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特許7161073撥水性セルロースビーズ及びその製造方法、並びに化粧料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】撥水性セルロースビーズ及びその製造方法、並びに化粧料
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/06 20060101AFI20221018BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20221018BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20221018BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C08J7/06 Z
A61K8/73
A61Q1/02
C08J3/12 Z CEP
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022014392
(22)【出願日】2022-02-01
【審査請求日】2022-03-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 志保
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/188698(WO,A1)
【文献】特開2020-176067(JP,A)
【文献】特開2014-028785(JP,A)
【文献】特開2007-291035(JP,A)
【文献】特開2020-109074(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133018(WO,A1)
【文献】特表2012-511556(JP,A)
【文献】特開2022-041692(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
C08J3/00-3/28
7/04-7/06
99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスファチジルコリン含有量40~85質量%の水素添加レシチンでセルロースビーズを表面処理して得られる、前記セルロースビーズ100質量部に対する、前記水素添加レシチンの量が、0.1~5質量部である撥水性セルロースビーズ。
【請求項2】
前記水素添加レシチンの酸価が5~25mgKOH/gであり、ヨウ素価が0.1~2Ig/100gである請求項1に記載の撥水性セルロースビーズ。
【請求項3】
前記セルロースビーズの体積基準の累積50%粒子径が3~15μmであり、真球度が0.6~1.0である請求項1又は2に記載の撥水性セルロースビーズ。
【請求項4】
セルロースビーズ、ホスファチジルコリン含有量40~85質量%の水素添加レシチン、及び水を混合して混合液を得る工程と、
前記混合液をろ過する工程と、を有し、
前記セルロースビーズ100質量部に対する、前記水素添加レシチンの量が、0.1~5質量部である撥水性セルロースビーズの製造方法。
【請求項5】
50~90℃に加温した前記混合液を得る請求項4に記載の撥水性セルロースビーズの製造方法。
【請求項6】
0~40℃に温度調整した前記混合液をろ過する請求項4又は5に記載の撥水性セルロースビーズの製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の撥水性セルロースビーズを含有する化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水性セルロースビーズ及びその製造方法、並びに化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子状のセルロース(セルロースビーズ)は、安全性が高く、ソフトな触感を示す素材として知られており、化粧料等の各種製品に幅広く用いられている。そして、化粧料のニーズの多様化及び高機能化に伴い、その素材に対しても従来にない機能が要求されるようになっている。
【0003】
セルロースビーズはさほど撥水性の良好な材料であるとはいえない。このため、セルロースビーズを配合した化粧料を用いると、汗や皮脂により化粧崩れが生じやすくなることがあった。また、セルロースビーズを配合して調製したエマルジョンタイプの化粧料は、長期間経過すると分離しやすくなる等の不具合が生じやすくなることもあったため、これらの不具合を解消するための方策が求められていた。
【0004】
上記のような不具合を解消すべく、セルロースビーズを表面処理して撥水性を高めることが種々提案されている。例えば、金属塩の存在下、結晶セルロースを水添レシチンで表面処理して得られる微結晶セルロース粉体が提案されている(特許文献1)。また、セルロース粉末を水添レシチンとともに乾式粉砕処理して得られるセルロース粉体が提案されている(特許文献2)。さらに、セルロースを主体とする樹脂で形成された樹脂ビーズを油脂等の処理剤で表面処理することが提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-146829号公報
【文献】国際公開第2011/105535号
【文献】特許第6872068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~3で提案されたセルロース粉体等は、表面処理されることによってある程度の撥水性が付与されていた。しかしながら、これらのセルロース粉体の撥水性は必ずしも十分であるとはいえず、さらなる改良の余地があった。また、表面処理された従来のセルロース粉体等は、肌に付与した場合に白残りしやすいとともに、塗り延ばした際にきしみが生ずることもあり、必ずしも滑らかな触感を示すものではなかった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、撥水性に優れているとともに、肌に白残りせずに伸ばしやすく、かつ、きしみにくく滑らかな触感を示す撥水性セルロースビーズを提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の撥水性セルロースビーズの製造方法、及び上記の撥水性セルロースビーズを用いた化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す撥水性セルロースビーズが提供される。
[1]ホスファチジルコリン含有量40~85質量%の水素添加レシチンでセルロースビーズを表面処理して得られる撥水性セルロースビーズ。
[2]前記水素添加レシチンの酸価が5~25mgKOH/gであり、ヨウ素価が0.1~2Ig/100gである前記[1]に記載の撥水性セルロースビーズ。
[3]前記セルロースビーズの体積基準の累積50%粒子径が3~15μmであり、真球度が0.6~1.0である前記[1]又は[2]に記載の撥水性セルロースビーズ。
【0009】
また、本発明によれば、以下に示す撥水性セルロースビーズの製造方法が提供される。
[4]セルロースビーズ、ホスファチジルコリン含有量40~85質量%の水素添加レシチン、及び水を混合して混合液を得る工程と、前記混合液をろ過する工程と、を有する撥水性セルロースビーズの製造方法。
[5]前記セルロースビーズ100質量部に対する、前記水素添加レシチンの量が、0.1~5質量部である前記[4]に記載の撥水性セルロースビーズの製造方法。
[6]50~90℃に加温した前記混合液を得る前記[4]又は[5]に記載の撥水性セルロースビーズの製造方法。
[7]0~40℃に温度調整した前記混合液をろ過する前記[4]~[6]のいずれかに記載の撥水性セルロースビーズの製造方法。
【0010】
さらに、本発明によれば、以下に示す化粧料が提供される。
[8]前記[1]~[3]のいずれかに記載の撥水性セルロースビーズを含有する化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撥水性に優れているとともに、肌に白残りせずに伸ばしやすく、かつ、きしみにくく滑らかな触感を示す撥水性セルロースビーズを提供することができる。また、本発明によれば、上記の撥水性セルロースビーズの製造方法、及び上記の撥水性セルロースビーズを用いた化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<撥水性セルロースビーズ>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の撥水性セルロースビーズは、ホスファチジルコリン含有量40~85質量%の水素添加レシチンでセルロースビーズを表面処理して得られるものである。以下、本発明の撥水性セルロースビーズ(以下、単に「撥水性ビーズ」又は「ビーズ」とも記す)。
【0013】
(セルロースビーズ)
撥水性セルロースビーズは、原料となるセルロースビーズを水素添加レシチンで表面処理して得られるものである。表面処理剤として機能する水素添加レシチンによってセルロースビーズを表面処理すると、セルロースビーズの表面の少なくとも一部に水素添加レシチンが付着、担持、又は結合等して、ある種の被覆層が形成されると推測される。但し、水素添加レシチンの付着状態や、水素添加レシチンがセルロースビーズに付着等して形成される被覆層の状態(範囲、付着量、厚さ等)を分析して確認することは実質的に困難又は不可能である。
【0014】
セルロースビーズは、セルロースを主体とする樹脂、好ましくはセルロースで形成された樹脂ビーズである。なお、セルロースは、その分子中のヒドロキシ基の一部がエステル結合を形成していてもよい。すなわち、セルロースビーズを形成する樹脂は、セルロースを主成分とするとともに、セルロースアセテートやセルロースアセテートプロピオネート等の微量のセルロースエステルをさらに含んでいてもよい。
【0015】
セルロースビーズの形状は、略球状、球状、及び真球状等の球状であることが好ましい。球状のセルロースビーズを表面処理することで、肌に伸ばしやすいとともに、きしみにくく、滑らかな触感を示す撥水性ビーズとすることができる。
【0016】
セルロースビーズの体積基準の累積50%粒子径(メジアン径;D50)は、3~15μmであることが好ましく、5~12μmであることがさらに好ましい。D50が上記の範囲内にあるセルロースビーズを表面処理することで、化粧料に配合される樹脂ビーズに要求される滑り性やソフトフォーカス性をより有効に発現させることができる。
【0017】
なお、セルロースビーズを表面処理しても、粒子径はほとんど増大せず、実質的に変化しない。このため、原料として用いる表面処理前のセルロースビーズの粒子径は、表面処理後の撥水性セルロースビーズの粒子径と実質的に同一である。したがって、撥水性セルロースビーズの体積基準の累積50%粒子径(D50)についても、上述のセルロースビーズの体積基準の累積50%粒子径(D50)と同様に、3~15μmであることが好ましく、5~12μmであることがさらに好ましい。
【0018】
セルロースビーズの真球度は、0.6~1.0であることが好ましく、0.7~1.0であることがさらに好ましく、0.75~1.0であることが特に好ましく、0.8~1.0であることが最も好ましい。真球度が上記の範囲内にあるセルロースビーズを表面処理することで、化粧料に配合される樹脂ビーズに要求される肌への伸びや優れた触感をより有効に発現させることができる。
【0019】
なお、セルロースビーズを表面処理しても、真球度は実質的に変化しない。このため、原料として用いる表面処理前のセルロースビーズの真球度は、表面処理後の撥水性セルロースビーズの真球度と実質的に同一である。したがって、撥水性セルロースビーズの真球度についても、上述のセルロースビーズの真球度と同様に、0.6~1.0であることが好ましく、0.7~1.0であることがさらに好ましく、0.75~1.0であることが特に好ましく、0.8~1.0であることが最も好ましい。
【0020】
ビーズが真球状であるか否の指標となる真球度は、以下に示す手順にしたがって測定及び算出することができる。まず、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影したビーズのSEM画像を画像解析し、下記式(1)より、個々の樹脂ビーズの円形度Cを算出する。そして、任意に選択した10個以上の樹脂ビーズの円形度Cの相加平均値を真球度とする。
C=(4πS)/(L) ・・・(1)
【0021】
上記式(1)中、Sは、画像中に占めるビーズの面積(投影面積)を示し、Lは、画像中におけるビーズの外周部の長さを示す。円形度Cの値が1に近いほど、粒子の形状は真球に近い。
【0022】
セルロースビーズとしては、市販されているものを用いてもよく、従来公知の方法にしたがって製造されたものを用いてもよい。セルロースビーズの製造方法としては、例えば、前述の特許第6872068号公報(特許文献3)に記載された方法等を挙げることができる。
【0023】
(水素添加レシチン)
セルロースビーズを水素添加レシチン(以下、「水添レシチン」とも記す)で表面処理することで、撥水性セルロースビーズを得ることができる。すなわち、水添レシチンは、セルロースビーズの表面処理剤として機能する成分である。
【0024】
水添レシチンのホスファチジルコリン含有量(以下、便宜的に「PC値」とも記す)は40~85質量%であり、好ましくは45~80質量%、さらに好ましくは50~78質量%である。PC値が上記の範囲内にある水添レシチンでセルロースビーズを表面処理することで、撥水性に優れているとともに、肌に白残りせずに伸ばしやすく、かつ、きしみにくく滑らかな触感を示す撥水性セルロースビーズとすることができる。なお、水添レシチンのホスファチジルコリン含有量(PC値)は、例えば、「オレオサイエンス,Vol.1,No.6(2001),p.63-71」に記載された「複合脂質の試験・分析法」のうちの「薄層クロマトグラフ(TLC法)」及び「高速液体クロマトグラフ(HPLC法)」等の方法によって、分析及び測定することができる。
【0025】
水添レシチンの酸価は5~25mgKOH/gであることが好ましく、8~20mgKOH/gであることがさらに好ましい。酸価が上記の範囲にある水添レシチンでセルロースビーズを表面処理することで、より撥水性に優れた撥水性セルロースビーズとすることができる。
【0026】
水添レシチンのヨウ素価は0.1~2Ig/100gであることが好ましく、0.3~1.7Ig/100gであることがさらに好ましい。水添レシチンは、水素添加することでレシチン分子中の不飽和二重結合の少なくとも一部を還元したものである。そして、ヨウ素価は、水添レシチンの分子中の不飽和二重結合の含有割合に対応する物性値であり、ヨウ素価が0.1Ig/100g未満の水添レシチンを入手することは実質的に困難である。一方、水添レシチンのヨウ素価が2Ig/100g超であると、得られる撥水性セルロースビーズの光安定性等がやや低下することがある。
【0027】
<撥水性セルロースビーズの製造方法>
上述の撥水性セルロースビーズは、以下に示す製造方法によって製造することができる。すなわち、本発明の撥水性セルロースビーズの製造方法は、セルロースビーズ、ホスファチジルコリン含有量40~85質量%の水素添加レシチン、及び水を混合して混合液を得る工程(工程(1))と、得られた混合液をろ過する工程(工程(2))と、を有する。
【0028】
(工程(1))
工程(1)では、セルロースビーズ、水添レシチン、及び水を混合して混合液を得る。すなわち、湿式条件下でセルロースビーズを水添レシチンで表面処理する。これに対して、乾式条件下(水の非存在下)でセルロースビーズを水添レシチンで処理すると、十分に撥水性を高めた撥水性セルロースビーズを得ることは困難である。
【0029】
セルロースビーズ100質量部に対する水添レシチンの量は、0.1~5質量部とすることが好ましく、0.2~4質量部とすることがさらに好ましく、0.25~3質量部とすることが特に好ましい。セルロースビーズ100質量部に対する水添レシチンの量が0.1質量部未満であると、得られる撥水性セルロースビーズの撥水性を十分に高めることが困難になる場合がある。一方、セルロースビーズ100質量部に対する水添レシチンの量が5質量部超であると、得られる撥水性セルロースビーズの触感がやや重くなることがあり、肌への伸びがやや低下する場合がある。
【0030】
セルロースビーズ、水添レシチン、及び水を混合する際には、適当な温度に加温することが好ましい。具体的には、50~90℃に加温した混合液を得ることが好ましく、60~80℃に加温した混合液を得ることがさらに好ましい。混合液を加温することで、セルロースビーズの表面を水添レシチンでより効率的に処理することが可能となり、撥水性等の特性がさらに向上した撥水性セルロースビーズを得ることができる。
【0031】
混合液は、例えば、セルロースビーズ、水添レシチン、及び水を所定の温度で一括して混合して調製することができる。また、セルロースビーズと水を混合して得た所定温度のセルロースビーズ分散液と、水添レシチンと水を混合して得た所定温度の水添レシチン分散液とを混合して混合液を調製してもよい。
【0032】
混合液中、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、及びチタン等の金属塩の含有量は、水添レシチンの量に対して、質量基準で0.1当量未満であることが好ましく、0.05当量以下であることがさらに好ましい。また、混合液は、上記の金属塩を実質的に含有しないことが特に好ましい。混合液中に金属塩が過剰に含まれていると、この混合液から得られる撥水性セルロースビーズにもある程度の金属が含まれることになる。そして、金属を過剰に含有する撥水性セルロースビーズを用いると、得られる化粧料の安定性が低下する傾向にある。
【0033】
(工程(2))
工程(2)では、工程(1)で調製した混合液をろ過する。なお、0~40℃に温度調整した混合液をろ過することが好ましく、10~30℃に温度調整した混合液をろ過することがさらに好ましく、室温付近の温度(15~28℃前後)に温度調整した混合液をろ過することが特に好ましい。混合液を上記の範囲に温度調整することで、水添レシチンの少なくとも一部が析出すると考えられる。これにより、セルロースビーズの表面を水添レシチンでより効率的に処理することが可能となり、撥水性等の特性がさらに向上した撥水性セルロースビーズを得ることができる。
【0034】
混合液をろ過した後、必要に応じて洗浄、乾燥、及び粉砕等することにより、所望とする撥水性セルロースビーズを得ることができる。
【0035】
<化粧料>
上述の撥水性セルロースビーズは、撥水性に優れているとともに、肌に白残りせずに伸ばしやすく、かつ、きしみにくく滑らかな触感を示すものである。このため、この撥水性セルロースビーズを原材料の一つとして用いることで、肌に白残りせずに伸ばしやすく、かつ、きしみにくく滑らかな触感を示すとともに、経時的に分離等しにくく、安定性に優れた化粧料を調製することができる。すなわち、本発明の化粧料は、上述の撥水性セルロースビーズを含有する。
【0036】
化粧料に含まれる撥水性セルロースビーズの量は、化粧料の種類等に応じて適宜設計されればよく、特に限定されない。化粧料中の撥水性セルロースビーズの含有量は、化粧料全体を基準として、通常、1~10質量%、好ましくは1~5質量%である。
【0037】
化粧料は、上述の撥水性セルロースビーズ以外の成分として、ルースパウダー、ファンデーション、日焼け止めクリーム、及びオールインワンジェル等の各種化粧料の種類に応じて用いられる通常の原材料を含有する。撥水性セルロースビーズ以外の原材料としては、パーソナルケア製品評議会(Personal Care Products Council)より発行されている「International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook」(第13版、2010年)に収載されている各種成分を用いることができる。
【0038】
撥水性セルロースビーズ以外の原材料としては、油脂、ロウ、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル類、炭化水素、シリコーン油、界面活性剤、金属石鹸、高分子化合物、保湿剤、体質顔料、有機着色料、無機着色料、白色顔料、パール顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、金属イオン封鎖剤、及び水等を挙げることができる。
【0039】
化粧料としては、例えば、ルースパウダー、ファンデーション、日焼け止めクリーム、及びオールインワンジェル等を挙げることができる。リキッドファンデーションには、O/W乳化型ファンデーション及びW/O乳化型ファンデーション等がある。W/O乳化型ファンデーションは、外相が油分であるためにべたついた使用感のものが多かった。これに対して、前述の撥水性セルロースビーズを配合することで、べたついた使用感を抑えることができるとともに、乳化安定性が向上し、長期間経過しても分離等しにくくなる。
【実施例
【0040】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0041】
<樹脂ビーズの製造>
特許第6872068号公報の「実施例1」及び「実施例4」の記載を参考にして、体積基準の累積50%粒子径(D50(μm))及び真球度の異なる二種類のセルロースビーズ(セルロースビーズ1及び2)を製造した。製造したセルロースビーズの物性を表1に示す。
【0042】
【0043】
<水添レシチンの用意>
表2に示す種類の水添レシチンA~D(いずれも市販品)を用意した。水添レシチンA~DのPC値(ホスファチジルコリン含有量;%)、酸価(mgKOH/g)、及びヨウ素価(Ig/100g)を表2に示す。なお、水添レシチンA~DのPC値は、いずれも製造元(販売元)のカタログに記載された値である。
【0044】
【0045】
<撥水性セルロースビーズの製造条件>
撥水性セルロースビーズの製造条件(製造条件1~8)を以下に示す。
【0046】
(製造条件1)
20℃の水100部にセルロースビーズを投入した後、ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌してセルロースビーズ分散液を得た。また、20℃の水100部に水添レシチンを添加した後、ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌して水添レシチン分散液を得た。セルロースビーズ分散液に水添レシチン分散液を徐々に添加した後、ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌した。ろ過及び水洗した後、100℃で乾燥した。ポットミルを使用して10秒間の粉砕処理を2回行った後、300Meshの篩をパスして、撥水性セルロースビーズを得た。
【0047】
(製造条件2)
20℃の水200部にセルロースビーズを投入した。ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌した後、水添レシチンを添加した。ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌した後、ろ過及び水洗した。100℃で乾燥した後、ポットミルを使用して10秒間の粉砕処理を2回行った。さらに、300Meshの篩をパスして、撥水性セルロースビーズを得た。
【0048】
(製造条件3)
70℃の水100部にセルロースビーズを投入した後、ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌してセルロースビーズ分散液を得た。また、70℃の水100部に水添レシチンを添加した後、ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌して水添レシチン分散液を得た。セルロースビーズ分散液に水添レシチン分散液を徐々に添加した後、ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌した。70℃に保温した状態でろ過した後、水洗した。100℃で乾燥した後、ポットミルを使用して10秒間の粉砕処理を2回行った。さらに、300Meshの篩をパスして、撥水性セルロースビーズを得た。
【0049】
(製造条件4)
70℃の水200部にセルロースビーズを投入した。ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌した後、水添レシチンを添加した。ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌した。70℃に保温した状態でろ過した後、水洗した。100℃で乾燥した後、ポットミルを使用して10秒間の粉砕処理を2回行った。さらに、300Meshの篩をパスして、撥水性セルロースビーズを得た。
【0050】
(製造条件5)
70℃の水100部にセルロースビーズを投入した後、ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌してセルロースビーズ分散液を得た。また、70℃の水100部に水添レシチンを添加した後、ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌して水添レシチン分散液を得た。セルロースビーズ分散液に水添レシチン分散液を徐々に添加した後、ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌した。室温(20℃)まで冷却してろ過した後、水洗した。100℃で乾燥した後、ポットミルを使用して10秒間の粉砕処理を2回行った。さらに、300Meshの篩をパスして、撥水性セルロースビーズを得た。
【0051】
(製造条件6)
70℃の水200部にセルロースビーズを投入した。ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌した後、水添レシチンを添加した。ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌した。室温(20℃)まで冷却してろ過した後、水洗した。100℃で乾燥した後、ポットミルを使用して10秒間の粉砕処理を2回行った。さらに、300Meshの篩をパスして、撥水性セルロースビーズを得た。
【0052】
(製造条件7)
70℃の水100部にセルロースビーズを投入した後、ディスパーを使用し、2,000rpmで4分間撹拌してセルロースビーズ分散液を得た。また、70℃の水100部に水添レシチンを添加した後、ディスパーを使用し、2,000rpmで4分間撹拌して水添レシチン分散液を得た。セルロースビーズ分散液に水添レシチン分散液を徐々に添加した後、ディスパーを使用し、2,000rpmで4分間撹拌した。室温(20℃)まで冷却してろ過した後、水洗した。100℃で乾燥した後、ポットミルを使用して10秒間の粉砕処理を2回行った。さらに、300Meshの篩をパスして、撥水性セルロースビーズを得た。
【0053】
(製造条件8)
20℃の水200部にセルロースビーズ及び水添レシチンを投入した。ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌した。70℃に加熱した後、ホモジナイザーを使用し、4,000rpmで4分間撹拌した。室温(20℃)まで冷却してろ過した後、水洗した。100℃で乾燥した後、ポットミルを使用して10秒間の粉砕処理を2回行った。さらに、300Meshの篩をパスして、撥水性セルロースビーズを得た。
【0054】
<撥水性セルロースビーズの製造>
(実施例1~13、比較例1~6)
表4に示すように「配合」及び「製造条件」を組み合わせて、撥水性セルロースビーズを製造した。「配合」の詳細(配合1~9)を表3に示す。
【0055】
【0056】
<ビーズの評価>
(撥水性)
30mLのバイアル瓶にイオン交換水20mLを入れた後、ビーズ20mgを投入した。1日経過後にバイアル瓶の内容物を観察し、以下に示す評価基準にしたがってビーズの撥水性を評価した。結果を表4に示す。
5:ビーズが完全に浮いていた。
4:僅かに沈降したビーズがあった。
3:沈降したビーズがあった。
2:大部分のビーズが沈降していた。
1:すべてのビーズが沈降していた。
【0057】
(白残り抑制)
ビーズの白残り抑制について、10人のパネルテストによる官能評価を行った。具体的には、ビーズを肌に伸ばした際の白さの残り具合を総合的に判断し、以下に示す評価基準にしたがって5点満点で採点し、10人の平均点を算出した。結果を表4に示す。
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
【0058】
(伸び)
ビーズの伸びについて、10人のパネルテストによる官能評価を行った。具体的には、ビーズの肌への伸びの良さを総合的に判断し、以下に示す評価基準にしたがって5点満点で採点し、10人の平均点を算出した。結果を表4に示す。
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
【0059】
(きしみ抑制)
ビーズのきしみ抑制について、10人のパネルテストによる官能評価を行った。具体的には、ビーズを肌に伸ばした際の「キシキシとした音や突っかかりやすさ」を総合的に判断し、以下に示す評価基準にしたがって5点満点で採点し、10人の平均点を算出した。結果を表4に示す。
5:良い
4:やや良い
3:普通
2:やや悪い
1:悪い
【0060】
【0061】
<W/Oリキッドファンデーションの調製>
表5に示すA1の各成分を混合し、60℃に加温して均一に溶解した後、A2の各成分を加えて均一に混合した。得られたA1及びA2の混合物に、表5に示すCの各成分を添加して分散させ、分散液を得た。得られた分散液に、表5に示すBの各成分の混合物を高速撹拌しながら徐々に加え、均一に混合して、W/Oリキッドファンデーションを得た。
【0062】
<W/Oリキッドファンデーションの評価>
(乳化・撹拌状態)
W/Oリキッドファンデーションを調製する際の乳化・撹拌状態は「良好」であった。
【0063】
(乳化安定性)
調製したW/Oリキッドファンデーションを室温(20℃)及び40℃の条件下で放置した。1ヶ月ごとに目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって乳化安定性を評価した。結果を表5に示す。
5:放置前と変わらなかった。
4:放置前とほとんど変わらなかった。
3:やや不均一な状態となった。
2:不均一な状態となった。
1:油相と水相に分離した。
【0064】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の撥水性セルロースビーズは、W/Oリキッドファンデーション等の化粧料に用いられる原材料として有用である。
【要約】
【課題】撥水性に優れているとともに、肌に白残りせずに伸ばしやすく、かつ、きしみにくく滑らかな触感を示す撥水性セルロースビーズ、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ホスファチジルコリン含有量40~85質量%の水素添加レシチンで、例えば、体積基準の累積50%粒子径が3~15μm、真球度が0.6~1.0のセルロースビーズを表面処理して得られる撥水性セルロースビーズである。また、セルロースビーズ、水素添加レシチン、及び水を混合して混合液を得る工程と、混合液をろ過する工程と、を有する撥水性セルロースビーズの製造方法である。
【選択図】なし