含まれる。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。これらの変更はどの実施形態にも適用でき、2以上適宜組み合わされてもよい。
【0050】
・溝部の一部の溝Gにおいて、他の溝Gより溝の幅を大きくしてもよい。例えば、複数の溝Gのうちの一部である第1の溝の溝幅は、複数の溝Gのうち前記第1の溝以外の第2の溝の溝幅よりも大きくてもよい。
上述の各実施形態では、整列方向両端部のピッチ変換部において、溝Gの湾曲が最も強くなるため、両端部から一定範囲の溝G(例えば両端の溝Gや、両端からそれぞれ2本の溝G等)の幅を、例えば10μm程度太くすることにより、光ファイバの引っ掛かりを低減できる。このとき、溝幅は溝Gの全長にわたり大きくされてもよいし、湾曲しているピッチ変化部のみで大きくされてもよい。
・溝部において第二直線部が短くされたり、省略されたりしてもよい。あるいは、第二直線部に代えて上述の補助ブーツ210のような部材を準備し、治具と並べて配置してもよい。
【0051】
・溝形状は、第一端側と第二端側で複数の溝が等間隔で並んでいればよく、必ずしも上記実施形態で示した左右対称の態様でなくてもよい。
【0052】
・治具は透明性を有してもよい。この場合、治具内を前進する光ファイバを視認することができ、作業性が向上する。
【0053】
・本発明に係る治具においては、汎用性を考慮して、適用が想定されるファイバの最大数に基づいて溝部の溝Gの数が設定される可能性がある。この場合、本発明に係る光コネクタにおいては、治具に通される光ファイバの数が溝部の溝Gの数よりも少なくてもよい。このとき、光ファイバは、必ずしも整列方向中央部の溝Gに通される必要はない。本発明の治具においては、整列方向に連続する複数の溝Gに通す限り、どの溝に通しても、問題なくピッチ変換が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1、201…光コネクタ、100、100A、150、A…光ファイバピッチ変換治具、100a、150a…第一端、100b、150b…第二端、110…第一部材、115、155…溝部、115a、155a…第一直線部(直線部)、115b、155b…ピッチ変化部、115c、155c…第二直線部、120…第二部材、156…第一被覆部、157…第二被覆部、160…蓋部材、301…ピッチ変換コード、310…光変換箱、G…溝、P1…第一のピッチ、P2…第二のピッチ、X…並列方向、Y…長手方向、Z…上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13
図14
図15